JP6742773B2 - 検査キット及び検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、尿における標的物質の有無を検査するための検査キット、及び当該検査キットを用いて、結核菌の抗原に対する抗体が尿に含まれるか否か検査する方法に関する。
WHOの統計によれば、2014年において、全世界で約960万人が結核に感染しており、感染者の大部分が、アフリカやアジアにおける発展途上国で発生している。現在、日本等の先進国では、活動性結核の診断方法として血清を用いる方法(以下、血清診断法)が普及しているが、血清診断法は、高度の培養技術や高価なコストを要する。また発展途上国の中には、不衛生な注射器の使用が社会問題となっている国があり、このような国では注射器を用いて血液を採取することにリスクがある。以上のことから、発展途上国では、先進国のように、血清診断法が普及していない。
そこで本願発明者らは、発展途上国で実施可能な活動性結核の診断方法を確立すべく鋭意研究を行っており、この研究過程において、活動性結核の感染者では、結核菌が産生するMPB64抗原に対する特異IgG抗体が、血液だけでなく、尿にも含まれることを明らかにした。尿は注射器を要せず採取できるので、尿における特異IgG抗体の有無を簡便で高感度に検査可能な検査キットを実現できれば、注射器の使用にリスクのある発展途上国でも正確な活動性結核診断が期待でき、結核の感染拡大を抑制する一助になると考えられる。
ここで例えば特許文献1には、イムノクロマト法により、尿などの生体試料中の抗体(検体)の有無を検査可能な検査キットが提案されている。特許文献1の検査キットは、試料添加用部材と、膜担体と、含浸部材とを備える。膜担体には、二次抗体(第一の物質)が固定された捕捉部位が形成される。含浸部材には、呈色標識物質で標識された抗原(第二の物質)が含浸される。生体試料は、試料添加用部材上に注入された後、含浸部材に至り、抗原(第二の物質)と混合する。この際、生体試料中に抗体(検体)が存在すれば、抗原抗体反応により抗体(検体)と抗原(第二の物質)との複合体が形成される。この複合体を含む生体試料は、毛細管現象により、膜担体中をクロマト展開されて捕捉部位に到達し、そこに固定された二次抗体(第一の物質)と反応して捕捉されて、捕捉部位に呈色標識物質が集積する。この集積による発色から、生体試料中に抗体(検体)が含まれることが検出される。
特許文献1に開示されるようなイムノクロマト法は、生体試料中の検体の濃度が低い場合には、膜担体でクロマト展開される生体試料中の複合体が微量となることで、検体を高感度に検出できない問題が生じ得る。上述した尿中の特異IgG抗体の濃度は非常に低いため(血液中の特異IgG抗体の濃度の1/2000〜1/1000程度)、尿中の特異IgG抗体の有無を検査するのにイムノクロマト法は適していない。
特開2003−344406号公報
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、尿に標的物質が含まれていることを高感度に検出可能であり、検査を容易に行うことの可能な検査キット及びこれを用いる検査方法を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
項1.尿における標的物質の有無を検査するための検査キットであって、
一端に開口が形成される筒状を呈し、前記開口を通じて尿などの液体が内部に投入される管体と、
前記管体の一端に着脱自在に取り付けられる蓋体とを備え、
前記蓋体は、前記標的物質と反応する反応物質が表面に固定された膜体を保持可能であり、
前記管体の一端に前記蓋体を取り付けることに伴い、前記膜体が前記管体内の液体に浸漬され、
前記管体の一端から前記蓋体を取り外すことに伴い、前記膜体が前記管体内から引き出される検査キット。
項2.前記蓋体は、前記管体の開口よりも大きな断面を有する頭部と、前記管体の開口から前記管体内に挿入可能な挿入部とを備え、
前記挿入部は、前記頭部から延びる柱状体であり、前記管体の開口に対応する断面を有しており、
前記挿入部の先端に形成されたスリットに前記膜体の一端が挟み込まれることで、前記膜体が前記挿入部に保持され、
前記管体の一端への前記蓋体の取り付けが、前記挿入部に保持させた前記膜体や、前記挿入部を、順次、前記管体の開口から前記管体内に挿入するように行われることで、前記スリットから延び出た前記膜体の範囲が前記管体内の液体に浸漬され、
前記管体の一端からの前記蓋体の取り外しが、前記管体内から前記挿入部を引き出すように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内から引き出される項1に記載の検査キット。
項3.前記蓋体は、前記管体の開口よりも大きな断面を有する頭部と、前記管体の開口から前記管体内に挿入可能な挿入部とを備え、
前記挿入部は、前記頭部から延びる支持板と、前記支持板の表面から突出する一対の第1突出片とを備え、
前記一対の第1突出片は、前記支持板の幅方向に間隔をあけて形成されており、
前記反応物質が固定された前記膜体の表面を上側に向けた状態で、前記膜体が前記一対の第1突出片に挟み込まれるように前記支持板の表面に載置されることで、前記膜体が前記挿入部に保持され、
前記管体の一端への前記蓋体の取り付けが、前記挿入部を前記管体の開口から前記管体内に挿入するように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内に挿入されて、前記一対の第1突出片の間から露出する前記膜体の表面が前記管体内の尿に浸漬され、
前記管体の一端からの前記蓋体の取り外しが、前記管体内から前記挿入部を引き出すように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内から引き出される項1に記載の検査キット。
項4.前記一対の突出片の横断面は、前記支持板の表面に対して垂直に延びた後、前記支持板の幅方向内側に屈曲する形状を呈する項3に記載の検査キット。
項5.前記一対の第1突出片は、前記支持板の全長に亘って延びており、
前記蓋体が前記管体の一端に取り付けられた状態では、前記支持板や前記一対の第1突出片は、前記管体の他端に当接する項3又は4に記載の検査キット。
項6.前記挿入部は、前記支持板の長手方向先端側において前記支持板の表面から突出する第2突出片をさらに備え、
前記第2突出片は、前記支持板の幅方向に延びるものであり、前記支持板の先端から視て前記一対の第1突出片の間に位置する項3乃至5のいずれかに記載の検査キット。
項7.前記蓋体は、前記管体の開口よりも大きな断面を有する頭部と、前記管体の開口から前記管体の内部に挿入可能な挿入部とを備え、
前記挿入部は、前記頭部から延びる支持板と、当該支持板の表面に載置可能な環状枠体とを備え、
前記反応物質が固定された前記膜体の表面を上側に向けた状態で、前記膜体を前記支持板の表面に載置した後、前記環状枠体を前記支持板の表面に載置することで、前記膜体が、前記支持板と前記環状枠体とで挟み込まれて、前記挿入部に保持された状態となり、
前記管体の一端への前記蓋体の取り付けが、前記挿入部を前記管体の開口から前記管体内に挿入するように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内に挿入されて、前記環状枠体の内側の開口から露出する前記膜体の表面が前記管体内の液体に浸漬され、
前記管体の一端からの前記蓋体の取り外しが、前記管体内から前記挿入部を引き出すように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内から引き出される項1に記載の検査キット。
項8.前記頭部は、前記管体側に配置される第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面とを有し、
前記蓋体が前記管体の一端に取り付けられた状態では、前記第2端面が、前記管体の長手方向に対して垂直に広がることで、前記頭部を土台として前記管体を立設させることが可能である項1乃至7のいずれかに記載の検査キット。
項9.前記挿入部の外面や前記管体の内面には、前記標的物質が付着することを防止するコーティング材が塗布される項2乃至8のいずれかに記載の検査キット。
項10.前記管体の他端に着脱自在に取り付けられるブロックをさらに備え、
前記ブロックは、前記管体側に配置される第3端面と、前記第3端面の反対側にある第4端面とを有し、
前記第3端面に形成される凹部に前記管体の他端が挿入されることで、前記ブロックが前記管体の他端に取り付けられ、
前記ブロックが前記管体の他端に取り付けられた状態では、前記第4端面が前記管体の長手方向に対して垂直に広がることで、前記ブロックを土台として前記管体を立設させることが可能である項1乃至9のいずれかに記載の検査キット。
項11.前記標的物質は、結核菌の抗原に対する抗体であり、
前記膜体の表面には、前記反応物質としての前記抗原が固定される項1乃至10のいずれかに記載の検査キット。
項12.前記膜体の表面には、前記結核菌の抗原に対する抗体がさらに固定される項11に記載の検査キット。
項13.項11又は12に記載の検査キットを用いて、結核菌の抗原に対する抗体が尿に含まれるか否かを検査する方法であって、
尿を前記管体内に投入する第1工程と、
前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の尿に浸漬させる第2工程と、
前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第3工程と、
前記管内の尿を排出して、洗浄液を前記管体内に投入する第4工程と、
前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の洗浄液に浸漬させて、前記膜体に付着している未反応の前記抗体を洗い流す第5工程と、
前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第6工程と、
前記管内の洗浄液を排出して、前記抗体に対する二次抗体であって酵素で標識された二次抗体を含む二次抗体液を前記管体内に投入する第7工程と、
前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の二次抗体液に浸漬させる第8工程と、
前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第9工程と、
前記管内の二次抗体液を排出して、洗浄液を前記管体内に投入する第10工程と、
前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の洗浄液に浸漬させて、前記膜体に付着している未反応の二次抗体を洗い流す第11工程と、
前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第12工程と、
前記管内の洗浄液を排出して、前記酵素との反応で発色する発色基質を含有する発色液を前記管体内に投入する第13工程と、
前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の発色液に浸漬させる第14工程と、を有する検査方法。
項14.前記第1工程では、10cc以上の尿が前記管体内に投入される項13に記載の検査方法。
本発明の検査キットによれば、膜体が管体内の尿などの液体に浸漬されることで、膜体の単位面積当たりに染み込む液体の量を多くすることができる。したがって、尿に含まれる標的物質が微量であったとしても、尿中の標的物質と、膜体に固定される反応物質とを確実に反応させることができる。このため、尿に標的物質が含まれていることを高感度に検出できる。
また本発明の検査キットによれば、蓋体を管体の一端に着脱することに伴い、膜体を管体内に挿入され、また、管体内の膜体が引き出される。このため、蓋体3の着脱作業と、ニトロセルロース膜Nの挿入・取り出し作業とを個別に行う必要がない。したがって、検査を容易に行うことができる。
本発明の検査方法によれば、結核菌の抗原に対する抗体が尿に含まれる場合には、抗原が固定された膜体の位置において、不溶性の色素が生じて、当該色素の沈着による発色から、尿に抗体が含まれていることが検出される。
本発明の第1実施形態に係る検査キットを示す斜視図である。 第1実施形態に係る検査キットを分解した状態を示す斜視図である。 蓋体を管体の一端に取り付ける作業を示す斜視図である。 頭部を土台として管体を立設させた状態を示す斜視図である。 蓋体を管体の一端から取り外す作業を示す斜視図である。 尿における特異IgG抗体の有無を検査する工程を示すフロチャートである。 本発明の第2実施形態に係る検査キットを示す斜視図である。 第2実施形態に係る検査キットを分解した状態を示す斜視図である。 蓋体を管体の一端に取り付ける作業を示す斜視図である。 頭部を土台として管体を立設させた状態を示す斜視図である。 蓋体を管体の一端から取り外す作業を示す斜視図である。 第2実施形態の変形例に係る検査キットを示す斜視図である。 第2実施形態の変形例に係る検査キットを示す斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る検査キットを示す斜視図である。 第3実施形態に係る検査キットを分解した状態を示す斜視図である。 ニトロセルロース膜を挿入部に保持させる作業を示す斜視図である。 蓋体を管体の一端に取り付ける作業を示す斜視図である。 頭部を土台として管体を立設させた状態を示す斜視図である。 蓋体を管体の一端から取り外す作業を示す斜視図である。 第2実施形態の検査キットにブロックが設けられた状態を示す斜視図である。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る検査キット1を示す斜視図である。図2は、検査キット1を分解した状態を示す斜視図である。
第1実施形態に係る検査キット1は、被験者から採取された尿に、結核菌の抗原に対する抗体(標的物質)が含まれるか否か検査するために使用される。例えば、上記結核菌の抗原は、結核菌が特異的に産生し、菌体外へ分泌するMPB64抗原であり、標的物質とされる上記抗体は、MPB64抗原に対する特異IgG抗体である。
検査キット1は、管体2と、管体2の一端に着脱自在に取り付けられる蓋体3とを備える。
管体2は、一端に開口4が形成される円筒状を呈しており、10cc以上の容積を有する。上記の検査が実施される際には、尿などの液体Lが、開口4を通じて管体2内に投入される。管体2は、透明或いは半透明のプラスチックやガラスから形成される。軽量性及び割れにくさの点から管体2はプラスチックから形成されることが好ましい。
蓋体3は、ゴム或いは可撓性プラスチックから形成されるものであり、頭部5と挿入部6とを備える。頭部5は、管体2の開口4よりも大きな円板状を呈しており、管体2側に配置される平坦な端面7と、その反対側にある平坦な端面8とを有する。
挿入部6は、頭部5の端面7から延びる柱状体である。挿入部6は、その横断面が管体2の開口4に対応する円形を呈することで、開口4から管体2内に挿入可能である。挿入部6の先端には、スリット9が形成される。スリット9は、挿入部6の径方向に直線状に延びており、ニトロセルロース膜N(膜体)の一端を挟み込むために使用される。なお挿入部6の形状は、管体2の形状に応じて適宜変更され得る。例えば、管体2が断面矩形の筒状とされる場合には、挿入部6は、管体2の開口4に対応する矩形断面を有するものとされる。そして挿入部6の先端には幅方向に延びるスリット9が形成され、このスリット9がニトロセルロース膜Nの一端を挟み込むために使用される。
ニトロセルロース膜Nは、径が0.45μm程度の孔を無数に有する多孔質構造の薄膜である。ニトロセルロース膜Nの幅は、管体2の径と同等或いはそれ以下とされる。ニトロセルロース膜Nの長さは、管体2の長さと同等或いはそれ以下とされる。ニトロセルロース膜Nの表面には、結核菌の抗原Kや、コントロール物質Cが固定される。
抗原Kは、例えば上述したMPB64抗原であり、ライン状或いはドット状にニトロセルロース膜Nに固定される。抗原Kの量を少なく抑えるために、抗原Kは、図示の例のようにライン状に固定されることが好ましい。
コントロール物質Cは、抗原Kに対する抗体(標的物質とされる抗体)であり、後述の二次抗体液や発色液が管体2内に適切に投入されたか否か確認すべく、ニトロセルロース膜Nに固定される。ニトロセルロース膜Nに固定される抗原KがMPB64抗原である場合には、MPB64抗原に対する特異IgG抗体が、コントロール物質Cとしてニトロセルロース膜Nに固定される。コントロール物質Cの固定位置は、抗原Kの固定位置から、ニトロセルロース膜Nの長手方向に離れた位置とされる。ニトロセルロース膜Nには、抗原Kやコントロール物質Cの固定位置を特定するためのマーカー(図示せず)が付される。なおマーカーは管体2に形成されてもよい。
抗原Kやコントロール物質Cを固定するニトロセルロース膜の範囲は特に限定されないが、本実施形態では、管体2内に投入される液体Lの量が管体2の容積よりも少ない事態を想定して、ニトロセルロース膜Nの長手方向の一端側に抗原Kやコントロール物質Cが固定されている。
蓋体3を管体2の一端に取り付ける際には、まず図3(a)に示すように、ニトロセルロース膜Nの一端をスリット9に挟み込むことで、ニトロセルロース膜Nが蓋体3の挿入部6に保持された状態とする。ついで図3(b)や図3(c)に示すように、挿入部6に保持させたニトロセルロース膜Nや、挿入部6を、管体2の開口4から管体2内に順次挿入する。以上の作業により、蓋体3が管体2の一端に取り付けられる。尿などの液体Lが管体2内に投入されている場合には、スリット9から延び出たニトロセルロース膜Nの範囲が管体2内の液体Lに浸漬される。
図3(c)に示すように蓋体3が管体2の一端に取り付けられた状態では、挿入部6の外面が管体2の内面に密着することで蓋体3が固定される。また挿入部6が開口4を密閉することで、管体2内の液体Lが漏出しない。さらに管体2の内面が挿入部6を内向きに押圧してスリット9の幅が狭まることで、ニトロセルロース膜Nの一端が締め付けられる。このためニトロセルロース膜Nが挿入部6に保持された状態が安定して維持される(ニトロセルロース膜Nの一端がスリット9に挟み込まれた状態が安定して維持される)。
またさらに図3(c)に示すように蓋体3が管体2の一端に取り付けられた状態では、蓋体3の端面8が、管体2の長手方向に対して垂直に広がる。このため図4に示すように、頭部5を土台として管体2を立設させることができる。そしてこのように管体2を立設させれば、図示例のように管体2内の液体Lの量が管体2の容積よりも少ない場合でも、液体Lが管体2の一端側に貯留するので、抗原Kやコントロール物質Cが固定されるニトロセルロース膜Nの一端側を、管体2内の液体Lに浸漬させることができる。
管体2の一端からの蓋体3の取り外しは、図5(a)や図5(b)に示すように、管体2内から挿入部6を引き出すように行われ、これに伴い、挿入部6に保持されたニトロセルロース膜Nも管体2内から引き出される。図5(b)に示すように蓋体3が管体2から取り外された後では、尿などの液体Lを、管体2の開口4を通じて、管体2内に投入したり、管体2内から排出することができる。
第1実施形態では、標的物質の抗体が尿に含まれるか否か検査するために、尿や二次抗体液や発色液等の液体Lを管体2内に順次投入することが行われる。二次抗体液は、抗体に対する二次抗体が希釈された溶液であり、二次抗体は酵素(蛍光色素)で標識されている。酵素は、例えばペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼである。発色液は、酵素との反応で発色する酵素基質を含有する水溶性の溶液である。
そして尿や二次抗体液や発色液が管体2内に投入されるたびに、図3に示す蓋体3の取り付け作業が行われることで、挿入部6に保持されたニトロセルロース膜Nが、管体2内の尿や二次抗体液や発色液に順次浸漬される。尿に抗体が含まれる場合には、抗原Kが固定されたニトロセルロース膜Nの位置(以下、抗原Kの固定位置)において、以下の(1)〜(3)の反応から不溶性の色素が生じて、当該色素の沈着による発色から、尿に抗体が含まれていることが検出される。
(1)ニトロセルロース膜Nに固定された抗原Kに、尿中の抗体が結合することで、抗原Kと抗体とを含む複合体(以下、抗原・抗体複合体)が形成される。
(2)抗原・抗体複合体を構成する抗体に、酵素で標識された二次抗体が結合することで、抗体と抗原Kと二次抗体とを含む複合体(以下、抗原・抗体・二次抗体複合体)が形成される。
(3)抗原・抗体・二次抗体複合体を構成する二次抗体に付された酵素と、発色液の酵素基質とが反応することで、不溶性(油性)の色素が生成されて、当該色素が抗原・抗体・二次抗体複合体の存在する位置(抗原Kの固定位置)に沈着することによる発色が生じる。
また、ニトロセルロース膜Nが管体2内の二次抗体液や発色液に浸漬される際には、コントロール物質Cが固定されたニトロセルロース膜Nの位置(以下、コントロール物質Cの固定位置)において、以下の(4),(5)の反応から不溶性の色素が生じて、当該色素の沈着による発色が生じる。
(4)コントロール物質Cに、酵素で標識された二次抗体が結合することで、コントロール物質Cと二次抗体とを含む複合体(以下、抗体・二次抗体複合体)が形成される。
(5)抗体・二次抗体複合体を構成する二次抗体に付された酵素と、発色液の酵素基質とが反応することで、不溶性(油性)の色素が生成されて、当該色素が抗体・二次抗体複合体の存在する位置(コントロール物質Cの固定位置)に沈着することによる発色が生じる。
図6は、尿における抗体の有無を検査する工程を示すフロチャートである。上記の(1)〜(5)の反応は、図6の工程が実施されることで生じるものである。以下、図6の工程について説明する。
まず、蓋体3が管体2から取り外された状態で、被験者から採取した尿を管体2内に投入する(ステップS101)。
ついで図3に示す蓋体3の取り付け作業により、ニトロセルロース膜Nや挿入部6を管体2内に挿入して、ニトロセルロース膜Nを管体2内の尿に浸漬させる(ステップS102)。
ニトロセルロース膜Nを尿に浸漬させる時間は、1時間程度に設定される。尿に抗体(標的物質)が含まれる場合には、抗原Kの固定位置で(1)の反応が生じて、抗原・抗体複合体が形成される。なお(1)の反応を確実に生じさせるために、先のステップS101では、10cc以上の尿を管体2内に投入することが好ましい。
なお本実施形態では、ニトロセルロース膜Nの一端側に抗原Kが固定されているため、ステップS102において、図4に示すように頭部5を土台として管体2を立設させて、管体2の一端側に尿を貯留させることが行われる。これによりニトロセルロー膜Nの一端側において、尿中の抗体が抗原Kと接触して(1)の反応が生じ、抗原・抗体複合体が形成される。
ついで図5に示す蓋体3の取り外し作業により、挿入部6やニトロセルロース膜Nを管体2内から引き出す(ステップS103)。
ついで、管体2内の尿を排出して、洗浄液を管体2内に投入する(ステップS104)。
ついで図3に示す蓋体3の取り付け作業により、ニトロセルロース膜Nや挿入部6を管体2内に挿入し、ニトロセルロース膜Nを管体2内の洗浄液に浸漬させる(ステップS105)。これにより、ニトロセルロース膜Nに付着している未反応の抗体(抗原Kと反応しなかった抗体)が、洗い流される。
ついで図5に示す蓋体3の取り外し作業により、挿入部6やニトロセルロース膜Nを管体2内から引き出す(ステップS106)。
ついで、管体2内の洗浄液を排出して、二次抗体液を管体2内に投入する(ステップS107)。
ついで図3に示す蓋体3の取り付け作業により、ニトロセルロース膜Nや挿入部6を管体2内に挿入し、ニトロセルロース膜Nを管体2内の二次抗体液に浸漬させる(ステップS108)。
ニトロセルロース膜Nを二次抗体液に浸漬させる時間は、1時間程度に設定される。尿に抗体(標的物質)が含まれていた場合には、抗原Kの固定位置で、抗原・抗体複合体が形成されているため、上記(2)の反応が生じて抗原・抗体・二次抗体複合体が形成される。またコントロール物質Cの固定位置では、上記(4)の反応が生じて、抗体・二次抗体複合体が形成される。
またステップS108においても、ステップS102と同様、図4に示すように頭部5を土台として管体2を立設させて、管体2の一端側に二次抗体液を貯留させることが行われる。これにより、ニトロセルロー膜Nの一端側に形成・固定されている抗原・抗体複合体やコントロール物質Cに、二次抗体が接触して、(2),(4)の反応が生じ、抗原・抗体・二次抗体複合体や抗体・二次抗体複合体が形成される。
ついで図5に示す蓋体3の取り外し作業により、挿入部6やニトロセルロース膜Nを管体2内から引き出す(ステップS109)。
ついで、管体2内の二次抗体液を排出して、洗浄液を管体2内に投入する(ステップS110)。
ついで図3に示す蓋体3の取り付け作業により、蓋体3を管体2の一端に取り付けて、ニトロセルロース膜Nや挿入部6を管体2内に挿入して、ニトロセルロース膜Nを洗浄液に浸漬させる(ステップS111)。これにより、ニトロセルロース膜Nに付着している未反応の二次抗体(抗原・抗体複合体やコントロール物質Cに結合しなかった二次抗体)が、洗い流される。
ついで図5に示す蓋体3の取り外し作業により、挿入部6やニトロセルロース膜Nを管体2内から引き出す(ステップS112)。
ついで、管体2内の洗浄液を排出して、発色液を管体2内に投入する(ステップS113)。
ついで図3に示す蓋体3の取り付け作業により、ニトロセルロース膜Nや挿入部6を管体2内に挿入して、ニトロセルロース膜Nを発色液に浸漬させる(ステップS114)。
ニトロセルロース膜Nを発色液に浸漬させる時間は、10分間から15分間程度に設定される。尿に抗体(標的物質)が含まれていた場合には、抗原Kの固定位置で、抗原・抗体・二次抗体複合体が形成されているため、上記(3)の反応による発色が生じる。またコントロール物質Cの固定位置では、抗体・二次抗体複合体が形成されていることから、上記(5)の反応による発色が生じる。
またステップS114においても、ステップS102,S108と同様、図4に示すように頭部5を土台として管体2を立設させて、管体2の一端側に発色液を貯留させることが行われる。これにより、ニトロセルロー膜Nの一端側に形成・固定されている抗原・抗体・二次抗体複合体や抗体・二次抗体複合体に発色液が接触するので、上記(3),(5)の反応による発色が生じる。
上述した第1実施形態の検査キット1は、高度な技術や高価なコストを要せず、容易且つ高感度に、尿に抗体が含まれることを検出可能なので、発展途上国における活動性結核の診断ツールとして好適に使用できるものである。
すなわち第1実施形態の検査キット1によれば、ニトロセルロース膜Nが管体2内の尿等の液体Lに浸漬されることで、ニトロセルロース膜Nの単位面積当たりに染み込む液体Lの量を多くすることができる。このため、尿などの液体Lに含まれる物質(抗体、二次抗体、酵素基質など)が微量であったとしても、当該液体L中の物質と、ニトロセルロース膜Nに形成・固定される物質(抗原K、抗原・抗体複合体、抗原・抗体・二次抗体複合体、コントロール物質C、抗体・二次抗体複合体など)とを確実に反応させることができる。したがって、尿に抗体(標的物質)が含まれていることを高感度に検出できる。
またコントロール物質Cがニトロセルロース膜Nに固定されていることで、管体2内に二次抗体液や発色液が投入されたか否か確認できる。すなわち、適切に二次抗体液や発色液が管体2内に投入されていた場合には、コントロール物質Cの固定位置で(4),(5)の反応による発色が生じる。これに対し、二次抗体液や発色液が管体2内に投入されなかった場合には、コントロール物質Cの固定位置で(4),(5)の反応による発色が生じない。したがって、コントロール物質Cの固定位置における発色の有無から、管体2内に二次抗体液や発色液が投入されたか否か確認できる。そしてこのことから、管体2への二次抗体液や発色液の投入が看過された場合に、検査のやり直しが促されて、抗原Kの固定位置で(1)〜(3)の反応による発色が生じないことで、尿に抗体(標的物質)が含まれていないと結論付けられることを回避できる。
さらに第1実施形態の検査キット1によれば、蓋体3を管体2に取り付ける作業により、挿入部6に保持されたニトロセルロース膜Nが管体2内に挿入されて液体Lに浸漬される。また管体2から蓋体3を取り外す作業により、ニトロセルロース膜Nが管体2内から引き出される。したがって、蓋体3の着脱作業とニトロセルロース膜Nの挿入・取り出し作業とを個別に行う必要がない。また、ニトロセルロース膜Nが挿入部6に保持されることで、ニトロセルロース膜Nが管体2内から取り外し難くなる事態を回避できる。以上のことから、検査を容易に行うことができる。
また蓋体3へのニトロセルロース膜Nの取り付けや、蓋体3の着脱や、管体2に対する液体Lの投入・排出など、高度な技術を要しない作業によって、尿における抗体の有無を検査できる。
また管体2が尿・二次抗体液・洗浄液を貯留する容器として共用されるので、尿・二次抗体液・洗浄液毎に容器を準備する必要がない。したがって検査に要する手間やコストを軽減できる。
さらに頭部5を土台として管体2を立設できるので(図4)、手で管体2を持ったり、試験管立て等の立設手段を用いて管体2を立てることを要せず、管体2の一端側に液体Lを貯留させることができる。このため、手間を要せず、液体L中に含まれる物質(抗体、二次抗体、酵素基質など)と、ニトロセルロース膜Nの一端側に形成・固定される物質(抗原K、抗原・抗体複合体、抗原・抗体・二次抗体複合体、コントロール物質C、抗体・二次抗体複合体など)とを接触させて、上記(1)〜(5)の反応を生じさせることができる。したがって、上記立設手段を準備できないアフリカやアジア等のフィールドでも、検査を容易に行うことができる。また、ニトロセルロース膜Nの一端側に抗原Kやコントロール物質Cを固定しておけば、管体2内に投入される液体Lの量が管体2の容積よりも少ない場合でも、管体2を立設することで上記(1)〜(5)の反応を生じさせることができる。このため、ニトロセルロース膜Nの全体に万遍なく抗原Kやコントロール物質Cを固定したり、尿や二次抗体液や発色液で管体2内を満たすことを要しない。したがって、検査に使用する抗原K・コントロール物質C・尿・二次抗体液・発色液の量を少なく抑えることができるので、材料コストの軽減が図られる。
次に、本発明の第2実施形態や第3実施形態の検査キットについて説明する。第2及び第3実施形態の検査キットも、第1実施形態と同様、ニトロセルロース膜Nを用いて、結核菌の抗原に対する抗体(標的物質)が尿に含まれるか否か検査可能なものである。第2及び第3実施形態でも、抗原Kやコントロール物質Cがニトロセルロース膜Nの一端側の表面に固定されており、抗原Kやコントロール物質Cの固定位置を特定可能なマーカーがニトロセルロース膜Nや管体2に形成される。以下では、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点については図面に同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る検査キット10を示す斜視図である。図8は、検査キット10を分解した状態を示す斜視図である。
第2実施形態の検査キット10は、管体2と、管体2の一端に着脱自在に取り付けられる蓋体11とを備えており、蓋体11の構造が、第1実施形態の検査キットと異なる。
蓋体11は、プラスチックやスチールから形成されるものであり、頭部12と挿入部13とを備える。
頭部12は、管体2の開口4よりも大きな円板状を呈しており、管体2側に配置される平坦な端面14と、その反対側にある平坦な端面15とを有する。
頭部12の端面14には、管体2の一端を差し込み可能な環状凹部16が形成される。環状凹部16の内側面には、螺子溝(図示せず)が形成されており、この螺子溝と、管体2の一端の外側面に形成される螺子溝(図示せず)とを螺合させることができる。
挿入部13は、頭部12の端面14における環状凹部16の内側から延びるものであって、支持板17と、一対の第1突出片18,18とを備える。
支持板17は、矩形の板状を呈する。支持板17の長さは、管体2の長さと同等とされる。支持板17の幅は、管体2の内径と同等或いはそれ以下とされる。
第1突出片18,18は、支持板17の表面から突出するものである。第1突出片18,18は、それぞれ支持板17の長手方向の全長に亘って延びており、支持板17の幅方向に間隔をあけて形成されている。
第2実施形態で使用されるニトロセルロース膜Nは、長さが支持板17の長さと同等或いはそれ以下であり、幅が第1突出片18,18の間隔と同等とされる。ニトロセルロース膜Nは、抗原Kやコントロール物質Cが固定された表面が上側に向けられた状態で、第1突出片18,18に挟み込まれるよう支持板17の表面に載置されることで、蓋体11の挿入部13に保持される。図示の例では、第1突出片18,18が支持板17の幅方向両縁に形成されることで、支持板17と同等の幅を有するニトロセルロース膜Nを、第1突出片18,18に挟み込ませることができる。
図7に示すようにニトロセルロース膜Nが第1突出片18,18に挟み込まれた状態(ニトロセルロース膜Nが挿入部13に保持された状態)では、抗原Kやコントロール物質Cが固定されたニトロセルロースの表面が、第1突出片18,18の間から露出する。また、ニトロセルロース膜Nが支持板17の幅方向に動くことが、第1突出片18,18によって規制される。
なお図示例のように、必ずしも第1突出片18,18を支持板17の幅方向両縁に形成する必要はなく、第1突出片18,18の間隔は、支持板17やニトロセルロース膜Nの幅に応じて適宜変更され得る。例えば、支持板17よりも幅の小さなニトロセルロース膜Nが使用される場合には、第1突出片18,18の間隔も、支持板17の幅より小さくされ得る。
また第1突出片18,18の各々の長さは、ニトロセルロース膜Nの挟み込みが可能な限りにおいて、支持板17の長さよりも短くされてもよい。
また支持板17の幅方向の一方側及び他方側にそれぞれ、複数の第1突出片18を支持板17の長手方向に間隔をあけて形成してもよい。例えば、支持板17の幅方向の一方側及び他方側にそれぞれ、3つの第1突出片18を支持板17の長手方向の先端・中央・基端に形成すれば、支持板17と同等の長さを有するニトロセルロース膜Nを、幅方向一方側の3つの第1突出片18と、幅方向他方側の3つの第1突出片18とで挟み込んで、動かないようにすることができる。
蓋体11を管体2の一端に取り付ける際には、まず図9(a)に示すように、ニトロセルロース膜Nが挿入部13に保持された状態で、挿入部13を管体2内に挿入することが行われる。ついで図9(b)に示すように、管体2の一端を環状凹部16に差し込み、蓋体11を管体2に対して相対的に回転させて、環状凹部16の内側面にある螺子溝と、管体2の外側面にある螺子溝とを螺合させる。以上の作業により、図9(c)に示すように蓋体11が管体2の一端に取り付けられて、挿入部13と共にニトロセルロース膜Nも管体2内に挿入された状態となる。管体2内に尿などの液体Lが投入されている場合には、抗原Kやコントロール物質Cが固定されたニトロセルロースの表面が第1突出片18,18の間から露出していることで、当該ニトロセルロース膜Nの表面が液体Lに浸漬される。
また図9(c)に示すように蓋体11が管体2に取り付けられた状態では、上述した螺子溝の螺合により頭部12が管体2の一端に固定されて、管体2の開口4が頭部12によって密閉される。これにより、管体2内の液体Lが漏出しない。
また蓋体11が管体2に取り付けられた状態では(図9(c))、第1突出片18,18によって、支持板17の幅方向へのニトロセルロース膜Nの動きが規制されるとともに、挿入部13の先端が管体2の他端に当接することで、管体2の他端側へのニトロセルロース膜Nの動きも規制される。以上により、ニトロセルロース膜Nが支持板17に載置された状態が安定して維持される。
さらに蓋体11が管体2に取り付けられた状態では(図9(c))、頭部12の端面15が、管体2の長手方向に対して垂直に広がる。このため図10に示すように、頭部12を土台として管体2を立設させることができる。そしてこのように管体2を立設させれば、管体2内の液体Lが管体2の一端側に貯留するので、抗原Kやコントロール物質Cが固定されたニトロセルロース膜Nの一端側を液体Lに浸漬させることができる。
蓋体11を管体2の一端から取り外す際には、まず図11(a)に示すように、取り付け時とは逆向きに蓋体11を管体2に対して回転させることで、環状凹部16(図8)の螺子溝と管体2の螺子溝との螺合を解除する。ついで図11(b)に示すように管体2内から挿入部13を引き出すことが行われる。以上の作業により、蓋体11が管体2の一端から取り外されて、挿入部13に保持されたニトロセルロース膜Nも管体2内から引き出される。図11(b)に示すように蓋体11が管体2から取り外された状態では、尿や二次抗体液や発色液等の液体Lを、管体2の開口4を通じて、管体2内に投入したり、管体2内から排出できる。
以上の構成を有する検査キット10は、図6と同様の工程が実施されることで、尿における抗体(標的物質)の有無を検査可能である。
図6のステップS103,S106,S109,S112に対応する工程では、図11に示す蓋体11の取り外し作業が行われることで、管体2内から挿入部13やニトロセルロース膜Nが引き出された状態とされる。
図6のステップS102,S105,S108,S111,S114に対応する工程では、図9に示す蓋体11の取り付け作業が行われることで、挿入部13やニトロセルロース膜Nが管体2内に挿入されて、管体2内に投入されている尿などの液体L(尿・洗浄液・二次抗体液・発色液など)にニトロセルロース膜Nが浸漬した状態とされる。尿に抗体(標的物質)が含まれている場合には、抗原Kの固定位置において、上記の(1)〜(3)の反応から発色が生じることで、尿に抗体(標的物質)が含まれていることが検出される。
コントロール物質Cの固定位置では、図6のステップS108に対応する工程で上記の(4)の反応が生じ、ステップS114に対応する工程で上記(5)の反応から発色が生じる。管体2への二次抗体液や発色液の投入が看過された場合には、コントロール物質Cの固定位置で発色が生じないことで、二次抗体液や発色液が投入されなかったことが判明する。
第2実施形態においても、ニトロセルロース膜Nが管体2内の尿などの液体Lに浸漬されることで、管体2内の液体Lに含まれる物質(抗体、二次抗体、酵素基質など)と、ニトロセルロース膜Nに形成・固定される物質(抗原K、抗原・抗体複合体、抗原・抗体・二次抗体複合体、コントロール物質C、抗体・二次抗体複合体など)とが確実に反応する。したがって、尿に抗体が含まれることを高感度に検出できる。また図10に示したように頭部12を土台として管体2を立設できるので、手間を要せず、管体2の一端側に液体Lを貯留させて、液体L中の物質(抗体、二次抗体、酵素基質など)と、ニトロセルロース膜Nの一端側に形成・固定される物質(抗原K、抗原・抗体複合体、抗原・抗体・二次抗体複合体、コントロール物質C、抗体・二次抗体複合体など)とを反応させることができる。
また第2実施形態によれば、蓋体11を管体2の一端に着脱することに伴い、ニトロセルロース膜Nを管体2内に挿入し、管体2内のニトロセルロース膜Nを引き出すことができる。したがって、蓋体3の着脱作業と、ニトロセルロース膜Nの挿入・取り出し作業とを個別に行う必要がない。
さらに蓋体11を管体2に取り付ける際には、第1突出片18,18が、支持板17の幅方向へのニトロセルロース膜Nの動きを規制するので、ニトロセルロース膜Nが支持板17に載置された状態が維持される。このため、確実にニトロセルロース膜Nを支持板17と共に管体2に挿入できる。
さらに蓋体11が管体2に取り付けられた状態では、第1突出片18,18によって、支持板17の幅方向へのニトロセルロース膜Nの動きが規制されることに加え、挿入部13の先端が管体2の他端に当接することで、管体2の他端側へのニトロセルロース膜Nの動きも規制される。このため、ニトロセルロース膜Nが支持板17に載置された状態(ニトロセルロース膜Nが挿入部13に保持された状態)が安定して維持される。したがって、ニトロセルロース膜Nが管体2内から取り外し難くなる事態を回避でき、蓋体11を管体2から取り外す際に、確実にニトロセルロース膜Nを支持板17と共に管体2から引き出すことができる。
以上のことから、検査を容易に行うことができる。
また蓋体11が管体2に取り付けられた状態では、上述のようにニトロセルロース膜Nが支持板17に載置された状態が維持されることで、ニトロセルロース膜Nが支持板17から脱落して折れ曲がるような事態が生じず、ニトロセルロース膜Nは常に拡がった状態とされる。このため、ニトロセルロース膜Nの各部位に液体Lを均等に浸透させることができる。したがって、ニトロセルロース膜Nの各部位に固定された物質を、液体L中の物質と反応させることができる。
また第2実施形態においても、蓋体11へのニトロセルロース膜Nの取り付けや、管体2への蓋体11の着脱や、管体2に対する液体Lの投入・排出など、高度な技術を要しない作業により、尿における抗体の有無を検査できる、また管体2が尿・二次抗体液・洗浄液を貯留する容器として共用されるので、検査に要する手間やコストを軽減できる。
なお第2実施形態の検査キットは、図12や図13に示すように変更され得る。図12、図13に示す検査キット19,20では、一対の第1突出片18,18の断面が、支持板17の表面に対して垂直に延びた後、支持板17の幅方向内側に屈曲する形状を呈している。これら検査キット19,20によれば、第1突出片18,18が、支持板17の幅方向へのニトロセルロース膜Nの動きに加えて、支持板17の表面に対して垂直な方向へのニトロセルロース膜Nの動きも規制する。このため、ニトロセルロース膜Nが支持板17に載置された状態がより安定して維持される。
さらに図13に示す検査キット20では、挿入部13が、支持板17や第1突出片18,18に加えて、第2突出片21をさらに備えるものとなっている。第2突出片21は、支持板17の長手方向先端側において、支持板17の表面から突出するものである。第2突出片21は、支持板17の幅方向に延びており、支持板17の先端(他端)から視て一対の第1突出片18,18の間に位置する。この図13の検査キット20では、第2突出片21によって、ニトロセルロース膜Nが管体2の他端側に抜け出ることが防止される。このため、蓋体11を管体2から取り外す際に、確実にニトロセルロース膜Nを支持板17と共に管体2内から引き出すことができる。なお図13の検査キット20では、第1突出片18,18が支持板17の途中までしか延びていないことで、第1突出片18,18と第2突出片21との間に隙間Sが形成されており、この隙間Sから、ニトロセルロース膜Nを第1突出片18,18の間に挿入できる。なお隙間Sは必ずしも形成する必要はなく、第2突出片21が第1突出片18,18の間を支持板17の幅方向に延びるものとされてもよい(つまり、第2突出片21が、第1突出片18,18の内側に位置するものであってもよい)。この場合でも、例えば、ニトロセルロース膜Nの幅方向を弓なりに撓ませた状態で、ニトロセルロース膜Nの両側縁を第1突出片18,18の間に差し込んだ後、ニトロセルロース膜Nを平らにすることで、第1突出片18,18の間にニトロセルロース膜Nを挿入できる。また図13では、挿入部13の先端(すなわち支持板17の先端や第2突出片21)が管体2の他端に当接する例を示しているが、図13の検査キット20では、ニトロセルロース膜Nが管体2の他端側に抜け出ることが第2突出片21によって防止されるので、図13のように必ずしも挿入部13の先端を管体2の他端に当接させる必要はなく、挿入部13の長さ(すなわち支持板17の長さ)は、管体2の長さ以下となる範囲内で適宜調整され得る。
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態に係る検査キット30を示す斜視図である。図15は、検査キット30を分解した状態を示す斜視図である。
第3実施形態の検査キット30は、管体2と、管体2の一端に着脱自在に取り付けられる蓋体31とを備えるものであり、蓋体31の構造が、第1及び第2実施形態の検査キットと異なる。
蓋体31は、プラスチックやスチールから形成されるものであり、頭部32と挿入部33とを備える。
頭部32は、管体2の開口4よりも大きな円板状を呈しており、管体2側に配置される平坦な端面34と、その反対側にある平坦な端面35とを有する。端面34には、管体2の一端を差し込み可能な環状凹部36が形成される。環状凹部36の内側面には、螺子溝(図示せず)が形成されており、この螺子溝と、管体2の一端の外側面に形成される螺子溝(図示せず)とを螺合させることができる。
挿入部33は、支持板37と、環状枠体38とを備える。
支持板37は、矩形の板状を呈するものであり、頭部32の端面34における環状凹部36の内側から延びる。支持板37の長さは、管体2の長さと同等或いはそれ以下とされる。支持板37の幅は、管体2の内径と同等とされる。
支持板37の表面37aには、ニトロセルロース膜Nを載置するための矩形の凹部39が形成される。また支持板37の表面37aにおける凹部39の外側には、四つの突起40が形成される。これら突起40は支持板37の四隅に位置する。
環状枠体38は、支持板37と同様の外形寸法を有するものであり、長さが管体2の長さと同等或いはそれ以下とされ、幅が管体2の内径と同等とされる。環状枠体38は、その一側縁38bが薄肉のヒンジを介して支持板37の一側縁37bに接合されることで、支持板37の一側縁37bに回動自在に支持される。環状枠体38の内側の開口50は、支持板37の凹部39よりも小さな矩形に形成されており、環状枠体38の回動で環状枠体38の表面38aを支持板37の表面37aに沿わせた状態では、環状枠体38の内縁部38cが凹部39の上方に突き出るようになっている。また環状枠体38の表面38aの四隅には孔41が形成されており、上述のように表面38aを表面37aに沿わせた状態では、突起40と孔41とが係合する。
検査が実施される際には、環状枠体38を回動させて、ニトロセルロース膜Nを環状枠体38と支持板37とで挟み込む作業が行われる。
すなわち、まず図16(a)に示すように、ニトロセルロース膜Nを、支持板37の凹部39に載置する。この際には、抗原Kやコントロール物質Cが固定されたニトロセルロース膜Nの表面を上側に向ける。
ついで図16(b)に示すように、環状枠体38の表面38aが支持板37の表面37aに沿うように環状枠体38を回動させることで、環状枠体38を支持板37の表面37aに載置して、突起40と孔41を係合させる。これにより、ニトロセルロース膜Nの外縁部が環状枠体38の内縁部38cと支持板37とに挟み込まれて、ニトロセルロース膜Nが挿入部33に保持された状態となる。
そしてニトロセルロース膜Nが挿入部33に保持された状態では(図16(b))、環状枠体38の開口50から、抗原Kやコントロール物質Cが固定されたニトロセルロース膜Nの表面が露出する。また、突起40と孔41が係合することで、環状枠体38や支持板37が開方向に回動せず、ニトロセルロース膜Nが挿入部33に保持された状態が維持される(ニトロセルロース膜Nを環状枠体38と支持板37とで挟み込んだ状態が維持される)。
蓋体31を管体2の一端に取り付ける際には、図17(a)に示すように、ニトロセルロース膜Nが挿入部33に保持された状態で、挿入部33を管体2内に挿入することが行われる。ついで図17(b)に示すように、管体2の一端を頭部32の環状凹部36に差し込み、蓋体31を管体2に対して相対的に回転させることで、環状凹部36の内側面にある螺子溝と、管体2の外側面にある螺子溝とを螺合させる。以上の作業により、図17(c)に示すように、蓋体31が管体2の一端に取り付けられて、挿入部33と共にニトロセルロース膜Nも管体2内に挿入された状態となる。管体2内に尿などの液体Lが投入されている場合には、抗原Kやコントロール物質Cが固定されたニトロセルロース膜Nの表面が環状枠体38の開口50から露出していることで、当該ニトロセルロース膜Nの表面が液体Lに浸漬される。
また図17(c)に示すように蓋体31が管体2に取り付けられた状態では、突起40と孔41が係合することに加えて、支持板37や環状枠体38の外縁が管体2の内面に当接することによっても、環状枠体38や支持板37が開方向に回動することが防止される。これにより、ニトロセルロース膜Nが挿入部33に保持された状態(ニトロセルロース膜Nが環状枠体38や支持板37に挟み込まれた状態)がより安定して維持される。
さらに蓋体31が管体2の一端に取り付けられた状態では(図17(c))、頭部32の端面35が、管体2の長手方向に対して垂直に広がる。このため図18に示すように、頭部32を土台として管体2を立設させることができる。そしてこのように管体2を立設させれば、管体2内の液体Lが管体2の一端側に貯留するので、抗原Kやコントロール物質Cが固定されたニトロセルロース膜Nの一端側を液体Lに浸漬させることができる。
蓋体31を管体2の一端から取り外す際には、図19(a)に示すように、取り付け時とは逆向きに蓋体31を管体2に対して相対回転させることで、環状凹部36(図15〜図17)の螺子溝と管体2の一端の螺子溝との螺合を解除する。ついで図19(b)に示すように管体2内から挿入部33を引き出すことが行われる。以上の作業により、蓋体31が管体2の一端から取り外されて、挿入部33に保持されたニトロセルロース膜Nも管体2内から引き出される。上記の作業で蓋体31が管体2から取り外された後では、尿や二次抗体液や発色液等の液体Lを、管体2の開口4を通じて、管体2内に投入したり、管体2内から排出できる。
以上の構成を有する検査キット30は、図6と同様の工程で、尿における抗体(標的物質)の有無を検査可能である。
図6のステップS103,S106,S109,S112に対応する工程では、図19に示す蓋体31の取り外し作業が行われることで、挿入部33やニトロセルロース膜Nが管体2内から引き出された状態とされる。
図6のステップS102,S105,S108,S111に対応する工程では、図17に示す蓋体31の取り付け作業が行われることで、ニトロセルロース膜Nや挿入部33が管体2内に挿入されて、ニトロセルロース膜Nが管体2内の液体L(尿・洗浄液・二次抗体液・発色液など)に浸漬した状態とされる。尿に抗体(標的物質)が含まれている場合には、抗原Kの固定位置において、上記の(1)〜(3)の反応から発色が生じることで、尿に抗体(標的物質)が含まれていることが検出される。
また第1及び第2実施形態と同様、コントロール物質Cの固定位置では、図6のステップS108,S114に対応する工程において上記(4),(5)の反応が生じる。管体2への二次抗体液や発色液の投入が看過された場合には、コントロール物質Cの固定位置で発色が生じないことで、二次抗体液や発色液が投入されなかったことが判明する。
第3実施形態においても、ニトロセルロース膜Nが管体2内の尿などの液体Lに浸漬されることで、管体2内の液体Lに含まれる物質(抗体、二次抗体、酵素基質など)と、ニトロセルロース膜Nに形成・固定される物質(抗原K、抗原・抗体複合体、抗原・抗体・二次抗体複合体、コントロール物質C、抗体・二次抗体複合体など)とが確実に反応する・このため尿に抗体が含まれていることを高感度に検出できる。また頭部12を土台として管体2を立設できるので(図20)、手間を要せず、管体2の一端側に液体Lを貯留させて、液体L中の物質(抗体、二次抗体、酵素基質など)と、ニトロセルロース膜Nの一端側に形成・固定される物質(抗原K、抗原・抗体複合体、抗原・抗体・二次抗体複合体、コントロール物質C、抗体・二次抗体複合体など)とを反応させることができる。
また第3実施形態においても、蓋体11を管体2の一端に着脱することに伴い、管体2内にニトロセルロース膜Nを挿入し、また、ニトロセルロース膜Nを管体2内から引き出すことができる。したがって、蓋体3の着脱作業と、ニトロセルロース膜Nの挿入・取り出し作業とを個別に行う必要がない。
さらに環状枠体38と支持板37による挟み込みで、ニトロセルロース膜Nが挿入部33に保持されるため、ニトロセルロース膜Nが挿入部33から脱落しない。このため、確実に挿入部33と共にニトロセルロース膜Nを管体2内に挿入したり管体2内から取り出すことができ、ニトロセルロース膜Nが管体2内から取り外し難くなる事態が回避される。
以上のことから、検査を容易に行うことができる。
またニトロセルロース膜Nが管体2内に挿入された状態では、環状枠体38と支持板37による挟み込みでニトロセルロース膜Nが常に拡がった状態とされるため、ニトロセルロース膜Nの各部位に液体Lが均等に浸透する。このため、ニトロセルロース膜Nの各部位に固定された物質を、液体L中の物質と反応させることができる。
また第3実施形態においても、蓋体31へのニトロセルロース膜Nの取り付けや、管体2への蓋体31の着脱や、管体2に対する液体Lの投入・排出など、高度な技術を要しない作業により、尿における抗体の有無を検査できる。また管体2が尿・二次抗体液・洗浄液を貯留する容器として共用されるので、検査に要する手間やコストを軽減できる。
なお第3実施形態では、環状枠体38の一側縁38bと支持板37の一側縁37bとを薄肉のヒンジで接合する例を示したが、環状枠体38を回動可能とするヒンジは、上記薄肉のヒンジに限られない。例えば、環状枠体38の一側縁38bと支持板37の一側縁37bとを回動可能に結合する軸体(図示せず)と、軸体の周りに装着されて、環状枠体38を閉方向に付勢するコイルバネ(図示せず)とが、ヒンジとして設けられてもよい。この場合には、コイルバネの付勢により、環状枠体38が開方向に回動することが防止されるので、環状枠体38や支持板37がニトロセルロース膜Nを挟み込んだ状態が安定して維持される。なお図16(a)に対応する作業では、コイルバネの力に抗して、環状枠体38を開方向に回動させて、ニトロセルロース膜Nを支持板37の凹部39に載置することが行われる。なお上記例と異なり、第3実施形態で示したように環状枠体38と支持板37とを薄肉のヒンジで接合すれば、検査キット30の部品点数を少なく抑えることができる。このため、検査キット30の製造に要するコストや手間を軽減できる。
また必ずしも、環状枠体38と支持板37とをヒンジで一体に接合する必要はなく、環状枠体38と支持板37とを別体にしてもよい。この場合には、環状枠体38と支持板37とでニトロセルロース膜Nを挟み込むために、以下の作業(a),(b)が順次行われる。
(a)ニトロセルロース膜Nを支持板37の凹部39に載置する。
(b)環状枠体38の表面38aが支持板37の表面37aに沿うように、環状枠体38を支持板37の表面37aに載置して、突起40と孔41とを係合させる。
以上のように環状枠体38と支持板37とを別体にする場合には、ヒンジが省略されるので、検査キット30の部品点数をより少なく抑えることができる。したがって検査キット30の製造コストや製造手間を一層軽減できる。
また、支持板37に凹部39を形成せずに、支持板37の表面を平らなものとしてもよい。このようにしても、環状枠体38と支持板37とでニトロセルロース膜Nを挟み込むことができる。なお図示例のように支持板37に凹部39を形成すれば、ニトロセルロース膜Nの位置決めができるので、環状枠体38や支持板37でニトロセルロース膜Nを挟み込む作業を円滑に進めることができる。また、ニトロセルロース膜Nにおける抗原Kやコントロール試薬Cの固定位置を、確実に開口50から露出させて液体Lに浸漬させることができる。
また図15や図16では、支持板37や環状枠体38の四隅に、突起40や孔41を形成する例を示したが、突起40や孔41は、四隅以外の位置に形成されてもよく、支持板37や環状枠体38の周回りに延びるよう形成されてもよい。また図示例とは逆に、支持板37に孔41を形成し、環状枠体38に突起40を形成してもよい。
また、突起40や孔41は支持板37や環状枠体38に形成されなくてもよい。この場合でも、支持板37や環状枠体38の幅を管体2の内径と同等にすれば、挿入部33を管体2内に挿入した状態において、管体2の内面が支持板37や環状枠体38の外縁に当接するので、ニトロセルロース膜Nを支持板37や環状枠体38で挟み込んだ状態を維持できる。なお図示例のように突起40や孔41を形成する場合には、これらの係合でニトロセルロース膜Nの挟み込みを維持できるので、支持板37や環状枠体38の幅を、管体2の内径よりも小さくすることができる。このため、支持板37や環状枠体38を管体2内に挿入することや管体2内から取り出すことを、円滑に行うことができる。
本発明は、上記の第1〜第3実施形態に限定されず、特許請求の範囲において種々改変することができる。
例えば、第1〜第3実施形態では、蓋体3,11,31の頭部5,12,32(図1,図7,図12,図13,図14)が円板状を呈する例を示したが、頭部5,12,32の形状は、円板状に限らず、管体2の開口4よりも大きな横断面を有する任意の形状に設定され得る。
また第2実施形態や第3実施形態では、環状凹部16,36(図9,図17)の内側面に形成される螺子溝と、管体2の一端の外側面に形成される螺子溝とを螺合することで、頭部12,32を管体2の一端に固定する例を示したが、頭部12,32の固定は、上記螺子溝以外の公知の手段によって実現されてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、図6のステップS102,S108,S114に対応する工程で、液体L中に含まれる物質と、ニトロセルロース膜Nの一端側に固定される物質とを反応させるべく、頭部5,12,32を土台として管体2を立設する例を示したが(図4,図10,図18)、図6のステップS105,S111に対応する工程でも、洗浄液でニトロセルロース膜Nの一端側を洗浄すべく、図4,図10,図18に示すように頭部5,12,32を土台として管体2を立設させてもよい。
また第1〜第3実施形態の検査キット1,10,19,20,30(図1,図7,図12,図13,図14)では、凹凸のある地面に管体2を安定して立設させるべく、頭部5,12,32の端面8,15,35から棒状体を突出させて、この棒状体を地面に突き刺すようにしてもよい。
また図6のステップS102,S105,S108,S111,S114に対応する工程では、(1)〜(5)の反応やニトロセルロース膜Nの洗浄を促進すべく、検査キット1,10,19,20,30を振ったり回転させることで、管体2内の液体Lを揺らしてもよく、或いは、管体2を横向きにして載置することで、管体2の長手方向全体に液体Lが貯留するようにしてもよい。
また、第1〜第3実施形態の検査キット1,10,19,20,30(図1,図7,図12,図13,図14)は、図20に示すブロック60をさらに備えるものであってもよい(図20は、第2実施形態の検査キット10(図7)にブロック60を設ける例を示している)。ブロック60は、抗原Kやコントロール物質Cがニトロセルロース膜Nの他端側に固定される場合に使用される。
ブロック60は、管体2側に配置される平坦な端面61と、その反対側にある平坦な端面62とを有しており、端面61に形成された凹部63に管体2の他端が挿入されることで、管体2の他端に取り付けられる。ブロック60が管体2の他端に取り付けられた状態では、端面62が管体2の長手方向に対して垂直に広がることで、ブロック60を土台として管体2を立設させることができる。
上記のブロック60が使用される場合には、図6のステップS102,S108,S114に対応する工程で、管体の他端にブロック60を取り付けて、ブロック60を土台として管体2を立設させることが行われる。このようにすれば、管体2の他端側に液体Lが貯留するので、液体L中の物質(抗体、二次抗体、酵素基質など)と、ニトロセルロース膜Nの他端側に固定される物質(抗原K、抗原・抗体複合体、抗原・抗体・二次抗体複合体など)とを確実に反応させることができる。また図6のステップS105,S111に対応する工程においても、ニトロセルロース膜Nの他端側を洗浄すべく、ブロック60を土台として管体2を立設させて、管体2の他端側に洗浄液を貯留させてもよい。また、凹凸のある地面に対して管体2を安定して立設させるべく、ブロック60の端面62から棒状体を突出させて、この棒状体を地面に突き刺すようにしてもよい。
また第2実施形態や第3実施形態の検査キット10,19,20,30(図7,図12,図13,図14)では、抗原Kやコントロール物質Cの固定位置を特定するためのマーカーが、挿入部13,33に形成されてもよい。例えば、第2実施形態の検査キット10,19,20(図7,図12,図13)では、ニトロセルロース膜Nを第1突出片18,18の間に挟み込ませた状態で、抗原Kやコントロール物質Cの側方に位置する第1突出片18,18の範囲にマーカーを形成すれば、抗原Kやコントロール物質Cの位置を特定できる。また第3実施形態の検査キット30(図14)では、ニトロセルロース膜Nを環状枠体38と支持板37とで挟み込んだ状態で、抗原Kやコントロール物質Cの側方に位置する環状枠体38の外面にマーカーを形成すれば、抗原Kやコントロール物質Cの位置を特定できる。
また第1〜第3実施形態では、抗原Kやコントロール物質Cを固定する膜体として、ニトロセルロース膜Nを使用する例を示したが、ニトロセルロース膜Nの代わりに、従来の血清診断法で使用されているフィルターペーパー等の膜体が使用されてもよい。なお抗原Kを尿中の抗体と十分接触させるために、ニトロセルロース膜Nを使用することが好ましい。
また、検査対象とされる標的物質は、上記実施形態に示した結核菌の抗原Kに対する抗体に限られない。ニトロセルロース膜Nやフィルターペーパー等の膜体に固定される物質や、管体2内に投入される液体Lが適宜選択されることで、尿に含有され得る上記抗体以外の蛋白や微生物や寄生虫を標的物質として、これらが尿に含まれるか否か検査することも可能である。
また第1〜第3実施形態の検査キット1,10,19,20,30(図1,図7,図12,図13,図14)では、管体2の内面や、挿入部6,13,33の外面に、尿中の標的物質が付着することを防止するコーティング材を塗布してもよい。このようにすれば、管体2の内面や挿入部6,13,33の外面に標的物質が付着しないので、尿に含まれる標的物質の多数を、ニトロセルロース膜Nやフィルターペーパーに固定される物質と反応させることができる。このため、尿に標的物質が含まれることを高感度に検出できる。例えば上記実施形態で示したように、標的物質が、MPB64抗原に対する特異IgG抗体とされる場合には、上記のコーティング材として、スキムミルクやウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、BSA)の希釈液が使用され得る。
1,10,19,20,30 検査キット、
2 管体、
3,11,31 蓋体、
4 管体の開口、
5,12,32 頭部、
6,13,33 挿入部、
7,14,34 頭部の端面(第1端面)、
8,15,35 頭部の端面(第2端面)、
9 スリット、
16,36 頭部の環状凹部、
17,37 支持板、
18 第1突出片、
21 第2突出片、
37a 支持板の表面、
37b 支持板の一側縁、
38 環状枠体、
38a 環状枠体の表面、
38b 環状枠体の一側縁、
38c 環状枠体の内縁部、
39 支持板の凹部、
40 支持板の突起、
41 環状枠体の孔、
50 環状枠体の内側の開口、
60 ブロック、
61 ブロックの端面(第3端面)、
62 ブロックの端面(第4端面)、
C コントロール物質(結核菌の抗原に対する抗体)、
K 抗原(反応物質)、
L 液体、
N ニトロセルロース膜(膜体)、
S 第1突出片と第2突出片との間の隙間

Claims (12)

  1. 尿における標的物質の有無を検査するための検査キットであって、
    一端に開口が形成される筒状を呈し、前記開口を通じて尿などの液体が内部に投入される管体と、
    前記管体の一端に着脱自在に取り付けられる蓋体とを備え、
    前記蓋体は、前記管体の開口よりも大きな断面を有する頭部と、前記管体の開口から前記管体内に挿入可能な挿入部とを備え、
    前記挿入部は、前記頭部から延びる支持板と、前記支持板の表面から突出する一対の第1突出片とを備え、前記一対の第1突出片は、前記支持板の幅方向に間隔をあけて形成されており、
    前記標的物質と反応する反応物質が表面に固定された膜体の表面を上側に向けた状態で、前記膜体が前記一対の第1突出片に挟み込まれるように前記支持板の表面に載置されることで、前記膜体が前記挿入部に保持され、
    前記管体の一端への前記蓋体の取り付けが、前記挿入部を前記管体の開口から前記管体内に挿入するように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内に挿入されて、前記一対の第1突出片の間から露出する前記膜体の表面が前記管体内の尿に浸漬され、
    前記管体の一端からの前記蓋体の取り外しが、前記管体内から前記挿入部を引き出すように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内から引き出される検査キット。
  2. 前記一対の突出片の横断面は、前記支持板の表面に対して垂直に延びた後、前記支持板の幅方向内側に屈曲する形状を呈する請求項に記載の検査キット。
  3. 前記一対の第1突出片は、前記支持板の全長に亘って延びており、
    前記蓋体が前記管体の一端に取り付けられた状態では、前記支持板や前記一対の第1突出片は、前記管体の他端に当接する請求項又はに記載の検査キット。
  4. 前記挿入部は、前記支持板の長手方向先端側において前記支持板の表面から突出する第2突出片をさらに備え、
    前記第2突出片は、前記支持板の幅方向に延びるものであり、前記支持板の先端から視て前記一対の第1突出片の間に位置する請求項乃至のいずれかに記載の検査キット。
  5. 尿における標的物質の有無を検査するための検査キットであって、
    一端に開口が形成される筒状を呈し、前記開口を通じて尿などの液体が内部に投入される管体と、
    前記管体の一端に着脱自在に取り付けられる蓋体とを備え、
    前記蓋体は、前記管体の開口よりも大きな断面を有する頭部と、前記管体の開口から前記管体の内部に挿入可能な挿入部とを備え、
    前記挿入部は、前記頭部から延びる支持板と、当該支持板の表面に載置可能な環状枠体とを備え、
    前記標的物質と反応する反応物質が固定された膜体の表面を上側に向けた状態で、前記膜体を前記支持板の表面に載置した後、前記環状枠体を前記支持板の表面に載置することで、前記膜体が、前記支持板と前記環状枠体とで挟み込まれて、前記挿入部に保持された状態となり、
    前記管体の一端への前記蓋体の取り付けが、前記挿入部を前記管体の開口から前記管体内に挿入するように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内に挿入されて、前記環状枠体の内側の開口から露出する前記膜体の表面が前記管体内の液体に浸漬され、
    前記管体の一端からの前記蓋体の取り外しが、前記管体内から前記挿入部を引き出すように行われることで、前記挿入部に保持された前記膜体も前記管体内から引き出される検査キット。
  6. 前記頭部は、前記管体側に配置される第1端面と、前記第1端面の反対側にある第2端面とを有し、
    前記蓋体が前記管体の一端に取り付けられた状態では、前記第2端面が、前記管体の長手方向に対して垂直に広がることで、前記頭部を土台として前記管体を立設させることが可能である請求項1乃至のいずれかに記載の検査キット。
  7. 前記挿入部の外面や前記管体の内面には、前記標的物質が付着することを防止するコーティング材が塗布される請求項乃至のいずれかに記載の検査キット。
  8. 前記管体の他端に着脱自在に取り付けられるブロックをさらに備え、
    前記ブロックは、前記管体側に配置される第3端面と、前記第3端面の反対側にある第4端面とを有し、
    前記第3端面に形成される凹部に前記管体の他端が挿入されることで、前記ブロックが前記管体の他端に取り付けられ、
    前記ブロックが前記管体の他端に取り付けられた状態では、前記第4端面が前記管体の長手方向に対して垂直に広がることで、前記ブロックを土台として前記管体を立設させることが可能である請求項1乃至のいずれかに記載の検査キット。
  9. 前記標的物質は、結核菌の抗原に対する抗体であり、
    前記膜体の表面には、前記反応物質としての前記抗原が固定される請求項1乃至のいずれかに記載の検査キット。
  10. 前記膜体の表面には、前記結核菌の抗原に対する抗体がさらに固定される請求項に記載の検査キット。
  11. 請求項又は10に記載の検査キットを用いて、結核菌の抗原に対する抗体が尿に含まれるか否かを検査する方法であって、
    尿を前記管体内に投入する第1工程と、
    前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の尿に浸漬させる第2工程と、
    前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第3工程と、
    前記管内の尿を排出して、洗浄液を前記管体内に投入する第4工程と、
    前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の洗浄液に浸漬させて、前記膜体に付着している未反応の前記抗体を洗い流す第5工程と、
    前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第6工程と、
    前記管内の洗浄液を排出して、前記抗体に対する二次抗体であって酵素で標識された二次抗体を含む二次抗体液を前記管体内に投入する第7工程と、
    前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の二次抗体液に浸漬させる第8工程と、
    前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第9工程と、
    前記管内の二次抗体液を排出して、洗浄液を前記管体内に投入する第10工程と、
    前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の洗浄液に浸漬させて、前記膜体に付着している未反応の二次抗体を洗い流す第11工程と、
    前記蓋体の取り外し作業により、前記膜体を前記管体内から引き出す第12工程と、
    前記管内の洗浄液を排出して、前記酵素との反応で発色する発色基質を含有する発色液を前記管体内に投入する第13工程と、
    前記蓋体の取り付け作業により、前記膜体を前記管体内の発色液に浸漬させる第14工程と、を有する検査方法。
  12. 前記第1工程では、10cc以上の尿が前記管体内に投入される請求項11に記載の検査方法。
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