JP6741615B2 - 車両制御装置 - Google Patents
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Description
図1は本発明の実施形態に係る車両制御装置1の概略図である。
パワーステアリング装置70は、いわゆるインテグラル型の液圧パワーステアリング装置に後述する電動モータとしての中空モータ10を搭載することで、液圧とモータトルクとによる2系統の操舵アシスト機能を備えたものである。
パワーステアリング装置70は、ステアリングホイール6の操舵操作を一対の操舵輪(前輪)7L,7Rに伝達する操舵機構2と、操舵機構2の一部を内部に収容するハウジング3(図2参照)と、操舵機構2に操舵力を付与して操舵操作を補助する液圧アシスト機構(油圧アクチュエータ)4及び電動アシスト機構5と、を備えている。
なお、本実施形態のポンプ9は、車両71に搭載されたエンジン(図示省略)により駆動されるエンジン駆動ポンプとして構成されている。
液圧アシスト機構4は、それ単体で、すなわち電動アシスト機構5による操舵アシスト力の付与がない状態でも、運転者の操舵を十分に補助できる操舵アシスト力を付与する特性に設定されている。
そして、電動アシスト機構5は、中空モータ10が生成した回転駆動力を操舵アシスト力として操舵機構2に付与する。
操舵機構2は、操舵軸16と、操舵軸16の他端側に接続されて操舵軸16の回転を各操舵輪7L,7Rに伝達する伝達機構17と、を有する。
操舵軸16の一端側は、ハウジング3外に臨んでステアリングホイール6に接続され、他端側はハウジング3内に収容される。
操舵軸16は、一端側がステアリングホイール6に一体回転可能に接続された入力軸18と、一端側が第1トーションバー(ロータリバルブ用トーションバー)20を介して入力軸18の他端側に相対回転可能に接続された出力軸19と、を備えている。
換言すれば、操舵軸16を構成する入力軸18は、第2トーションバー23を介して互いに接続される、第2トーションバー23よりもステアリングホイール6側に設けられた第1入力軸21と、第2トーションバー23よりも操舵輪7L,7R側に設けられた第2入力軸22を備える。
また、第1入力軸21は、ステアリングホイール6側の一端部21aに比べて他端部21bが小径に形成され、他端部21bが第2入力軸22の一端部22aに形成された開口凹部22c内に収容されている。
さらに、第1入力軸21の他端部21bの外周面と第2入力軸22の開口凹部22cの内周面との間には、ニードルベアリング24が設けられている。このニードルベアリング24を介して、第1入力軸21は第2入力軸22に回転可能に支持されている。
出力軸19は、中空状に形成され、内部に第1トーションバー20の大部分を収容している。
第1トーションバー20は、その捩れ方向や捩れ角に応じて後述するロータリバルブ30の流路や流路断面積を変動させる機能を有し、ロータリバルブ用トーションバーとして構成されている。
一方、第2トーションバー23は、トルクセンサ用トーションバーとして構成されており、図1に示すトルクセンサ11は、第2トーションバー23の捩れ量に応じて操舵トルクTrを検出する。
ボールねじ機構25は、外周に螺旋状のボールねじ溝(出力軸側ボールねじ溝)25aが形成されたねじ軸としての出力軸19と、出力軸19の外周側に配置され、内周にボールねじ溝23aに対応する螺旋状のボールねじ溝(ナット側ボールねじ溝)25bが形成されたナット部材としての筒状のピストン31と、両ボールねじ溝25a,25b内に収容された複数のボール25cと、を有する。
セクタシャフト26は、操舵軸16の回転軸線Xに略直交するように配置されている。
このピットマンアームは、セクタシャフト26の回転に伴い車体の幅方向(左右方向)へ引っ張られることで、両操舵輪7L,7Rの向きを変更する。
ステアリングギヤ機構としてボール・ナット型を採用することで、伝達機構17の特性として高減速比、高強度が得られ、例えば大型ピックアップトラック、商用トラック、バスなどの大型、高重量の車両への適用が可能となる。
但し、ステアリングギヤ機構は、ボール・ナット型に限定されず、ステアリングシャフトの先端に取り付けたピニオンギヤにラックギヤを噛み合わせるラック・ピニオン型のステアリングギヤ機構とすることができる。
なお、第1ハウジング27と第2ハウジング28は、操舵軸16の回転軸線Xに対する周方向の所定位置に配置される図外の複数のボルトをもって互いに締結されている。
液圧アシスト機構4は、第1ハウジング27のシリンダ部27aとピストン31とによって構成されるパワーシリンダ29と、パワーシリンダ29の1対の液圧室である第1,第2油圧室29a,29bにオイルを供給するロータリバルブ30と、を備えている。
これにより、ピストン31がシリンダ部27aにおいて安定した姿勢に維持される。
そして、シール部材31dによって、シリンダ部27aの内部空間が、シール部材31dよりもステアリングホイール6に近い側の第1油圧室29aと、ステアリングホイール6から遠い側の第2油圧室29bと、に仕切られている。
すなわち、パワーシリンダ29は、ピストン31によって仕切られた第1,第2油圧室29a,29b(一対の液圧室)を有する。
なお、シャフト収容部27bには第1油圧室29a内のオイルが導かれ、第1油圧室29aへのオイルの供給に際して歯部26a,31a間が潤滑される。
これにより、ステアリングホイール6が中立である場合、ポンプ9からロータリバルブ30に吐出されたオイルが第1,第2油圧室29a,29bのいずれにも供給されることなくリザーバタンク8に排出される。
すなわち、ロータリバルブ30は、ステアリングホイール6が任意の一方向へ操舵された場合、第1油圧室29aを導入ポート32に第1給排通路34を介して接続し、第2油圧室29bを排出ポート33に第2給排通路35を介して接続する。これにより、第1油圧室29aにオイルが供給され、第2油圧室29bからはオイルが排出される。
換言すれば、ロータリバルブ30は、第1トーションバー20の捩れ角が大きくなるほど、各油圧室29a,29bへのオイルの供給量及び各油圧室29a,29bからのオイルの排出量を増大させる。
前記モータ部は、第2入力軸22に結合部材39を介して一体回転可能に固定された円筒状のモータロータ37と、モータロータ37の外周側に所定隙間を介して配置された円筒状のモータステータ38と、を備える。
また、第1モータハウジング部40は、開口部の外周側にフランジ部40bを有し、このフランジ部40bに円板状のアダプタ部材42がボルト43によって締結固定されている。
ここで、アダプタ部材42は、ボルト44によってハウジング3の第2ハウジング28とも締結固定されている。したがって、第1モータハウジング部40は、アダプタ部材42を介して第2ハウジング28に連結される。
挿入孔40dの内周側には、結合部材39のステアリングホイール6側の一端部39aが配置され、この一端部39aの外周面と挿入孔40dの内周面との間には、第1ボールベアリング45が設けられている。第1モータハウジング部40は、第1ボールベアリング45を介して結合部材39の一端部39aを回転可能に支持する。
また、蓋部40cのステアリングホイール6側の端面には、円形凹状の凹部40eが形成され、凹部40e内には、第1レゾルバ(第1角度センサ)46が配置されている。
そして、第1レゾルバ46は、レゾルバステータ46bによってレゾルバロータ46aの回転位置を検出することで、第1入力軸21の回転角、すなわちステアリングホイール6の操舵角θhを検出する。
このカバー部材47は、第1モータハウジング部40にボルト48によって締結固定されている。
また、カバー部材47の軸心位置には、第1入力軸21を挿入する挿入孔47aが形成されている。この挿入孔47aと第1入力軸21との間に、挿入孔47aと第1入力軸21との間をシールするシール部材49が設けられている。
第2モータハウジング部41は、第2ボールベアリング50を介して結合部材39の他端部37bを回転可能に支持する。
第2レゾルバ51は、結合部材39を介して第2入力軸22の外周に一体回転可能に固定された円環状のレゾルバロータ51aと、外周が凹部41cの内周に固定された円環状のレゾルバステータ51bと、を有する。
なお、この第2入力軸22の回転角は、中空モータ10のモータロータ37の回転角と同等である。よって、第2レゾルバ51は、モータロータ37の回転角であるモータ回転角θmを検出するモータ回転角センサとしても機能する。
制動装置90は、操舵輪である左右の一対の前輪7L,7R及び左右一対の後輪91L,91Rに制動力を付与するための液圧式の制動力付与機構である。
制動装置90は、マスタシリンダ92及びブースタ93を有するブレーキ液圧発生装置94と、ブレーキ液圧制御装置95とを備えている。
なお、ブレーキ用コントロールユニット97の機能と、パワステ用コントロールユニット13の機能とを備える1つのコントロールユニットで、ブレーキ液圧制御装置95及び中空モータ10を制御することができる。
ブレーキ液圧制御装置95は、ブレーキ液圧を左前輪7L及び右後輪91Rのホイールシリンダ96a,96dに供給するための第1液圧系統95aと、ブレーキ液圧を右前輪7R及び左後輪91Lのホイールシリンダ96b,96cに供給するための第2液圧系統95bとからなる2系統の液圧回路を備えている。
ブレーキ用コントロールユニット97は、ブレーキ液圧制御装置95の各電磁開閉弁及び電動モータ103を制御することで、各ホイールシリンダ96a,96b,96c,96dに供給するブレーキ液圧を個別に増圧、減圧または保持する制動力制御を行う。
パワステ用コントロールユニット13は、各種運転情報に基づき中空モータ10のトルク指令信号Tm(モータ駆動指令信号)を演算するトルク指令信号演算部61と、トルク指令信号演算部61が演算したトルク指令信号Tmに基づき中空モータ10を駆動制御するモータ駆動部62と、制動装置指令部63を備える。
アシストトルク演算部(モータ駆動指令信号演算部)64は、トルクセンサ11が検出した操舵トルクTrと、図外のディファレンシャルギア等に設置された車速センサが検出した車速Vsとに基づきトルク指令算出マップを参照し、トルク指令信号Tm(モータ駆動指令信号)を演算する。
トルク指令算出マップは、操舵トルクTrが零から増えるにしたがって操舵アシスト力を徐々に増やし、操舵トルクTrが設定値を超える高操舵トルク領域では操舵トルクTrの増大に応じて操舵アシスト力を徐々に減らす特性を有している。
すなわち、パワステ用コントロールユニット13は、車速Vsが所定の中高速以上の場合、中空モータ10による操舵アシストを行わず、液圧アシスト機構4が出力する操舵アシスト力のみによって操舵が補助される。
つまり、制動装置90が1対の操舵輪(前輪)7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与することによって車両71に回転モーメントを発生させるとき、制動力の変化による操舵反力によってステアリングホイール6が振動すると、運転者に不快感を与える。
これにより、制動装置90が1対の操舵輪(前輪)7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与することによって車両71に回転モーメントを発生させるときに、ステアリングホイール6の振動が抑制され、運転者の操舵感を向上させることができる。
振動検出部65aは、制動装置90が1対の操舵輪(前輪)7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与するときに、操舵輪7L,7R側から操舵軸16側に伝達される振動(逆入力)を検出する。
そして、加算演算部65cは、アシストトルク演算部64が演算したトルク指令信号Tmにトルク補正指令信号ΔTmを加算した結果を最終的なトルク指令信号Tmとして、モータ駆動部62に出力する。
まず、電流指令演算部77は、トルク指令信号Tmと、第2レゾルバ(第2角度センサ)51が検出したモータ回転角θmに基づき、角度‐速度算出処理部84で算出されたモータ回転数Nと、からd軸,q軸電流指令Idref,Iqrefを演算する。
そして、減算演算部80a,80bは、d軸,q軸電流指令Idref,Iqrefとd軸,q軸実電流Idc,Iqcとの差分(エラー分)を求める。
2相3相変換器85は、d軸,q軸電圧指令Vdref,Vqrefとモータ回転角θmとから中空モータ10の各相、つまり、u相,v相,w相の電圧指令Vuref,Vvref,Vwrefを算出する。
インバータ回路83は、スイッチング素子83a−83fを3相ブリッジ接続して構成される。
上記の構成により、モータ駆動部62は、トルク指令信号Tm(目標アシストトルク)に基づき中空モータ10をPWM制御する。
油圧アクチュエータ異常判断部63aは、液圧アシスト機構4が正常に操舵機構2に操舵力を付与しているか否かを、操舵トルクTr、車速Vs、中空モータ10の駆動トルク、操舵角速度Δθhなどの操舵条件に基づき判断する。
また、操舵輪を2軸以上有する車両71では、それら操舵輪の全て又は一部において、左右夫々に異なる制動力を付与する構成とすることができる。
つまり、制動装置指令部63は、液圧アシスト機構4に異常が生じ、中空モータ10による操舵アシスト力だけが操舵機構2に付与されるときに、運転者がステアリングホイール6を操作して車両姿勢を充分に制御できるように、操舵方向に対応する回転モーメントを制動力制御によって発生させる。
また、液圧アシスト機構4が異常で正常であるときよりも操舵アシスト力が小さくなるときに、制動装置指令部63は、前後輪の制動力配分における前輪7L,7R側への制動力分配を、液圧アシスト機構4が正常であるときよりも小さくすることで、制動状態における前輪荷重の増加に伴う操舵力の増加を抑制することができる。これによっても、運転者によるステアリング操作の負担が軽減されし車両姿勢の適正化が図られる。
図6のフローチャートは、制動装置指令部63を構成する指令出力部63bによる制動制御指令の内容を示す。
そして、液圧アシスト機構4の異常が検出されている場合、つまり、液圧アシスト機構4が操舵機構2に操舵アシスト力を正常に付与できない場合、指令出力部63bは、ステップS120に進む。指令出力部63bは、ステップS120で、車両71の旋回方向に応じて操舵輪7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与して車両71に回転モーメントを発生させることを要求する制動指令信号を、ブレーキ用コントロールユニット97に出力する。
指令出力部63bは、ステップS121で、トルクセンサ11の出力に基づき、操舵トルク方向が右方向(右旋回)であるか否かを判断する。
そして、指令出力部63bは、操舵トルク方向が左方向である場合、ステップS124に進み、左旋回モーメントを増加させるための制動指令信号、つまり、左側の操舵輪7L(及び左側の後輪91L)の制動力を右側の操舵輪7R(及び右側の後輪91R)に比べて増加させる指令信号を、ブレーキ用コントロールユニット97に出力する。
換言すれば、ブレーキ用コントロールユニット97は、操舵操作量に応じて、操舵操作量を助長するように、操舵輪7L,7Rの夫々への制動力分配を制御する。
そして、指令出力部63bは、1対の操舵輪7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与することによって回転モーメントを発生させるための指令信号をブレーキ用コントロールユニット97に出力しない。
指令出力部63bは、ステップS210で、油圧アクチュエータ異常判断部63aが液圧アシスト機構4の異常を検出しているか否かを判断する。
そして、液圧アシスト機構4が正常である場合、つまり、液圧アシスト機構4が操舵機構2に操舵アシスト力を正常に付与できる場合、指令出力部63bは、ステップS220に進み、通常の前後配分比で制動制御を行うことを指令する制動指令信号をブレーキ用コントロールユニット97に出力する。
指令出力部63bから制動力の前後配分比の指令を受けたブレーキ用コントロールユニット97は、指令に応じた分配比で、前輪7L,7R、後輪91L,91Rに制動力が付与されるように制御する。
油圧アクチュエータ異常判断部63aは、ステップS311で、第1レゾルバ(第1角度センサ)46が検出したステアリングホイール6の操舵角θhと、第2レゾルバ(第2角度センサ)51が検出したモータ回転角θmと、第2トーションバー23の剛性RI2とに基づき、操舵トルクTrs(Trs=(θh−θm)×RI2)を演算する。
所定車速Vsthは、液圧アシスト機構4に異常が発生したときに、運転者がステアリングホイール6の操作によって充分な車両姿勢制御を行えなくなる速度として予め適合されていて、例えば、Vsth=5km/hである。
ステアリングホイール6の操舵角θhが中立を含む所定角度範囲内である場合、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、ステップS314に進み、操舵トルクTrsが第1所定値Tr1以上であるか否かを判断する。
そして、操舵トルクTrsが第1所定値Tr1以上である場合、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、ステップS315に進み、液圧アシスト機構4に異常が発生していると判断する。
したがって、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、液圧アシスト機構4の異常の有無を、液圧アシスト機構4におけるオイル圧をセンサで検出することなく判断できる。
図10のフローチャートのステップS321−ステップS323、ステップS325は、図9のフローチャートのステップS311−ステップS313、ステップS315と同様な処理を実施し、ステップS324の処理内容が図9のフローチャートのステップS314と異なる。
そこで、ステップS321−ステップS323、ステップS325の処理内容の説明を省略し、以下では、ステップS324の処理内容を説明する。
中空モータ10による操舵アシスト力が付与されている場合は、その分だけ操舵トルクTrsが小さくなるため、油圧アクチュエータ異常判断部63aが、操舵トルクTrsと第1所定値Tr1との比較に基づき診断する構成では、中空モータ10が操舵アシスト力を付与するときに診断精度が低下する可能性がある。
そして、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、操舵トルクTrsに中空モータ10のモータトルクTrmを加算した結果が、第2所定値Tr2以上になっているときに、ステップS325に進み、液圧アシスト機構4に異常が発生していると判断する。
なお、第2所定値Tr2は、第1所定値Tr1と同等の値、若しくは、第1所定値Tr1と異なる値(第1所定値Tr1よりも小さい値)とすることができる。
図11のフローチャートのステップS331−ステップS332、ステップS337は、図10のフローチャートのステップS321−ステップS323、ステップS325と同様な処理を実施し、ステップS334−ステップS336の処理内容が図10のフローチャートと異なる。
そこで、以下では、ステップS331−ステップS333、ステップS337の説明を省略し、ステップS334−ステップS336の処理内容を説明する。
第3所定値Tr3は、第1所定値Tr1よりも小さい値であり、例えば、Tr2=10Nmである。
したがって、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、液圧アシスト機構4の異常を判断する操舵トルクTrs域の下限をより低くしても、液圧アシスト機構4の異常を誤診断することが抑制される。
操舵トルクTrsに中空モータ10のモータトルクTrmを加算した結果が、第3所定値Tr3以上である場合、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、ステップS335に進み、ステアリングホイール6の操舵角θhに基づく操舵角速度Δθhが設定角速度未満であるか否かを判断する。
操舵角速度Δθhが設定角速度未満である場合、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、ステップS336に進み、操舵トルクTrsに中空モータ10のモータトルクTrmを加算した結果が第3所定値Tr3以上であって、運転者による操舵力が規定よりも高い状態であるのに、操舵角速度Δθhが設定角速度未満である状態が所定時間以上継続しているか否かを判断する。
つまり、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、液圧アシスト機構4が正常であれば、操舵角速度Δθhが設定角速度以上になる操舵トルクTrsの条件であるのに、操舵角速度Δθhが設定角速度未満である状態が所定時間以上継続している場合に、液圧アシスト機構4に異常が発生していると判断する。
なお、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、ステップS312、ステップS322、ステップS332における所定車速Vsthを全て同じ車速とすることができる。また、油圧アクチュエータ異常判断部63aは、ステップS312、ステップS322、ステップS332における所定車速Vsthのうちの一部を他と異なる車速とし、更に、ステップS322、ステップS332における所定車速Vsthを全て異なる車速とすることができる。
つまり、振動検出部65aは、制動装置90が操舵輪7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与することによって車両71に回転モーメントを発生させるときに、図12のフローチャートに示す処理を実施することで、操舵輪7L,7R側から操舵軸16側に制動力の変化による操舵反力が伝達されているか否かを判断する。
振動検出部65aは、制動力制御によって車両71に回転モーメントを発生させていない場合、ステップS419に進み、車両71に回転モーメントを発生させるための制動力制御に伴う操舵輪7L,7Rへの操舵反力の入力(外乱)はないと判断する。
振動検出部65aは、第1レゾルバ(第1角度センサ)46が検出したステアリングホイール6の操舵角θhと、第2レゾルバ(第2角度センサ)51が検出したモータ回転角θmと、第2トーションバー23の剛性RI2とに基づき、操舵トルクTrs(Trs=(θh−θm)×RI2)を演算する。
操舵トルクTrsの規定値は、車両特性などに基づき予め適合された値である。
振動検出部65aは、操舵トルクTrsが規定値未満である場合、ステップS419に進み、制動力制御によって車両71に回転モーメントを発生させている状態であるものの、操舵輪7L,7Rへの操舵反力の入力(外乱)はないと判断する。
更に、振動検出部65aは、ステップS405に進み、第2レゾルバ51が検出するモータ回転角θmの単位時間当たりの変化量(角速度)Δθm(Δθm=(θm(n)−θm(n-1))/サンプリング周期)を演算する。
なお、第1レゾルバ46,第2レゾルバ51は、操舵角θh,モータ回転角θmを、ステアリングホイール6の中立から右方向を正の値、左方向を負の値として検出するものとする。
そして、振動検出部65aは、Δθhが負でかつΔθmが負である場合、ステップS407に進み、モータ回転角θmが操舵角θhよりも小さい(θm<θh)か否かを判断する。
操舵角θhは第2トーションバー23のステアリングホイール6側での回転角で、モータ回転角θmは第2トーションバー23の操舵輪7L,7R側での回転角である。
トーションバーはトルク入力によってねじれるので、入力側の回転角S1の変化に遅れて出力側の回転角S2が変化し、例えば、図13の時刻t2は、回転角S1及び回転角S2が共に左方向に変化している状態であるが、回転角S1が回転角S2に比べてより左方向の角度になるため、回転角S1が回転角S2に比べて小さくなる。
一方、振動検出部65aは、ステップS407で、モータ回転角θmが操舵角θh以上であることを検出した場合、ステップS409に進み、操舵輪7L,7R側からの逆入力が生じていない状態、つまり、ステアリングホイール6の操舵で操舵軸16が回されている状態(正入力)であると判断する。
そして、振動検出部65aは、Δθhが正でかつΔθmが正である場合、ステップS411に進み、モータ回転角θmが操舵角θhよりも大きい(θm>θh)か否かを判断する。
そこで、振動検出部65aは、ステップS411で、モータ回転角θmが操舵角θhよりも大きいことを検出した場合、ステップS412に進み、操舵輪7L,7R側からの逆入力が生じていると判断する。
また、振動検出部65aは、ステップS410で、Δθhが正でかつΔθmが正の条件を満たさないと判断すると、ステップS414に進み、前回(本ルーチンの前回実行時)の正逆入力判断で正入力が検出されていたか否かを判断する。
そして、操舵角θhとモータ回転角θmとが同じ方向に変化している正入力の状態から、操舵角θhとモータ回転角θmとが異なる方向に変化するようになるのは、ステアリングホイール6の操舵方向の切り替わりに因る場合と、操舵輪7L,7R側からの逆入力に因る場合とがある。
振動検出部65aは、ステップS415で、操舵角θhの変化方向がモータ回転角θmよりも先に切り替わったか否か、つまり、Δθhの正負反転がΔθmの正負反転よりも先に発生したか否かを判断する。
したがって、振動検出部65aは、ステップS415で操舵角θhの変化方向が先に切り替わったことを判断した場合、ステップS416に進み、ステアリングホイール6の操舵で操舵軸16が回されている正入力状態が継続していると判断する。
つまり、振動検出部65aは、操舵角θhとモータ回転角θmとが異なる方向に変化するようになったことを、ステアリングホイール6の操舵方向の切り替わりに因るものであると推定する。
また、振動検出部65aは、ステップS414で、前回(本ルーチンの前回実行時)の正逆入力判断で逆入力を検出していたと判断した場合、逆入力の変動による回転方向の切り替わりが生じたと推定してステップS418に進み、操舵輪7L,7R側からの逆入力が引き続き生じていると判断する。
振動抑制トルク演算部65bは、まず、ステップS510で、車両71の旋回方向に応じて操舵輪7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与し、車両71に回転モーメントを発生させている状態であるか否かを判断する。
ステップS520で、振動抑制トルク演算部65bは、操舵輪7L,7R側から操舵軸16への逆入力が発生しているか否か、換言すれば、逆入力によるステアリングホイール6の振動が発生しているか否かを判断する。
正入力であるか逆入力であるか否かは、前述した図12のフローチャートに示すようにして、振動検出部65aによって判別される。
振動抑制トルク演算部65bが演算したトルク補正指令信号ΔTmは、加算演算部65cに出力され、加算演算部65cは、アシストトルク演算部64が演算したトルク指令信号Tmにトルク補正指令信号ΔTmを加算した結果を最終的なトルク指令信号Tmとして、モータ駆動部62に出力する。
係るトルク補正指令信号ΔTmによるトルク指令信号Tmの補正により、操舵負荷が増して、逆入力による操舵角θhの変化が抑制され、結果、逆入力によるステアリングホイール6の振動が低減して、運転者の不快感が軽減される。
トルク補正指令信号ΔTmの絶対値を所定値以下に制限すれば、トルク指令信号Tmが過剰に補正されることで、運転者の操舵操作性が低下することを抑制できる。
図15のフローチャートは、振動抑制トルク演算部65bによるモータ角速度Δθmに基づくトルク補正指令信号ΔTmの演算処理を示す。
そして、操舵輪7L,7Rの夫々に異なる制動力を付与することによって車両71に回転モーメントを発生させる制動力制御が実施されている場合、振動抑制トルク演算部65bは、ステップS620に進む。
正入力であるか逆入力であるか否かは、前述した図12のフローチャートに示すようにして、振動検出部65aによって判別される。
振動抑制トルク演算部65bは、モータ角速度Δθmのハイパスフィルタ処理において、車両71のヨー応答、人間の操舵操作応答よりも高い周波数成分を減衰させない遮断周波数を設定する。
つまり、振動抑制トルク演算部65bは、車両71のヨー応答、人間の操舵操作応答よりも低い周波数帯の信号を減衰させることにより、トルク補正指令信号ΔTmによる補正の必要がない成分の補正を抑制することができる。
振動抑制トルク演算部65bがΔθmのハイパスフィルタ通過値hpf(Δθm)に基づき演算したトルク補正指令信号ΔTmは、加算演算部65cに出力され、加算演算部65cは、アシストトルク演算部64が演算したトルク指令信号Tmにトルク補正指令信号ΔTmを加算した結果を最終的なトルク指令信号Tmとしてモータ駆動部62に出力する。
なお、振動抑制トルク演算部65bは、モータ角速度Δθmに基づきトルク補正指令信号ΔTmを演算する場合も、運転者の操舵操作への影響を考慮して、トルク補正指令信号ΔTmが規定範囲を超えないように制限することができ、例えば、−1Nm≦ΔTm≦+1Nmを満たすようにトルク補正指令信号ΔTmを制限することができる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、制動装置90は、ブレーキペダル操作を電気的に検出し、当該検出結果に基づきコントロールユニット(コンピュータ)がアクチュエータを制御し摩擦ブレーキを作動させる、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤのシステムとすることができる。
また、上記実施形態では、角度センサとして、第1レゾルバ46及び第2レゾルバ51を用いるが、レゾルバに代えてロータリーエンコーダなどを用いることができる。
また、振動抑制トルク演算部65bは、トルク補正指令信号ΔTmの制限範囲を、車速などの操舵条件に応じて可変とすることができる。
そして、操舵角の増大に基づき回転モーメント発生制動制御が実施されるときに、パワステ用コントロールユニット13は、1対の操舵輪7L,7R側から操舵軸16側に伝達される振動を抑制する方向にモータ駆動指令信号を補正することで、ステアリングホイール6の振動を低減して、運転者の不快感を軽減することができる。
Claims (11)
- ステアリングホイールの操舵操作を1対の操舵輪に伝達する操舵機構であって、前記ステアリングホイールの回転に伴い回転する操舵軸と、前記操舵軸の回転を前記操舵輪に伝達する伝達機構と、を有する操舵機構と、
前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、
前記1対の操舵輪の夫々に異なる制動力を付与可能な制動装置と、
前記電動モータを制御するコントロールユニットであって、
前記電動モータへのモータ駆動指令信号を演算するモータ駆動指令信号演算部と、
前記制動装置が前記1対の操舵輪の夫々に異なる制動力を付与することによって車両に回転モーメントを発生させるとき、前記1対の操舵輪側から前記操舵軸側に伝達される振動を抑制する方向に前記モータ駆動指令信号を補正するモータ駆動指令信号補正部と、
を有するコントロールユニットと、
を有することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項1に記載の車両制御装置は、前記操舵機構に操舵力を付与する油圧アクチュエータを有し、
前記操舵軸は、入力軸と、ロータリバルブ用トーションバーを介して前記入力軸と接続された出力軸と、を有し、
前記油圧アクチュエータは、
ピストンによって分割された1対の液圧室を有するパワーシリンダと、
前記入力軸と前記出力軸の相対回転に応じて前記操舵機構の外部のポンプから供給される作動液を選択的に前記パワーシリンダの前記1対の液圧室に供給するロータリバルブと、
を有することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項2に記載の車両制御装置において、前記伝達機構は、ボールねじ機構を備え、
前記ボールねじ機構は、
前記出力軸の外周側に設けられた螺旋状の出力軸側ボールねじ溝と、
前記出力軸の外周側に設けられた筒状のナット部材と、
前記ナット部材の内周側に設けられた螺旋状のナット側ボールねじ溝と、
前記出力軸側ボールねじ溝と前記ナット側ボールねじ溝の間に設けられた複数のボールと、を備え、
前記ピストンは、前記ナット部材に設けられていることを特徴とする車両制御装置。 - 請求項2に記載の車両制御装置において、前記コントロールユニットは、前記制動装置へ制動装置指令信号を出力する制動装置指令部を備え、
前記制動装置指令部は、前記油圧アクチュエータに異常が生じたとき、車両の旋回方向に応じて前記1対の操舵輪の夫々に異なる制動力を付与し、車両に回転モーメントを発生させるように前記制動装置指令信号を出力することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項4に記載の車両制御装置は、前記操舵機構に生じる操舵トルクを検出するトルクセンサを備え、
前記コントロールユニットは、前記油圧アクチュエータの異常の有無を判断する油圧アクチュエータ異常判断部を備え、
前記油圧アクチュエータ異常判断部は、車両速度が第1所定車速以上、かつ前記操舵トルクが第1所定トルク値以上のとき、前記油圧アクチュエータに異常が発生していると判断することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項5に記載の車両制御装置において、前記油圧アクチュエータ異常判断部は、車両速度が第2所定車速以上、かつ前記操舵トルクと前記電動モータの駆動トルクの合計が第2所定トルク値以上のとき、前記油圧アクチュエータに異常が発生していると判断することを特徴とする車両制御装置。
- 請求項6に記載の車両制御装置において、前記コントロールユニットは、前記ステアリングホイールの操作速度である操舵角速度に関する舵角速度信号を入力する舵角速度信号入力部を備え、
前記油圧アクチュエータ異常判断部は、車両速度が第3所定車速以上、前記操舵トルクと前記電動モータの駆動トルクの合計が第3所定トルク値以上、かつ前記舵角速度信号が所定舵角速度未満のとき、前記油圧アクチュエータに異常が発生していると判断することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項4に記載の車両制御装置において、前記コントロールユニットは、前記油圧アクチュエータの異常の有無を判断する油圧アクチュエータ異常判断部を備え、
前記制動装置指令部は、前記1対の操舵輪である前輪および後輪に制動力を付与するように前記制動装置指令信号を出力すると共に、前記油圧アクチュエータ異常判断部が前記油圧アクチュエータに異常有りと判断しているときであって、かつブレーキ操作が行われたとき、前記油圧アクチュエータ異常判断部が前記油圧アクチュエータに異常が無いと判断しているときに比べ、前記前輪と前記後輪の制動力の配分において、前記後輪側の配分が大きくなるように前記制動装置指令信号を出力することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項1に記載の車両制御装置は、第1角度センサおよび第2角度センサを備え、
前記操舵軸は、角度センサ用トーションバーを介して互いに接続される、前記角度センサ用トーションバーよりも前記ステアリングホイール側に設けられた第1軸と、前記角度センサ用トーションバーよりも前記操舵輪側に設けられた第2軸を備え、
前記第1角度センサは、前記第1軸の回転角を検出するものであって、
前記第2角度センサは、前記第2軸の回転角を検出するものであって、
前記コントロールユニットは、正逆入力判断部を備え、
前記正逆入力判断部は、前記第1角度センサの出力信号である第1回転角信号と前記第2角度センサの出力信号である第2回転角信号に基づき、前記第1軸と前記第2軸が同じ方向に回転し、かつ前記第2回転角信号の位相が前記第1回転角信号の位相に先行していると判断するとき、前記操舵軸に発生している振動が、前記1対の操舵輪側から前記操舵軸側に伝達されているものであると判断することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項9に記載の車両制御装置において、前記コントロールユニットは、前記第1回転角信号または前記第2回転角信号をハイパスフィルタ処理するハイパスフィルタ処理部を備え、
前記モータ駆動指令信号補正部は、前記ハイパスフィルタ処理部によってハイパスフィルタ処理された前記第1回転角信号または前記第2回転角信号に基づき、前記モータ駆動指令信号を補正することを特徴とする車両制御装置。 - 請求項1に記載の車両制御装置は、前記操舵機構に生じる操舵トルクを検出するトルクセンサを備え、
前記コントロールユニットは、前記制動装置へ制動装置指令信号を出力する制動装置指令部を備え、
前記制動装置指令部は、前記操舵トルクの方向に基づき、前記制動装置指令信号を出力することを特徴とする車両制御装置。
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