次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、図面の各図において同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、同一の符号に対応する部材等の名称が、簡略的に言い換えられたり、上位概念又は下位概念の名称で言い換えられたりすることがある。
本発明は、例えば下記の実施形態に示すように、予め定められた圃場内で1台又は複数台の作業車両を走行させて、圃場内における農作業の全部又は一部を実行させるときに、作業車両を自律的に走行させる自律走行システムに適用される。本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建設作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味し、自律作業とは、トラクタが備える制御部によりトラクタが備える作業に関する構成が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各構成がユーザにより操作され、走行・作業が行われることを意味する。
以下の説明では、自律走行・自律作業されるトラクタを「無人(の)トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称することがあり、手動走行・手動作業されるトラクタを「有人(の)トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより実行される場合、残りの農作業は有人トラクタにより実行される。単一の圃場における農作業を無人トラクタ及び有人トラクタで実行することを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業等と称することがある。本明細書において無人トラクタと有人トラクタの違いは、ユーザによる操作の有無であり、各構成は基本的に共通であるものとする。即ち、無人トラクタであってもユーザが搭乗(乗車)して操作することが可能であり(即ち、有人トラクタとして使用することができ)、あるいは有人トラクタであってもユーザが降車して自律走行・自律作業させることが可能である(即ち、無人トラクタとして使用することができる)。なお、農作業の協調作業としては、「単一の圃場における農作業を無人車両及び有人車両で実行すること」に加え、「隣接する圃場等の異なる圃場における農作業を同時期に無人車両及び有人車両が実行すること」が含まれていてもよい。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自律走行システム100に備えられるロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。図3は、移動局としてのロボットトラクタ1、及び電子基準局70の主要な構成を示すブロック図である。
本発明の一実施形態に係る自律走行システム100は、図1等に示すロボットトラクタ(作業車両)1が、ネットワーク型RTK−GNSS技術を利用して測位することにより位置情報を取得し、予め設定された経路に沿ってトラクタ1を自律的に走行させるものである。
移動局であるトラクタ1は、衛星105から受信した電波に基づいて自らの測位情報を取得するとともに、通信ネットワークを介して、図3に示す電子基準局70での測位情報により生成された測位補正情報をリアルタイムで受信する。本実施形態では、トラクタ1において測位した測位情報と、受信した測位補正情報と、を用いて、測位解をリアルタイムで求めることができる。
図1に示すように、ロボットトラクタ1は、無線通信端末(通信端末)46との間で近距離無線通信網を介して無線通信を行うことにより操作される。ユーザが無線通信端末46を操作して、当該トラクタ1の制御部4との間で信号のやり取りを適宜行うことにより、トラクタ1を自律走行・自律作業させることができる。
トラクタ1は、圃場内を自律走行することが可能な走行機体2を備える。走行機体2には、図1及び図2に示す作業機3が着脱可能に取り付けられている。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
トラクタ1の構成について、図1及び2を参照してより詳細に説明する。トラクタ1の走行機体2は、図1に示すように、その前部が左右1対の前輪7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内には、トラクタ1の駆動源であるエンジン10等が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としては、エンジン10に加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用してもよい。
ボンネット9の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、ユーザが操向操作するためのステアリングハンドル12と、ユーザが着座可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、移動局としての作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビンを備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図2に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、主変速レバー27、複数の油圧操作レバー16、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、副変速レバー19、及び作業機昇降スイッチ28等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。主変速レバー27は、トラクタ1の走行速度を無段階で変更するための操作具である。油圧操作レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作するための操作具である。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するための操作具である。即ち、PTOスイッチ17がON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチ17がOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止される。PTO変速レバー18は、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギヤ機構の変速比を切り換えるための操作具である。作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するための操作具である。
図1に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図3に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部(自律走行制御部)4を備える。制御部4は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。制御部4には、トラクタ1が備える各構成(例えば、エンジン10等)を制御するためのコントローラ、及び他の無線通信機器と無線通信するための無線通信機等がそれぞれ、データバス58等によって電気的に接続されている。データバス58は、例えば公知のCAN規格のものを用いることができる。
上記のコントローラとして、トラクタ1は少なくとも、エンジンコントローラ41、車速コントローラ42、操向コントローラ43及び昇降コントローラ44を備える。それぞれのコントローラは、制御部4からの電気信号に応じて、トラクタ1の各構成を制御することができる。
エンジンコントローラ41は、エンジン10の回転数等を制御するものである。エンジンコントローラ41は、エンジン10に設けられる燃料噴射装置としてのコモンレール装置(図略)と電気的に接続されている。コモンレール装置は、エンジン10の各気筒に燃料を噴射するものである。この場合、エンジン10の各気筒に対するインジェクタの燃料噴射バルブが開閉制御されることによって、燃料供給ポンプによって燃料タンクからコモンレール装置に圧送された高圧の燃料が各インジェクタからエンジン10の各気筒に噴射され、各インジェクタから供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。エンジンコントローラ41は、コモンレール装置を制御することで、例えばエンジン10への燃料の供給を停止させ、エンジン10の駆動を停止させることができる。
車速コントローラ42は、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置(図略)が設けられている。車速コントローラ42は、油圧式無段変速装置の斜板の角度をアクチュエータによって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の速度を実現することができる。
操向コントローラ43は、ステアリングハンドル12の回動角度を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ(図略)が設けられている。この構成で、予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を計算し、得られた回動角度となるように操向コントローラ43に制御信号を出力する。操向コントローラ43は、制御部4から入力された制御信号に基づいて操向アクチュエータを駆動し、ステアリングハンドル12の回動角度を制御する。なお、操向コントローラはステアリングハンドル12の回動角度を調整するものではなくトラクタ1の前輪7の操舵角を調整するものであってもよく、その場合、旋回走行を行ったとしてもステアリングハンドル12は回転しない。
昇降コントローラ44は、作業機3の昇降を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構の近傍に、油圧シリンダ等からなる昇降アクチュエータ(図略)を備えている。この構成で、昇降コントローラ44は、制御部4から入力された制御信号に基づいて昇降アクチュエータを駆動して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、所望の高さで作業機3により農作業を行わせることができる。この制御により、作業機3を、退避高さ(農作業を行わない高さ)及び作業高さ(農作業を行う高さ)等の所望の高さで支持することができる。
なお、上述した複数のコントローラ41,42,43,44は、制御部4から入力される信号に基づいてエンジン10等の各部を制御していることから、制御部4が実質的に各部を制御していると把握することができる。
上述のような制御部4を備えるトラクタ1は、ユーザがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、ユーザがトラクタ1に搭乗しなくても、無線通信端末46により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行及び自律作業をさせることが可能となっている。
次に、自律走行を可能とするためにトラクタ1が備える構成について、より詳細に説明する。具体的には、本実施形態のトラクタ1は、図3等に示すように、測位用アンテナ6、測位情報取得部52、無線通信用アンテナ48、第1近距離無線通信部(第1通信部)51、カメラ56、慣性計測装置(IMU)54、及び記憶部55等を備える。
測位用アンテナ6は、衛星測位システム(GNSS)を構成する衛星105,105,・・・からの電波を受信するものである。本実施形態では、GNSSとして全地球測位システム(GPS)が用いられているが、他のGNSSを用いてもよい。図1に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11のルーフ26の上面に取り付けられている。測位用アンテナ6で受信された電波は、測位情報取得部52に入力される。
測位情報取得部52は、衛星105,105,・・・から測位用アンテナ6が受信した電波に基づいて、移動局(トラクタ1)の測位情報を取得する。より詳細には、測位情報取得部52は、電波を受信した衛星105のそれぞれについて、衛星105から測位用アンテナ6までの擬似距離と、電波が測位用アンテナ6に到達したときの搬送波位相と、を取得する。この擬似距離は、衛星105の内部時計と、測位情報取得部52の内部時計と、を用いて計測された信号伝搬時間に光速を乗じることにより得られる。また、搬送波位相は、測位用アンテナ6で受信された搬送波の位相と、測位情報取得部52の内部発振器が出力する位相と、の差を測定することにより得られる。
加えて、測位情報取得部52は、位置が既知の電子基準局70で電波を受信した前記衛星105から電子基準局70までの擬似距離と、電子基準局70に到達したときの搬送波位相と、に基づいて生成された測位補正情報を、配信サーバ85からインターネット及び無線通信端末46を介して時々刻々と取得する。なお、電子基準局70の構成については、後に説明する。
測位情報取得部52は、移動局(トラクタ1)で得られた観測値である測位情報と、電子基準局70で得られた観測値を反映したものである測位補正情報と、を用いて、移動局と電子基準局70との間の基線解を継続的に算出することにより、自局の測位解(位置情報)を求める。
より詳細には、測位情報取得部52は、配信サーバ85からインターネット及び無線通信端末46を介して取得された測位補正情報を、トラクタ1と電子基準局70との間の距離と、電子基準局70での測位補正情報の取得からトラクタ1での計算への適用までのタイムラグと、を考慮した修正測位補正情報に変換する。測位情報取得部52は、この修正測位補正情報を用いながら公知のRTK法による計算を行うことにより、移動局としてのトラクタ1と、電子基準局70と、の間の基線解を連続的に算出する。これにより、トラクタ1の位置である測位解がリアルタイムで求められる。
このように、本実施形態の自律走行システム100は、通常の単独測位よりも著しく高い精度で、移動を続けるトラクタ1の位置を取得することができる。測位情報取得部52で取得されたトラクタ1の位置情報は、記憶部55に記憶されるとともに、適時に記憶部55から読み出されて制御部4に入力されて、自律走行に利用される。
無線通信用アンテナ48は、ユーザが使用する無線通信端末46との通信に用いられるアンテナである。本実施形態では、トラクタ1と無線通信端末46との通信に無線LANを採用しているが、無線通信の方式はこれに限定されない。図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ26の上面に配置されている。無線通信用アンテナ48で受信した無線通信端末46からの信号は、図3に示す第1近距離無線通信部51で信号処理された後、データバス58に送信されることにより、制御部4等に入力される。また、制御部4等から無線通信端末46に送信する信号は、第1近距離無線通信部51で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信される。
第1近距離無線通信部51は、無線通信用アンテナ48で受信された無線通信端末46からの信号を復調処理して、データバス58に出力する。これにより、無線通信端末46をユーザが操作したことに伴う信号等が制御部4に入力されて、トラクタ1の各部を制御するのに用いられる。
カメラ56は、トラクタ1の周辺の環境を撮影するものである。図1及び図2には示していないが、カメラ56はトラクタ1のルーフ26に取り付けられている。カメラ56で撮影された映像データは、第1近距離無線通信部51で変調処理された後、無線通信用アンテナ48から送信され、無線通信端末46で受信される。この受信された映像データに基づいて、無線通信端末46の表示制御部31により表示用データが生成され、当該表示用データに基づいて、カメラ56で撮影された映像がディスプレイ37に表示される(図4及び図5を参照)。
記憶部55は、トラクタ1を自律走行させるために予め設定された経路を記憶したり、トラクタ1(厳密には、測位用アンテナ6)の位置情報を記憶したり、RTK−GNSS測位に用いられる電子基準局70の情報を記憶したりするメモリである。
慣性計測装置54は、トラクタ1の走行機体2の姿勢及び加速度を特定することが可能なセンサユニットである。具体的には、慣性計測装置54は、互いに直交する第1軸、第2軸、及び第3軸のそれぞれに対して、角速度センサと加速度センサとを取り付けたセンサ群である。慣性計測装置54は、第1軸が走行機体2のロール回転軸に対応し、第2軸が走行機体2のピッチ回転軸に対応し、第3軸が走行機体2のヨー回転軸に対応するように、走行機体2の重心位置に設けられる。
慣性計測装置54で取得された走行機体2の姿勢変化及び加速度に関する情報を用いて公知の慣性航法演算を行うことにより、衛星105,105,・・・からの電波が一時的に途切れる等して測位解を求められなくなった場合にも、その間のトラクタ1の位置の推移を補間することができる。
次に、移動局としてのトラクタ1と通信を行う配信サーバ85、及びこの配信サーバ85を経由してトラクタ1に自局の測位情報(衛星105から受信した電波の観測データ)を送信する電子基準局70について、詳細に説明する。
電子基準局70、収集サーバ80及び配信サーバ85は、本実施形態の自律走行システム100で測位のために利用されるネットワーク型RTK−GNSS技術の一部を構成するものである。電子基準局70、収集サーバ80及び配信サーバ85は、何れもインターネットに接続されている。
電子基準局70は、測量等に利用するための公的な社会基盤として広域に設置された基準点ネットワークを構成するものである。それぞれの電子基準局70は、精密に測量されて位置が既知となっている場所に設置され、衛星105,105,・・・からの電波を継続的に受信している。それぞれの電子基準局70において衛星105,105,・・・から受信した電波の観測値は、収集サーバ80で取りまとめられた後、情報配信サービス事業者等が運営する配信サーバ85に送信される。配信サーバ85は、受信した観測値に対して処理を行うことで測位補正情報を生成し、この測位補正情報を配信サーバ85からサービス利用者にリアルタイムで配信する。
電子基準局70は、図3に示すように、測位用アンテナ71と、測位情報取得部72と、を主として備える。
測位用アンテナ71は、トラクタ1が備える測位用アンテナ6と実質的に同様の構成であり、衛星105,105,・・・からの電波を受信することができる。
測位情報取得部72は、衛星105,105,・・・から受信した電波に基づいて電子基準局70の測位情報を取得する。より詳細には、測位情報取得部72は、電波を受信した衛星105のそれぞれについて、当該衛星105から測位用アンテナ71までの擬似距離と、電波が測位用アンテナ71に到達したときの搬送波位相と、を取得する。疑似距離及び搬送波位相は、トラクタ1が備える測位情報取得部52の場合と全く同様に求めることができる。
電子基準局70において取得された測位情報は、インターネットを介して収集サーバ80に送信される。
収集サーバ80は、多数の電子基準局70で得られた測位情報を、インターネットを介して受信し、データベースに蓄積する。収集サーバ80は、電子基準局70の運営機関と契約した情報配信サービス事業者が管理する配信サーバ85に対し、収集した測位情報の全部又は一部を、インターネットを介してリアルタイムで送信する。
配信サーバ85は、測位補正情報生成部86を備える。この測位補正情報生成部86は、配信サーバ85がインターネットを介して収集サーバ80から受信した電子基準局70の測位情報に基づいて、サービス利用者に配信するための測位補正情報を生成する。
なお、本実施形態では、測位補正情報生成部86が生成する測位補正情報は、電子基準局70の位置座標の他、測位情報取得部72で取得された擬似距離、及び搬送波位相そのものとしているが、これに代えて、測位情報取得部72で取得された擬似距離を適宜補正した補正擬似距離、及び、測位情報取得部72で取得された搬送波位相を適宜補正した補正搬送波位相を、測位補正情報としてもよい。また、測位補正情報には、擬似距離及び搬送波位相の作成時に使用した放送暦の情報が含められてもよい。
配信サーバ85は、測位補正情報生成部86が生成する測位補正情報を、サービス利用者に対し、インターネットを介して送信する。
なお、RTK−GNSSを用いた測位は、移動局と基準局との距離が物理的に近くなる程、測位結果の精度が向上する。このことを考慮して、本実施形態の配信サーバ85は、利用地域等を考慮してサービス利用者側が選択した電子基準局70に基づく測位補正情報を配信するように構成されている。また、サービス利用者は、インターネットを介して配信サーバ85に指示することにより、電子基準局70の選択を任意のタイミングで変更することができる。
次に、無線通信端末46の構成について、図4及び図5を参照して詳細に説明する。図4は、無線通信端末46の構成を示す平面図である。図5は、無線通信端末46の主要な構成を示すブロック図である。
無線通信端末46は、図4に示すように、タブレット型のコンピュータとして構成される。ユーザは、無線通信端末46のディスプレイ(表示部)37に表示された情報(例えば、ロボットトラクタ1に取り付けられた各種センサからの情報)を参照して確認することができる。また、ユーザは、ディスプレイ37の近傍に配置されたハードウェアキー38、及びディスプレイ37を覆うように配置されたタッチパネル39等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号を送信することができる。ここで、無線通信端末46が制御部4に出力する制御信号としては、自律走行・自律作業の経路に関する信号や自律走行・自律作業の開始信号、緊急停止信号、一時停止信号及び一時停止後の再開信号等が考えられるが、これに限定されない。
なお、無線通信端末46はタブレット型のコンピュータに限るものではなく、これに代えて、例えばノート型のコンピュータで構成することも可能である。或いは、例えばトラクタ1と協調作業を行う有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置14を無線通信端末とすることもできる。
図5に示すように、無線通信端末46は、上述したディスプレイ37、ハードウェアキー38、及びタッチパネル39の他、主要な構成として、表示制御部31、経路生成部61、圃場取得部33、携帯電話用アンテナ69、携帯電話通信部64、測位補正情報取得部63、無線通信用アンテナ68、第2近距離無線通信部(第2通信部)62、選択部67、及び記憶部32等を備えている。
具体的には、上述のとおり無線通信端末46はコンピュータとして構成されており、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。また、この無線通信端末46には、トラクタ1を制御するための制御アプリケーションが予めインストールされている。そして、上記したハードウェア及びソフトウェアの協働により、無線通信端末46を、表示制御部31、経路生成部61、圃場取得部33、携帯電話通信部64、測位補正情報取得部63、第2近距離無線通信部62、選択部67、及び記憶部32等として動作させることができる。
表示制御部31は、ディスプレイ37に表示する表示用データを生成し、表示画面を適宜に切り換えて表示する制御を行うものである。表示制御部31は、例えばトラクタ1を自律走行させるために予め生成する経路の設定に必要な各種情報を入力するための入力画面等を表示することが可能である。また、表示制御部31は、トラクタ1にこれから自律走行を開始させるときに、予め登録された圃場の中から1の圃場をユーザに選択させるための図7に示すような圃場選択画面90をディスプレイ37に表示することができる。
図5に示す経路生成部61は、トラクタ1を自律走行させる経路を生成するものである。経路生成部61は、経路の生成に必要な各種情報が設定され、所定の操作がされた場合に、農作業が行われる直線又は折れ線状の経路と、走行機体2の旋回操作が行われる円弧状の経路と、を交互に繋いだ経路を計算により生成する。生成された経路は記憶部32に記憶されるとともに、適宜のタイミングでトラクタ1に送信される。
圃場取得部33は、例えばトラクタ1を圃場の外周に沿って1回り周回させたときの位置の推移を記録することで、圃場の位置及び形状を取得するものである。このとき、圃場の位置及び形状を高精度で得るために、トラクタ1の位置は、適宜の電子基準局70が選択された上で、上述のネットワーク型RTK−GNSS測位によって取得される。圃場取得部33で取得した圃場の位置及び形状は、記憶部32に記憶される。詳細は後述するが、本実施形態の記憶部32は、その記憶領域の一部(圃場記憶部320)を、記憶の仮想的な単位であるページを用いて管理する構成となっている。各ページ321,322,323,・・・は、圃場取得部33で登録された圃場A,B,C・・・のうちの1つに対応付けられている。
記憶部32は、不揮発性のメモリ(例えば、フラッシュROM)を含んで構成されており、登録された圃場の位置情報、生成(設定)された経路の情報、及び、RTK−GNSSのために選択された電子基準局70の情報等を記憶することができる。
記憶部32の対象基準局ID記憶部66は、後述する選択部67により選択された電子基準局70の識別情報(ID)を記憶する。別の言い方をすれば、対象基準局ID記憶部66は、無線通信端末46が現在配信を受けている測位補正情報の起源となる観測データ(測位データ)を観測している電子基準局70の識別情報を記憶する。この識別情報としては、例えば、公知の電子基準点番号や基準点コードが考えられるが、情報配信サービス事業者が独自に付与した識別情報を用いることもできる。
また、記憶部32の一部である圃場記憶部320は、上述の圃場取得部33で圃場の位置を取得したときに測位情報取得部52が使用していた測位補正情報に係る電子基準局70の識別情報を、その圃場と対応付けて記憶する。具体的には、圃場記憶部320は、圃場取得部33で登録された圃場A,B,C・・・を、圃場管理ページ321,322,323,・・・のそれぞれに記憶するとともに、各ページにおいて、当該圃場の位置を取得(計算)するために測位補正情報の提供を受けていた電子基準局70の識別情報を記憶する。このように、圃場記憶部320は、各圃場の情報を、圃場管理ページ321,322,323を単位として管理することにより、登録している圃場の追加、削除、及びトラクタ1を自律走行させる圃場の切替等を容易に行うことができる。
携帯電話用アンテナ69は、測位補正情報を取得するためのアンテナであり、インターネットに接続された図略の携帯電話基地局と無線によりデータ通信を行うことができる。
携帯電話通信部64は、携帯電話用アンテナ69で受信した信号について復調処理を行い、無線通信端末46の各部に出力する。また、携帯電話通信部64は、無線通信端末46の各部から入力された信号について変調処理を行い、携帯電話用アンテナ69から送信する。
測位補正情報取得部63は、配信サーバ85からインターネットを通じて配信される測位補正情報を、携帯電話通信部64から取得する。測位補正情報取得部63は、得られた測位補正情報を、第2近距離無線通信部62に出力する。
無線通信用アンテナ68は、上述の無線LANに対応したアンテナであり、トラクタ1と無線により通信することができる。無線通信用アンテナ68で受信したトラクタ1からの信号は、第2近距離無線通信部62で信号処理された後、表示制御部31等の各部に入力される。また、ユーザのタッチパネル39の操作等に応じてトラクタ1に送信する制御信号は、第2近距離無線通信部62で信号処理された後、無線通信用アンテナ68から送信されてトラクタ1で受信される。
第2近距離無線通信部62は、無線通信用アンテナ68で受信されたトラクタ1からの信号について復調処理を行い、表示制御部31等の各部に出力する。その結果、トラクタ1の運転状態等を示す情報がディスプレイ37に表示される。なお、トラクタ1の運転状態等を示す情報には、例えば、各種センサ(車速センサ等)の検出結果や、カメラ56で撮影された映像が含まれる。また、本実施形態の第2近距離無線通信部62は、測位補正情報取得部63が取得した測位補正情報を、無線通信用アンテナ68を介して送信し、トラクタ1の第1近距離無線通信部51は、無線通信用アンテナ48を介して測位補正情報を受信する。別の言い方をすれば、配信サーバ85から配信された測位補正情報は、無線通信端末46を経由して、短距離無線通信網を介してトラクタ1に転送される。
選択部67は、ユーザにより選択された電子基準局70の設定を受け付けるものである。具体的には、例えば無線通信端末46の電源がONにされたとき等の適宜のタイミングで、ディスプレイ37に、測位補正情報の提供源となる電子基準局70を選択するための電子基準局選択画面(不図示)が表示される。この電子基準局選択画面を操作することによりユーザが選択した電子基準局70が、選択部67により受け付けられて、測位補正情報の提供源となる電子基準局として設定される。以下の説明においては、無線通信端末46(ひいては、トラクタ1)が提供を受ける測位補正情報が由来する電子基準局を、単に「対象の電子基準局」と称する場合がある。なお、電子基準局選択画面はユーザが表示させるための操作を行わなければ表示しないこととしてもよく、その場合、後述するプリセットされた電子基準局が対象の電子基準局として自動的に選択されており、ユーザは対象の電子基準局を変更したい場合に電子基準局選択画面を表示させて変更させることとすればよい。
選択部67で選択される「対象の電子基準局」(選択基準局)としては、GNSS単独測位等の適宜の方法によりトラクタ1のおよその位置が求められて、この位置の近傍に設置されている電子基準局が、上記の電子基準局選択画面においてプリセットされている。ユーザは、当該プリセットされた電子基準局を対象の電子基準局としてそのまま選択することもできるし、或いは、これまでの測位精度の監視結果等を考慮して、プリセットされた電子基準局以外の電子基準局を選択することもできる。
このような構成により、自律走行システム100では、選択部67で選択された対象の電子基準局70を提供源とする測位補正情報を、無線通信端末46を経由してトラクタ1側で時々刻々と受信し、トラクタ1側の測位情報取得部52で自局(移動局)の測位情報と測位補正情報とを用いて測位解を求めることで、高い精度でトラクタ1の位置情報を取得することができる。
ここで、仮に、配信サーバ85から測位補正情報を受信するための端末(携帯電話やスマートフォン等)を、走行開始等をトラクタ1に遠隔で指示するための無線通信端末46とは別に用意する構成とすると、通信システムが煩雑になるとともに、通信費が嵩んでしまう。
この点、本実施形態の自律走行システム100では、配信サーバ85が提供する測位補正情報は携帯電話回線を介して無線通信端末46で受信され、その後、無線通信端末46から無線LANを介してトラクタ1に送信される。言い換えれば、無線通信端末46が、配信サーバ85から配信される測位補正情報をトラクタ1に転送するための情報中継端末を兼ねている。
このような構成により、本実施形態の自律走行システム100では、トラクタ1を自律走行させるために必要な通信系の構成を簡素化することができ、またユーザの通信費の負担も抑えることができ、ユーザにとって利用し易いものとなっている。
次に、本実施形態の自律走行システム100において、トラクタ1に自律走行を開始させるために行われる処理について、図6を参照して詳細に説明する。図6は、トラクタ1に自律走行を開始させるために、無線通信端末46側、及びトラクタ1側で行われる処理を説明するフローチャートである。
初めに、トラクタ1に搭載されるエンジン10が起動されることにより、トラクタ1に電源が投入されて、制御部4等に電力が供給される(ステップS201)。
これと前後して、無線通信端末46の電源が入れられる(ステップS101)。続いて、無線通信端末46側では前記電子基準局選択画面が表示され、トラクタ1の位置についてGNSS−RTK測位を行うために用いる基準局としての電子基準局70が選択部67によって選択される(ステップS102)。選択された電子基準局70の識別情報は、対象基準局ID記憶部66に記憶される。また、携帯電話通信部64は、選択された電子基準局70の情報を、携帯電話用アンテナ69を介して、インターネットに接続された配信サーバ85に送信する。
ステップS102において電子基準局70が選択されたら、続いて無線通信端末46の表示制御部31は、この対象の電子基準局70と同一の電子基準局に対応付けて記憶部32に記憶されている圃場を、他の電子基準局に対応付けて記憶されている圃場とは異なる態様でディスプレイ37に表示する(ステップS103)。
この場合のディスプレイ37の表示例を、図7に示している。図7は、無線通信端末46のディスプレイ37に表示される圃場選択画面90の例を示す図である。圃場選択画面90は、現在選択されている電子基準局70と同一の電子基準局に対応付けて登録されている圃場を、現在選択されている電子基準局70と同一でない電子基準局に対応付けて登録されている圃場とは視覚的に異なる態様で表示する。図7の例では、現在選択されている電子基準局70と同一の電子基準局に由来する測位補正情報を用いて登録された圃場A,B,Cを示すアイコンを太い点線で囲んで表示する一方、他の圃場である圃場D,Eを示すアイコンはグレーアウト表示させている。
無線通信端末46を操作するユーザは、この圃場選択画面90を見て、これからトラクタ1に自律走行を開始させる1の圃場を、タッチパネル39を操作することにより選択する。
即ち、自律走行システム100においては、現在選択されている対象の電子基準局70と同一の電子基準局に対応付けて登録された圃場でなければ、トラクタ1の位置を精度よく制御して自律走行させることが困難であるため、そのような圃場だけを圃場選択画面90上で選択できるように構成されている。なお、対象の電子基準局70とは異なる電子基準局に対応付けて登録された圃場であっても、対象の電子基準局70と同一の電子基準局に対応付けて登録された圃場と識別可能に表示しつつ選択可能であってもよいが、その場合、当該圃場では自律走行を開始できないこととすればよい。対象の電子基準局70とは異なる電子基準局に対応付けて登録された圃場であっても選択可能とし、いずれの電子基準局に対応付けられた圃場であるかを確認可能とすることにより、対象の基準局70を変更する際に、何れの電子基準局に変更すればよいかを把握可能である。
その上で、本実施形態の圃場選択画面90では、図7に示したように、登録された圃場が、現在選択されているのと同一の電子基準局70に対応付けられた圃場であるか否かを一目で視覚的に把握できるように表示される。そのため、ユーザは、現在自律走行を開始可能な圃場を容易に識別することができる。
逆に言えば、ユーザが選択しようとしている圃場が、対象の電子基準局70とは異なる電子基準局に対応付けられており、選択している電子基準局70を他の電子基準局に変更する必要がある場合にも、ユーザはこれを容易に把握することができる。
なお、図6に示した例では、ステップS201でトラクタ1の電源を入れた後に、ステップS103において、圃場選択画面90を用いた圃場の選択が行われている。しかしながら、この処理の順序は一例に過ぎず(即ち、圃場選択画面の表示とトラクタ1の電源投入との先後関係を問わず)、本実施形態の無線通信端末46では、トラクタ1の電源を入れる前であっても、ユーザがディスプレイ37で圃場選択画面90を参照しながら電子基準局の観点で現在選択し得る圃場の中から予め1つ選んでおく、といった操作も可能となっている。
圃場選択画面90において圃場が選択されると、無線通信端末46側で選択部67により指定された電子基準局70の情報が、無線通信用アンテナ68を介してトラクタ1に送信され、トラクタ1が備える測位情報取得部52と慣性計測装置54とにそれぞれ入力される。ここで、トラクタ1側に送信される電子基準局70の情報には、電子基準局70の識別情報が含まれる。
トラクタ1の測位情報取得部52は、無線通信端末46側で選択された電子基準局70の情報を受け付けると、配信サーバ85から無線通信端末46を介した測位補正情報の取得を開始し、測位情報取得部52がRTK−GNSS測位を開始するために必要な初期化処理を行う(ステップS202)。この初期化処理には、当該衛星105とトラクタ1との間の距離に、搬送波の波長が幾つ分含まれているか(即ち、整数バイアス)を計算する処理が含まれる。この初期化が完了することにより、測位情報取得部52は、トラクタ1の位置をRTK−GNSS測位によって高精度で求めることが可能な状態になる。
次に、慣性計測装置54の初期化処理が行われる(ステップS203)。この初期化処理は、例えば、ユーザがトラクタ1を手動運転により前進させて、その間に測位情報取得部52で計測したトラクタ1の位置の変化と、その間に慣性計測装置54が計測した角速度及び加速度と、に基づいて、慣性計測装置54のロール角、ピッチ角、及びヨー角の初期値を求めることにより行うことができる。この初期化が完了することにより、慣性計測装置54は、トラクタ1の位置を慣性航法によって良好な精度で求めることが可能になる。なお、ステップS202及びS203の初期化処理は、電子基準局70の選択(ステップS102)が行われた後に開始されるものであればよく、ステップS103において圃場選択画面が表示される前或いは表示中に開始されてもよい。
なお、上述したとおり、配信サーバ85は、サービス利用者が指定した電子基準局70に関する測位補正情報を配信し、当該電子基準局の選択は任意に変更することができる。従って、測位情報取得部52及び慣性計測装置54の初期化が完了した後も、ユーザは、無線通信端末46を操作することによって、異なる電子基準局を選択することもできる。しかし、RTK−GNSS測位において基準局を変更した場合は、新しい基準局との関係で上記の整数バイアスを計算しなければならないので、測位情報取得部52の初期化を改めて行う必要がある。また、これに伴って、慣性計測装置54の初期化も改めて行うことが好ましい。
トラクタ1側での測位情報取得部52の初期化、及び慣性計測装置54の初期化が終わったら、今回の対象の電子基準局70に関する設定が完了した旨を知らせる応答信号がトラクタ1側から無線通信端末46に送信される。この応答信号を受信した無線通信端末46は、自律走行の開始が可能となった旨をユーザに知らせるメッセージをディスプレイ37に表示する。このメッセージを見たユーザは、トラクタ1が自律走行する経路等を指定した上で、所定の操作を行う。これにより、無線通信端末46は、自律走行の開始を指示する制御信号をトラクタ1側に送る(ステップS104)。
自律走行の開始を指示する制御信号を受け付けたトラクタ1の測位情報取得部52は、対象の電子基準局70に関する測位補正情報を配信サーバ85から無線通信端末46を介して継続的に取得し、RTK−GNSS測位によってトラクタ1の位置を求めながら、設定された経路に沿って自律走行する(ステップS204)。
以上に説明したように、本実施形態の自律走行システム100は、予め設定された経路に沿ってトラクタ1を自律走行させる。トラクタ1は、当該トラクタ1を自律走行させる制御部4と、衛星105,105,・・・から受信した電波に基づいて測位情報を取得する測位情報取得部52と、前記経路を生成する経路生成部61と、無線通信端末46と通信を行う第1近距離無線通信部51と、を備える。無線通信端末46は、第1近距離無線通信部51と通信を行う第2近距離無線通信部62と、配信サーバ85から測位補正情報を取得する測位補正情報取得部63と、を備える。無線通信端末46は、測位補正情報取得部63が取得した前記測位補正情報を、第2近距離無線通信部62を介して第1近距離無線通信部51に送信する。
これにより、トラクタ1側で測位補正情報を取得するための端末(携帯電話やスマートフォン等)を別途に用意しなくても、無線通信端末46を介して、配信サーバ85からの測位補正情報をトラクタ1に送信することが可能となる。よって、通信のための構成を簡素化でき、ユーザにとって利用し易いものとなる。
また、本実施形態の自律走行システム100において、無線通信端末46は、測位補正情報取得部63が前記測位補正情報を取得する対象の電子基準局70を選択可能な選択部67を備える。測位補正情報取得部63は、選択部67により選択された電子基準局70に関する前記測位補正情報を配信サーバ85から取得する。無線通信端末46は、第2近距離無線通信部62を介して、前記対象の電子基準局70の識別情報を第1近距離無線通信部51に送信する。
これにより、トラクタ1は、無線通信端末46と通信することで、測位補正情報が由来する電子基準局70を特定することができ、様々な処理に活用することができる。
また、本実施形態の自律走行システム100においては、選択部67により対象の電子基準局が変更された場合に、無線通信端末46は、変更後の対象の電子基準局の識別情報を第1近距離無線通信部51に送信する。
これにより、測位補正情報を取得する対象の電子基準局を無線通信端末46側で変更した場合に、それに連動して、トラクタ1側でも、変更後の対象の電子基準局を特定することができる。
また、本実施形態の自律走行システム100において、無線通信端末46は、圃場記憶部320と、表示制御部31と、を備える。圃場記憶部320は、トラクタ1を自律走行させる1又は複数の圃場A,B,C・・・の位置を、測位情報取得部52を用いて取得した位置情報に基づいて登録可能であるとともに、前記登録時に測位情報取得部52が使用した前記測位補正情報に係る電子基準局の識別情報を対応付けて記憶可能である。表示制御部31は、圃場記憶部320に登録された圃場A,B,C・・・をディスプレイ37に表示する。表示制御部31は、図7に示すように、測位情報取得部52が前記測位情報を取得している際に使用している前記測位補正情報に係る電子基準局70と同一の電子基準局に対応付けられた圃場A,B,Dと、当該電子基準局70とは異なる電子基準局に対応付けられた圃場C,Eと、を異なる態様で表示する。
これにより、ユーザが、対象の電子基準局70を用いて過去に登録された圃場であるか否かを視覚的に把握できるため、自律走行を開始可能な圃場A,B,Dを容易に認識できる。また、所望の圃場が自律走行可能な圃場でない場合に、測位のために用いる電子基準局を変更する必要があることを認識することができる。更に言えば、トラクタ1を起動しなくても無線通信端末46側で圃場選択ができるため、設定が容易である。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、測位補正情報は、1つの電子基準局70での観測値(衛星105から受信した電波の観測データ)のみを反映した測位補正情報が、無線通信端末46を介してトラクタ1の測位情報取得部52に入力され、トラクタ1の位置を求めるのに用いられるものとしたが、必ずしもこれに限るものではない。これに代えて、複数の電子基準局での観測値を反映した測位補正情報が、配信サーバ85の処理によって生成され、この測位補正情報に基づいてトラクタ1が測位されるものとしてもよい。その場合、仮にトラクタ1が複数の電子基準局の何れからも遠い場所に位置していたとしても、複数の電子基準局での観測値の補間によって推定した適切な測位補正情報を適用して、精度のよい測位を行うことができる。
上記の実施形態では、測位補正情報は、現実の電子基準局70の観測に基づいて生成されている。しかしながらこれに代えて、特許文献1に示すような仮想基準点方式のネットワーク型RTK−GNSS技術を使用することにより、配信サーバ85において、仮想的な電子基準局に基づく測位補正情報を生成して配信し、この測位補正情報を用いて測位情報取得部52がRTK−GNSS測位を行うように構成してもよい。
公的な電子基準局70に代えて、情報配信サービス事業者等が独自に設置する基準局に基づく測位補正情報を、配信サーバ85から配信するように構成してもよい。また、基準局自体が配信サーバとして機能し、測位補正情報を生成してインターネットを通じて配信する構成としてもよい。更に、基準局を、予め精密に測量されることにより位置が既知である複数の点の間で移動可能に構成し、これに応じて、基準局に設定する位置座標の設定を変更できるように構成してもよい。
本発明の構成は、RTK−GNSS測位に限らず、例えばディファレンシャルGNSS測位において基準局側で生成した測位補正情報を移動局に送信するために適用することもできる。