以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
<第1の実施の形態>
以下、図1〜図5Eを参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態における透視性電極31について説明する。図1は、観察者側から見た場合の透視性電極31を示す平面図である。
ここでは、透視性電極31が、投影型の静電容量結合方式のタッチパネル用に構成される例について説明する。なお、「容量結合」方式は、タッチパネルの技術分野において「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等とも呼ばれており、本明細書では、これらの「静電容量」方式や「静電容量結合」方式等と同義の用語として取り扱う。典型的な静電容量結合方式のタッチパネルは、導電性のパターンを有しており、外部の導体(典型的には人間の指)がタッチパネルに接近することにより、外部の導体とタッチパネルの導電性のパターンとの間でコンデンサ(静電容量)が形成される。そして、このコンデンサの形成に伴った電気的な状態の変化に基づき、タッチパネル上において外部導体が接近している位置の位置座標が特定される。
図1に示すように、透視性電極31は、基材フィルム32と、基材フィルム32上に設けられた複数の導電パターン41と、を備えている。図1に示すように、各導電パターン41は長方形の輪郭線形状をなし、該長方形の長辺は図1の上下方向にそれぞれ帯状に延びている。また、複数の導電パターン41は、各導電パターン41が延びる方向に直交する方向において、一定の配列ピッチで並べられている。導電パターン41の配列ピッチは、タッチ位置の検出に関して求められる分解能に応じて定められるが、例えば数mmである。
図1に示すように、透視性電極31の基材フィルム32は、タッチ位置を検出され得る領域に対応する矩形状のアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1の周辺に位置する矩形枠状の非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。アクティブエリアAa1および非アクティブエリアAa2は、それぞれ、後述するタッチ位置検出機能付き表示装置10の表示装置のアクティブエリアおよび非アクティブエリアに対応して区画されたものである。尚、本発明に於いて、タッチパネルの「タッチ」とは、人の指、鉛筆等の筆記具の先端がタッチパネル或いは透視性電極に直接接触する場合以外に、数mm以下の距離を空けて非接触的に接近する場合も包含する。
上述の導電パターン41は、アクティブエリアAa1内に配置されている。また非アクティブエリアAa2には、各導電パターン41に電気的に接続された複数の額縁配線43と、基材フィルム32の外縁近傍に配置され、各額縁配線43に電気的に接続された複数の端子部44と、が設けられている。
導電パターン41に接続されている額縁配線43および端子部44は、導電パターン41からの信号を透視性電極31の外部に取り出すために設けられたものである。信号を適切に伝達することができる限りにおいて、額縁配線43および端子部44の具体的な構成が特に限られることはない。例えば額縁配線43および端子部44は、後述する導線51と同一の層構成で導線51と同時に形成されるものであってもよい。
次に、図2Aを参照して、導電パターン41のパターン形状について説明する。図2Aは、図1において符号IIが付された一点鎖線で囲まれた部分における導電パターン41を示す平面図である。図2Aに示すように、導電パターン41は、遮光性および導電性を有する導線51であって、各導線51の間に開口部51aが形成されるように網目状に配置された導線51から構成されている。
導電パターン41全体の面積のうち開口部51aによって占められる面積の比率(以下、開口率と称する)が十分に高くなり、これによって、表示装置からの映像光が適切な透過率で透視性電極31のアクティブエリアAa1を透過することができる限りにおいて、導線51の寸法や形状が特に限られることはない。例えば図2Aに示す例において、導電パターン41は、矩形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されている。開口率は、表示装置から放出される映像光の特性などに応じて適宜設定される。
導線51の線幅は、求められる開口率、導電パターンの不可視性などに応じて設定されるが、例えば導線51の線幅は1μm〜5μmの範囲内、より好ましくは1μm〜3μmの範囲内、さらに好ましくは平均2μmに設定されている。また、互いに平行に延びる各導線51の配列ピッチP1も、求められる開口率などに応じて設定される。これによって、観察者が視認する映像に対して導線51が及ぼす影響を、無視可能な程度まで低くすること、即ち十分な不可視性を得ることができる。
なお図2Aにおいては、導電パターン41が、開口部形状が矩形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されている例を示したが、これに限られることはない。例えば図2Bに示すように、導電パターン41は、開口部形状が菱形状に形成された導線51を所定の方向に沿って並べることによって構成されていてもよい。又、本実施形態に於いては、図2A及び図2Bに示す如く導電パターン41の開口部51aは導電パターン41の延びる方向と直交方向(同図の左右方向)の配列個数が2個となっているが、本発明に於ける該配列個数は2個にのみ限定されるわけでは無く、タッチパネルの位置検知の分解能、感度、導電パターン不可視性等に応じて適宜個数に設計される。
次に、図3および図4を参照して、透視性電極31の層構成について説明する。図3は、透視性電極31を図2AのIII線に沿って切断した場合を示す断面図であり、図4は、図3に示す基材フィルム32および導線51を拡大して示す断面図である。
図3に示すように、透視性電極31は、透明な基材フィルム32と、基材フィルム32の面上に設けられた導線51から成る導電パターン41と、を含んでいる。なお、本明細書において「透明」とは、光透過率が十分に高く、その向こう側が透けて見える性質を意味する。具体的には、例えば可視光透過率が50%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。また、基材フィルム32は、ヘーズが小さいことが好ましい。具体的には、例えばヘーズが1%以下、より好ましくは0.5%以下である。なお、全光線透過率はJIS K7361−1:1997に準拠して測定され、ヘーズはJIS K7105に準拠して測定される。
基材フィルム32は、上述の導電パターン41や額縁配線43などのパターンや配線を支持するためのものである。この基材フィルム32は、図4の如く表示装置からの映像光を透過させることができる透明基材33と、透明基材33と導電パターン41の導線51との間に設けられたアクリル系樹脂層34aと、を含んでいる。また基材フィルム32は、透明基材33のうち導線51に向かい合う側とは反対の側に設けられたアクリル系樹脂層34bをさらに含んでいてもよい。
透明基材33を構成する材料としては、透明性および可撓性を有する材料が用いられ、例えば合成樹脂(プラスチック)が用いられる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、またはトリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂等の可撓性及び透明性を有する樹脂が用いられる。基材フィルムの厚みは50μm〜200μm程度とする。
アクリル系樹脂層34a,34bは、ロール・トゥー・ロール方式で透視性電極31を製造する際のガイドローラとの摩擦により生じ得る擦り傷などに対する耐擦傷性を高めるという機能や、透視性電極31の透過率や反射率などの光学特性を調整するという機能を実現するために設けられる層である。
一方のアクリル系樹脂層34aは、第1アクリル系樹脂層34a1と、第1アクリル系樹脂層34aと透明基材33との間に設けられた第2アクリル系樹脂層34a2と、を含んでいる。同様に、他方のアクリル系樹脂層34bも、第1アクリル系樹脂層34b1と、第1アクリル系樹脂層34bと透明基材33との間に設けられた第2アクリル系樹脂層34b2と、を含んでいる。
アクリル系樹脂層34a,34bを構成する材料としては、アクリル樹脂が用いられる。該アクリル樹脂としては、十分な耐擦傷性と透明性を有する物が好ましく、これら条件を満たす代表的なものとして、電離放射線照射による架橋反応乃至は重合反応で硬化する電離放射線型アクリル樹脂が挙げられる。斯かる電離放射線硬化型アクリル樹脂としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性官能基を有する(メタ)アクリレートプレポリマー又は(メタ)アクリレート単量体が用いられる。該(メタ)アクリレートプレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等のプレポリマーが挙げられる。又、該(メタ)アクリレート単量体としてはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)メタクリレート単量体等が挙げられる。(此処で、「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」等の表記は、各々「アクリロイル基又はメタクリロイル基」、「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。)これらプレポリマー及び単量体は、耐擦傷性、可撓性、塗工適性等の要求性能に応じて、適宜、上記プレポリマーを1種類単独又は2種類以上混合して、上記単量体を1種類単独又は2種類以上混合して、或いは上記プレポリマー1種類以上と上記単量体1種類以上とを混合して用いられる。電離放射線としては、紫外線、可視光線、X線等の電磁波、電子線、アルファ線等の荷電粒子線が用いられ得る。電離放射線として紫外線又は可視光線を使用する場合には、これらプレポリマー及び単量体100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の光開始剤を0.1質量部〜5質量部程度添加する。尚、本実施形態に於いては、アクリレートプレポリマー、アクリレート単量体、及びベンゾトリアゾール系光開始剤からなる紫外線硬化型アクリル樹脂組成物の硬化物を用いた。
第1アクリル系樹脂層34a1、34b1のアクリル樹脂中には、フィラー(充填剤)として第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1(図16参照)よりも大きな粒径を有する第1の微粒子Pが添加される。第1の微粒子Pとしては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等からなる無機物粒子、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂、弗素樹脂、メラミン樹脂等の有機物粒子からなるものが使用できる。スチレンアクリル系樹脂の有機物粒子からなるものを使用すれば、第1の微粒子Pとアクリル樹脂との屈折率を合わせることでヘーズを低減させることができるため、より好ましい。
ロール・トゥー・ロール方式で基材フィルムを送る場合、基材フィルムとガイドローラとの間に十分な滑り性がないと基材フィルムがガイドローラに張り付き、これにより基材フィルムにシワが発生することがある。本実施の形態では、基材フィルム32の第1アクリル系樹脂層34a1、34b1に、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1よりも大きな粒径を有する第1の微粒子Pが添加されている。この第1の微粒子Pは、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1よりも大きな粒径を有するので、図16に示されているように、その頂部が第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の表面よりも突出するようになる。これにより、基材フィルム32の表面に微小な凹凸を形成して、基材フィルム32とガイドローラとの間に十分な滑り性を付与することができる。したがって、基材フィルム32がガイドローラに張り付いて基材フィルム32にシワが発生することを、効果的に抑制することができる。
アクリル系樹脂層34a、34bの表面の算術平均粗さRaは3nm以上25nm以下であることが好ましい。また、アクリル系樹脂層34a、34bの表面の543μm□の領域に含まれる隆起部の体積の総和は、6.0×1011nm3以上4.0×1012nm3以下であることが好ましい。この場合、基材フィルム32とガイドローラとの間に十分な滑り性を確保することができ、基材フィルムの形状に熱によるシワが発生することを抑制することができる。尚、本明細書において「隆起部の体積」とは、図16において斜線で強調して示された領域のように、アクリル系樹脂層34a、34bの表面のうちアクリル系樹脂層34a、34bの厚みT(すなわち、アクリル系樹脂層34a、34bのうち微粒子Pを含まない領域の厚み)により規定される高さより上に隆起している部分の体積を言う。
ところで、発明が解決しようとする課題の欄でも言及したように、基材フィルム32の表面粗さが大きいと、表面の凸部上に位置するレジストパターンがガイドローラとの摩擦により傷つきやすくなり、エッチング時にその傷からエッチング液が染み込むことで導線51のパターンが浸食され、著しい場合には導線51が断線してしまう可能性がある。
本件発明者らは、このような課題を考慮して鋭意検討を重ねた結果、基材フィルム32の表面の算術平均粗さRaが3nm以上25nm以下である場合に、例えば平均線幅が2μmに細線化された導線を安定して作製できることを確認した。また、基材フィルム32の表面の543μm□の領域に含まれる隆起部の体積の総和が6.0×1011nm3以上4.0×1012nm3以下である場合にも、細線化された導線を安定して作製できることを確認した。なお、算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013の規定に準拠している。算術平均粗さRaおよび543μm□の領域に含まれる隆起部の体積の総和は、例えばザイゴ株式会社製の走査型白色干渉計を用いて測定することができる。
上記したアクリル系樹脂層34a、34bの表面性状は、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1のアクリル樹脂中にフィラーとして添加する微粒子Pの粒径および添加量を調整することにより実現され得る。例えば、該微粒子Pの粒径は0.5μm〜1.3μm程度とすることが出来る。この場合、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1は、乾燥硬化状態で0.3μm〜1μm程度とすることができる。又、該微粒子Pの添加量は、該アクリル系樹脂層組成物中に0.1質量%〜30質量%程度とすることが出来る。
ここで、比較例として、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1と透明基材33との間に第2アクリル系樹脂層34a2、34b2が設けられていない場合を考える。この場合、アクリル系樹脂層34a、34bの厚みは、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1=0.3μm〜1μm程度しかなく非常に薄いため、アクリル系樹脂層34a、34bの物理的強度が十分ではなく、ガイドローラとの摩擦による擦り傷や打痕による外観不良が発生しやすくなる。ここで、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1に含まれる微粒子Pの粒径を大きくすることで、アクリル系樹脂層34a、34bの厚みTを増やすという方法も考えられるが、この方法では、アクリル系樹脂層34a、34bの表面粗さも大きくなるため、導線51の十分な細線化が実現できなくなる。
一方、本実施の形態では、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1と透明基材33との間に第2アクリル系樹脂層34a2、34b2が設けられているため、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2の厚みを調整することで、アクリル系樹脂層34a、34bの表面の微小な凹凸を維持しながら、アクリル系樹脂層34a、34bの厚みTを、十分な物理的強度を実現するような所望の厚みに設定することができる。これにより、擦り傷や打痕による外観不良の発生を効果的に抑制することができる。
なお、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2には、第2の微粒子が添加されていてもよい。この第2の微粒子としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等からなる無機物粒子、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂、弗素樹脂、メラミン樹脂等の有機物粒子からなるものが使用できる。スチレンアクリル系樹脂の有機物粒子からなるものを使用すれば、第2の微粒子Pとアクリル樹脂との屈折率を合わせることでヘーズを低減させることができるため、より好ましい。また、第1の微粒子Pと第2の微粒子とは、同じ材質の微粒子としてもよいし、異なる材質の微粒子としてもよい。
このように、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2に、第2の微粒子が添加されていると、この第2の微粒子の存在により、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2の表面に微小な凹凸を形成することができる。これにより、透明基材33上に第2アクリル系樹脂層34a2、34b2を形成した後、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1を形成する前に、透明基材33及び第2アクリル系樹脂層34a2、34b2をロール状に巻き取る工程を有する場合にも、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2の表面の微小な凹凸により、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2とガイドローラとの間の摩擦を低減させることができる。したがって、透明基材33及び第2アクリル系樹脂層34a2、34b2とガイドローラとの間の摩擦により透明基材33及び第2アクリル系樹脂層34a2、34b2にシワが発生することを、効果的に抑制することができる。
この第2の微粒子は、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2の厚みT2(図16参照)よりも小さな粒径を有することが好ましい。さらに、第2の微粒子は、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1の50%以下の粒径を有することが好ましい。このような粒径を有する第2の微粒子が添加された第2アクリル系樹脂層34a2、34b2によれば、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2の表面の凹凸の存在によって当該第2アクリル系樹脂層34a2、34b2上に形成される第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の表面の凹凸(表面粗さ)が大きくなりすぎることを防止することができる。したがって、導線51を効果的に細線化することができる。
また、アクリル系樹脂層34a、34bの表面の鉛筆硬度は、H以上であることが好ましい。ここで、鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4−1:1999に準拠して測定される(荷重1000g、速度1mm/s)。
また、例えば、アクリル系樹脂層34a、34bの表面にビッカース圧子を押し込むことにより測定されるマルテンス硬さが、ビッカース圧子の最大押し込み量が1μmである場合に175N/mm2以上であることが好ましい。なお、マルテンス硬さは、例えば、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(PICODENTOR(登録商標) HM500、ISO14577−1)を用いて測定することができる。
アクリル系樹脂層34a、34bがこのような硬さを有していると、アクリル系樹脂層34a、34bの表面に擦り傷や打痕が生じることを抑制することができる。とりわけ、ロール・トゥー・ロール方式で透視性電極31を製造する際に、搬送途中に設けられたガイドローラ等との接触により、アクリル系樹脂層34a、34bの表面に擦り傷や打痕が生じることを抑制することができる。これにより、アクリル系樹脂層34a、34bの表面に生じ得る擦り傷や打痕に起因する外観不良の発生を効果的に防止することができる。したがって、アクリル系樹脂層34a、34bを有する透視性電極31を介した良好な透視性を確保することが可能になる。
なお、アクリル系樹脂層34a,34bのうち透明基材33の観察者側に位置するアクリル系樹脂層のことを「観察者側アクリル系樹脂層」と称し、反対側に位置するアクリル系樹脂層のことを「表示装置側アクリル系樹脂層」と称することもある。なお後述するように、導線51は、基材フィルム32の観察者側に位置することもあれば、基材フィルム32の表示装置側に位置することもある。従って、アクリル系樹脂層34aが「観察者側アクリル系樹脂層」になりアクリル系樹脂層34bが「表示装置側アクリル系樹脂層」になることもあれば、アクリル系樹脂層34bが「観察者側アクリル系樹脂層」になりアクリル系樹脂層34aが「表示装置側アクリル系樹脂層」になることもある。
次に、導線51の層構成について説明する。図4に示すように、導線51は、基材フィルム32側から順に配置された低反射層54、本体層53および低反射層55を有する導線形成層52を含んでいる。
本体層53は、導線51における導電性を主に実現するための層である。本発明に於けるこの本体層53は、その厚みが例えば0.2μm以下になるよう、より具体的には0.02μm〜0.2μmの範囲内になるよう構成されている。これによって、導線51全体の厚みが大きくなることを抑制することができ、このことにより、導線51の側面において外光や映像光が反射されてしまうことを抑制することができる。このため、透視性電極31が取り付けられる表示装置における視認性を十分に確保することができる。
一方、本体層53の厚みを小さくすることは、導線51の電気抵抗値が大きくなってしまうことを導き得る。ここで本実施の形態においては、本体層53を構成する材料として、その比抵抗が所望の値以下である金属材料を用いており、例えばその比抵抗が4.0×10−6(Ωm)以下である金属材料を用いている。これによって、導線51の電気抵抗値を十分に低くすることができる。例えば、本体層53のシート抵抗値を0.3Ω/□以下にすることができる。本体層53を構成するための、その比抵抗が4.0×10−6(Ωm)以下である金属材料としては、本発明に於いては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、錫等の金属を90重量%以上含む材料(金属単体、金属合金等)を用いることが出来る。本実施形態に於いては、99.9重量%の銅を含む材料を用いることができる。
ところで、銅などの金属材料は、高い導電性を有する一方で、金属光沢を示す。このため、未処理の金属材料が導線51として用いられると、表示装置からの映像光の視認性が、導線の金属光沢によって妨げられることになる。特に銅は、銅に特有の赤味を帯びた色を示すため、銀などのその他の金属材料に比べて目立ち易く、このため表示装置からの映像光の視認性がより妨げられることになる。
このような銅特有の金属光沢を和らげるため、本体層53に比べて金属光沢が抑制された薄い低反射層54、55が、本体層53の両面に設けられている。以下、低反射層54、55について説明する。
低反射層54、55は、窒化銅からなる層である。窒化銅は、酸素原子をさらに含んでいてもよい。窒化銅としては、例えば、5〜25アトミック%の窒素と、5〜25アトミック%の酸素と、50〜90アトミック%の銅を含む銅化合物が用いられ得る。このような窒化銅を用いて構成される低反射層54においては、その金属光沢が、本体層53における金属光沢に比べて軽減されており、特に、銅に特有の赤味を帯びた色が軽減されており、特に銅に特有の赤味を帯びた色が低減されている。このため、導線51からの反射光によって映像の視認性が低下することを抑制することができる。
また、低反射層54、55は、本体層53に比べて小さな厚みを有しており、具体的には、低反射層54、55の厚みは、10nm〜60nmの範囲内になっているため、導線51全体の厚みが大きくなることを抑制することができ、このことにより、導線51の側面において外光や映像光が反射されてしまうことを抑制することができる。
また、低反射層54、55の厚みを10nm〜60nmの範囲内に設定することによっても、導線51における光の反射率を低くすることができる。この理由としては、限定はされないが例えば、低反射層54、55において生じる薄膜干渉を挙げることができる。薄膜干渉とは、低反射層54、55の一方の面で反射された光と、低反射層54、55の他方の面で反射された光とが干渉するという現象である。低反射層54、55の厚みを上述の10〜60nmの範囲内に設定することにより、反射光を弱めるように薄膜干渉が生じ、これによって、導線51における光の反射率が低減されることが考えられ得る。
上述のような薄い低反射層54、55を形成するための方法が特に限られることはなく、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム法などの公知の薄膜形成法を用いることができる。例えばスパッタリング法が用いられる場合、真空雰囲気中に所定の流量に制御された窒素ガスまたは窒素ガスおよび酸素ガスの両方を供給しながら、銅からなるターゲットに放電電力を印加することによって、所望の組成を有する上述の窒化銅からなる層を得ることができる。
次に、以上のような構成からなる透視性電極31を製造する方法について、図5A〜図5Eを参照して説明する。
はじめに、図5Aに示すように、基材フィルム32を準備する。基材フィルム32は、上述のように、透明基材33と、透明基材33の両側の面にそれぞれ設けられたアクリル系樹脂層34a、34bと、を含んでいる。また、一方のアクリル系樹脂層34aは、第1アクリル系樹脂層34a1と、第1アクリル系樹脂層34aと透明基材33との間に設けられた第2アクリル系樹脂層34a2と、を含んでいる。同様に、他方のアクリル系樹脂層34bも、第1アクリル系樹脂層34b1と、第1アクリル系樹脂層34bと透明基材33との間に設けられた第2アクリル系樹脂層34b2と、を含んでいる。また、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1には、フィラー(充填剤)として第1の微粒子Pが添加されている。
基材フィルム32を作製する方法の一例について説明すると、まず、長尺状の透明基材33を準備し、透明基材33の両側の面に第2アクリル系樹脂層34a2、34b2と、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1とを順に形成する。
例えば、アクリル樹脂を含む塗工液を、透明基材33上にコーターを用いてコーティングすることにより、第2アクリル系樹脂層34a2,34b2を形成することができる。なお、第2アクリル系樹脂層34a2,34b2には、第2の微粒子が添加されていてもよい。次に、フィラーとして第1の微粒子Pが添加されたアクリル樹脂を含む塗工液を、硬化した第2アクリル系樹脂層34a2、34b2上にコーターを用いてコーティングすることにより、第1アクリル系樹脂層34a1,34b1を形成することができる。ここで、第1アクリル系樹脂層34a1,34b1に添加された第1の微粒子Pの粒径は、第1アクリル系樹脂層34a1,34b1の乾燥硬化状態における厚みT1よりも大きくなっている。第2アクリル系樹脂層34a2,34b2及び第1アクリル系樹脂層34a1,34b1を形成するためのコーターとしては、好ましくは、アクリル系樹脂層34a,34bの平坦性を十分に確保することができるものが用いられ、例えばグラビアコーターが用いられる。なお、第2アクリル系樹脂層34a2,34b2を形成するための塗工液および第1アクリル系樹脂層34a1,34b1を形成するための塗工液には、アクリル系樹脂層34a,34bの平坦性を高めるためのレベリング剤が含まれていてもよい。これによって、例えば、アクリル系樹脂層34a上に導線51の層を形成する際にピンホールなどの欠陥が生じてしまうことを抑制することができる。
ロール・トゥー・ロール方式で基材フィルムを送る場合、基材フィルムとガイドローラとの間に十分な滑り性がないと基材フィルムがガイドローラに張り付き、これにより基材フィルムにシワが発生することがある。本実施の形態では、基材フィルム32の第1アクリル系樹脂層34a1、34b1に、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1よりも大きな粒径を有する第1の微粒子Pが添加されている。この第1の微粒子Pは、第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の厚みT1よりも大きな粒径を有するので、図16に示されているように、その頂部が第1アクリル系樹脂層34a1、34b1の表面よりも突出するようになる。これにより、基材フィルム32の表面に微小な凹凸を形成して、基材フィルム32とガイドローラとの間に十分な滑り性を付与することができる。したがって、基材フィルム32がガイドローラに張り付いて基材フィルム32にシワが発生することを、効果的に抑制することができる。
さらに、アクリル系樹脂層34a、34bが薄くて物理的強度が十分でないと、ガイドローラとの摩擦による擦り傷や打痕による外観不良が発生する可能性がある。一方、本実施の形態では、アクリル系樹脂層34a、34bが第1アクリル系樹脂層34a1、34b1と第2アクリル系樹脂層34a2、34b2とを含んでいるため、第2アクリル系樹脂層34a2、34b2の厚みを調整することで、アクリル系樹脂層34a、34bの表面粗さを維持しながら、アクリル系樹脂層34a、34bの厚みを、十分な物理的強度を実現するような所望の厚みに制御することができる。これにより、基材フィルム32の搬送中に擦り傷や打痕による外観不良が発生することを、効果的に抑制することができる。
また、基材フィルム32の表面粗さが小さいと、真空雰囲気中において基材フィルム32がガイドローラに貼り付きやすくなり、基材フィルム32とガイドローラとの間に十分な滑り性が得られないため、基材フィルム32の形状に熱によるシワが発生する可能性がある。一方、本実施の形態では、基材フィルム32の表面の算術平均粗さRaが3nm以上25nm以下であるため、基材フィルム32とガイドローラとの間に十分な滑り性を実現することができ、基材フィルム32の形状に熱によるシワが発生することを抑制することができる。
基材フィルム32を準備した後、図5Bに示すように、アクリル系樹脂層34a上に、低反射層54を形成する。低反射層54は、たとえば、窒素ガスを含む雰囲気中で周波数30kHz〜2MHzの交流放電(以下、特定周波数の交流放電、或いは交流放電とも略稱する)を用いて銅のターゲットをスパッタリングすることで、形成することができる。周波数30kHz〜2MHzの交流放電と直流放電(以下、DC放電とも略称する)とを併用して銅のターゲットをスパッタリングしてもよい。また、窒素ガスに加えて酸素ガスをさらに導入してもよい。
次に、図5Bに示すように、低反射層54上に、本体層53を形成する。そして、本体層53上に、低反射層55を形成する。本体層53および低反射層54を形成するための方法としては、上述のように、スパッタリング法などの薄膜形成法を用いることができる。
このようにして、透視性電極31を作製するための元材としての積層体60(ブランクとも呼ばれる)が得られる。積層体60は、基材フィルム32と、基材フィルム32上に設けられた導線形成層52と、を備えている。導線形成層52は、基材フィルム32側から順に配置された低反射層54、本体層53および低反射層55を含んでいる。
積層体60を準備した後、図5Cに示すように、導線形成層52上に感光性レジスト層71を所定のパターンで形成する。感光性レジスト層71は、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有している。感光性レジスト層71のタイプが特に限られることはない。例えば光溶解型の感光性レジスト層が用いられてもよく、若しくは光硬化型の感光性レジスト層が用いられてもよい。ここでは、光溶解型の感光性レジスト層が用いられる例について説明する。
感光性レジスト層71は、導線51のパターンに対応したパターンで形成されている。感光性レジスト層71は、例えば、はじめに、積層体60の表面上にコーターを用いて感光性レジスト材料をコーティングし、次に、感光性レジスト材料を所定のパターンで露光して現像することによって、所定のパターン形状の感光性レジスト層71が形成される。
次に、図5Dに示すように、感光性レジスト層71をマスクとして低反射層55、本体層53および低反射層54をエッチングする。なお上述のように、低反射層55、本体層53および低反射層54のいずれも、銅を含むよう構成されている。このため、銅を溶解させることができるエッチング液を用いて、低反射層55、本体層53および低反射層54を同時にエッチングすることができる。エッチング液としては、例えばリン硝酢酸が用いられる。
ここで、基材フィルム32の表面粗さが大きいと、表面の凸部上に位置するレジストパターンがガイドローラとの摩擦により傷つきやすくなり、エッチング時にその傷からエッチング液が染み込むことで導線51のパターンが浸食され、著しい場合には導線51が断線してしまう可能性がある。一方、本実施の形態では、基材フィルム32の表面の算術平均粗さRaが3nm以上25nm以下であるため、ガイドローラとの摩擦によりレジストパターンに傷が付くことが低減され、傷から染み込むエッチング液により導線51のパターンが侵食されることが抑制され得る。その結果、例えば平均線幅が2μmに細線化された導線51を安定して作製することが可能となる。
次に、本体層55上に残っている感光性レジスト層71に対して、これを溶解除去する薬液によって洗浄して脱膜処理する。これによって、図5Eに示すように、感光性レジスト層71を除去することができる。このようにして、低反射層55、本体層53、および低反射層54を有する導線形成層52をパターン形成し、これから構成された導線51を備える透視性電極31を得ることができる。
ここで本実施の形態によれば、上述のように、導線51は、90重量%以上の銅を含む本体層53と、本体層53の面上に設けられた窒化銅からなる低反射層54と、を含んでいる。このため、銅の金属光沢に起因して、赤味を帯びた光が観察者に到達してしまうことを、低反射層54によって抑制することができる。また、本体層53、および低反射層54、55のいずれもが銅を含むため、積層体60から透視性電極31を作製する際、銅を選択的に溶かすことができるエッチング液を用いることにより、積層体60の本体層53、低反射層54、55を同時にエッチングして導線51を形成することができる。このため、透視性電極31を作製するために必要になる工数を小さくすることができる。
<第2の実施の形態>
次に、図6〜図10を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、上述の透視性電極31を備えるタッチパネルと表示装置とを組み合わせることによって得られるタッチ位置検出機能付き表示装置について説明する。本実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図6は、タッチ位置検出機能付き表示装置10を示す展開図である。図6に示すように、タッチ位置検出機能付き表示装置10は、タッチパネル30と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置15とを組み合わせることによって構成されている。
図示された表示装置15は、フラットパネルディスプレイとして構成されている。表示装置15は、表示面16aを有した表示パネル16と、表示パネル16に接続された表示制御部(図示せず)と、を有している。表示パネル16は、映像を表示することができるアクティブエリアA1と、アクティブエリアA1を取り囲むようにしてアクティブエリアA1の外側に配置された非アクティブエリア(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。表示制御部は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネル16を駆動する。表示パネル16は、表示制御部の制御信号に基づいて、所定の映像を表示面16aに表示する。すなわち、表示装置15は、文字や図等の情報を映像として出力する出力装置としての役割を担っている。
なお、図6に示すように、タッチパネル30の観察者側、すなわち表示装置15とは反対の側に、透光性を有する保護板12がさらに設けられていてもよい。保護板12は例えば、タッチパネル30の観察者側の面に接着層などによって接着されている。この保護板12は、指などの外部導体との接触によってタッチパネル30のパターンや表示装置15が損傷することを防ぐためのものであり、いわゆる前面板とも称されるものである。
図6に示すように、タッチパネル30は、表示装置15の表示面16aに、例えば接着層(図示せず)を介して接着されている。このタッチパネル30は、2枚の透視性電極31を組み合わせることによって構成されている。図6においては、観察者側に配置された透視性電極が符号31Aで表されており、透視性電極31Aよりも表示装置側に配置された透視性電極が符号31Bで表されている。以下の説明において、符号31Aが付された透視性電極を第1透視性電極31A、符号31Bが付された透視性電極を第2透視性電極31Bとも称する。
図7は、観察者側から見た場合のタッチパネル30を示す平面図である。図7においては、第1透視性電極31Aの構成要素が実線で表され、第2透視性電極31Bの構成要素が点線で表されている。
図7に示すように、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bはそれぞれ、所定の方向に延びる複数の導電パターン41を備えている。ここで、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bは、各々の導電パターン41が互いに交差する方向に延びるよう、配置されている。例えば、第1透視性電極31Aは、その導電パターン41が第1方向D1に沿って延びるよう、配置されている。一方、第2透視性電極31Bは、その導電パターン41が、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って延びるよう、配置されている。
図8は、図7において符号VIIIが付された一点鎖線で囲まれた部分における導電パターン41を拡大して示す平面図である。図8に示すように、第1透視性電極31Aの導電パターン41および第2透視性電極31Bの導電パターン41はそれぞれ、網目状に配置された導線51から構成されている。
図9は、タッチパネル30を図8のIX−IX線に沿って切断した場合を示す断面図である。図9に示すように、タッチパネル30は、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが基材フィルム32の表示装置側に位置するよう、第1透視性電極31Aおよび第2透視性電極31Bを組み合わせることによって構成されている。なお、第1透視性電極31Aと第2透視性電極31Bとの間には接着層38などが介在されていてもよい。
図10は、図9に示すタッチパネル30の一部を拡大して示す断面図である。図10に示すように、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51はいずれも、上述の導線形成層52を含んでいる。ここで図10に示すように、導線形成層52は、本体層53と、本体層53の観察者側に設けられた低反射層54と、本体層53の表示装置側に設けられた低反射層55と、を含んでいる。
本体層53の観察者側に低反射層54が設けられているため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。これによって、導線51が観察者から視認されてしまうことを抑制することができ、このことにより、表示装置15からの映像の視認性が導線51によって妨げられることを抑制することができる。また、本体層53の表示装置側に低反射層55が設けられているため、タッチパネル30に入射した表示装置15からの映像光が導線51によって反射されて表示装置15側に戻り、その後、表示装置15の構成要素によって再び反射されてノイズ光として観察者に到達してしまうことを抑制することができる。
また、上述のように、導線形成層52の本体層53は、その厚みが0.2μm以下になるよう構成されている。本実施の形態においては0.1μmとされている。このため、基材フィルム32の法線方向から傾斜した方向に沿ってタッチパネル30に入射した光が導線形成層52の側面によって反射してしまうことを抑制することができる。このことにより、導線51の側面が観察者から視認されてしまうことや、導線51の側面によって表示装置からの映像光が妨げられてしまうことを抑制することができる。従って、映像の視認性を向上させることができる。
なお、上述した本実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した本実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図9においては、第1透視性電極31Aの導線51および第2透視性電極31Bの導線51のいずれもが基材フィルム32の表示装置側に位置する例を示したが、これに限られることはない。例えば図11に示すように、第1透視性電極31Aの導線51は、基材フィルム32の観察者側に位置し、一方、第2透視性電極31Bの導線51は、基材フィルム32の表示装置側に位置していてもよい。
また図12に示すように、第1透視性電極31Aの導線51は、基材フィルム32の表示装置側に位置し、一方、第2透視性電極31Bの導線51は、基材フィルム32の観察者側に位置していてもよい。
次に、導線51が基材フィルム32の表示装置側に設けられている場合における、導線51の断面形状の好ましい一例について、図13を参照して説明する。
図13に示すように、導線51の導線形成層52は、表示装置15に向かうにつれて先細になるテーパ形状を有している。この場合、基材フィルム32の法線方向から傾斜した方向に沿ってタッチパネル30に入射した外光Lは、導線形成層52のテーパ形状のため、導線51の側面に入射することなく表示装置15側へ抜けていくことができる。このため、外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことをさらに抑制することができる。
導線形成層52の具体的なテーパ形状は、想定される外光の傾斜の程度などに応じて適切に設定されるが、例えば、基材フィルム32の法線方向と導線51の側面とが成す角は10°〜30°の範囲内となっている。
<第3の実施の形態>
次に図14および図15を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態においては、基材フィルム32の両側に導線51が設けられる例について説明する。本実施の形態において、上述の各実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。また、各実施の形態において得られる作用効果が本実施の形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
図14に示すように、透視性電極31は、基材フィルム32と、基材フィルム32の観察者側の面(第1面)32a上に設けられた導線51と、基材フィルム32の表示装置側の面(第2面)32b上に設けられた導線51と、を備えている。第1面32a側の導線51からなる導電パターン41および第2面32b側の導線51からなる導電パターン41は、互いに交差するように設けられている。例えば、同図に於いては、第1面32a上の導電パターン41は紙面と直交方向に、又第2面32b上の導電パターン41は紙面と平行方向に延びている。このため本実施の形態によれば、1枚の透視性電極31によってタッチパネル30を構成することができる。
図15は、図14に示す透視性電極31の一部を拡大して示す断面図である。図15に示すように、基材フィルム32の第1面32aおよび第2面32b上に設けられた導線51は、それぞれ、上述の導線形成層52を含んでいる。このため、観察者側からタッチパネル30に入射した外光が導線51によって反射されて観察者側に戻ってしまうことを抑制することができる。これによって、導線51が観察者から視認されてしまうことを抑制することができ、このことにより、表示装置15からの映像の視認性が導線51によって妨げられることを抑制することができる。
以上の各実施の形態に於いては、透視性電極31の用途をタッチパネルのタッチ位置検知電極を例に説明してきた。但し、本発明の透視性電極31の用途はこれに限定されるわけでは無い。タッチ位置検知電極の他、EL(電場発光)画像表示装置の透視性電極、各種画像表示装置の画面、建築物の窓、車両の窓等に装着する透視性電磁波遮蔽材、建築物の窓、車両の窓等に霜取りや曇り除去の為に装着する透視性加熱電極等の用途に使用する事も可能である。
なお、上述した本実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
図4に示すように、基材フィルム32と、基材フィルム32上に設けられた導線形成層52と、を含む積層体のサンプル(サンプル1及び2)を準備した。導線形成層52は、基材フィルム32側から順に配置された低反射層54、本体層53および低反射層55を含んでいる。導線形成層52は、平均線幅が2μmとなるようにエッチングされて導線51のパターンが作製された。基材フィルム32の透明基材33を構成する材料としては、厚さ100μmの2軸延伸PETフィルムを用いた。基材フィルム32のアクリル系樹脂層34a,34bを構成する材料としては、アクリロイル基を分子中に有する単量体、アクリロイル基を分子中に有するプレポリマー、及びベンゾトリアゾール系光反応開始剤から紫外線硬化型アクリル樹脂を紫外線照射によって架橋硬化せしめたものを用いた。本体層53を構成する材料としては、純度(銅含有量)99.9質量%の銅を用いた。低反射層54、55を構成する材料としては、窒化銅からなる銅化合物を用いた。
また、比較のため、第2アクリル系樹脂層を有しない比較サンプル1〜4を用意した。尚、各サンプルは、アクリル系樹脂層34a、34bのアクリル樹脂中にフィラーとして添加する第1の微粒子Pおよびその粒径、アクリル系樹脂層34a、34bの厚みを変えた他は同一条件で作成された。
次に、各サンプルにおけるアクリル系樹脂層34a、34bの表面特性を、走査型白色干渉計NewView(登録商標)7300(ザイゴ株式会社製)を用いて測定した。具体的な測定条件は、次の通りである。
・×10倍レンズ
・543μm□エリア視野指定
・「Removed」設定:Cylinder
・「Trimmed」設定:ゼロ
各サンプルにおけるマルテンス硬さを、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製微小硬さ試験機(PICODENTOR(登録商標) HM500、ISO14577−1)を用いて測定した。表1には、ビッカース圧子の最大押し込み量が1μmである場合のマルテンス硬さが示されている。さらに、各サンプルにおける鉛筆硬度を、安田精機製作所製 手押し鉛筆引掻き硬度試験機 NO553.9−Sを用い、JIS K5600−5−4−1:1999に準拠して、荷重750g、速度0.5mm/s、測定長10mm、引掻き角度45度の条件で測定した。また、各サンプルのフィルム形状が良好か否かを目視で判断した。ここで、各サンプルにシワが存在しない場合を良好(○)であるとし、シワが存在している場合を不良(×)であるとした。
また、各サンプルの光学特性として、全光線透過率およびヘーズ値を測定した。測定光Lは、導線形成層52側から各サンプルに入射させた。測定器としては、ヘーズ・透過率計HR−100(株式会社村上色彩技術研究所製)を用いた。
各サンプルにおける作製条件、表面特性、硬さ、フィルム形状及び光学特性を表1にまとめて示す。
表1において、Raは算術平均粗さ、Vol Upは基材フィルム32の表面の543μm□の領域に含まれる隆起部の体積の総和、を示している。
表1に示すように、第2アクリル系樹脂層を有するサンプル1およびサンプル2は、シワが目視されず、良好なフィルム形状を有していた。表面特性を表すRaおよびVol Up、並びに、硬さを表すマルテンス硬さおよび鉛筆硬度は、いずれも良好な値を有しており、基材フィルムとガイドローラとの間に十分な滑り性を付与しつつ、アクリル系樹脂層の表面に擦り傷や打痕が生じることを抑制できることが確認された。また、光学特性を表す全光線透過率およびヘーズ値も良好な値を有していた。すなわち、第2アクリル系樹脂層を設けても光学特性が損なわれず、透視性電極として十分な光学特性を有することが確認された。さらに、サンプル1およびサンプル2においては、導線の断線も生じておらず、透視性電極としての良品率は良好であった。
第2アクリル系樹脂層を有しない比較サンプル1では、シワが目視され、透視性電極としては適さないことが確認された。また、Raが3nmより小さく、Vol Upが6.0×1011nm3より小さいことが確認された。これにより、比較サンプル1では、サンプル1およびサンプル2との比較において、基材フィルムとガイドローラとの間の滑り性が劣る可能性がある。
第2アクリル系樹脂層を有しない比較サンプル2では、シワは目視されなかったものの、Raが25nmより大きく、Vol Upが4.0×1012nm3より大きいことが確認された。これにより、比較サンプル2では、サンプル1およびサンプル2との比較において、製造中に表面の凸部上に位置したレジストパターンがガイドローラとの摩擦により傷つきやすくなる可能性がある。レジストパターンに傷が生じると、金属層のエッチング時にその傷からエッチング液が染み込むことで導線のパターンが浸食され、著しい場合には導線が断線してしまう可能性がある。また、比較サンプル2では、マルテンス硬さが175N/mm2より小さく、鉛筆硬度がHより小さいことが確認された。これにより、比較サンプル2では、サンプル1およびサンプル2との比較において、搬送途中に設けられたガイドローラ等との接触により、アクリル系樹脂層の表面に擦り傷や打痕が生じやすくなる可能性がある。アクリル系樹脂層の表面に擦り傷や打痕が生じると、透視性電極に外観不良が発生し、透視性電極を介した透視性が低下する虞がある。
第2アクリル系樹脂層を有しない比較サンプル3およびサンプル4では、シワは目視されなかったものの、マルテンス硬さが175N/mm2より小さく、鉛筆硬度がHより小さいことが確認された。これにより、比較サンプル2では、サンプル1およびサンプル2との比較において、搬送途中に設けられたガイドローラ等との接触により、アクリル系樹脂層の表面に擦り傷や打痕が生じやすくなる可能性がある。アクリル系樹脂層の表面に擦り傷や打痕が生じると、透視性電極に外観不良が発生し、透視性電極を介した透視性が低下する虞がある。