JP6734494B1 - 酸洗槽内で駆動される鋼線材コイルの転動装置 - Google Patents
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Abstract
Description
皮剥工程における高価な皮剥ダイスの短寿命もコスト高の大きな要因である。
1)従来の皮剥における線材の連続走行方式から線材コイルの回分処理方式(コイル丸ご との反復処理)に変更することよって能率向上の基盤を固め、
2)従来の酸洗工程を活用し、
3)高濃度の強酸によって短時間(15分以下)で化学切削して能率飛躍を実現させ、4)水洗を挟んだ濃強酸と希強酸の3段階処理によって切削厚さの均一化を図る。
水洗を挟む理由として濃強酸に浸漬すると化学切削が急激且つ局所的になり均一な切削が困難になるからと段落[0025]に記載されている(水洗はこれを緩和又は分散すると読みとれる)。
第1に溶削の均一性に対する疑問である。線材コイルは多数の線材リングが半径方向に見かけ厚さ約150mm、軸方向に高さ約1〜2mが密集して重なっている。通常の酸洗においてもコイルの内部と外縁部では反応速度が大きく異なることは周知である。当然外縁部は過剰処理になっている。該内外差は内部では酸の出入が小さく反応の進行に伴って当該部の酸が劣化することから生ずる。
溶削の場合、溶削厚さは約100μm以上で極めて大きいので内外差が一層増大すると予測される。これは品質問題だけでなく鋼のロス・酸の消耗・廃酸の増加等は無視できない問題となる。
以上先行例1の実施には問題が多い。
それによると、化学反応のコイル内外差に対して、コイル軸を水平にして酸液内に下半分を浸漬し、軸回りに転動させる。半浸漬コイルを転動させる方法として本願図5に示すV型ベルトコンベアに線材コイルを上置し、ベルト走行により1方向に転動させる。
廃酸問題に対しては、常用され且つ廃酸処理が適切になされている硫酸又は塩酸に限定し、処理能率の不足に対しては処理槽の複数化により解決している。
第3にコイルが1方向に長時間転動するとベルト上で横にずれてくる。放置するとコイル端面は他の構造物と接触し損傷させる。横ずれ防止は当該方法の不可欠要件であるが問題提起と対策の開示が無い。溶削を適切に実施するには上記3問題を解決しなければならない。
さらに改良として、機械部材は普通鋼で構成し、酸腐蝕に対して樹脂を被膜する。
円筒体の周速と接点部のローラー周度とは常に微妙な差異が発生し、鋼どうしのこすれが発現する。鋼板の巻取では特に問題ではないが、当該方法を酸槽内の線材コイルの転動に適用する場合、コイル表面の特定箇所が1回転毎に擦られ、局所腐蝕が発生する。品質上の大きな欠陥となる。
コスト対策として、線材コイルを強酸に浸漬して化学切削を行う方法(先行例1)では溶解速度が大きく能率は飛躍するが他方コイルを形成するリング集団の内部と外縁部の不均一な溶解(切削厚の不足と過剰の発生)と言う問題がある。さらに環境規制対策に困難な弗素含有廃棄物が大量に発生すると言う問題がある。
1)開示された転動装置では既存の酸洗ラインにはスペース上設置困難であること、
2)広幅ベルトの引き上げにより付着液が周辺に飛散し且つ蒸発酸が大量発生すること、
3)1方向転動ではコイルの横ずれが発生すること等が新たな問題となる。
線材表面の特定部の擦れ腐蝕による品質欠陥が大きいと言う問題がある。
本願発明は、機械切削による現行の皮剥工程に代替可能な酸による溶削方法を提供することを目的とし実施容易で且つ簡素な双子ローラー式転動装置を提供する。そのため上記3問題、即ち転動に伴うコイルの直進性・線材表面の局所腐蝕・ローラー耐久を解決すべき課題とする。
構造部材は耐酸性特殊鋼は使用せず、普通鋼を樹脂被膜処理することが設備費用上望ましい。
半浸漬状態とは、コイル軸が水平であり該コイルの下部の内周面は液中、上部の内周面は気中にあるような状態である。
コイルの下部とは、コイル形状を厚肉円筒状と見なし、コイル軸を水平にした場合の軸よりも下方の部分とする。
コイル内部とは、コイル外縁部の内側であり、外縁部とは円筒表面に相当する部分(外周面+内周面+両端面)である。
衝撃緩衝材とは、鋼線材と鋼製ローラーとが直接接触せずゴムタイヤのように柔軟に荷重を受けるローラー外装の部材である。
第2に、双子ローラーの表皮は弾性のある材質で厚く被覆されているため、転動する線材コイルのリング表面を傷つけない。従って局所腐蝕現象が発生しない。
第3に、ローラー形状を鼓型にすることにより直進的走行が維持され、両側部の部材に衝突しない。
第4に、液内外を周回する駆動力伝達機構は槽の内側にある小型最短のスプロケットとタイミングベルトであるから先行例2のような大型のベルトが無く、従って付着液が少なくしかも付着液は槽内に直接落下するので飛散が無く、且つ蒸発酸の発生も極めて少ない。
第5に、ローラーは樹脂被覆され、他の部材も樹脂被膜処理がなされるので、材質には高価な耐酸ステンレス鋼を必要としない。普通鋼でよい。
第6に、既存の酸洗ラインに付設して酸洗に適用すると、反応のコイル内部と外縁部との差が小さいことから短時間で酸化膜を除去することができ、酸洗能率が2倍以上に向上、酸洗コストが軽減される。
第7に、酸洗ライン又は溶削ラインを新設する場合、各槽の実効容量を半減以下とすることができる。これは機材の節約だけでなく濃度・温度その他の処理条件の変更に際して迅速に対応することが容易となる。
図1は本発明の線材コイル転動装置が組み込まれた線材溶削ラインの概略である。線材台車1によって搬入された線材コイル2は吊り具3(例えばC型フック)によりコイル軸を水平にした状態で酸液例えば塩酸を満たした初段処理槽4内に懸架されたコイル転動装置21に上置される。
吊り具3には秤量器(図示せず)が内装され処理前、処理後の線材質量が測定され溶削量が適切に管理される。
コイル転動装置21を図2、図3,図4に従い説明する。該コイル転動装置21はU型懸架枠31と該懸架枠31に内装され線材コイルを上置する水平平行の双子ローラー41と該双子ローラー41を同一方向同一速度で駆動する駆動手段42とから成る。
該懸架枠31の水平頂部32が槽外に設けられた懸架台23上に固定される。
駆動手段42は槽外に設けられた電動機24と、該電動機24の回転軸に設けられたスプロケット25とタイミングベルト26と双子ローラー41の片端に設けられたスプロケットとから成り、前記双子ローラー41を同一方向に回転させる。
半浸漬転動により液面から引き上げられる部位ではコイル内部のリング間の酸が排出され、半周して潜入する部位では酸が新たにリング間に侵入する。このようにしてコイルの内部の反応が低下することなく、コイル外縁部との反応量(=溶削厚さ)の差が小さくなる。即ち全長ほぼ均等な溶削がなされる。
図5は当該問題の解決のための方法を示したもので、ローラーの縦断面を示す。50はローラー軸、51はローラー、52はローラー表面の樹脂被膜である。
本願発明では双子ローラーの表面に衝撃吸収部材53,54,55を設ける。ゴムタイヤのようにゴム又は弾性樹脂によって厚く被覆し、線材とローラー表面の速度差に起因するこすれを前後方向への弾性ずれによって吸収し、擦れや摩耗を解消する。当該被覆はクッションの機能をも果たし、上下左右のフレが滑らかになる。
被覆材の材質はゴム・合成ゴム・弾性樹脂等のどれか1種以上であり、形状はホース状(図5A)・ひも状(図5B)・厚板状(図5C)のものをローラー表面に巻き付ける。被覆厚は数cmがよい。
第1に、転動装置のコイル移送方向寸法はコイル外径以下とすることができ、コンパクトであって駆動源を除いて直方体の槽内に収まり、従って新設時の付設に止まらず、既存の酸洗ラインにも容易に付設され、溶削処理が可能となる。設備費は低廉である。
図6に示すような先行例2の場合、V型処理槽51の該寸法はV型ベルトコンベア54との取り合いの関係から過大になること、及び既存の直方体処理槽53に対しては設置スペースがとれないことが解る。
第3にローラーの表面に設けた厚い弾性被覆により、外周に凹凸のあるコイル(鋼)とローラー(鋼)とが擦れ合うことなく円滑に転動し、局所腐蝕が防止され、工程が安定する。
第4にタイミングベルト26の走行により付着酸が槽上のスプロケット25に引き上げられるが液が周辺に飛散することは無い。従って蒸発酸の発生量は少ない。先行例2のV型ベルトコンベアとは決定的に異なる。
溶削ライン全体を新設する場合、図1に例示するラインにおいて多くの槽に本発明の転動装置が付設される。
既存の酸洗ラインにおいて溶削を行いたい場合は、図2に示すように本転動装置を酸洗槽に懸架する。溶削には適用せず、酸洗のみに使用する場合は転動装置は1台でも良い。
駆動源は1個のギアモーターで構成され、所望回転速度が容易に得られる。転動回転数は1rpm以上が望ましい。過大だとコイル内部の液切りが不完全になる。
以上、装置は単純で実用新案的であるが実用効果は明白である。
Claims (1)
- 酸槽内において鋼線材コイルを半浸漬状態で転動させる装置であって、酸槽外に設けられた懸架台に積載して該酸槽内に懸架されるU型懸架枠と該懸架枠に内装され線材コイルを上置して1方向に転動させる水平平行の双子ローラーと該双子ローラーを同一方向に回転させる駆動手段とから成り、該双子ローラーの形状を鼓型として転動の直進性を維持し、該双子ローラーの全表面を樹脂被膜し、該双子ローラーの転動面にはさらに材質がゴム・合成ゴム・樹脂のどれか一つ以上であり形状がホース状・ひも状・板状の部材によって巻き付け被覆を重ねることにより、鋼線材と鋼製ローラーとの直接接触を回避し、且つ衝撃を吸収することを特徴とする鋼線材コイルの転動装置。
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JP2020026796A JP6734494B1 (ja) | 2020-02-20 | 2020-02-20 | 酸洗槽内で駆動される鋼線材コイルの転動装置 |
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