JP6734494B1 - 酸洗槽内で駆動される鋼線材コイルの転動装置 - Google Patents

酸洗槽内で駆動される鋼線材コイルの転動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼線材コイルを酸により表皮を均一に溶削するに際して実施容易なコイル転動装置を提供する。【解決手段】線材コイル転動装置はコイル軸を水平にしてコイル22を上置する水平平行の双子ローラーと、該ローラーを内装しコイルが酸槽内で半浸漬状態になるよう槽外に設けられた懸架台に懸架するU型懸架枠と、該双子ローラーを駆動する駆動手段とから成り、該双子ローラーの形状が鼓型であって直進走行を維持し、該双子ローラーは弾性部材によって被覆され鋼どうしの擦れによる局所化学反応を防止し、コイル内外の反応量を均等にさせる。設備が極めて簡素である。【選択図】図2

Description

本発明は鋼線材を伸線して鋼線に仕上げるに当たり、表面欠陥が残存しない鋼線とするため予め該線材の表皮層を化学的に除去する装置に関している。
弁ばね用鋼線、軸受け用鋼線等高級鋼線では製品に表面キズや脱炭層が残存していると耐疲労性が損なわれるので上記の欠陥は予め線材の段階で除去される。除去には皮剥工程が適用される。該工程は線材をコイルの一端から直進して走行させ、引抜ダイスを逆向きにしたような皮剥ダイスによって引抜き、表皮を全長に渡って切削除去する。切削深さは100〜200μmであって欠陥はほとんど消滅するが歩留まり損は5%を越える。問題は高コストである。
その理由は工程が長い。第1に線材を切削に適した金属組織に改質する熱処理がなされる。次ぎに皮剥工程に適する酸洗を含む表面処理がなされ、次いで皮剥工程では線材を走行させつつ引抜第1パスで真円化を行い、第2パスで表皮を切削除去する。皮剥後には表皮の切削硬化組織を軟化させ、後続の伸線に適した組織にするため再び熱処理がなされる。都合4工程が必要となる。
皮剥工程における高価な皮剥ダイスの短寿命もコスト高の大きな要因である。
特許文献1(先行例1)には、上記の問題に対して機械切削(上記皮剥)から化学切削(酸洗)に替えることよって解決する方法が開示されている。それによると、
1)従来の皮剥における線材の連続走行方式から線材コイルの回分処理方式(コイル丸ご との反復処理)に変更することよって能率向上の基盤を固め、
2)従来の酸洗工程を活用し、
3)高濃度の強酸によって短時間(15分以下)で化学切削して能率飛躍を実現させ、4)水洗を挟んだ濃強酸と希強酸の3段階処理によって切削厚さの均一化を図る。
効果は、まず機械切削が無いので熱処理工程が省略できること、次に1コイル約2tが約10分で処理されるので能率は容易に約10t/h(機械切削の数倍)が得られると記載されている。
水洗を挟む理由として濃強酸に浸漬すると化学切削が急激且つ局所的になり均一な切削が困難になるからと段落[0025]に記載されている(水洗はこれを緩和又は分散すると読みとれる)。
上記方法の問題点を検討する。
第1に溶削の均一性に対する疑問である。線材コイルは多数の線材リングが半径方向に見かけ厚さ約150mm、軸方向に高さ約1〜2mが密集して重なっている。通常の酸洗においてもコイルの内部と外縁部では反応速度が大きく異なることは周知である。当然外縁部は過剰処理になっている。該内外差は内部では酸の出入が小さく反応の進行に伴って当該部の酸が劣化することから生ずる。
酸洗では上記内外差による損失はあまり大きくない。その理由は酸洗の主目的は酸化膜(膜厚約10μm)の溶解除去であって脱膜完了の段階で処理を終える。よく観察すると脱膜は比較的早く進むが鉄の溶解は酸化膜のように早くはない。しかも劣化した酸は脱膜には有効だが溶解には無効に近いので外縁部の過剰処理による鉄のロスは少ない。
溶削の場合、溶削厚さは約100μm以上で極めて大きいので内外差が一層増大すると予測される。これは品質問題だけでなく鋼のロス・酸の消耗・廃酸の増加等は無視できない問題となる。
第2の問題は廃棄物の質である。硝酸、弗硝酸、弗硫酸等の強酸の使用は廃酸処理を困難且つ高コストにする。NOXの管理も負担だが、弗素が各所に拡散する。弗素は厳しく環境規制されている。規制に対処し得る廃棄物処理設備は複雑・高度・高価になる。
第3の問題は廃棄物の量である。皮剥質量は線材質量の5%以上と説明したが、通常の酸洗では線材のロスは約0.4%である。即ち10倍以上の酸の消費と廃酸処理の負荷が生ずる。上記強酸の使用は一層負担となる。
以上先行例1の実施には問題が多い。
特許文献2(先行例2)には先行例1の問題、1)コイル内外の不均一反応、2)廃酸処理、を解決する方法が開示されている。
それによると、化学反応のコイル内外差に対して、コイル軸を水平にして酸液内に下半分を浸漬し、軸回りに転動させる。半浸漬コイルを転動させる方法として本願図5に示すV型ベルトコンベアに線材コイルを上置し、ベルト走行により1方向に転動させる。
廃酸問題に対しては、常用され且つ廃酸処理が適切になされている硫酸又は塩酸に限定し、処理能率の不足に対しては処理槽の複数化により解決している。
当該方法の問題点を検討する。第1に酸洗又は溶削ラインは複数の処理槽を渡り歩く構造になっている。当該の処理槽51の形状・寸法は当該のV型ベルトコンベア54の構造・寸法を前提に決められる。通常の直方体の処理槽(図5−53)では槽長(コイル移送方向)はコイル径よりも多少大きい程度に設計され当該コンベアを設ける必要充分なスペースは無い。無理に設置すると隣接槽が稼働不能になる。ラインを新設する場合には当問題の解決は困難ではない。ライン長は増加するがスペースはある。しかし既存の酸洗ラインを改造して溶削するには当該策は実施不能である。
第2にコイル高さに見合う広幅のベルトが常時槽内から槽の外側に引き上げられ付着液が周辺に飛散する。さらに酸蒸気が大量発生するという問題も生ずる。
第3にコイルが1方向に長時間転動するとベルト上で横にずれてくる。放置するとコイル端面は他の構造物と接触し損傷させる。横ずれ防止は当該方法の不可欠要件であるが問題提起と対策の開示が無い。溶削を適切に実施するには上記3問題を解決しなければならない。
特許文献3(先行例3)には、先行例2の3問題を解決する方法が開示されている。それによると、線材コイルを転動する方法として、酸槽中に懸架した同一方向に回転する水平平行の双子ローラーに該線材を積載して転動させることによってスペースの問題と酸の飛散問題を解決し、コイルの横ずれに対しては拘束ガイドを設ける。
さらに改良として、機械部材は普通鋼で構成し、酸腐蝕に対して樹脂を被膜する。
当該方法の問題点は、防蝕用の樹脂被膜は防蝕には有効だが、ローラー表面に対しては凹凸のある鋼線材コイルの転動により簡単に剥離し、ローラーの耐久性だけでなく、ローラーと鋼線材がこすれて線材表面の一部が局所溶削が進行し、品質上問題が大きい。
特許文献4には、鋼板の巻取に際して、円筒状物体を転動させる常套手段である水平平行の双子ローラーを使用し、横ずれ防止には該ローラーの形状を鼓型(ローラー直径を軸方向中央部で最小とし、両端に向かって増大させる)として自動調心する。
円筒体の周速と接点部のローラー周度とは常に微妙な差異が発生し、鋼どうしのこすれが発現する。鋼板の巻取では特に問題ではないが、当該方法を酸槽内の線材コイルの転動に適用する場合、コイル表面の特定箇所が1回転毎に擦られ、局所腐蝕が発生する。品質上の大きな欠陥となる。
公開特許公報2004−2922 特許第6096820号 公開特許公報2018−178230 韓国登録特許第10−1148881
弁ばね用鋼線等高級鋼線では表面欠陥の除去のため線材の段階で全表皮が切削除去(皮剥工程の適用)される。皮剥自体が高コストであるうえ、前後に切削のための熱処理が必要になって、コストが問題となっている。
コスト対策として、線材コイルを強酸に浸漬して化学切削を行う方法(先行例1)では溶解速度が大きく能率は飛躍するが他方コイルを形成するリング集団の内部と外縁部の不均一な溶解(切削厚の不足と過剰の発生)と言う問題がある。さらに環境規制対策に困難な弗素含有廃棄物が大量に発生すると言う問題がある。
先行例2では1方向V型ベルトコンベア上でコイルを酸液に半浸漬状態で回転させてリング間の酸液を排出して不均一反応を解決し、酸種の特定により廃酸問題を解決し、処理槽数により能率問題を解決しているが、
1)開示された転動装置では既存の酸洗ラインにはスペース上設置困難であること、
2)広幅ベルトの引き上げにより付着液が周辺に飛散し且つ蒸発酸が大量発生すること、
3)1方向転動ではコイルの横ずれが発生すること等が新たな問題となる。
先行例3では酸槽中に設けた水平平行の双子ローラーにより上記2問題を解決しているが、コイルとローラー及び横ずれ防止カラーとの擦れにより防蝕用の樹脂被膜の耐久や
線材表面の特定部の擦れ腐蝕による品質欠陥が大きいと言う問題がある。
本願発明は、機械切削による現行の皮剥工程に代替可能な酸による溶削方法を提供することを目的とし実施容易で且つ簡素な双子ローラー式転動装置を提供する。そのため上記3問題、即ち転動に伴うコイルの直進性・線材表面の局所腐蝕・ローラー耐久を解決すべき課題とする。
本発明は鋼線材コイルを対向流多段カスケード方式の酸処理ラインにおいて線材表皮をコイル回分式に酸によって溶削するに際して、酸槽内のコイルを半浸漬状態で1方向に転動させることによりコイル内部と外縁部の化学反応量を均等とするためのコイル転動装置に関している。
具体的には、酸槽内において鋼線材コイルを半浸漬状態で転動させる装置であって、酸槽外に設けられた懸架台に積載して該酸槽内に懸架されるU型懸架枠と該懸架枠に内装されコイルを上置して1方向に転動させる水平平行の双子ローラーと該双子ローラーを同一方向に回転させる酸槽外に設けられた駆動手段とから成り、該双子ローラーの形状は鼓型であり、該双子ローラーの表面には材質がゴム・合成ゴム・弾性樹脂のどれか一つ以上であり形状がホース状・ひも状(樹脂ロープ等)・厚板状のどれか一つ以上の衝撃緩衝材が被覆されていることを特徴とする鋼線材コイルの転動装置である。
構造部材は耐酸性特殊鋼は使用せず、普通鋼を樹脂被膜処理することが設備費用上望ましい。
ここで述語の定義として、
半浸漬状態とは、コイル軸が水平であり該コイルの下部の内周面は液中、上部の内周面は気中にあるような状態である。
コイルの下部とは、コイル形状を厚肉円筒状と見なし、コイル軸を水平にした場合の軸よりも下方の部分とする。
コイル内部とは、コイル外縁部の内側であり、外縁部とは円筒表面に相当する部分(外周面+内周面+両端面)である。
衝撃緩衝材とは、鋼線材と鋼製ローラーとが直接接触せずゴムタイヤのように柔軟に荷重を受けるローラー外装の部材である。
第1に、本発明の転動装置は簡素であり、且つ極めてコンパクトであって直列に連設される処理槽間や周辺に特別の設置スペースを必要としない。従って既存の酸洗ラインにも容易に付設・着脱することができる。
第2に、双子ローラーの表皮は弾性のある材質で厚く被覆されているため、転動する線材コイルのリング表面を傷つけない。従って局所腐蝕現象が発生しない。
第3に、ローラー形状を鼓型にすることにより直進的走行が維持され、両側部の部材に衝突しない。
第4に、液内外を周回する駆動力伝達機構は槽の内側にある小型最短のスプロケットとタイミングベルトであるから先行例2のような大型のベルトが無く、従って付着液が少なくしかも付着液は槽内に直接落下するので飛散が無く、且つ蒸発酸の発生も極めて少ない。
第5に、ローラーは樹脂被覆され、他の部材も樹脂被膜処理がなされるので、材質には高価な耐酸ステンレス鋼を必要としない。普通鋼でよい。
第6に、既存の酸洗ラインに付設して酸洗に適用すると、反応のコイル内部と外縁部との差が小さいことから短時間で酸化膜を除去することができ、酸洗能率が2倍以上に向上、酸洗コストが軽減される。
第7に、酸洗ライン又は溶削ラインを新設する場合、各槽の実効容量を半減以下とすることができる。これは機材の節約だけでなく濃度・温度その他の処理条件の変更に際して迅速に対応することが容易となる。
本発明の線材コイル転動装置を内装した線材溶削ラインの概略を示す。 本発明の線材コイル転動装置の概略図であり、Aはコイル移送方向に見た図、Bはコイル軸方向に見た図である。 本発明の転動装置の一部であるU型懸架枠の構造を示す。 本発明の転動装置の要部である水平平行双子ローラーの形状を示す。 本発明の転動装置の要部である水平平行双子ローラーの縦断面図であり、表面の構造を示す。 先行例2におけるコイルの半浸漬転動方法を示す。
以下実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の線材コイル転動装置が組み込まれた線材溶削ラインの概略である。線材台車1によって搬入された線材コイル2は吊り具3(例えばC型フック)によりコイル軸を水平にした状態で酸液例えば塩酸を満たした初段処理槽4内に懸架されたコイル転動装置21に上置される。
該コイル2を半浸漬状態で軸周りに転動させ、線材表皮を所定厚さだけ溶削し、次いで第2段処理槽5に移送し、同様の処理を行い目標厚さ(例えば100μm)まで溶削する。空いた初段処理槽4には次のコイルが負荷され後続する。先行コイルは水洗槽6に移送し浸漬して洗浄し、次いで乾燥槽7(例えば真空タンク)に移送して付着水を除去し、溶削線材8として仕上げ、台車9により搬出する。
吊り具3には秤量器(図示せず)が内装され処理前、処理後の線材質量が測定され溶削量が適切に管理される。
処理酸は所定濃度の塩酸又は硫酸のどちらかとする。新液は配管10から第2段処理槽5に流入する。増加分はカスケード式に初段槽4に流入し、該初段槽4を通過して排出管11から廃酸回収系(図示せず)に誘導される。その間鉄との反応によって酸濃度を減じつつ鉄イオン濃度が増加する。初段槽及び第2段槽の液の濃度と温度は所定値に管理される。
円筒状の物体を転動させる方法は種々ある。本願発明では常套手段の一つであり、装置寸法を小さくし易い水平平行の双子ローラー方式を採用する。
コイル転動装置21を図2、図3,図4に従い説明する。該コイル転動装置21はU型懸架枠31と該懸架枠31に内装され線材コイルを上置する水平平行の双子ローラー41と該双子ローラー41を同一方向同一速度で駆動する駆動手段42とから成る。
該懸架枠31の水平頂部32が槽外に設けられた懸架台23上に固定される。
駆動手段42は槽外に設けられた電動機24と、該電動機24の回転軸に設けられたスプロケット25とタイミングベルト26と双子ローラー41の片端に設けられたスプロケットとから成り、前記双子ローラー41を同一方向に回転させる。
ローラーの回転によりコイルが転動する。該コイルの下部の内周面は液中、上部の内周面は気中にある半浸漬状態で転動するよう処理槽の水位又は懸架水準が設定される。
半浸漬転動により液面から引き上げられる部位ではコイル内部のリング間の酸が排出され、半周して潜入する部位では酸が新たにリング間に侵入する。このようにしてコイルの内部の反応が低下することなく、コイル外縁部との反応量(=溶削厚さ)の差が小さくなる。即ち全長ほぼ均等な溶削がなされる。
1方向の転動によりコイルは横ずれし、たびたび懸架枠とこすれあって線材表面及び懸架枠を傷つける。転動装置には横ずれを拘束する手段が不可欠である。本願発明では鉄道車輪とレールとのジオメトリーを応用する。ローラー形状を鼓型、即ちローラー直径を両端部で大きくし、中央部に向かって縮小する。その結果例えばコイルが左側に片寄るとコイルの左側外周の速度が増加、右側は低下しコイルは中央部へ回帰し、多少振れながらも概ね直進性が維持される。
鋼線材コイルの転動に対してもう一つ重要な注意点がある。酸液内で鋼と鋼が擦れ合うと当該部の化学反応が刺激される。局所腐蝕が生じて不均一溶削となる。コイルはバラバラのリングを強制的に結束したもので外形には凹凸がある。その上剛体ではなく感覚的には弾性体であり、転動に際して円滑に転動せずこすれが生じ易い。
図5は当該問題の解決のための方法を示したもので、ローラーの縦断面を示す。50はローラー軸、51はローラー、52はローラー表面の樹脂被膜である。
本願発明では双子ローラーの表面に衝撃吸収部材53,54,55を設ける。ゴムタイヤのようにゴム又は弾性樹脂によって厚く被覆し、線材とローラー表面の速度差に起因するこすれを前後方向への弾性ずれによって吸収し、擦れ摩耗を解消する。当該被覆はクッションの機能をも果たし、上下左右のフレが滑らかになる。
被覆材の材質はゴム・合成ゴム・弾性樹脂等のどれか1種以上であり、形状はホース状(図5A)・ひも状(図5B)・厚板状(図5C)のものをローラー表面に巻き付ける。被覆厚は数cmがよい。
駆動伝達機構のスプロケット及び軸・軸受けとも硬質樹脂製として円滑に回転し、タイミングベルトも強力な樹脂製が市販されている。懸架枠等の鋼製部材には、耐酸性の高級特殊鋼(例;SUS316L)は使用せず、普通鋼を使用して、表面には防蝕樹脂被膜を処理する。被膜厚は1ミリ前後でよい。
本転動装置の特徴をまとめる。
第1に、転動装置のコイル移送方向寸法はコイル外径以下とすることができ、コンパクトであって駆動源を除いて直方体の槽内に収まり、従って新設時の付設に止まらず、既存の酸洗ラインにも容易に付設され、溶削処理が可能となる。設備費は低廉である。
図6に示すような先行例2の場合、V型処理槽51の該寸法はV型ベルトコンベア54との取り合いの関係から過大になること、及び既存の直方体処理槽53に対しては設置スペースがとれないことが解る。
第2にローラー形状の鼓型化により線材コイルの運動は、左右に振れながらもほぼ直線的に転動し、懸架枠に接触することがない。
第3にローラーの表面に設けた厚い弾性被覆により、外周に凹凸のあるコイル(鋼)とローラー(鋼)とが擦れ合うことなく円滑に転動し、局所腐蝕が防止され、工程が安定する。
第4にタイミングベルト26の走行により付着酸が槽上のスプロケット25に引き上げられるが液が周辺に飛散することは無い。従って蒸発酸の発生量は少ない。先行例2のV型ベルトコンベアとは決定的に異なる。
第5に本転動装置は従来の酸洗にも容易に適用することができる。コイル内部の反応が促進されるので酸洗能率は2倍以上、酸の消費は半分以下に向上する。
鋼線材コイルの単重は通常約2トンであり寸法は、外径約1.1〜1.2m、内径約0.8〜0.9m、肉厚約0.15m、高さ約1.4〜1.8mである。当寸法を基準にして処理槽の寸法、転動装置の寸法が決められる。
溶削ライン全体を新設する場合、図1に例示するラインにおいて多くの槽に本発明の転動装置が付設される。
既存の酸洗ラインにおいて溶削を行いたい場合は、図2に示すように本転動装置を酸洗槽に懸架する。溶削には適用せず、酸洗のみに使用する場合は転動装置は1台でも良い。
本転動装置の大部分は槽内にあって酸による腐食が問題となる。引用文献3に開示された対策を踏襲する。高価な耐蝕鋼材を使用することはない。普通鋼で製作された懸架枠・転動ローラーに全面的に樹脂の被膜処理がなされ、また樹脂製軸受けが使用される。
駆動源は1個のギアモーターで構成され、所望回転速度が容易に得られる。転動回転数は1rpm以上が望ましい。過大だとコイル内部の液切りが不完全になる。
以上、装置は単純で実用新案的であるが実用効果は明白である。
線材表皮を溶削するに当たり本願発明のコイル転動装置は効果的に適用される。
1:線材台車 2:線材コイル 3:吊り具 4:初段処理槽 5:第2段処理槽 6:水洗槽 7:乾燥槽 8:溶削線材 9:搬出台車 10:配管 11:排出管 21:転動装置 22:線材コイル 23:懸架台 24;電動機 25:スプロケット 26:タイミングベルト 27:スプロケット 31:懸架枠 41:双子ローラー 42:駆動手段 50:ローラー軸 51:ローラー 52:樹脂被膜 53:ゴムホース製衝撃吸収被覆 54:ひも状合成ゴム製衝撃吸収被覆 55:厚板状弾性樹脂製衝撃吸収被覆 61:V型処理槽 62:線材コイル 63:直方体処理槽 64:V型ベルトコンベア

Claims (1)

  1. 酸槽内において鋼線材コイルを半浸漬状態で転動させる装置であって、酸槽外に設けられた懸架台に積載して該酸槽内に懸架されるU型懸架枠と該懸架枠に内装され線材コイルを上置して1方向に転動させる水平平行の双子ローラーと該双子ローラーを同一方向に回転させる駆動手段とから成り、該双子ローラーの形状を鼓型として転動の直進性を維持し、該双子ローラーの全表面を樹脂被膜し、該双子ローラーの転動面にはさらに材質がゴム・合成ゴム・樹脂のどれか一つ以上であり形状がホース状・ひも状・板状の部材によって巻き付け被覆を重ねることにより、鋼線材と鋼製ローラーとの直接接触を回避し、且つ衝撃を吸収することを特徴とする鋼線材コイルの転動装置。
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