JP2022086638A - 金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置 - Google Patents

金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】りん酸塩皮膜の生成反応を従来以上に促進して、りん酸塩化成処理時間を短縮できる、金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置を提供する。【解決手段】処理槽内に保持したりん酸塩化成処理液に金属線材を通過させることにより、前記金属線材の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成する金属線材のりん酸塩化成処理方法であって、りん酸塩化成処理中に、前記処理槽内の前記りん酸塩化成処理液を、前記金属線材の通線方向と平行な方向に流動させる、金属線材のりん酸塩化成処理方法。【選択図】図2

Description

本発明は、金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置に関する。
従来、金属線材の冷間加工(例えば、伸線加工、圧造など)を円滑に行うための前処理として、デスケーリング、りん酸塩化成処理および潤滑処理が行われている。上記前処理は、通常、バッチ方式で処理(すなわち、バッチ処理)される。バッチ処理とは、金属線材コイルを酸洗槽でデスケーリングし、りん酸亜鉛等を含むりん酸塩化成処理槽に浸漬し、その後潤滑処理槽に浸漬して皮膜を形成させる一連の処理をいう。しかし、バッチ処理は、コイル状で処理するため、例えばりん酸塩化成処理では、線材と線材が接触している部分にりん酸塩化成処理液が十分に回り込まず、皮膜むらが発生し、冷間加工時に焼付きの原因となることがあった。
そこで、コイルから線材をライン状に巻出して、連続的にデスケーリング、りん酸塩化成処理および潤滑皮膜処理し、伸線を行うインライン処理方法がある。インライン処理方法は、生産能力を高めるべく金属線材の通線速度を高めると、りん酸塩化成処理槽内の浸漬時間を十分に確保することができず、金属線材表面に十分な皮膜を形成できない場合がある。浸漬時間を確保するためには、りん酸塩化成処理槽を金属線材の進行方向に長くする必要があり、設備が大型化してしまう。そのため、りん酸塩化成処理において、金属線材表面に十分な皮膜を形成させることを目的に、りん酸塩皮膜の生成反応を促進させる技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、潤滑下地処理(りん酸塩化成処理)においてリン酸亜鉛Ca(りん酸塩皮膜)の付着量を増し、金属線材の通線速度を高めることが可能な連続伸線方法が開示されている。特許文献1では、線材を長手方向に直線的かつ連続的に移動させ、脱スケール後、鉄・亜鉛粒によるブラストを行ない、金属線材の表面に鉄・亜鉛合金層を形成させ、その後リン酸亜鉛Ca溶液中を通して潤滑下地処理(りん酸塩化成処理)を行ない、水洗後、ステアリン酸Caまたはステアリン酸Na溶液中を通して潤滑処理を行ない、ついで乾燥した後伸線する。
特許文献2には、りん酸塩皮膜化成処理において、化成反応の促進および短時間化、ならびに得られるりん酸塩皮膜結晶の微細化を図るために用いられる、経時安定性に優れた表面調整用前処理液および表面調整方法が開示されている。特許文献2では、金属のりん酸塩皮膜化成処理前の表面調整用前処理液は、粒径が5μm以下のMnのりん酸塩粒子を0.001~30g/Lの濃度で少なくとも含み、アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩またはこれらの混合物を含有し、PHを4~13に調整されている。
特許文献3には、ベアリング転動体を製造する際に、圧造ヘッドのカス詰まりが生じにくく、しかも線材に対する防錆効果にも優れる皮膜付き軸受用鋼線材の製造方法が開示されている。特許文献3の製造方法は、所定の成分を含有するりん酸塩化成処理液により、線材基体の表面を化成処理して、当該表面に前記りん酸塩皮膜を形成する化成処理工程を含む。化成処理工程では、りん酸塩化成処理液に、振動発生装置により振動を加えたり、あるいはタンク内に設けられた超音波発生装置により超音波を印加してもよく、りん酸塩化成処理液と線材基体との接触を防止あるいは抑制し、均一なりん酸塩皮膜を得られることが記載されている。
特開昭62-207512号公報 特開2003-160882号公報 特開平10-330953号公報
りん酸塩化成処理は、金属線材の表面とりん酸塩化成処理液との化学反応を伴うため、インライン処理方法のうちでも時間のかかる処理工程となっている。また、りん酸塩化成処理が十分ではなく、りん酸塩皮膜の隙間から金属線材が露出すると、その後の潤滑処理において潤滑剤が金属線材の表面に十分に乗らず、冷間加工時の焼付きを生じ得る。
冷間加工性を維持しながら生産性を高めるためには、金属線材の通線速度を早くして単位時間当たりの生産量を増加し、かつりん酸塩化成処理液に十分な時間だけ浸漬することが考えられる。しかしながら、上述したように、通線速度を早くした上で浸漬時間を確保するためには、りん酸塩化成処理槽のサイズアップが必要となり、設備投資によるコストアップとなる問題がある。
そこで、インライン処理方法において、さらなる生産性の向上を達成しつつ、従来のりん酸塩化成処理槽と同程度の寸法のりん酸塩化成処理槽によって十分なりん酸塩化成処理を行うことが求められる。そのためには、これまで以上に短時間で、十分なりん酸塩化成処理を行うことのできる技術が求められている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、りん酸塩皮膜の生成反応を従来以上に促進して、りん酸塩化成処理時間を短縮できる、金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置を提供することにある。
本発明の態様1は、
処理槽内に保持したりん酸塩化成処理液に金属線材を通過させることにより、前記金属線材の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成する金属線材のりん酸塩化成処理方法であって、
りん酸塩化成処理中に、前記処理槽内の前記りん酸塩化成処理液を、前記金属線材の通線方向と平行な方向に流動させる、金属線材のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様2は、
前記金属線材の通線方向において、前記金属線材の通線速度に対する前記りん酸塩化成処理液の流動速度の相対速度の絶対値が20m/分以上である、態様1に記載のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様3は、
前記金属線材の通線方向と前記りん酸塩化成処理液の流動方向が逆方向である、態様1または2に記載のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様4は、
前記金属線材の通線方向と前記りん酸塩化成処理液の流動方向が同一方向である、態様1または2に記載のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様5は、
態様1~4のいずれか1つに記載の金属線材のりん酸塩化成処理方法に使用されるりん酸塩皮膜処理装置であって、
前記処理槽と、
前記処理槽内の前記りん酸塩化成処理液を流動させるための液体流動機構とを備えた、りん酸塩化成処理装置である。
本発明の金属線材のりん酸塩化成処理方法によれば、りん酸塩皮膜の生成反応を促進することができるので、皮膜生成速度が上昇し、りん酸塩化成処理時間を短縮することができる。また、本発明のりん酸塩化成処理装置によれば、上記のりん酸塩化成処理方法を適切に実現することができる。
図1は、金属線材の皮膜処理(インライン処理)の各工程を説明するための模式図である。 図2は、りん酸塩化成処理装置を例示した模式断面図である。 図3は、実施例における皮膜付着量の実験結果を示すグラフである。 図4は、比較例1の金属線材の表面のSEM写真である。 図5は、実施例1の金属線材の表面のSEM写真である。 図6は、実施例2の金属線材の表面のSEM写真である。 図7は、実施例3の金属線材の表面のSEM写真である。 図8は、実施例4の金属線材の表面のSEM写真である。 図9は、実施例5の金属線材の表面のSEM写真である。
金属線材をりん酸塩化成処理液(以下、単に「処理液」という場合がある)中に通過させると、処理液中の皮膜成分が金属線材と反応して、金属線材の表面にりん酸塩皮膜が形成される。金属線材表面近傍に存在する処理液は、時間と共に、金属線材表面から溶解した金属イオン濃度の増加と、金属線材表面への皮膜形成に伴う皮膜成分の濃度の減少が生じる。金属濃度が高く皮膜成分濃度が低い処理液は皮膜生成反応性が低いため、そのような処理液が金属線材表面に存在すると、皮膜生成速度が低下する。つまり、皮膜生成速度は経時的に低下して、りん酸塩化成処理時間の増加の原因となり得る。
そこで、皮膜生成速度の低下を抑制する目的で、りん酸塩化成処理中に、りん酸塩化成処理液に撹拌または超音波振動を付与して、皮膜生成反応性が低下した処理液を金属表面から除去することなどが想定される。
しかしながら、発明者らは鋭意検討した結果、りん酸塩化成処理中に、処理液を、金属線材の通線方向と平行方向に流動させることで、皮膜生成反応性が低下した処理液を金属線材の表面から効率よく除去でき、皮膜生成速度の経時的低下が改善されることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、処理槽内に保持したりん酸塩化成処理液(処理液)に金属線材を通過させることにより、前記金属線材の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成する金属線材のりん酸塩化成処理方法であって、りん酸塩化成処理中に、前記処理槽内の前記りん酸塩化成処理液を、前記金属線材の通線方向と平行な方向に流動させるものである。
本発明によれば、皮膜生成反応性が低下した処理液を金属線材の表面から効率よく除去できるので、皮膜生成反応性の高い処理液(つまり、金属イオン濃度が低く皮膜成分が高い処理液のことであり、本明細書では「フレッシュな処理液」と呼ぶことがある)を、金属線材表面に効率よく接触させることが可能になる。これにより、りん酸塩皮膜の生成反応が促進されて、時間が経過しても皮膜生成速度を高いまま維持することができるので、りん酸塩化成処理時間を短縮することができる。
以下、本発明に係るりん酸塩化成処理方法と、その処理方法に適したりん酸塩化成処理装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、金属線材の皮膜処理(インライン処理)の各工程を説明するための模式図である。金属線材の皮膜処理は、少なくとも、りん酸塩化成処理と潤滑処理とを含み、さらにデスケーリング、水洗、乾燥などの工程を含んでもよい。
図1に示すインライン処理は、(1)金属線材コイル1をサプライスタンド2から巻出し、(2)矯正機4で矯正後に、(3)デスケーリングし、(4)りん酸塩化成処理、(5)水洗、(6)潤滑処理、および(7)乾燥した後に、(8)巻き取りする工程から構成される。金属線材は、鋼材、アルミニウム、亜鉛などが挙げられるが、このうち鋼材が好ましい。以下では、金属線材は鋼材であることを前提として説明する。本発明は、上記(1)~(8)の工程のうち、後述の通り(4)りん酸塩化成処理に関する。
上記(4)りん酸塩化成処理は、りん酸塩化成処理液(処理液)中に金属線材3を通過させて、金属線材3の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成させる工程である。りん酸塩皮膜は、金属線材3の錆発生を抑制する。さらに、りん酸塩皮膜は、伸線などの冷間加工において、後述する潤滑剤をダイス内に引込むキャリアーの役目をもち、潤滑剤の下地層として有用である。このような効果を十分に発揮させるには、地鉄露出させることなく、金属線材3の表面全体に皮膜を生成させる必要がある。
図2は、りん酸塩化成処理を行うりん酸塩化成処理装置10を例示した模式断面図である。図2において、りん酸塩化成処理装置10は、金属線材3を処理するための処理液16を保持しているりん酸塩化成処理槽19(以下単に「処理槽19」という場合がある)と、処理槽19中の処理液16を流動させるための液体流動機構(ポンプ)51とを備えている。さらに、処理槽19から流出した処理液16を集めるための集液部13と、集めた処理液16を溜めるためのタンク12とを備えていてもよい。
図2に示すように、処理槽19内には処理液16が保持されている。処理液16は、少なくとも金属線材3が浸漬するのに十分な量が、処理槽19内に保持されていればよい。なお、図2に示すように、処理槽19の内部全体が処理液16で満たされていてもよい。
集液部13は、処理槽19の下側に配置されており、処理槽19からオーバーフローした処理液16をタンク12に集める。タンク12に溜められた処理液16は、ポンプ51を用いて、配管(20Aまたは20B)を介して処理槽19の一端に流入される。ポンプ51から、配管20Aを介して処理槽19の線材排出口15側から処理液16を流入し、流動方向16Aに処理液16を流動させて、線材導入口14側から排出させるか、あるいはその逆に、ポンプ51から、配管20Bを介して処理槽19の線材導入口14側から処理液16を流入し、流動方向16Bに処理液16を流動させて、線材排出口15側から排出させる。
以上のようにして、処理液16は循環している。
金属線材3は、線材導入口14から処理槽19内に導入され、処理液16中を通過することにより、金属線材3の表面にりん酸塩皮膜が連続的に形成された後、線材排出口15から排出される。処理槽19内において、金属線材3は、通線方向3Aで線材導入口14から線材排出口15に移動し、その一方で、処理液16は、流動方向16Aで線材排出口15から線材導入口14に向かって一方向に流動するか、あるいは流動方向16Bで線材導入口14から線材排出口15に向かって一方向に流動する。これにより、りん酸塩化成処理中に、処理液16を金属線材3の通線方向3Aと平行な方向に流動させることができる。
処理液16の流動方向は矢印16Aの方向にしてもよく、金属線材3の通線方向3Aと処理液16の流動方向16Aとは「逆方向」に平行となる。処理液16を流動方向16Aに流動させる場合、処理槽19の線材排出口15側に配管20Aを接続する。処理液16は、ポンプ51によって配管20Aを介して線材排出口15側から処理槽19に入れられ、処理槽19内を流動方向16Aに流動して線材導入口14から排出される。
また、処理液16の流動方向は矢印16Bの方向にしてもよく、金属線材3の通線方向3Aと、処理液16の流動方向16Bとは「同一方向」に平行になる。処理液16を流動方向16Bに流動させる場合、処理槽19の線材導入口14側に配管20Bを接続する。処理液16は、ポンプ51によって配管20Bを介して線材導入口14側から処理槽19に入れられ、処理槽19内を流動方向16Bに流動して線材排出口15から排出される。
金属線材3の通線方向3Aと平行な流動方向16Aまたは16Bに流動する処理液16は、金属線材3の表面から、皮膜生成反応性が低下した処理液を除去する。そのため、金属線材3の表面は、フレッシュな処理液と接触できるようになり、りん酸塩皮膜の生成反応が促進される。これにより、処理槽19内を通過する時間が短時間であっても、十分な厚さのりん酸塩皮膜を形成することができる。
処理液16は、処理槽19のほぼ全体にわたって一方向に流動していることが好ましい。処理液16が処理槽19のほぼ全体にわたって一方向に流動することで、りん酸塩化成処理中に、処理槽19のほぼ全体にわたって、処理液16を、金属線材3に対してその通線方向と平行な方向に流動させることができる。つまり、処理槽19のほぼ全体にわたって、金属線材3の表面から、皮膜生成反応性が低下した処理液を除去し続けることができるので、金属線材3は常にフレッシュな処理液と接触することができる。そのため、りん酸塩皮膜の生成反応がさらに促進されて、処理槽19内を通過する時間をさらに短縮できる。
ここで「ほぼ全体」とは、処理槽19の線材導入口14から線材排出口15までの全長に対して、85%以上の範囲で処理液16が一方向に流動していることを意味する。例えば、処理液16が導入された直後の領域(流動方向16Aの場合は線材排出口15近傍、流動方向16Bの場合は線材導入口14近傍)では、処理液16の流れに乱れが生じ易いことが想定される。また、処理液16が排出される直前の領域(流動方向16Aの場合は線材導入口14近傍、流動方向16Bの場合は線材排出口15近傍)でも、処理液16の流れに乱れが生じ易いことが想定される。それらの領域において多少の流れの乱れがあっても、金属線材2の通線方向3Aと処理液16の流動方向とがほぼ全体にわたって平行であれば、効果を十分に発揮することができる。
より好ましくは、処理液16は、処理槽19の全長に対して90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%(つまり全長にわたって)の範囲で、一方向に流動している。
金属線材3の表面から、皮膜生成反応性が低下した処理液を効果的に除去するためには、金属線材3と処理液16との間の相対速度が大きいほうが好ましい。特に、金属線材3の通線方向において、金属線材3の通線速度に対する処理液16の流動速度の相対速度の絶対値が20m/分以上であることが好ましく、皮膜生成反応性が低下した処理液の除去効果が高いため、皮膜生成反応性の経時的低下の抑制効果が高い。
金属線材3の通線速度と処理液16の流動速度との相対速度は、皮膜生成(皮膜付着量、皮膜の組織)に影響する。よって、相対速度は、要求する皮膜生成(皮膜付着量、組織)により決定すればよい。発明者らが行ったインライン処理によるりん酸塩化成処理の比較試験において、所定の皮膜付着量を達成するために必要となる処理槽19に浸漬する時間を検討した結果、処理液16を流動しなかった場合には、処理槽19への浸漬時間が10秒必要だったのに対し、相対速度を20m/分以上にすると、浸漬時間を6秒にまで短縮できることが分かった。この時間短縮の効果を皮膜生成速度に換算すると、相対速度を20m/分以上にすることにより、皮膜生成速度は1.7倍まで向上させることができる。
相対速度の絶対値は、好ましくは40m/分以上であり、より好ましくは60m/分以上である。相対速度の絶対値に上限は特にないが、使用するポンプ51の能力等から、140m/分以下とすることが好ましい。
相対速度は、金属線材3の通線方向3A(図2の左から右方向)と同じ方向を正、その逆方向(図2の右から左方向)を負とし、以下の式で求める。なお、図2では、金属線材3の通線速度は正の値であり、処理液16の流動速度は、流動方向16Aの場合は負、流動方向16Bの場合は正の値となる。

相対速度(m/分)=(処理液16の流動速度)-(金属線材3の通線速度)
・・・(1)
上式で得られた相対速度から、下式に示すように相対速度の絶対値を求める。

相対速度の絶対値(m/分)
=|相対速度(m/分)|
=|(処理液16の流動速度)-(金属線材3の通線速度)|・・・(2)
金属線材3の通線速度は、例えば、線材巻取り機の時間当たりのドラム巻取り数から算出する等により測定できる。処理液16の流動速度は、例えば、ポンプ51の流量と、処理槽19を流れる処理液16の断面積とから算出する等により測定できる。
処理槽19は筒状であることが好ましい。筒状の処理槽19であると、処理液16を、処理槽19の軸方向に沿って一方向に流動させやすい。そして、処理槽19の軸方向に沿って金属線材3を通過させることにより、金属線材3の通線方向と処理液16の流動方向とを平行にすることができる。
また、処理槽19内を通過する金属線材3を断面視したとき、皮膜生成反応性が低下した処理液は、金属線材3の表面の全周を取り囲むように存在する。筒状の処理槽19の場合、その断面中心付近を金属線材3が通過すると、処理液16の流速が、金属線材3の全周にわたって比較的一定になりやすい。そのため、皮膜生成反応性が低下した処理液を、金属線材3の表面の全周にわたって等しく除去することができる。
本明細書において「筒状」とは、細長く中空の柱状であるのものを意図している。本発明の「筒状」には、断面外形が円形の中空円柱状、断面外形が多角形(三角形、四角形、五角形・等)の中空多角柱状などを含む。
筒状の処理槽19の形状・寸法は、処理槽19の内腔の内壁と金属線材3とが接触しない状態で金属線材3が当該内腔を通過でき、かつ金属線材3と前記内腔の内壁との間に、りん酸塩化成処理を行うのに十分な量の処理液16を流動させることができる隙間が存在すれば、とくに限定されない。例えば、処理槽19の内腔の断面積は、78mm~31400mm(円筒状の処理槽19の場合、断面の直径が約10mm~約200mmに相当)であるのが好ましい。従来のインライン方式のりん酸塩皮膜処理装置で使用されている処理槽に比べて、内部に保持される処理液16の容量を少なくすることができるので、処理液16を流動させるための液体流動機構として、出力が比較的小さいポンプ51を用いることができる。
りん酸塩化成処理の更なる皮膜生成反応の促進を目的として、処理液16の濃度調整、りん酸塩化成処理の前工程として金属線材の予熱、表面調整剤等の付与などを行ってもよい。例えば、処理液16の温度を60℃以上にすることにより、皮膜生成反応を促進することができる。
処理液16は、りん酸塩化成処理に適したリン酸塩を含んでいる。りん酸塩は、一般的なりん酸塩化成処理において通常使用されるものであればよく、例えばりん酸鉄、りん酸亜鉛、りん酸マンガンなどが挙げられる。処理液16中のリン酸塩の濃度(全酸度)は、一般的なりん酸塩化成処理で通常選択される濃度であればよく、例えば20pt~250ptとすることができる。なお、単位の「pt」は、りん酸塩化成処理液の濃度単位で、処理液10mLを中和するのに要する0.1NのNaOHのmL数のことである。
処理液16は、りん酸塩以外にも、亜硝酸ナトリウム溶液、Niイオンなどの反応促進剤を含んでもよい。
なお、りん酸塩皮膜の形成をさらに促進するために、金属線材3を処理液16中を通過させる前の前処理として、表面調整剤の付与、金属線材3の予熱等をしてもよい。何れの前処理も、本発明の効果を阻害するものではない。
表面調整剤はTiコロイド、Zrコロイドから構成された、通常使用されるものであればよい。金属線材3の予熱に関して、予熱方法としては、一般的に適用されている蒸気加熱、高周波加熱などが挙げられる。予熱温度については、反応促進の効果及び処理液16の劣化防止の観点から、皮膜液に入る直前の金属線材3の温度が40~90℃となるように予熱温度を設定することが好ましい。
上記図1における(4)りん酸塩化成処理以外の工程は、例えば下記態様とすることができる。
上記(1)巻出しは、サプライスタンド2に配置された金属線材コイル1を、ライン状に巻き出す工程である。サプライスタンド2は、熱間圧延後の金属線材コイル1を、その軸心が上下方向または水平方向を向くように支持する設備である。「巻出し」では、金属線材を金属線材コイル1の上方または製造ラインの下流側に向かって引き抜くように巻き解くか、金属線材コイル1自体を水平面内に回転させながら、金属線材3を巻き出すことができる。
上記(2)矯正は、矯正機4を用いて金属線材3の巻き癖を矯正する工程である。矯正機4は、サプライスタンド2から巻き出された金属線材3の巻き癖を矯正する複数の矯正ロール5を備えている。具体的には、コイル状に巻き取った金属線材3は、矯正機4の複数の矯正ロール5を順番に通過することにより、巻き癖が矯正される。矯正機4で直線状に矯正された金属線材3は、「デスケーリング」の工程に送られる。
上記(3)デスケーリングは、矯正機4で直線状に矯正された金属線材3の表面からスケールを除去する工程である。デスケーリング方法は、特に限定されないが、ショットブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト等のメカニカルブラスト、および/または酸洗浄等の洗浄化処理により行うことができる。
上記(6)潤滑処理は、上述した「(4)りん酸塩化成処理」によりりん酸塩皮膜が被覆された金属線材3に対して、石灰石けんのような金属石鹸を含む潤滑剤が被覆される工程である。潤滑剤の種類は、特に限定されない。潤滑剤が液体の場合、「(7)乾燥」において被覆された潤滑剤を乾燥させる。潤滑剤が被覆された金属線材3に対して、「伸線」のような冷間加工が加工機で行われる。このようにして被覆された潤滑剤を用いれば、金属線材3を潤滑しつつ冷間加工することが可能となり、金属線材3の加工をスムーズに行うことが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適用し得る範囲で適当に変更を加えて実施する事ももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的な範囲に包含される。
下記の実機で製造した線材を用いて実験した。
・鋼種:SUJ2
・直径:12.0mm
・焼鈍:球状化焼鈍
上記線材を用いて、下記のようにして皮膜形成処理をラボ試験にて行った。
デスケーリング→表面調整剤処理→りん酸塩化成処理→水洗→潤滑処理(石灰石けん)→乾燥→巻取り
上記デスケーリングは、下記の条件でウェットブラストを行った。
(ウェットブラスト条件)
・エア圧力:0.4MPa
・線材とノズルとの角度:75°付近
・線材とノズルとの距離:75mm
・研磨材:ステンレスグリット(平均サイズ:150μm、砥粒濃度:15%)
上記表面調整剤は、下記を使用した。
・日本パーカライジングPL-Z(Ti系)
・濃度:10g/l
・温度:常温
上記りん酸塩化成処理は、下記の条件で行った。
・りん酸塩化成処理液:日本パーカライジングPB-3696
・全酸度:130pt
・液温度:80℃、
・浸漬時間:6秒
なお、上記ptとは、りん酸塩化成処理液の濃度単位で、処理液10mLを中和するのに要する0.1NのNaOHのmL数のことである。
りん酸塩化成処理槽19としては、外径24mm、内径(内腔の直径)20mm、長さ3000mmの円筒状の処理槽19を使用した。りん酸塩化成処理液の流動速度は、ポンプの能力(1分間に送ることのできる処理液の容量)と、処理槽19の内腔の断面積(314mm)とから算出した。また、相対速度と、相対速度の絶対値は、上述した式(1)および式(2)から求めた。
皮膜生成反応性を評価するため、りん酸塩化成処理後の金属線材の表面のSEM(Scanning Electron Microscope)観察と、金属線材の表面に形成されたりん酸塩皮膜の皮膜付着量を測定した。測定条件、測定方法は以下の通りとした。

(SEM観察)
・観察試料:りん酸塩化成処理後の試料
・倍率:1000倍
・観察領域:200μm×150μm

(皮膜付着量)
・りん酸塩化成処理後の試料を80℃のフォスリムーバー液に30分間浸漬し、浸漬前後の重量差からりん酸塩皮膜の付着量を算出した。
本明細書では、りん酸塩皮膜の目標付着量を4.7g/mとした。りん酸塩皮膜の付着量が4.7g/m以上であれば、金属線材の地鉄が露出せず、加工時の焼付き発生を抑制でき、かつ十分な耐食性を有すると考えられる。
表1に、実験結果を示す。表1において、下線を付した数値は、本発明の好ましい範囲から外れていることを示している。
Figure 2022086638000002
実施例1~3は、金属線材の通線方向と、処理液の流動方向が逆方向であった(図2における通線方向3Aと流動方向16A)。一方、比較例1と実施例4~5は、金属線材の通線方向と、処理液の流動方向が同一方向であった(図2における通線方向3Aと流動方向16B)。
実施例1~3は、金属線材の通線方向と処理液の流動方向が逆方向に平行であり、相対速度の絶対値が20m/分以上であった。金属線材の表面はりん酸塩皮膜で全て覆われており、地金は露出しなかった(図5~7)。また、皮膜付着量は目標付着量の4.7g/mより多かった。
実施例4~5は、金属線材の通線方向と、処理液の流動方向が同一方向に平行であり、相対速度の絶対値が20m/分以上であった。金属線材の表面はりん酸塩皮膜で全て覆われており、地金は露出しなかった(図8~9)。また、皮膜付着量も目標付着量の4.7g/mより多かった。
比較例1は、金属線材の通線方向と、処理液の流動方向が同一方向に平行であったが、相対速度の絶対値が20m/分未満であった。金属線材の表面の一部がりん酸塩皮膜で覆われず、地金が部分的に露出していた(図4)。また、皮膜付着量は目標付着量の4.7g/mを下回っていた。
また、表1に示す実施例1~5および比較例1の結果から、相対速度の絶対値と皮膜付着量とをプロットしたグラフを図3に示す。
図3から、相対速度の絶対値が20m/分以上になると、皮膜の目標付着量(4.7g/m)を達成できることが分かった。また、このグラフから、相対速度の絶対値が92m/分までは、相対速度の絶対値が大きくなると、皮膜付着量が増加する。92m/分を超えると皮膜付着量が僅かに低下する傾向があることが分かった。
金属線材の通線方向と処理液の流動方向が逆方向に平行である実施例2と、それらが同一方向に平行である実施例4をと比較する。実施例2と実施例4は、相対速度の絶対値が近い値となっており、皮膜付着量はいずれも目標付着量を達成できた。このことから、金属線材の通線方向と処理液の流動方向が同一方向でも逆方向でも、皮膜生成を促進する効果が確認された。
3 金属線材
3A 金属線材の通線方向
10 りん酸塩化成処理装置
12 タンク
13 集液部
14 処理槽の線材導入口
15 処理槽の線材排出口
16 りん酸塩化成処理液(処理液)
16A、16B りん酸塩化成処理液(処理液)の流動方向
19 りん酸塩化成処理槽(処理槽)
20A、20B 配管
51 液体流動機構(ポンプ)

Claims (5)

  1. 処理槽内に保持したりん酸塩化成処理液に金属線材を通過させることにより、前記金属線材の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成する金属線材のりん酸塩化成処理方法であって、
    りん酸塩化成処理中に、前記処理槽内の前記りん酸塩化成処理液を、前記金属線材の通線方向と平行な方向に流動させる、金属線材のりん酸塩化成処理方法。
  2. 前記金属線材の通線方向において、前記金属線材の通線速度に対する前記りん酸塩化成処理液の流動速度の相対速度の絶対値が20m/分以上である、請求項1に記載のりん酸塩化成処理方法。
  3. 前記金属線材の通線方向と前記りん酸塩化成処理液の流動方向が逆方向である、請求項1または2に記載のりん酸塩化成処理方法。
  4. 前記金属線材の通線方向と前記りん酸塩化成処理液の流動方向が同一方向である、請求項1または2に記載のりん酸塩化成処理方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の金属線材のりん酸塩化成処理方法に使用されるりん酸塩皮膜処理装置であって、
    前記処理槽と、
    前記処理槽内の前記りん酸塩化成処理液を流動させるための液体流動機構とを備えた、りん酸塩化成処理装置。
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