JPH1046351A - 軸受用鋼線材の表面処理方法 - Google Patents

軸受用鋼線材の表面処理方法

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JPH1046351A
JPH1046351A JP21528796A JP21528796A JPH1046351A JP H1046351 A JPH1046351 A JP H1046351A JP 21528796 A JP21528796 A JP 21528796A JP 21528796 A JP21528796 A JP 21528796A JP H1046351 A JPH1046351 A JP H1046351A
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JP
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phosphate
steel wire
wire
soap
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JP21528796A
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English (en)
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Yoji Toki
洋司 土岐
Takeshi Watanabe
剛 渡辺
Kazuhiro Ishikura
和弘 石倉
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Daido Steel Co Ltd
Nihon Parkerizing Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
Nihon Parkerizing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ベアリング転動体を圧造等により製造する際
に、圧造ヘッドのカス詰まりが生じにくく、しかも線材
に対する防錆効果にも優れる軸受用鋼線材の表面処理方
法を提供する。 【解決手段】 まず、カルシウムイオン0.3〜1.2
重量%、亜鉛イオン0.3〜1.2重量%、りん酸イオ
ン0.5〜3.0重量%、及び硝酸イオン2.0〜5.
0重量%を含有し、亜鉛イオンに対するカルシウムイオ
ンの重量比が0.5〜1.5であり、化成促進剤として
塩素酸イオンを0.05〜0.4重量%含有するりん酸
塩化成処理液により、りん酸塩被膜を形成する。そし
て、石灰石けんと、防錆添加剤として、0.01〜5.
0重量%の亜硝酸塩と、0.01〜5.0重量%の金属
の可溶性塩とを含有する石灰石けん液で石灰石けん被膜
を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は軸受用鋼線材の表面
処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ベアリング転動体は、以下のよう
にして製造されている。まず、図6に示すように、熱間
圧延により製造された軸受用鋼線材(以下単に線材と記
す)101をカッター102により所定の寸法に切断
し、その切断片103を圧造ヘッド104により球状等
の所定形状に成形する。そして、その成形体108に研
磨加工を施すことにより、所定の寸法精度を有する最終
的なベアリング転動体に仕上げられる。ここで、原料と
なる線材は、その断面寸法精度が高いほど、研磨に要す
る時間及びコストを削減することができるので、例えば
図7に示すように、熱間圧延された線材101に対し、
引抜きダイス105により伸線加工することにより線材
を所定の断面寸法範囲でサイジング伸線し、その後、図
8に示すように、圧造ヘッド104を用いて、図9に示
すベアリング転動体30へ加工することが行われてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記サイジ
ング伸線は、熱間圧延された線材を適切な条件により焼
鈍して脱スケールを行い、さらにりん酸塩皮膜処理及び
石灰石けんによる潤滑処理を施した後に行われる。この
うち、石灰石けんによる潤滑処理は、サイジング伸線時
の潤滑を促進するとともに、後のベアリング転動体製造
工程において、図8に示すように、圧造ヘッド104の
内面にカス107が付着して型詰まりが生ずることを防
止する目的で実施されるのであるが、近年はベアリング
転動体の加工精度の向上も進んでおり、さらにカス詰ま
りの起こしにくい潤滑皮膜の開発が望まれている。
【0004】また、サイジング伸線とベアリング転動体
の製造は、通常は別工程で行われるため、潤滑皮膜処理
された線材は一時的に保管されることがある。したがっ
て、潤滑皮膜は防錆性を有していなければならない。そ
こで、一般には潤滑皮膜を形成させた後、さらに防錆油
を塗布して防錆性を付与している。しかしながらこの方
法では、防錆油の塗布工程が別途必要となるので工程が
長くなる。
【0005】また、実操業においては、線材は、所定の
前処理酸洗を施した後に、りん酸塩化成処理、水洗処
理、及び石灰石けん液による潤滑処理が順次行われる。
この場合、りん酸塩処理後に十分に水洗を行ったとして
も、一部のりん酸塩化成処理液が石灰石けん液に持ち込
まれるため、石灰石けん液に塩素イオンが蓄積し、防錆
性がさらに低下してしまう問題がある。また、従来よ
り、本発明が対象とする軸受用鋼線材は化成処理が困難
な材質とみなされており、現状の化成処理液で得られる
りん酸塩皮膜は、例えばベアリング転動体への加工時に
脱落して型詰まりを起こしやすい問題もある。
【0006】本発明の課題は、ベアリング転動体を圧造
等により製造する際に、圧造ヘッドのカス詰まりが生じ
にくく、しかも線材に対する防錆効果にも優れる軸受用
鋼線材の表面処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の課
題を解決するために、本発明の軸受用鋼線材の表面処理
方法は、下記の工程を含むことを特徴とする。 化成処理工程:カルシウムイオン0.3〜1.2重量
%、亜鉛イオン0.3〜1.2重量%、りん酸イオン
0.5〜3.0重量%、及び硝酸イオン2.0〜5.0
重量%を含有し、亜鉛イオンに対するカルシウムイオン
の重量比が0.5〜1.5であり、化成促進剤として塩
素酸イオンを0.05〜0.4重量%含有するりん酸塩
化成処理液により軸受用鋼線材の表面を化成処理して、
当該表面にりん酸塩被膜を形成する。 潤滑剤処理工程:上記化成処理工程の後、炭素数16
以上の飽和脂肪酸60〜90重量%と、炭素数18の不
飽和脂肪酸10〜40重量%とを構成脂肪酸とし、かつ
水分を除く固形分の組成が、消石灰70〜90重量%、
カルシウム石けん7〜20重量%、アルカリ石けん2〜
10重量%である石灰石けんと、0.01〜5.0重量
%の防錆添加剤としての亜硝酸塩と、0.01〜5.0
重量%の金属の可溶性塩とを含有する石灰石けん液で軸
受用鋼線材の表面を潤滑剤処理することにより、該表面
において前記りん酸塩被膜の上に、上記石灰石けんを主
体とする潤滑被膜を形成する。
【0008】本発明者らは、上記範囲で塩素酸イオンを
含むりん酸塩化成処理液で化成処理を行うことにより、
従来化成処理が困難とみなされていた軸受用鋼線材に良
好なりん酸塩皮膜を形成することができ、さらに2種類
の防錆添加剤、具体的には0.01〜5.0重量%の亜
硝酸塩と、0.01〜5.0重量%の金属の可溶性塩と
を含有する石灰石けん液で潤滑剤処理することにより、
防錆性に優れる潤滑皮膜を形成させることが可能となる
ことを見い出したのである。そして、上記方法で軸受用
鋼線材の表面処理を行うことにより、ベアリング転動体
への圧造加工時において型詰り等が生じにくくなり、ま
た保管中に線材に錆を生ずる等の不具合も解消される。
また、線材に対する潤滑剤処理は、コイル状の線材をま
とめて処理するバッチ方式で行われることがあり、その
線材結束部処理液がゆきわたらずに防錆性等に問題が生
ずることがある。しかしながら上述の組成の潤滑剤処理
液は、線材結束部に対する浸透性に優れ、そのような問
題点も解消される。なお、本発明の効果が特に顕著に発
揮されるのは、高炭素クロム軸受鋼線材である。
【0009】以下、本発明の詳細について記載する。本
発明において重要な点は、その化成処理工程において、
カルシウムイオン0.3〜1.2重量%、亜鉛イオン
0.3〜1.2重量%、りん酸イオン0.5〜3.0重
量%、及び硝酸イオン2.0〜5.0重量%を含み、亜
鉛イオンに対するカルシウムイオンの重量比が0.5〜
1.5であり、化成促進剤として塩素酸イオンを0.0
5〜0.4重量%含有するりん酸塩化成処理液により軸
受用鋼線材を化成処理することである。
【0010】カルシウムイオンはりん酸亜鉛カルシウム
皮膜の主成分となるものであり、その供給源は特に限定
はしないが、水酸化物や硝酸塩の形で処理液に添加す
る。好ましい濃度は0.3〜1.2重量%である。カル
シウムイオンが0.3重量%未満であると、強加工に適
したりん酸亜鉛カルシウムが生成し難くなり、りん酸亜
鉛及びりん酸亜鉛鉄を主成分とする皮膜が生成するの
で、りん酸塩皮膜量が多くなり、圧造時の型詰まりが生
じ易い。また、カルシウムイオンが1.2重量%を越え
る場合は皮膜量が少なくなりすぎるため、サイジング伸
線や圧造加工において潤滑不良を生じる恐れがある。
【0011】亜鉛イオンもりん酸亜鉛カルシウム皮膜の
主成分となるものであり、その供給源は特に限定はしな
いが、一般には酸化亜鉛、硝酸亜鉛のような形で処理液
に添加する。好ましい濃度は0.3〜1.2重量%であ
る。亜鉛イオンの濃度が0.3重量%以下であると、り
ん酸亜鉛、りん酸亜鉛鉄、りん酸亜鉛カルシウムの何れ
の皮膜も生成し難くなり、サイジング伸線や圧造加工に
おいて潤滑不良が生じ、更に防錆性も悪くなる。また、
亜鉛イオンが1.2重量%を越えると、りん酸亜鉛型カ
ルシウム皮膜が生成し難くなり、圧造時の型詰まりが生
じやすくなる。
【0012】りん酸イオンはりん酸亜鉛、りん酸亜鉛
鉄、りん酸亜鉛カルシウム皮膜生成の必須の成分であ
り、その供給源は限定されないが、一般にオルソりん酸
として処理液に添加する。好ましい濃度は0.5〜3.
0重量%である。りん酸イオンの濃度が0.5以下であ
るとりん酸塩皮膜が生成し難くなる。また、3.0重量
%を越える場合はりん酸塩化成処理液の酸性度が高くな
りすぎるため、りん酸塩皮膜が生成し難くなる。
【0013】硝酸イオンは化成促進剤として添加され
る。これもその供給源は限定されないが、一般的に硝酸
の形でりん酸塩化成処理液に添加する。好ましい濃度は
2.0〜5.0重量%である。硝酸イオンの濃度が2.
0重量%未満であると酸化力が弱くなるので皮膜が生成
し難くなり、5.0重量%を越えると酸化力が強すぎて
りん酸塩皮膜が生成し難くなる。
【0014】また、塩素酸イオンも化成促進剤としてり
ん酸塩化成処理液に添加され、軸受用鋼の化成性を向上
させるのに有効である。供給源は限定しないが、一般に
塩素酸ソーダの形でりん酸塩化成処理液に添加する。好
ましい濃度は0.05重量%〜0.4重量%である。塩
素酸イオンの濃度が0.05重量%未満であるとりん酸
塩皮膜量が多くなり、圧造加工において型詰まりが生じ
易くなる。逆に0.4重量%を越えると酸化力が強すぎ
てりん酸塩皮膜が生成し難くなる。
【0015】さらに、亜鉛イオンに対するカルシウムイ
オンの重量比は0.5〜1.5であることが必要であ
る。重量比が0.5未満である場合は強加工に適したり
ん酸亜鉛カルシウム皮膜が生成し難くなる。逆に1.5
を越えると、皮膜重量が少なくなりすぎてサイジング伸
線や圧造加工での潤滑不良を生じやすい。
【0016】次に、上記化成処理が施された軸受用鋼線
材は、炭素数16以上の飽和脂肪酸が60〜90重量
%、炭素数18の不飽和脂肪酸が10〜40重量%であ
り、水分を除く石灰石けん固形分の組成が、消石灰70
〜90重量%、カルシウム石けん7〜20重量%、アル
カリ石けん2〜10重量%である石灰石けんに、防錆添
加剤として亜硝酸塩0.01〜5.0重量%、金属の可
溶性塩を0.01〜5.0重量%含有させた石灰石けん
液で潤滑剤処理され、潤滑皮膜が形成される。
【0017】上記石灰石けん液においては、亜硝酸塩を
0.01〜5.0重量%、金属の可溶性塩を0.01〜
5.0重量%添加することが重要である。このような石
灰石けん液を用いることにより被膜の防錆性が飛躍的に
向上し、例えば塩素混入による発錆が極めて起こりにく
くなる。また、従来行っていた防錆油の塗布等も不要と
なる。亜硝酸塩の添加量が0.01重量%未満では防錆
性がほとんどなく、5.0重量%を越えて添加すると石
灰石けんの潤滑性能が損なわれ、サイジング伸線や圧造
加工における潤滑不良を生じる。また、金属の可溶性塩
の添加量についても、0.01重量%未満では防錆性が
ほとんどなく、5.0重量%を越えて添加すると石灰石
けんの潤滑性能が損なわれる。なお、上記金属の可溶性
塩としては、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、モ
リブデン、チタン、バナジウム、及びタングステンの中
から選ばれる、少なくとも1種の金属の塩を用いること
ができる。これらはアルカリ金属塩やアンモニウム塩と
して石灰石けん液に添加することが好ましい。
【0018】また、上記石灰石けん液においては、構成
脂肪酸全量に対する炭素数18の不飽和脂肪酸の量が1
0重量%未満の場合、液の線材結束部経の浸透性が不足
して該場所での防錆性、あるいは仕上がり線材表面の均
一性及び光沢性が不充分となる。一方、炭素数18の不
飽和脂肪酸の量が40重量%を超えると、潤滑性が損な
われて焼付きが生じやすくなる。また、炭素数16以上
の飽和脂肪酸の量を60〜90重量%とすることで潤滑
性を損なうことなく、線材結束部の防錆性及び仕上がり
線材表面の光沢を向上させることができる。
【0019】次に、水分を除く固形分については、消石
灰が70重量%未満ではキャリア効果が低下し、逆に9
0重量%を越えると滑り性が低下するので好ましくな
い。また、カルシウム石けんが7重量%未満ではキャリ
ア効果が不十分で、20重量%を超えると相対的に消石
灰分が減少し、キャリア効果が低下する。さらに、アル
カリ石けんが2重量%未満では線材結束部で錆が発生し
やすく、10重量%を超えるとキャリア効果が低下して
焼付きを起こしやすくなる。
【0020】りん酸塩皮膜の形成量は、3〜9g/m2
の範囲で調整するのがよい。りん酸塩皮膜の形成量が3
g/m2未満になると、サイジング伸線あるいは造加工
において潤滑不良が生じやすく、9g/m2を越えると
圧造加工において型詰まりが生じ易くなる。りん酸塩皮
膜の形成量は、望ましくは5〜7g/m2の範囲で調整
するのがよい。また、潤滑皮膜の形成量は0.5〜3g
/m2の範囲で調整するのがよい。潤滑皮膜の形成量が
0.5g/m2未満ではサイジング伸線において潤滑不
良となり易く、3g/m2を超える場合は圧造加工にお
いて型詰まりが生じ易い。なお、潤滑皮膜の形成量は、
望ましくは1〜2g/m2の範囲で調整するのがよい。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を用いて説明する。まず、図1(a)に示すようにコイ
ル状に巻かれた軸受用鋼線材1に、所定の脱スケール処
理及び洗浄処理を行う。その後、線材1をクレーン2等
で吊り下げながら、タンク4に建浴されたりん酸塩化成
処理液3に浸漬する。りん酸塩化成処理液3はヒーター
5により所定の濃度、例えば70〜80℃に設定する。
なお、本発明において処理温度は上記範囲に限定される
ものではなく、化成処理性やエネルギーコストなどを考
慮して任意に設定されるべきものである。
【0022】線材1がりん酸塩化成処理液3に浸漬され
ている間に、その表面近傍では、図1(b)に示すよう
に、線材に含有される鉄がイオンとなって溶出し、りん
酸亜鉛、りん酸亜鉛鉄、りん酸亜鉛カルシウムが線材1
の表面に析出し、同図(c)に示すようなりん酸塩皮膜
20が生成する。りん酸塩皮膜の形成量は、3〜9g/
2、望ましくは5〜7g/m2の範囲で調整するのがよ
い。
【0023】なお、りん酸塩化成処理液3中の各成分の
濃度を、本発明の範囲を逸脱しない範囲で調整すること
により、りん酸塩皮膜70の形成量を少なくすることが
できる。また、処理温度を高くしても同様の効果が得ら
れる。さらに、振動発生装置2aにより振動を加えた
り、あるいはタンク4内に設けられた超音波発生装置6
により超音波を印加することにより、りん酸塩化成処理
液3と線材1との接触を防止あるいは抑制し、均一なり
ん酸塩皮膜を得ることができる。
【0024】また、図3に示すように、コイル状の線材
1’を周方向に回転させながらりん酸塩化成処理液3に
浸漬するようにしても良い。具体的には、線材1’をク
レーン2により回転可能な状態で支持し、化成処理液タ
ンク4内に設けられたロール10をコイル状の線材1’
の底部に接触させ、これをモータ11等により回転駆動
することにより、線材1’をりん酸塩化成処理液3中で
回転させることができる。
【0025】線材1’をりん酸塩化成処理液3に浸漬し
て所定の時間が経過したら、液3から線材1’を引き上
げ、水洗タンク、あるいはスプレー槽で水洗を行う。な
お、線材水洗後に弱アルカリ液で洗浄すれば、りん酸塩
化成処理液3により酸性化した線材1’の表面が中和さ
れ、以下に説明する潤滑皮膜の防錆性がさらに向上する
効果を得ることができる。
【0026】次に、図2(a)に示すように、タンク8
中の石灰石けん液7に線材1’を浸漬し、石灰石けん皮
膜を形成させる。このとき、石灰石けん液7はヒーター
9により所定の温度、例えば50〜60℃に設定する。
処理温度は任意に設定して良く、浸漬時間は1〜3分程
度とするのが好ましい。所定時間が経過したら線材1’
を引き上げ、加熱あるいは温風吹き付け等により、線材
に付着した水分を蒸発させる。これにより、図2(b)
に示すように、りん酸塩皮膜20上に石灰石けんを主体
とする潤滑皮膜21が形成される。なお、潤滑皮膜21
の形成量は0.5〜3g/m2、望ましくは1〜2g/
2の範囲で調整するのがよい。
【0027】なお、上述の潤滑皮膜21の形成工程は、
線材1’を連続的に搬送しながら実施することもでき
る。この場合の処理工程の概略を図4に示す。すなわ
ち、搬送される線材1を、タンク4及び8内に建浴され
たりん酸塩化成処理液3、及び石灰石けん液7に順次通
すことで、りん酸塩皮膜20及び潤滑皮膜21を形成す
る。なお、10は乾燥装置である。この場合、各タンク
4、及び8は、例えば図5に示すように、液3を常時充
満させておくための処理槽51と、処理槽51からオー
バーフローした液3(7)を受ける予備槽52とを備
え、予備槽52内の液3(7)は配管52aを介してポ
ンプ50aにより処理槽51内に戻され、循環するよう
になっている。線材1は導入口52eから処理槽51内
に導入され、液3(7)に接触してりん酸塩皮膜20あ
るいは潤滑皮膜21が形成された後、同じく出口51f
から排出される。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。直
径5.5mmφの高炭素クロム軸受鋼線材を脱スケール
処理した後、表1及び表2に示した組成のりん酸塩化成
処理液に80℃で10分間浸漬してリン酸塩皮膜を形成
した後、常温で1分間水洗してから、以下に述べる石灰
石けん液に60℃で2分間浸漬して石灰石けん皮膜(潤
滑皮膜)を形成させた。石灰石けん液は、以下の2種類
の石灰石けんを用いて調製した。 構成脂肪酸として、炭素数16の飽和脂肪酸(パルミ
チン酸)が23重量%、炭素数18の飽和脂肪酸(ステ
アリン酸)が48重量%、炭素数18の不飽和脂肪酸
(オレイン酸)が25重量%、その他の脂肪酸が4重量
%で構成され、かつ、水分を除く固形分中の組成が消石
灰85.6重量%、カルシウム石けん9.4重量%、ア
ルカリ石けん4.3重量%、その他の成分が0.7重量
%からなる石灰石けんを用いたもの(基本組成A)。 炭素数16の飽和脂肪酸が13重量%、炭素数18の
飽和脂肪酸(ステアリン酸)が65重量%、炭素数18
の不飽和脂肪酸(オレイン酸)が20重量%、その他の
脂肪酸が2重量%で構成され、かつ、水分を除く石灰石
けん固形分中の組成が消石灰77.1重量%、カルシウ
ム石けん17.1重量%、アルカリ石けん5.1重量
%、その他の成分が0.7重量%からなる石灰石けんを
用いたもの(基本組成B)。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】上記2種類の石灰石けんの固形分を5重量
%とした液に、塩化ナトリウムにて塩素イオンを300
ppm添加し、さらに表1及び表2に示す添加物を加え
た。ただし、比較例8はりん酸塩化成処理液に塩素酸イ
オンを含有しないため、石灰石けん処理液に塩素イオン
を添加しなかった。各添加剤は亜硝酸ナトリウム、タン
グステン酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、バナ
ジウム酸ナトリウム、チタン酸ナトリウムを用いた。
【0032】潤滑被膜の形成量は以下のようにして測定
した。すなわち、潤滑皮膜が形成された線材の重量を化
学天秤により精秤し、その後、沸騰水中に線材を30分
間浸漬した後、蒸留管内で70℃に加温した混合溶剤
(イソプロピルアルコール:ノルマルヘプタン:エチル
セルソルブ=各6:3:1)に30分間浸漬して石灰石
けん皮膜を剥離した。混合溶剤から線材を取り出した
後、線材の重量を精秤して剥離前後の重量差から石灰石
けん皮膜の形成量を算出した。測定の結果、実施例、及
び比較例の石灰石けん皮膜形成量は0.5〜1.1g/
2であり、適切な皮膜形成量の範囲内であった。
【0033】また、りん酸塩被膜の形成量は以下のよう
にして測定した。まず、実施例、ならびに比較例の、り
ん酸塩化成処理液にて処理された線材を100mmに切
断し、切断された線材の重量を化学天秤にて精秤した。
その後、線材を5重量%濃度、80℃に加熱した無水ク
ロム酸水溶液に30分浸漬し、線材表面に生成させたり
ん酸塩皮膜を剥離した。剥離後、水道水にて十分に水洗
し、105℃のオーブンに10分間入れて乾燥させた。
乾燥後の線材重量を化学天秤にて精秤し、剥離前後の重
量差から皮膜生成量を算出した。
【0034】このようにして表面処理した線材を伸線
し、これを温度50℃、湿度98重量%の恒温恒湿槽に
保管して、72時間後の発錆状況を目視観察することに
より、その防錆性を以下の基準により評価した。 ○:発錆 △:点錆あり ×:20%以上の面積が発錆
【0035】また、サイジング伸線後、防錆試験後の線
材の加工性の評価を以下の方法により行った。すなわ
ち、線径5.5mmφの線材1tonを、線径5.2m
mφとなるように超硬ダイスによりスピード60m/分
で引抜き加工し、加工後の線材表面を20倍のルーペで
目視観察した。加工性の評価基準は以下の通りである。 ○:良好 △:微傷発生 ×:傷発生 また、ダイスによる引抜き時のカスの発生の有無も確認
した。
【0036】以上の結果を表1と表2にまとめて示す。
すなわち、表1に示したように、本発明の方法により処
理した実施例1〜11の線材は防錆性に優れるととも
に、圧造時の型詰まりが生じていない。これに対して本
発明に属さない方法で表面処理した線材(表2の比較例
1〜11)は、カス詰まりの問題や防錆性に劣ってい
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面処理方法の実施例における化成処
理工程の説明図。
【図2】同じく潤滑剤処理工程の説明と、それにより得
られる皮膜付き線材の構造例を示す断面図。
【図3】化成処理の変形例を示す模式図。
【図4】線材を連続に搬送しながら表面処理する場合の
実施例を示す模式図。
【図5】そのタンクの構造を示す断面模式図。
【図6】ベアリング転動体製造工程の説明図。
【図7】サイジング伸線のための工程説明図。
【図8】従来の表面処理方法により潤滑皮膜が形成され
た線材の問題点を説明する図。
【図9】ベアリング転動体の形状例を示す斜視図。
【符号の説明】
1 軸受用鋼線材 3 りん酸塩化成処理液 7 石灰石けん液 20 りん酸塩皮膜 21 潤滑皮膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石倉 和弘 東京都中央区日本橋1丁目15番1号 日本 パーカライジング株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルシウムイオン0.3〜1.2重量
    %、亜鉛イオン0.3〜1.2重量%、りん酸イオン
    0.5〜3.0重量%、及び硝酸イオン2.0〜5.0
    重量%を含有し、亜鉛イオンに対するカルシウムイオン
    の重量比が0.5〜1.5であり、化成促進剤として塩
    素酸イオンを0.05〜0.4重量%含有するりん酸塩
    化成処理液により軸受用鋼線材の表面を化成処理して、
    当該表面にりん酸塩被膜を形成する化成処理工程と、 その化成処理工程の後、炭素数16以上の飽和脂肪酸6
    0〜90重量%と、炭素数18の不飽和脂肪酸10〜4
    0重量%とを構成脂肪酸とし、かつ水分を除く固形分の
    組成が、消石灰70〜90重量%、カルシウム石けん7
    〜20重量%、アルカリ石けん2〜10重量%である石
    灰石けんと、防錆添加剤として、0.01〜5.0重量
    %の亜硝酸塩と、0.01〜5.0重量%の金属の可溶
    性塩とを含有する石灰石けん液で前記軸受用鋼線材の表
    面を潤滑剤処理することにより、該表面において前記り
    ん酸塩被膜の上に、前記石灰石けんを主体とする潤滑被
    膜を形成する潤滑剤処理工程と、 を含むことを特徴とする軸受用鋼線材の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 前記可溶性塩が、コバルト、ニッケル、
    亜鉛、マンガン、モリブデン、チタン、バナジウム、及
    びタングステンの中から選ばれる、少なくとも1種の金
    属の塩である請求項1記載の軸受用鋼線材の表面処理方
    法。
  3. 【請求項3】 前記りん酸塩被膜の形成量が3〜9g/
    2であり、前記潤滑被膜の形成量が0.5〜3g/m2
    である請求項1又は2に記載の軸受用鋼線材の表面処理
    方法。
  4. 【請求項4】 前記りん酸塩被膜の形成量が5〜7g/
    2であり、前記潤滑被膜の形成量が1〜2g/m2であ
    る請求項1又は2に記載の軸受用鋼線材の表面処理方
    法。
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