JP2630530B2 - オーステナイト系ステンレス線材の処理方法 - Google Patents
オーステナイト系ステンレス線材の処理方法Info
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Description
テンレス線材の処理方法、特に、線材を冷間加工処理し
た後、熱処理することにより、ボルト等のネジ部材を含
む冷間鍛造製品のための素材を提供する方法に関する。
工金属材を以てネジ部材を含む冷間鍛造製品のための素
材を提供するに際しては、多くの工程が必要とされてい
る。
線を所定の外径に処理するべく伸線するに際して、ダイ
スによる引抜き方法が採用されており、素線とダイスの
焼付を防止するため、引抜きに先立ち、素線に樹脂被膜
や蓚酸塩被膜を形成し、更に、この被膜の上に粉状又は
油状の潤滑剤を付着せしめられる(被膜工程)。
イスによる連続伸線機が用いられ、例えば、外径5.5
mmの素線を第一次ダイスにより外径4.5mmとし、第二
次ダイスにより外径3.46mmにまで伸線することが行
われる(伸線工程)。
取られ、次の熱処理工程に送られるが、熱処理工程にお
いて前記被膜等を残存したままでは、これが燃焼してス
ケールを生じることになる。このため、熱処理に先立
ち、線材は溶剤又はアルカリ液等により洗浄され脱脂さ
れる(脱脂工程)。
熱処理を施される(熱処理工程)。この熱処理は、線材
を電気、ガス、灯油等を用いた加熱炉に通過せしめるこ
とにより行われるが、熱伝導加熱のため、十分な加熱時
間を必要とし、通常、長さ6mの加熱炉を線材のライン
スピード2m/分程度で通過せしめられる。
炉内にはガイドパイプが設けられており、このガイドパ
イプ内に線材を案内し通過せしめられる。そこで、前記
脱脂工程を経たにも拘わらず、万一、線材上に被膜の一
部が残存しているときは、これが燃焼してスケールを生
じ、前記ガイドパイプの内面に付着堆積する。そして、
このような堆積物が進行すると、ガイドパイプ内を通過
する線材の表面と接触し、線材の表面に付着するばかり
か、最悪の場合は線材の表面を損傷して筋状の疵を生じ
る虞れがある。これを防止し、最善の品質管理を期する
場合は、熱処理に先立ち、前記脱脂工程の後、再度、線
材を洗浄しなければならない(再度脱脂工程)。一般的
に、この再度の洗浄は、線材をトリクロールエチレン溶
剤に浸漬することにより行われる。
約3mにわたりガス冷され、処理を終了される。
のように、作業工程数が多く、多大の労力と時間を要
し、生産性を向上できず、コスト面でも不利である。特
に、伸線工程の前に被膜工程を必要とし、しかも、伸線
工程を終えた後に、被膜を洗い落とすための脱脂工程を
必要とすることは、生産性向上のためには大きな障害と
なる。また、前記被膜工程及び脱脂工程においては、多
量の被膜用溶剤や潤滑剤並びに洗浄液を必要とするため
コストアップが不可避であり、しかも、作業者の衣服の
汚れ等を生じ、作業環境を悪化する。
に焼付を生じる虞れがあるため、常にチェックが必要で
あり、監視しなければならない。
程においては、線材のラインスピードが極度に低下す
る。電気、ガス、灯油等を用いた加熱炉による熱伝導加
熱方法である以上、加熱炉を長大化してもスピードアッ
プには限界があり、2m/分程度が限度とされている。
更に、加熱炉に内装した前記ガイドパイプの寿命を維持
するためには、常に炉内温度を維持しておかなければな
らずエネルギーロスを生じるほか、加熱炉の立ち上がり
のためには、約20時間もの長時間を要するという問題
もある。
場合は、生産性の点に問題を有するだけでなく、洗浄溶
液(トリクロールエチレン溶剤)の取扱いに危険があ
り、廃液に公害を伴うという問題がある。
基づいていることは、輻射熱による作業現場の環境悪化
を招来し、労働条件に重大な問題を提起する。
産ライン全長の長大化を強いられるという問題がある。
前述したように2m/分程度のラインスピードで線材に
熱処理を行う場合、電気加熱炉の全長は約6mにも及
び、更に、その後の冷却のために約3mのラインを必要
とする。この点に関して、従来、生産性を補うため、平
行したラインを数本設け、同時平行的に作業が行われて
いるが、その結果必要とされる作業スペースは極めて広
面積である。従って、新たに事業を開始するに際して
は、大型の工場を設立しなければならず、省スペース、
省設備が叫ばれている今日の時流に逆行する。
伝導加熱形式による電気加熱炉を用いた熱処理工程にお
いては、後述するように、ヒートパターンが緩慢であ
り、熱処理後の線材の金属結晶粒度が粗く、靱性が必要
十分以上に大であるため、ネジ部材のような冷間鍛造加
工を必要とする製品については、鍛造パンチに対する負
荷が過大であり、パンチを早期に損耗してしまうという
問題がある。
く解決したオーステナイト系ステンレス線材の処理方法
を提供するものであり、その第一の手段として構成した
ところは、冷間加工されたオーステナイト系ステンレス
線材の熱処理方法において、誘導コイル26、27にガ
イド管28を遊挿して成る高周波誘導炉6と、前記ガイ
ド管28に連通された冷却通路29と、前記冷却通路2
9の終端に臨む冷却油34を含む冷却手段8とを構成
し、前記冷却通路29にガス充填路31を介して無酸化
及び/又は還元もしくは一部還元ガスを送り込むことに
より、該冷却通路29の内部を冷却状態かつ無酸化及び
/又は還元雰囲気状態に保持すると共に、前記ガスを冷
却通路29から前記ガイド管28に流入せしめ該ガイド
管28の始端から排出せしめることにより、該ガイド管
28の内部を無酸化及び/又は還元雰囲気状態に保持せ
しめる工程と、前記高周波誘導炉6のガイド管28に線
材を走行させ通過せしめることにより、該線材を無酸化
及び/又は還元雰囲気中で誘導加熱により急加熱X1す
る加熱工程と、前記加熱された線材を走行状態のまま前
記冷却通路29に導き通過せしめることにより、該線材
の表面を無酸化及び/又は還元雰囲気中で予備冷却X2
するガス冷工程と、前記冷却通路29から送出される線
材を走行状態のまま無酸化及び/又は還元雰囲気から直
ちに冷却手段8の冷却油34に浸漬せしめることによ
り、常温まで急冷X3せしめる油冷工程と、から成る点
にある。
たところは、オーステナイト系ステンレス線材を5〜2
0m/分で走行せしめ、加熱工程における急加熱X1に
より走行中の線材を950〜1100度Cに加熱し、ガ
ス冷工程における予備冷却X2により走行中の線材の表
面を850〜950度Cに冷却する点にある。
する。
れた素線1は、繰出手段2から上取り方式により繰出さ
れる。素線1aは、例えば、オーステナイト系のステン
レス素線であり、SUS・XM7が用いられる。
及び第二次伸線手段4(伸線工程)を経て整形手段5
(整形工程)を通過し、高周波誘導炉6(熱処理工程)
及びガス冷手段7(予備冷却工程)を経て油冷手段8
(冷却工程)を通過し、巻取り手段9により巻取られ
る。
形手段5、高周波誘導炉6、冷却手段7、8を経て巻取
り手段9に至る線材1は、ラインスピード5〜20m/
分で連続的に走行せしめられる。
出手段2において、巻回された素線1aは、スタンド1
0に装着された素線繰出体11を複数準備されている。
図例の場合、二つの素線繰出体11、11が基台12に
搭載され、該基台12のローラ13上で移動可能に設置
されている。従って、二つの素線繰出体11、11は、
何れか一方を繰出ガイド14の直下に選択的に移動可能
とされる。そこで、一方の素線繰出体11の素線終端と
他方の素線繰出体11の素線始端とは予め溶接15さ
れ、二つの素線繰出体11、11を通じて連続的に素線
1aを繰出し可能としている。従って、一方の素線繰出
体11の素線1aが繰出しを完了すると、基台12上で
他方の素線繰出体11を繰出ガイド14の直下に移動せ
しめ、連続的に素線1aを繰出し、前記繰出しを完了し
た待機中のスタンド10に新たな素線1aの巻回体を装
着することにより、連続操業が可能とされている。
に、第一次伸線手段3は、複数組の伸線ロール手段、即
ち、図例において、第一組の伸線ロール手段16と、第
二組の伸線ロール手段17とから構成されている。
(A)に示すように、上下に平行配置された回転自在な
一対の伸線ロール16a、16aから構成され、両ロー
ルに対向する圧延溝16b、16bを設けている。従っ
て、圧延溝16bを介して両ロール16a、16a間に
素線1aを通過せしめることにより、該素線1aの伸線
が行われる。図例の場合、この第一組の伸線ロール手段
16により、素線1aの断面は、長軸を上下方向に向か
わせた楕円形に圧延される。
(B)に示すように、左右に平行配置された回転自在な
一対の伸線ロール17a、17aから構成され、両ロー
ルに対向する圧延溝17b、17bを設けている。従っ
て、圧延溝17bを介して両ロール17a、17a間に
素線1aを通過せしめることにより、該素線1aの伸線
が行われる。図例の場合、この第二組の伸線ロール手段
17により、素線1aの断面は、長軸を水平方向に向か
わせた楕円形に圧延される。
ール手段16及び第二組の伸線ロール手段17を通過せ
しめられることにより、素線の周方向に90度位相をず
らせた方向から二度にわたり圧延され、素線1aの断面
積を減面率20〜50%として伸線される。例えば、繰
出手段2から繰出された素線1aが直径5.5mmである
場合、この第一次伸線手段3を通過することにより、直
径を4.0mmにまで減じられ、減面率は47.1%(面
積比)である。そして、この第一次伸線手段3による伸
線は、回転自在なロールを介して行われ、摩擦熱をほと
んど生じないから、従来の引抜き方法におけるような素
線に対する被膜の形成は必要でなく、焼付を生じる虞れ
はない。
伸線ロール手段16により上下から圧延した後、第二組
の伸線ロール手段17により左右から圧延する方法を示
しているが、その順序を逆にしても良く、要するに、複
数工程にわたり素線の周方向に位相をずらせて複数のロ
ール間を通過せしめることにより圧延し伸線せしめるも
のであれば良い。
は、図3(C)に示すように、素線1aを通過せしめる
中心部に対して周方向に等間隔をおいて放射方向に配置
した回転自在な三個の伸線ロール18a、18a、18
aから構成され、各ロールに圧延溝18bを設けてい
る。これらの伸線ロール18a、18a、18aにより
隣接せしめられた圧延溝18b、18b、18bにより
形成された中心の空間部は、真円形とされ、そこを素線
1aが通過せしめられる。
せしめられた素線1aは、第二次伸線手段4のロール間
を通過せしめられることにより、再度、圧延され、素線
1aの断面積を減面率10〜30%として伸線される。
例えば、前述のように第一次伸線手段3により伸線され
た直径4.0mmの素線1aは、この第二次伸線手段4に
より直径を3.5mmにまで減じられ、減面率23.5%
(面積比)として断面を真円形に近付けるような形状に
整形される。そして、この第二次伸線手段4による伸線
は、回転自在なロールを介して行われ、摩擦熱をほとん
ど生じないから、従来の引抜き方法におけるような素線
に対する被膜の形成は必要でなく、焼付を生じる虞れは
ない。
三個の伸線ロール18a、18a、18aにより構成し
たが、三個以上、例えば、四個或いは五個の伸線ロール
により構成しても良く、要するに、素線1aを伸線する
と共に断面真円形に近く整形できるものであれば良い。
(D)に示すように、求心方向に打撃を与えるように放
射方向に配置された複数、図例では四個のダイス19
a、19a、19a、19aから構成され、各ダイスに
整形溝19bを設けている。これらのダイス19a、1
9a、19a、19aにより隣接せしめられた整形溝1
9b、19b、19b、19bにより形成された中心の
空間部は、真円形とされ、そこを素線1aが通過せしめ
られ、該素線1aの外形を真円形に整形される。
な機構により可能とされている。即ち、各ダイス19a
を固定したバッカ20は、スピンドル21に摺動自在に
挿通されており、該スピンドル21は図示矢印方向に駆
動回転される。スピンドル21の外周において、多数の
外周ローラ22を保持したリテーナ23がレース24に
より支持されている。前記スピンドル21を駆動回転し
たとき、バッカ20の尾端は、バッカローラ25を介し
て各外周ローラ22に対接せしめられる。
と、バッカローラ25が各外周ローラ22を乗り越える
たびに、バッカ20によりダイス19aに対して求心方
向の打撃を生ぜしめ、これによりダイスの中心空間部を
通過する素線1aの外周面を殴打しつつ鍛造し、該素線
1aの断面形状を完全な真円形に整形する。その結果、
素線1aは、真円度と寸法精度が保証され、しかも、直
進性のある直線状に保形される。
線手段4により伸線された素線1aは、この整形手段5
を通過せしめられることにより、素線1aの断面積を減
面率5〜10%として僅かに伸線される。例えば、前述
のように第二次伸線手段4により伸線された直径3.5
mmの素線1aは、この整形手段5により鍛造整形された
結果、直径を3.46mmにまで減じられ、減面率2.3
%(面積比)の下に断面を真円形に整形される。
ダイス19a、19a、19a、19aにより構成した
が、その数に限定されるものではなく、要するに、素線
1aを求心方向に殴打することにより、外形を断面真円
形に整形できるものであれば良い。
1aは、伸線工程及び整形工程を経ることにより、伸線
処理された線材1とされ、引き続き高周波誘導炉6に導
かれる。
組の誘導コイル26、27を一直線上に配置し、両コイ
ルにわたり遊挿された石英管から成るガイド管28によ
り線材の通路を構成する。尚、図例では二組の誘導コイ
ル26、27を示しているが、誘導コイルの本数、直列
配置される個数は問わない。
は、電磁誘導によるジュール熱により瞬時に加熱され、
数秒(例えば4〜6秒程度)のうちに摂氏1000度程
度(例えば摂氏950〜1100度、実施例においては
約1050度)に加熱される。このため、例えば、線材
1の走行速度を5〜20m/分に設定した場合でも、高
周波誘導炉6の全長は1mもあれば足りる。因に、線材
1は、前述した整形工程において、直進性のある直線状
に保形されているので、走行中、ほとんど振れを生じる
ことはなく、ガイド管28の内面に接触することはな
い。尚、本発明においては、従来のような被膜を線材に
付着せしめていないので、加熱された線材1が従来のよ
うなスケールを生じることはなく、従って、ガイド管2
8の内面も常にクリーンな状態とされている。
熱時に線材1を無酸化及び/又は還元もしくは一部還元
雰囲気中におくことが必要であり、このため前記ガイド
管28の内部には無酸化及び/又は還元もしくは一部還
元ガスが充填されている。このガスは、後述する予備冷
却工程におけるガス冷手段7の冷却通路29からガイド
管28に向けて送られる。即ち、冷却通路29の始端2
9aにガイド管28の終端28bを挿入せしめており、
冷却通路29とガイド管28の間における隙間により構
成された排気路30からガスの一部を排出しつつ、残余
のガスをガイド管28に送り込む構成が採用されてい
る。従って、ガイド管28には、線材1の走行方向に対
向する方向に向けてガスが送り込まれ、ガスはガイド管
28を通過して該ガイド管の始端28aから排出され
る。尚、ガスとしては、通常AXガスと称されているガ
ス(H75%、N25%程度のガス)或いは不活性ガス
(N2 系ガス)を採用することが可能である。
1は、直ちにガス冷手段7に送られ、そこで予備冷却せ
しめられる。このガス冷手段7は、図5に示すように、
前述した冷却通路29にガス充填路31を連通して設
け、このガス充填路31を介して冷却通路29に無酸化
及び/又は還元もしくは一部還元ガスを送り込まれる。
冷却通路29の終端29bは、後述する油冷手段8の冷
却油中に浸漬されている。この終端29bからガスが排
出されることを防止するため、前記高周波誘導炉6のガ
イド管28並びにガス冷手段7の冷却通路29は、一直
線上ではあるが、線材1の進行方向に向けて次第に下降
するように下向き傾斜姿勢に設置されている。
ット32が形成され、冷媒(図例の場合は冷却水)が充
填されている。このため、冷媒ジャケット32には、冷
媒入口33と冷媒出口34が設けられており、図示省略
したポンプを介して冷媒を循環する。従って、これによ
り冷却通路29は常に冷却(図例の場合は水冷)されて
いる。
められる時間は、数秒(例えば4〜6秒程度)であり、
このため、例えば、線材1の走行速度を5〜20m/分
に設定した場合でも冷却通路29の全長は1mもあれば
足りる。
路29を通過することにより、該冷却通路29内におい
てガスにより生成された無酸化及び/又は還元もしくは
一部還元雰囲気中で予備冷却される。例えば、前述した
高周波誘導炉6により加熱された線材1の表面温度は、
冷却通路29を通過することにより摂氏850〜950
度程度(実施例においては約900度)まで予備冷却さ
れる。
び図5に示すように、冷却油34を貯蔵した槽35によ
り構成され、前記ガス冷手段7の冷却通路29から送り
出された線材1を直ちに冷却油34中に浸漬せしめ、そ
の後、線材1を巻取り手段9に向けて進路転換せしめる
ためのベンドローラ36を有する。
して使用されている焼入油を採用することができ、この
冷却油34に浸漬された線材1は5〜10秒程度で常温
まで急冷される。
えば摂氏950〜1100度程度)から直ちに冷却油に
浸漬せしめ油冷のみにより急冷すると、線材の表面がス
ケールにより覆われ黒色化してしまい、光輝処理の目的
に反することになる。この点に関して、本発明は、前述
したガス冷手段7により予備冷却し、一旦、摂氏約90
0度前後に予備冷却した後で油冷手段8により冷却する
と、線材の表面にはスケールによる黒色付着物が一切見
られず、光輝に優れた線材が得られることを知見した。
は、ベンドローラ36を介して油冷手段8から送り出さ
れ、巻取り手段9のロータ37により巻取られる。
図6には、本発明によるヒートパターンと、上述した従
来方法におけるヒートパターンを比較対照して示してい
る。
述したような電気加熱ヒータによる熱伝導加熱のため、
線材が所定の温度(例えば摂氏1050度)に達するま
でに約165秒の時間を要する。従って、加熱の立ち上
がり線Y1は緩慢である。そして、炉内における線材の
実際の温度を測定し確認することは不可能であるから、
品質管理上は、この所定の温度を一定時間維持しなけれ
ばならず、約15秒程度のキープポイントY2が必要に
なる。そこで、前記キープポイントY2を終えた後、上
述したような長い距離にわたるガス冷を受ける。このた
め、冷却線Y3も緩慢である。
ーンXは、高周波誘導炉6による誘導加熱であるため、
線材は、瞬時(実施例においては約4秒)のうちに所定
の温度(実施例においては摂氏1050度)に達し、加
熱立ち上がり線X1は急激に進行する。この加熱はジュ
ール熱に基づくものであるから、その発生熱量は、線材
中を流れる誘導電流を計算により求めることにより決定
できる。このため、所望の温度設定が容易であり、従来
の熱伝導加熱のようなキープポイントを設ける必要はな
く、勢い加熱立ち上がり線X1を図6に示すようにラビ
ットヒートに構成せしめることが可能となる。そして、
加熱後は、前述したガス冷手段7による予備冷却X2を
行い、続いて油冷手段8による急冷X3を行う。
る処理を行った線材と、本発明方法による処理を行った
線材とを用いて、ネジブランク(螺糸を形成する前の十
字穴付小ネジの半製品)を鍛造し、両者を比較した。従
来方法及び本発明方法の何れにおいても、処理のために
提供された素線は、SUS・XM7である。尚、以下、
従来方法による処理を経た素材から製作したネジブラン
クを従来品と言い、本発明方法による処理を経た素材か
ら製作したネジブランクを本発明品と言う。
7(A)に示すように、シャンク部39と頭部40とを
有し、頭部40の頂部に十字穴41を形成している。
2を頭部40に打ち込むことによる冷間鍛造により形成
したが、従来品の場合は、靱性が過大であると思われ、
鍛造パンチ42を早期に摩耗するばかりか、しばしば鍛
造パンチ42の鋭利な部分を折損してしまうことが知見
された。これに対して、本発明品の場合は、鍛造パンチ
42の摩耗寿命は前記従来に対する場合に比して2倍以
上であり、しかも、数万回の打ち込みを行っても鍛造パ
ンチ42の折損は皆無であった。
切断し、王水(硝酸10wt%、塩酸30wt%、水6
0wt%)に常温下で約7分間浸漬した後、切断面の酸
化状況を観察した。これによると、従来品は、切断面を
早期に腐食してしまい、これを顕微鏡により観察したと
ころ、結晶粒の粒界腐食を進行していることが確認され
た。これに対して、本発明品の場合は、ほとんど腐食が
見られず、顕微鏡により観察しても粒界腐食を確認でき
なかった。
ついて、財団法人機械電子検査検定協会に結晶粒度測定
(JIS・G0551)を依頼し、顕微鏡組織の写真の
提供を受けた。これによれば、測定個所は、図7(A)
のポイントZ1、Z2、Z3の三個所であり、平均粒度
は、従来品の場合、ポイントZ1が5.8、ポイントZ
2が5.7、ポイントZ3が5.6であったのに対し
て、本発明品の場合、ポイントZ1、Z2、Z3の三個
所とも9.8であり、結晶粒度が極めて小さいことを確
認できた。
れた組織をトレースしたものが図7(B)(C)であ
り、図7(B)は本発明品、図7(C)は従来品を示し
ており、何れも倍率は400倍である。
組織の相違が見られる理由は、必ずしも明確ではない
が、図6に示した熱処理のヒートパターンにおいて、従
来方法がキープポイントY2を有するのに対して、本発
明方法ではラビットヒートであること、そして、従来方
法が単調で緩慢な冷却線Y3とされるのに対して、本発
明方法では急冷X3に先立ち予備冷却X2を経るためで
あると推測される。そして、このような結晶組織の相違
により、前述したような素材の靱性の強弱と、粒界腐食
の優劣に差が見られるものと考えられる。
ータによる熱伝導加熱のため、加熱処理工程におけるラ
インスピードに限界があり、生産ラインを長大化し、輻
射熱による作業環境の悪化を余儀なくされていたのに対
して、本発明では、金属材の熱処理を高周波誘導炉によ
る誘導加熱により行うため、加熱時間が極めて短時間で
足り、生産ラインをコンパクトな短いものとすることが
可能であり、しかも、外部に熱を放出することもなく作
業環境を改善できるという効果がある。
をガス冷により予備冷却し、その後、油冷により急冷す
るものであるから、結晶粒度が小さく、その結果、耐腐
食性に優れると共に、靱性を過大とすることなく適正に
保つ金属材を提供できるので、ネジ部材のような冷間鍛
造により製作すべき製品のための素材として特に優れて
おり、しかも、予備冷却を介在せしめることにより、油
冷に際して金属材がスケールに覆われ黒色化することを
防止し得たものであり、優れた光輝を有する素材を提供
できるという効果がある。
走行させた状態で、高周波誘導炉6による加熱工程、冷
却通路29によるガス冷工程、冷却油34による油冷工
程を経るものであるから、各工程を短時間化でき、生産
ラインを短くできるという効果がある。 就中、本発明に
よれば、加熱工程からガス冷工程を経て油冷工程に至る
まで、線材を完全な無酸化及び/又は還元雰囲気中にお
くものであるから、線材がスケールに覆われ黒色化する
ことはなく、優れた光輝(ブライト)を有し、ネジ部材
のような冷間鍛造により製作すべき製品のための素材と
して特に優れている。 ところで、本発明における完全な
無酸化及び/又は還元雰囲気における処理は、加熱工程
を行うための高周波誘導炉6における誘導コイル26、
27に遊挿されたガイド管28と、ガス冷工程を行うた
めのガイド管28とを挿通せしめ、更に、該ガイド管2
8の終端に臨んで冷却油34を含む冷却手段8を設け、
前記冷却通路29にガス充填路31を介して無酸化及び
/又は還元もしくは一部還元ガスを送り込むことによ
り、該冷却通路29の内部を冷却状態かつ無酸化及び/
又は還元雰囲気状態に保持すると共に、前記ガスを冷却
通路29から前記ガイド管28に流入せしめ該ガイド管
28の始端から排出せしめることにより、初めて可能と
なったものであり、これにより、線材を前記ガイド管2
8を挿通した後、冷却通路29を経て、冷却手段8の冷
却油34に至るまで、比較的高速で走行させつつ、その
間における線材を常に完全な無酸化及び/又は還元雰囲
気により保護し、スケールの付着を防止できたものであ
る。 そして、ガス充填路31を介して冷却通路29に前
記ガスを送り込むことにより、該冷却通路29の内部の
冷却と無酸化及び/又は還元雰囲気の生成を可能とする
ばかりか、そのガスをそのまま冷却通路29からガイド
管28に流入せしめ該ガイド管28の始端から排出せし
めることにより、該ガイド管28の内部を完全に無酸化
及び/又は還元雰囲気ならしめることに供するものであ
るから、省設備であると共に、ガスを有効に利用しつつ
消費量を抑制できる。 即ち、冷却通路29に送り込まれ
たガスは、第一に冷却通路29を走行する線材をガス冷
する手段を構成し、第二に線材をガス冷するための冷却
通路29の内部に無酸化及び/又は還元雰囲気を生成す
るための手段を構成し、第三にガイド 管28に流入せし
められることにより線材を誘導加熱するための炉6にお
けるガイド管28の内部に無酸化及び/又は還元雰囲気
を生成するための手段を構成し、第四に冷却通路29の
終端29bにおいて線材が冷却油34に浸漬されるまで
無酸化及び/又は還元雰囲気を保持するための手段を構
成するものであるから、謂わば一石二鳥を越える一石四
鳥ともいうべき多機能に供され、有効利用されるという
効果がある。
に基づいて上述したような優れたネジブランクに供され
る線材を提供できるという効果がある。
工程を何れも高速のラインスピードにより実施すること
ができるので、従来のように伸線工程と熱処理工程を別
々に実施するオフライン生産に比して、本発明では伸線
工程と熱処理工程を一連に実施せしめるオンライン生産
が可能になり、生産調整等の点においても有利になると
いう効果がある。
ある。
である。
装置を示し、(A)は第一次伸線手段における第一組の
伸線ロール手段を示す正面図、(B)は第一次伸線手段
における第二組の伸線ロール手段を示す正面図、(C)
は第二次伸線手段を示す正面図、(D)は整形手段を示
す正面図である。
を示す縦断正面図である。
手段、油冷手段を示す縦断側面図である。
を対照的に示す折線グラフ図である。
クのサンプルを示し、(A)はネジブランクの縦断面拡
大図、(B)は本発明品のポイントZ3における結晶を
示す顕微鏡写真のトレース図、(C)は従来品のポイン
トZ3における結晶を示す顕微鏡写真のトレース図であ
る。
Claims (2)
- 【請求項1】 冷間加工されたオーステナイト系ステン
レス線材の熱処理方法において、 誘導コイル26、27にガイド管28を遊挿して成る高
周波誘導炉6と、前記ガイド管28に連通された冷却通
路29と、前記冷却通路29の終端に臨む冷却油34を
含む冷却手段8とを構成し、前記冷却通路29にガス充
填路31を介して無酸化及び/又は還元もしくは一部還
元ガスを送り込むことにより、該冷却通路29の内部を
冷却状態かつ無酸化及び/又は還元雰囲気状態に保持す
ると共に、前記ガスを冷却通路29から前記ガイド管2
8に流入せしめ該ガイド管28の始端から排出せしめる
ことにより、該ガイド管28の内部を無酸化及び/又は
還元雰囲気状態に保持せしめる工程と、 前記高周波誘導炉6のガイド管28に線材を走行させ通
過せしめることにより、該線材を無酸化及び/又は還元
雰囲気中で誘導加熱により急加熱X1する加熱工程と、 前記加熱された線材を走行状態のまま前記冷却通路29
に導き通過せしめることにより、該線材の表面を無酸化
及び/又は還元雰囲気中で予備冷却X2するガス冷工程
と、 前記冷却通路29から送出される線材を走行状態のまま
無酸化及び/又は還元雰囲気から直ちに冷却手段8の冷
却油34に浸漬せしめることにより、常温まで急冷X3
せしめる油冷工程と、から成ることを特徴とするオース
テナイト系ステンレス線材の処理方法。 - 【請求項2】 オーステナイト系ステンレス線材を5〜
20m/分で走行せしめ、加熱工程における急加熱X1
により走行中の線材を950〜1100度Cに加熱し、
ガス冷工程における予備冷却X2により走行中の線材の
表面を850〜950度Cに冷却することを特徴とする
請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス線材の処
理方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP3328179A JP2630530B2 (ja) | 1991-11-15 | 1991-11-15 | オーステナイト系ステンレス線材の処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3328179A JP2630530B2 (ja) | 1991-11-15 | 1991-11-15 | オーステナイト系ステンレス線材の処理方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05140638A JPH05140638A (ja) | 1993-06-08 |
JP2630530B2 true JP2630530B2 (ja) | 1997-07-16 |
Family
ID=18207359
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3328179A Expired - Fee Related JP2630530B2 (ja) | 1991-11-15 | 1991-11-15 | オーステナイト系ステンレス線材の処理方法 |
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JPS5371620A (en) * | 1976-12-08 | 1978-06-26 | Kobe Steel Ltd | Method and equipment for continuously solution heat treating stainlesssteel pipe |
JPS5585631A (en) * | 1978-12-23 | 1980-06-27 | Nisshin Steel Co Ltd | Giving method for scale resistance during hardening to stainless steel |
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JPS62202030A (ja) * | 1986-03-03 | 1987-09-05 | Shinko Kosen Kogyo Kk | シヤフト用ステンレス鋼線の製造方法 |
JP2890198B2 (ja) * | 1989-02-14 | 1999-05-10 | ベーレル・エーデルシユタール・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング | 変形能力の低い鋼又は鋼合金から成る長尺部材の製造方法 |
JPH0739605B2 (ja) * | 1991-05-31 | 1995-05-01 | 富士電子工業株式会社 | 無酸化高周波焼入方法および装置 |
-
1991
- 1991-11-15 JP JP3328179A patent/JP2630530B2/ja not_active Expired - Fee Related
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---|---|
JPH05140638A (ja) | 1993-06-08 |
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