JP2021161483A - 金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置 - Google Patents

金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】設備を大型化せずとも、また特殊な薬剤を使用しなくとも、りん酸塩皮膜の生成反応を促進させることができる金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置を提供する。【解決手段】金属線材(3)をりん酸塩化成処理液(16)中に通過させて、金属線材(3)の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成させるりん酸塩化成処理方法であって、りん酸塩化成処理液(16)中に拡散層除去部材(21、31、41)を配置させ、拡散層除去部材(21、31、41)を、金属線材(3)の表面の全周に接触または近接させて、金属線材(3)の表面近傍に形成された拡散層を除去する、金属線材(3)のりん酸塩化成処理方法である。【選択図】図2

Description

本発明は、金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置に関する。
従来、金属線材の冷間加工(例えば、伸線加工、圧造など)を円滑に行うための前処理として、デスケーリング、りん酸塩化成処理および潤滑処理が行われている。上記前処理は、通常、バッチ方式で処理(すなわち、バッチ処理)される。バッチ処理とは、金属線材コイルを酸洗槽でデスケーリングし、りん酸亜鉛等のりん酸塩化成処理槽に浸漬し、その後潤滑処理槽に浸漬して皮膜を形成させる一連の処理をいう。しかし、バッチ処理は、コイル状で処理するため、例えばりん酸塩化成処理では、線材と線材が接触している部分にりん酸塩化成処理液が回り込まず、皮膜むらが発生し、冷間加工時に焼付きの原因となることがあった。
そこで、コイルから線材をライン状に巻出して、連続的にデスケーリング、りん酸塩化成処理および潤滑皮膜処理し、伸線を行うインライン処理方法がある。インライン処理方法は、生産能力を高めるべく金属線材の線速を高めると、皮膜液槽内の浸漬時間を十分に確保することができず、金属線材表面に十分な皮膜を形成できない場合がある。浸漬時間を確保するためには、皮膜液槽を線材の進行方向に長くする必要があり、設備が大型化してしまう。そのため、りん酸塩化成処理において、金属線材表面に十分な皮膜を形成させることを目的に、皮膜の生成反応を促進させる技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、潤滑下地処理においてリン酸亜鉛Caの付着量を増し、線材の通線速度を高めることが可能な連続伸線方法が開示されている。特許文献1では、線材を長手方向に直線的かつ連続的に移動させ、脱スケール後、鉄・亜鉛粒によるブラストを行ない、線材の表面に鉄・亜鉛合金層を形成させ、その後リン酸亜鉛Ca溶液中を通して潤滑下地処理を行ない、水洗後、ステアリン酸Caまたはステアリン酸Na溶液中を通して潤滑処理を行ない、ついで乾燥した後伸線する。
特許文献2には、りん酸塩皮膜化成処理において、化成反応の促進および短時間化、ならびに得られるりん酸塩皮膜結晶の微細化を図るために用いられる、経時安定性に優れた表面調整用前処理液および表面調整方法が開示されている。特許文献2では、金属のりん酸塩皮膜化成処理前の表面調整用前処理液として、粒径が5μm以下のMnのりん酸塩粒子を0.001〜30g/Lの濃度で少なくとも含み、アルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩またはこれらの混合物を含有し、PHを4〜13に調整する。
特開昭62−207512号公報 特開2003−160882号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されている技術は、りん酸塩化成処理前に、線材に鉄・亜鉛粒によるブラスト工程または表面調整用前処理液という特殊な薬剤を付与する工程が必要である。そのため、設備が大型化する場合や、薬剤の購入コストなどにより、コストが増大してしまう場合があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、設備を大型化せずとも、また特殊な薬剤を使用しなくとも、りん酸塩皮膜の生成反応を促進させることができる金属線材のりん酸塩化成処理方法およびりん酸塩化成処理装置を提供することにある。
本発明の態様1は、
金属線材をりん酸塩化成処理液中に通過させて、前記金属線材の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成させるりん酸塩化成処理方法であって、
前記りん酸塩化成処理液中に拡散層除去部材を配置させ、
前記拡散層除去部材を、前記金属線材の表面の全周に接触または近接させて、前記金属線材の表面近傍に形成された拡散層を除去する、金属線材のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様2は、
前記拡散層除去部材は、第1ブラシと、前記第1ブラシの下方向に配置された第2ブラシと、を備え、
前記第1ブラシは、第1毛材が下方向に延び、
前記第2ブラシは、第2毛材が上方向に延び、
前記金属線材は、前記第1毛材および前記第2毛材に接触するように通過する、態様1に記載のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様3は、
前記拡散層除去部材は、第1ローラーと、前記第1ローラーの下方向に且つ回転軸が前記第1ローラーの回転軸と平行となるように配置された第2ローラーと、を備え、
前記第1ローラーの第1ローラー面には、第1窪みが前記第1ローラーの周方向に設けられ、
前記第2ローラーの第2ローラー面には、第2窪みが前記第2ローラーの周方向に設けられ、
前記金属線材は、前記第1窪みおよび前記第2窪みに接触または近接するように通過する、態様1に記載のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様4は、
前記拡散層除去部材は、前記金属線材が通過する貫通孔が設けられている筒状の部材である、態様1に記載のりん酸塩化成処理方法である。
本発明の態様5は、
態様1〜4のいずれかに記載の前記拡散層除去部材を備えた、りん酸塩化成処理装置である。
本発明によれば、設備を大型化せずとも、また特殊な薬剤を使用しなくとも、りん酸塩皮膜の生成反応を促進させることができる。
図1は、第一実施形態に係る前処理の全体の流れを説明するための模式図である。 図2は、第一実施形態に係るりん酸塩化成処理装置を例示した模式断面図である。 図3Aは、第一実施形態に係る拡散層除去部材を示す模式図である。 図3Bは、第一実施形態に係る拡散層除去部材を示す模式断面図である。 図4Aは、第二実施形態に係る拡散層除去部材の模式側面図である。 図4Bは、第二実施形態に係る拡散層除去部材の模式正面図である。 図5Aは、第三実施形態に係る拡散層除去部材の模式側面図である。 図5Bは、第三実施形態に係る拡散層除去部材の模式正面図である。 図6Aは、実施例に係るSEM写真(一次電子像)である。 図6Bは、実施例に係るSEM写真(反射電子像)である。 図7Aは、実施例に係るSEM写真(一次電子像)である。 図7Bは、実施例に係るSEM写真(反射電子像)である。 図8Aは、実施例に係るSEM写真(一次電子像)である。 図8Bは、実施例に係るSEM写真(反射電子像)である。
[概要]
金属線材をりん酸塩化成処理液に通過させると、金属線材の表面近傍に徐々に拡散層が形成される。拡散層は、皮膜生成反応性を低下させる。本発明では、拡散層を除去する拡散層除去部材が、りん酸塩化成処理液中に設けられている。そのため、りん酸塩皮膜の生成反応を促進させることができる。
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、金属線材のりん酸塩化成処理を含むインライン処理の全体の流れを説明するための模式図である。図1に示すように、インライン処理は、(1)金属線材コイル1をサプライスタンド2から巻出し、(2)矯正後に、(3)デスケーリングし、(4)りん酸塩化成処理、(5)水洗、(6)潤滑処理および(7)乾燥した後に、(8)巻き取りする工程から構成される。金属線材は、鋼材、アルミニウム、亜鉛などが挙げられるが、このうち鋼材が好ましい。以下では、金属線材は鋼材であることを前提として説明する。本発明では、上記(1)〜(8)の工程のうち、後述の通り(4)りん酸塩化成処理に特徴を有する。
上記(4)りん酸塩化成処理は、りん酸塩化成処理液(以下、単に「処理液」という場合がある)中に金属線材3を通過させて、金属線材3の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成させる工程である。りん酸塩皮膜は、金属線材3の錆発生を抑制する。さらに、りん酸塩皮膜は、伸線などの冷間加工において後述する潤滑剤をダイス内に引込むキャリアーの役目をもち、潤滑剤の下地層として有用である。このような効果を十分に発揮させるには、地鉄露出させることなく、金属線材3の表面全体に皮膜を生成させる必要がある。
図2は、りん酸塩化成処理を行うりん酸塩化成処理装置10を例示した模式断面図である。図2において、りん酸塩化成処理装置10は、りん酸塩化成処理槽11とタンク12とを備えている。りん酸塩化成処理槽11は、線材浸漬槽19と予備槽13aと予備槽13bとを備えている。線材浸漬槽19は、拡散層除去部材21を備えている。
線材浸漬槽19には、処理液16が常時充満されている。拡散層除去部材21は、処理液16中に配置されている。予備槽13aは、線材浸漬槽19の線材導入口14側に、線材浸漬槽19に隣接して設けられている。予備槽13bは、線材浸漬槽19の線材排出口15側に、線材浸漬槽19に隣接して設けられている。予備槽13aおよび予備槽13bは、線材浸漬槽19からオーバーフローした処理液16を受ける。予備槽13aおよび予備槽13bに溜まった処理液16は、配管17および配管18を介してタンク12に溜められる。タンク12に溜められた処理液16は、ポンプ51を用いて、配管20を介して線材浸漬槽19内に戻される。以上のようにして、処理液16は循環している。処理液16の組成、温度等は、特に限定されない。
金属線材3は、線材導入口14から導入され、処理液16中を通過することにより、金属線材3の表面にりん酸塩皮膜が連続的に形成される。金属線材3は、処理液16を通過中に、拡散層除去部材21を通過して、線材排出口15より排出される。
拡散層除去部材21は、金属線材3が処理液16を通過中に、金属線材3の表面の全周に接触または近接して、金属線材3の表面近傍に形成される拡散層を除去する。一般的に、りん酸塩皮膜生成反応において、時間の経過に伴い、線材表面から処理液側に鉄分が溶け出す。そして、線材表面近傍で溶解鉄分濃度が上昇し、処理液濃度が減少した拡散層が形成される。換言すると、拡散層は、金属線材3の表面近傍における処理液成分の濃度勾配が生じている層である。拡散層の厚さは、200μm程度であることが知られている。拡散層が形成されると、皮膜生成反応性は徐々に低下する。そのため、皮膜生成反応性を促進するには、拡散層を除去し、線材表面に常にフレッシュな状態(すなわち、処理液濃度が高く、鉄分濃度が低い状態)を維持することが有効であると考えられる。本発明では、拡散層を除去するために、金属線材3の表面の全周に接触(すなわち、当該表面からの距離が0μmである)または近接する拡散層除去部材21が処理液16中に設けられている。なお、本発明において「近接」とは、金属線材の表面からの距離が0μm超、約200μm以下をいう。
拡散層除去部材21が設けられる位置は、処理槽長さ(図2におけるL1)に対する、線材導入口14から拡散層除去部材21までの距離(図2におけるL2)の比率(L2/L1)が、0.06以上0.73以下であることが好ましく、0.2以上0.58以下であることがより好ましい。拡散層除去部材21の設置位置が線材導入口14に近過ぎると、当該設置位置で形成されている拡散層が薄いため、拡散層除去効果が小さくなる場合がある。一方、拡散層除去部材21の設置位置が線材導入口14から遠過ぎると、金属線材3が該拡散層除去部材21に到達するまでに、皮膜生成が概ね完了しているため、拡散層除去部材21による除去効果が十分発揮されない場合がある。拡散層除去部材21の位置は、調整できることが好ましい。
図3Aは、本実施形態に係る拡散層除去部材21を示す模式図である。図3Bは、図3AのA−A断面図である。図3Aおよび図3Bに示すように、拡散層除去部材21は、金属線材3が通過する貫通孔22が設けられている筒状の部材である。拡散層除去部材21の素材は、生成した皮膜が擦り取られず、かつ拡散層を除去できるのであれば、特に限定されない。図3Bに示すように、貫通孔22の直径は、金属線材3の直径と同程度にされている。そのため、金属線材3が拡散層除去部材21を通過する際に、拡散層除去部材21の内周面23が金属線材3の表面の全周に接触する。これにより、金属線材3が拡散層除去部材21を通過中に、金属線材3の表面近傍に形成されている拡散層が除去される。また、内周面23が金属線材3の表面の全周に接触するため、線材全周にわたって拡散層を効果的に除去することができる。その結果、地鉄露出させることなく、金属線材3の表面全体にりん酸塩皮膜を生成させることができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る拡散層除去部材31について図4Aおよび図4Bを参照して説明する。図4Aは、第二実施形態に係る拡散層除去部材31の模式側面図である。図4Bは、第二実施形態に係る拡散層除去部材31の模式正面図である。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素には第一実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図4Aに示すように、拡散層除去部材31は、第1ローラー32aと、第1ローラー32aの下方向に配置された第2ローラー32bとを備えている。第1ローラー32aの回転軸方向と第2ローラー32bの回転軸方向は平行である。第1ローラー32aの第1ローラー面33aと第2ローラー32bの第2ローラー面33bとは、互いに接触している。すなわち、拡散層除去部材31は、ローラー面が互いに接触するように上下に配置された上下一対のローラーである。拡散層除去部材31の素材は、生成した皮膜が擦り取られず、かつ拡散層を除去できるのであれば、特に限定されない。
図4Bに示すように、第1ローラー面33aには、第1窪み34aが第1ローラー32aの周方向に設けられている。第2ローラー面33bには、第2窪み34bが第2ローラー32bの周方向に設けられている。第1ローラー32aおよび第2ローラー32bの回転軸方向Aにおける第1窪み34aと第2窪み34bの位置は一致している。以上の構成により、第1ローラー面33aと第2ローラー面33bとの接触位置に、孔35が形成される。図4Bに示すように、孔35を形成する第1窪み34aおよび第2窪み34bの外面を外面36とする。
金属線材3は、孔35を通過する。図4Bに示すように、第1ローラー32aと第2ローラー32b(すなわち、拡散層除去部材31)は、孔35が少なくとも処理液16に浸漬するように、処理液16中に設けられている。孔35の形状は、金属線材3の断面形状と同じとなるようにされている。第1ローラー32aと第2ローラー32bは、金属線材3の通過に伴い回転する。これにより、図4Bに示すように、金属線材3が孔35を通過する際に、金属線材3の表面の全周が外面36(すなわち、拡散層除去部材31)と接触する。これにより、金属線材3の表面近傍に形成されている拡散層が除去される。また、拡散層除去部材31は、回転するローラーにより拡散層を除去するため、生成された皮膜が拡散層除去部材によって擦り取られる可能性をより低減することができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る拡散層除去部材41について図5Aおよび図5Bを参照して説明する。図5Aは、第三実施形態に係る拡散層除去部材41の模式側面図である。図5Bは、第三実施形態に係る拡散層除去部材41の模式正面図である。第三実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素には第一実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5Aに示すように、拡散層除去部材41は、第1ブラシ42aと、第1ブラシ42aの下方向に配置された第2ブラシ42bとを備えている。第1ブラシ42aは、第1毛材43aと第1保持部44aとを備えている。第2ブラシ42bは、第2毛材43bと第2保持部44bとを備えている。第1保持部44aは、第1毛材43aを保持する板状の部材である。第2保持部44bは、第2毛材43bを保持する板状の部材である。第1毛材43aは、第1保持部44aから下方向に突出して設けられている(すなわち、第1毛材43aは、第1保持部44aから下方向に延びている)。第2毛材43bは、第2保持部44bから上方向に突出して設けられている(すなわち、第2毛材43bは、第2保持部44bから上方向に延びている)。第1毛材43aの一部と第2毛材43bの一部とは、重なり合っている。第1毛材43aおよび第2毛材43bの素材は、生成した皮膜が擦り取られず、かつ拡散層を除去できるのであれば、特に限定されない。
図5Bに示すように、第1ブラシ42aおよび第2ブラシ42b(すなわち、拡散層除去部材41)は、第1毛材43aおよび第2毛材43bが重なり合った部分Bが、少なくとも処理液16に浸漬するように、処理液16中に設けられている。第1毛材43aの幅W1と第2毛材43bの幅W2は、同程度であり、金属線材3の直径より大きくなるように設定されている。金属線材3は、第1毛材43aおよび第2毛材43bが重なり合った部分Bを通過する。これにより、金属線材3の表面の全周が、第1毛材43aおよび第2毛材43b(すなわち、拡散層除去部材41)に接触する。その結果、金属線材3の表面近傍に形成されている拡散層を除去することができる。また、拡散層除去部材41は、ブラシにより拡散層を除去するため、生成された皮膜が拡散層除去部材によって擦り取られる可能性をより低減することができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第一実施形態では、拡散層除去部材21は筒状であったが、形状はこれに限定されない。例えば、四角柱等のその他の形状であってもよい。
また、第一実施形態では、拡散層除去部材21の内周面23が金属線材3の表面と接触していたが、拡散層除去部材21の内周面23は、金属線材3の表面と接触せずに近接してもよい。具体的には、内周面23は、金属線材3の表面と200μm以内の間隔を有して近接してもよい。上述したように、拡散層は、金属線材3の表面からりん酸化成処理液側に200μm程度の厚さで形成されている。そのため、金属線材3の表面と200μm以内の間隔を有して近接していれば、金属線材3が拡散層除去部材21を通過中に、拡散層を除去することができる。同様に、第二実施形態では、金属線材3の表面が外面36と接触していたが、外面36は、金属線材3の表面と200μm以内の間隔を有して近接してもよい。
また、拡散層除去部材は、処理液中の1箇所に設けられていれば、拡散層除去の効果を十分に得られる。しかし、りん酸塩化成処理の処理条件等に応じて、例えば2以上、更には3以上の複数の拡散層除去部材を設けてもよい。
また、第二実施形態および第三実施形態では、1つの拡散層除去部材を金属線材3の全周に接触させていたが、線材進行方向に複数の拡散層除去部材を設けて、線材進行方向から見て、当該複数の拡散層除去部材により結果的に金属線材3の全周に接触させる形態でもよい。
上記図1における(4)りん酸塩化成処理以外の工程は、例えば下記態様とすることができる。
上記(1)巻出しは、サプライスタンド2に配置された金属線材コイル1を、ライン状に巻き出す工程である。サプライスタンド2は、熱間圧延後の金属線材コイル1を、その軸心が上下方向または水平方向を向くように支持する設備である。「巻出し」では、金属線材を金属線材コイル1の上方または製造ラインの下流側に向かって引き抜くように巻き解くか、金属線材コイル1自体を水平面内に回転させながら、金属線材3を巻き出すことができる。
上記(2)矯正は、矯正機4を用いて金属線材3の巻き癖を矯正する工程である。矯正機4は、サプライスタンド2から巻き出された金属線材3の巻き癖を矯正する複数の矯正ロール5を備えている。具体的には、コイル状に巻き取った金属線材3は、矯正機4の複数の矯正ロール5を順番に通過することにより、巻き癖が矯正される。矯正機4で直線状に矯正された金属線材3は、「デスケーリング」の工程に送られる。
上記(3)デスケーリングは、矯正機4で直線状に矯正された金属線材3の表面からスケールを除去する工程である。デスケーリング方法は、特に限定されないが、ショットブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト、酸洗浄等よりなる群から選ばれる少なくとも1種の洗浄化処理を行うことが好ましい。
上記(6)潤滑処理は、上述した「りん酸塩化成処理(4)」によりりん酸塩皮膜が被覆された金属線材3に対して、石灰石けんのような金属石鹸を含む潤滑剤が被覆される工程である。潤滑剤の種類は、特に限定されない。潤滑剤が液体の場合、「(7)乾燥」において被覆された潤滑剤を乾燥させる。潤滑剤が被覆された金属線材3に対して、「伸線」のような冷間加工が加工機で行われる。このようにして被覆された潤滑剤を用いれば、金属線材3を潤滑しつつ冷間加工することが可能となり、金属線材3の加工をスムーズに行うことが可能となる。
りん酸塩皮膜の更なる反応促進を目的として、薬液の濃度調整、前工程として線材の予熱、表面調整剤等の付与などを行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適用し得る範囲で適当に変更を加えて実施する事ももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的な範囲に包含される。
下記の実機で製造した線材を用いて実験した。
・鋼種:SUJ2
・直径:12.0mm
・焼鈍:球状化焼鈍材
上記線材を用いて、下記のようにして皮膜形成処理をラボ試験にて行った。
(1)発明例:デスケーリング→りん酸塩化成処理(拡散層除去部材有り)→水洗→潤滑処理(石灰石けん)→乾燥→巻取り
(2)比較例1:デスケーリング→りん酸塩化成処理(拡散層除去部材無し)→水洗→潤滑処理(石灰石けん)→乾燥→巻取り
(3)比較例2:デスケーリング→表面調整剤処理→りん酸塩化成処理(拡散層除去部材無し)→水洗→潤滑処理(石灰石けん)→乾燥→巻取り
上記デスケーリングは、下記の条件でウェットブラストを行った。
(ウェットブラスト条件)
・エア圧力:0.4MPa
・線材とノズルとの角度:75°付近
・線材とノズルとの距離:75mm
・研磨材:ステンレスグリット(平均サイズ:150μm、砥粒濃度:15%)
上記表面調整剤は、下記を使用した。
・日本パーカライジングPL−Z(Ti系)
・濃度:10g/l
・温度:常温
上記りん酸塩化成処理は、下記の条件で行った。
・処理液:日本パーカライジングPB−3696
・全酸度:130pt
・液温度:80℃、
・浸漬時間:10秒
なお、上記ptとは、処理液の濃度単位で、処理液10mlを中和するのに要する0.1NのNaOHのml数のことである。
拡散層除去部材は、図5Aおよび図5Bに示したようなブラシを使用した。毛材の素材は、ナイロン繊維とした。拡散層除去部材は、上記L2/L1が0.06、0.18、0.58となるように計3か所設置した。
皮膜生成反応性を評価するため、以下のように、線材表面のSEM(Scanning Electron Microscope)観察および皮膜付着量を測定した。特殊薬剤を使用せず、皮膜付着量が7g/m以上であり、地鉄露出がないサンプルを、皮膜生成反応性が良好であり、合格とした。SEM観察結果および皮膜付着量の測定結果を図6A、図6B、図7A、図7B、図8A、図8Bおよび表1に示した。
(SEM観察)
・観察試料:りん酸塩化成処理後の試料
・倍率:1000倍
・観察領域:200μm×150μm
(皮膜付着量)
・りん酸塩化成処理後の試料を80℃のフォスリムーバー液に30分間浸漬し、浸漬前後の重量差からりん酸塩皮膜の付着量を算出した。
Figure 2021161483
図6Aは、比較例1のSEM写真(一次電子像)である。図6Bは、比較例1のSEM写真(反射電子像)である。図7Aは、比較例2のSEM写真(一次電子像)である。図7Bは、比較例2のSEM写真(反射電子像)である。図8Aは、発明例のSEM写真(一次電子像)である。図8Bは、発明例のSEM写真(反射電子像)である。一次電子像における白色部(図6Bの記号Sで示した部分)は、皮膜が形成されていない部分である。一方、一次電子像における黒色部(図6Bの記号Tで示した部分)は、りん酸塩の結晶が観察され、皮膜が形成されている部分である。
発明例は、特殊な薬剤(表面調整剤)を使用することなく、皮膜付着量が目標(7g/m以上)を満足し、地鉄露出も認められず、優れた皮膜生成反応性を有していた。また、図7Bおよび図8Bを比較すると、発明例の皮膜は、りん酸塩の結晶がより緻密に形成されていることが分かる。さらに、発明例の皮膜付着量は、比較例1および比較例2の皮膜付着量よりも大きかった。以上より、拡散層除去部材は、従来よりも皮膜生成反応性を向上させる効果が高いことが分かった。
比較例1は、皮膜付着量は目標を満足していたが、地鉄露出が認められ、皮膜生成反応性が不十分であった。拡散層除去部材を使用しなかたため、皮膜生成反応性が不十分であったと考えられる。
比較例2は、皮膜付着量が目標を満足し、地鉄露出も認められなかったが、特殊な薬剤を使用しているので、薬剤の管理が複雑となり、コスト増加が予想される。
3 金属線材
10 りん酸塩化成処理装置
11 りん酸塩化成処理槽
16 りん酸塩化成処理液(処理液)
19 線材浸漬槽
21、31、41 拡散層除去部材

Claims (5)

  1. 金属線材をりん酸塩化成処理液中に通過させて、前記金属線材の表面にりん酸塩皮膜を連続的に形成させるりん酸塩化成処理方法であって、
    前記りん酸塩化成処理液中に拡散層除去部材を配置させ、
    前記拡散層除去部材を、前記金属線材の表面の全周に接触または近接させて、前記金属線材の表面近傍に形成された拡散層を除去する、金属線材のりん酸塩化成処理方法。
  2. 前記拡散層除去部材は、第1ブラシと、前記第1ブラシの下方向に配置された第2ブラシと、を備え、
    前記第1ブラシは、第1毛材が下方向に延び、
    前記第2ブラシは、第2毛材が上方向に延び、
    前記金属線材は、前記第1毛材および前記第2毛材に接触するように通過する、請求項1に記載のりん酸塩化成処理方法。
  3. 前記拡散層除去部材は、第1ローラーと、前記第1ローラーの下方向に且つ回転軸が前記第1ローラーの回転軸と平行となるように配置された第2ローラーと、を備え、
    前記第1ローラーの第1ローラー面には、第1窪みが前記第1ローラーの周方向に設けられ、
    前記第2ローラーの第2ローラー面には、第2窪みが前記第2ローラーの周方向に設けられ、
    前記金属線材は、前記第1窪みおよび前記第2窪みに接触または近接するように通過する、請求項1に記載のりん酸塩化成処理方法。
  4. 前記拡散層除去部材は、前記金属線材が通過する貫通孔が設けられている筒状の部材である、請求項1に記載のりん酸塩化成処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記拡散層除去部材を備えた、りん酸塩化成処理装置。
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