JP6734243B2 - 難燃防蟻組成物、電力ケーブルおよびその製造方法 - Google Patents

難燃防蟻組成物、電力ケーブルおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、難燃防蟻組成物、電力ケーブルおよびその製造方法に関する。
電力ケーブルや通信ケーブルなどのケーブルには、最外層に保護外被覆(以下、シースと称す)を設けており、一般的にはポリエチレンやポリ塩化ビニル(PVC)などの汎用樹脂を押出被覆する。
シースは、ケーブルの敷設場所によって様々な機能が求められる。例えば、シロアリの活動が活発な地域の地中にケーブルを敷設する場合、シロアリからの食害を防ぎ、かつ、難燃性をもったシースが求められる。
このため、シースを単層でなく、難燃特性に優れるPVCと防蟻特性に優れるナイロンを順に積層した2層構造またはPVC、ナイロン、PVCを順に積層した3層構造とすることが通例であった。
例えば、特許文献1では、シースを難燃層上に防蟻層を積層した二重構造とし、難燃層として難燃ビニル層を、防蟻層として、ナイロンの代わりにポリプロピレン(PP)を積層させた二重構造とすることで、難燃性と防蟻性を備えたシースを有する電線ケーブルが報告されている。
また、トリアリルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート化合物を防蟻剤として使用することが提案(例えば、特許文献2参照)されている。このうち、重合性のアリル基を3つ有するトリアリルイソシアヌレートは、架橋助剤でもある(特許文献3参照)。
シースとして、2〜3層の積層構造とすることは、結果的に、ケーブル外径を大きくすることになり、しかも異なる材料を積層させているため、材料コストや製造コストが高くなるといった問題点が挙げられる。
特開2015−096583号公報 特開平2−78110号公報 特開2003−192865号公報
特許文献1で報告されているような従来の電線ケーブル(例えば、図2参照)では、シースが2層構造であり、前述のように製造コストが高くなるという問題点があるものの、難燃性と防蟻性の両方を高度に満たす材料が存在しなかったため、シースを1層化することができなかった。
一方、本発明者らの検討では、PVCとトリアリルイソシアヌレートのコンパウンドを作製し、190℃で押出を実施したところ、トリアリルイソシアヌレートの配合量を多くすると白煙および有機化合物臭が発生することがわかった。このため、押出加工する場合、局所ドラフトなどの設置が必要であり、製造コストの上昇につながるという新たな問題があることがわかった。
電力ケーブルでは、難燃性と防蟻性以外にも、耐寒性に対する要求も満たす必要がある。
このような状況を鑑み、本発明は、難燃性、防蟻性および耐寒性に優れ、しかも、押出加工性に優れ、かつ、安価に電力ケーブルを製造できる難燃防蟻組成物、それを用いた電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、難燃防蟻組成物のベース樹脂として、難燃性に優れていることからポリ塩化ビニル(PVC)を使用し、PVCとトリアリルイソシアヌレートのコンパウンドによる押出加工適性と、難燃性、防蟻性および耐寒性の電力ケーブルに対する基本性能を高度に満たすべく、鋭意検討した。
この結果、押出加工適性を満たすと同時に、難燃性、防蟻性および耐寒性を高度に満たす難燃防蟻組成物を見出し、これによって、電力ケーブルのシースを1層にすることが可能であることがわかり、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
(1)少なくとも、ポリ塩化ビニル、イソシアヌレート化合物およびホウ酸塩化合物をそれぞれ含有する難燃防蟻組成物であって、
前記ポリ塩化ビニル100質量部に対し、前記イソシアヌレート化合物の含有量が0.05〜10質量部であり、前記ホウ酸塩化合物の含有量が10〜55質量部であることを特徴とする難燃防蟻組成物。
(2)前記ポリ塩化ビニル100質量部に対し、前記イソシアヌレート化合物の含有量が0.05〜0.6質量部であり、前記ホウ酸塩化合物の含有量が10〜20質量部であることを特徴とする(1)に記載の難燃防蟻組成物。
(3)電力ケーブルの最外層であるシースに使用される(1)または(2)に記載の難燃防蟻組成物。
(4)導体上に、少なくとも、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層、遮蔽層およびシースがこの順に積層した構造を有する電力ケーブルであって、
前記シースが、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃防蟻組成物からなることを特徴とする電力ケーブル。
(5)前記シースが1層構造であることを特徴とする(4)に記載の電力ケーブル。
(6)導体上に、少なくとも、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層、遮蔽層およびシースがこの順に積層した構造を有する電力ケーブルの製造方法であって、
前記導体上に、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層および遮蔽層を順に積層させた後、
前記遮蔽層上に、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃防蟻組成物を押出被覆することを特徴とする電力ケーブルの製造方法。
本発明により、難燃性、防蟻性および耐寒性に高度に優れ、しかも、押出加工性に優れ、かつ、安価に電力ケーブルを製造できる難燃防蟻組成物、それを用いた電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法を提供することが可能となった。
本発明の電力ケーブルの一例を示す模式的な断面図である。 従来の電力ケーブルの一例を示す模式的な断面図である。
以下に、電力ケーブルのシースに好ましく適用できる本発明の難燃防蟻組成物から順に詳細に説明する。
<<難燃防蟻組成物>>
本発明の難燃防蟻組成物は、少なくとも、ポリ塩化ビニル(PVC)、イソシアヌレート化合物およびホウ素系化合物をそれぞれ含有する。
本発明では、これらの成分の難燃防蟻組成物中の含有量は、PVC100質量部に対し、イソシアヌレート化合物の含有量が0.05〜10質量部であり、ホウ素系化合物の含有量が10〜55質量部である。
<樹脂>
本発明の難燃防蟻組成物では、樹脂成分として、PVCを使用する。
PVCは、汎用プラスチックの中でも難燃性に優れており、難燃剤のような難燃性を向上させる材料の配合量を抑えることができる。
PVCは、ポリ塩化ビニルであれば、平均重合度や他のモノマー成分による単位構造、繰り返し単位構造が含まれていても構わない。
本発明においては、平均重合度は、900〜5,000が好ましい。また、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
樹脂成分としては、他の樹脂を加えてもよいが、全樹脂成分100質量部において、PVCは80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、実質100質量部が特に好ましい。
<イソシアヌレート化合物>
イソシアヌレート化合物は、イソシアヌレート骨格を有するものであれば、どのようなものでも構わないが、本発明では、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006734243
一般式(I)において、R〜Rは各々独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
脂肪族炭化水素基としては、飽和であっても不飽和であっても環状であっても構わない。
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、1〜6が特に好ましい。
脂肪族炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基がより好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、デシル、ビニル、アリル、イソプロペニル、エチニル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルが挙げられる。
アリール基の炭素数は6〜20が好ましく、6〜16がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
アリール基としては、フェニル、ナフチルが挙げられる。
ヘテロ環基におけるヘテロ環は、環構成原子に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される原子を少なくとも1つ有するものが好ましく、また、飽和環であっても不飽和環であっても芳香環であっても構わない。
このようなヘテロ環基の炭素数は、0〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。
ヘテロ環基のヘテロ環としては、例えば、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、ピリジン環が挙げられる。
一般式(I)で表される化合物は、R〜Rが各々独立に、水素原子または脂肪族炭化水素基が好ましく、R〜Rがいずれも脂肪族炭化水素基がより好ましく、R〜Rがいずれもアルキル基またはアルケニル基から選択される基がさらに好ましく、なかでも、R〜Rが同じ基が好ましい。
一般式(I)で表される化合物で、特に好ましい化合物は、トリメチルイソシアヌレート、トリエチルイソシアヌレート、トリプロピルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートであり、トリアリルイソシアヌレートが最も好ましい。
イソシアヌレート化合物の含有量は、PVC100質量部に対し、0.05〜10質量部であるが、0.05〜5質量部が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.6質量部がさらに好ましい。
<ホウ素系化合物>
ホウ素系化合物として、ホウ酸塩化合物、ホウ酸化物、ホウ硫化物、ホウ窒化物などが挙げられるが、ホウ酸塩化合物が好ましく、この中でもホウ酸亜鉛が特に好ましい。
ホウ素系化合物の含有量は、PVC100質量部に対し、10〜55質量部であるが、10〜35質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。
電力ケーブルのシースの防蟻性を高めるため、イソシアヌレート化合物の配合量が増加するほど、電力ケーブルのシースを押出加工する際、有機化合物臭や煙が発生しやすくなるため、製造性適性が悪化する。
本発明者らの検討で、ホウ酸亜鉛のようなホウ素系化合物は、難燃剤もしくは難燃助剤として作用するものであるが、防蟻性を示すことがわかった。しかも、イソシアヌレート化合物は耐寒性を向上させることもわかった。なお、ホウ素系化合物は、配合量が増加するほど耐寒性が低下する傾向にある。
ホウ素系化合物の含有量を、上記のように、PVC100質量部に対し、10〜55質量部、イソシアヌレート化合物の含有量を0.05〜10質量部とすることで、難燃性、防蟻性および耐寒性のいずれにも高いレベルに維持することが可能となり、しかも、押出加工での製造適性にも優れる。
<その他の成分>
本発明の難燃防蟻組成物は、樹脂成分以外の添加物として、ホウ素系化合物以外の難燃剤もしくは難燃助剤を含有してもよい。
このような難燃剤もしくは難燃助剤としては、特に限定されないが、三酸化アンチモン、ポリテトラフルオロエチレン、二酸化珪素、ハイドロタルサイト、重炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムもしくは水酸化カルシウムのような金属水酸化物、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化モリブデン、リン系化合物およびその表面処理品、メラミン、メラミンシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、モノペンタエリスリトール、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
これらの中でも、難燃性をさらに向上させるという観点から、三酸化アンチモン、金属水酸化物が好ましい。
ホウ素系化合物以外の難燃剤もしくは難燃助剤の含有量は、本発明の難燃防蟻組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
また、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、結晶核剤、軟化剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、抗菌・抗カビ剤、顔料などの添加剤を配合してもよい。
このような添加剤の含有量は、本発明の難燃防蟻組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
<用途>
本発明の難燃防蟻組成物は、電力ケーブルの最外層のシースとして特に好ましく適用される。
特に、本発明の難燃防蟻組成物は、難燃性、防蟻性および耐寒性のいずれにも高いレベルであることから、シースを1層化することが可能となり、電力ケーブルの製造コストを下げることができる。
<<電力ケーブル>>
本発明の電力ケーブルは、導体上に、少なくとも、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層、遮蔽層およびシースがこの順に積層した構造を有する電力ケーブルであって、シースが本発明の難燃防蟻組成物からなる。
具体的には、例えば、図1に示すように、導体1上に、順に、内部半導電層2、絶縁体層3、外部半導電層4、遮蔽層5および1層のシース6が被覆されている。
本発明では、従来の電力ケーブルのように、シースが2〜3層でなく1層である。
図2では、シースが2層構造のもので、難燃シース6−1上に防蟻シース6−2を有する。
本発明では、心数は、単心(1心)であっても複心(例えば、3心)であっても構わない。
ここで、例えば、3心は、少なくとも、導体上に、順に、少なくとも、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層および遮蔽層を有する単心を3つ束ね、この束ねた表面を、介在物、抑えテープ、シースなどで被覆したものである。
以下に、導体から順に説明する。
<導体>
導体は、銅もしくは銅合金、アルミニウムもしくはアルミニウム合金が好ましく、断面形状は、円型、矩形であっても構わないが、本発明では銅もしくは銅合金で円型が好ましい。
また、上記の金属線の表面にスズや銀などのめっきを施したものを用いてもよく、導体としては、単線あるいは撚線のいずれであってもよい。
導体の断面積や形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、導体の断面積は、2〜4000mmが好ましく、150〜2000mmがより好ましい。
また、このような金属線の表面にスズや銀などのめっきを施したものを用いてもよく、導体としては、単線あるいは撚線のいずれであってもよい。
導体の構成または形状は、撚線の場合、通常の電力ケーブルで使用される構成または形状が好ましく、円型撚線〔7/0.6(本/mm)、7/0.8(本/mm)、7/1.0(本/mm)、7/1.2(本/mm)〕、分割圧縮撚線または円型圧縮撚線のいずれでも構わないが、円型圧縮撚線が特に好ましい。
なお、分割圧縮撚線は、分割導体とも称され、各セグメント間に介在物を介在せしめてなる電力ケーブル用分割導体である。
<内部半導電層>
内部半導電層は、一般に、電力ケーブルで使用される内部半導電層を用いることができる。
内部半導電層は、例えば、繊維質(布)テープの導電材料を塗りつけたもの、ポリエチレンにカーボンを混入した押出形のもの、これらを組み合わせたものが挙げられる。内部半導電層は、内部半導電層用樹脂組成物を用い、これを架橋することにより形成したものが好ましい。内部半導電層用樹脂組成物は、通常、内部半導電層用樹脂、導電性物質、架橋剤および老化防止剤を含む。
内部半導電層用樹脂としては、特に限定されないが、通常は、エチレン系重合体が用いられる。エチレン系重合体としては、エチレンを繰り返し単位として含む重合体であればよく、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、架橋ポリエチレンがより好ましい。
ここで、架橋ポリエチレンは、内部半導電層用樹脂組成物に、ポリエチレンと架橋剤を含有させ、架橋させてもよい。
導電性物質としては、特に限定されないが、通常は、導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、不純物の含有量が少なく、内部半導電層用樹脂の電気特性を悪化させないという点、および、大きな凝集体を形成せず、内部半導電層用樹脂との界面において電気的欠陥である導電性突起が発生しないという点により、アセチレンブラックが好ましい。
内部半導電層には市販されている半導電コンパウンドNUCV−9563、9585、9589〔(株)NUC製〕などを用いて製造してもよい。
内部半導電層の厚さはケーブルの電圧階級によって異なり、限定するものではないが、内部半導電層の厚さは、2mm以下が好ましく、1〜2mmがより好ましい。
<絶縁体層>
絶縁体層は、内部半導電層を被覆する絶縁性の層であり、一般に、絶縁体層用樹脂組成物を用い、これを架橋することにより形成される。絶縁体層用樹脂組成物は、通常、絶縁体層用樹脂、架橋剤、および老化防止剤を含有する。
絶縁体層は、構成する樹脂として、ポリオレフィン樹脂が好ましく、不飽和有機酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂がより好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンもしくはプロピレンとの共重合体が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましく、ポリエチレンがさらに好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。
また、絶縁体層を構成する樹脂は、なかでも、架橋された樹脂が好ましい。
絶縁体層には、市販されている絶縁コンパウンドHFDA−9253NT SC、絶縁コンパウンドNUCV−9253〔(株)NUC製〕などを用いて製造してもよい。
絶縁体層の厚さや形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、絶縁体層の厚さは、10〜23mmが好ましく、10〜17mmがより好ましい。
<外部半導電層>
外部半導電層は、内部半導電層と同様に、一般にテープ方式と押出方式がある。
外部半導電層は、絶縁体層を被覆する半導電性の層であり、一般に、外部半導電層用樹脂組成物を用い、これを架橋することにより形成される。外部半導電層を形成するための外部半導電層用樹脂組成物は、通常、外部半導電層用樹脂、導電性物質、架橋剤および老化防止剤を含む。
外部半導電層用樹脂としては、特に限定されないが、通常は、エチレン系重合体が用いられる。エチレン系重合体の具体例としては、上述した内部半導電層用樹脂と同様のものなどが挙げられる。エチレン系重合体のなかでも、外部半導電層用樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく、ポリエチレンがより好ましく、架橋ポリエチレンがより好ましい。
ここで、架橋ポリエチレンは、外部半導電層用樹脂組成物に、ポリエチレンと架橋剤を含有させ、架橋させてもよい。
導電性物質としては、特に限定されないが、通常は、導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンの具体例としては、上述した内部半導電層用樹脂と同様のものなどが挙げられる。
外部半導電層の厚さや形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、外部半導電層の厚さは、1.5mm以下が好ましく、0.1〜1.5mmがより好ましい。
<遮蔽層>
遮蔽層(金属遮蔽層)はテープ状または押出した金属が挙げられる。例えば、銅テープ、アルミテープやアルミ、鉛、SUSをケーブルコア上に押し出したものなどが挙げられるが、好ましくはアルミニウム金属である。
遮蔽層の厚さや形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、遮蔽層の厚さは、例えば、テープ状であれば0.3mm以下が好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。
<シース>
シースは、絶縁体の防蟻性、難燃性を含む、外部からの保護を行うものであり、主に、電力ケーブルの最外層として設けられ、機械的強度さらには水分からの隔離を主な目的とする。
本発明では、シースは本発明の難燃防蟻組成物からなる。
シースの厚さや形状はケーブルの電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、シースの厚さは、4.0〜6.0mmが好ましく、4.0〜5.5mmがより好ましい。
<<電力ケーブルの製造方法>>
本発明の電力ケーブルは、導体上に、少なくとも、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層、遮蔽層およびシースがこの順に積層した構造を有する電力ケーブルである。
本発明では導体上に、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層および遮蔽層を順に積層させた後、この遮蔽層上に、本発明の難燃防蟻組成物により設けられる。
遮蔽層上に、難燃防蟻組成物を使用してシースを設ける方法はどのような方法でも構わないが、本発明では、難燃防蟻組成物を押出被覆するのが好ましく、この際、難燃防蟻組成物はペレットにして、このペレットを用いで押出被覆するのが、取り扱いやすく、簡便で好ましい。
本発明では、導体上に、順に、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層および遮蔽層を設ける際、例えば、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層の3層を同時押出することも好ましい。
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(難燃防蟻組成物の調製と性能評価)
以下のようにして、難燃防蟻組成物を調合し、これを用いて各シートを得、各評価を行った。
1)シートNo.1〜5、c1〜c5の製造
下記表1に示す割合(質量部)で、ポリ塩化ビニル(PVC)〔新第一塩ビ(株)製のZEST1400Z、平均重合度1,400〕、トリアリルイソシアヌレート〔日本化成(株)製のタイク(登録商標〕、ホウ酸亜鉛(米国BORAX社製のFIREBREAK290)を配合した後、150℃に設定したロール機を用いて混練し、厚さ2mmおよび3mmのシート状の試料を作製した。これを170℃、15分間のプレス成型を実施し、平滑なシートNo.1〜5、c1〜c5を得た。
ここで、シートNo.c1〜c5は比較例である。
Figure 0006734243
2)シートNo.c6の製造
ペレット状のナイロン〔宇部興産(株)製のUBECナイロン3024LU〕について、210℃で一軸押出を行った後、220℃、10分間のプレス成型を実施し、厚さ2mmおよび3mmの平滑な比較例のシートNo.c6を得た。
3)各シートの性能評価
上記のようにして得られた各シートに対して、防蟻性、難燃性および耐寒性の評価を、以下のようにして行った。
(防蟻性の評価)
厚さ2mmの各シートにおいて、縦20mm、横20mmの小片サンプルを3枚作製し、JIS K 1571(2010)「木材保存剤-性能基準の試験方法」に準拠した強制摂食試験を実施した。
底部を硬石膏で固めた内径80mm、高さ60mmのアクリル製円筒容器を使用し、サンプルはプラスチック製網上に設置した。また、1試験容器につき、試験体1個、イエシロアリ職蟻150頭、兵蟻15頭を投入し、暗所下、室温28±2℃、相対湿度80%以上の環境下で3週間保管した。
(難燃性の評価)
厚さ3mmの各シートにおいて、長さ130mm、幅6.5mmの小片サンプルを3枚作製し、JIS K 7201−2「プラスチック−酸素指数による燃焼性の試験方法」に準拠した試験を実施した。
(耐寒性の評価)
厚さ2mmの各シートにおいて、長さ38mm、幅6mmの小片サンプルを3枚作製し、JIS C 3005「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法」に準拠した耐寒温度を実施した。
(製造適性の評価)
各難燃防蟻組成物を、バンバリーミキサーにより190℃で溶融混合し、混合物を排出し、190℃で押出機を通して造粒しペレットに加工した。これを3回繰り返した。
この時の状態を観察し、3回とも異状なく、ペレットに押出加工できた場合をランクA、3回のうち、1回、白煙および有機化合物臭の発生を確認した場合をランクB、2回以上白煙および有機化合物臭の発生を確認した場合をランクCとして評価した。
これらの結果を、まとめて下記表2に示す。
なお、表2で「−」は、未評価であることを示す。
Figure 0006734243
上記表2から、本発明の難燃防蟻組成物からなるシートNo.1〜5はいずれも、防蟻性、難燃性および耐寒性のいずれにも優れ、しかも、190℃での押出加工においても、白煙や有機化合物臭の発生がなく、製造適性に優れている。
しかも、本発明のシートNo.1〜5の防蟻性は、従来防蟻材として使用されてきた比較のシートNo.c6より優れていることがわかる。
これに対して、比較のシートNo.c2のように、トリアリルイソシアヌレート単独では、比較のシートNo.c1との比較から、防蟻性を示すものの、平均質量減少率が0.03%であって、本発明のシートNo.1〜5の0.00%と比較すると、必ずしも十分ではない。
また、トリアリルイソシアヌレートとホウ酸亜鉛を併用しても、PVC100質量部に対するイソシアヌレート化合物およびホウ酸系化合物の含有量が本発明で規定する量を満たさない場合、少なくとも、防蟻性、耐寒性および製造適性のいずれかの性能が満足されるレベルを満たさない。
例えば、トリアリルイソシアヌレートとホウ酸亜鉛のいずれもが、本発明の規定量より少ない比較のシートNo.c3、ホウ酸亜鉛の含有量が多い比較のシートNo.c4では、防蟻性と耐寒性が両立できず、防蟻性と耐寒性のいずれかが劣る。
さらに、トリアリルイソシアヌレートが15質量部と多い場合、比較のシートNo.c5が示すように、大量の発煙が確認されたことから、製造性が悪いと考えられる。
ここで、比較のシートNo.c1、c2およびc4の比較から、ホウ酸亜鉛も防蟻性作用を示すことがわかる。
また、比較のシートNo.c4のようにホウ酸亜鉛が60質量部と多いと、比較のシートNo.c1、c2との比較、さらには、本発明のシートNo.4における55質量部との比較から、耐寒性が低下、すなわち、耐寒温度が0℃と高くなる傾向にあり、寒冷地での使用が懸念される。
さらに、比較のシートNo.c1とc2の比較および本発明のシートNo.2と3の比較のから、トリアリルイソシアヌレートは、耐寒性の改良効果を示すことがわかる。
実施例2
(電力ケーブルの製造と性能評価)
導体1上に、内部半導電層2、絶縁体層3、外部半導電層4、遮蔽層5およびシース6の順に構成された、図1に示すような電力ケーブル7を、以下のようにして製造した。
1)電力ケーブルNo.1の作製
導体に断面積800mmの銅からなる円形圧縮導体を使用し、厚さ1mmのカーボン添加架橋ポリエチレンからなる内部半導電層、厚さ11mmの架橋ポリエチレン〔(株)NUC製の絶縁コンパウンドNUCV−9253〕からなる絶縁体層、厚さ0.5mmのカーボン添加架橋ポリエチレンからなる外部半導電層を順に設けた。
その後、外部半導電層の外周に、アルミニウム金属の遮蔽層、実施例1で製造したシートNo.2と同じ配合のコンパウンドからなる厚さ5mmの遮水機能付き外装構造(シース)を加えた電力ケーブルNo.1を作製した。
2)電力ケーブルNo.c1の作製
電力ケーブルNo.1の作製において、図1のシースを、図2に示すような難燃シース6−1と防蟻シース6−2の2層構成のシースに置き替えた以外は、電力ケーブルNo.1と同様にして、比較の電力ケーブルNo.c1を製造した。
シース6は、難燃シース6−1として厚さ4mmで、比較のシートNo.c1と同じ配合のコンパウンドを使用し、防蟻シース6−2として厚さ1.5mmで、ポリプロピレンコンパウンド〔出光ライオンコンポジット(株)製のカルプ〕を順に押し出した。
上記のようにして製造した各電力ケーブルに対し、下記に示す燃焼試験を行った。
(電力ケーブルの燃焼性評価)
各電力ケーブルについて、IEEE std.383−1974に準拠した燃焼試験を実施した。この試験では、JEC3403−2001に記載の3種類のビニルシースに適合するかを判断するものである。なお、今回作製した電力ケーブルでは、3回の燃焼試験で、いずれも燃焼長がバーナ口から1200mm以下で、かつ残炎時間が1時間程度以内であるかが判断基準となる。
得られた結果を下記表3に示す。
なお、下記表3では、見積もった相対製造コストも記載した。
Figure 0006734243
上記表3から、本発明の電力ケーブルNo.1は、従来の2層積層したシースを使用した電力ケーブルNo.c1と比較し、シースの総厚みが、5.0mmと10%も薄いにもかかわらず、ともに、JEC3403−2001に記載の3種類のビニルシースに適合することが確認できた。
このことは、従来困難とされていた1層のシースで、少なくともシースが2層の積層の電力ケーブル並みの優れた性能を保持することが可能であることを意味する。
しかも、従来の電力ケーブルである電力ケーブルNo.c1との相対製造コストを見積もると、比較の電力ケーブルNo.c1の製造コストを1とした場合、本発明の電力ケーブルNo.1では、シースの総厚みが10%も薄いことに加え、1層であることなどから、0.87と見積もられ、約13%も製造コストを抑えることが可能であることがわかる。
1 導体
2 内部半導電層
3 絶縁体層
4 外部半導電層
5 遮蔽層(金属遮蔽層)
6 シース
6−1 難燃シース
6−2 防蟻シース
7 電力ケーブル

Claims (6)

  1. 少なくとも、ポリ塩化ビニル、イソシアヌレート化合物およびホウ酸塩化合物をそれぞれ含有する難燃防蟻組成物であって、
    前記ポリ塩化ビニル100質量部に対し、前記イソシアヌレート化合物の含有量が0.05〜10質量部であり、前記ホウ酸塩化合物の含有量が10〜55質量部であることを特徴とする難燃防蟻組成物。
  2. 前記ポリ塩化ビニル100質量部に対し、前記イソシアヌレート化合物の含有量が0.05〜0.6質量部であり、前記ホウ酸塩化合物の含有量が10〜20質量部であることを特徴とする請求項1に記載の難燃防蟻組成物。
  3. 電力ケーブルの最外層であるシースに使用される請求項1または2に記載の難燃防蟻組成物。
  4. 導体上に、少なくとも、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層、遮蔽層およびシースがこの順に積層した構造を有する電力ケーブルであって、
    前記シースが、請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃防蟻組成物からなることを特徴とする電力ケーブル。
  5. 前記シースが1層構造であることを特徴とする請求項4に記載の電力ケーブル。
  6. 導体上に、少なくとも、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層、遮蔽層およびシースがこの順に積層した構造を有する電力ケーブルの製造方法であって、
    前記導体上に、内部半導電層、絶縁体層、外部半導電層および遮蔽層を順に積層させた後、
    前記遮蔽層上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃防蟻組成物を押出被覆することを特徴とする電力ケーブルの製造方法。
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