以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2の断面が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。この図1に示された断面は、周方向に対して垂直な面に沿ってこのタイヤ2を切断することにより得られる。
この図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18及び一対のチェーファー20を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面22を形成する。トレッド4は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。図示されていないが、このトレッド4には溝を刻むことができる。これにより、トレッドパターンが形成される。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4から半径方向略内向きに延びている。図示されていないが、このサイドウォール6の半径方向外側部分はトレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ8と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6よりも半径方向内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ8は、リムのフランジと当接する。
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。ビード10は、コア24と、このコア24から半径方向外向きに延びるエイペックス26とを備えている。コア24はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス26は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス26は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス12は、カーカスプライ28を備えている。カーカスプライ28は、トレッド4、サイドウォール6及びクリンチ8に沿って延在している。カーカスプライ28は、両側のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ28は、コア24の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ28には、主部30と折り返し部32とが形成されている。このタイヤ2では、カーカス12は1枚のカーカスプライ28から形成されている。このカーカス12が、2枚以上のカーカスプライ28から形成されてもよい。
図示されていないが、カーカスプライ28は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。ベルト14は、内側層34及び外側層36からなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層34の幅は外側層36の幅よりも若干大きい。
図示されていないが、内側層34及び外側層36のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層34のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層36のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト14の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト14が、3以上の層を備えてもよい。
バンド16は、ベルト14の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド16の幅はベルト14の幅よりも大きい。バンド16は、ベルト14の全体を覆っている。
図示されていないが、このバンド16は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド16は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト14が拘束されるので、ベルト14のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト14及びバンド16は、補強層を構成している。ベルト14のみから、補強層が構成されてもよい。バンド16のみから、補強層が構成されてもよい。
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置している。インナーライナー18は、カーカス12の内面に接合されている。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのチェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー20は布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー20がクリンチ8と一体とされてもよい。この場合、チェーファー20の材質はクリンチ8の材質と同じとされる。
本発明においては、タイヤ2の、カーカス12の軸方向外側で、かつ、サイドウォール6からクリンチ8までの部分はサイドピース38とも称される。このサイドピース38は、サイドウォール6及びクリンチ8を備えている。このタイヤ2では、サイドピース38はサイドウォール6及びクリンチ8で構成されている。
前述したように、サイドウォール6はトレッド4から半径方向略内向きに延びている。クリンチ8は、サイドウォール6よりも半径方向内側に位置している。このタイヤ2のサイドピース38は、トレッド4から半径方向略内向きに延びている。
図から明らかなように、クリンチ8はサイドピース38の半径方向内側部分を構成している。前述したように、ビード10はクリンチ8の軸方向内側に位置している。このタイヤ2のビード10は、サイドピース38の半径方向内側部分においてこのサイドピース38よりも軸方向内側に位置している。
このタイヤ2の偏平率(JATMA参照)は50%以下である。詳細には、このタイヤ2の偏平率は45%である。このタイヤ2は、低偏平タイプである。このタイヤ2のサイドピース38には、リムプロテクター40が設けられている。言い換えれば、このタイヤ2では、サイドピース38はリムプロテクター40を有している。リムプロテクター40は、周方向に延在している。詳細には、サイドピース38は、本体42と、周方向に延在するリムプロテクター40とを備えている。リムプロテクター40は、軸方向において、本体42よりも外側に位置している。このリムプロテクター40は、本体42の外面44から軸方向外向きに突出している。本発明においては、この本体42の外面44はサイドピース38の基準面46とも称される。
図1において、符号PTはリムプロテクター40の頂である。この頂PTは、基準面46からの高さが最大となる位置により表される。この基準面46からの高さは、図1に示された断面において、基準面46からリムプロテクター40の外面48までの長さを、この基準面46の法線に沿って計測することにより得られる。
前述したように、このタイヤ2のサイドピース38はサイドウォール6及びクリンチ8で構成されている。サイドウォール6及びクリンチ8の境界50は、サイドウォール6の半径方向内側面であり、クリンチ8の半径方向外側面である。サイドピース38はカーカス12に積層されているので、この境界50はカーカス12と交わっている。この境界50は、カーカス12との交点から軸方向略外向きに延在している。図1に示されているように、この境界50は、頂PTにおいて、このリムプロテクター40の外面48と交わっている。この境界50が、この頂PTよりも半径方向外側の部分において、このリムプロテクター40の外面48と交わってもよい。この境界50が、この頂PTよりも半径方向内側の部分において、このリムプロテクター40の外面48と交わってもよい。
本発明においては、タイヤ2及びこのタイヤ2を構成する部品の輪郭はプロファイルと称される。このプロファイルは、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定された寸法に基づいて特定される。プロファイル特定のための寸法の測定時には、タイヤ2に荷重はかけられない。トレッド4に溝が刻まれている場合には、この溝がないと仮定して得られる仮想外面によりトレッド面22のプロファイルは特定される。サイドピース38に凹凸模様が付されている場合には、この凹凸模様がないと仮定して得られる仮想外面により、このサイドピース38の外面52のプロファイルは特定される。前述の本体42の外面44のプロファイルは、サイドピース38にリムプロテクター40がないと仮定して得られる仮想外面により特定される。タイヤ2の各部材の寸法及び角度も、このプロファイル決定のための寸法と同様、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。乗用車用タイヤ2の場合は、特に言及のない限り、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
図1において、符号PWは、本体42の外面44、すなわち基準面46上の特定の位置を表している。このタイヤ2では、位置PWにおいて、左右の基準面46間の軸方向距離が最大を示す。本発明においては、この位置PWにおける左右の基準面46間の軸方向距離WMが、タイヤ2の最大幅(断面幅とも称される。)として表される。換言すれば、位置PWは、軸方向において、このタイヤ2が最大幅WMを示す位置に対応する。本発明においては、この位置PWは第一基準位置とも称される。図1中、実線LWは、この第一基準位置PWを通り、軸方向に延びる直線である。
このタイヤ2では、基準面46のプロファイルは半径方向に並列された複数の円弧で表されている。換言すれば、この基準面46のプロファイルは半径方向に並列された複数の円弧を含んでいる。本発明においては、これらの円弧には、第一基準位置PWから半径方向略外向きに延びる円弧(以下、外側円弧)及びこの基準位置PWから半径方向略内向きに延びる円弧(以下、内側円弧)が含まれている。
図1において、矢印Rsは外側円弧の曲率半径を表している。矢印Ruは、内側円弧の曲率半径を表している。符号Csは外側円弧の中心であり、符号Cuは内側円弧の中心である。この図1に示されているように、外側円弧の中心Cs及び内側円弧の中心Cuは直線LW上にある。このタイヤ2では、外側円弧と内側円弧とは第一基準位置PWにおいて接している。第一基準位置PWは、外側円弧及び内側円弧の接点である。
このタイヤ2では、外側円弧は外向きに凸な形状を呈している。内側円弧は、外向きに凸な形状を呈している。基準面46、すなわち本体42の外面44のプロファイルは外側円弧及び内側円弧を含み、この外側円弧と内側円弧とは基準位置PWにおいて接している。前述したように、この基準位置PWはこのタイヤ2が最大幅WMを示す位置に対応している。この基準面46は、軸方向外向きに凸な形状を呈している。この基準面46を有するサイドピース38は、撓みに寄与する。
このタイヤ2では、適切な撓みと車重の支持との観点から、外側円弧の曲率半径Rsは30mm以上40mm以下が好ましい。内側円弧の曲率半径Ruは、45mm以上55mm以下が好ましい。このタイヤ2では、好ましくは、内側円弧の曲率半径Ruは外側円弧の曲率半径Rsより大きい。詳細には、外側円弧の曲率半径Rsに対する内側円弧の曲率半径Ruの比は1.38以上1.48以下が好ましい。
このタイヤ2では、リムプロテクター40は第一斜面54及び第二斜面56を備えている。第一斜面54は、リムプロテクター40の外面48の一部である。この第一斜面54は、リムプロテクター40の頂PTから半径方向略外向きに延びている。第二斜面56も、リムプロテクター40の外面48の一部である。この第二斜面56は、リムプロテクター40の頂PTから半径方向略内向きに延びている。この図1に示された断面において、リムプロテクター40はその頂PTから基準面46に向かって裾広がりな形状を呈している。
このタイヤ2では、第一斜面54のプロファイルは円弧で表される。本発明においては、この第一斜面54のプロファイルを表す円弧は第一円弧と称される。このタイヤ2では、第二斜面56のプロファイルも円弧で表される。本発明においては、この第二斜面56のプロファイルを表す円弧は第二円弧と称される。この図1において、矢印R1は第一円弧の曲率半径を表しており、矢印R2は第二円弧の曲率半径を表している。この図1には、第一円弧の中心は示されていないが、符号C2は第二円弧の中心である。
図1において、位置PS1はリムプロテクター40の半径方向外側端である。このタイヤ2では、この位置PS1において、第一円弧は外側円弧と接している。この位置PS1は、第一円弧と外側円弧との接点である。このタイヤ2では、位置PS1、外側円弧の中心Cs及び第一円弧の中心(図示されず)は、同一直線上にある。
このタイヤ2では、リムプロテクター40は、その厚さが外側端PS1から頂PTに向かって漸増するように構成されている。このタイヤ2では、リムプロテクター40の頂PTから半径方向外側の部分では、サイドピース38は半径方向内側ほど厚い。
図1において、位置PU2はリムプロテクター40の半径方向内側端である。このタイヤ2では、この位置PU2において、第二円弧は内側円弧と接している。この位置PU2は、第二円弧と内側円弧との接点である。このタイヤ2では、位置PU2、内側円弧の中心Cu及び第二円弧の中心C2は、同一直線上にある。
このタイヤ2では、リムプロテクター40は、その厚さが頂PTから内側端PU2に向かって漸減するように構成されている。このタイヤ2では、リムプロテクター40の頂PTから半径方向内側の部分では、サイドピース38は半径方向内側ほど薄い。
このタイヤ2のリムプロテクター40には、必要以上に大きな厚さを有する部分は形成されにくい。このタイヤ2では、リムプロテクター40がタイヤ2の質量に与える影響は小さく抑えられている。このリムプロテクター40がタイヤ2の剛性に与える影響も特異ではない。このリムプロテクター40は、タイヤ2の質量の増加を抑えつつ、タイヤ2の横剛性を効果的に向上させる。
図1において、符号PEはトレッド面22と赤道面との交点である。本発明において、この交点PEは赤道と称される。実線BBLはビードベースラインである。ビードベースラインは、リムのリム径(JATMA参照)を規定する線である。このビードベースラインは、軸方向に延びる。両矢印SHは、このビードベースラインからこのタイヤ2の赤道PEまでの半径方向高さを表している。この高さSHは、このタイヤ2の断面高さである。
図2には、図1に示されたタイヤ2のリムプロテクター40の部分がリム58とともに示されている。このリム58は正規リムである。この図2において、両矢印Hはビードベースラインからリムプロテクター40の頂PTまでの半径方向高さを表している。
このタイヤ2では、高さHの、断面高さSHに対する比は0.27以上である。この比が0.27以上に設定されることにより、リムプロテクター40がリム58のフランジ60と干渉することが防止される。このタイヤ2は、リム58に適切に装着される。リムプロテクター40のボリュームが適切に維持されるので、このタイヤ2では、このリムプロテクター40による質量への影響が抑えられる。
このタイヤ2では、高さHの、断面高さSHに対する比は0.34以下である。この比が0.34以下に設定されることにより、リムプロテクター40がフランジ60又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター40の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性の向上を図ることができる。さらにこのビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が抑えられる。
図2において、両矢印Fはカーカス12からリムプロテクター40の頂PTまでの距離を表している。この距離Fは、カーカス12の外面62の法線に沿って計測される。本発明において、この距離Fはリムプロテクター40の頂PTにおけるサイドピース38の厚さである。
図2において、符号PB1は、タイヤ2の外面上の特定の位置を表している。このタイヤ2では、この位置PB1は、図1の直線LWとタイヤ2の外面との交点である。両矢印Eは、カーカス12からこの交点PB1までの距離を表している。この距離Eは、この直線LWに沿って計測される。前述したように、直線LWは第一基準位置PWを通る。本発明において、この距離Eは第一基準位置PWにおけるサイドピース38の厚さである。
このタイヤ2では、第一基準位置PWにおけるサイドピース38の厚さEの、リムプロテクター40の頂PTにおけるサイドピース38の厚さFに対する比は0.20以上0.30以下である。このタイヤ2では、リムプロテクター40はフランジ60又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター40のボリュームが適切に維持されるので、このリムプロテクター40による質量への影響が抑えられる。リムプロテクター40の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性の向上を図ることができる。さらにこのビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が効果的に抑えられる。この観点から、この比は0.21以上が好ましく、0.23以上がより好ましい。この比は、0.29以下が好ましく、0.27以下がより好ましい。
このタイヤ2では、リムプロテクター40はサイドピース38の本体42から軸方向外向きに突出しており、このリムプロテクター40の頂PTの部分においてサイドピース38は最も厚い。そして、このリムプロテクター40の頂PTまでの高さHの、断面高さSHに対する比が0.27以上0.34以下の範囲にあり、このタイヤ2が最大幅を示す位置に対応する第一基準位置PWにおけるサイドピース38の厚さEの、リムプロテクター40の頂PTにおけるこのサイドピース38の厚さFに対する比が0.20以上0.30以下の範囲にあるように、このリムプロテクター40の形状は整えられている。
このタイヤ2では、タイヤ2が依拠する規格に定められている、適用可能な複数のリム58のうち、最も大きなサイズを有するリム58にこのタイヤ2を組み込んでも、このリムプロテクター40はサイドウォール6又はフランジ60の損傷を効果的に防止する。またこの適用可能な複数のリム58のうち、最も小さなサイズを有するリム58にこのタイヤ2を組み込んでも、このリムプロテクター40によるフランジ60との干渉が効果的に防止され、このタイヤ2をリム58に適切に装着することができる。このリムプロテクター40は、このタイヤ2を適用可能ないずれのリム58に組み込んでも、サイドウォール6又はフランジ60の損傷防止に十分に機能する。しかも前述のように、このタイヤ2のリムプロテクター40は、質量の増加を抑えつつ、剛性の向上に寄与する。本発明によれば、その機能を十分に発揮できるリムプロテクター40を有し、しかも質量の増加を抑えつつ、剛性の向上が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
図2において、符号PB2はタイヤ2の外面上の特定の位置を表している。両矢印H22は、ビードベースラインからこの位置PB2までの半径方向高さを表している。本発明において、この高さH22の、このタイヤ2の断面高さSHに対する比は、22%である。つまりこの符号PB2は、ビードベースラインからの半径方向高さH22が断面高さSHの22%である位置を表している。本発明においては、この位置PB2は第二基準位置と称される。両矢印Gは、カーカス12からこの交点PB2までの距離を表している。この距離Gは、カーカス12の外面62の法線に沿って計測される。本発明において、この距離Gは第二基準位置PB2におけるサイドピース38の厚さである。
タイヤ2は、そのビード10の部分においてリム58に組み込まれる。タイヤ2の一部はリム58と接触し、その他の部分はこのリム58とは接触しない。タイヤ2のうち、リム58と接触している部分ではその動きはリム58に拘束される。リム58と接触している部分と、そうでない部分との境界付近における剛性は、タイヤ2において重要である。前述の位置PBは、この境界付近に位置している。
このタイヤ2では、好ましくは、第二基準位置PB2におけるサイドピース38の厚さGの、リムプロテクター40の頂PTにおけるサイドピース38の厚さFに対する比は0.40以上0.60以下である。このタイヤ2では、フランジ60又はサイドウォール6の損傷防止にリムプロテクター40はより効果的に機能する。リムプロテクター40のボリュームが適切に維持されるので、このリムプロテクター40による質量への影響がさらに抑えられる。リムプロテクター40の頂PTの部分がビード10の部分の剛性により効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性のさらなる向上を図ることができる。さらにこのビード10の部分の動きがより効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が効果的に抑えられる。この観点から、この比は0.41以上が好ましく、0.46以上がより好ましい。この比は、0.55以下が好ましく、0.54以下がより好ましい。
このタイヤ2では、第一斜面54のプロファイルを表す第一円弧は外向きに凸な円弧である。言い換えれば、この第一斜面54は外向きに凸な形状を呈している。このタイヤ2では、リムプロテクター40の頂PTから半径方向外側の部分では、この頂PTに近づくほどサイドピース38の厚さの変化量は小さい。
このタイヤ2では、第二斜面56のプロファイルを表す第二円弧は内向きに凸な円弧である。言い換えれば、この第二斜面56は内向きに凸な形状を呈している。このタイヤ2では、リムプロテクター40の頂PTから半径方向内側の部分では、この頂PTに近づくほどサイドピース38の厚さの変化量は大きい。
このタイヤ2では、リムプロテクター40は、必要以上に大きな厚さを有する部分の形成を抑えつつ、位置PS1から位置PU2までの広い範囲にわたる、言い換えれば、タイヤ2の最大幅位置PWからタイヤ2がリム58と接触する位置までの、厚さの確保に効果的に寄与する。このリムプロテクター40は、質量の増加を効果的に抑えつつ、剛性の向上にいっそう寄与する。さらにこのリムプロテクター40は、ビード10の部分の動きをより効果的に抑えるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇がいっそう抑えられる。この観点から、本発明では、この図1に示されたタイヤ2のように、第一斜面54が外向きに凸な形状を呈しており、第二斜面56が内向きに凸な形状を呈しているのが好ましい。
このタイヤ2では、リムプロテクター40の頂PTにおけるサイドピース38の厚さFの、断面高さSHに対する比は、0.10以上が好ましく、0.15以下が好ましい。この比が0.10以上に設定されることにより、リムプロテクター40がフランジ60又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター40の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性の向上を図ることができる。さらにビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が抑えられる。この比が0.15以下に設定されることにより、リムプロテクター40のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター40による質量への影響が抑えられる。さらにこのリムプロテクター40による剛性への影響が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。
このタイヤ2では、リムプロテクター40の頂PTにおけるサイドピース38の厚さFは9.5mm以上が好ましく、14.5mm以下が好ましい。この厚さFが9.5mm以上に設定されることにより、リムプロテクター40がフランジ60又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター40の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性の向上を図ることができる。さらにビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が抑えられる。この厚さFが14.5mm以下に設定されることにより、リムプロテクター40のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター40による質量への影響が抑えられる。さらにこのリムプロテクター40による剛性への影響が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。
前述したように、リムプロテクター40の第一斜面54は第一円弧で表され、その第二斜面56は第二円弧で表される。このタイヤ2では、第一円弧の曲率半径R1に対する第二円弧の曲率半径R2の比は0.066以上が好ましい。この比が0.066以上に設定されることにより、基準面46から第一斜面54までの厚さが適切に確保されたリムプロテクター40が得られる。このリムプロテクター40は、サイドウォール6又はフランジ60の損傷防止に機能するとともに、剛性の向上に寄与する。第二斜面56に起因するエアの巻き込みが抑えられるので、成形不良の発生が防止される。
このタイヤ2では、第一円弧の曲率半径R1に対する第二円弧の曲率半径R2の比は0.117以下が好ましい。この比が0.117以下に設定されることにより、適切な厚さで維持されたリムプロテクター40が得られる。このタイヤ2では、リムプロテクター40による質量への影響が効果的に抑制される。
このタイヤ2では、第一円弧の曲率半径R1は150mm以上が好ましく、450mm以下が好ましい。この曲率半径R1が150mm以上に設定されることにより、基準面46から第一斜面54までの厚さが適切に維持されたリムプロテクター40が得られる。このタイヤ2では、リムプロテクター40による質量への影響が効果的に抑制される。ほぼフラットな第一斜面54を有するリムプロテクター40が得られるので、複数本のタイヤ2を積み上げて保管しても、荷崩れは起こりにくい。この曲率半径R1が450mm以下に設定されることにより、基準面46から第一斜面54までの厚さが適切に確保されたリムプロテクター40が得られる。このリムプロテクター40は、サイドウォール6又はフランジ60の損傷防止に機能するとともに、剛性の向上に寄与する。
このタイヤ2では、第二円弧の曲率半径R2は15mm以上が好ましく、40mm以下が好ましい。この曲率半径R2が15mm以上に設定されることにより、第二斜面56に起因するエアの巻き込みが抑えられる。このタイヤ2では、成形不良の発生が防止される。この曲率半径R2が40mm以下に設定されることにより、基準面46から第二斜面56までの厚さが適切に維持されたリムプロテクター40が得られる。このタイヤ2では、リムプロテクター40による質量への影響が効果的に抑制される。
このタイヤ2では、第一円弧の曲率半径R1は外側円弧の曲率半径Rsよりも大きい。これにより、基準面46から第一斜面54までの厚さが適切に確保されたリムプロテクター40が得られる。このリムプロテクター40は、サイドウォール6又はフランジ60の損傷防止に機能するとともに、剛性の向上に寄与する。この観点から、曲率半径R1の曲率半径Rsに対する比は、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。基準面46から第一斜面54までの厚さが適切に維持されたリムプロテクター40が得られ、このリムプロテクター40による質量への影響が抑えられるとの観点から、曲率半径R1の曲率半径Rsに対する比は、10以下が好ましく、9以下がより好ましい。
図2において、実線RBLはリムベースラインである。リムベースラインは、リム58のリム幅(JATMA参照)を規定する線である。このリムベースラインは、半径方向に延びる。両矢印Wは、このリムベースラインからリムプロテクター40の頂PTまでの軸方向距離を表している。この長さWは、リムプロテクター40の突出長さである。
このタイヤ2では、好ましくは、突出長さWは12mm以上である。この突出長さWが12mm以上に設定されることにより、リムプロテクター40がフランジ60又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター40の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性の向上を図ることができる。さらにビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が抑えられる。
このタイヤ2では、好ましくは、突出長さWは18mm以下である。この突出長さWが18mm以下に設定されることにより、リムプロテクター40のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター40による質量への影響が抑えられる。さらにこのリムプロテクター40による剛性への影響が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。
図2において、両矢印Lは本体42の外面44、すなわち基準面46からリムプロテクター40の頂PTまでの距離を表している。この距離Lは、基準面46の法線に沿って計測される。本発明において、この距離Lはリムプロテクター40の頂PTにおけるこのリムプロテクター40の厚さである。
このタイヤ2では、リムプロテクター40の頂PTにおけるリムプロテクター40の厚さLの、突出長さWに対する比は0.33以上0.60以下が好ましい。この比が0.33以上に設定されることにより、リムプロテクター40がフランジ60又はサイドウォール6の損傷防止に効果的に機能する。リムプロテクター40の頂PTの部分がビード10の部分の剛性に効果的に寄与するので、このタイヤ2では、横剛性の向上を図ることができる。さらにビード10の部分の動きが効果的に抑えられるので、このタイヤ2では、転がり抵抗の上昇が抑えられる。この比が0.60以下に設定されることにより、リムプロテクター40のボリュームが適切に維持される。このタイヤ2では、リムプロテクター40による質量への影響が抑えられる。さらにこのリムプロテクター40による剛性への影響が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が維持される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1−2に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、225/45R17である。この実施例1の諸元は、下記の表1の通りである。なおこの実施例1では、基準面の外側円弧の曲率半径Rsは35mmであり、その内側円弧の曲率半径Ruは50mmであった。表1の諸元が得られるように、リムプロテクターの第一斜面のプロファイルを表す第一円弧の曲率半径R1は300.0mmに設定され、その第二斜面のプロファイルを表す第二円弧の曲率半径R2は25.0mmに設定された。
[比較例1]
比較例1は、従来のタイヤである。この比較例1の諸元は、下記の表1の通りである。この比較例1では、リムプロテクターの第一斜面のプロファイルを表す第一円弧は、内向きに凸な形状とされた。第一円弧の曲率半径R1は45.0mmに設定され、その第二斜面のプロファイルを表す第二円弧の曲率半径R2は8.0mmに設定された。
[実施例2−5]
ビードベースラインからリムプロテクターの頂PTまでの半径方向高さHを変えて、この高さHの断面高さSHに対する比(H/SH)を下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−5のタイヤを得た。
[実施例6−9]
第一基準位置PWにおけるサイドピースの厚さEを変えて、この厚さEの、リムプロテクターの頂PTにおけるサイドピースの厚さFに対する比(E/F)を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6−9のタイヤを得た。
[実施例10−13及び比較例2]
厚さFを変えて、第二基準位置PB2におけるサイドピースの厚さGの厚さFに対する比(G/F)、比(E/F)及び厚さFの断面高さSHに対する比(F/SH)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例10−13及び比較例2のタイヤを得た。
[実施例14−17]
厚さGを変えて、比(G/F)を下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例14−17のタイヤを得た。
[質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−4に示されている。数値が小さいほど好ましい、すなわち、軽量である。
[機能性]
タイヤをリムに組み込み、リムのフランジの先端からリムプロテクターの頂点までの距離(以下、突出距離)を計測した。適用可能なリムの中から、最も大きなリム(以下、最大リム、サイズ=8.5J)と、最も小さなリム(以下、最小リム、サイズ=7.0J)とを選定し、それぞれのリムについて、上記突出距離を計測した。最大リムを使用した場合には、荷重をかけずに、突出距離(以下、最大突出距離)を計測した。最小リムを使用した場合には、ETRTO規格における「LOAD CAPACITY」の2倍に相当する荷重をかけて、突出距離(以下、最小突出距離)を計測した。最大突出距離及び最小突出距離の平均値を算出した。この結果が、指数として下記の表1−4に示されている。数値が大きいほど好ましい、すなわち、数値が大きいほど、最小リムにおいても、そして最大リムにおいても、リムプロテクターの突出距離が適切に確保され、リムプロテクターがその機能を十分に発揮することを表している。
[横剛性]
タイヤを7.5Jのリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。縦荷重(1.5kN)を付加して、タイヤを接地させた後、横荷重(0.5kN)を付加した時の反発力と、トレッドの中心位置の移動量を計測し、横剛性を算出した。この結果が、指数として下記の表1−4に示されている。数値が大きいほど好ましい、すなわち、横剛性が高い。
[転がり抵抗係数]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗係数(RRC)を測定した。
使用リム:7.5J(アルミニウム合金製)
内圧:250kPa
荷重:5.26kN
速度:80km/h
この結果が、指数として下記の表1−4に示されている。数値が小さいほど好ましい、すなわち、転がり抵抗係数が小さい。
表1−4に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。