JP6732274B1 - ソナー、超音波振動子 - Google Patents

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Abstract

超音波振動子の大型化を伴うことなく、超音波の比帯域を広げることができるソナーを提供する。本発明のソナーは、超音波を送受信する超音波振動子41と、超音波振動子41の中心軸O1を傾斜及び回転させる機構とを有する。超音波振動子41は、音響整合層を兼ねる基材42と、セラミックス製板状物からなる圧電素子43とを備える。圧電素子43は、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部57により構成され、かつ基材42に対して接合された前面51及びその反対側にある背面52を有する。なお、各柱部57は、圧電素子43の前面51側の端部において互いに繋がっている。選択図:図7

Description

本発明は、超音波を利用して魚群などの被探知物を探知するソナー、ソナーに好適な超音波振動子に関するものである。
従来、超音波の送受信によって魚群などの被探知物を探知するソナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。ソナーは、超音波を送受信する超音波振動子と、超音波振動子の中心軸を傾斜及び回転させる機構とを有しており、超音波振動子を回転させながら超音波の送受信を行うことにより、水中を探知するようになっている。そして、水中を探知した探知結果は、探知画像として画面に表示される。なお、超音波振動子は、一般的に、円板状の圧電素子と、圧電素子の照射面に接合された音響整合層とを備えている。
特許第5979537号公報(請求項1、図4等)
ところで、特許文献1に記載のソナーで使用される超音波振動子は、円板状の圧電素子を用いており、超音波の周波数帯域が狭く、比帯域も狭い。近年、同様のソナーを搭載した船舶が増加しているため、他の船舶との混信が生じやすくなってきている。混信を避けるためには、付近の船舶が使用している駆動周波数を外して超音波を送受信すればよいが、比帯域が狭い場合には、変更できる周波数の選択肢が少なくなってしまう。このため、超音波の比帯域が広い超音波振動子を用いることが求められている。
また、従来より、超音波の深達距離を伸ばすことも求められている。このためには、超音波振動子の送受感度を高めることに加えて、駆動周波数を低くすることが有効である。駆動周波数を低くすれば、水中を伝搬する際の超音波の減衰が小さくなるからである。なお、特許文献1に記載のソナーにおいて、駆動周波数を低くするためには、圧電素子を厚くするなどして、圧電素子の共振周波数を低くする必要がある。しかしながら、圧電素子を厚くすると、圧電素子と音響整合層とからなる超音波振動子が大型化して重量が増すため、超音波振動子を傾斜及び回転させる機構も大型で高トルクのものになる。その結果、超音波振動子を含むシステム全体が大きくなり、製造コストも高くなるという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波振動子の大型化を伴うことなく、超音波の比帯域を広げることができるソナーを提供することにある。また、別の目的は、大型化を伴うことなく、超音波の比帯域を広げることができる超音波振動子を提供することにある
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、超音波を送受信する超音波振動子と、前記超音波振動子の中心軸を傾斜及び回転させる機構とを有するソナーであって、前記超音波振動子は、音響整合層を兼ねる基材と、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる円板状の圧電素子とを備え、前記複数の柱部が、前記圧電素子の前記前面側の端部において互いに繋がっており、前記圧電素子内を伝搬する縦波の音速をc1とし、前記圧電素子の厚さをt1とし、前記基材内を伝搬する縦波の音速をc2とし、前記基材の厚さをt2としたとき、(c2×t1)/(c1×t2)=1.10以上1.42以下の関係を満たし、前記柱部を前記厚さ方向から見たときの最大寸法は、前記柱部の高さの47%以上68%以下であり、100kHz〜340kHzの範囲内で送受感度積が最大となる値を最大送受感度積と定義し、送受感度積が最大送受感度積よりも0dB〜6dB低くなる周波数の範囲を周波数帯域と定義し、周波数帯域における下限の周波数を下限周波数と定義し、周波数帯域における上限の周波数を上限周波数と定義し、下限周波数と上限周波数との中間値を中心周波数fmと定義し、下限周波数と上限周波数との差を周波数帯域幅Δfと定義したとき、周波数帯域幅Δfと中心周波数fmとの比である比帯域Δf/fmが、0.27以上であることを特徴とするソナーをその要旨とする。
従って、請求項1に記載の発明によると、超音波振動子を構成する圧電素子が、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部によって構成されているため、隣接する柱部間に空隙が生じる。その結果、各柱部のそれぞれが高さ方向に変形しやすくなるため、圧電素子が各部位において厚さ方向に変形しやすくなる。つまり、圧電素子が振動しやすくなるため、超音波の電気機械結合係数が高くなり、比帯域も広くなる。よって、超音波の周波数を変更する場合に、変更できる周波数の選択肢が広くなる。また、請求項1に記載の発明では、圧電素子を複数の柱部に分割することにより、圧電素子の共振周波数を低くしている。即ち、圧電素子が厚くなることに起因する超音波振動子の大型化を伴わなくても、圧電素子の共振周波数を低くすることができる。その結果、圧電素子の駆動周波数が低くなり、伝搬時の超音波の減衰が小さくなるため、圧電素子から照射された超音波の深達距離を伸ばすことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記柱部の高さは、前記圧電素子の厚さの80%以上100%未満であり、前記圧電素子の前記前面の全体が、前面側電極層を介して前記基材に接合されていることをその要旨とする。
従って、請求項2に記載の発明によると、柱部の高さが圧電素子の厚さの80%以上であるため、隣接する柱部間に生じる空隙が深くなる。その結果、柱部が高さ方向に変形しやすくなるため、超音波振動子の感度が高くなる。しかも、柱部の高さが圧電素子の厚さの100%未満であるため、圧電素子を複数の柱部に分割した構成であっても、圧電素子の前面側の端部において柱部同士が繋がる部分の厚さが確保される。その結果、圧電素子の強度を確保することができる。さらに、圧電素子の前面の全体が基材に接合されることから、両者の接触面積が大きくなるため、圧電素子と基材との接合強度が向上する。
ここで、柱部の形状としては、多角柱状や円柱状などを挙げることができる。柱部が、例えば四角柱状や六角柱状に代表される多角柱状をなす場合、柱部を厚さ方向から見たときの最大寸法は、柱部の先端面(背面)の対角線の長さとなる。また、柱部が円柱状をなす場合、柱部を厚さ方向から見たときの最大寸法は、柱部の先端面の直径の大きさとなる。
なお、基材の厚さは、柱部の高さよりも小さいことが好ましい。このようにすれば、基材が圧電素子よりも薄く形成されるため、基材と圧電素子とからなる超音波振動子の小型化を図ることができる。また、基材が薄く形成されることにより、超音波が基材を透過する際の減衰を低減することができる。
なお、基材は、固有音響インピーダンス、超音波の周波数、機械的強度等を考慮して適宜選択することができる。基材の好適な形成材料としては、例えば、ガラスエポキシ(FR−4)、ガラスエポキシ(CEM−3)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ジュラトロン(QUADRANTグループの登録商標)、フルオロシント(QUADRANTグループの登録商標)、アルミナの多孔体などを挙げることができる。
請求項3に記載の発明は、超音波を送受信する超音波振動子であって、音響整合層を兼ねる基材と、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる円板状の圧電素子とを備え、前記複数の柱部が、前記前面側の端部において互いに繋がっており、前記圧電素子内を伝搬する縦波の音速をc1とし、前記圧電素子の厚さをt1とし、前記基材内を伝搬する縦波の音速をc2とし、前記基材の厚さをt2としたとき、(c2×t1)/(c1×t2)=1.10以上1.42以下の関係を満たし、前記柱部を前記厚さ方向から見たときの最大寸法は、前記柱部の高さの47%以上68%以下であり、100kHz〜340kHzの範囲内で送受感度積が最大となる値を最大送受感度積と定義し、送受感度積が最大送受感度積よりも0dB〜6dB低くなる周波数の範囲を周波数帯域と定義し、周波数帯域における下限の周波数を下限周波数と定義し、周波数帯域における上限の周波数を上限周波数と定義し、下限周波数と上限周波数との中間値を中心周波数fmと定義し、下限周波数と上限周波数との差を周波数帯域幅Δfと定義したとき、周波数帯域幅Δfと中心周波数fmとの比である比帯域Δf/fmが、0.27以上であることを特徴とする超音波振動子をその要旨とする。
従って、請求項に記載の発明によると、超音波振動子を構成する圧電素子が、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部によって構成されているため、隣接する柱部間に空隙が生じる。その結果、各柱部のそれぞれが高さ方向に変形しやすくなるため、圧電素子が各部位において厚さ方向に変形しやすくなる。つまり、圧電素子が振動しやすくなるため、超音波の電気機械結合係数が高くなり、比帯域も広くなる。よって、超音波の周波数を変更する場合に、変更できる周波数の選択肢を広げることができる。また、請求項6に記載の発明では、圧電素子を複数の柱部に分割することにより、圧電素子の共振周波数を低くしている。即ち、圧電素子が厚くなることに起因する超音波振動子の大型化を伴わなくても、圧電素子の共振周波数を低くすることができる。その結果、圧電素子の駆動周波数が低くなり、伝搬時の超音波の減衰が小さくなるため、圧電素子から照射された超音波の深達距離を伸ばすことができる。
以上詳述したように、請求項1〜2に記載の発明によると、超音波振動子の大型化を伴うことなく、超音波の比帯域を広げることができるソナーを提供することができる。また、請求項3に記載の発明によると、大型化を伴うことなく、超音波の比帯域を広げることができる超音波振動子を提供することができる
本実施形態のソナーが搭載された船舶を示す説明図。 ソナー、昇降装置及び液晶モニターを示す概略構成図。 ソナーを示す概略断面図。 ソナーを示す概略断面図。 ケースに収容した状態の超音波振動子を示す概略断面図。 超音波振動子を示す平面図。 超音波振動子を示す側面図。 柱部を示す断面図。 柱部を示す斜視図。 ソナーの電気的構成を示すブロック図。 (a)は伸長時の柱部を示す断面図、(b)は収縮時の柱部を示す断面図。 実施例1〜4及び比較例3において、周波数と送受感度積との関係を示すグラフ。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態のソナー11は、船舶10の船底部に搭載されて使用される。ソナー11は、水中に超音波W1を照射することにより、水中に存在する魚群などの被探知物S1を探知する装置である。また、図2に示されるように、ソナー11は昇降装置12に取り付けられている。昇降装置12は、ソナー11を昇降させることにより、船底から水中に対してソナー11を出没させる装置である。さらに、ソナー11及び昇降装置12には、液晶モニター13が電気的に接続されている。液晶モニター13は、船舶10の操舵室内に設置されており、操作部14及び表示部15を有している。
図3,図4に示されるように、ソナー11はソナードーム20を備えている。ソナードーム20は、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)などの樹脂材料を用いて形成されており、上ケース21、下ケース22及び蓋体23によって構成されている。上ケース21は、下端にて開口する有底円筒状のケースであり、下ケース22は、上端にて開口する有底円筒状のケースである。なお、下ケース22の下端部はドーム状(半球状)をなしている。また、蓋体23は、円板状をなし、上ケース21の下端側開口及び下ケース22の上端側開口を閉塞するためのものである。なお、蓋体23と上ケース21とによって上側収容空間24が形成されるとともに、蓋体23と下ケース22とによって下側収容空間25が形成される。
また、ソナードーム20には、超音波W1を送受信する超音波振動子41と、超音波振動子41の中心軸O1を傾斜及び回転させる傾斜回転機構30とが収容されている。傾斜回転機構30は、スキャンモータ31、チルトモータ32、及び、超音波振動子41を収容するケース40等を備えている。スキャンモータ31は、上部収容空間24内において蓋体23の中央部に設置されている。本実施形態のスキャンモータ31としては、ステッピングモータが用いられている。そして、スキャンモータ31の出力軸31aは、蓋体23の中央部に設けられた貫通孔33を挿通し、下側収容空間25内に突出している。さらに、出力軸31aの先端は、円板状をなす支持板34の中央部に接続され、支持板34の下面には支持フレーム35が取り付けられている。支持フレーム35は、一対の腕部35aを有するコ字状をなしている。
また、図3,図4に示されるように、ケース40は、ABS樹脂などの樹脂材料を用いて一端が開口する有底円筒状に形成されており、支持フレーム35の両腕部35a間を繋ぐ回転軸36に取り付けられている。よって、スキャンモータ31の出力軸31aが回転すると、支持板34、支持フレーム35、ケース40及び超音波振動子41(の中心軸O1)は、出力軸31aを中心として回転する。これに伴い、超音波振動子41から出力される超音波W1の照射方向は、出力軸31aの周方向に沿って変化する。
また、チルトモータ32は、支持フレーム35の上端部に取り付けられている。本実施形態のチルトモータ32としては、ステッピングモータが用いられている。チルトモータ32の出力軸32aは、回転軸36と平行に配置されており、その先端部にはピニオンギヤ32bが取り付けられている。ピニオンギヤ32bは、ケース40に取り付けられた略半円状のチルト歯車37に噛合している。よって、チルトモータ32の出力軸32aが回転すると、ピニオンギヤ32b及びチルト歯車37が回動するのに伴い、ケース40及び超音波振動子41(の中心軸O1)が回転軸36を中心として傾斜(回転)する。これに伴い、超音波振動子41から出力される超音波W1の照射角度も、超音波振動子41の回転に伴って変化する。
図5〜図7に示されるように、超音波振動子41は、基材42及び圧電素子43を備えている。基材42は、音響整合層を兼ねる材料であるガラスエポキシ(FR−4)を用いて形成された樹脂製板状物であり、外径が58.5mm、厚さt2(図7参照)が3.0mmの円板状をなしている。また、基材42の固有音響インピーダンスは、2.3×10(Pa・s/m)以上14×10(Pa・s/m)以下、好ましくは3×10(Pa・s/m)以上9×10(Pa・s/m)以下となっている。このようにすれば、基材42と圧電素子43との境界部分での超音波W1の透過率が高まるため、超音波振動子41の送受感度がより高くなる。
そして、図6,図7に示されるように、基材42の外周部には4つの張出部44が設けられ、各張出部44にはそれぞれネジ孔45が設けられている。各ネジ孔45は、超音波振動子41の中心軸O1を基準として等角度(90°)間隔で配置されている。そして、各ネジ孔45にネジ(図示略)を挿通させ、挿通したネジの先端部をケース40に螺着させる。その結果、超音波振動子41がケース40に固定される(図5参照)。
また、圧電素子43は、例えば、圧電セラミックスであるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて形成されたセラミックス製板状物であり、固有音響インピーダンスが32×10(Pa・s/m)となっている。この圧電素子43は、外径が49.5mm、厚さt1(図7参照)が7.2mmの円板状をなしている。よって、圧電素子43の外径は基材42の外径(58.5mm)よりも小さいため、圧電素子43の面積は基材42の面積よりも小さくなる。また、圧電素子43は、基材42に対して接合された前面51と、前面51の反対側にある背面52と、前面51及び背面52に直交する外周面53とを有している。さらに、図5,図8に示されるように、圧電素子43の前面51には前面側電極層54が形成され、圧電素子43の背面52には背面側電極層55が形成されている。なお、本実施形態では、圧電素子43の前面51の全体が、前面側電極層54及び接着層56(図8参照)を介して基材42に接合されている。
図5〜図9に示されるように、圧電素子43は、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部57により構成されている。各柱部57は、複数の第1切り込みK1と、各第1切り込みK1に直交する複数の第2切り込みK2とを、圧電素子43における背面52側に形成することにより構成される。各第1切り込みK1は、互いに平行に配置されており、幅が0.5mm、隣接する第1切り込みK1とのピッチP1(図6参照)が2.9mmとなっている。同様に、各第2切り込みK2も、互いに平行に配置されており、幅が0.5mm、隣接する第2切り込みK2とのピッチP2(図6参照)が2.9mmとなる。よって、各柱部57のうち、外周面53を構成しない柱部57は、正四角柱状に形成される。また、各柱部57は、X方向(図6参照)に沿って一直線上に配置されるとともに、Y方向(図6参照)に沿っても一直線上に配置されている。
また、各柱部57は、圧電素子43の前面51側の端部において互いに繋がっている。ここで、柱部57の高さH1(厚さ)は、6.7mmであり、圧電素子43の厚さt1(7.2mm)の約93%(≒6.7/7.2×100)である。なお、高さH1は、切り込みK1,K2の深さと等しくなっている。また、上述した基材42の厚さt2(3.0mm)は、柱部57の高さH1よりも小さくなっている。さらに、圧電素子43において柱部57同士が繋がる部分の厚さH2は、0.5mm(=t1−H1)であり、基材42の厚さt2よりも小さくなっている。
図6〜図9に示されるように、柱部57の先端面58(背面52)は、平面視正方形状をなしており、先端面58を構成する各辺の長さL1,L2は、互いに等しく、それぞれ2.4mmとなっている。従って、上述した切り込みK1,K2の幅(0.5mm)は、互いに等しく、長さL1,L2の100%以下、好ましくは17%以上30%以下(本実施形態では約21%(≒0.5/2.4×100))となる。また、先端面58の対角線の長さは約3.39mmとなり、この対角線の長さが、柱部57を厚さ方向から見たときの最大寸法L3(図9参照)となる。なお、最大寸法L3は、柱部57の高さH1の約51%(≒3.39/6.7×100)である。さらに、各柱部57の先端面58の面積の合計は、圧電素子43の前面51(背面52)の面積の25%以上80%以下、60%以上80%以下となっている。
さらに、本実施形態の圧電素子43は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成されており、感度が最大となる超音波W1の中心周波数が160kHz以上200kHz以下、周波数帯域幅と中心周波数との比(比帯域)が27%以上52%以下となっている。なお、圧電素子43内を伝搬する縦波(超音波W1)の音速c1は4160m/sとなっている。また、基材42は、ガラスエポキシ(FR−4)によって形成されており、基材42内を伝搬する縦波(超音波W1)の音速c2が2460m/sとなっている。そして、本実施形態では、音速c1,c2、圧電素子43の厚さt1(7.2mm)、基材42の厚さt2(3.0mm)が、(c2×t1)/(c1×t2)=0.8以上1.7以下の関係を満たしている。
図5,図8に示されるように、圧電素子43の背面52全体には、背面側電極層55を介して銅箔61が貼付されている。本実施形態の銅箔61は、従来周知の導電性フィラーを含む接着剤(図示略)を介して背面52に接着されている。なお、銅箔61の貼付により、銅箔61は、各柱部57の先端面58の共通電極となる。
そして、図5に示されるように、前面側電極層54には第1のリード線62が接続され、銅箔61には第2のリード線63が接続されている。第1のリード線62は、前面側電極層54から外側に延出された側面端子(図示略)に対してはんだ付けなどにより接続されている。第2のリード線63は、銅箔61の外周部に対してはんだ付けなどにより接続されている。そして、第1のリード線62及び第2のリード線63は、配線チューブ64によって結束され、ケース40外に引き出される。なお、第1のリード線62は側面端子に接続されているが、前面側電極層54上に銅箔を形成し、銅箔に対して第1のリード線62をはんだ付けなどにより接続してもよい。また、圧電素子43の背面52側には、シート状の防音材65が貼付されている。防音材65は、残響を抑えるためのものであり、ケース40の内周面にも貼付されている。なお、防音材65としては、樹脂材料やゴムに対して、金属やセラミックスからなる粒子または繊維を含有させたものや、樹脂材料に対して空孔を分散的に設けたもの(スポンジなど)を用いることができる。
そして、図3,図4に示されるソナードーム20内には、超音波W1を伝搬させる超音波伝搬液体(図示略)が充填されている。また、超音波伝搬液体の一部は、ケース40に設けられた液体通路(図示略)を介してケース40内に流入し、圧電素子43において隣接する柱部57間の空隙K0(切り込みK1,K2)に流入し、空隙K0を満たしている。なお、本実施形態の超音波伝搬液体は、流動パラフィンであり、固有音響インピーダンスが1.2×10(Pa・s/m)となっている。よって、上述した基材42の固有音響インピーダンス(2.3〜14×10(Pa・s/m))は、圧電素子43の固有音響インピーダンス(32×10(Pa・s/m))よりも小さく、かつ超音波伝搬液体の固有音響インピーダンスよりも大きくなっている。
次に、ソナー11の電気的構成について説明する。
図10に示されるように、ソナー11の液晶モニター13は、装置全体を統括的に制御する制御装置70を備えている。制御装置70は、CPU71、ROM72、RAM73等からなる周知のコンピュータにより構成されている。
CPU71は、モータドライバ81を介してスキャンモータ31及びチルトモータ32に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。また、CPU71は、送受信回路82を介して超音波振動子41に電気的に接続されている。送受信回路82は、超音波振動子41に対して発振信号を出力して、超音波振動子41を駆動させるようになっている。その結果、超音波振動子41は、超音波W1を水中に向けて照射(送信)する。また、送受信回路82には、超音波振動子41で受信した超音波W1(反射波W2)を示す電気信号が入力されるようになっている。さらに、CPU71は、昇降装置12、操作部14、表示部15及びGPS(Global Positioning System )受信部83に対してそれぞれ電気的に接続されている。
そして、図10に示されるCPU71は、送受信回路82に対して超音波振動子41から超音波W1を照射させる制御を行うとともに、昇降装置12を駆動させる制御を行う。CPU71は、モータドライバ81に対してスキャンモータ31及びチルトモータ32をそれぞれ駆動させる制御を行う。CPU71には、GPS受信部83によって受信された船舶10の位置情報が入力される。
また、CPU71は、超音波振動子41が反射波W2を受信したことを契機として生成される受信信号を、送受信回路82を介して受信する。そして、CPU71は、受信した受信信号に基づいて探知画像データを生成し、生成した探知画像データをRAM73に記憶させる。CPU71は、RAM73に記憶された探知画像データに基づいて、探知画像を表示部15に表示させる制御を行う。
次に、ソナー11を用いて被探知物S1を探知する方法を説明する。
まず、ソナー11、昇降装置12及び液晶モニター13の電源(図示略)をオンする。このとき、制御装置70のCPU71には、GPS受信部83から船舶10の位置を示す位置情報が入力される。次に、CPU71は、送受信回路82から超音波振動子41に対して発振信号を出力させる制御を行い、超音波振動子41を駆動させる。このとき、圧電素子43の各柱部57は、収縮(図11(b)参照)と伸長(図11(a)参照)とを繰り返す。なお、柱部57が高さ方向に収縮した際には、柱部57が幅方向、具体的には、柱部57の外周側(図11(b)の矢印F1参照)に逃げるように変形する。そして、柱部57が高さ方向に伸長すると、柱部57が幅方向、具体的には、柱部57の中央部側(図11(a)の矢印F2参照)に変形する。その結果、圧電素子43が振動し、超音波振動子41から水中に対して超音波W1が照射(送信)される。そして、超音波W1が被探知物S1(図1参照)に到達すると、超音波W1は、被探知物S1で反射して反射波W2となり、ソナー11に向かって伝搬して超音波振動子41に入力(受信)される。その後、超音波振動子41が受信した超音波W1(反射波W2)は、受信信号に変換され、送受信回路82を介してCPU71に入力される。この時点で、被探知物S1が探知される。
また、CPU71は、モータドライバ81を介してスキャンモータ31を駆動させる制御を行い、超音波振動子41の中心軸O1を回転させる。その結果、超音波W1の照射方向が徐々に変化し、これに伴って探知範囲も徐々に変化する。その後、作業者が電源をオフすると、制御装置70により送受信回路82が停止し、超音波W1の照射及び反射波W2の受信が終了する。
次に、超音波振動子41の製造方法を説明する。
まず、基材42を準備する。具体的には、ガラスエポキシ(FR−4)からなる樹脂製板状物を円板状に切削加工する。また、圧電素子43となるべきセラミックス製板状物を準備する。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる円板状のセラミックス焼結体を作製した後、表面研磨を行うことにより、セラミックス製板状物を得る。次に、電極層形成工程を行い、セラミックス製板状物の前面51に前面側電極層54を形成するとともに、セラミックス製板状物の背面52に背面側電極層55を形成する。具体的には、セラミックス製板状物の前面51及び背面52にそれぞれ銀ペーストを塗布し、塗布した銀ペーストを焼成することにより、電極層54,55を形成する。そして、電極層形成工程の後、分極処理工程をさらに行う。分極処理工程では、前面側電極層54及び背面側電極層55の間に電圧を印加することにより、セラミックス製板状物を厚さ方向に分極させる。
続く接合工程では、基材42に対して、セラミックス製板状物を前面側電極層54を介して接合する。具体的には、前面側電極層54の表面及び基材42の表面42aのいずれか一方に対して、接着層56となる接着剤(エポキシ系接着剤など)を塗布し、基材42に対して圧電素子43を接着固定する。なお、接着剤を塗布する代わりに、はんだ等を用いたロウ付けを行ってもよい。
接合工程後の柱部形成工程では、切削加工等を行うことにより、セラミックス製板状物における背面52側に複数の切り込みK1,K2を形成する。このとき、セラミックス製板状物の厚さt1(7.2mm)の80%以上100%未満(本実施形態では約93%)の深さ(本実施形態では6.7mm)となるように、各切り込みK1,K2を形成する。その結果、セラミック製板状物が複数の柱部57に分割されるとともに、圧電素子43の背面52に形成された背面側電極層55も複数(柱部57と同数)に分割される。この時点で、圧電素子43が完成する。なお、各柱部57は、圧電素子43の前面51側の端部において互いに繋がった状態で分割されるため、前面51に形成された前面側電極層54までが分割されることはない。
その後、圧電素子43の背面52全体に銅箔61を貼付し、銅箔61を各柱部57の先端面58の共通電極とする。この時点で、超音波振動子41が完成する。
なお、超音波振動子41が完成した後、前面側電極層54に対して側面端子(図示略)を介して第1のリード線62をはんだ付けなどにより接続するとともに、銅箔61に対して第2のリード線63をはんだ付けなどにより接続する。次に、圧電素子43の背面52側に、残響を抑えるための防音材65を貼付する。また、ケース40の内側面にも防音材65を貼付する。その後、超音波振動子41の圧電素子43をケース40に収容する。そして、この状態で、基材42に設けられた複数のネジ孔45にネジ(図示略)を挿通させ、挿通したネジの先端部をケース40に螺着させる。その結果、超音波振動子41がケース40に固定される(図5参照)。さらに、超音波振動子41が固定されたケース40を、ソナードーム20内の回転軸36に取り付ける。そして、ソナードーム20内に超音波伝搬液体(図示略)を充填する。このとき、超音波伝搬液体の一部は、ケース40に設けられた液体通路(図示略)を介してケース40内に流入し、圧電素子43において隣接する柱部57間の空隙K0に流入する。この時点で、超音波振動子41がソナードーム20に組み込まれ、ソナー11が完成する。
次に、超音波振動子の評価方法及びその結果を説明する。
本発明者らは、圧電素子が備える柱部の好適な振動態様について、試作により確認した。まず、測定用サンプルを次のように準備した。柱部の長さL1,L2が2.4mm、柱部の高さH1が6.85mm、柱部を厚さ方向から見たときの最大寸法L3(対角線の長さ)が約3.39mmであって、最大寸法L3が高さH1の約50%(≒3.39/6.85×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例1(実施例2〜6,10,13,14,19,21〜29も同様)とした。長さL1,L2が2.4mm、高さH1が6.7mm、最大寸法L3が約3.39mmであって、最大寸法L3が高さH1の約51%(≒3.39/6.7×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例7とした。長さL1,L2が3.0mm、高さH1が6.85mm、最大寸法L3が約4.24mmであって、最大寸法L3が高さH1の約62%(≒4.24/6.85×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例8とした。長さL1,L2が2.4mm、高さH1が7.25mm、最大寸法L3が約3.39mmであって、最大寸法L3が高さH1の約47%(≒3.39/7.25×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例9とした。長さL1,L2が2.4mm、高さH1が6.35mm、最大寸法L3が約3.39mmであって、最大寸法L3が高さH1の約53%(≒3.39/6.35×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例11とした。長さL1,L2が2.4mm、高さH1が5.85mm、最大寸法L3が約3.39mmであって、最大寸法L3が高さH1の約58%(≒3.39/5.85×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例12とした。長さL1,L2が3.0mm、高さH1が6.2mm、最大寸法L3が約4.24mmであって、最大寸法L3が高さH1の約68%(≒4.24/6.2×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例15とした。長さL1,L2が3.5mm、高さH1が6.2mm、最大寸法L3が約4.95mmであって、最大寸法L3が高さH1の約80%(≒4.95/6.2×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例16とした。長さL1,L2が2.4mm、高さH1が5.3mm、最大寸法L3が約3.39mmであって、最大寸法L3が高さH1の約64%(≒3.39/5.3×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例17(実施例18も同様)とした。長さL1が2.4mm、長さL2が3.0mm、高さH1が6.85mm、最大寸法L3が約3.84mmであって、最大寸法L3が高さH1の約56%(≒3.84/6.85×100)となる超音波振動子を準備し、これを実施例20とした。長さL1,L2が4.0mm、高さH1が6.2mm、最大寸法L3が約5.66mmであって、最大寸法L3が高さH1の約91%(≒5.66/6.2×100)となる超音波振動子を準備し、これを比較例1とした。長さL1,L2が2.4mm、高さH1が4.35mm、最大寸法L3が約3.39mmであって、最大寸法L3が高さH1の約78%(≒3.39/4.35×100)となる超音波振動子を準備し、これを比較例2とした。圧電素子が柱部を有しておらず、高さH1(ここでは圧電素子の厚さ)が7.35mm、最大寸法L3(ここでは圧電素子の外径)が49.5mmであって、最大寸法L3が高さH1の約673%(≒49.5/7.35×100)となる超音波振動子を準備し、これを比較例3とした。実施例1〜29及び比較例1〜3の各部の寸法を表1に示す。
Figure 0006732274
次に、各測定用サンプル(実施例1〜29及び比較例1〜3)に対して比較試験を行った。具体的には、まず、実施例1〜29及び比較例1〜3の超音波振動子に対して1.5kVppの電圧を印加し、超音波振動子から0.5m離れた位置にある直径57mmのフェノリック樹脂球に対して超音波(バースト波)を照射(送信)した。また、100kHz〜340kHzの間で周波数を複数段階に切り替え、切り替えたそれぞれの周波数において超音波を照射した。
そして、フェノリック樹脂球で反射した超音波(反射波)は、送信から約670μs後に超音波振動子で受信され、超音波振動子の両端に電圧信号を生じる。そこで、超音波振動子の送信時及び受信時の電圧振幅をオシロスコープにより測定し、その結果に基づいて最大送受感度積、周波数帯域、下限周波数f1及び上限周波数f2を演算した。次に、演算して算出した下限周波数f1及び上限周波数f2に基づいて、中心周波数fm及び周波数帯域幅Δfを算出した。さらに、算出した中心周波数fm及び周波数帯域幅Δfに基づいて、比帯域Δf/fmを算出した。なお、送受感度積は、送信電圧振幅Vに対する受信電圧振幅Vの比であり、20×log(V/V) の式から算出されるものである。そして、最大送受感度積は、100kHz〜340kHzの範囲内で送受感度積が最大となる値を示している。周波数帯域は、送受感度積が最大送受感度積よりも6dB低減以内の周波数の範囲を示している。下限周波数f1は周波数帯域における下限の周波数を示し、上限周波数f2は周波数帯域における上限の周波数を示している。中心周波数fmは、下限周波数f1と上限周波数f2との中間値を示しており、(f1+f2)/2の式から算出されるものである。周波数帯域幅Δfは、下限周波数f1と上限周波数f2との差を示している。比帯域Δf/fmは、周波数帯域幅Δfと中心周波数fmとの比を示している。実施例1〜29及び比較例1〜3の各値を表2に示す。また、図12のグラフは、特に実施例1〜4及び比較例3の結果を示している。
Figure 0006732274
その結果、図12に示されるように、圧電素子が複数の柱部に分割された実施例1〜4では、最大送受感度積が算出される箇所での超音波W1の発振周波数が170kHz辺りにあることが確認された。そして、実施例1(図12の「◆」及び表2参照)では、最大送受感度積が−45.5dB、周波数帯域が142kHz以上230kHz以下、中心周波数が186kHz、比帯域Δf/fmが47%となることが確認された。実施例2(図12の「■」及び表2参照)では、最大送受感度積が−45.0dB、周波数帯域が147kHz以上235kHz以下、中心周波数が191kHz、比帯域Δf/fmが46%となることが確認された。実施例3(図12の「▲」及び表2参照)では、最大送受感度積が−47.0dB、周波数帯域が138kHz以上235kHz以下、中心周波数が187kHz、比帯域Δf/fmが52%となることが確認された。実施例4(図12の「▼」及び表2参照)では、最大送受感度積が−45.0dB、周波数帯域が150kHz以上210kHz以下、中心周波数が180kHz、比帯域Δf/fmが33%となることが確認された。さらに、表2に示されるように、実施例1〜29では、比帯域Δf/fmが24%以上になることも確認された。
一方、圧電素子が柱部を有しない比較例3(図12の「●」及び表2参照)では、最大送受感度積が算出される箇所での超音波W1の発振周波数が290kHz辺りにあるものの、最大送受感度積が実施例1〜4よりも低い値(−50.0dB)となるため、感度が低くなることが確認された。しかも、比較例3では、周波数帯域が実施例1〜4よりも高い範囲(270kHz以上310kHz以下)となり、比帯域Δf/fmが実施例1〜29よりも小さい値(14%)となることが確認された。また、中心周波数fmが実施例1〜4よりも高い値(290kHz)となるため、水中を伝搬する際の超音波W1の減衰が大きくなり、超音波W1の深達距離が短くなることが確認された。つまり、最大送受感度積を高くし、比帯域Δf/fmを大きくし、中心周波数fmを低くすることが好ましいことが確認された。
また、比較試験を行うにあたり、実施例1〜29及び比較例1〜3において、圧電素子の厚さt1を計測し、厚さt1に対する柱部の高さH1の比率を算出した。その結果、高さH1(4.35mm)が厚さt1(7.35mm)の約59%(≒4.35/7.35×100)となる比較例2では、隣接する柱部間の空隙が浅くなるため、柱部が高さ方向(圧電素子の厚さ方向)に変形しにくくなることが確認された。また、高さH1(7.35mm)が厚さt1(7.35mm)の100%、即ち、複数の柱部に分割されていない単純な円板形状の圧電素子となる比較例3では、圧電素子が厚さ方向に変形しにくくなることが確認された。一方、高さH1が厚さt1の80%以上100%未満となる実施例1〜29及び比較例1では、柱部が高さ方向に変形しやすくなることが確認された。実施例1〜29及び比較例1〜3の各部の寸法を表3に示す。
Figure 0006732274
また、比較試験を行うにあたり、実施例1〜29及び比較例1,2において、基材の厚さt2を計測し、柱部の高さH1に対する基材の厚さt2の比率を算出した。なお、実施例1〜22,26,27及び比較例1,2の基材をガラスエポキシ(FR−4)によって形成し、実施例23〜25の基材をABS樹脂によって形成し、実施例28の基材をアルミナ繊維を含有するエポキシ樹脂によって形成し、実施例29の基材をアルミナによって形成した。因みに、上述した比較例3の基材は、ガラスエポキシ(FR−4)によって形成した。
その結果、実施例1〜29及び比較例1,2では、厚さt2が高さH1の100%未満(≒t2/H1×100)、即ち、基材の厚さt2が柱部の高さH1よりも小さくなり、最大送受感度積(表2参照)が−50dBよりも大きくなることが確認された。この場合、基材が圧電素子よりも薄く形成されるため、基材と圧電素子とからなる超音波振動子を小型化できることが確認された。また、基材が薄く形成され、最大送受感度積が大きくなることにより、超音波が基材を透過する際の減衰が許容できる程度に小さくなることが確認された。実施例1〜29及び比較例1,2の各部の寸法を表4に示す。
Figure 0006732274
さらに、比較試験を行うにあたり、実施例1〜29及び比較例1,2において、圧電素子において隣接する第1切り込みK1間のピッチP1(図6参照)と、同じく圧電素子において隣接する第2切り込みK2間のピッチP2(図6参照)とを計測した。次に、柱部の先端面の面積(=L1×L2)、及び、ピッチP1とピッチP2との積(面積)を算出し、(P1×P2)に対する(L1×L2)の比率(電極面積比)を算出した。実施例1〜29及び比較例1の各値を表5に示す。
Figure 0006732274
また、比較試験を行うにあたり、実施例1〜29において、圧電素子において隣接する第1切り込みK1間のピッチP1と柱部の長さL1とに基づいて、第1切り込みK1の幅(=P1−L1)を算出し、長さL1に対する第1切り込みK1の幅の比率を算出した。その結果、第1切り込みK1の幅が長さL1の50%となる実施例21,24,27や、第1切り込みK1の幅が長さL1の100%となる実施例22,25,28,29のうち、実施例22,24,25,29では、最大送受感度積が−50.0dB程度に低下することが確認された。即ち、長さL1に対する第1切り込みK1の幅の比率が高くなると、感度が低下する傾向にあることが確認された。実施例1〜29の各値を表6に示す。
Figure 0006732274
さらに、比較試験を行うにあたり、実施例1〜29において、圧電素子内を伝搬する縦波の音速c1と、基材内を伝搬する縦波の音速c2とを計測した。そして、音速c1,c2、圧電素子の厚さt1及び基材の厚さt2に基づいて、(c2×t1)/(c1×t2)の値を算出した。その結果、実施例1〜29では、(c2×t1)/(c1×t2)が0.8以上1.7以下となることが確認された。この場合、表2,表6にも示されるように、超音波の比帯域を広くすることができ、超音波振動子の感度も高くなることが確認された。実施例1〜29の各値を表7に示す。
Figure 0006732274
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のソナー11では、超音波振動子41を構成する圧電素子43が、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部57によって構成されているため、隣接する柱部57間に空隙K0が生じる。その結果、各柱部57が高さ方向に変形しやすくなり、しかも、柱部57の収縮時(図11(b)参照)に、柱部57が外周側(図11(b)の矢印F1参照)に逃げやすくなる。このため、圧電素子43を平面視で見たときに、圧電素子43が中心部においても外周部においても厚さ方向に均等に変形しやすくなる。つまり、圧電素子43が振動しやすくなるため、超音波W1の電気機械結合係数が高くなり、比帯域も広くなる。ゆえに、周波数を複数段階に切り替えながら超音波W1を送受信する、といった作業が可能となる。
また、本実施形態では、圧電素子43を複数の柱部57に分割することにより、圧電素子43の共振周波数を低くしている。即ち、圧電素子43が厚くなることに起因する超音波振動子41の大型化を伴わなくても、圧電素子43の共振周波数を低くすることができる。その結果、圧電素子43の駆動周波数が低くなり、水中を伝搬する際の超音波W1の減衰が小さくなるため、圧電素子43から照射された超音波W1の深達距離を伸ばすことができる。
(2)例えば、圧電素子43を複数の柱部57で完全に分割すると、圧電素子43の前面51に形成された前面側電極層54も分割されてしまう。このため、前面側電極層54(側面端子)に対して第1のリード線62を接続したとしても、前面側電極層54の全体と導通を図ることができないという問題がある。一方、本実施形態では、各柱部57が、圧電素子43の前面51側の端部において互いに繋がっているため、前面51に形成された前面側電極層54が分割されることはない。この場合、前面側電極層54に第1のリード線62を接続すれば、前面側電極層54全体との導通を確実に図ることができるため、ソナー11を容易に作製することができる。
(3)例えば、特開2016−25611号公報、特開2016−213666号公報、特開2012−182758号公報に記載の従来技術には、音響整合層と、音響整合層に接合された圧電素子とを備え、圧電素子が複数の柱部に分割された構造が提案されている。また、複数の柱部で完全に分割し、その柱部間を樹脂等で充填した構造、いわゆる1−3コンポジット構造の圧電素子を、音響整合層に接合する構造も提案されている。しかしながら、各柱部の端面が音響整合層に対して散点的に接合された構造であるため、圧電素子の振動が音響整合層に伝わりにくくなったり、圧電素子と音響整合層との接合強度が低下したりするといった問題がある。一方、本実施形態では、音響整合層を兼ねる基材42との接合面(前面51)ではなく、接合面の反対側にある背面52において、隣接する柱部57間の空隙K0が開口している。その結果、圧電素子43の前面51と基材42の表面42a側との接触面積が確保されるため、圧電素子43の振動が基材42に安定して伝わるようになる。また、圧電素子43と基材42との接合強度も向上する。
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の柱部57は、正四角柱状をなしていたが、三角柱状や円柱状等の他の柱状をなしていてもよい。
・上記実施形態では、柱部57の先端面58を構成する各辺の長さL1,L2が互いに等しくなっていたが、長さL1,L2は互いに異なっていてもよい。また、上記実施形態では、圧電素子43に形成された切り込みK1,K2の幅も互いに等しくなっていたが、切り込みK1,K2の幅は互いに異なっていてもよい。
・上記実施形態の超音波振動子41では、圧電素子43において隣接する柱部57間に空隙K0が生じていたが、空隙K0を樹脂材料(エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等)で埋めることにより、空隙K0の一部または全部をなくしてもよい。但し、空隙K0があるほうが、超音波伝搬液体が流入可能となるために好ましい。
・上記実施形態の超音波振動子41では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電素子43を用いたが、圧電素子43の形成材料は特に限定されるものではない。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム系(ニオブ酸アルカリ系)、チタン酸バリウム系、PMN−PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO)単結晶、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiO)単結晶、LiNbO単結晶の圧電セラミックスからなる圧電素子を用いてもよい。
・上記実施形態では、圧電素子43の背面52全体に共通電極としての銅箔61が貼付されていた。しかし、銅箔61を背面52全体に貼付する代わりに、黄銅箔やアルミニウム箔などの他の金属箔を背面52全体に貼付してもよい。また、金属箔を貼付する代わりに、隣接する柱部57間の空隙K0を絶縁樹脂で埋めた後、背面52(及び絶縁樹脂の背面52側の端面)に導電ペーストを塗布して焼成することにより、共通電極を形成してもよい。さらに、金属箔を貼付する代わりに、電極が形成されたフレキシブル基板を、はんだなどの導電金属を用いて背面52にロウ付けすることで、共通電極としてもよい。
・上記実施形態の防音材65は、圧電素子43の背面52側とケース40の内周面とに貼付されていたが、防音材65は、さらに圧電素子43の外周面53に貼付されていてもよい。
・上記実施形態では、電極層形成工程後かつ接合工程前に、前面側電極層54及び背面側電極層55の間に電圧を印加することにより、セラミックス製板状物を厚さ方向に分極させる分極処理工程を行っていた。しかし、分極処理工程を、接合工程後かつ柱部形成工程前に行ってもよいし、柱部形成工程後に行ってもよい。
・上記実施形態では、圧電素子43をケース40に収容した状態で、基材42側のネジ孔45を挿通したネジの先端部をケース40に螺着させることにより、超音波振動子41がケース40に固定されていたが、他の方法によって固定するようにしてもよい。例えば、接着剤を用いて超音波振動子41をケース40に固定してもよいし、ケース40内にエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの充填剤を流し込んで硬化させることにより、超音波振動子41をケース40に固定してもよい。さらに、ケース40を用いずに超音波振動子41を固定してもよい。例えば、基材42上において圧電素子43を覆うように金型を配置し、金型内に樹脂材料(エポキシ樹脂やウレタン樹脂など)を流し込んで硬化させることにより、超音波振動子41と樹脂材料とを一体化するモールド成形を行ってもよい。
・上記実施形態の超音波振動子41は、超音波W1の照射方向を機械的に変更するソナー11に用いられていたが、超音波W1の照射方向を電気的に変更するソナーに用いてもよい。また、超音波振動子を、超音波W1の照射方向を変更しない、即ち、傾斜回転機構30を有しない魚群探知機に用いてもよい。さらに、超音波振動子を、例えば、水の深さを計測する測深機や、空気中で距離を計測する空中センサなどの計測機器に用いてもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)請求項3において、前記柱部は多角柱状をなしており、前記柱部の先端面の対角線の長さは、前記柱部の高さの80%以下、好ましくは60%以下であることを特徴とするソナー。
(2)請求項3において、前記柱部は円柱状をなしており、前記柱部の先端面の直径は、前記柱部の高さの80%以下、好ましくは60%以下であることを特徴とするソナー。
(3)請求項5において、前記基材の固有音響インピーダンスは、2.3×10(Pa・s/m)以上14×10(Pa・s/m)以下であることを特徴とするソナー。
(4)請求項8または9において、前記電極層形成工程後かつ前記接合工程前に、前記前面側電極層及び前記背面側電極層の間に電圧を印加することにより、前記セラミックス製板状物を厚さ方向に分極させる分極処理工程をさらに行うことを特徴とする超音波振動子の製造方法。
11…ソナー
20…ソナードーム
30…機構としての傾斜回転機構
41…超音波振動子
42…基材
43…圧電素子
51…セラミックス製板状物(圧電素子)の前面
52…セラミックス製板状物(圧電素子)の背面
54…前面側電極層
55…背面側電極層
57…柱部
H1…柱部の高さ
K0…隣接する柱部間の空隙
K1…切り込みとしての第1切り込み
K2…切り込みとしての第2切り込み
L3…柱部を厚さ方向から見たときの最大寸法
O1…中心軸
t1…圧電素子の厚さ
t2…基材の厚さ
W1…超音波

Claims (3)

  1. 超音波を送受信する超音波振動子と、前記超音波振動子の中心軸を傾斜及び回転させる機構とを有するソナーであって、
    前記超音波振動子は、音響整合層を兼ねる基材と、厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる円板状の圧電素子とを備え、
    前記複数の柱部が、前記圧電素子の前記前面側の端部において互いに繋がっており、
    前記圧電素子内を伝搬する縦波の音速をc1とし、前記圧電素子の厚さをt1とし、前記基材内を伝搬する縦波の音速をc2とし、前記基材の厚さをt2としたとき、(c2×t1)/(c1×t2)=1.10以上1.42以下の関係を満たし、
    前記柱部を前記厚さ方向から見たときの最大寸法は、前記柱部の高さの47%以上68%以下であり、
    100kHz〜340kHzの範囲内で送受感度積が最大となる値を最大送受感度積と定義し、送受感度積が最大送受感度積よりも0dB〜6dB低くなる周波数の範囲を周波数帯域と定義し、周波数帯域における下限の周波数を下限周波数と定義し、周波数帯域における上限の周波数を上限周波数と定義し、下限周波数と上限周波数との中間値を中心周波数fmと定義し、下限周波数と上限周波数との差を周波数帯域幅Δfと定義したとき、周波数帯域幅Δfと中心周波数fmとの比である比帯域Δf/fmが、0.27以上である
    ことを特徴とするソナー。
  2. 前記柱部の高さは、前記圧電素子の厚さの80%以上100%未満であり、前記圧電素子の前記前面の全体が、前面側電極層を介して前記基材に接合されていることを特徴とする請求項1に記載のソナー。
  3. 超音波を送受信する超音波振動子であって、
    音響整合層を兼ねる基材と、
    厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる円板状の圧電素子と
    を備え、前記複数の柱部が、前記前面側の端部において互いに繋がっており、
    前記圧電素子内を伝搬する縦波の音速をc1とし、前記圧電素子の厚さをt1とし、前記基材内を伝搬する縦波の音速をc2とし、前記基材の厚さをt2としたとき、(c2×t1)/(c1×t2)=1.10以上1.42以下の関係を満たし、
    前記柱部を前記厚さ方向から見たときの最大寸法は、前記柱部の高さの47%以上68%以下であり、
    100kHz〜340kHzの範囲内で送受感度積が最大となる値を最大送受感度積と定義し、送受感度積が最大送受感度積よりも0dB〜6dB低くなる周波数の範囲を周波数帯域と定義し、周波数帯域における下限の周波数を下限周波数と定義し、周波数帯域における上限の周波数を上限周波数と定義し、下限周波数と上限周波数との中間値を中心周波数fmと定義し、下限周波数と上限周波数との差を周波数帯域幅Δfと定義したとき、周波数帯域幅Δfと中心周波数fmとの比である比帯域Δf/fmが、0.27以上である
    ことを特徴とする超音波振動子。
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