JP6732263B2 - 樹脂成形部材のめっき処理方法 - Google Patents

樹脂成形部材のめっき処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、自動車部品や家電製品等に用いられる樹脂成形部材のめっき処理方法に関する。
従来、自動車部品や家電製品等には、表面に金属めっきが施された樹脂成形部材が多く使用されている。
樹脂成形部材の一つであるプラスチックは不導体であるため、電気めっきを直接施すことができない。そこで、化学めっきによりプラスチックの表面に導電化膜(以下、金属皮膜やめっき皮膜とも記載)を形成した後、この導電化膜に電気めっきを厚付けしている。
しかし、プラスチックと導電化膜との間に充分な密着力がなければ、プラスチックと導電化膜の熱膨張係数の差異により、電気めっきがプラスチックの表面から容易に剥がれるため、プラスチックの表面を化学的に粗面化するエッチング処理が必要である。これにより、エッチング処理した表面に凹凸が生じ、導電化膜がプラスチックに食い込むように形成され、アンカー効果による密着を得ることができる。
ここで、プラスチックの一般的なめっき工程を図2に示す。
図2に示すように、プラスチック(成形品)の導電化工程では、プラスチックの表面に凹凸を形成する湿式のエッチング処理で、環境負荷が大きい6価クロムを含有するクロム酸を多量に使用する上、導電化膜を形成する化学めっきの前処理として行う活性化処理では、高価な元素であるパラジウムやスズを多く消費する。なお、導電化工程を行った後、電気めっき工程で各種処理を順次行い、めっき処理されたプラスチック(即ち、製品)が得られる。
従来、上記した6価クロムを含むクロム酸による環境負荷を軽減する目的で、過マンガン酸カリウムを用いる湿式エッチング技術が提案されていた。しかし、過マンガン酸カリウムによるエッチング処理では、クロム酸に比較してエッチングの安定性に欠け、アンカー効果がばらつくという問題があるため、未だ広範囲な分野への普及には至っていない。
このように、湿式によるエッチング方法には、環境負荷と高価な薬液使用によるランニングコストの負荷等の問題があるため、近年乾式によるエッチング方法や金属成膜方法が提案されている。
乾式による金属成膜方法として挙げられるスパッタ処理技術は、皮膜形成材料をターゲットとして用い、真空中でArプラズマを発生させ、イオン化したArをターゲット材表面に衝突させて、ターゲット材表面から高速で飛び出した微細粒子を樹脂基材の表面に衝突し付着させることにより、成膜処理を行う原理を用いた方法である。この方法は、プラズマ電源であるRF電源の強弱によりArプラズマの制御が容易である利点を有し、NiやCuのような比較的融点が高い金属の成膜が可能である。
例えば、特許文献1には、真空雰囲気においてArをプラズマ化し、スパッタ技術を用いることにより、基板(プラスチック)の表面にスパッタ成膜を施す設備が開示されている。なお、引用文献1には、スパッタ成膜に先立って、Arプラズマによる基板表面のクリーニング処理を行う概念も開示されている。
確かに、この開示技術は、樹脂基板表面にAl(アルミニウム)皮膜を生成させる光情報媒介部材の製造技術であって、樹脂に金属めっきを施すための前処理ではないが、高度に集積された光情報媒介部材の場合でも、表面に残存する塵埃が誤情報の原因となり得るため、スパッタ処理施工前の表面清浄化が共通な必須であることがすでに開示されている。
一方、特許文献2では、樹脂成形品の表面に金属めっきを施すための導電化処理の方法として、従来行われている湿式による導電化工程に代わって、乾式による導電化工程、即ち、真空雰囲気を用いるスパッタ技術を採用している。
具体的には、Arに微量の酸素を注入し(加え)低真空雰囲気でプラズマを施すこと(S1工程)により、樹脂成形品の表面の洗浄(クリーニング)に加え、樹脂表面の活性化効果が得られ、続くスパッタ成膜工程(S2工程)により、樹脂との密着性の改善効果が得られるという技術である。更に、S2工程でスパッタ成膜した金属薄膜表面を活性化処理する目的で、S2工程後に再度プラズマ処理を施すS3工程を有し、続くS4工程では、金属薄膜表面にスパッタ処理して導電化膜を成膜し密着性を改善させている。
即ち、特許文献2に開示のプラズマ技術を用いた導電化成膜技術は、以下に示す4工程を有している。
1)S1工程;Arに微量酸素を注入したプラズマ処理による樹脂成形品表面の粗面化及び活性化
2)S2工程;樹脂成形品表面にスパッタ処理を行い密着性に優れる金属薄膜を形成
3)S3工程;プラズマ処理を用いた金属薄膜表面の活性化処理
4)S4工程;スパッタ処理による導電化膜の成膜
特開2001−164363号公報 特開2008−31555号公報
佐々木英幸、他4名、「トリアジンチオール化合物処理リン青銅板とABS樹脂との接着」、日本ゴム協会誌、1994年、第67巻、第3号、p.219−225
上記した乾式のプラズマ処理及びスパッタ処理によって形成された皮膜の密着力が、従来の湿式処理によるエッチング処理と化学めっきによって形成された皮膜の密着力に匹敵することについて、特許文献2では、FT−IR(赤外スペクトル)を駆使することにより、プラズマによる樹脂表面の活性化により樹脂及び金属皮膜との間において化学結合が生じたことによると示唆している。
しかし、化学結合による接着は特許文献2で初めて開示された技術ではなく、例えば、非特許文献1におけるリン青銅板とABS樹脂との直接接着に関する論文中には、樹脂に金属部品を強固に固定する必要があるインサート成形技術について論じられている。この場合、接着剤を用いることなく、リン青銅板表面に重金属イオン捕捉剤(トリアジンチオール水溶液)を塗布することにより、青銅表面に銅塩皮膜が形成され、これとABS樹脂中のポリブタジエン成分との間に化学結合が形成されると結論付けられている。
このように、ABS樹脂と金属(ここではCuやNi)との間においては、樹脂表面あるいは、金属表面を何等かの作用により活性化させることで、樹脂と金属との間で強固な直接接合が可能となることが分かっている。
更に、プラズマによる樹脂表面の活性化及び樹脂と金属が強固に化学結合する現象を詳細に調査・観察することによって、更なる密着力の向上が得られる余地があるのではと考えた。
また、引用文献2に記載の技術では、電気めっき工程を行う前に、S1工程〜S4工程までの4工程を行う必要があるため、製造工程が複雑となり、生産性の低下や製造コストの上昇を招くという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、密着性に優れ、製造工程の簡略化も図れる樹脂成形部材のめっき処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、樹脂製の成形部材(樹脂成形部材)の表面を、Arガスと酸素ガスの混合ガスでプラズマ処理した直後にFT−IR測定した結果、COOH基スペクトルに僅かな変化が認められることを確認した。即ち、COOH基が官能基として作用し、皮膜であるCuあるいはNiと強固な化学結合を生じ、皮膜の密着性の指標となる剥離強度(ピール強度)が著しく改善されるものと推察した。
COOH基を生じるには酸素を必要とするが、樹脂の一例であるABS樹脂は、A(アクリロニトリル)、B(ブタジエン)、S(スチレン)で構成され、ABS樹脂中には酸素が含まれていないため、酸素源はプラズマ雰囲気より取り込まれたと考えられる。つまり、樹脂表面にCOOH基のような官能基を形成するには、プラズマ処理での雰囲気がArのような不活性ガス単独でなく、酸素ガスを含有する必要があることに想到した。
本発明は、以上の知見をもとになされたものであり、その要旨は以下の通りである。
前記目的に沿う発明に係る樹脂成形部材のめっき処理方法は、自動車部品又は家電製品に用いられる樹脂製の成形部材の表面を金属めっき処理する樹脂成形部材のめっき処理方法において、
前記成形部材の表面を、酸素ガスと不活性ガスの混合ガスでプラズマ処理して平滑状態で活性化させ、該プラズマ処理した前記成形部材の表面をスパッタ処理して、Ni、Ni合金、Cu、又は、Cu合金からなる1層のみの導電化膜を形成する導電化工程と、
前記導電化工程後に、前記導電化膜の表面Cu層を、該Cu層の表面Ni層を、該Ni層の表面Cr層を順次形成して電気めっき層を形成する電気めっき工程とを有し、
前記混合ガス中の酸素ガスの混合比を体積比で1%以上100%未満とする。
こで、前記混合ガス中の不活性ガスはArガスであるのがよい。
第1の発明に係る樹脂成形部材のめっき処理方法において、前記導電化膜の厚みを0.001μm以上10μm以下の範囲内にすることが好ましい。
第1の発明に係る樹脂成形部材のめっき処理方法において、前記電気めっき層の厚みを5μm以上60μm以下の範囲内にすることができる。
本発明に係る樹脂成形部材のめっき処理方法は、樹脂製の成形部材の表面を金属めっき処理するために行う導電化工程において、成形部材の表面を、酸素ガスを含むガスを用いてプラズマ処理するので、成形部材の表面を平滑状態で活性化させることができる。
なお、上記のプラズマ処理後の樹脂表面(成形部材の表面)は平滑状態とはいえ、酸素ガスを含むガスを用いてプラズマ処理するため、樹脂表面が多少の損傷を受けることがあり、僅かな粗面化は免れない。しかしながら、クロム酸を用いた湿式のエッチングでブタジエンが選択的に溶出して、蛸壺状の微細なアンカー穴が多数形成される状態とは大きく異なる。
これにより、成形部材の表面と、スパッタ処理して形成される導電化膜との密着力を高めることができるため、成形部材への電気めっき層の密着性を向上できる。また、導電化工程では、プラズマ処理とスパッタ処理を1回ずつ実施すればよいため、製造工程の簡略化が図れ、生産性の向上や製造コストの低減が図れる。
本発明の一実施の形態に係る樹脂成形部材のめっき処理方法のフロー図である。 従来例に係る樹脂成形部材のめっき処理方法のフロー図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
1に示す本発明の一実施の形態に係る樹脂成形部材のめっき処理方法を用いて製造されるめっき処理された樹脂成形部材である製品は、樹脂製の成形部材と、この成形部材の表面に直接形成された導電化膜と、この導電化膜の表面に形成された電気めっき層とを有している。
以下、詳しく説明する。
成形部材は、例えば、金型を用いた射出成形等により成形される成形品であって、自動車部品や家電製品(部品)等に使用するものであり、成形部材に電気めっき層(金属めっき)が形成された製品とは実質的に同一形状のものである。この成形部材の表面は、後述するように、プラズマ処理によって平滑状態で活性化されている(従来の6価クロム等による湿式エッチング処理のように、蛸壺状の微細なアンカー穴が多数形成された状態とは大きく異なる)。
ここで、自動車部品には、例えば、フロントグリルやサイドモールのような外装材や各種取っ手やスイッチ類のような内装材等があり、家電製品には、例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機等があるが、金属めっきが施されるものであれば、特に限定されるものではない。
成形部材を構成する樹脂(原料)としては、主としてABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)があるが、例えば、PC/ABS樹脂(ポリカーボネイト/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)、PC/PET樹脂(ポリカーボネイト/ポリエチレンテレフタレート)、PC/PBT樹脂(ポリカーボネイト/ポリブチレンテレフタレート)、LCP樹脂(液晶ポリマー)、PA樹脂(ポリアミド)、PA/ABS(ポリアミド/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)、PPE樹脂(ポリフェニレンエーテル)、PP樹脂(ポリプロピレン)、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド)、SPS樹脂(結晶性ポリスチレン)、PS樹脂(ポリスチレン)、MMA樹脂(メタクリル酸メチル)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)、PC樹脂(ポリカーボネイト)等もある。更に、これらの樹脂のポリマーアロイも対象とすることができる。
導電化膜は、Ni(ニッケル)、Ni合金、Cu(銅)、又は、Cu合金からなる。
導電化膜の重要な役割は、下地である成形部材と強固で安定した密着性を有することにあり、他の役割は、導電化膜の表面に形成される電気めっき層(特にCu)との密着力を十分に有することにある。
ここで、導電化膜の厚みが0.001μm未満の場合、成形部材との安定した密着力を維持しづらくなり、一方、10μm超の場合、導電化膜を形成するスパッタ処理時間(スパッタ成膜時間)が長時間化して工業的に不利になり易い。
従って、導電皮膜の厚みを、0.001μm以上10μm以下(好ましくは、0.01μm超、更には0.05μm超、5μm未満、更には1μm未満)の範囲内とするのがよい。
電気めっき層は、Cu層、Ni層、及び、Cr(クロム)層で構成され、導電化膜の表面にCu層、このCu層の表面にNi層、このNi層の表面にCr層が、それぞれ形成されている。この電気めっき層は、現行のプラスチックめっきに準じる電気めっき層を形成することに基づいて規定しているが、用途に応じて、これ以外の金属で構成することも勿論可能である。
また、電気めっき層の厚みは、表面の装飾性や耐候性等の実用特性に鑑みて設定されており、通常は、5μm以上60μm以下(好ましくは、下限が10μm、更には20μm)の範囲内とするのがよい。
続いて、本発明の一実施の形態に係る樹脂成形部材のめっき処理方法について、図1を参照しながら説明する。
本発明の一実施の形態に係る樹脂成形部材のめっき処理方法は、樹脂製の成形部材である成形品の表面を金属めっき処理する方法であり、金属めっき処理は導電化工程及び電気めっき工程によって行われる。
以下、詳しく説明する。
まず、例えば、金型を用いた射出成形等により、成形部材である成形品を製造する。
次に、製造した成形品を吊治具にセットして吊り下げ、従来公知の真空チャンバーを備えたスパッタリング装置内で導電化工程を行う。
このスパッタリング装置は、乾式法のマグネトロン・スパッタ法を用いる装置であり、真空雰囲気内において、プラズマ放電により励起されたAr(アルゴン)等の衝突により、金属ターゲットから原子を飛び出させ、成形品に成膜させる装置である。
導電化工程では、まず、成形品の表面を、1)酸素ガスのみ、又は、2)酸素ガスと不活性ガスの混合ガス(雰囲気)でプラズマ処理(以下、プリエッチ処理とも記載)する。
このスパッタリング装置を用いたプラズマ処理は、真空チャンバー内の真空度を、例えば、1×10−2〜100Paの範囲の低真空度とした雰囲気で行うのがよい。
なお、プラズマ処理は、上記したマグネトロン・スパッタ法のプラズマ処理に限定されるものではなく、アークプラズマ蒸着法でのプラズマ処理法を使用することもできる。
このように、酸素ガスを用いてプラズマ処理することにより、成形品の表面に酸素源が取り込まれ、COOH基のような官能基を形成することができる。
これにより、成形品の表面を、平滑状態で活性化させることができる(粗面化と同時に成形品表面を活性化できる)。なお、平滑状態とは、酸素ガスを含むプラズマ処理により、樹脂表面(成形品の表面)が僅かに損傷を受けた結果、微小の凹凸が多数形成された粗面化された状態を意味するが、従来の6価クロム等による湿式エッチング処理を行った場合のように、蛸壺状のアンカー穴が多数形成された状態とは大きく異なる。
ここで、酸素ガスのみとは、プラズマ処理で使用するガス中の酸素ガスの体積比が100%であることを意味する。
また、混合ガスとは、酸素ガスと不活性ガスの混合ガスであり、混合ガス中の酸素ガスの混合比が体積比(=O/(混合ガス)×100)で1%以上100%未満(好ましくは、下限が2%、更には50%、更に好ましくは80%)であればよい。これは、混合ガス中の酸素ガスの混合比を上記した範囲に設定することで、成形品の表面に上記した必要な活性化がなされ、その後に形成される導電化膜との密着力が充分に得られることによる。
この混合ガス中の不活性ガスには、Arガスを使用することが好ましい。
Ar及びOは、原子量が、それぞれ39.95と32.00であり、比較的重いため、プラズマ化して加速されたAr及びOイオンが、樹脂表面に衝突して、表面に付着する塵埃や油脂分を容易に除去し飛散させることができる。続いて、樹脂表面の薄皮を剥くように極薄表層をエッチング剥離し、樹脂の新生面を露出させ、同時に混合ガス中のイオン化したOが反応性に富むので、樹脂と反応し、COOH基のような官能基を生じる。このCOOHが次工程のスパッタ処理において、CuやNiと反応して、樹脂と金属の化学結合を容易にする役割を担うと推察する。
しかも、Arは比較的安価であるから工業的に利用可能であることによる。なお、不活性ガスはArガスに限定されるものではなく、他の不活性ガス、例えば、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)等の希ガスを使用することもできる。
続いて、上記したプラズマ処理した成形品の表面を、スパッタ処理して導電化膜を形成する。
前記したスパッタリング装置を用いたスパッタ処理時の真空度範囲は、プラズマ処理時と同様に1×10−2〜100Paの範囲が好ましい。真空度がこの範囲を外れると、Arガス雰囲気のプラズマ現象が発生しにくくなるからである。工業的に効率の良いプラズマ雰囲気を用いてスパッタ処理を施すためには、上記範囲に設定することが好ましく、上記範囲を外すと、処理時間が長時間化したり、あるいは、所定の成膜厚が得られないこととなる。
前記したように、導電化膜は、Ni、Ni合金、Cu、又は、Cu合金で構成し、その厚みを、0.001μm以上10μm以下の範囲内にするのがよい。
このように、酸素ガスでプラズマ処理して活性化させた成形品の表面に、上記した構成の導電化膜を形成することで、成形品と導電化膜との密着性を向上できる。このため、スパッタ処理を1回で完了させることができ、生産性の向上が図れるが、スパッタ処理は、必要に応じて2回行ってもよい。
上記した導電化工程が終了した後、導電化膜が形成された成形品を吊治具から取り外し(取り出し)、これをめっき工程の吊治具にセットして吊り下げ、導電化膜の表面を活性化処理して、電気めっき工程を行う。この活性化処理は、電気めっき工程の前に通常行われている処理である。
電気めっき工程では、以下に示す各種処理を施し、導電化膜の表面に電気めっき層を形成する。
電気めっき工程では、光沢硫酸銅めっき等の通常の樹脂めっきや金属めっきに用いられる電気めっきを行う。例えば、図1に示すように、導電化膜の表面を活性化処理した後、Cuめっき(例えば、光沢硫酸銅めっき)、半光沢Niめっき、光沢Niめっき、マイクロポーラスNiめっきの順で、各めっき処理を順次施す。
最後にCrめっき(3価Crめっき)の装飾仕上げめっきを施して電気めっき層を形成してめっき処理を終了し、これを乾燥させた後、吊治具から取り出すことで製品となる。
このように、電気めっき層は、Cu層、Ni層、及び、Cr層で構成され、導電化膜の表面にCu層、Cu層の表面にNi層、Ni層の表面にCr層が、形成される。電気めっき層の厚みは、前記したように、5μm以上60μm以下の範囲内にするのがよい。
なお、上記した電気めっき工程は一例であって、これ以外の金属をめっき処理することもできる。例えば、装飾仕上げめっきには、用途に応じて、錫/ニッケル合金めっき、ルテニウムめっき、又は、金めっきを使用でき、また、従来から利用されている6価CrからのCrめっきも使用可能である。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、酸素ガスを用いたプラズマ処理が、基材表面に形成した電気めっき層の密着力に及ぼす影響について検討した結果を示す。
なお、試験では、電気めっき層を形成する基材として、最も多く使用されているABS樹脂を用い、このABS樹脂の代表的材種として、3001M(テクノUMG(株)製)を用いた。また、電気めっき層は、従来のプラスチックめっきの製造法に則り、基材上にスパッタ処理して形成された導電化膜上に、Cu、Ni、及び、Crを順次電気めっき処理して形成した。このめっき厚(Cu、Ni、及び、Crの合計厚み)は概ね30μmとした。
電気めっき層の密着力は、剥離強度(ピーリング試験方法と引き剥がし試験方法)で評価した。
(ピーリング試験方法)
射出成形したABS樹脂製の平板(100mm×100mm、厚み3mm)表面に、スパッタ成膜と電気めっき処理を施した。次に、形成しためっき面に幅10mmの素地まで達する切込みを入れ、めっき皮膜をその一端から引っ張りながら剥離した。
(引き剥がし試験方法:JIS Z 1522に規定のテープ試験方法)
幅20mm程度のセロハン粘着テープを、めっき面に気泡ができないように強く張り付けた。次に、張り付けない部分を持って、めっき面に垂直な方向に瞬時に引き剥がした。このとき、めっきがテープに付着して剥がれれば密着不良とした。なお、試験は、テープを張る前に、めっき面に一辺2mmの正方形に素地まで達する切込みを入れて行った。
表1に、スパッタ処理の回数の影響を検討した結果を、表2に、プラズマ処理に用いる酸素ガス量の影響を検討した結果を、それぞれ示す。
なお、表1、表2に示す比較例1、2は、スパッタ処理を特許文献2に準じた処理(スパッタ処理を2回実施)で施した結果である。具体的には、比較例1が、1回目で基材との密着性の改善効果を得るためのCuのスパッタ処理(S2工程相当)を行い、2回目で導電化のためのCuのスパッタ処理(S4工程相当)を行った結果であり、比較例2が、比較例1のCuの代わりにNiを用いた結果である。この表1、表2では、プラズマ処理で使用する混合ガス中の酸素ガスの体積比(=O/(Ar+O)×100)を0.6%(特許文献2には微量について具体的な数値の記載がないため1%未満と推定)に設定した。
一方、本発明の実施例1〜18、及び、参考例1〜4はスパッタ処理を1回のみ実施した結果である(比較例1、2で行った密着性の改善効果を得るための1回目のスパッタ処理は未実施)。
Figure 0006732263
Figure 0006732263
表1に示す、比較例1、2は、スパッタ処理の実施回数を2回とし、実施例1〜6、及び、参考例1、2は、スパッタ処理の実施回数を1回とした結果である。
このように、実施例1〜6、及び、参考例1、2は、スパッタ処理の実施回数を1回としたにもかかわらず、比較例1、2の剥離強度に対して同等以上の値を示すことが明らかとなった。これは、基材に対して安定した強固な密着性を有するばかりでなく、電気めっき層との密着性も従来方式と同等以上の安定性と強固さを有することによるものと考えられる。
従って、本発明により、スパッタ処理の実施回数は1回で十分であることが明確になった。
表2に示す、実施例18、及び、参考例3、4は、スパッタ処理で使用する酸素ガスの体積比を1.0〜100%の範囲で変動させた結果である。
このように、スパッタ処理で使用する酸素ガスの体積比を広範囲に変動させても、剥離強度は、比較例1、2と比較して劣ることなく、むしろ酸素ガスの体積比の増加に伴って上昇し、密着性の改善効果が認められることが分かった。
なお、スパッタ処理の実施回数が1回で十分であることも明確になった。
以上のことから、本発明の樹脂成形部材のめっき処理方法により、密着性に優れ、製造工程の簡略化も図れることを確認できた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の樹脂成形部材のめっき処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。

Claims (4)

  1. 自動車部品又は家電製品に用いられる樹脂製の成形部材の表面を金属めっき処理する樹脂成形部材のめっき処理方法において、
    前記成形部材の表面を、酸素ガスと不活性ガスの混合ガスでプラズマ処理して平滑状態で活性化させ、該プラズマ処理した前記成形部材の表面をスパッタ処理して、Ni、Ni合金、Cu、又は、Cu合金からなる1層のみの導電化膜を形成する導電化工程と、
    前記導電化工程後に、前記導電化膜の表面Cu層を、該Cu層の表面Ni層を、該Ni層の表面Cr層を順次形成して電気めっき層を形成する電気めっき工程とを有し、
    前記混合ガス中の酸素ガスの混合比を体積比で1%以上100%未満とすることを特徴とする樹脂成形部材のめっき処理方法。
  2. 請求項記載の樹脂成形部材のめっき処理方法において、前記混合ガス中の不活性ガスはArガスであることを特徴とする樹脂成形部材のめっき処理方法。
  3. 請求項1又は2記載の樹脂成形部材のめっき処理方法において、前記導電化膜の厚みを0.001μm以上10μm以下の範囲内にすることを特徴とする樹脂成形部材のめっき処理方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂成形部材のめっき処理方法において、前記電気めっき層の厚みを5μm以上60μm以下の範囲内にすることを特徴とする樹脂成形部材のめっき処理方法。
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