JP6730865B2 - ガラス板の製造方法 - Google Patents
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例えば、熔融ガラスは、ガラス供給管を流れる熔融ガラスを加熱して目標温度にして、清澄管に供給される。清澄管では、熔融ガラスに含まれる清澄剤による還元反応を利用して熔融ガラスの清澄を行なう。清澄剤による還元反応の程度は、熔融ガラスの温度に依存するので、熔融ガラスを清澄管で効率よく清澄させるためには、熔融ガラスが清澄管に流入するまでの間に熔融ガラスの温度を目標温度にすることはガラス板の泡品質を向上させる上で極めて重要である。
前記ガラス板の製造方法は、
熔解槽でガラス原料を熔解して熔融ガラスを生成する熔融工程と、
生成した前記熔融ガラスを金属管内に流すとき、前記熔融ガラスの温度を熱電対により計測し、得られた計測結果に基づいて前記熔融ガラスの温度を調整する温度調整工程と、
前記金属管から流れ出た前記熔融ガラスをシートガラスに成形する工程と、を有し、
前記温度調整工程では、前記熱電対が出力する計測温度の時間波形から、時間変動の周波数の違いを利用して、前記熱電対の熱起電力のドリフト変動成分を除去することにより、前記熔融ガラスの温度の時間変動成分を抽出し、前記時間変動成分の抽出結果に応じて、予め定まっている前記熔融ガラスに与える基準加熱量に付加すべき、前記熔融ガラスに与える加熱量を定めて前記熔融ガラスの温度を調整する。
前記熱電対による前記熔融ガラスの温度計測は、前記清澄工程の前に行われる、ことが好ましい。
前記熱電対による前記熔融ガラスの温度計測は、前記ガラス供給管の長手方向の中心に対して前記熔解槽の側の部分で行われる、ことが好ましい。
本明細書でいう「熔融ガラスの温度の時間変動」とは、熱電対等の計測センサに起因した計測温度のドリフトによる変化を含まない、熔融ガラスの実際の温度の時間的な変動をいう。また、「熱電対の熱起電力のドリフト」とは、熱電対が高温にさらされて熱電対を構成する金属線が部分的に酸化及び揮発することによって、金属線の接合点に発生する熱起電力が時間とともにドリフトすることをいう。
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法の工程の一例を示す図である。
ガラス板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス板は、納入先の業者に搬送される。
熔解槽の熔融ガラスの加熱は、熔融ガラス自身に電気が流れて自ら発熱し加熱するとともに、バーナーによる火焔を補助的に与えてガラス原料を熔解する。具体的には、投入されたガラス原料は、熔解槽の気相空間の壁面あるいはバーナーの火炎からの熱輻射伝熱で加熱され、熱分解して熔解される。こうしてできた熔融ガラスは、より高温に通電加熱される。なお、ガラス原料には清澄剤が添加される。清澄剤として、SnO2,As2O3,Sb2O3等が知られているが、特に制限されない。しかし、環境負荷低減の点から、清澄剤としてSnO2(酸化錫)を用いることが好ましい。熔解槽では、脈理が発生しないようにガラス原料が完全に熔解されるとともに、後工程が適切に行われるように所定の粘度の熔融ガラスが通電加熱によりつくられる。
供給工程(ST4)では、攪拌槽から延びるガラス供給管を通して熔融ガラスが成形装置に供給される。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスを帯状のシートガラスに成形して、シートガラスの流れを作る。成形については、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されたシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置において、成形装置から供給された帯状のシートガラスを所定の長さに切断することで、一枚のガラス板を得る。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス板が作られる。この後、ガラス板の端面の研削、研磨が行われ、ガラス板の洗浄が行われ、さらに、気泡や脈理等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
図2に示す熔解装置101では、ガラス原料の投入がバケット101dを用いて行われ、このガラス原料の熔解により得られる熔融ガラスMGが所定の粘度になるように熔融ガラスMGは加熱される。清澄槽102では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスMGの清澄が行われる。さらに、攪拌槽103では、スターラ103aによって熔融ガラスMGが攪拌されて均質化される。成形装置200では、成形体210を用いたオーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスMGからシートガラスSGが成形される。本実施形態は、バケット101dをガラス原料の投入手段として用いるが、これに制限されない。例えば、スクリューフィーダを用いることもできる。
金属管は、熔融ガラスMGを移送する他、熔融ガラスMGの移送の際に熔融ガラスMGの温度を調整する機能を有する。例えば、ガラス供給管104には、熔解槽101から流れ出た熔融ガラスMGの温度を清澄に適した温度にするために熔融ガラスMGを加熱するためのフランジ形状の一対の電極板が設けられている。ガラス供給管104は、この電極板を通して、金属管であるガラス供給管104を通電することにより生じるジュール熱で熔融ガラスMGを加熱することができる。
また、清澄槽102、ガラス供給管105、攪拌槽103、及びガラス供給管106においても、金属管に電極板を設けて、金属管を通電することにより生じるジュール熱で熔融ガラスMGの温度を調整することができる。
特に、ガラス供給管104では、清澄槽102において脱泡を効率よく行うために、ガラス供給管104の本体の加熱により熔融ガラスMGは、好ましくは2℃/分以上の昇温速度で、1620℃以上の温度に達するまで加熱され、そのときの熔融ガラスの粘度は500〜2000dPa・sとなることが好ましい。熔融ガラスMGが1620℃以上、さらに好ましくは、1630℃以上まで加熱され、これにより清澄剤の還元反応が促進されることにより、多量の酸素が熔融ガラスMGに放出される。これにより、清澄槽102において脱泡を効率よく行うことができる。
しかし、金属管の温度は1千数百℃になるので、金属管の外側面に接するように設ける熱電対を用いて金属管の温度の計測を行っても、正確な温度を得ることはできない。上述したように、熱電対を構成する金属線が部分的に酸化及び揮発することによって、金属線の接合点に発生する熱起電力が時間とともにドリフトするためである。
本実施形態では、金属管の温度の計測結果から熔融ガラスMGの温度そのものの温度を推定するのではなく、熔融ガラスMGの温度の時間変動を抽出する。すなわち、本実施形態では、熱電対による計測結果から推定された熔融ガラスの推定温度の時間波形から熱電対の熱起電力のドリフトによる変化を除去して、熔融ガラスMGの温度の時間変動を抽出する。
ガラス供給管104の長手方向の2箇所には、一対のフランジ形状の電極板114が設けられている。電極板114はそれぞれ加熱電源120に電気的に接続されている。熔融ガラスMGが熔解槽101から流出するときの熔融ガラスMGの温度と、清澄管102に流入するときの熔融ガラスMGの温度は、ガラス板の製造計画段階で予め定まっているので、熔融ガラスMGがガラス供給管104を流れるときに加熱電源120が熔融ガラスMGに与える基本加熱量も予め定まっている。このため、加熱電源120が電極板114に流す基本電流は予め設定された一定の値に固定されている。
しかし、ガラス供給管104を流れる熔融ガラスMGの温度は、時間変動する場合がある。このため、本実施形態では、後述する計測部118の計測結果(熔融ガラスMGの推定温度の時間変動)に基づいて、ガラス供給管120が予め定まっている基準加熱量に付加すべき加熱量を定めて、この付加すべき加熱量に応じて基準電流に付加すべき付加電流を定め、基準電流と付加電流の合計電流を、電極板114、ひいてはガラス供給管104に流すように加熱電源120は構成されている。
計測部118は、例えば、一定時間間隔で計測を行い、上記方法で抽出した波形信号が予め設定した許容範囲から外れた場合、熔融ガラスMGの温度の時間変動が許容範囲から外れた旨の通知と許容範囲から外れた量を加熱電源120に送る。加熱電源120は、この通知に基づいて、波形信号の許容範囲から外れた量に応じて付加すべき加熱量を定めることにより、付加電流を定める。加熱電源120は、付加電流と基準電流を加算した合計電流を、電極板114を介してガラス供給管104に流す。付加すべき加熱量及び付加電流は正及び負を含む。付加すべき加熱量が負とは基準加熱量を低減させる量をいい、負の付加電流は基準電流を低減させる量をいう。ガラス供給管104には、電流によって発熱し、熔融ガラスMGを加熱することができる。
すなわち、熔融ガラスMGの温度が上昇する時間変動をした場合、付加すべき加熱量及び付加電流は負となり、熔融ガラスMGに与える加熱量は基準加熱量よりも小さくなる。熔融ガラスMGの温度が低下する時間変動をした場合、付加すべき加熱量及び付加電流は正となり、熔融ガラスMGに与える加熱量は基準加熱量よりも大きくなる。
また、熱電対116は、図3に示されるように、ガラス供給管104の外側に設けられ、ガラス供給管104の外側面の温度を計測することにより、熔融ガラスMGの温度は調整される。このとき、熱電対116は、ガラス供給管104の長手方向の、熔解槽101と接続するガラス供給管104の接続部に設けられることが、温度調整がされない熔融ガラスMGを後工程に流さない点から好ましい。接続部とは、熔解槽101の流出口と接続するガラス供給管104の接続端からガラス供給管104の長手方向に沿った長さの10分の1以下の部分をいう。
本実施形態が適用されるガラス板は、例えば以下の組成を含む無アルカリガラスからなることが好ましい。
本実施形態が適用するガラス組成として、例えば、次が挙げられる(質量%表示)。
SiO2:50〜70%(好ましくは、57〜64%)、Al2O3:5〜25%(好ましくは、12〜18%)、B2O3:0〜15%(好ましくは、6〜13%)を含み、さらに、次に示す組成を任意に含んでもよい。任意で含む成分として、MgO:0〜10%(好ましくは、0.5〜4%)、CaO:0〜20%(好ましくは、3〜7%)、SrO:0〜20%(好ましくは、0.5〜8%、より好ましくは3〜7%)、BaO:0〜10%(好ましくは、0〜3%、より好ましくは0〜1%)、ZrO2:0〜10%(好ましくは、0〜4%,より好ましくは0〜1%)が挙げられる。さらに、R’2O:0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
本実施形態が適用されるガラス板のヤング率として、例えば、72(Gpa)以上が好ましく、75(Gpa)以上がより好ましく、77(Gpa)以上がより更に好ましい。
本実施形態が適用されるガラス基板の歪率として、例えば、650℃以上が好ましく、680℃以上がより好ましく、700℃以上、720℃以上が更により好ましい。
また、本実施形態で製造されるガラス板は、カバーガラス、磁気ディスク用ガラス、太陽電池用ガラス基板などにも適用することが可能である。
101 熔解槽
102 清澄槽
103 攪拌槽
104,105,106 ガラス供給管
108 耐火物繊維層
110 耐火物保護層
112 耐火物レンガ
114 電極板
116 熱電対
118 計測部
120 加熱電源
200 成形装置
210 成形体
300 切断装置
Claims (6)
- 熔解槽でガラス原料を熔解して熔融ガラスを生成する熔融工程と、
生成した前記熔融ガラスを金属管内に流すとき、前記熔融ガラスの温度を熱電対により計測し、得られた計測結果に基づいて前記熔融ガラスの温度を調整する温度調整工程と、
前記金属管から流れ出た前記熔融ガラスをシートガラスに成形する工程と、を有し、
前記温度調整工程では、前記熱電対が出力する計測温度の時間波形から、時間変動の周波数の違いを利用して、前記熱電対の熱起電力のドリフト変動成分を除去することにより、前記熔融ガラスの温度の時間変動成分を抽出し、前記時間変動成分の抽出結果に応じて、予め定まっている前記熔融ガラスに与える基準加熱量に付加すべき、前記熔融ガラスに与える加熱量を定めて前記熔融ガラスの温度を調整する、ことを特徴とするガラス板の製造方法。 - 前記熔融ガラスの温度の前記時間変動成分は、前記熔解槽内の前記熔融ガラスの対流のゆらぎによって生じる温度変動成分である、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
- 前記熔融ガラスを前記シートガラスに成形する前に、前記熔融ガラスを清澄する清澄工程を有し、
前記熱電対による前記熔融ガラスの温度計測は、前記清澄工程の前に行われる、請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。 - 前記金属管は、前記熔解槽と前記熔融ガラスの清澄を行なう清澄管と、前記清澄管と前記熔解槽を接続するガラス供給管を含み、
前記熱電対による前記熔融ガラスの温度計測は、前記ガラス供給管の長手方向の中心に対して前記熔解槽の側の部分で行われる、請求項3に記載のガラス板の製造方法。 - 前記熱電対は、前記ガラス供給管の外側に設けられ、前記ガラス供給管の外側面の温度を計測することにより、前記熔融ガラスの温度は調整され、前記熱電対は、前記ガラス供給管の長手方向の、前記熔解槽と接続する前記ガラス供給管の接続部に設けられる、請求項4に記載のガラス板の製造方法。
- 前記金属管を流れる前記熔融ガラスの温度は、1620℃以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
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