本発明は、トロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機として、図3および図4に記載されているものが知られている。
このダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図3および図4に示すように構成されている。図3に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転可能に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2、2と2つの出力側ディスク3、3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転可能に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a、4aには、出力側ディスク3、3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された中間壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
図3に示すように、出力側ディスク3、3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5、5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転可能に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1とともに回転するようになっている。また、入力側ディスク2、2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a、2aと出力側ディスク3、3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a、3aとの間には、パワーローラ11(図4参照)が回転可能に挟持されている。
図3中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図3の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2、2、3、3の凹面2a、2a、3a、3aとパワーローラ11、11の周面11a、11aとの当接部に押圧力(予圧)を付与する。
図4は、図3のA−A線に沿う断面図である。図4に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14、14を中心として揺動する一対のトラニオン15、15が設けられている。なお、図4においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15、15は、支持板部16の長手方向(図4の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20、20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20、20によって、各トラニオン15、15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20、20の外側面には、各枢軸14、14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14、14を中心として各トラニオン15、15を揺動させることにより、これら各トラニオン15、15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15、15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転可能に支持されており、各パワーローラ11、11は、各入力側ディスク2、2および各出力側ディスク3、3の間に挟持されている。なお、各変位軸23、23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、各トラニオン15、15の枢軸14、14はそれぞれ、一対のヨーク23A、23Bに対して揺動自在および軸方向(図4の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A、23Bにより、トラニオン15、15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A、23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A、23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A、23Bの幅方向(図3の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64、68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ(シリンダボディ)31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15、15に設けられた各変位軸23、23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23、23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2、2、3、3の回転方向に対して同方向(図4で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11、11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、ローディングカム式の押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11、11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(転動体)26、26と、これら各転動体26、26を転動可能に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15、15の一端部(図4の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29、29が設けられており、各駆動ロッド29、29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33、33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33、33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33、33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15、15を、これらトラニオン15、15の枢軸14、14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、ローディングカム式の押圧装置12を介して、各入力側ディスク2、2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2、2の回転が、一対のパワーローラ11、11を介して各出力側ディスク3、3に伝えられ、さらにこれら各出力側ディスク3、3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33、33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33、33の変位に伴って、一対のトラニオン15、15が互いに逆方向に変位する。例えば、図4の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。
その結果、これら各パワーローラ11、11の周面11a、11aと各入力側ディスク2、2および各出力側ディスク3、3の内側面2a、2a、3a、3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15、15が、ヨーク23A、23Bに枢支された枢軸14、14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
その結果、各パワーローラ11、11の周面11a、11aと各内側面2a、3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11、11およびこれら各パワーローラ11、11に付属の外輪28、28が、各変位軸23、23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28、28の外側面と各トラニオン15、15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25、25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23、23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、自動車の変速機として用いられるトロイダル型無段変速機の場合には、例えば高速道路の下り坂を走行する場合、或は高速走行時にエンジンブレーキをかける場合のように、入力軸1が低トルクで高速回転した場合に、パワーローラ11に加わるスラスト荷重を支承するためのスラスト玉軸受24の耐久性が損なわれる。
すなわち、スラスト玉軸受24を低荷重の下で高速回転させると、玉26に発生するジャイロモーメントにより、スラスト玉軸受24の玉26に滑りが発生する。このような滑りは、摩擦抵抗の増大によりスラスト玉軸受24の回転トルクや発熱量を増大させて、このスラスト玉軸受24の耐久性を低下させる。ここで、上述のようにトロイダル型無段変速では押圧機構としてローディングカムを採用する場合がある。ローディングカム機構の場合は、低トルク領域においてローディングカムによる押圧力は小さくなり過ぎてしまう。ローディングカム式の押圧装置12では、油圧式の押圧装置のように制御により押圧力を高くすることができないが、油圧の供給装置や制御装置を必要とせず、コストの低減と軽量化を図り易い。
このようなローディングカム式の押圧装置12を用いた場合に、押圧力が伝達(通過)トルクに応じて変動し、伝達トルクが小さいと押圧力が小さくなってしまいパワーローラ11のスラスト玉軸受24に上述の滑りを発生させてしまう。それに対して、大きな荷重(伝達トルク)の下でスラスト玉軸受24を高速回転させた場合には、滑りが発生しないことから、皿ばね8による押圧力を強くして、上述のスラスト玉軸受24の滑りを抑制することが考えられる。ローディングカム式の押圧装置12を備えるトロイダル型無段変速機に、例えば皿ばね8等の予圧発生機構が必要な理由としては、第1にトラクション面の動力伝達のための面直力の確保と、第2に、パワーローラ11のスラスト玉軸受24の上述の滑りによる急激な発熱、破損の防止の2点が挙げられる。
しかし、トロイダル型無段変速機の小型化を考慮した場合に、皿ばね8のスペース確保が難しくなり、さらに、皿ばね8の推力を厳密に調整する必要があるため、組立に時間がかかるなどの問題があった。
また、ローディングカム機構におけるカムローラやカム面を十分に潤滑するために、ローディングカム機構のカムローラが転動する部分に油溜部を設けるとともに、ローディングカム機構のカムローラ部分を油密にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。油溜部は、カムローラを挟んだ状態の入力側ディスク2とカム板7との外周側に、これら入力側ディスク2とカム板7との間を油密にする円筒状の部材を配置することで、カムローラ部分に油を貯められるようにしたものである。このような構成により、ローディングカム機構の押圧力に加えて、油が供給されるとともに油密の油溜部によって遠心油圧が生じ、入力側ディスクが押圧され、ローディングカム機構による押圧をサポートするようになっている。
上述のような遠心油圧が生じる構造であれば、この遠心油圧による押圧力を利用して、低トルク時にローディングカム式の油圧装置の押圧力が小さく成り過ぎても、ローディングカム機構部分の回転により遠心油圧が生じるので、伝達トルクが低く、かつ、高速回転しているような場合に、皿ばね8がなくとも、上述の滑り等を防止できる押圧力を確保できる可能性がある。
ところで、上述のようにディスクとともに回転するローディング機構の回転速度が変化すると、遠心油圧により発生する押し付け力が変化してしまい、高回転域では過押し付けの運転領域が増え、トロイダル型無段変速機の効率が悪化する虞があった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、予圧用の皿ばねを必要とせず、小型化を図ることができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的にかつ回転可能に設けられた第1ディスクおよび第2ディスクと、これら両ディスクの間に挟持されるパワーローラと、前記両ディスクのうちの一方のディスクの回転に応じて回転し、通過トルクに応じた押圧力で前記両ディスクを互いに近づけ合う方向に押圧する押圧装置と、前記一方のディスクの回転数を一定とするように制御する制御手段とを備え、
前記押圧装置には、当該押圧装置の回転方向外側への油の漏出を抑止して、遠心油圧により前記押圧装置に押圧力を付加する油溜部が設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、一方のディスクとともに回転する押圧装置の油溜部による遠心油圧が押圧装置の押付力(押圧力)に付加される。この際に、一方のディスクは、制御手段により回転速度が一定となるように制御されているので、遠心油圧は一定となり、一度遠心油圧を適切な油圧になるように調整すれば、トロイダル型無段変速機の作動時に押圧装置による押圧力が弱くなることがあっても、遠心油圧により押圧力が補われ、押圧力の低下に基づく上述のパワーローラのスラスト軸受の滑りによる問題等の発生を抑止することができる。したがって、予圧用の皿ばねを必要とせず、皿ばねを減らすことができ、トロイダル型無段変速機のさらなる小型化を図ることができる。なお、トロイダル型無段変速機の停止時等における部品のがたつきの防止のための付勢手段は必要となり、この付勢手段として皿ばねを使用する可能性がある。
本発明の上記構成において、前記押圧装置は、転動体を有するローディングカム機構を備え、前記ローディングカム機構の前記転動体が配置される部分に前記油溜部が設けられるとともに、前記油溜部の前記転動体より前記押圧装置の回転方向内側に、外部と連通する油路が設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、作動時に潤滑油が油溜部にも供給される状況で、油溜部に溜まる油量を油路の位置で調整できるとともに、油溜部の油量が多く成り過ぎて、遠心油圧による押付力が過大になるのを抑止できる。油溜部の油量を制限する際に、転動体は油に略浸かった状態として十分な潤滑性を確保することができる。
また、本発明の上記構成において、前記押圧装置は、前記一方のディスクを押圧することが好ましい。
本発明によれば、ローディングカム方式のように通過(伝達)トルクによって、押圧力が変化する押圧装置において、押圧力が不足するのを皿ばねではなく遠心油圧により補うことができる。
本発明の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の出力軸と一方の出力側ディスクを示す側面図である。
同、一方の出力側ディスクおよび押圧装置を示す断面図である。
従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。
図3におけるA−A線に沿う断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1および図2に、本発明の実施の形態のトロイダル型無段変速機の要部を示す。図1および図2には、出力軸10と一対の出力側ディスク3のうちの一方だけを図示している。なお、図1および図2において、従来と同様の構成要素には、図3および図4と同様の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
本実施の形態のトロイダル型無段変速機は、航空機用発電機で用いられる変速機であり、航空機のエンジンからの回転速度が変動する回転を一定の回転速度となるように変速して発電機に出力する。また、本実施の形態のトロイダル型無段変速機は、従来のトロイダル型無段変速機と同様の一対の入力側ディスク2、2と一対の出力側ディスク3(図2に1つだけ図示)とを有するダブルキャビティ式のハーフトロイダル型無段変速機であるが、従来のトロイダル型無段変速に対して入力側の構成と出力側の構成が略逆になっている。ただし、基本的な構成は上述の従来の自動車用のトロイダル型無段変速機と同様である。
本実施の形態のトロイダル型無段変速機は、ケーシング50の内側に、出力軸10が回転自在に支持されている。出力軸10の中央部には、一対の入力側ディスク2と、これら入力側ディスク2と一体に回転する入力歯車(図示略)が配置されている。出力軸10は、これら入力側ディスク2と入力歯車の中央を貫通した状態となっているが、出力軸10に対して、入力側ディスク2および入力歯車は回転自在とされている。一対の入力側ディスク2は、パワーローラ11とのトラクション面の反対側の背面同士を対向した状態に配置されるとともに、これら入力側ディスク2の間に入力側歯車が配置されている。入力側歯車には、航空機のエンジンから飛行状態等に応じて回転速度が変動する回転が伝達される。
出力軸10の両端部には、それぞれ、前記入力側ディスク2に対向するように出力側ディスク3が配置されている。図1および図2ではローディングカム方式の押圧装置12を備える一方の出力側ディスク3を図示し、出力軸10に固定的に取り付けられた他方の出力側ディスク3の図示を省略している。この実施の形態では、従来の入力側ディスク2と出力側ディスク3の配置を入れ替えた状態、すなわち、一対の出力側ディスク3の間に一対の入力側ディスク2を配置した状態となっている。これら入力側ディスク2と出力側ディスク3との間に、パワーローラ11が配置され、入力側ディスク2からパワーローラ11を介して出力側ディスク3に回転が伝達される。回転の伝達に際しては、パワーローラ11の傾転角が図示しない制御装置に制御され、航空機の変動するエンジンの回転速度に対して、出力される回転の回転速度を略一定にするようになっている。これにより、発電機の一部として機能するトロイダル型無段変速機により、交流発電機に入力される回転の回転速度が一定となることで、交流電流の周波数を一定の周波数として出力することができる。
一方の出力側ディスク3は、出力軸10の一方の端部(図中右側)にボールスプラインを介して、出力軸10と一体に回転するとともに軸方向に移動可能に接合されている。また、図示しない他方の出力側ディスク3は、出力軸10の他方の端部にスプライン結合され、出力軸10と一体に回転可能で、かつ、軸方向に移動しないようにされている。
一方の出力側ディスク3の背面側には、ローディングカム式の押圧装置12が設けられている。出力軸10の一方の端部には、径が大きくされた拡径部78が設けられ、拡径部78とそれより出力軸10の中央よりに配置される出力側ディスク3との間にローディングカム式の押圧装置12のカム板(カムフランジ)77が配置され、カム板77と拡径部78との間には、アンギュラ軸受79が配置され、出力軸10を回転中心としてカム板77が回転可能とされるとともに、押圧に際し、カム板77にかかるスラスト力をアンギュラ軸受79で受けている。アンギュラ軸受79では、拡径部78が内輪となり、内輪の外周側で出力軸10の中央側に外輪42が設けられ、これら内輪と外輪42との間に玉41が配置されている。また、外輪42に円板状で中央に貫通孔を有するカム板77が取り付けられている。外輪42は、カム板77の中央の貫通孔に入り込んだ状態でカム板77と固定されている。
出力側ディスク3の背面とカム板77のカム面との間には、複数のカムローラ(転動体)80が配置されている。なお、カムローラ80が転動するカム面は、例えば、カム板77に設けられるが、出力側ディスク3の背面側に設けられていてもよい。カムローラ80は、その中心軸をカム板77の径方向に沿わせて配置されるとともに、カム板77の周方向に等間隔に複数列に配置され、各列には、同軸上に複数のカムローラ80が配置されている。また、各カムローラ80は、保持器85に自転および公転自在に保持されている。
ローディングカム方式の押圧装置12が設けられた出力側ディスク3の外周部には、円筒状の円筒壁部81が設けられ、この円筒壁部81は、出力側ディスク3のトラクション面の反対側の背面側から出力軸10の拡径部78に向かって延出している。これにより、一方の出力側ディスク3と拡径部78との間に配置されたカム板77と、このカム板77と一方の出力側ディスク3との間に配置されたカムローラ80が円筒壁部81に囲まれた状態となっている。カム板77は、略円板状に形成され、その外周面にシール溝が形成され、当該シール溝に環状のシール部材82が嵌め込まれるとともに、シール溝からシール部材82が突出した状態となっており、このシール部材82が円筒壁部81の内周面に当接している。
上述のシール部材82にシールされることにより、一方の出力側ディスク3の背面と、出力側ディスク3の円筒壁部81と、カム板77に囲まれた円環状(ドーナッツ状)の部分が油溜部44となる。図2において油溜部44として潤滑油が溜まる部分に細かなハッチングを図示した。油溜部44は、その外周側から潤滑油が漏れないように上述のシール部材82により油密となっている。なお、この油溜部44は、カム板77と出力側ディスク3との間のカムローラ80が配置される部分であり、油溜部44に溜まる潤滑油にカムローラ80と保持器85の一部が浸った状態となっている。これにより、カム板77、出力側ディスク3、カムローラ80、保持器85の潤滑性が十分に確保されている。
カム板77は、その断面形状において、外輪42の出力ディスク側に配置される部分と、外輪42の外周側に配置される部分とで断面階段状とされる基部86と、基部86の外輪42の外周側に配置される部分から外方に突出するフランジ部87とを備え、フランジ部87と基部86との間に軸方向に沿う段差面が設けられている。段差面は、軸方向に沿う外周面となっており、この段差面の外側に保持器85およびカムローラ80が配置される。
外輪42には、内周面の出力軸10側から外周面のカム板77の基部86側に潤滑油を流す油路45が設けられている。カム板77の基部86には、基部86の内周の外輪42側から外周の押圧装置12の保持器85側に潤滑油を流す油路46が設けられている。保持器85には、保持器85の内周の基部86側からカムローラ80側に潤滑油を供給する油路47が形成されている。これら油路45、46,47により、押圧装置12のカムローラ80および保持器85に、出力軸10側から潤滑油が供給される。出力軸10は、内部に潤滑油の経路となる空間を有するとともに、内部の潤滑油を外周側に供給するための複数の孔が形成されている。
上述のように押圧装置12に潤滑油が供給された場合に、潤滑油は油溜部44に溜まるようになっている。これにより、出力軸10の回転に伴って出力側ディスク3が回転すると、カム板77が回転することになり、押圧装置12が回転した状態となった際に、油溜部44に遠心力が作用するが、油溜部44の外周側が上述のように油密となるようにシールされているので、遠心油圧が発生し、カム板77に対して一方の出力側ディスク3を他方の出力側ディスク3(一対の入力ディスク2)側に押圧するようになっている。これにより、押圧装置12は、ローディングカムによる押圧力と遠心油圧との両方によりディスク2,3に押付力を作用させることになる。
上述のように油溜部44には、トロイダル無段変速機の作動中に潤滑油が供給され続けることになるが、油溜部44を構成するカム板77のカムローラ80より内周側の部分に、基部86を貫通する油路48が設けられている。油路48は、カム板77のカムローラ80より内周側の部分で、油溜部44の内部と外部とを連通しており、上述のように潤滑油が供給され続ける油溜部44において、この油路48の位置より内周側に潤滑油が溜まるのを抑制している。すなわち、この油路48の位置により、油溜部44に溜まる潤滑油の量が決まるようになっている。ここで、トロイダル型無段変速機が通常運転をしている間は、出力軸10、出力側ディスク3、油溜部44を有する押圧装置12が略一定の回転速度で回転しており、回転速度と油溜部44の形状と、油路48のカム板77の径方向の位置に基づいて、遠心油圧の大きさが決まるようになっている。そこで、油路48の径方向位置によって、遠心油圧の大きさを調整することが可能であり、例えば、設計段階や製造段階で油路48の位置を決めることで、従来の皿ばねの調整より容易に予圧の大きさを決定することができる。また、保持器85およびカムローラ80の部分が潤滑油に浸った状態とすることができ、高い潤滑性を維持できる。
また、アンギュラ軸受79の外輪42の外周部には、円環状のリブ(鍔部)43が設けられている。このリブ43とカム板77の基部86との間に皿ばね49が配置されている。この皿ばね49は、予圧のための従来の皿ばね8より弱いばねであり、例えば、トロイダル型無段変速機が停止している状態などにおいて、ディスク2,3やパワーローラ11やそのスラスト玉軸受24等の各部品ががたつくのを防止するためのものであり、従来に比較して皿ばねによって付加される押圧力は低くなっており、実質的に使用される皿ばねが減っている。
なお、出力軸10の他方の端部には、上述のように図示しない他方の出力側ディスク3が取り付けられているので、押圧装置12により、一方の出力側ディスク3が中央側の入力側ディスク2に向かって押された状態となるとともに、押圧装置12が出力軸10を引っ張った状態となり、出力軸10に固定されている他方の出力側ディスク3を入力側ディスク2に押し付ける状態となる。
このようなトロイダル型無段変速機においては、出力側ディスク3および出力軸10の回転速度が一定となるように制御されるとともに、ローディングカム方式の押圧装置12に遠心油圧が生じる油溜部44を設け、押圧装置12の押圧方向に予圧として一定の遠心油圧が作用することになる。これにより予圧のための皿ばね8を無くすことができ、使用される皿ばねを減らすことができる。
なお、本発明のトロイダル型無段変速機は、上述の航空機用発電機以外の機器で使用するものとしてもよいが、押圧装置12が設けられる出力側ディスクまたは入力側ディスク2が略一定に回転するように制御される必要がある。すなわち、トロイダル型無段変速機に入力する回転数がほぼ一定となっているか、出力される回転数が一定となるように制御される必要がある。
上述の実施の形態では、本発明を、ダブルキャビティ式ハーフトロイダル型無段変速機に適用する場合を例にとって説明したが、これに限ることなく、本発明は、シングルキャビティ式のハーフトロイダル型やフルトロイダル型のトロイダル型無段変速機にも適用できる。
2 入力側ディスク(第1ディスク)
3 出力側ディスク(第2ディスク)
11 パワーローラ
12 押圧装置
44 油溜部
77 カム板
80 カムローラ(転動体)
81 円筒壁部
87 油路