JP6729026B2 - マイクロ流路チップおよび検体濃度測定装置 - Google Patents

マイクロ流路チップおよび検体濃度測定装置 Download PDF

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Description

本発明は、マイクロ流路チップおよび当該マイクロ流路チップを用いた検体濃度測定装置に関する。更に詳しくは、血液などの検体から血漿成分などの特定の成分を分離することが可能なマイクロ流路チップおよび分離された特定の成分の濃度を測定する検体濃度測定装置に関する。
医療分野においては、検体(例えば血液)から微小サイズの成分(例えば血漿成分)を抽出し、得られた抽出成分または当該抽出成分に含まれる検査対象物の濃度を測定することが行われている。
従来、血液から血漿成分を抽出する方法としては、毛細管内に封入した血液を、遠心分離処理することにより、血液中の血漿成分と血球成分とを分離する方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
特開平6−43158号公報
しかしながら、血液から血漿を抽出するために遠心分離を利用する場合には、比較的多量の血液が必要とされ、また、遠心分離機を使用するため、大型の装置を構成することが必要となる、という問題がある。このため、遠心分離を利用せずに、微量の血液から血漿成分を分離することができる手段が望まれている。
そこで、本発明の目的は、外部から遠心力などの運動学的作用を加えることなしに、微量の検体から特定の成分を分離することができると共に、必要量の特定成分が測定部に充填された状態を短時間で得ることのできるマイクロ流路チップを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のマイクロ流路チップを用いて検体における特定の成分の濃度を効率よく測定することのできる検体濃度測定装置を提供することにある。
本発明のマイクロ流路チップは、液状の検体を流通させる第一流路と、この第一流路から分岐して形成された、前記第一流路を流通する検体から特定の成分を分離することが可能な幅を有する当該第一流路に連通する第二流路と、当該第二流路に接続された、前記検体から分離された特定の成分が充填される測定部とを内部に有する板状体よりなり、
前記測定部を形成する空間の少なくとも一部が、一方向に向かうに従って徐々に隙間が小さくなるくさび状空間により形成されており、
前記一方向をx方向とするxyz直交座標を想定したとき、
前記くさび状空間は、y方向からの平面視にて表わされるz方向において互いに対向する一対のくさび状空間形成面がくさび状をなす部分を有し、
前記測定部は、前記くさび状空間に連続する、yz断面の断面形状が矩形状とされた定容積空間を有しており、
当該定容積空間のyz断面において表わされる連続する2つの定容積空間形成面がなす角をγ、前記くさび状空間のy方向からの平面視にて表わされる前記一対のくさび状空間形成面がなす角をαとしたとき、前記くさび状空間は、α<γの関係を満足する空間形状を有することを特徴とする。
また、本発明のマイクロ流路チップにおいては、前記くさび状空間は、z方向からの平面視にて表わされるy方向において互いに対向する一対のくさび状空間形成面がくさび状をなす部分を有する構成とすることができる。
このような構成のものにおいては、前記くさび状空間のz方向からの平面視にて表わされる前記一対のくさび状空間形成面がなす角をβとしたとき、前記くさび状空間は、β<γの関係を満足する空間形状を有することが好ましい。
さらにまた、本発明のマイクロ流路チップにおいては、前記くさび状空間は、y方向の寸法またはz方向の寸法が一定の大きさとされた測定用領域を有することが好ましい。
本発明の検体濃度測定装置は、上記のくさび状空間がy方向またはz方向の幅が一定の大きさとされた測定用領域を有するマイクロ流路チップと、
このマイクロ流路チップにおける前記測定用領域に光を照射する光源と、
前記マイクロ流路チップにおける測定領域を含む領域の画像を撮像する撮像手段と、
この撮像手段によって取得された画像データに基づいて前記特定の成分の濃度を算出する機能を有する制御機構と
を備えてなることを特徴とする。
本発明のマイクロ流路チップによれば、第二流路は、第一流路を流通する検体から特定の成分を分離することが可能な幅を有するため、外部から遠心力などの運動学的作用を加えることなしに、検体から特定の成分を分離することができる。しかも、第二流路によって分離されて測定部に流入される特定の成分を、くさび状空間による毛細管力によって当該くさび状空間の狭小方向に集中させることができるので、必要量の特定の成分が測定部に充填された状態を短時間で得ることができる。
上記のマイクロ流路チップを用いた本発明の検体濃度測定装置によれば、マイクロ流路チップにおいて検体から分離される必要量の特定の成分を効率よく測定領域に貯留(充填)させることができるので、高い検査効率を得ることができる。また、光源からの光が照射されるマイクロ流路チップの測定領域は、厚みが一定の大きさとされているため、光路長を一定にすることができて特定の成分の濃度を高い信頼性で測定することができる。
本発明のマイクロ流路チップの一例における構成を示す平面図である。 図1における二点鎖線で囲まれた領域を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。 図2(a)におけるA−A断面端面図である。 図2(a)におけるB−B断面端面図である。 測定部の空間形状を概略的に示す説明図であって、(a)斜視図、(b)z方向から見た平面図、(c)定容積空間のyz平面による断面図、(d)y方向から見た側面図である。 検体から分離された特定の成分が測定部に充填されてゆく状態を概略的に示す説明図である。 本発明のマイクロ流路チップの他の例における要部の構成を示す平面図である。 本発明のマイクロ流路チップのさらに他の例における構成を示す平面図である。 本発明の検体濃度測定装置の一例における構成を概略的に示す説明図である。 本発明の検体濃度測定装置の他の例における構成を概略的に示す説明図である。 実施例1および比較例1において作製した各々のマイクロ流路チップについての、試験用流体の測定部に対する貯留長の経時的変化を示す図である。
以下、本発明のマイクロ流路チップの実施の形態について説明する。
図1は、本発明のマイクロ流路チップの一例における構成を示す平面図である。図2は、図1における二点鎖線で囲まれた領域を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図3は、図2(a)におけるA−A断面端面図、図4は、図2(a)におけるB−B断面端面図である。
このマイクロ流路チップ10は、液状の検体を流通させるための第一流路20と、第一流路20を流通される検体から特定の成分を分離抽出するための複数の第二流路25と、検体から分離された特定の成分が充填される測定部30とを内部に有する板状体よりなるチップ基体11を有する。
図示の例では、チップ基体11は、第一基板12と第二基板15とが接合されて構成されており、第一流路20、第2流路25および測定部30は、チップ基体11の厚み方向に垂直な平面に沿って二次元的に形成されている。
測定部30は、チップ基体11の厚み方向に垂直な面方向の一方向に伸びる状態で形成されており、第三流路27を介して第二排出部28に接続されている。
第一流路20は、測定部30を挟んだ両側の位置において測定部30に沿って伸びる直線状流路部分20a,20bを有している。第一流路20における検体流通方向の上流側端は、検体導入部21から導入された検体を貯留する検体貯留部22に接続されている。第一流路20における検体流通方向の下流側端は、第一排出部23に接続されている。
複数の第二流路25の各々は、第一流路20から分岐して当該第一流路20に対して垂直方向に伸びるよう形成されている。第二流路25における検体流通方向の上流側端は、第一流路20における直線状流路部分20a,20bに連通し、検体流通方向の下流側端が測定部30を構成する空間に連通している。図示の例では、複数の第二流路25の各々は、測定部30の当該測定部30が伸びる方向の全域にわたって等間隔で離間して配列された状態で形成されている。
第一基板12および第二基板15の各々の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば0.1mm以上5.0mm以下である。
図示の例では、第一流路20は、第一基板12に形成された第一流路用溝13aの内壁面と、第二基板15とによって区画されることにより形成されている。また、第二流路25は、第二基板15に形成された第二流路用溝16の内壁面と、第一基板12とによって区画されることにより形成されている。また、測定部30は、第一基板12に形成された測定部用凹所13bの内壁面と、第二基板15とによって区画されることにより形成されている。なお、第一流路用溝13a、第二流路用溝16および測定部用凹所13bの全てが、第一基板12および第二基板15のいずれか一方に形成されていてもよい。
第一流路20、第二流路25および測定部30の各々の内壁面には、親水化処理が施されていることが好ましい。具体的には、第一流路20、第二流路25および測定部30の各々の内壁面における水の接触角が90°未満であることが好ましく、より好ましくは50°以下である。
第一流路20は、液状の検体(例えば血液)を流通させることが可能な幅を有する。本発明において、流路の「幅」とは、流路における当該流路が伸びる方向に垂直な断面において、当該流路の最も小さい幅を意味する。図示の例の第一流路20および第二流路25においては、マイクロ流路チップ10の厚み方向の幅が最も小さい幅である。
このような第一流路20の幅は、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上100μm以下である。第一流路20の幅が過小である場合には、第一流路20において、流路抵抗が大きくなることによって検体の流量が低下し、第二流路25への特定の成分(例えば血漿成分)の供給量が不足する虞がある。一方、第一流路20の幅が過大である場合には、要求される検体の量が増大する虞がある。また毛細管力が小さくなるため、第一流路20を流れる検体の流速が小さくなり、特定の成分が測定部30に到達するのに相当に長い時間を要する虞がある。
また、第一流路20の上流側端から第二流路25との分岐点までの長さは、特に限定されるものではないが、例えば10mm以上100mm以下である。
第二流路25は、第一流路20を流通する検体(例えば血液)から特定の成分(例えば血漿成分)を分離することが可能な幅を有する。
このような第二流路25の幅は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以上3.0μm以下である。第二流路25の幅が過小である場合には、測定部30に供給することができる特定の成分の量が少なくなり、特定の成分の抽出に相当に長い時間を要する虞がある。一方、第二流路25の幅が過大である場合には、検体中における特定の成分以外の成分(例えば赤血球などの血球成分)が混入してしまい分離機能を示さない虞がある。
また、第二流路25の長さは、特に限定されるものではないが、例えば0.1mm以上1mm以下である。
また、第二流路25の数は、例えば100本以上10000本以下である。
測定部30は、当該測定部30を形成する空間の少なくとも一部が、一方向に向かうに従って徐々に隙間が小さくなるくさび状空間により形成されている。
図示の例では、測定部30における当該測定部30が伸びる方向の一端部分がくさび状空間により形成されている。すなわち、測定部30は、図5にも示すように、くさび状空間35と、くさび状空間35に連続する定容積空間31とにより構成されている。
以下においては、くさび状空間35(測定部30)が伸びる方向を「x方向」、チップ基体11の厚み方向を「z方向」とするxyz直交座標を定義して、測定部30の空間形状について具体的に説明する。
測定部30における定容積空間31は、x方向においてほぼ同一の空間形状を有しており、yz断面の断面形状が矩形状とされている。定容積空間31のyz断面において表わされる連続する2つの定容積空間形成面がなす角γは、いずれも例えば45°以上90°以下である。
図示の例では、定容積空間31は、各々xy平面に沿って伸びる上底面30aおよび下底面30bと、下底面30bに対して傾斜する一対の定容積空間形成面32a,32bとにより形成されており、yz断面における断面形状が台形状とされた空間形状を有する。そして、定容積空間31のyz断面において表わされるy方向において互いに対向する一対の定容積空間形成面32a,32bがxy平面に沿った下底面30bに対してなす角γ1,γ2が、例えば45°以上90°以下とされている。γ1,γ2は、互いに同一の大きさであっても異なる大きさであってもよい。
くさび状空間35は、y方向からの平面視にて表わされるz方向において互いに対向する一対のくさび状空間形成面がくさび状をなす部分を有すると共に、z方向からの平面視にて表わされるy方向において互いに対向する一対のくさび状空間形成面がくさび状をなす部分を有する空間形状とされていることが好ましい。
具体的には、y方向からの平面視にて表わされる一対のくさび状空間形成面がなす角(以下、「くさび状空間の先端傾斜角」という。)をαとしたとき、くさび状空間35は、α<γ1、α<γ2の関係を満足する空間形状を有することが好ましい。また、z方向からの平面視にて表わされる一対のくさび状空間形成面がなす角(以下、「くさび状空間の開き角」という。)をβとしたとき、くさび状空間35は、β<γ1、β<γ2の関係を満足する空間形状を有する空間形状を有することが好ましい。
図示の例では、くさび状空間35は、xy平面に沿った上底面30aおよび下底面30bと、x方向一端側に向かって互いに接近する、下底面30bに対して傾斜する一対のくさび状空間形成面36a,36bとによって形成されている。
そして、図5(d)に示すように、y方向からの平面視にて表わされる一対のくさび状空間形成面36a,36bの稜線Cと下底面30bとがなすくさび状空間35の先端傾斜角αが、定容積空間形成面32a,32bの下底面30bに対する傾斜角γ1、γ2より小さい状態とされている。また、図5(b)に示すように、z方向からの平面視にて表わされる一対のくさび状空間形成面36a,36bがなすくさび状空間35の開き角βが、定容積空間形成面32a,32bの下底面30bに対する傾斜角γ1、γ2より小さい状態とされている。
なお、くさび状空間35の空間形状は、例えば四角錐状であってもよい。
くさび状空間35の開き角αは、例えば15°以上45°以下であることが好ましい。また、くさび状空間35の先端傾斜角βは、例えば5°以上45°以下であることが好ましい。
くさび状空間35による毛細管力Pは、表面張力をF、液体の接触角をθ、液面の曲率半径をRとしたとき、P=2Fcosα+(θ/R)、もしくは、P=2Fcosβ+(θ/R)により算出される。従って、くさび状空間の開き角αの大きさ、もしくは、くさび状空間の先端傾斜角βの大きさによって毛細管力Pが決定されることとなる。
くさび状空間35が上記のような空間形状を有することにより、第二流路25によって分離されて測定部30に流入される特定の成分を確実にくさび状空間35の狭小方向に優先的に貯留させることができる。
また、くさび状空間35は、y方向またはz方向における寸法が一定の大きさとされた測定領域を有する構成とされていることが好ましい。
図示の例では、z方向における寸法(厚み)が一定の大きさとされた測定領域38がくさび状空間35におけるx方向他端側部分に形成されている。
このような構成とされていることにより、後述する特定の成分の吸光度に基づく濃度測定において、光路長を一定の大きさとすることができるため、検体における特定の成分について信頼性の高い濃度測定を行うことができる。
以上において、測定部30の定容積空間31およびくさび状空間35の測定領域38におけるz方向の寸法Dは、例えば10μm以上1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上500μm以下である。当該寸法Dが過小である場合には、後述する吸光度測定において必要とされる大きさの光路長を確保することができないため、特定の成分の濃度測定を行うことができなくなる。一方、当該寸法Dが過大である場合には、要求される検体の量が増大する虞がある。また毛細管力が小さくなるため、特定の成分が測定部30に到達するのに相当に長い時間を要する虞がある。
また、測定部30の定容積空間31における面方向(y方向)の寸法W1は、100μmm以上1000μm以下であることが好ましい。
〈チップ基体の構成材料〉
チップ基体11(第一基板12および第二基板15)を構成する材料としては、後述する検体濃度測定装置における光源部からの光を透過し得るもの、例えば樹脂材料を用いることができる。
樹脂材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、COP樹脂(シクロオレフィンポリマー樹脂)などを用いることができるが、以下に示す樹脂組成物を用いることが好ましい。
チップ基体11の構成材料として用いられる樹脂組成物は、荷重たわみ温度が40℃以上100℃以下、ガラス転移温度が−40℃以上−20℃以下であるものであることが好ましい。
ここで、樹脂組成物の荷重たわみ温度およびガラス転移温度は、JIS K7191およびJIS K7121に規定される方法で測定されるものをいう。
このような樹脂組成物としては、ポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂に相溶しないポリマーブロックX(以下、単に「ポリマーブロックX」という。)および共役ジエンによるエラストマー性のポリマーブロックY(以下、単に「ポリマーブロックY」という。)よりなるブロックコポリマー(以下、「特定のブロックコポリマー」という。)の水素添加誘導体(以下、「特定の水素添加誘導体」という。)とを含有してなる、自己融着性を示す樹脂組成物(以下、「特定の樹脂組成物」という。)を用いることが好ましい。
〈ポリプロピレン系樹脂〉
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンのホモポリマーや、プロピレンと、エチレン、またはブテン−1、ヘキセン−1などのプロピレン以外のα―オレフィンとのランダムコポリマーを用いることができる。具体的には例えば、市販の「マイクロレシコ」(登録商標)(株式会社リッチェル製)などを用いることができる。
〈特定のブロックコポリマー〉
特定のブロックコポリマーは、それぞれ1つ以上、好ましくは1つ以上5つ以下のポリマーブロックXおよびポリマーブロックYを有するものであればよく、具体的な構造は、(X−Y)n (但し、n=1〜5)で表される構造、X−Y−Xで表される構造、Y−X−Yで表される構造などのいずれであってもよい。
〈ポリマーブロックX〉
特定のブロックコポリマーにおいて、ポリマーブロックXとしては、ポリプロピレン系樹脂に相溶しないものであれば特に限定されず、例えばビニル芳香族モノマー(例えばスチレン)、エチレンまたはメタクリレート(例えばメチルメタクリレート)等を重合して得られるポリマーブロックを用いることができる。具体的なポリマーブロックXの例としては、ポリスチレン系のものや、ポリオレフィン系のものが挙げられる。
ポリスチレン系のポリマーブロックXの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンから選択された1種または2種以上のビニル芳香族化合物を重合して得られるポリマーブロックが挙げられる。
また、ポリオレフィン系のポリマーブロックXの他の例としては、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとを共重合して得られるポリマーブロックが挙げられる。このポリマーブロックには、非共役ジエンが共役重合されていてもよい。
前記α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
前記非共役ジエンの具体例としては、1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボネル、5−ブチリデン−2−ノルボネル、2−イソプロペニル−5−ネルボルネンなどが挙げられる。
ポリオレフィン系のポリマーブロックXの具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体ブロック、エチレン−1−ブテン共重合体ブロック、エチレン−1−オクテン共重合体ブロック、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン共重合体ブロック、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ブロックなどが挙げられる。
特定のブロックコポリマーにおいて、ポリマーブロックXの含有率は、例えば10質量%以上20質量%以下である。
〈ポリマーブロックY〉
ポリマーブロックYとしては、水素添加前のものとして、2−ブテン−1,4−ジイル基およびビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基よりなる構造単位によって構成されるポリブタジエンブロック、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基よりなる構造単位によって構成されるポリイソプレンブロックが挙げられる。
更に、水素添加前のポリマーブロックYとして、イソプレン単位が2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基よりなる構造単位であり、ブタジエン単位が2−ブテン−1,4−ジイル基および/またはビニルエチレン基よりなる構造単位によって構成されるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックなどが挙げられる。イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックにおけるイソプレンに由来の構造単位とブタジエンに由来の構造単位との配置は、ランダム状、ブロック状、テーパブロック状のいずれの形態であってもよい。
また、ポリマーブロックYは、ビニル芳香族化合物が共重合されてなるものであってもよい。このようなポリマーブロックYとしては、ビニル芳香族化合物に由来の単位が、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンのうちから選択された1種のモノマー単位であり、共役ジエン単位が、2−ブテン1,4−ジイル基および/またはビニルエチレン基である共重合体ブロックを用いることができる。また、ビニル芳香族化合物に由来の構造単位と共役ジエン由来の構造単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパブロック状のいずれの形態であってもよい。
〈特定の水素添加誘導体〉
特定の水素添加誘導体は、上記の特定のブロックコポリマーを水素添加することによって得られる。特定の水素添加誘導体における水素添加の状態は、部分水素添加であっても、また完全水素添加であってもよい。
このような特定の水素添加誘導体としては、水素添加する前の特定のブロックコポリマーにおいて、ポリマーブロックXがポリスチレンブロックであり、ポリマーブロックYが、1,2結合、3,4結合および/または1,4結合のポリイソプレンブロックであるもの、或いは、ポリマーブロックXがポリスチレンブロックであり、ポリマーブロックYが、1,2結合および/または1,4結合のポリブタジエンブロックであるものが、容易に入手可能である。
また、ポリスチレンブロックは、ポリプロピレン系樹脂との相溶しにくいため、ポリスチレンブロックの割合が高い特定の水素添加誘導体を用いる場合には、特定の樹脂組成物の調製(特定の水素添加誘導体とポリプロピレン系樹脂と混合)に長い時間を要するので、マスターバッチ化することなどによって、予め十分に混合しておくことが好ましい。
〈特定の樹脂組成物の調製〉
特定の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂と特定の水素添加誘導体とを、加熱溶融した状態で混合(混練)することによって得られる。このような特定の樹脂組成物においては、ポリプロピレン系樹脂とポリマーブロックXとは、互いに相溶していない状態である。
ここで、特定の樹脂組成物においてポリプロピレン系樹脂とポリマーブロックXとが相溶しているか否かは、以下のようにして確認することができる。
ポリマーブロックXがポリプロピレン系樹脂に相溶しないものである場合には、特定の樹脂組成物において、ポリマーブロックXはその慣性半径程度のサイズを有するミクロドメインを形成する。このようなミクロドメインは透過型電子顕微鏡で観察したり、小角X線散乱により孤立ドメインの散乱パターンを測定・解析したりすることにより確認することができる。
また、ポリマーブロックXがポリプロピレン系樹脂に相溶しないものである場合には、ポリマーブロックXのガラス転移温度は、ポリプロピレン系樹脂と混合されても変化することがない。このようなポリマーブロックXのガラス転移温度の変化の有無は、示差走査熱量測定(DSC)や動的粘弾性測定などにより確認することができる。
ポリマーブロックYがポリプロピレン系樹脂に相溶するものである場合には、ポリマーブロックYのガラス転移温度およびポリプロピレンのガラス転移温度の各々が変化して、これらの間の温度に新たなガラス転移温度が現れる。
このようなガラス転移温度の変化の有無は、動的粘弾性測定などにより確認することができる。
ポリマーブロックXおよびポリマーブロックの両方がポリプロピレン系樹脂に相溶しない場合には、特定の樹脂組成物において、形態的には特定のブロックコポリマーによるポリマー相(ポリマーブロックXの相とポリマーブロックYの相とからなるミクロドメイン構造による相)と、ポリプロピレン系樹脂によるポリマー相とに分離する。一方、ポリマーブロックYがポリプロピレン系樹脂に相溶するものである場合には、特定の樹脂組成物において、ポリマーブロックXのミクロドメイン同士の間隔が大きくなったり、ポリマーブロックXのミクロドメインがポリプロピレン系樹脂中に均一に分散したりするようになる。
このようなポリマーブロックYがポリプロピレン系樹脂に相溶するときの形態的変化は、透過型電子顕微鏡によりミクロドメインの相互位置を観察したり、小角X線散乱によりミクロドメイン間距離を解析したりすることにより確認することができる。
特定の樹脂組成物において、特定の水素添加誘導体の割合は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して40質量部以上50質量部以下となる割合であることが好ましい。
特定の樹脂組成物には、必要に応じて種々の添加剤、例えばポリプロピレン系樹脂用の造核剤などが含有されていてもよい。かかる造核剤としては、核化効果によって物性や透明性を向上させる金属塩型(リン酸金属塩、カルボン酸金属塩)の造核剤や、ネットワーク形成によって透明性を付与するベンジリデンソルビトール型の造核剤を用いることができる。ベンジリデンソルビトール型の造核剤は、ベンズアルデヒドとソルビトールとの縮合物よりなり、分子中に水酸基を有するものである。
〈マイクロ流路チップの製造方法〉
上記のマイクロ流路チップ10は、例えば以下の第1の方法または第2の方法によって製造することができる。
《第1の方法》
先ず、第一流路20を形成するための第一流路用溝13aおよび測定部30を形成するための測定部用凹所13bが形成された第一基板12、並びに、第二流路25を形成するための第二流路用溝16が形成された第二基板15を作製する。
第一基板12および第二基板15は、例えば、マイクロ流路チップ製造用金型を製造し、このマイクロ流路チップ製造用金型を用い、例えば上記の樹脂材料を射出成形法によって成形することにより、作製することができる。マイクロ流路チップ製造用金型は、例えば、シリコンウエハを異方性エッチング加工することにより、もしくは感光性樹脂の傾斜露光や多段プロセスにより得られたものに対して電鋳処理を行うことにより製造することができる。また、第一基板12および第二基板15は、基板材料に対して機械加工を行うことにより第一流路用溝13a、測定部用凹所13b、第二流路用溝16を形成することにより作製することもできる。
第1の方法においては、第一基板12における第一流路用溝13aおよび測定部用凹所13bの表面を含む接合面、並びに第二基板15における第二流路用溝16を含む接合面に対して、表面活性化処理を施すことが好ましい。表面活性化処理の方法としては、親水剤をコーティングする方法、真空紫外線を照射することによって表面処理する方法、プラズマによって表面処理する方法などを利用することができ、これらの中では、真空紫外線を照射することによって表面処理する方法が好ましい。このような表面活性化処理を行うことにより、第一基板12と第二基板15とをより強固に且つ短時間で接合することができる。
真空紫外線を照射することによって表面活性化処理を行う場合において、真空紫外線の照射条件の具体的な例を挙げると、紫外線光源としてキセノンガスを封入したエキシマランプを用い、波長172nmの真空紫外線を照度30mW/cm2 の条件で10分間照射する。
その後、第二基板15の接合面に、第一基板12を位置合わせした状態で重ね合わせて接触させる。
そして、第一基板12および第二基板15を同時に加熱することにより、第一基板12と第二基板15とを自己融着性を利用して接合する。
また、第一基板12および第二基板15の加熱温度は、第一基板12および第二基板15の構成材料の融点よりも低い温度で、かつ第一基板12および第二基板15の構成材料のガラス転移温度よりも高い温度とされる。特に、加熱温度は、当該構成材料の融点よりも80℃以上低い温度で、かつ当該構成材料のガラス転移温度よりも60℃以上高い温度の範囲から選択されることが好ましい。
第一基板12および第二基板15の具体的な加熱温度を示すと、例えば50℃以上70℃以下である。また、第一基板12および第二基板15の具体的な加熱時間を示すと、加熱温度が60℃である場合において例えば1時間以上2時間以下である。
《第2の方法》
先ず、第1の方法と同様にして、第一基板12および第二基板15を作製する。
次いで、第一基板12における第一流路用溝13aおよび測定部用凹所13bの表面を含む接合面、並びに第二基板15における第二流路用溝16を含む接合面に対して、真空紫外線を照射することによって表面活性化処理が施される。
表面活性化処理における真空紫外線の照射条件の具体的な例を挙げると、紫外線光源としてキセノンガスを封入したエキシマランプを用い、波長172nmの真空紫外線を照度30mW/cm2 の条件で10分間照射する。
そして、第二基板15の接合面に、第一基板12を位置合わせした状態で重ね合わせて接触させ、加熱することなしに常温で放置することにより、第一基板12と第二基板15とを接合する。
このような第1の方法または第2の方法によれば、第一基板12および第二基板15を、これらの構成材料の融点よりも低い温度で接合するため、接合する際の加熱によって、第一基板12および第二基板15が変形することがない。従って、製造すべきマイクロ流路チップが、例えば幅5μm以下の微細な第二流路25を有するものであっても、所期のマイクロ流路チップ10を確実に製造することができる。
また、第一基板12および第二基板15を、これらの構成材料の融点未満の温度で接合可能であるため、第一基板12および第二基板15を接合する際に、第一基板12および第二基板15を比較的低温の加熱で接合することができる。このため、第二基板15に形成された微細な第二流路用溝16が熱変形して潰れることが防止される。
上記のマイクロ流路チップ10においては、液状の検体例えば血液が検体導入部21から導入されることにより、当該検体が検体貯留部22に貯留される。検体貯留部22に貯留された検体は、毛細管現象によって第一流路20を流通し、第二流路25との分岐点に到達する。そして、この分岐点においては、検体中における第二流路25の幅より大きいサイズの成分、例えば血球成分は、第二流路25に進入することができないため、第一流路20を下流側に向かって流通する。一方、検体中における第二流路25の幅より小さいサイズの特定の成分、例えば血漿成分は、第二流路25に進入することができるため、第二流路25を流通し、測定部30に流入する。図6に示すように、測定部30に流入した特定の成分PLは、測定部30におけるくさび状空間35による毛細管力によって、チップ基体11における測定部30を形成する内壁面に沿ってくさび状空間35の狭小方向に流れる。このため、特定の成分PLはくさび状空間35内に集中してくさび状空間35から優先的に充填されることとなる。
以上のように、上記のマイクロ流路チップ10によれば、基本的には、第二流路25は、第一流路20を流通する検体から特定の成分を分離することが可能な幅を有するため、外部から遠心力などの運動学的作用を加えることなしに、微量の検体から特定の成分を分離することができる。
しかも、上記のマイクロ流路チップ10によれば、第二流路25によって分離されて測定部30に流入される特定の成分を、くさび状空間35による毛細管力によって当該くさび状空間35の狭小方向に集中させることができる。すなわち、測定部30の空間形状が例えば角柱状である構成のものにおいては、測定部30に流入した特定の成分は、連続する2つの測定部形成面(例えば底面と側壁面)の境界部分において生じる毛細管力によって、測定部形成面近傍位置において保持される。つまり、特定の成分は、測定部形成面近傍位置から徐々に充填されていくこととなるため、例えば濃度測定において必要とされる量の特定成分を充填するために、特定の成分の抽出量が膨大となり、長時間の時間を要する。また、特定の成分は、測定部形成面を伝って排出部(第二排出部28)にも到達し、測定部30内の空気の排出を阻害する。
然るに、測定部30を形成する空間の一部がくさび状空間35により形成されていることにより、上記のマイクロ流路チップ10によれば、必要量の特定の成分を効率よく検体から抽出することができ、後述する吸光度に基づく濃度測定において必要とされる光路長(測定部30に充填された特定の成分の厚みが例えば100μm)が確保される状態を短時間で得ることができる。
以上、本発明のマイクロ流路チップの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、上記のマイクロ流路チップにおいては、第二流路は、測定部における当該測定部が伸びる方向の全域にわたって形成されている必要はなく、例えば図7(a)および図7(b)に示すように、測定部30における定容積空間31の部分のみに形成された構成とされていてもよい。このような構成によっても、測定部30に流入した特定の成分をくさび状空間35の狭小方向に集中させることができる。また、チップ基体におけるくさび状空間を形成する内壁面(くさび状空間形成面)は、平坦面である必要はなく、図7(b)に示すように、内面形状が階段状に形成されていてもよい。さらにまた、図8に示すように、第二流路25は、面方向における測定部30の一側のみに形成された構成、すなわち、第一流路20における検体流通方向上流側に位置される直線状流路部分20aと測定部30とを連通させる第二流路25のみが形成された構成とされていてもよい。
さらにまた、上記のマイクロ流路チップにおいては、チップ基体の面方向に伸びる測定部の一端部分にくさび状空間が形成された構成とされているが、測定部の空間形状は、特に限定されるものではなく、くさび状空間は、例えば、面方向のいずれの方向に伸びるよう形成されていてもよく、また厚み方向に伸びるよう形成されていてもよい。
さらにまた、チップ基体は、複数の基板が接合されて構成され、第一流路、第2流路および測定部が三次元的に形成された構成とされていてもよい。
以下、上記のマイクロ流路チップを備えてなる本発明の検体濃度測定装置について説明する。
図9は、本発明の検体濃度測定装置の一例における構成を示す説明図である。
この検体濃度測定装置は、例えば、液状の検体である血液から検査対象成分であるビリルビンを含む血漿を分離してビリルビンの濃度を測定するものである。
図9に示す検査対象測定装置は、図1乃至図5に示す構成のマイクロ流路チップ10と、このマイクロ流路チップ10の測定部30における測定領域38に対して当該マイクロ流路チップ10の厚み方向に光を照射する光源40と、マイクロ流路チップ10における測定部30を含む領域の画像を撮像する撮像手段50と、撮像手段50によって撮像された画像に係る画像データに基づいて検査対象成分の濃度を算出する機能を有する制御機構60とを備えてなる。
光源40とマイクロ流路チップ10との間の光路上には、透過する光の波長域を制限する光学フィルタ45が配置されている。光学フィルタ45とマイクロ流路チップ10との間には、入射される光を平行化するレンズ48が配置されている。マイクロ流路チップ10と撮像手段50との間には、光源40から放射された光よりなる光像を拡大して撮像手段50に投影するレンズ51が配置されている。また、光源40は、当該光源40に電気を供給する電源41に電気的に接続されている。この電源41は、制御機構60に電気的に接続されている。
光源40としては、検査対象成分の濃度を測定するために必要な波長域を含む光を放射するものが用いられている。この例においては、血漿に含まれるビリルビンの濃度を測定するために必要な455nm近傍の波長域および575nm近傍の波長域を含む光を放射する光源40が用いられている。
このような光源40の具体例としては、互いに異なる波長域の光を放射する2種のLED素子、例えばピーク発光波長450nmのLED素子とピーク発光波長570nmのLED素子とにより構成されたものが挙げられる。
光学フィルタ45としては、透過する光の波長域を、検査対象成分の濃度を測定するために必要な波長域に制限するバンドパスフィルタが用いられている。この例においては、光学フィルタ45として、透過する光の波長域を、血漿に含まれるビリルビンの濃度を測定するために必要な455nm近傍の波長域および575nm近傍の波長域に制限するマルチバンドパスフィルタが用いられている。光学フィルタ45を透過する455nm近傍の波長域および575nm近傍の波長域のバンド幅は、それぞれ半値幅で10nm以上15nm以下である。
撮像手段50としては、マイクロ流路チップ10における測定部30を含む領域を撮像視野とする撮像素子を具備したものが用いられる。具体的には、撮像手段50の撮像素子の撮像視野は、マイクロ流路チップ10の撮像素子と対向する他面における、測定部30が位置する領域およびその周辺領域である。図示の例では、測定部30と共に第一流路20における直線状流路部分20a,20bの一部および複数の第二流路25の各々を含む領域が撮像素子の撮像視野とされており、この撮像視野を構成する領域の全域に、光源40からの光が放射される。
撮像手段50としては、例えばCMOS撮像素子を具備したCMOSカメラが用いられている。このCMOSカメラのCMOS撮像素子の撮像視野、すなわちCMOSカメラにおいて得られる画像サイズは、640×480ピクセル(マイクロ流路チップ10における縦横寸法1090×820μmの領域に相当)である。
レンズ51としては、例えばアクロマートレンズが用いられており、当該レンズ51による光像の拡大倍率は、例えば5倍である。
制御機構60は、撮像手段50の撮像素子によって撮像された画像に係る画像データを画像処理することによって、画像中の測定部30の位置(画素位置)の輝度を測定して血漿成分の吸光度を算出する機能を有する。また、光源40に電気を供給する電源41を制御する機能を有する。
この例においては、撮像手段50によって撮像された画像を画像処理することにより得られた画像データの青色の輝度値に基づいて波長455nmにおける吸光度A455 が算出されると共に、当該画像データの緑色の輝度値に基づいて波長575nmにおける吸光度A575 が算出される。ここで、吸光度A455 は、波長455nmにおけるビリルビンの吸光度および溶血ヘモグロビンの吸光度の和とみなすことができる。一方、A575 は、波長575nmにおける溶血ヘモグロビンの吸光度とみなすことができる。そして、波長575nmにおける溶血ヘモグロビンの吸光度は、波長455nmにおける溶血ヘモグロビンの吸光度に近似した値であることから、吸光度A455 から吸光度A575 を減じた値(A455 −A575 )を、波長455nmにおけるビリルビンの吸光度とみなすことができる。そして、吸光度と濃度とが比例関係にあること(ランベルト−ベールの法則)を利用して、予め取得した検量線とA455 −A575 の値とから、ビリルビンの濃度が算出される。
このような検体濃度測定装置においては、上述したように、マイクロ流路チップ10における測定部30(くさび状空間35)に、液状の検体(この例では血液)から分離された特定の成分(この例では検査対象成分であるビリルビンを含む血漿)が充填される。
そして、マイクロ流路チップ10の測定部30に特定の成分が充填された状態において、光源40から放射された光が、光学フィルタ45およびレンズ48を介して、マイクロ流路チップ10における測定領域38に照射される。光学フィルタ45を透過する光、すなわちマイクロ流路チップ10における測定領域38に照射される光の波長域は、当該光学フィルタ45によって455nm近傍の波長域および575nm近傍の波長域に制限される。その後、マイクロ流路チップ10における測定領域38を透過した光による光像が、撮像手段50によって撮像される。そして、撮像手段50によって得られた画像データに基づいて検査対象成分であるビリルビンの濃度が演算される。
上記の検体濃度測定装置によれば、マイクロ流路チップ10において検体から分離される必要量の特定の成分を、くさび状空間35による毛細管力によって、効率よく測定部30における測定領域38に貯留(充填)させることができるので、高い検査効率を得ることができる。また、光源40からの光が照射されるマイクロ流路チップ10の測定領域38は、厚みが一定の大きさとされているため、光路長を一定にすることができて特定の成分の濃度を高い信頼性で測定することができる。
本発明の検体濃度測定装置は、上記構成のものに限定されるものではなく、図10に示されるように、例えばピーク発光波長450nmの光を放射するLED素子を備えた第一の光源40aと、例えばピーク発光波長570nmの光を放射するLED素子を備えた第二の光源40bとが別個に設けられた構成とされていてもよい。この検体濃度測定装置においては、第一の光源40aは、マイクロ流路チップ10における測定部30に対向するよう配置され、第二の光源40bは、第一の光源40aからの光の光路に対して垂直な方向に向いた状態で配置されている。第一の光源40aおよび第二の光源40bは、電源41に電気的に接続されている。第一の光源40aからの光の光路と第二の光源40bからの光の光路との交点位置には、第一の光源40aからの光を透過すると共に第二の光源40bからの光を反射するダイクロイックミラー42が、第一の光源40aからの光の光路および第二の光源40bからの光の光路の各々に対して45°に傾斜した状態で配置されている。
第一の光源40aとダイクロイックミラー42との間の光路上には、透過する光の波長域を制限する第一の光学フィルタ46aが配置されている。第一の光学フィルタ46aとダイクロイックミラー42との間には、入射される光を平行化するレンズ49aが配置されている。第二の光源40bとダイクロイックミラー42との間の光路上には、透過する光の波長域を制限する第二の光学フィルタ46bが配置されている。第二の光学フィルタ46bとダイクロイックミラー42との間には、入射される光を平行化するレンズ49bが配置されている。図10に示す検体濃度測定装置におけるその他の構成は、図9に示す検体濃度測定装置における構成と同様である。
この検体濃度測定装置においては、マイクロ流路チップ10の測定部30に対して、第一の光源40aから光を照射する動作および第二の光源40bから光を照射する動作は、同時に行われてもよいが、いずれか一方の動作が行われた後、他方の動作が行われてもよい。
〈実施例1〉
(1)第一基板および第二基板の製造
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)社製「ノバック(R)PP」)50質量部と、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合物((株)クラレ社製「ハイブラー7311」,ポリスチレンブロックの含有率=12質量%)50質量部とを、加熱混練することにより、特定の樹脂組成物を調製した。得られた特定の樹脂組成物の融点は、142℃、荷重たわみ温度は、43℃、ガラス転移温度は−35℃であった。
次いで、調製した特定の樹脂組成物を射出成形することにより、表面に第一流路用溝および測定部用凹所が形成された第一基板、並びに表面に第二流路用溝が形成された第二基板を製造した。
得られた第一基板において、第一流路用溝は、検体導入部(21)から第一排出部(23)までの全長が50mm(図1参照)、第一基板の厚み方向の幅(深さ)が100μm、第一基板の面方向の幅が300μmである。
測定部用凹所は、図2乃至図4を参照すると、全長(複数の第二流路が形成される部分の長さ)が15mm、くさび状空間(35)の長さ(L1)が1mm、測定領域の長さ(L2)が0.5mmである。また、定容積空間(31)を形成する部分における第一基板の厚み方向の寸法(D)が100μm、開口端面における第一基板の面方向の寸法(W1)が200μm、定容積形成空間を形成する一対の定容積空間形成面(32a,32b)が測定部用凹所の底面に対してなす角(γ1,γ2)は、85°である。また、くさび状空間(35)の先端傾斜角(α)が45°、くさび状空間(35)の開き角(β)が11.4°、測定領域の長さ方向の一端位置での、開口端面における第一基板の面方向の寸法(W2)が20μmである。
また、得られた第二基板において、第二流路用溝は、長さが0.5mm、第二基板の厚み方向の幅(深さ)が2μm、第二基板の面方向の幅が50μmであり、第二流路用溝の数は300である。隣接する第二流路用溝間の間隔は同一の大きさ(等間隔)である。
(2)第一基板および第二基板の表面活性化処理
得られた第一基板における第一流路用溝および測定部用凹所の表面を含む接合面、並びに第二基板における第二流路用溝を含む接合面に対して、真空紫外線を照射することによって、表面活性化処理を行った。表面活性化処理が施された表面について、水の接触角を測定したところ、45°であった。
以上において、真空紫外線の照射による表面活性化処理は、紫外線光源としてキセノンガスを封入したエキシマランプを用い、波長172nmの真空紫外線を照度30mW/cm2 の条件で10分間照射することにより行った。
(3)マイクロ流路チップの製造
第二基板の接合面上に、第一基板を位置合わせした状態で重ね合わせて接触させた。そして、第一基板および第二基板を60℃で加熱することにより、第一基板と第二基板とを自己融着性を利用して接合し、以て、マイクロ流路チップを製造した。
得られたマイクロ流路チップにおいて、第一流路の上流側端から、当該第一流路の最も上流側において分岐した第二流路との分岐点までの長さは、5mmである。
また、得られたマイクロ流路チップの第二流路を顕微鏡によって観察したところ、変形等の異常は認められなかった。
(4)試験
上記のマイクロ流路チップに、水を試験用流体として導入し、経過時間に対する測定部への試験用流体の充填量(貯留長)を調べた。結果を、図11において曲線a(四角印のプロット)で示す。ここに、測定部における試験用流体の貯留長とは、くさび状空間と定容積空間との境界位置からの測定部の伸びる方向における長さをいう。
〈比較例1〉
長さ方向においてほぼ一定の空間形状を有する測定部用凹所(くさび状空間を有さず、定容積空間のみからなる測定部用凹所)を形成したことの他は、実施例1において作製したものと同一の構成を有する比較用の第一基板を作製した。この比較用の第一基板における測定部用凹所は、全長(複数の第二流路が形成される部分の長さ)が20mm、第一基板の厚み方向の寸法が100μm、開口端面における第一基板の面方向の寸法が200μm、一対の測定部形成面が測定部用凹所の底面に対してなす角は、85°である。
この比較用の第一基板を用いたことの他は、実施例1と同様にして、比較用のマイクロ流路チップを作製し、マイクロ流路チップに、水を試験用流体として導入し、経過時間に対する測定部への試験用流体の充填量(貯留長)を調べた。結果を図11において曲線b(丸印のプロット)で示す。
以上の結果より、実施例1に係るマイクロ流路チップによれば、試験用流体を効率よく測定部に充填することができることが確認された。従って、実際の検体濃度測定において必要とされる量の検査対象成分を、検体から短時間で抽出することができることが期待される。
また、実施例1において作製したマイクロ流路チップに、ヒトの血液5μLを導入し、10分間放置した後、マイクロ流路チップの測定部に充填された液体の分光吸収スペクトルを測定したところ、測定部に充填された液体は血漿成分であり、血液から血漿成分が分離されていることが確認された。
10 マイクロ流路チップ
11 チップ基体
12 第一基板
13a 第一流路用溝
13b 測定部用凹所
15 第二基板
16 第二流路用溝
20 第一流路
20a 直線状流路部分
20b 直線状流路部分
21 検体導入部
22 検体貯留部
23 第一排出部
25 第二流路
27 第三流路
28 第二排出部
30 測定部
30a 上底面
30b 下底面
31 定容積空間
32a 定容積空間形成面
32b 定容積空間形成面
35 くさび状空間
36a くさび状空間形成面
36b くさび状空間形成面
38 測定領域
40 光源
40a 第一の光源
40b 第二の光源
41 電源
42 ダイクロイックミラー
45 光学フィルタ
46a 第一の光学フィルタ
46b 第二の光学フィルタ
48 レンズ
49a レンズ
49b レンズ
50 撮像手段
51 レンズ
60 制御機構
C 稜線
PL 特定の成分

Claims (5)

  1. 液状の検体を流通させる第一流路と、この第一流路から分岐して形成された、前記第一流路を流通する検体から特定の成分を分離することが可能な幅を有する当該第一流路に連通する第二流路と、当該第二流路に接続された、前記検体から分離された特定の成分が充填される測定部とを内部に有する板状体よりなり、
    前記測定部を形成する空間の少なくとも一部が、一方向に向かうに従って徐々に隙間が小さくなるくさび状空間により形成されており、
    前記一方向をx方向とするxyz直交座標を想定したとき、
    前記くさび状空間は、y方向からの平面視にて表わされるz方向において互いに対向する一対のくさび状空間形成面がくさび状をなす部分を有し、
    前記測定部は、前記くさび状空間に連続する、yz断面の断面形状が矩形状とされた定容積空間を有しており、
    当該定容積空間のyz断面において表わされる連続する2つの定容積空間形成面がなす角をγ、前記くさび状空間のy方向からの平面視にて表わされる前記一対のくさび状空間形成面がなす角をαとしたとき、前記くさび状空間は、α<γの関係を満足する空間形状を有することを特徴とするマイクロ流路チップ。
  2. 前記くさび状空間は、z方向からの平面視にて表わされるy方向において互いに対向する一対のくさび状空間形成面がくさび状をなす部分を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  3. 前記くさび状空間のz方向からの平面視にて表わされる前記一対のくさび状空間形成面がなす角をβとしたとき、前記くさび状空間は、β<γの関係を満足する空間形状を有することを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流路チップ。
  4. 前記くさび状空間は、y方向の寸法またはz方向の寸法が一定の大きさとされた測定用領域を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のマイクロ流路チップ。
  5. 請求項4に記載のマイクロ流路チップと、
    このマイクロ流路チップにおける前記測定用領域に光を照射する光源と、
    前記マイクロ流路チップにおける測定領域を含む領域の画像を撮像する撮像手段と、
    この撮像手段によって取得された画像データに基づいて前記特定の成分の濃度を算出する機能を有する制御機構と
    を備えてなることを特徴とする検体濃度測定装置。
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