JP2014109564A - 標的物質検出用マイクロチップ - Google Patents

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勇次 山瓶子
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Abstract

【課題】標的物質を高感度で検出可能な、標的物質検出用チップを提供すること。
【解決手段】マイクロ流路を有するマイクロチップであって、該マイクロ流路がフェムト秒レーザー照射領域を有し、少なくとも該照射領域はPMMAからなる、マイクロチップ。
【選択図】なし

Description

本発明は、標的物質検出用マイクロチップに関する。
抗原抗体反応を利用した微量タンパク質の検出法のうち最も一般的な方法の一つとしてELISA法が挙げられる。当該方法では、通常、96穴マイクロプレートのウェル内でサンプルと試薬を反応させている。これに対し、マイクロ流路内に抗体等を固定化してその周辺を反応場とし、流路にサンプル及び検出用試薬を順次流して検出を行うマイクロ流路型チップを用いる方法もある。マイクロ流路型チップは、検出迅速性、省サンプル性、省試薬性の点で優れており、現在様々な研究が進められている。
抗体の固体化方法としては、抗体を固定した固体微粒子を流路内に充填し,サンプルを作用させる方法(特許文献1)や、マイクロ流路の一部に直接抗体を固定化する方法(特許文献2及び3)等が知られている。特に、基板表面に化学的処理としてポリマー膜を形成、又はレーザー照射を行うことで、抗体の固定化能を高めた表面上に、インクジェット法で抗体溶液を吐出して固定化する方法が知られている。このような抗体固定化法を用いる場合、例えば次の(1)〜(3)に挙げるような問題があった。
すなわち、(1)インクジェット法は基本的に吐出方向の精度が高い方法であるが、使用する抗体溶液の組成及び濃度によっては、吐出方向がばらつき、狙った位置に抗体溶液が付着しない場合がある。この場合、検出領域(抗体が付着した領域)の形状が一定にならなかったり、溶液が流路壁面に付着して形状が大きく変化したりして、チップとしての検出感度再現性が低下する。また、(2)インクジェットの吐出方向が安定であっても、チップ基板の接触角、抗体溶液の粘性等により、試料の広がり方が異なり、検出領域の面積や形状が一定にならない。さらにまた、(3)チップの感度向上のために抗体の固定化密度を上げるには,高濃度の抗体溶液を吐出することが考えられるが、濃度が上がるほど安定吐出が難しくなる。
特開2001−004628号公報 特開2004−317128号公報 特開2010−008109号公報
本発明は、(好ましくは多種類の)標的物質を高感度で検出可能な、標的物質検出用チップを提供することを目的とする。特に、インクジェットにより抗体等の溶液を吐出し、所望の位置に所望の形状で抗体等を固定化した検出領域を流路内に製造し、当該検出領域を備えた標的物質検出用チップを提供することを目的とする。
本発明者らは、驚くべき事に、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂に対してフェムト秒レーザーを照射した場合、そのフェムト秒レーザー照射領域は、親水性が向上し、且つ、抗体固定化効率が向上することを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
マイクロ流路を有するマイクロチップであって、
該マイクロ流路がフェムト秒レーザー照射領域を有し、
少なくとも該照射領域はPMMAからなる、
マイクロチップ。
項2.
フェムト秒レーザーのパルス幅が、1ピコ秒未満である、項1に記載のマイクロチップ。
項3.
フェムト秒レーザーの波長が、500〜1500nmである、項1又は2に記載のマイクロチップ。
項4.
フェムト秒レーザーのフルエンスが2J/cm以上である、項1〜3のいずれかに記載のマイクロチップ。
項5.
フェムト秒照射領域に、標的認識タンパク質が固定化された、項1〜4のいずれかに記載のマイクロチップ。
項6.
PMMAからなる領域を有するマイクロ流路を有するマイクロチップにおいて、前記PMMAからなる領域にフェムト秒レーザーを照射することを含む、項1〜5のいずれかに記載のマイクロチップを製造する方法。
項7.
PMMAにフェムト秒レーザーを照射し、該照射領域の親水性及びタンパク質固定化効率を向上させる方法。
本発明に係るチップは、PMMAにフェムト秒レーザーを照射してなるフェムト秒レーザー照射領域を有しており、当該領域は、フェムト秒レーザーを照射していない領域に比べ、(i)親水性が向上し、且つ、(ii)標的認識タンパク質固定化効率が向上している。よって、(i)の効果のために、フェムト秒レーザー照射領域に標的認識タンパク質溶液が容易にまんべんなく広がることとなり、標的認識タンパク質を所望の領域に容易に固定化することが可能となる。また、(ii)の効果のために、固定化できる標的認識タンパク質量が増加でき、従って検出感度を向上させることができる。
マイクロチップを用いた標的物質の測定の一態様の概要を示す。 フェムト秒レーザー照射領域及び該領域への抗体溶液吐出時状況を示す。 フェムト秒レーザー照射領域への抗体固定化の検討の概要、及び固定化後のチップを用いて検出されたシグナルの写真を示す。 図3で検出されたシグナルの強度をグラフ化した図である。 COCチップ及びPMMAチップにおいて、フェムト秒レーザーを照射して抗体固定化を検討した際の、検出シグナルの写真を示す。 図5で検出されたシグナルの強度をグラフ化した図である。 フルエンスの差によって抗体固定化量に差がみられるのか検討した際の、検討概要及び検出シグナルの写真を示す。 図7で検出されたシグナルの強度をグラフ化した図である。 レーザー照射面積による抗体固定化能の比較を検討した際の、検討概要を示す。 レーザー照射面積による抗体固定化能の比較を検討した際の、検出シグナルの写真を示す。 図10で検出されたシグナルの強度をグラフ化した図である。 レーザー照射領域の親水性効果及び標的認識タンパク質固定化効果の持続性を検討した際の、検討概要及び検出シグナルの写真を示す。 図12で検出されたシグナルの強度をグラフ化した図である。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明は、マイクロ流路を有するマイクロチップであって、該マイクロ流路がフェムト秒レーザー照射領域を有し、少なくとも該照射領域はPMMAからなる、マイクロチップに係る。
本発明のチップは、1又は2以上のマイクロ流路を有する。ここで、マイクロ流路は、微量の試料(液体)を流す微小な流路である。例えば、その幅は数μm以上数千μm以下、深さは数μm以上数千μm以下程度である。なお、当該マイクロ流路は、チップ表面に溝として存在してもよく、チップ内部に管路状で存在してもよい。なお、“マイクロチップ”とはマイクロ流路を有するチップということを示しており、チップ自体がマイクロオーダーの大きさということではない。
本発明のチップが有するマイクロ流路は、フェムト秒レーザーが照射されてなるフェムト秒レーザー照射領域を有する。当該領域は、1つのマイクロ流路に1又は2以上存在してよい。また、当該領域の形状や面積はマイクロ流路内に存在できれば特に制限はされない。形状としては、例えば円状や四角形状(特に長方形状)が例示できる。また、面積としては、例えば好ましくは0.0001〜1mm程度、より好ましくは0.001〜0.5mm程度、さらに好ましくは0.01〜0.3mm程度、が例示できる。
用いるフェムト秒レーザーのパルス幅は、フェムト秒オーダー以下(すなわち、1ピコ秒未満)であれば特に制限はされない。例えば800〜0.1フェムト秒が好ましく、600〜1フェムト秒がより好ましく、400〜50フェムト秒がさらに好ましい。
また、フェムト秒レーザーの波長は、本願発明の効果が得られる限り特に制限はされないが、例えば500〜1500nm程度が好ましく、600〜1300nm程度がより好ましく、700〜1100nm程度がさらに好ましい。
また、フェムト秒レーザーのフルエンスは、本願発明の効果が得られる限り特に制限はされないが、例えば2J/cm以上が好ましく、2.5J/cm以上がより好ましく、3J/cm以上がさらに好ましく、3.5J/cm以上がよりさらに好ましい。
フェムト秒レーザー照射領域は、マイクロ流路内に存在していればよい。例えばマイクロ流路部分のチップの断面図が凹状であれば、当該領域はマイクロ流路の底面又は側面に存在することが好ましく、底面に存在することがより好ましい。
本発明のマイクロチップにおいて、フェムト秒レーザー照射領域は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)からなる。言い換えれば、マイクロ流路内のPMMAからなる領域にフェムト秒レーザーを照射することにより、「フェムト秒レーザー照射領域」が製造される。マイクロ流路全体、若しくはマイクロチップ全体がPMMAからなることが好ましいが、少なくともフェムト秒レーザーを照射する領域がPMMAからなれば、特に制限はされない。PMMAに対してフェムト秒レーザーを照射して得られるフェムト秒レーザー照射領域であるからこそ、本願発明の効果が好ましく奏される。
上記フェムト秒レーザー照射領域に標的認識タンパク質を固定化することにより、当該標的認識タンパク質が認識する物質(標的物質)をマイクロ流路に流した際、当該標的認識タンパク質が標的物質と結合するため、本発明のマイクロチップは当該標的物質を検出するために好ましく用いることができる。結合した標的物質を検出する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、当該標的物質を認識する抗体を用いて、ELISA法により検出することができる。
標的認識タンパク質は、標的物質と結合することが知られているタンパク質であれば特に制限されない。例えば、抗体を好ましく用いることができる。この場合、標的物質は抗原である。もちろん、標的認識タンパク質として抗原を用い、抗体を標的物質にすることも可能である。また例えば、レクチンやプロテインAやプロテインGなどを標的認識タンパク質として用いることもできるし、あるいは標的物質とすることもできる。
標的物質は、検出対象となる物質であり、特に制限されるものではなく、例えばタンパク質、核酸、糖鎖、細胞、種々の高分子化合物、低分子化合物などが例示できる。
フェムト秒レーザー照射領域は、レーザー照射から長時間(例えば1週間以上、あるいは数週間以上)経っても、(i)親水性が向上し、且つ、(ii)標的認識タンパク質固定化効率が向上するという効果を保持する。このため、本発明のマイクロチップは、市場に流通させる場合においても、流通期間の間に効果が低下しにくく、この点でも有利である。もちろん、フェムト秒レーザー照射領域に標的認識タンパク質を固定化してから市場に流通させてもよい。
マイクロ流路をチップに形成する方法としては、例えば射出成形やレーザー加工など、固相基板の微細加工に用いられる公知の方法を用いることができる。マイクロ流路がチップ表面に存在する溝である場合は、このような公知の方法により、基板表面に溝を作製すればよい。また、マイクロ流路がチップ内部に存在する管状のものである場合は、基板内部を切削加工等により管路状にくり抜くなどして形成することも可能であるが、後述する検出用タンパク質の固定化を容易に行うため、例えば次のようにして形成することが好適である。すなわち、例えばまず基板表面に溝を形成し、次に当該溝の開口部をフィルム又は基板等のカバー部材でカバー(被覆)することにより、チップ内部に管状のマイクロ流路を形成することができる。
ここでカバー部材としては特に限定されるものではないが、検出物質の検出に光学的手法を使用可能とするため、透光性を有するものが好ましい。また、該カバー部材の厚さは透光性を確保できる厚さ(カバー部材の材質にもよるが、例えば10〜100μm程度)であることが好ましい。また、マイクロ流路に注入する試料溶液が漏れ出さないよう、密着性に優れるものが好ましい。例えば、抗原抗体反応を妨げない粘着剤の付いたシート又は基板等でできたカバー部材(例えばアクリルシート、アクリル板、PMMAシート、PMMA板、COCシート、COC板など)を、基板に形成した溝全体にわたって貼り付けて被覆することができる。
本発明のチップが有するマイクロ流路は、標的物質を含有する試料が(好ましくは毛細管現象により)流れて通過できるように構成される。
標的認識タンパク質をマイクロ流路(のフェムト秒レーザー照射領域)に固定化する方法としては、例えば、標的認識タンパク質を、立体構造をできるだけ安定に保ち得る液体(例えばリン酸緩衝液、PBS等)に溶解させ、これをインクジェット方式で吐出して固定化する方法が好ましく挙げられる。当該方法を用いる場合は、フェムト秒レーザー照射領域へ吐出して固定化した後、フィルム又は基板等のカバー部材でマイクロ流路の開口部を被覆して、マイクロ流路を溝状ではなく管状としてもよい。標的認識タンパク質を溶解させた吐出用の溶液の濃度としては、使用する標的認識タンパク質等に応じて適宜設定できる。また、吐出される1滴の溶液量も、使用する標的認識タンパク質等に応じて適宜設定できる。例えば、1〜1000pl(ピコリットル)、特に3〜500pl、なかでも10〜200plであることが好ましい。
なお、特に制限されるものではないが、各フェムト秒レーザー照射領域は、マイクロ流路中にほぼ等間隔で存在することが好ましい。
また、標的認識タンパク質溶液を吐出した後、静置することで、標的認識タンパク質をフェムト秒レーザー照射領域へと固定化することができる。例えば、室温で4〜24時間静置することで標的認識タンパク質を固定することができる。また、固定後、フェムト秒レーザー照射領域を、0.5〜2時間程度ブロッキング液で処理することが好ましい。当該処理を行うには、具体的には、例えば、マイクロ流路にブロッキング液を満たして静置させればよい。ブロッキング液を排出させた後、マイクロ流路を洗浄するのがさらに好ましい。当該洗浄は、具体的には、例えば洗浄液(例えばPBS, 0.05 % Triton X-100)でマイクロ流路に満たした後排出する、という操作により行い得る。洗浄は複数回(好ましくは2〜3回)行ってもよい。なお、ブロッキング液としては、スキムミルク溶液、BSA溶液、プロテインフリーの高分子ポリマーや化学合成剤等が好適である。
本発明のチップは、さらに、マイクロ流路の一端に、試料を注入するための試料注入部を有してもよい。試料注入部への試料の注入方法は特に制限されないが、ピペット、マイクロピペット、シリンジ等、少量の溶液試料の注入に好ましい用具を用いて行い得る。
試料注入部は、検査したい試料液を注入する部位であり、ここに注入された試料液は、マイクロ流路へ流入するよう、試料注入部は構成されている。試料注入部は、試料を注入しやすいよう、マイクロ流路にくらべ幅が大きい領域であることが好ましいが、試料液の注入が可能であれば、単にマイクロ流路の一端を試料注入部として用いてもよい。マイクロ流路への流入は、落下、気圧、電荷等を操作することにより行われてもよいが、特に毛細管現象により起こることが好ましい。
本発明のチップは、さらに、マイクロ流路の試料注入部と逆端に、試料貯留部を有してもよい。試料貯留部は、マイクロ流路を流れてきた試料が貯留される部位である。試料注入部に注入された試料が毛細管現象により全量又はその一部が当該部位まで流れ、貯留される。従って、試料貯留部は、マイクロ流路の端(試料注入部とは異なる端)に存在する。なお、毛細管現象によりマイクロ流路へと供給された溶液は、その後、シリンジ等を用い空気圧により試料貯留部へと排出されてもよい。試料貯留部に貯留された試料は、その後適宜回収され、再利用あるいは廃棄等され得る。当該回収方法は特に制限されないが、ピペット、マイクロピペット、シリンジ等、少量の溶液試料の回収に好ましい用具を用いて行い得る。
このように、マイクロ流路の一方の端に試料注入部が存在してもよく、また、もう一方の端に試料貯留部が存在していてもよい。なお、試料注入部は、試料全量の注入が可能となる容積を有することが好ましい。また、試料貯留部は、試料全量の貯留が可能となる容積を有することが好ましい。通常、試料注入部及び試料貯留部は貫通していない穴であり、円筒状である場合、例えばその直径は0.5〜3mm、好ましくは1〜2mmである。穴の深さは、基板の厚み及びマイクロ流路の位置に応じて適宜設定することができる。
試料注入部及び試料貯留部は、例えば射出成形や切削加工など、固相基板の微細加工に用いられる公知の方法により、基板を貫通しない穴をマイクロ流路に接続して形成することで作製できる。また、例えば、固相基板を貫通する穴を作製し、当該穴をカバー部材でカバー(被覆)して貫通を無くすることで、試料注入部及び試料貯留部を作製することができる。
なお、上述のように、例えばまず基板表面に溝を形成し、次に当該溝の開口部を、フィルム又は基板等のカバー部材でカバー(被覆)することにより、チップ内部にマイクロ流路を形成することができるが、このとき基板において当該溝の両端に貫通穴を作製しておけば、当該溝及び貫通穴をカバー部材で被覆することで、両端に試料注入部及び試料貯留部を備えたマイクロ流路を有するチップを製造することができる。特にこの場合は、当該チップは、カバー部材側を下にして、カバー部材が試料注入部、試料貯留部、マイクロ流路の底になるようにして使用する。
カバー部材としては、例えば上述のものを使用できる。
また、本発明のチップを備える、標的物質検出用キットも、本発明に包含される。このようなキットとしては、本発明のチップの他、標的認識タンパク質や、標的物質を標的認識タンパク質と反応(結合)させて検出する実験(例えば抗原抗体反応検出実験)に用いられる各種試薬(例えば緩衝液、洗浄液)、等を備えたものが好ましい。
また、本発明は、本発明のチップの製造方法も包含する。具体的には、本発明は、PMMAからなる領域を有するマイクロ流路を有するマイクロチップにおいて、前記PMMAからなる領域にフェムト秒レーザーを照射することを含む、本発明のマイクロチップを製造する方法を包含する。当該製造方法でのフェムト秒レーザー照射条件は上述の通りである。
また、本発明は、PMMAにフェムト秒レーザーを照射し、該照射領域の親水性及びタンパク質固定化効率を向上させる方法も包含する。当該方法でのフェムト秒レーザー照射条件は上述の通りである。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
<フェムト秒レーザー>
フェムト秒レーザーの照射条件は、特に断らない限り、次の通りである。
・使用レーザー機器: Ifritフェムト秒レーザー装置(サイバーレーザー株式会社製)
・波長:780nm
・繰り返し周波数:1kHz
・パルス幅:206fs(206フェムト秒)
・フルエンス:5.10J/cm2
・照射の際、移動速度200μm/sでステージを移動させ、照射領域全体に照射した。
<使用マイクロチップ>
検討には、以下のPMMA基板又はCOC基板を特別発注して入手し、検討に用いた。なお、PMMAはポリメタクリル酸メチルの略記であり、COCはシクロオレフィンコポリマーの略記である。
・PMMA基板(スターライト工業(株)社製:射出成型)
・COC樹脂基板(住友ベークライト(株)社製:BS-X2322 )
チップサイズは、縦70mm、横30mm、厚さ1mmとした。
また、各チップはマイクロ流路(具体的には、全長6cm、断面形状は長方形、幅300μm、深さ100μmの直線上の溝)を備え、この両端に、円形状の貫通穴を有する(当該両端の貫通穴は、チップ片面側の穴をカバーなどして塞ぐことで、試料注入部及び試料貯留部となる)。両端の貫通穴はいずれも直径1mmの円筒状である。
以下、PMMAチップ又はCOCチップと称する場合、これらのチップは上記のチップサイズ並びに上記マイクロ溝及び貫通穴を備える。
<使用抗体およびその固定化>
フェムト秒レーザーを照射した領域(フェムト秒レーザー照射領域)に固定化する標的認識タンパク質としては、抗体を用いた。具体的には、CircuLex Human Adiponectin ELISA Kit(CycLex製)に含まれる抗アディポネクチン抗体(一次抗体)の溶液を、抗体固定化用固相液(住友ベークライト製:BS-X2330)で適宜希釈したものを、インクジェット方式[ヘッド部分(クラスターテクノロジー(株)社製パルスインジェクター)、駆動回路部分(WaveBuilderTM]により吐出して、マイクロ流路(フェムト秒レーザー照射領域等)に抗体を固定化した。吐出時の抗体溶液一滴の容量は約40pl(ピコリットル)とした。なお、当該一次抗体の溶液は、特別発注して入手した。
<測定手順>
標的認識タンパク質(ここでは抗体)が固定化されたフェムト秒レーザー照射領域を有するマイクロ流路を備えるマイクロチップに標的物質を含む溶液を流し、当該標的物質を測定した。測定は特開2010−156585号公報の実施例に記載される方法に準じて行った。具体的には、次のようにして行った。
マイクロチップのマイクロ流路及び両端の貫通穴がカバー(被覆)されるように、アクリルシート(アクリル33μm厚、粘着剤47μm厚)を貼り付け、マイクロ流路の両端に試料注入部及び試料貯留部を作製した。
そして、当該チップの試料注入部に、ブロッキング液(住友ベークライト) 3μLをマイクロピペットにて各レーンの試料注入部にのせ、毛細管現象によりマイクロ流路を通じて試料貯留部まで流すことにより、流路内部をブロッキング液で満たした。室温にて1時間静置後、流路内部の溶液をシリンジを用い空気圧で排出させた後、同様の方法で洗浄液(PBS, 0.05% Triton X-100)を流路内部に導入し洗浄を行った。当該洗浄液による洗浄は3回行った。
次に、CircuLex Human Adiponectin ELISA Kit(CycLex製)のプロトコールに従い、アディポネクチンを、Dilution Bufferにて適宜希釈して、アディポネクチン濃度を調整した溶液を調製して試料液とした。なお、アディポネクチン及びDilution Bufferは、いずれもCircuLex Human Adiponectin ELISA Kitに含まれているものを使用した。
その後、当該試料液(抗原であるアディポネクチンの溶液)3μLをマイクロピペットにて試料注入部にのせ、毛細管現象により各マイクロ試料排出部まで流し、流路内部を溶液で満たした。室温にて20分静置後、流路内部の溶液をシリンジを用い空気圧で排出させた後、同様の方法で洗浄液(PBS, 0.05% Triton X-100)を流路内部に導入し洗浄を行った。当該洗浄は5回行った。次に、二次抗体溶液3μLをマイクロピペットにて試料注入部にのせ、毛細管現象により各マイクロ試料排出部まで流し、流路内部を溶液で満たした。室温にて20分静置後、流路内部の溶液をシリンジを用い空気圧で排出させた後、同様の方法で洗浄液(PBS, 0.05% Triton X-100)を流路内部に導入し洗浄を行った。当該洗浄は5回行った。なお、用いた二次抗体溶液はCircuLex Human Adiponectin ELISA Kitに含まれているものであり、当該二次抗体は、ぺルオキシダ―ゼで標識された抗アディポネクチン抗体である。
さらに、発光基質としてSuperSignal West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Thermo Scientific社)を用い、化学発光検出を行った。ペルオキシダーゼ活性により生じた化学発光は、GE ヘルスケア(株)社ImageQuant LAS4000のCCDカメラにて検出(露光時間5分)した。また、得られた化学発光シグナル強度を、ImageQuantTLソフトウェアを用いて定量化した。
なお、試料の注入時はアクリルシート部をチップの底とした。また、化学発光検出は、アクリルシート部をチップ上部とし、アクリルシート側から発光測定を行った。当該測定の一連の流れの概要を、図1に示す。
1.流路底面へのレーザ照射による抗体溶液の制御
PMMAチップのマイクロ流路底面に、任意の形状(具体的には長方形又は円形)にフェムト秒レーザーを照射し、フェムト秒レーザー照射領域を製造した。さらに、当該領域に抗体溶液100滴を吐出したところ、当該領域内へは速やかに溶液が広がり、当該領域外へは広がらないことが確認できた。このことから、フェムト秒レーザー照射領域は親水性であり、抗体を所望の領域に容易に固定化することが可能であることが確認できた。なお、マイクロ流路内のフェムト秒レーザー非照射領域においても抗体溶液100滴を吐出したが、流路壁面に溶液が付着してしまう場合があった(図2)。
2.流路底面のレーザー照射領域への抗体固定化
PMMAチップの1つのマイクロ流路(Lane1)において、フェムト秒レーザー照射領域(長方形)を3領域製造した。同様の操作を他3つのマイクロ流路(Lane2〜4)にも行った。そして、これらのマイクロ流路の各フェムト秒レーザー照射領域に抗体溶液を100滴ずつ吐出して抗体を固定化した。そして、Lane1にはDilution Buffer(CircuLex Human Adiponectin ELISA Kitに含まれているもの)を、Lane2〜4には、試料液(アディポネクチン濃度320ng/mL)を、それぞれ流し、さらに発光基質を反応させ、ペルオキシダーゼ活性により生じた化学発光シグナル強度を測定した。当該実験の概要を図3に示す。図3の左下が、化学発光シグナルの写真である。また、測定した化学発光シグナル強度をグラフ化して図4に示す。なお、図中ではLane1〜Lane4をそれぞれL1〜L4と示すことがある。
図3及び図4より、フェムト秒レーザーで表面加工を行った領域においてアディポネクチンを検出する事ができていることから、抗体固定化が非常に効率よく行えている事が確認できた。 また、抗体固定化の際に広がりやすく壁に付着しにくいことから、広がり面積を制御しやすく、結果として、シグナル強度のばらつきを小さく抑えられていることが見て取れた。
3.COCチップに対するフェムト秒レーザー照射による抗体固定化の検討
COCにフェムト秒レーザー照射を行っても同様の効果が得られるのかを検討するため、PMMAチップの代わりにCOCチップを用いて上記と同様の検討(ただし、試料液のアディポネクチン濃度は0又は1.25μg/mLとした)を行った。また、比較のためPMMAチップを用いた検討も一緒に行った。測定結果(化学発光シグナルの写真)を図5に示す。また、測定した化学発光シグナル強度をグラフ化して図6に示す。
図5及び図6より、COC基板に対して フェムト秒レーザーを照射した領域には発光が見られず、抗アディポネクチン抗体(一次抗体)が固定化されていない事が確認された。
4.レーザーフルエンスに対する抗体固定化の検討
レーザー照射時に焦点位置をずらすことにより、フルエンス(単位面積あたりのエネルギー量)を変化させ、フルエンスの差によって抗体固定化量に差がみられるのか検討した。
具体的には、PMMAチップの各マイクロ流路において、フルエンス5.10J/cmで1回、3.82J/cmで1回、1.52J/cmで1回、又は1.52J/cmで3回(すなわち総照射量は4.56J/cm)フェムト秒レーザーを照射してフェムト秒レーザー照射領域を製造した。各フルエンスのフェムト秒レーザー照射領域は3領域ずつ製造した。そして、上記と同様(ただし、試料液のアディポネクチン濃度は0又は320ng/mLとし、本検討では0ng/mLはlane2とした)の検討を行った。測定結果(化学発光シグナルの写真)を図7に示す。また、測定した化学発光シグナル強度をグラフ化して図8に示す。
図7及び図8より、フルエンスが弱くても抗体固定化効率は高まるが、特に2J/cm以上のフルエンスでのフェムト秒レーザー照射により、著しく抗体固定化効率が高まることがわかった。さらに、2J/cmより小さいフルエンスでのフェムト秒レーザー照射を繰り返して総照射量を大きくしても、抗体固定化効率は著しくは高まらないこと(すなわち、抗体固定化効率は総照射量ではなくフルエンスにより左右され得ること)もわかった。
5.レーザー照射面積による抗体固定化能の比較
フェムト秒レーザー照射領域の面積サイズに応じて抗体固定化量を示す発光強度が変わるか確認を行った。
具体的には、横×縦が380μm×200μmの長方形のフェムト秒レーザー照射領域を基準として、この2倍、3倍、又は4倍の面積を有するフェムト秒レーザー照射領域を横の長さを変化させることにより製造し、また、この面積サイズに応じて、吐出する抗体溶液量も、100滴、200滴、300滴、400滴、と変化させた。そして、上記と同様(ただし、試料液のアディポネクチン濃度は0又は20μg/mLとし、本検討では0ng/mLはlane3とした)の検討を行った。本検討の概要を図9に、測定結果(化学発光シグナルの写真)を図10にそれぞれ示す。また、測定した化学発光シグナル強度をグラフ化して図11に示す。
フェムト秒レーザー照射領域の面積サイズが大きくなるにつれ、発光強度も強くなることが確認できた。これは、ある程度予測できた結果ではあるが、領域面積が広くなると抗体固定化の際に抗体溶液が一様に外領域に広がらない場合もあるため、フェムト秒レーザー照射領域では親水性が向上しており一様に抗体溶液が該領域全体に広がったことが再確認できたと考えられた。
6.レーザー照射領域の経時変化
フェムト秒レーザー照射領域の親水性効果及び標的認識タンパク質固定化効果の持続性を検討した。具体的には、1つのマイクロ流路において、検討7日前にフェムト秒レーザーを照射した領域、検討4日前にフェムト秒レーザーを照射した領域、及び検討当日にフェムト秒レーザーを照射した領域、をそれぞれ3領域ずつ製造し、上記と同様(ただし、試料液のアディポネクチン濃度は0又は320ng/mLとし、本検討では0ng/mLはlane2とした)の検討を行った。本検討の概要及び測定結果(化学発光シグナルの写真)を図12に示す。また、測定した化学発光シグナル強度をグラフ化して図13に示す。
図12及び13より、照射後7日立った後でも、化学発光シグナル強度は低下しておらず、よって、フェムト秒レーザー照射後7日経った後でも親水性能力及び標的認識タンパク質固定化能力が低下していないことが確認できた。(むしろ、微量ではあるがレーザー照射した後時間が経過することにより発光シグナル強度が高くなる傾向が読み取れた。)

Claims (7)

  1. マイクロ流路を有するマイクロチップであって、
    該マイクロ流路がフェムト秒レーザー照射領域を有し、
    少なくとも該照射領域はPMMAからなる、
    マイクロチップ。
  2. フェムト秒レーザーのパルス幅が、1ピコ秒未満である、請求項1に記載のマイクロチップ。
  3. フェムト秒レーザーの波長が、500〜1500nmである、請求項1又は2に記載のマイクロチップ。
  4. フェムト秒レーザーのフルエンスが2J/cm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロチップ。
  5. フェムト秒照射領域に、標的認識タンパク質が固定化された、請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロチップ。
  6. PMMAからなる領域を有するマイクロ流路を有するマイクロチップにおいて、前記PMMAからなる領域にフェムト秒レーザーを照射することを含む、請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロチップを製造する方法。
  7. PMMAにフェムト秒レーザーを照射し、該照射領域の親水性及びタンパク質固定化効率を向上させる方法。
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