以下、本開示の打撃作業機の実施の形態を図面に基づいて説明する。それぞれの図面においては、共通する部材には同一の符号が付されている。
図1に示す打撃作業機10はハンマドリルである。打撃作業機10は、ケーシング11、クランク機構12及び電動モータ13を有する。ケーシング11は、ギヤケース14、クランクケース15、カバー16、モータケース17、ハンドル18及びフロントケース19を有する。ギヤケース14はクランクケース15とモータケース17との間に配置されている。カバー16は、クランクケース15の外側に取り付けられている。ハンドル18はギヤケース14に固定され、モータケース17はギヤケース14に固定されている。ハンドル18にトリガ20が設けられている。また、ハンドル18に電力ケーブル21が取り付けられている。電力ケーブル21は、電源、例えば、交流電源に接続される。
クランクケース15は金属製であり、フロントケース19がクランクケース15に固定されている。フロントケース19は筒形状であり、シリンダ22は、クランクケース15内及びフロントケース19内に亘って配置されている。フロントケース19にフロントカバー23が取り付けられている。フロントケース19の中心線A1に沿った方向で、フロントケース19は、フロントカバー23とクランクケース15との間に配置されている。中心線A1はシリンダ22の中心と共通である。
ピストン24がシリンダ22内に設けられている。ピストン24はシリンダ22に対して中心線A1方向に作動可能である。ピストン24の外周面にシール部材25が取り付けされており、シール部材25はシリンダ22の内周面に接触してシール面を形成する。
電動モータ13はモータケース17内に設けられている。電動モータ13は、環状のステータ26と、ステータ26の内側に配置したロータ27と、を有する。出力軸28がロータ27に固定され、出力軸28及びロータ27は、中心線A2を中心として回転可能である。出力軸28は、軸受29,30により回転可能に支持されており、出力軸28の外周面に駆動ギヤ31が設けられている。
さらに、ギヤケース14とクランクケース15との間に収容室32が形成されている。クランク機構12はクランクケース15内に設けられている。クランク機構12は、出力軸28の回転力を、ピストン24の動作力に変換する運動変換機構である。クランク機構12は、駆動ギヤ31に噛み合う従動ギヤ33と、従動ギヤ33が固定されたクランクシャフト34と、クランクシャフト34とピストン24とを連結するコネクティングロッド35と、を有する。クランクシャフト34は、軸受36,37により中心線A3を中心として回転可能に支持されている。クランクシャフト34はクランクピン38を有する。クランクピン38は、中心線A3から偏心した位置に配置されている。クランクピン38は、クランクシャフト34が回転すると中心線A3の周囲を公転する。コネクティングロッド35はクランクピン38に連結されている。
環状のベベルギヤ39がシリンダ22の外周面に取り付けられている。ベベルギヤ39はシリンダ22と共に一体回転する。回転力伝達軸40が、収容室32及びクランクケース15内に亘って設けられている。回転力伝達軸40は、軸受41,42を介してギヤケース14及びクランクケース15により回転可能に支持されている。回転力伝達軸40の中心線A4は、中心線A3と平行である。回転力伝達軸40は、出力軸28の回転力をベベルギヤ39に伝達する要素であり、回転力伝達軸40にピニオンギヤ43が設けられている。ピニオンギヤ43は、ベベルギヤ39に噛み合っている。さらに、従動ギヤ44が回転力伝達軸40に固定され、従動ギヤ44は駆動ギヤ31に噛み合っている。
シリンダ22及びベベルギヤ39は、軸受45を介してクランクケース15により回転可能に支持されている。ベベルギヤ39は軸受45によりクランクケース15に対して中心線A1方向に位置決めされている。シリンダ22は、軸受46を介してフロントケース19により回転可能に支持されている。シリンダ22に通気路47,48が設けられている。通気路47,48は、シリンダ22を径方向に貫通して設けられている。通気路47と通気路48とは、中心線A1方向で異なる位置に配置されている。通気路47は、中心線A1方向で中心線A3と通気路48との間に配置されている。
シリンダ22を径方向に貫通する長穴49が設けられている。長穴49は、中心線A1方向でフロントカバー23と通気路48との間に設けられている。シリンダ22の内周面に環状のストッパ50が設けられている。ストッパ50は、中心線A1方向でフロントカバー23と長穴49との間に設けられている。
図2のように、ドライバ51が、シリンダ22内及びフロントカバー23内に亘って設けられている。ドライバ51は筒形状であり、ドライバ51は、シリンダ22と共に一体回転する。ドライバ51は、ドライバ51は第1筒部75及び第2筒部76を有する。第2筒部76はガイド孔52を有し、第2筒部76は保持孔53を有する。第2筒部76の外径は、第1筒部75の外径よりも大きい。ガイド孔52及び保持孔53は中心線A1を中心として設けられている。ガイド孔52は中心線A1方向で保持孔53とストッパ50との間に設けられている。ガイド孔52の内周面は、中心線A1に対して垂直な平面での断面形状が円形である。保持孔53の内周面は、中心線A1に対して垂直な平面での断面形状が多角形である。保持孔53の内周面形状は、図9に示すように六角形である。ガイド孔52の内径は、保持孔53の最大内径よりも大きい。ドライバ51の内面にストッパ面54が設けられている。ストッパ面54は、中心線A1に対して傾斜した環状のテーパ面である。
ドライバ51とストッパ50との間に、バンパ55、及び2個のスペーサ56,57が配置されている。バンパ55は、中心線A1方向でスペーサ56とスペーサ57との間に配置されている。バンパ55は環状の合成ゴムであり、スペーサ56,57は金属製であり、かつ、環状である。
中間打撃子58が、ドライバ51内及びシリンダ22内に亘って配置されている。中間打撃子58は、ガイド孔52に沿って中心線A1方向に移動可能である。中間打撃子58は、ストッパ面54及びスペーサ56により、中心線A1方向の移動範囲が規制される。中間打撃子58は第1軸部93、第2軸部60及び第3軸部59を有する。第2軸部60は、中心線A1方向で第3軸部59と第1軸部93との間に設けられている。第2軸部60の外径は、第3軸部59の外径よりも大きく、かつ、第1軸部93の外径よりも小さい。第1軸部93は第2筒部76のガイド孔52に配置されている。第1軸部93はガイド孔52内で中心線A1方向に移動可能である。
第3軸部59の外周面に付勢力伝達要素61が取り付けられている。付勢力伝達要素61は金属製であり、かつ、図3に示すように環状である。付勢力伝達要素61の外周面から径方向に突出した係合突起62が設けられている。係合突起62は、長穴49内に配置されている。係合突起62は、長穴49内で中心線A1方向に移動可能である。付勢力伝達要素61と第2軸部60との間にリング63及びバンパ64が設けられている。リング63は金属製であり、バンパ64は合成ゴム製である。
樹脂製のスリーブ65が、シリンダ22の外周面に取り付けられている。スリーブ65はシリンダ22に対して中心線A1方向に移動可能である。スリーブ65の中心線A1方向の端部に係合溝66が設けられ、係合突起62は係合溝66内に配置されている。金属製のカラー67が、シリンダ22の外周面に取り付けられている。カラー67は円筒形状であり、かつ、中心線A1方向でカラー67とベベルギヤ39との間に配置されている。カラー67はシリンダ22に対して中心線A1方向に移動可能である。
金属製のスプリング68がシリンダ22の外周面に取り付けられている。スプリング68は圧縮スプリングであり、カラー67とベベルギヤ39との間に圧縮された状態で設けられている。スプリング68の中心線A1方向の付勢力は、カラー67を介してスリーブ65に伝達される。スリーブ65に加えられた付勢力は、付勢力伝達要素61、バンパ64及びリング63を介して中間打撃子58に伝達される。つまり、中間打撃子58は、スプリング68から、中心線A1方向でストッパ面54に近づく向きの付勢力を受ける。
打撃子69がシリンダ22内で中心線A1方向に移動可能に設けられている。打撃子69は、中心線A1方向でピストン24と中間打撃子58との間に配置されている。打撃子69の外周面にシール部材70が取り付けられており、シール部材70がシリンダ22の内周面に接触してシール面を形成する。シリンダ22内で打撃子69とピストン24との間に空気室71が設けられている。通気路47及び通気路48は、空気室71につながる。ピストン24が作動する際に、空気室71の圧力が変動する。
フロントカバー23は、図2、図4及び図5のように、収容孔72、第1保持孔73及び第2保持孔74を有する。中心線A1方向で第1保持孔73は第2保持孔74と収容孔72との間に配置されている。第1保持孔73及び第2保持孔74は、中心線A1方向に延ばされている。収容孔72、第1保持孔73及び第2保持孔74は、中心線A1を中心として配置されている。第1筒部75は収容孔72に配置されている。
中心線A1に対して垂直な平面内で、収容孔72の内周面形状は円形である。中心線A1に対して垂直な平面視で、第1保持孔73の内周面形状は多角形である。図6に示す第1保持孔73は、内周面形状が六角形である例を示す。つまり、第1保持孔73の内周面により、6個の第1保持面77が形成されている。隣り合う第1保持面77同士の間に角部87がそれぞれ形成されている。図8に示す第1保持孔73の外接円の直径L2は、収容孔72の内径よりも小さく、かつ、保持孔53の内接円の直径よりも大きい。
図7及び図8のように、第2保持孔74の内周面は、複数の湾曲面78と、複数の平坦面79と、を有する。図7及び図8は、湾曲面78が6個設けられ、平坦面79が6個設けられている例を示す。平坦面79は、中心線Aに対して垂直な平面視で、第1保持孔73の第1保持面77と重なるように形成される。複数の湾曲面78は、第2保持孔74の径方向で外側に向けてそれぞれ膨らんでいる。湾曲面78と平坦面79とは、第2保持孔74の円周方向に交互に配置されている。湾曲面78と平坦面79とが互いに接続されている。6個の湾曲面78の外接円の直径L1は、直径L2よりも大きい。平坦面79の内接円の直径L3は、直径L2よりも小さい。図6に示す第1保持孔73の内接円の直径L3は、図8に示す平坦面79の内接円の直径L3と等しい。また、第1保持孔73の内面と、6個の湾曲面78とを接続する端面80がそれぞれ設けられている。端面80は中心線A1に対して垂直な平坦面である。端面80と第1保持面77との境界に縁部91がそれぞれ形成されている。縁部91はエッジである。
図4及び図5のように、フロントカバー23にホルダ81が取り付けられている。ホルダ81は係合部82を有する。ホルダ81は金属製である。先端工具83をフロントカバー23に取り付け、かつ、先端工具83をフロントカバー23から取り外すことが可能である。先端工具83は、打撃作業機10の打撃力を対象物に伝達し、かつ、回転力を対象物に伝達しない場合に用いる。
先端工具83は、第1軸部84、第2軸部85及び大径部86を有する。中心線A1は、先端工具83の中心でもあり、大径部86は中心線A1方向で第1軸部84と第2軸部85との間に配置されている。第1軸部84の中心線A1方向の長さは、第1保持孔73の長さと、第2保持孔74の長さとの合計よりも大きい。第1軸部84の断面形状は、図9のように円形であり、大径部86の断面形状は、図7のように六角形である。図9のように、第1軸部84の直径は、ドライバ51の保持孔53の内接円の直径よりも小さい。図8のように、大径部86の外接円の直径L4は、直径L3よりも大きく、かつ、直径L2よりも小さい。図7のように、大径部86は6個の表面88を有し、隣り合う表面88同士の接続箇所に角部89がそれぞれ形成されている。
図4及び図5のように、各表面88と第1軸部84の表面との境界に縁部90がそれぞれ形成されている。各縁部90は、先端工具83の全周に亘って環状に形成されている。中心線A1を含む平面断面内で、各縁部90は湾曲している。先端工具83において、第2軸部85と大径部86との間に係合部92が設けられている。係合部92は先端工具83の全周に設けられ、係合部92の直径は、図8に示す大径部86の直径L4よりも大きい。
次に、打撃作業機10の使用例を説明する。スプリング68の付勢力は、カラー67、スリーブ65、付勢力伝達要素61、バンパ64及びリング63を介して中間打撃子58に伝達され、第1軸部93がストッパ面54に押し付けられて中間打撃子58が停止する。
作業者は、先端工具83とフロントカバー23とを中心線A1を中心として同心状に位置させ、第1軸部84をフロントカバー23に近づける。すると、第1軸部84は、第2保持孔74及び第1保持孔73を通って保持孔53に進入し、大径部86は第2保持孔74に進入する。そして、図8のように、中心線A1を中心とする円周方向で、角部89の位置と角部87の位置との差、つまり、角部87と角部89との間の所定角度θ2が所定角度θ1以上であると、縁部90が縁部91に接触し、先端工具83の移動が規制され、先端工具83は停止する。
そして、フロントカバー23に保持された先端工具83を対象物に押し付けて、先端工具83に加える中心線A1方向の移動力を増加すると、中心線A1方向の移動力の一部が、縁部90と縁部91との接触箇所で、縁部91に沿う方向の分力に変換され、その分力で先端工具83が中心線A1を中心として回転する。図8に示す例では、先端工具83が時計方向に回転する。そして、中心線A1を中心とする円周方向で、角部89の位置と角部87の位置との差、つまり、所定角度θ2が所定角度θ1未満であると、縁部90は縁部91に接触せず、大径部86は、図4のように第1保持孔73に進入する。大径部86が第1保持孔73に進入可能となる所定角度θ1は、図6に所定角度θ1で表してある。所定角度θ1,θ2は、角部87を基準とする円周方向の角度である。所定角度θ1は第1角度に相当し、所定角度θ2は第2角度に相当し、角部87は、所定位置に相当する。
さらに、第1軸部84の端部が中間打撃子58の第1軸部93の端部に接触すると、中間打撃子58はスプリング68の付勢力に抗してストッパ面54から離れる。そして、第1軸部93が図2のようにスペーサ56に接触して中間打撃子58が停止すると、先端工具83も停止する。
次いで、作業者がトリガ20に操作力を加えると、電動モータ13に電力が供給されて出力軸28が回転する。出力軸28の回転力は、クランク機構12によりピストン24の往復動力に変換される。ピストン24が、シリンダ22内で中心線A3から離れる向きで移動すると、空気室71の圧力が上昇して打撃力が発生し、打撃子69が中間打撃子58を打撃する。その打撃力は先端工具83を介して対象物に伝達される。このように、第1保持孔73が大径部86を保持すると、中間打撃子58は先端工具83を打撃可能である。
また、出力軸28の回転力は、従動ギヤ44、回転力伝達軸40及びピニオンギヤ43を介してベベルギヤ39に伝達される。ベベルギヤ39と共にシリンダ22が回転し、かつ、ドライバ51が回転する。先端工具83の第1軸部84の断面形状は円形であり、かつ、図9のように、第1軸部84の直径は、六角形の保持孔53の内接円の直径よりも小さい。また、図6のように、大径部86の角部89は第1保持面77に接触する。このため、シリンダ22の回転力で先端工具83が回転することは無く、先端工具83に対して中心線A1方向の打撃力のみが加えられる。
以後、ピストン24がシリンダ22内で往復動すると、打撃子69の打撃力が先端工具83に連続的に加えられる。先端工具83が対象物に押し付けられ、かつ、先端工具83に打撃力が加えられている間、大径部86は、図4のように第1保持孔73及び第2保持孔74の両方に位置する。
作業者がトリガ20に対する操作力を解除すると、電動モータ13が停止する。また、作業者が先端工具83を対象物から離し、かつ、中心線A1を鉛直線に対して傾斜させると、先端工具83はフロントケース19よりも下に位置する。すると、先端工具83は自重で中心線A1に沿って下降し、図5のように、大径部86は第1保持孔73から退出する。そして、係合部92が係合部82に接触し、先端工具83はフロントカバー23に対して停止する。このように、ホルダ81は、先端工具83がフロントカバー23から不用意に抜け出すことを防止する。
一方、電動モータ13が回転している状態で先端工具83が対象物から離れ、かつ、先端工具83に打撃力が加わると、先端工具83はフロントケース19から離れる向きで中心線A1に沿って移動する。すると、図5のように、大径部86は第1保持孔73から退出し、かつ、係合部92が係合部82に衝突し、その反動で先端工具83はフロントケース19に近づく向きで移動する。
すると、作業者が先端工具83を対象物に押し付けた場合と同様に、縁部90が縁部91に衝突する。そして、先端工具83の中心線A1方向の移動力の一部が、縁部90と縁部91との接触箇所で縁部91の沿う方向の分力に変換され、その分力で先端工具83が中心線A1を中心として回転するため、先端工具83の中心線A方向の移動力は低減される。このため、先端工具83は、縁部90が縁部91に接触した時点から、中間打撃子58に近づく向きの移動が抑制されるか、または、中間打撃子58から離れる向きに移動する。
このように、縁部91は、先端工具83が中心線A1方向に移動して、第1保持孔73に進入することを許容するが、その移動量を低減する。したがって、打撃作業機10における空打ちを防止できる。空打ちとは、先端工具83が対象物に押し付けられていない状態で打撃子69の打撃力が先端工具83に伝達されることである。電動モータ13が回転している状態で先端工具83が対象物から離れ、かつ、先端工具83に打撃力が加わると、先端工具83は中心線A1方向でフロントケース19から離れる方向に移動する。すると、係合部92が係合部82に衝突して反発し、先端工具83は、中心線A1方向でフロントケース19に近づく方向に移動する。そして、第1軸部84の端部が中間打撃子58の第1軸部93の端部に衝突して反発し、先端工具83は、中心線A1方向でフロントケース19から離れる方向に移動する。このように、先端工具83は、中心線A1方向に往復動する挙動を繰り返し、先端工具83は何度も中間打撃子58に打撃されることになり、空打ちが連続的に発生してしまう。
しかしながら、本開示の打撃作業機10は、先端工具83が中心線A1方向に移動して第1保持孔73に進入する移動力を低減する。このため、先端工具83が中心線A1方向に往復動する範囲の増加が抑制される。したがって、先端工具83は、大径部86が第1保持孔73に保持されない状態で、最終的に停止する。第2保持孔74が大径部86を保持し、かつ、第1保持孔73が大径部86を保持していないと、中間打撃子58は先端工具83を打撃不可能であるため、空打ちが繰り返し生じることが抑制される。
本開示の打撃作業機10は、先端工具83の中心線A1方向の移動力の一部を、先端工具83の回転力に変換することで、先端工具83が中間打撃子58に近づくことを抑制する。このため、第1保持孔73の内接円の直径L3と、第2保持孔74の平坦面79の内接円の直径L3とを等しくすることができる。つまり、先端工具83の大径部86の外周と、第2保持孔74の内周との間に形成される径方向の隙間量を、なるべく小さくすることができる。したがって、先端工具83の中心軸が、フロントケース19の中心線A1に対して交差するように傾斜することを抑制でき、作業性が向上する。
また、打撃作業機10は、先端工具83が対象物から離れており、スプリング68の付勢力で中間打撃子58がストッパ面54に押し付けられている状態で、カラー67は通気路48を開いている。つまり、空気室71は通気路48を介して、シリンダ22の外部とつながっている。このため、ピストン24がシリンダ22内で往復動しても、空気室71の空気が通気路48から排出され、空気室71の空気圧の上昇が抑制される。したがって、先端工具83が対象物から離れている状態で、空打ちを一層低減できる。
さらに、先端工具83を対象物に押し付けて、図2のように、中間打撃子58をストッパ面54から離すと、カラー67が通気路48を塞ぐ。このため、ピストン24がシリンダ22内で中心線A3から離れる向きで移動すると、空気室71の圧力が上昇して十分な打撃力を得ることができる。
フロントカバー23で保持可能な他の先端工具の例を、図10を参照して説明する。図9に示す先端工具94は、第1軸部84、第2軸部85、大径部86及び係合部92を有する。大径部86の断面形状は、図11のように円形であり、大径部86の直径は、第1保持孔73の内接円の直径よりも小さい。第1軸部84の断面形状は、図12のように六角形であり、第1軸部84の外接円の直径は、保持孔53の最大内径よりも小さく、かつ、保持孔53の最小内径よりも大きい。
次に、図10の先端工具94を、図2に示すフロントカバー23に取り付ける作業を説明する。作業者は、第1軸部84を第2保持孔74を経由して第1保持孔73に進入させ、次いで、第1軸部84を図12のように保持孔53に進入させる。第1軸部84が保持孔53内に位置すると、フロントカバー23と先端工具94とが同心状になる。第1軸部84が中間打撃子58に接触すると、先端工具94が停止する。
そして、作業者が先端工具94に押し付けると、その反力で中間打撃子58はスプリング68の付勢力に抗してストッパ面54から離れる。また、フロントカバー23と先端工具94とが同心状であり、かつ、大径部86の直径は、第1保持孔73の内接円の直径よりも小さいため、大径部86は端面80に接触することが無く、大径部86は第2保持孔74から第1保持孔73に移動する。そして、第1軸部93がスペーサ56に接触して中間打撃子58が停止すると、先端工具94も停止する。
次いで、作業者がトリガ20に操作力を加えて電動モータ13の出力軸28が回転すると、前述と同様に打撃子69がシリンダ22内で往復動し、打撃子69は、中間打撃子58を介して先端工具94を間接的に打撃する。
また、図12のように、保持孔53の断面形状は六角形であり、かつ、第1軸部84の断面形状は六角形であり、第1軸部84の外接円の直径は、保持孔53の最大内径よりも小さく、かつ、保持孔53の最小内径よりも大きい。このため、出力軸28の回転力がドライバ51に伝達されると、ドライバ51の回転力が先端工具94に伝達される。このように、先端工具94には、打撃力及び回転力の両方が伝達される。
また、先端工具94が対象物から離れると、スプリング68の付勢力で中間打撃子58がストッパ面54に押し付けられ、カラー67は通気路48を開く。このため、ピストン24がシリンダ22内で往復動しても、先端工具94に打撃力が加えられることを抑制できる。
打撃作業機の他の例を図13及び図14を参照して説明する。図13及び図14に示す打撃作業機10は、金属製のリテーナスリーブ95を有する。リテーナスリーブ95は筒形状であり、かつ、フロントケース19内に配置されている。リテーナスリーブ95は、第1筒部96、第2筒部97及び第3筒部98を有する。第2筒部97は、中心線A1に沿った方向で、第1筒部96と第3筒部98との間に設けられている。第2筒部97の内径は、第1筒部96の内径よりも小さく、かつ、第3筒部98の内径よりも大きい。
第1筒部96と第2筒部97との接続箇所に、段部99が設けられている。段部99は、リテーナスリーブ95の内周に環状に設けられている。シリンダ22の一部が第1筒部96内に配置されている。シリンダ22はリテーナスリーブ95と共に一体回転するように連結されている。バンパ55、スペーサ56,57は、シリンダ22の端部と段部99との間に配置されている。第2筒部97と第3筒部98との接続箇所に、ストッパ面100が設けられている。ストッパ面100は、リテーナスリーブ95の内周に環状に設けられている。中間打撃子58は第2筒部97内に設けられ、かつ、中心線A1方向に移動可能である。中間打撃子58は、図2に示す第3軸部59を備えていない。
フロントケース19の内周面に環状のリブ101が設けられている。リブ101はすべり軸受102を支持している。すべり軸受102はリブ101に対して回転しないように取り付けられており、すべり軸受102は外向きのフランジ103を有する。フランジ103がリブ101に接触し、すべり軸受102は中心線A1方向の移動が規制される。すべり軸受102内に第2筒部97が配置され、すべり軸受102はリテーナスリーブ95を回転可能に支持する。
第1筒部96の外周面に、外向きのフランジ104が設けられている。フランジ103とフランジ104との間に、環状のスペーサ105及び環状のバンパ106が設けられている。
クラッチ107がシリンダ22の外周面に取り付けられている。クラッチ107は、シリンダ22と共に一体回転し、かつ、シリンダ22に対して中心線A1方向に移動可能である。クランクケース15に操作部材が設けられており、作業者が操作部材を操作すると、クラッチ107はシリンダ22に対して中心線A1方向に移動する。操作部材を操作すると、ハンマドリルモードとハンマモードとを切り替え可能である。
第1筒部96とクラッチ107との間に弾性部材108が設けられている。弾性部材108は、クラッチ107をベベルギヤ39に近づける向きで中心線A1方向に付勢する。弾性部材108は、例えば、金属製の圧縮コイルスプリングを用いることができる。図13及び図14に示すベベルギヤ39は、シリンダ22に対して相対回転可能である。
クランクケース15の内周面に回り止め109が設けられている。回り止め109は環状であり、かつ、クランクケース15に対して回転しないように取り付けられている。クラッチ107が中心線A1方向に移動して停止すると、クラッチ107は、ベベルギヤ39または回り止め109の何れか一方に係合する。シリンダ22に通気路48が設けられている。通気路48は、中心線A1方向で第1筒部96とクラッチ107との間に配置されている。
第3筒部98の端部にキャップ110が取り付けられている。キャップ110は軸穴111を有する。フロントカバー112がキャップ110に取り付けられている。フロントカバー112は環状である。リテーナスリーブ95の外周面に環状のプレート113が取り付けられている。環状のホルダ114が第3筒部98に取り付けられている。ホルダ114は、第3筒部98に対して中心線A1方向に移動可能である。プレート113とホルダ114との間に弾性部材115が設けられており、弾性部材115はホルダ114を中心線A1方向に付勢し、かつ、フロントカバー112に押し付ける。弾性部材115は、例えば金属製の圧縮コイルスプリングである。
第3筒部98は、図15及び図19のように保持孔116を有する。保持孔116は第3筒部98を径方向に貫通している。保持孔116は第3筒部98の円周方向で異なる位置に複数配置されている。ビットロック117が保持孔116に配置されている。ビットロック117は金属製であり、ビットロック117は保持孔116内で第3筒部98の径方向に移動可能である。ホルダ114は、第3筒部98の径方向でビットロック117の外側に位置し、ホルダ114はビットロック117が保持孔116から抜け出すことを防止する。
図19のように、第3筒部98の軸孔126の内面にレール118が設けられている。レール118は、中心線A1方向に沿って直線状に配置されている。レール118は、図15のように第3筒部98の円周方向に複数設けられている。レール118は、図19のように、第1ガイド部119及び第2ガイド部120を有する。第2ガイド部120は、中心線A1方向で第1ガイド部119とストッパ面100との間に配置されている。第3筒部98の円周方向で、第1ガイド部119の幅L5は第2ガイド部120の幅L6よりも小さい。
また、第1ガイド部119と第2ガイド部120とを接続する接続部121が設けられている。接続部121は、中心線A1方向で第1ガイド部119と第2ガイド部120との間に配置されている。第3筒部98の軸孔126内のうち、中心線A1方向で第2ガイド部120が配置されている領域が、第1保持孔127である。軸孔126内のうち、中心線A1方向で第1ガイド部119が配置されている領域が、第2保持孔128である。
図13、図14及び図19に示すように、リテーナスリーブ95に着脱可能な先端工具122が設けられている。先端工具122は、先端工具83とは形状が異なる。先端工具122は軸形状であり、先端工具122は、図16、図17及び図18のように、ガイド溝123及び保持溝124を有する。ガイド溝123及び保持溝124は先端工具122の長手方向に沿って直線状に配置されている。ガイド溝123は先端工具122の円周方向に間隔をおいて複数配置されている。保持溝124は先端工具122の円周方向に間隔をおいて複数配置されている。先端工具122がリテーナスリーブ95により保持されていると、レール118はガイド溝123に配置され、ビットロック117の一部は保持溝124に配置される。
図13及び図14に示す打撃作業機10の使用例を説明する。先端工具122が中間打撃子58よりも下にあり、かつ、中心線A1が水平線に対して傾斜するように打撃作業機10が保持されていると、ビットロック117は、自重でリテーナスリーブ95に対して下降しており、ビットロック117は、図13のように、保持溝124内で先端工具122の後端125に最も近い位置にある。そして、ビットロック117が先端工具122に係合することで、先端工具122がリテーナスリーブ95から抜け出すことを防止する。ここで、第1ガイド部119はガイド溝123内に位置し、第2ガイド部120はガイド溝123外に位置する。
また、ピストン24が停止していると、打撃子69も停止する。中間打撃子58は打撃子69に押されてストッパ面100に接触して停止している。中間打撃子58がストッパ面100に接触し、かつ、第2ガイド部120がガイド溝123外に位置すると、中間打撃子58と先端工具122とは離れている。このため、ピストン24が往復動して打撃子69が中間打撃子58を打撃しても、その打撃力は先端工具122に伝達されず、空打ちを防止できる。
先端工具122を対象物に押し付けて中心線A1方向に移動させると、図15のように、先端工具122の端部が接続部121に接触する。先端工具122と接続部121との接触箇所で分力が生じ、中心線A1方向の移動力の一部が先端工具122を回転させる向きの力に変換される。先端工具122は、例えば、図15で時計方向に所定角度θ1の範囲で回転し、先端工具122の回転方向で、ガイド溝123の中心と第2ガイド部120の中心とが一致すると、先端工具122は中心線A1方向に移動する。つまり、第1ガイド部119及び第2ガイド部120の両方が、ガイド溝123内に収容される。そして、先端工具122が中間打撃子58に接触し、中間打撃子58が中心線A1方向に移動する。そして、図14のように、第1軸部93がスペーサ56に接触すると、中間打撃子58及び先端工具122が停止する。
ピストン24がシリンダ22内で通気路48から離れるように、中心線A1方向に移動すると、打撃子69が中間打撃子58から離れる向きで移動し、シール部材70は、通気路48と空気室71とを遮断する。ピストン24がシリンダ22内で通気路48に近づくように中心線A1方向に移動すると、図14のように、打撃子69が中間打撃子58を打撃する。中間打撃子58に加えられた打撃力は、先端工具122に伝達される。このように、第1保持孔127が先端工具122を保持していると、中間打撃子58で先端工具122を打撃可能である。
操作部材が操作されてハンマドリルモードが選択されていると、クラッチ107は、図14のようにベベルギヤ39に係合し、かつ、回り止め109から解放される。ベベルギヤ39の回転力は、クラッチ107及びシリンダ22を介してリテーナスリーブ95に伝達される。リテーナスリーブ95の回転力は、ビットロック117と先端工具122との係合力、レール118と先端工具122との係合力により、先端工具122に伝達される。このため、先端工具122は、中間打撃子58から打撃力を受け、かつ、中心線A1を中心として回転する。
これに対して、操作部材が操作されてハンマモードが選択されていると、クラッチ107は回り止め109に係合し、かつ、ベベルギヤ39から解放される。このため、ベベルギヤ39の回転力はシリンダ22に伝達されず、かつ、回り止め109は、シリンダ22の回転を防止する。したがって、先端工具122に回転力は伝達されず、先端工具122に打撃力が伝達される。
次に、先端工具122を対象物に押し付け、かつ、ピストン24をシリンダ22内で往復動作中に、先端工具122が対象物から離れた場合の作用を説明する。先端工具122は、中間打撃子58により打撃されて、第1筒部96から離れる向きで中心線A1方向に移動し、図13のように先端工具122の後端125に最も近い箇所が、ビットロック117に衝突する。この時点で、第1ガイド部119はガイド溝123内に位置し、第2ガイド部120はガイド溝123外に位置する。
そして、先端工具122はビットロック117に衝突した反力で、第1筒部96に近づく向きで中心線A1方向に移動しようとする。すると、図15のように、先端工具122の端部が接続部121に接触し、先端工具122の中心線A1方向の移動力の一部が先端工具122を回転させる向きの力に変換される。このため、先端工具122は、接続部121に接触した時点から、先端工具122が中間打撃子58に近づく向きの移動が抑制されるか、または、中間打撃子58から離れる向きに移動する。
このように、接続部121は、先端工具122が中心線A1方向に移動して第1保持孔127に進入することを許容するが、その移動量を低減する。したがって、先端工具122が対象物から離れている状態で、先端工具122を空打ちすることを防止できる。そして、第2保持孔128が先端工具122を保持し、かつ、第1保持孔127が先端工具122を保持していないと、中間打撃子58は、先端工具122を打撃不可能である。
本開示の要素の技術的意味を説明すると、先端工具83,122、フロントカバー23及びリテーナスリーブ95は、保持具の一例であり、中心線A1は中心線の一例である。第1保持孔73,127は第1保持部の一例であり、第2保持孔74,128は第2保持部の一例である。大径部86は被保持部の一例である。縁部91及び接続部121は規制部の一例である。複数の第1保持面77は、複数の第1保持面の一例である。直径L1は最大内径の一例であり、直径L2は最大内径の一例である。複数の平坦面79は、複数の第2保持面の一例である。通気路48は排気通路の一例である。
打撃作業機は、実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、打撃作業機は、コンクリートや石材等を対象物として、斫り作業、穴あけ作業、破砕作業を行うハンマドリルの他、ハンマドライバを含む。ハンマドライバは、先端工具が対象物としてのねじ部材を打撃しながら回転する。モータは、電動モータ、内燃機関、油圧モータ、空気圧モータを含む。電動モータに電力を供給する電源は、交流電源、直流電源を含む。直流電源は、ケーシングに着脱可能なバッテリを含む。
モータの回転力をピストンの往復動作力に変換する運動変換機構は、クランク機構の他、カム機構を含む。打撃作業機は、モータの出力軸の中心線A2と、ピストンが動作する方向の中心線A1とが直角に配置される構造の他、中心線A1と中心線A2とが、互いに平行である構造を含む。
本開示において、端面80は段部として把握することも可能である。また、図8で先端工具83が時計回りに回転する例を説明しているが、先端工具83とフロントカバー23との円周方向の位置関係により、図8で先端工具83が反時計回りに回転することもある。図15で先端工具122が時計回りに回転する例を説明したが、先端工具122とリテーナスリーブ95との円周方向の位置関係により、図15で先端工具122が反時計回りに回転することもある。第1保持孔及び大径部の断面形状は、多角形であればよく、六角形の他、三角形、五角形、八角形でもよい。