以下、打撃作業機の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。各図に示された構成のうち、同じ構成は同じ符号を付してある。
図1に示す打撃作業機10は、先端工具11を対象物12に押し付けて打撃動作を行い、対象物12に処理を施す。対象物12は、コンクリート、レンガ、石材、アスファルトの何れでもよい。また、対象物12に施す処理は、対象物12を破砕すること、対象物12の表面を削ること、対象物12を切断すること、対象物12に溝を形成すること、を含む。そして、先端工具11は、対象物12の材質、及び施す処理に適した形状を有するものが使用される。本実施形態においては、対象物12としてのコンクリートを先端工具11により破砕する例を説明する。このため、図1に示された先端工具11は、便宜上、楔形状で示す。
打撃作業機10は、ハウジング13を有し、ハウジング13は、モータケース14と、打撃ケース15、及びギヤケース16を有する。モータケース14と打撃ケース15とギヤケース16とは、ねじ部材で互いに固定されている。打撃作業機10は、動力源としての電動モータ17を有し、電動モータ17は、モータケース14内に配置されている。
また、モータケース14及びギヤケース16に接続したハンドル部18が設けられている。ハンドル部18は作業者が打撃作業機10を使用するときに手で掴む部位であり、ハンドル部18には電源ケーブル19が取り付けられている。電源ケーブル19は、電源部、例えば、商用電源またはバッテリに接続される。ハウジング13内にコントローラ20が設けられており、コントローラ20は、リード線により電源ケーブル19に接続され、かつ、リード線により電動モータ17に接続されている。さらに、ハンドル部18にトリガ21及びトリガスイッチ22が設けられており、トリガスイッチ22は、リード線によりコントローラ20に接続されている。作業者がハンドル部18を掴んでトリガ21を操作し、トリガスイッチ22がオンすると、電源部の電力が電動モータ17に供給され、電動モータ17が駆動する。トリガスイッチ22がオフされると、電動モータ17は停止する。
電動モータ17は、ステータ23およびロータ24を有し、ロータ24と共に回転する回転軸25が設けられている。回転軸25は軸受26により回転可能に支持されている。回転軸25の外周にギヤ27が設けられている。ハウジング13内にクランクシャフト28及びコンロッド29が設けられている。クランクシャフト28は軸受30により回転可能に支持されている。また、クランクシャフト28に固定されたギヤ31が設けられ、ギヤ31はギヤ27に噛み合っている。ギヤ31の歯数はギヤ27の歯数よりも多く、回転軸25の回転力をクランクシャフト28に伝達する際に、ギヤ27,31が減速機構の役割を果たす。さらに、クランクシャフト28の端部には、クランクシャフト28と同軸に円板部32が設けられており、円板部32の中心から偏心した位置にピン33が設けられている。
打撃ケース15は筒形状であり、打撃ケース15の長手方向の第1端部は、ギヤケース16に固定されている。打撃ケース15内に筒形状のシリンダホルダ34が設けられ、シリンダホルダ34内にシリンダ35が設けられている。シリンダホルダ34及びシリンダ35は、共通の中心線A1で同心状に配置されている。シリンダホルダ34の内部から外部に亘ってリテーナスリーブ36が配置されている。リテーナスリーブ36は筒形状であり、リテーナスリーブ36はシリンダ35と同心状に配置されている。シリンダホルダ34、シリンダ35及びリテーナスリーブ36は、打撃ケース15に対して中心線A1方向に移動しないように固定されている。
リテーナスリーブ36は、同心状に配置された大径孔37及び小径孔38を有する。大径孔37の内径は、小径孔38の内径よりも大きい。大径孔37は、中心線A1方向で小径孔38とシリンダ35との間に配置されている。大径孔37の内面と小径孔38の内面とをつなぐ傾斜面39が設けられている。先端工具11は小径孔38に差し込まれる。リテーナスリーブ36は、先端工具11を支持する支持部材である。
打撃ケース15の長手方向の第2端部にフロントカバー40が取り付けられている。フロントカバー40は筒形状であり、フロントカバー40の前方に筒形状のグリップ41が取り付けられている。フロントカバー40及びグリップ41は、リテーナスリーブ36の径方向外側に配置されている。リテーナスリーブ36の大径孔37及びシリンダ35内に亘って中間子42が設けられている。中間子42は中心線A1方向に移動可能であり、かつ、金属製である。中間子42は先端工具11に接触したり離れたりすることができる。中間子42は軸形状であり、中間子42の外径を部分的に大きくした大径部43が設けられている。大径部43が傾斜面39に接触すると、中間子42は先端工具11に近づく向きで中心線A1方向に移動しない。
図2のように、シリンダ35の内部にピストン44が設けられており、ピストン44は、シリンダ35の内部で中心線A1方向に往復動作可能である。ピストン44の外周にシール部材としてのOリング65が取り付けられている。Oリング65はゴム製であり、Oリング65がシリンダ35の内周面に接触してシール面を形成する。ピストン44は、図1のように、コンロッド29によりピン33と連結されている。電動モータ17の回転軸25は、クランクシャフト28、ピン33及びコンロッド29によりピストン44に連結されている。回転軸25の回転力がクランクシャフト28に伝達されてクランクシャフト28が回転すると、ピストン44はシリンダ35内で往復動作する。
図2のように、シリンダ35の内部において、中心線A1方向でピストン44と中間子42との間に打撃子45が配置されている。打撃子45は金属製であり、打撃子45は中心線A1方向に移動可能である。打撃子45の外周にシール部材としてのOリング46が取り付けられており、Oリング46がシリンダ35の内周面に接触してシール面を形成する。
シリンダ35の内部において、打撃子45とピストン44との間に圧力室B1が形成される。ピストン44が動作して圧力室B1の圧力が上昇して打撃子45を駆動し、その打撃力は中間子42を経由して先端工具11に伝達される。シリンダ35を径方向に貫通する第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48が設けられている。第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48は、共にシリンダ35の内部につながる。また、シリンダ35とシリンダホルダ34との間に空間C1が形成され、第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48は、空間C1につながる。
第1呼吸孔47は、中心線A1方向でリテーナスリーブ36と第2呼吸孔48との間に位置する。第1呼吸孔47の開口径は、第2呼吸孔48の開口径よりも大きい。第1呼吸孔47は、シリンダ35の円周方向に間隔をおいて複数配置されている。第1呼吸孔47の数は、単数または複数の何れでもよい。第1呼吸孔47の数は第2呼吸孔48の数よりも多い。第2呼吸孔48を複数設ける場合、第2呼吸孔48は、シリンダ35の円周方向に間隔をおいて配置される。本実施形態における第2呼吸孔48の数は、単数である。
シリンダホルダ34の内部において、シリンダ35とリテーナスリーブ36との間に、ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51が設けられている。ダンパ50はゴム製であり、ダンパホルダ49及びワッシャ51は金属製である。ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51は共に環状であり、中間子42の一部は、ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51内に配置されている。ダンパ50は、中心線A1方向でダンパホルダ49とワッシャ51との間に配置されている。中間子42の大径部43は、中心線A1方向でワッシャ51と傾斜面39との間に配置されている。
シリンダホルダ34はストッパリング52を支持し、ギヤケース16はストッパリング53を支持している。シリンダ35は、中心線A1方向でストッパリング53とダンパホルダ49との間に配置されている。ストッパリング52,53は、中心線A1方向でシリンダ35、リテーナスリーブ36、ダンパホルダ49、ダンパ50及びワッシャ51の位置を決定する。
次に、打撃作業機10の使用例を説明する。ここでは、重力の作用方向で、中間子42が先端工具11よりも上に位置する状態で、打撃作業機10を使用する例を説明する。作業者がハンドル部18を掴んで打撃作業機10を持ち、図1のように先端工具11を対象物12に押し付けると、押し付け力に対する反力は中間子42に伝達され、大径部43がワッシャ51に押し付けられて先端工具11及び中間子42が停止する。
また、先端工具11を対象物12に押し付けた状態で、Oリング46がシリンダ35の内周面に接触する位置は、図2のように、中心線A1方向で第1呼吸孔47とピストン44との間にある。このため、Oリング46は圧力室B1と第1呼吸孔47とを遮断する。さらに、Oリング65がシリンダ35の内周面に接触する位置は、ピストン44の位置に関わりなく、中心線A1方向で第2呼吸孔48とクランクシャフト28との間にある。
作業者がトリガ21を操作して、トリガスイッチ22がオンし、電動モータ17の回転軸25が回転すると、ピストン44は中心線A1方向に往復動作する。図3のようにピストン44がリテーナスリーブ36から離れる向きで動作すると、圧力室B1内の圧力が空間C1の圧力よりも低くなり、空間C1の空気は第2呼吸孔48を通り圧力室B1に吸い込まれる。また、ピストン44がリテーナスリーブ36から離れた時期よりも遅れて、打撃子45はリテーナスリーブ36から離れる。
ピストン44は、リテーナスリーブ36から最も離れた位置、つまり上死点に到達した後、ピストン44はリテーナスリーブ36に近づく向きで動作する。圧力室B1の圧力は、ピストン44がリテーナスリーブ36に近づく向きで動作する行程で急激に上昇する。なお、ピストン44がリテーナスリーブ36に近づく向きで動作する行程で、圧力室B1の空気の一部は、第2呼吸孔48を通り空間C1に排出される。
打撃子45は、圧力室B1の圧力の急激な上昇により、リテーナスリーブ36に近づく向きで駆動されて中間子42を打撃する。中間子42が受けた打撃力は、先端工具11に伝達され、先端工具11は対象物12を破砕する。ピストン44がリテーナスリーブ36に最も近づいた位置、つまり、下死点に到達した後、ピストン44はリテーナスリーブ36から離れる向きで動作する。
以後、打撃作業機10は、電動モータ17の回転軸25が回転している間、ピストン44が中心線A1方向に往復動作し、打撃子45の打撃力を先端工具11に伝達する動作を繰り返す。
作業者が先端工具11を対象物12から離すと、中間子42は自重で中心線A1方向に移動し、大径部43が傾斜面39に接触して中間子42が停止する。また、打撃子45は、圧力室B1の圧力で図4のように中間子42に接触して停止する。打撃子45が図4の位置で停止すると、Oリング46は中心線A1方向で第1呼吸孔47とリテーナスリーブ36との間でシリンダ35の内周面に接触し、圧力室B1は、第1呼吸孔47に接続される。
このため、電動モータ17が駆動してピストン44がシリンダ35内で往復動作しても、圧力室B1の空気は第1呼吸孔47から空間C1に排出され、圧力室B1の圧力が急激に上昇することはない。したがって、先端工具11が対象物12から離れている状態で、打撃子45が先端工具11を打撃すること、つまり、空打ちを防止できる。
ところで、先端工具11が対象物12に押し付けられている状態で、打撃子45の打撃力を先端工具11に伝達すると、その反力は、中間子42、ワッシャ51、ダンパ50、ダンパホルダ49、シリンダ35及びストッパリング53を経由してハウジング13に伝達される。また、ピストン44がシリンダ35内で往復動作すると、シリンダ35の往復動による慣性力は、コンロッド29、ピン33、クランクシャフト28及び軸受30を経由してハウジング13に伝達される。このため、ハウジング13は、中心線A1方向に振動する。
打撃作業機10は、振動低減機構54を有する。振動低減機構54は、ハウジング13の振動を抑制するものであり、振動低減機構54は、空間C1に配置した質量体55と、空間C1に配置した弾性部材56,57と、を有する。弾性部材56,57は、共に圧縮コイルスプリングである。弾性部材56,57は、中心線A1方向に圧縮可能である。質量体55は、金属製であり、かつ、円筒状である。質量体55は、中心線A1を中心とする径方向で、シリンダ35よりも外側に配置されており、質量体55はシリンダ35に対して中心線A1方向に移動可能である。
質量体55は、中心線A1方向の両端に設けた溝58,59を有する。溝58,59は、質量体55の内周に環状に設けられており、溝58と溝59との間に接触部60が設けられている。つまり、溝58,59は、中心線A1方向で接触部60の両側に配置されている。溝58,59の内径は同じであり、溝58,59の内径は、接触部60の内径よりも大きい。接触部60は、シリンダ35の外面に接触し、質量体55がシリンダ35の径方向に移動することを抑制する。質量体55の中心線A1方向の全長は、接触部60の全長よりも大きい。また、質量体55の中心線A1方向の全長は、第1呼吸孔47と第2呼吸孔48との最短距離よりも小さい。
弾性部材56,57は共に、金属製の圧縮コイルバネであり、かつ、中心線A1方向に伸縮可能である。さらに、弾性部材56,57のバネ定数は同じである。シリンダホルダ34の内周にスナップリング61が取り付けられており、弾性部材56は、中心線A1方向で質量体55とスナップリング61との間に配置されている。シリンダホルダ34内に環状のプレート62が設けられている。プレート62は、中心線A1方向でダンパホルダ49と質量体55との間に配置されている。プレート62とダンパホルダ49との間にリング63が配置されている。
弾性部材56,57は、共に中心線A1方向の圧縮力を受けた状態で、空間C1内に配置されている。弾性部材56,57は、中心線A1方向において質量体55の両側に設けられている。弾性部材56は、質量体55をリテーナスリーブ36に近づける向きで付勢する。弾性部材57は、質量体55をリテーナスリーブ36から離す向きで付勢する。
振動低減機構54の作用を説明する。ハウジング13が中心線A1方向に振動していない場合、図2のように、質量体55は中心線A1方向で第1呼吸孔47と第2呼吸孔48との間に位置する。つまり、第1呼吸孔47は空間C1につながり、かつ、第2呼吸孔48は空間C1につながっている。
打撃作業機10で打撃作業が行われて、ハウジング13が中心線A1方向に振動すると、質量体55はハウジング13が移動する向きとは逆の位相で移動する。例えば、ハウジング13が対象物12から離れる向きに移動すると、図5のように、質量体55は弾性部材57の付勢力に抗してリテーナスリーブ36に近づく向きで移動する。
質量体55がリテーナスリーブ36に最も近づいた状態において、質量体55の一部は、シリンダ35の径方向で第1呼吸孔47の配置領域と重なる。例えば、図5のように、弾性部材57が全圧縮状態になると、質量体55がリテーナスリーブ36に最も近づいた状態となる。弾性部材57の全圧縮状態は、中心線A1方向の圧縮荷重に対して、弾性部材57の弾性変形量が最大となった状態を意味する。言い換えると、弾性部材57にそれ以上の圧縮荷重を加えても、全圧縮状態を越えて弾性変形することは無い。なお、質量体55がリテーナスリーブ36に最も近づいた状態は、ハウジング13の振動中における一時的な状態であり、質量体55は図5に示す位置に停止しない。
また、質量体55の一部が、シリンダ35の径方向で第1呼吸孔47の配置領域と重なるとは、次の意味である。即ち、質量体55の配置領域及び第1呼吸孔47の配置領域を、シリンダ35の径方向に投影すると、質量体55の配置領域の一部と、第1呼吸孔47の配置領域とが重なる、という意味である。なお、中心線A1方向における質量体55の配置領域の一部と、中心線A1方向における第1呼吸孔47の配置領域とが重なるものとして把握することも可能である。
しかし、接触部60がシリンダ35の外面に接触する箇所は、中心線A1方向で第1呼吸孔47と第2呼吸孔48との間である。言い換えれば、中心線A1方向におけるピストン44の位置に関わりなく、接触部60は、ピストン44と第1呼吸孔47との間でシリンダ35の外面に接触する。つまり、接触部60が第1呼吸孔47を塞ぐことは無く、第1呼吸孔47は溝59により空間C1につながる。このため、先端工具11が対象物12から離されて、打撃子45が図5の位置からさらにリテーナスリーブ36に近づく向きで移動すると、圧力室B1は第1呼吸孔47につながり、空打ちを防止できる。
これに対して、打撃作業機10による打撃作業中、ハウジング13が対象物12に近づく向きに移動すると、図6のように、質量体55は弾性部材56の付勢力に抗してリテーナスリーブ36から離れる向きで移動する。
実施形態の打撃作業機10は、質量体55がリテーナスリーブ36から最も離れた状態においても、接触部60は、中心線A1方向で第1呼吸孔47と第2呼吸孔48との間に位置する。つまり、接触部60は第2呼吸孔48を塞いでおらず、第2呼吸孔48は溝58により空間C1につながっている。このため、ピストン44がリテーナスリーブ36から離れる向きで動作する行程で、質量体55は、空間C1の空気が第2呼吸孔48を通り圧力室B1に吸い込まれる作用を阻害しない。また、ピストン44がリテーナスリーブ36に近づく向きで移動する行程で、質量体55は、圧力室B1の空気の一部が、第2呼吸孔48を通り空間C1に排出される作用を阻害しない。したがって、質量体55は、第2呼吸孔48が圧力室B1の圧力を調整する作用を妨げない。
質量体55がリテーナスリーブ36から最も離れた状態とは、例えば、図6のように、弾性部材56の弾性変形量が最大となった状態である。なお、質量体55がリテーナスリーブ36から最も離れた状態は、ハウジング13の振動中における一時的な状態であり、質量体55は図6に示す位置に停止しない。
質量体55の中心線A1方向の全長は、接触部60の全長よりも大きく、質量体55が第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48を塞ぐことが無い。このため、ハウジング13の振動モードまたは固有振動数に合わせて、質量体55の中心線A1方向の全長を変更し、質量体55の質量を設定できる。したがって、振動低減機構54による振動低減効果を高めることができる。
さらに、ハウジング13内には、潤滑剤、例えば、潤滑用のグリースまたは潤滑油が封入されている。潤滑剤は、ギヤ27とギヤ31との噛み合い箇所、軸受26,30作動箇所、ピストン44とシリンダ35との摺動箇所、質量体55とシリンダ35との摺動箇所を潤滑する。質量体55に設けた溝58,59は潤滑剤を保持できるため、質量体55とシリンダ35との摺動箇所を潤滑する性能を向上できる。
このように、打撃作業機10は、中心線A1方向でシリンダ35に対する質量体55の位置に関わりなく、空間C1は第1呼吸孔47につながり、かつ、空間C1は第2呼吸孔48により圧力室B1につながっている。また、シリンダ35とシリンダホルダ34との間に空間C1が設けられ、振動低減機構54は空間C1に配置されている。このため、振動低減機構54を設ける空間は、ハウジング13の内部に専用で設けずに済む。したがって、ハウジング13が中心線A1方向、つまり、ピストン44の動作方向に大型となることを防止できる。
質量体55が中心線A1方向に動作する範囲を規制するストッパの他の例は、図7に示されている。シリンダ35の外周面において、第1呼吸孔47と第2呼吸孔48との間に、ストッパ64が設けられている。シリンダ35の外周面に、円周方向に沿った溝が設けられ、ストッパ64は溝に取り付けられている。ストッパ64は、金属製の環状体であり、ストッパ64の外径は、溝59の内径よりも小さく、かつ、接触部60の内径よりも大きい。質量体55が中心線A1方向に移動すると、ストッパ64は溝59に出入りする。質量体55がリテーナスリーブ36に近づく向きで動作し、接触部60がストッパ64に接触すると、質量体55は、それ以上にリテーナスリーブ36に近づくことはできない。
そして、質量体55がリテーナスリーブ36に最も近づいた状態、つまり、接触部60がストッパ64に接触した時点において、第1呼吸孔47は溝59により空間C1につながっている。このため、質量体55がリテーナスリーブ36に最も近づいた状態にある場合に、先端工具11が対象物12から離れ、かつ、打撃子45がリテーナスリーブ36に近づく向きで動作すると、圧力室B1は第1呼吸孔47により空間C1につながる。したがって、ピストン44がリテーナスリーブ36に近づく向きで動作しても、空打ちを防止できる。なお、図7において、質量体55がリテーナスリーブ36に最も近づいた状態は、ハウジング13の振動中における一時的な状態であり、質量体55は図7に示す位置に停止しない。また、図7において、弾性部材57として用いる圧縮コイルバネの内径は、ストッパ64の外径よりも大きい。したがって、ストッパ64が溝59から出た場合に、ストッパ64は弾性部材57に接触しない。この場合、弾性部材56,57の内径を同じにすることで、弾性部材56,57のバネ定数を同一にする。
さらに、図5〜図7は、中心線A1方向で第1呼吸孔47及び第2呼吸孔48に対する質量体55の位置を説明する図である。このため、ピストン44の動作中、ピストン44と質量体55との相対位置は、図5〜図7のいずれかに示すピストン44と質量体55との相対位置と一致しないこともある。さらに、打撃子45が移動し、Oリング46がシリンダ35の内面に接触する位置が、ピストン44と第2呼吸孔48との間になることもある。
打撃作業機は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、呼吸孔と空間とをつなぐために質量体に設ける切り欠きは、溝58,59の他、質量体の内周端の角部に施した面取り部を含む。面取り部は、中心線A1に対して傾斜した斜面を有する。また、質量体がリテーナスリーブに近づく向きで動作する範囲を規制する規制部材は、シリンダの外周面に取り付けるストッパの他、シリンダホルダの内周面に取り付けるストッパを含む。
先端工具は、電動モータの回転力を受けて回転してもよい。この場合、先端工具が打撃子の打撃力によって動作する打撃モード、電動モータの回転力を受けて回転する回転モード、先端工具が回転しながら打撃を行うモード等、複数のモードを設定可能である。そして、作業者が複数のモードを切り替えることが可能である。
さらに、電動モータは、ブラシ付きモータまたはブラシレスモータの何れでもよい。電動モータに電力を供給する電源部は、打撃作業機とは別に設けられる交流電源または直流電源の他、ハウジングの内部に設ける直流電源、または、ハウジングの外部に設けられ、かつ、ハウジングに着脱可能な直流電源を含む。クランクシャフト及びコンロッドは、モータの回転力をピストンの往復動作力に変換する変換機構である。変換機構は、クランクシャフト及びコンロッドに代えてカム機構を用いることも可能である。
動力源としてのモータは、電動モータに代えてエンジンを用いることも可能である。エンジンは、燃料を燃焼させて熱エネルギを運動エネルギに変換する動力源であり、エンジンは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、液化プロパンガスエンジンを含む。