JP6724737B2 - 帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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Description

本発明は、帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。詳しくは、本発明は、優れた難燃性及び帯電防止性を有する帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と、この帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂、特に芳香族ポリカーボネート樹脂は、機械的強度、耐熱性、透明性等に優れた樹脂として、電気・電子・OA機器の各種部品、自動車部品、建材、医療用途、雑貨等の分野で幅広く用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂は表面抵抗率が高いので、接触や摩擦等で発生した静電気が消滅し難く、成形品表面にゴミや塵が付着して外観や透明性を損ない、さらに、人体への電撃による不快感、ノイズの発生や機器の誤作動等の問題がある。このため、ポリカーボネート樹脂本来の特性を損なうことなく、表面抵抗率を下げて、帯電防止性を付与したポリカーボネート樹脂組成物が求められている。
従来、帯電防止性を有するポリカーボネート樹脂組成物としては、ポリカーボネート樹脂に、帯電防止剤として、スルホン酸ホスホニウム塩、ジグリセリン脂肪酸エステル、フッ素含有有機アンモニウム塩を配合したものが知られている。例えば、特許文献1には、帯電防止剤としてスルホン酸ホスホニウム塩を配合したものが提案されている。特許文献2には、帯電防止性付与のためにジグリセリン脂肪酸エステルを配合したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。また、特許文献3には、帯電防止剤として、フッ素含有有機アンモニウム塩とジグリセリン脂肪酸エステルを併用したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
電気・電子・OA機器の各種部品、自動車部品、建材、医療用途、雑貨といった用途において、難燃性もまた重要な要求特性であり、特許文献4には、芳香族ポリカーボネート樹脂に有機スルホン酸金属塩を配合して難燃性を向上させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
特公平01−029500号公報 特開2010−150470号公報 特開2011−202096号公報 特開2013−107928号公報
従来の帯電防止剤のうち、スルホン酸ホスホニウム塩は、成形時の変色や樹脂の分子量低下の問題があり、また、十分な帯電防止性を発揮させるために必要な添加量が多く、ポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性等の物性を大きく低下させる問題がある。
また、ジグリセリン脂肪酸エステルは成形時の発生ガスが多く、金型の汚染を生じやすい。フッ素含有有機アンモニウム塩は成形時の変色が少なく、発生ガスも少ない優れた帯電防止剤であるが、更なる帯電防止性付与効果の向上が望まれる。
また、帯電防止性ポリカーボネート樹脂成形品の用途において、難燃性も重要な要求特性であるが、フッ素含有有機アンモニウム塩に有機スルホン酸金属塩を組み合わせて用いることで、難燃性のみならず、帯電防止性の更なる向上を達成することができることは知られておらず、難燃剤としての有機スルホン酸金属塩により、難燃性とは全く異質の特性である帯電防止性が向上することは、当業者にも予測し得ないことである。
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の透明性を損なうことなく、帯電防止性及び難燃性を向上させた帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物と、この帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するべく、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する帯電防止剤及び難燃剤について鋭意研究を重ねた結果、帯電防止剤としてのフッ素含有有機アンモニウム塩と共に、有機スルホン酸金属塩を組み合わせて用いることにより、難燃性のみならず、帯電防止性の更なる向上を図ることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)下記式(1)で表されるフッ素含有有機アンモニウム塩0.5〜5.5質量部と、(C)有機スルホン酸金属塩0.01質量部以上0.2質量部未満とを含有することを特徴とする帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[(RN]・(RSO)(RSO)N …(1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。)
[2] [1]において、(B)フッ素含有有機アンモニウム塩が、1,1,1−トリブチル−1−メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであることを特徴とする帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[3] [1]又は[2]において、(C)有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩及び/又は芳香族スルホン酸アルカリ金属塩であることを特徴とする帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、(B)フッ素含有有機アンモニウム塩と(C)有機スルホン酸金属塩の含有質量比((B)フッ素含有有機アンモニウム塩/(C)有機スルホン酸金属塩)が2以上55以下であることを特徴とする帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
[6] [5]に記載の成形品を含む電気電子部品。
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の透明性に優れる上に、帯電防止性及び難燃性にも優れ、電気・電子・OA機器の各種部品、特に液晶画面のカバーや電子回路基板のカバー等や、自動車部品、建材、医療用途、雑貨等の幅広い分野に有用である。
なお、帯電防止剤としてフッ素含有有機アンモニウム塩を用いた本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、発生ガスによる金型汚染(モールドデポジット)の問題もなく、高品質の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を高生産効率にて歩留りよく製造することが可能である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[芳香族ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、(B)下記式(1)で表されるフッ素含有有機アンモニウム塩0.5〜5.5質量部と、(C)有機スルホン酸金属塩0.01質量部以上0.2質量部未満とを含有することを特徴とする。
[(RN]・(RSO)(RSO)N …(1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。)
<(A)芳香族ポリカーボネート樹脂>
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる芳香族ポリカーボネート重合体である。上記芳香族ポリカーボネート重合体は分岐を有していてもよい。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物の中では、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際に、上記芳香族ジヒドロキシ化合物に加えてさらに分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を少量添加してもよい。この場合、上記(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は分岐を有するものになる。
上記3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノールとしては、例えばフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。この中でも、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン又は1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンが好ましい。上記多価フェノールの使用量は、上記芳香族ジヒドロキシ化合物を基準(100モル%)として好ましくは0.01〜10モル%となる量であり、より好ましくは0.1〜2モル%となる量である。
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
また上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル及びイソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで炭酸ジエステルの一部を置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用される。中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
上記(A)芳香族ポリカーボネート樹脂には、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは10,000〜50,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜40,000の範囲であり、特に好ましくは12,000〜30,000の範囲である。粘度平均分子量が10,000以上であると、機械的特性がより効果的に発揮され、50,000以下であると、成形加工がより容易になる。
ここで粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、20℃の温度で測定した溶液粘度より換算して求めたものである。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量の異なる2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合したものであってもよく、また粘度平均分子量が上記範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量の範囲内としたものであってもよい。
<(B)フッ素含有有機アンモニウム塩>
本発明で用いる(B)フッ素含有有機アンモニウム塩は、下記式(1)で表されるものである。
[(RN]・(RSO)(RSO)N …(1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。)
上記式(1)で表される(B)フッ素含有有機アンモニウム塩の中でも、特に下記式(2)に示される1,1,1−トリブチル−1−メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好適に使用できる。
Figure 0006724737
(B)フッ素含有有機アンモニウム塩は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(B)フッ素含有有機アンモニウム塩の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.5〜5.5質量部、好ましくは0.7〜3.0質量部、より好ましくは1.0〜2.0質量部、更に好ましくは1.0〜1.5質量部、特に好ましくは1.0質量部を超え1.5質量部以下である。(B)フッ素含有有機アンモニウム塩の含有量が上記下限未満では、帯電防止性の向上効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると、透明性が低下するので好ましくない。
<(C)有機スルホン酸金属塩>
本発明では、難燃剤として(C)有機スルホン酸金属塩を用いる。
金属塩は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の向上に有効であるが、金属塩のうち、特に、芳香族ポリカーボネート樹脂への分散性の面で有機金属塩が好ましく、有機金属塩の中でも、(C)有機スルホン酸金属塩は、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合した場合の熱安定性に優れる点において最も好ましい。
(C)有機スルホン酸金属塩の金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属;並びに、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブテン(Mo)等が挙げられる。なかでも特に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時の炭化層形成を促進し、難燃性をより高めることができると共に、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂が有する耐衝撃性等の機械的物性、耐熱性、電気的特性などの性質を良好に維持できることから、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がさらに好ましく、ナトリウム、カリウム、セシウムが最も好ましい。
(C)有機スルホン酸金属塩の例を挙げると、有機スルホン酸リチウム(Li)塩、有機スルホン酸ナトリウム(Na)塩、有機スルホン酸カリウム(K)塩、有機スルホン酸ルビジウム(Rb)塩、有機スルホン酸セシウム(Cs)塩、有機スルホン酸マグネシウム(Mg)塩、有機スルホン酸カルシウム(Ca)塩、有機スルホン酸ストロンチウム(Sr)塩、有機スルホン酸バリウム(Ba)塩等が挙げられる。このなかでも特に、有機スルホン酸ナトリウム(Na)塩、有機スルホン酸カリウム(K)塩、有機スルホン酸セシウム(Cs)塩等の有機スルホン酸アルカリ金属塩が好ましい。
有機スルホン酸金属塩のうち、好ましいものの例としては、パーフルオロアルカンスルホン酸又は芳香族スルホン酸の金属塩が挙げられる。そのなかでも好ましいものの具体例を挙げると、次の通りである。
パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩としては、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸セシウム等のパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩;パーフルオロブタンスルホン酸マグネシウム、パーフルオロブタンスルホン酸カルシウム、パーフルオロブタンスルホン酸バリウム、トリフルオロメタンスルホン酸マグネシウム、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム、トリフルオロメタンスルホン酸バリウム等のパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
芳香族スルホン酸金属塩としては、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸カリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸セシウム、(ポリ)スチレンスルホン酸セシウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸セシウム、トリクロロベンゼンスルホン酸セシウム等の、分子中に少なくとも1種の芳香族基を有する芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩;パラトルエンスルホン酸マグネシウム、パラトルエンスルホン酸カルシウム、パラトルエンスルホン酸ストロンチウム、パラトルエンスルホン酸バリウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム等の、分子中に少なくとも1つの芳香族基を有する芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
上述した例示物のなかでも、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩が特に好ましく、具体的にはパーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム等が好ましい。
(C)有機スルホン酸金属塩は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(C)有機スルホン酸金属塩の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.2質量部未満、好ましくは0.05〜0.15質量部、より好ましくは0.05〜0.1質量部である。(C)有機スルホン酸金属塩の含有量が上記下限未満では、難燃性の向上効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると、透明性が低下するので好ましくない。
<(B)フッ素含有有機アンモニウム塩と(C)有機スルホン酸金属塩の含有質量比>
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂本来の透明性を損なうことなく、難燃性及び帯電防止性の向上効果をバランスよく得るために、帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(B)フッ素含有有機アンモニウム塩と(C)有機スルホン酸金属塩の含有質量比((B)フッ素含有有機アンモニウム塩/(C)有機スルホン酸金属塩)が2以上であることが好ましく、4.5以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、7.8以上であることが特に好ましい。一方、この含有質量比は55以下であることが好ましく、45以下であることがより好ましい。
<(D)熱安定剤>
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性を向上させるために(D)熱安定剤、好ましくはホスファイト系熱安定剤、より好ましくは芳香族ホスファイト系熱安定剤を含んでいてもよい。
(D)芳香族ホスファイト系熱安定剤としては、例えば下記式(I)で表されるものが好ましいものとして挙げられる。
Figure 0006724737
(式(I)中、R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、R19〜R22は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、a〜dは、それぞれ独立に0〜3の整数を示す。)
上記式(I)において、R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが好ましく、また、a〜dは、0であることが好ましい。
式(I)で表される芳香族ホスファイト系熱安定剤としては、特に下記構造式(Ia)で表されるビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
Figure 0006724737
また、(D)芳香族ホスファイト系熱安定剤としては、下記式(II)で表されるものも、好ましいものとして挙げられる。
Figure 0006724737
(式(II)中、R21〜R25は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
上記式(II)中、R21〜R25で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基などが挙げられる。式(II)で表される芳香族ホスファイト系熱安定剤としては、特に、下記構造式(IIa)で表されるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
Figure 0006724737
これらの(D)芳香族ホスファイト系熱安定剤は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
これらの芳香族ホスファイト系熱安定剤のうち、特にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好適である。
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が上記芳香族ホスファイト系熱安定剤等の(D)熱安定剤を含有する場合、本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中の(D)熱安定剤の含有量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜0.5質量部であることが好ましく、0.01〜0.3質量部であることがより好ましく、0.01〜0.1質量部であることが更に好ましい。(D)熱安定剤の含有量が上記下限以上であると、熱安定性の改善効果を十分に得ることができ、上記上限以下であると、発生ガス量を低減することができる。
<その他の成分>
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分としてさらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、蛍光増白剤、染顔料、難燃剤、耐衝撃改良剤、滑剤、可塑剤、相溶化剤、充填剤等が配合されてもよい。
<帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法>
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば最終成形品を成形するまでの任意の段階で、各成分を一括又は分割して配合し、溶融混練する方法が挙げられる。各成分の配合方法としては、例えばタンブラー、ヘンシェルミキサー等を使用する方法、フィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給して混合する方法などが挙げられる。溶融混練の方法としては、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を使用する方法などが挙げられる。
[成形品]
本発明の成形品は、上述の本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形方法には特に制限はないが、例えば、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法などが挙げられ、好ましくは射出成形法である。
なお、成形時の樹脂の熱劣化を抑制し、初期色相に優れたものを得るために、本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する際には、窒素等の不活性ガス雰囲気下で成形を行うことが好ましい。
本発明の成形品は、その優れた帯電防止性及び難燃性から、電気電子機器の筐体等の部品として好ましく用いられる。より具体的には、リレー、スイッチ、コネクター、ターミナルスイッチ、センサー、アクチュエーター、マイクロスイッチ、マイクロセンサー及びマイクロアクチュエーター等の電気電子機器の筐体として好ましく用いることができる。例えば、パソコン、パチンコ機、ゲーム機、テレビ、電子ペーパーなどのディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。また、アミューズメント向けの筐体、例えば、パチンコ、パチスロ、アーケード用ゲーム機器の筐体、及びそれら内部回路基板の保護カバー、液晶画面のカバー等に用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において用いた材料は次のとおりである。
<(A)芳香族ポリカーボネート樹脂>
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ユーピロン(登録商標)S−3000」(粘度平均分子量22,000)
<(B)フッ素含有有機アンモニウム塩>
3M社製「FC4400」(1,1,1−トリブチル−1−メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル))
<(C)有機スルホン酸金属塩>
ランクセス社製「Bavowet C4」(パーフルオロブタンスルホン酸カリウム)
<(D)熱安定剤>
ADEKA社製「アデカスタブ2112」(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)
[実施例〜8、参考例1及び比較例1〜7]
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造>
表1,2に示す成分を表1,2に示す割合となるように配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して混合物を得た。この混合物を、2軸押出機(東芝機械製「TEM26SX」)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度260℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
得られた樹脂組成物のペレットを用い、以下の評価を行って、結果を表1,2に示した。
<表面抵抗値>
各樹脂組成物のペレットを用いて、射出成形機(ファナック製「α−2000i−150B」)により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、φ100mm×3mmtの円板型成形品を成形した。この円板型成形品に対して、JIS K 6911に準拠して、印加電圧500Vで表面抵抗値(単位:Ω)を測定した。表面抵抗値は、1×1014Ω未満が好ましい。
<酸素指数>
各樹脂組成物のペレットを120℃で4〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、射出成形機(東洋機械金属製「Si−80−6」)により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、角柱状成形品(4mm×10mm×100mm)を成形した。この成形品に対して、東洋精機社製「OXIGEN INDEXERISO」を使用し、JIS K 7201に準拠して試験を行い、燃焼酸素指数(LOI)を求めた。酸素指数は30以上が好ましい。
<HAZE(3mmt)>
各樹脂組成物のペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業社製「NS40」)により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で50mm×25mm×厚さ3mm、2mm、1mmの3段プレートを成形した。この3段プレートの3mm厚部分について、濁度計(日本電色工業社製「NDH−2000型」)を用いてHAZEを測定した。この値は小さいほど好ましい。
Figure 0006724737
Figure 0006724737
表1,2より、本発明の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、帯電防止性、難燃性、透明性に優れることが分かる。
表1より次のことが分かる。
(B)フッ素含有有機アンモニウム塩及び(C)有機スルホン酸金属塩を含有しない比較例1は、帯電防止性及び難燃性に劣る。
(B)フッ素含有有機アンモニウム塩のみを用いた比較例2は比較例1よりも難燃性及び帯電防止性に優れるが十分ではない。
(B)フッ素含有有機アンモニウム塩と(C)有機スルホン酸金属塩の併用において、(C)有機スルホン酸金属塩の配合量を変えて配合した参考例1及び実施例〜4より、(C)有機スルホン酸金属塩の配合量を増やすにつれて、LOI(難燃性)が向上するだけでなく、表面抵抗値も低下し、帯電防止性が向上していることが分かる。
即ち難燃剤である(C)有機スルホン酸金属塩の配合で、難燃性のみならず、帯電防止性の更なる向上を図ることができる。
比較例3,4は、(C)有機スルホン酸金属塩の配合量が多過ぎるものであり、難燃性、帯電防止性は良好であるが、透明性が悪い。
表2は、(C)有機スルホン酸金属塩の配合量を同一として(B)フッ素含有有機アンモニウム塩の配合量を変えたものであり、(B)フッ素含有有機アンモニウム塩を増やすと難燃性も帯電防止性も向上するが透明性が損なわれ、(B)フッ素含有有機アンモニウム塩の配合量が本発明の範囲よりも多い比較例7では透明性が大きく低下することが分かる。
一方、(B)フッ素含有有機アンモニウム塩の配合量が本発明の範囲よりも少ない比較例5,6では帯電防止性が悪い。

Claims (5)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、
    (B)下記式(1)で表されるフッ素含有有機アンモニウム塩0.5〜5.5質量部と、
    (C)有機スルホン酸金属塩0.01質量部以上0.2質量部未満と
    を含有し、
    (B)フッ素含有有機アンモニウム塩と(C)有機スルホン酸金属塩の含有質量比((B)フッ素含有有機アンモニウム塩/(C)有機スルホン酸金属塩)が2以上55以下であることを特徴とする帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
    [(RN]・(RSO)(RSO)N …(1)
    (式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜20のアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。)
  2. 請求項1において、(B)フッ素含有有機アンモニウム塩が、1,1,1−トリブチル−1−メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであることを特徴とする帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2において、(C)有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩及び/又は芳香族スルホン酸アルカリ金属塩であることを特徴とする帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の帯電防止性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
  5. 請求項に記載の成形品を含む電気電子部品。
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