以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて好ましい数値範囲を構成することができる。
《プリント配線板製造用キット》
本実施形態のプリント配線板製造用キットは、酸化第一銅微粒子を含む層を有する基板と、酸解離定数(pKa)が水中で−2以上の酸性の化合物(本願明細書において、単に用語を区別する目的で、「現像用化合物」ともいう。)を含む現像液とを有する。
本実施形態のプリント配線板製造用キットは、酸化第一銅微粒子を含む層を有する基板と組み合わせて、上記特定の現像液を有することにより、酸化第一銅微粒子を含む層をより迅速に除去することができ、現像による導電性パターンの抵抗の増加が少なく、より精密な導電性パターンを形成することができる。
〈基板〉
基板は、酸化第一銅微粒子を含む層を有する。導電性パターンを形成するために用いる前駆体粒子としての酸化第一銅は、非特許文献1に記載の銀粒子等と比較して低コストであり、酸化劣化しない点で有利である。
酸化第一銅微粒子を含む層は、基板表面のうち少なくともレーザを照射する領域に形成されていればよい。酸化第一銅微粒子を含む層は、片面若しくは両面の全体に形成されていてもよく、又はレーザを照射する領域に沿ったパターンで形成されていてもよい。レーザを照射する領域に沿ったパターンで形成されている場合、酸化第一銅微粒子の使用量を低減できる。
基板は、基板と記酸化第一銅微粒子を含む層との間に配置されたコーティング層を更に有することが好ましい。コーティング層は、−OH基を有する化合物(本願明細書において、単に用語を区別する目的で、「コーティング用化合物」ともいう)を含むことが更に好ましい。他の側面において、コーティング化合物は、−Ar−O構造又は−M−O構造を有することもまた好ましい。ここで、Arは芳香族を、Mは金属原子を指す。基板が上記コーティング層を有すると、レーザの熱が基板まで伝わりにくく、基板として耐熱性の低い樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂であっても使用することができ、汎用性が高くなる。また、基板が上記コーティング層を有すると、光照射による酸化第一粒子を含む層の爆散を低減することができ、基板と銅配線パターンとの密着性がより良好になるため好ましい。
−OH基は、特に芳香族性水酸基(すなわち、−Ar−OH基)又は金属原子に結合した水酸基(すなわち、−M−OH基)であることが好ましい。−Ar−OH基及び−M−OH基の−OH基は活性が高く、基板や酸化第一銅微粒子を含む層との密着性に優れる傾向にある。
−Ar−OH基における芳香族(Ar)としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、及びトリフェニレン等の芳香族炭化水素;並びに、チオフェン、チアゾール、ピロール、フラン、ピリジン、ピラゾール、イミダゾール、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジン等の複素芳香族が挙げられる。芳香族構造のπ電子系に含まれる電子数は、22以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。π電子系に含まれる電子数が22以下であると結晶性が高くなりすぎず、柔軟で平滑性の高い層を得やすくなる。芳香族構造は、芳香環に結合した水素の一部が官能基によって置換されていてもよい。官能基としては、例えば、ハロゲン、アルキル基(例えばメチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、チエニル基等)、ハロアリール基(例えばペンタフルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基等)、アルケニル基、アルキニル基、アミド基、アシル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフチル基等)、ハロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基等)、チオシアノ基、及び水酸基等を挙げることができる。−Ar−OH基としては、特にフェノール(−Ph−OH)基が好ましい。
−M−OH基における金属原子(M)としては、ケイ素、銀、銅、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、タンタル、錫、カルシウム、セリウム、クロム、コバルト、ホルミウム、ランタン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、アンチモン、サマリウム、テルビウム、タングステン、イットリウム、亜鉛、及びインジウム等が挙げられる。コーティング層に絶縁性を要する場合は、−Si−OH、又はZr−OHを用いることが好ましく、コーティング層に導電性を要する場合は、−Ti−OH、又は−Zn−OHを用いることが好ましい。
Ar−O構造における芳香族は、上記−Ar−OH基における芳香族と同様のものを用いることができる。特に、Ar−O構造としては、Ph−O構造が好ましい。
M−O構造における金属原子は、上記−M−OH基における金属原子と同様のものを用いることができる。特に、M−O構造としては、Si−O構造、Ti−O構造、Zn−O構造、及びZr−O構造が好ましい。
Si−O構造を有するコーティング用化合物としては、例えばシリカ系化合物、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、シリコーン系化合物、例えばポリシロキサン、例えばアルキルポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
コーティング用化合物としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)及びシリコーン樹脂等に、上記−OH基、及び/又はAr−O構造若しくはM−O構造を導入した材料が挙げられる。コーティング用化合物としては、特に、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリイミドが好ましい。
コーティング層の厚さの上限値は特に限定されないが、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下であり、下限値は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。
酸化第一銅微粒子の平均二次粒子径は、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは80nm以下である。平均二次粒子径とは、酸化第一銅微粒子の一次粒子が複数個集まって形成される凝集体(二次粒子)の平均粒子径をいう。酸化第一銅微粒子の平均二次粒子径が500nm以下であると、基板上により微細なパターンを形成することができるため好ましい。
酸化第一銅微粒子の平均一次粒子径の上限値は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下であり、下限値は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上である。平均一次粒子径が100nm以下であると、表面エネルギーが大きくなって、融点が低下するため低エネルギーで導電パターンを形成することができ、また、基板上により微細なパターンを形成することができるため好ましい。平均一次粒子径が1nm以上であると、酸化第一銅を含む層の良好な分散性を得ることができるため好ましい。
酸化第一銅を含む層における粒子の含有率の下限値は、酸化第一銅を含む層の全質量を基準として、好ましくは40質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、上限値は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。酸化第一銅を含む層における粒子の含有率が90質量%以下であると、粒子の凝集を抑制し易くなる傾向がある。含有率が40質量%以上であると、得られる導電パターンが過度に薄くならず、導電性が良好となる傾向があるので好ましい。
酸化第一銅を含む層の表面粗さ(Ra)は、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.1μm以下である。表面粗さ(Ra)が5μm以下であると、基板上により微細なパターンを形成することができるため好ましい。
基板に用いる材料としては特に限定されず、例えば硬質材料、例えばガラス−エポキシコンポジット、テフロン(登録商標)、アルミナ、及びセラミックス等;フレキシブル材料、例えばポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリエステル(PE)、並びにこれらの組合せが挙げられる。
基板の荷重たわみ温度は、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは230℃以下である。基板の荷重たわみ温度が250℃以下であると、よりフレキシブルで、他の層との密着性に優れる傾向があるため好ましい。基板の荷重たわみ温度が250℃以下である基板としては、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
〈現像液〉
本実施形態において、現像液は、酸性の現像用化合物を含む。
現像用化合物の酸解離定数(pKa)は、水中においては、−2以上である。酸解離定数(pKa)は、水中で15以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく;−2以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましい。15以下であれば酸化銅を溶出することができ、−3以上であれば銅を溶解しない。また、現像用化合物の酸解離定数(pKa)は、DMSO中においては、28以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましく;1以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。
現像用化合物は、チオール、リン酸、ホスホン酸、カルボン酸、スルホン酸並びにこれらのエステル及び塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有してもよい。
理論に限定されないが、酸性の現像用化合物は、酸化第一銅を塩にして溶解させることにより除去することができるか、酸化第一銅微粒子に吸着し、これをほぐして現像液中に分散させることができるため、良好な現像特性を有すると考えられる。カルボン酸、並びにそのエステル及び塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する現像用化合物は、主に酸化第一銅を塩にして溶解させることにより除去することができるため、良好な現像特性を有すると考えられる。チオール、並びにそのエステル及び塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する現像用化合物は、主に酸化第一銅微粒子に吸着し、これをほぐして現像液中に分散させることができるため、良好な現像特性を有すると考えられる。また、リン酸、ホスホン酸、スルホン酸並びにそのエステル及び塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する現像用化合物は、上記の塩形成による溶解、及び吸着による分散の両方の機構により、良好な現像特性を有すると考えられる。
現像用化合物としては、好ましくは、チオール、リン酸エステル、ホスホン酸、スルホン酸及びカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物が挙げられる。
カルボン酸としては、飽和脂肪酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、及びステアリン酸等)、不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、及びソルビン酸等)、ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、リンゴ酸、及びクエン酸等)、芳香族カルボン酸(例えば安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、及びけい皮酸等)、ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、及びマレイン酸等)、トリカルボン酸(例えばアコニット酸等)、オキソカルボン酸(例えば、ピルビン酸、オキサロ酢酸等)、アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、サイロキシン、O−ホスホセリン、デスモシン、サルコシン、オルニチン、シトルリン、クレアチン、γ−アミノ酪酸、オパイン、トリメチルグリシン、テアニン、トリコロミン酸、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、及びアクロメリン酸等)、ハロゲン化カルボン酸(例えばクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、及びトリフルオロ酢酸等)等が挙げられ、好ましくは酢酸が挙げられる。
チオールとしては、アルカンチオール、フルオロアルカンチオール、分岐アルカンチオール、アミド結合を有するチオール、アミノ基を有するチオール、エステル結合を有するチオール、炭素間二重結合を有するチオール、ジチオール、−SH基を有する有機塩、オキシエチレン骨格を有するチオール、複素環骨格を有するチオール、−OH基を有するチオール、有機金属錯体骨格を有するチオール、アジド基を有するチオール、カルボキシ基を有するチオール、ホスホン酸基を有するチオール、NHS基を有するチオール、ハロゲンを有するチオール、芳香環を有するチオール、脂環式化合物骨格を有するチオール、及びホウ素化合物骨格を有するチオール等が挙げられる。
アルカンチオールとしては、例えば、エタンチオール、ブタンチオール、デカンチオール、ヘプタンチオール、ヘキサデカンチオール、ヘキサンチオール、ノナンチオール、オクタデカンチオール、オクタンチオール、ペンタンチオール、ペンタデカンチオール、プロパンチオール、テトラデカンチオール、及びウンデカンチオール等が挙げられる。
フルオロアルカンチオールとしては、例えば、11−メルカプトウンデシルトリフルオロアセテート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデカンチオール、及び3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサンチオール等が挙げられる。
分岐アルカンチオールとしては、例えば、2−エチルヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチルー2−プロパンチオール、3−メチル−1−ブタンチオール、tert−ドデシルメルカプタン、及びtert−ノニルメルカプタン等が挙げられる。
アミド結合を有するチオールとしては、例えば、3−メルカプト−N−ノニルプロピオンアミド、及び11−メルカプトウンデカンアミド等が挙げられる。
シアノ基を有するチオールとしては、例えば、4−シアノ−1−ブタンチオール等が挙げられる。
アミノ基を有するチオールとしては、例えば、アミノアルカンチオール等が挙げられる。
エステル結合を有するチオールとして、例えば、ブチル3−メルカプトプロピオネート、及び3−メルカプトプロピオン酸メチル等が挙げられる。
炭素間二重結合を有するチオールとしては、例えば、cis−9−オクタデセン−1−チオール等)、ジチオール(1,11−ウンデカンジチオール、1,16−ヘキサデカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2,2‘−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,3−ブタンジチオール、5,5’−ビス(メルカプトメチル)−2,2‘−ビピリジン、ヘキサ(エチレングリコール)ジチオール、テトラ(エチレングリコール)ジチオール、ベンゼン−1,4−ジチオール、及び1,4−ベンゼンジメタンチオール等が挙げられる。
チオール基を有する有機塩としては、例えば、(11−メルカプトウンデシル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロマイド、11−アミノ−1−ウンデカンチオール塩酸塩、16−アミノ−1−ヘキサデカンチオール塩酸塩、3−アミノ−1−プロパンチオール塩酸塩、6−アミノ−1−ヘキサンチオール塩酸塩、及び8−アミノ−1−オクタンチオール塩酸塩等が挙げられる。
オキシエチレン骨格を有するチオールとしては、例えば、(11−メルカプトウンデシル)テトラ(エチレングリコール)、及びトリエチレングリコールモノ−11−メルカプトウンデシルエーテル等が挙げられる。
複素環骨格を有するチオールとしては、例えば、1(11−メルカプトウンデシル)イミダゾール、及び11−(1H−ピロール−1−イル)ウンデカン−1−チオール等が挙げられる。
−OH基を有するチオールとしては、例えば、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、4−メルカプト−1−ブタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、8−メルカプト−1−オクタノール、9−メルカプト−1−ノナノール、10−メルカプト−1−デカノール、11−メルカプト−1−ウンデカノール、11−メルカプトウンデシルヒドロキノン、及びα−チオグリセロール等が挙げられる。
有機金属錯体骨格を有するチオールとしては、例えば、11−(フェロセニル)ウンデカンチオール、及び6−(フェロセニル)ヘキサンチオール等が挙げられる。
アジド基を有するチオールとしては、例えば、11−アジド−1−ウンデカンチオール等が挙げられる。
カルボキシ基を有するチオールとしては、例えば、11−メルカプトウンデカン酸、12−メルカプトドデカン酸、3−メルカプトプロピオン酸、6−メルカプトヘキサン酸、及び8−メルカプトオクタン酸等が挙げられる。
ホスホン酸基を有するチオールとしては、例えば、11−メルカプトウンデシルホスホン酸等が挙げられる。
NHS基を有するチオールとしては、例えば、12−メルカプトドデカン酸NHSエステル等が挙げられる。
ハロゲンを有するチオールとしては、例えば、3−クロロ−1−プロパンチオール等が挙げられる。
芳香環を有するチオールとしては、例えば、1,1’,4’,1”−テルフェニル−4−チオール、1−ナフタレンチオール、2−フェニルエタンチオール、4’−ブロモ−4−メルカプトビフェニル、4’−メルカプトビフェニルカルボニトリル、4,4’−ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、4,4’−ジメルカプトスチルベン、4−(6−メルカプトヘキシルオキシ)ベンジルアルコール、4−メルカプト安息香酸、9−フルオレニルメチルチオール、ビフェニル−4,4−ジチオール、ビフェニル−4−チオール、p−テルフェニル−4,4”−ジチオール、及びチオフェノール等が挙げられる。
脂環式化合物骨格を有するチオールとしては、例えば、1−アダマンタンチオール、シクロヘキサンチオール、及びシクロペンタンチオール等が挙げられる。
ホウ素化合物骨格を有するチオールとしては、例えば、m−カルボラン−1−チオール、m−カルボラン−9−チオール等が挙げられる。
チオール基を有する無機物としては、例えば、チオ硫酸アンモニウム、好ましくはアミノアルカンチオール、及びアミノエタンチオールが挙げられる。
リン酸エステルとしては、好ましくは、リン酸と不飽和脂肪族アルコールとのエステル、例えばオレス−3リン酸が挙げられる。
ホスホン酸としては、例えば、アルキルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸、フッ化アルキルホスホン酸、アジドアルキルホスホン酸、ヒドロキシアルキルホスホン酸、メルカプトアルキルホスホン酸、ポリエチレングリコール部位を有するホスホン酸、ジホスホン酸、トリホスホン酸等を用いることができる。具体的には、アミノメチルホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、O−ホスホリルエタノールアミン、12−アミノドデシルホスホン酸、12−アミノウンデシルホスホン酸塩酸塩、6−アミノヘキシルホスホン酸、6−アミノヘキシルホスホン酸塩酸塩、12−アジドドデシルホスホン酸、(12−ドデシルホスホン酸)N,N−ジメチル−N−オクタデシルアンモニウムブロミド、(12−ドデシルホスホン酸)N,N−ジメチル−N−オクタデシルアンモニウムクロリド、(12−ドデシルホスホン酸)ピリジニウムブロミド、(12−ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウムブロミド、(12−ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウムクロリド、11−ヒドロキシウンデシルホスホン酸、12−メルカプトドデシルホスホン酸、11−メルカプトウンデシルホスホン酸、11−メタクリロイルオキシウンデシルホスホン酸、4−ニトロベンジルホスホン酸、12−ホスホノ−1−ドデカンスルホン酸、(6−ホスホノヘキシル)ホスホン酸、11−ホスホノウンデカン酸、11−ホスホノウンデシルアクリレート、プロピレンジホスホン酸、4−アミノベンジルホスホン酸、1,8−オクタンジホスホン酸、1,10−デシルジホスホン酸、6−ホスホノヘキサン酸、(1−アミノ−2−メチルプロピル)ホスホン酸、(1−アミノプロピル)ホスホン酸、(3−ニトロフェニル)ホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1,−ジホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、4−アミノブチルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレン)トリホスホン酸、及びメチレンジホスホン酸等が挙げられる。ホスホン酸としては、好ましくは、アルキルホスホン酸、例えばデシルホスホン酸が挙げられる。
スルホン酸としては、例えば、アルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸、フッ化アルキルスルホン酸、アジドアルキルスルホン酸、ヒドロキシアルキルスルホン酸、メルカプトアルキルスルホン酸、ポリエチレングリコール部位を有するスルホン酸、ジスルホン酸、及びトリスルホン酸等が挙げられる。スルホン酸としては、より具体的には、4−アセトアミド−2−アミノベンゼンスルホン酸水和物、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、3−(カルバムイミドイルチオ)−1−プロパンスルホン酸、2−シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸等が挙げられる。
これらの化合物は、現像速度がより早く、現像による抵抗の増加がより少なく、より精密な導電性パターンを残すことができ、基板が白化しにくいといった利点を有する。
現像用化合物の分子量は、好ましくは5,000以下、より好ましくは2,000以下、更に好ましくは1,000以下である。現像用化合物の分子量が5,000以下であると、現像速度がより速くなる傾向があるため好ましい。
現像液は、上記カルボン酸、並びにそのエステル及び塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する現像用化合物意外に、その他の現像用化合物を含んでもよい。その他の現像用化合物としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液、及びこれらの混合物等が挙げられる。
現像液は溶媒を含んでもよい。溶媒としては、現像用化合物を溶解することができれば特に限定されないが、水、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、及びグリセリン等)、エステル(例えば酢酸エチル、及び酢酸ブチル等)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及びTHF等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びγ−ブチロラクトン等)、炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、及びテトラデカン等)、芳香族(例えば、トルエン、及びキシレン等)等を挙げることができる。特に、水、及びアルコールは基材へのダメージが小さいため好ましい。
現像液における現像用化合物の濃度は、所望の現像特性を達成することができれば特に限定されず、当業者であれば、酸化第一銅微粒子の溶解性、銅の溶解性、銅との反応性、基板の劣化等を考慮して、適切な濃度範囲を選択することが可能である。例えば、酸解離定数(pKa)が水中で1.96以下の酸の場合、濃度は10質量%超〜96質量%未満であってよく、酸解離定数(pKa)が水中で−1.8以下の酸の場合、濃度は1質量%超〜40質量%未満であってもよい。
《プリント配線板の製造方法》
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、酸化第一銅微粒子を含む層を有する基板の選択された領域に光を照射して、導電性パターンを得る、光照射工程と、酸解離定数(pKa)が水中で−2以上の酸性の現像用化合物を含む現像液で上記基板を洗浄して、非照射部の上記酸化第一銅微粒子を除去する、現像工程とを含む。
図2は、従来のプリント配線板の一般的な製造方法を示す模式図である。従来のプリント配線板(20)の製造方法は、一般に、基板(1)と、基板上に配置された導電性材料(4)と、導電性材料上に配置されたフォトレジスト材料(5)とを有するプリント配線板製造用基板(10)を露光してフォトレジスト材料上にパターンを形成する、露光工程と;露光部分のフォトレジスト材料を現像液で溶解して除去する(ポジ型)、あるいは露光されていない部分のフォトレジスト材料を現像液で溶解して除去する(ネガ型)、現像工程と;フォトレジスト材料で保護されていない導電性材料をエッチング剤で削る、エッチング工程と;フォトレジスト材料を除去する剥離工程とを少なくとも有する。したがって、従来のプリント配線板の製造方法は、工程数が多く煩雑であるとともに、フォトレジスト材料を使用するため経済性や生産性の観点から好ましくないといった欠点がある。
図1は、本実施形態によるプリント配線板の製造方法の例を示す模式図である。本実施形態によるプリント配線板(20)の製造方法は、酸化第一銅微粒子を含む層(2)を有する基板(1)の選択された領域に光を照射して、導電性パターン(3)を得る、光照射工程と;酸性の現像用化合物を含む現像液(図示せず)で上記基板を洗浄して、非照射部の上記酸化第一銅微粒子を除去する、現像工程とを有する。本実施形態によるプリント配線板の製造方法によれば、フォトレジスト材料を使用せず、かつ特定の現像用化合物を含む現像液を使用するため、経済的かつ効率的に、精密なプリント配線基板を製造することができる。
〈基板形成工程〉
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、光照射工程の前に、基板上に酸化第一銅微粒子を含む分散体を塗布して乾燥させることにより、酸化第一銅微粒子を含む層を有する基板を形成する工程を更に含んでもよい。
(分散体)
分散体は、酸化第一銅微粒子を含有する。酸化第一銅は銀粒子等と比較して安価であり低温焼結しやすい傾向にあるので好ましい。酸化第一銅微粒子以外にも、銅、酸化第二銅、その他の酸化数をもった酸化銅、又はその他の金属若しくは金属酸化物の微粒子を含んでもよい。
酸化第一銅微粒子の平均二次粒子径、平均一次粒子径等については、上記「《プリント配線板製造用キット》」の欄を参照されたい。
分散体中の酸化第一銅微粒子の含有率の下限値は、分散体の全質量を基準として、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、上限値は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。分散体中の酸化第一銅微粒子の含有率が0.5質量%以上であると、得られる酸化第一銅微粒子を含む層の厚さを確保でき、したがって、得られる導電性パターンの導電性が高くなるため好ましい。分散体中の酸化第一銅微粒子の含有率が95質量%以下であると、酸化第一銅微粒子が凝集しにくく、分散性の観点から好ましい。
分散体は、溶媒(分散媒)を含有してもよい。分散体における溶媒としては、該分散体の塗布方法及び用途に応じて様々な溶媒を用いることができる。例えば、高い平滑性が要求される用途においては高沸点溶媒を用いることが好ましく、速乾性が要求される用途においては低沸点溶媒を用いることが好ましい。
低沸点溶媒の20℃における蒸気圧は、20Pa以上150hPa以下であることが好ましく、より好ましくは100Pa以上100hPa以下、更に好ましくは300Pa以上20hPa以下である。低沸点溶媒の20℃における蒸気圧が150hPa以下であると、溶媒の揮発速度を高く維持しつつ、分散体における酸化第一銅微粒子の分散安定性を確保しやすいため好ましい。低沸点溶媒の20℃における蒸気圧が20Pa以上であると、分散体塗布膜にクラックが入りにくい乾燥速度にすることができるため好ましい。
低沸点溶媒としては、具体的には、例えば、水、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルカーボネート、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及びジアセトンアルコール等が挙げられる。分散体を反転印刷で適用する場合、反転印刷時にブランケットが膨潤せず、ブランケットを長寿命化させることができるため、溶媒は親水性溶媒であることが好ましく、中でも、水と、炭素数10以下のモノアルコールとから成る混合溶媒がより好ましい。炭素数10以下のモノアルコールの中でも、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、及びt−ブタノールから成る群より選択される1種以上が、分散性、揮発性、及び粘性が特に適しているので、更に好ましい。これらのモノアルコールは、それぞれ単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。モノアルコールの炭素数は、10以下であると、酸化第一銅微粒子の分散性がより良好になるため好ましい。
高沸点溶媒の20℃における蒸気圧は、0.010Pa以上20Pa未満であることが好ましく、より好ましくは0.05Pa以上16Pa未満、更に好ましくは0.1Pa以上14Pa未満である。高沸点溶媒の20℃における蒸気圧が20Pa未満であると、レベリング効果によって分散体塗布膜の平滑性を維持しやすいため好ましい。
高沸点溶媒としては、具体的には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3メトキシ−3−メチルーブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、ノナン、デカン、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ1,2−プロピレングリコール、及びグリセロール等が挙げられる。分散体を反転印刷で適用する場合、反転印刷時にブランケットが膨潤せず、ブランケットを長寿命化させることができるため、溶媒は親水性溶媒であることが好ましく、中でも炭素数10以下の多価アルコールがより好ましい。これらの多価アルコールは、それぞれ単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。多価アルコールの炭素数が10以下であると、酸化第一銅微粒子の分散性がより良好になる。上記低沸点溶媒と高沸点溶媒とを混合して用いてもよい。
溶媒の使用量は、塗布方法に応じて選択することができる。例えば、分散体をインクジェット印刷で適用する場合、該分散体における高沸点成分及び不揮発成分の合計の含有量が、分散体の全質量を基準として1〜40質量%となる量とすることが好ましく、10〜20質量%となる量とすることがより好ましい。溶媒の使用量を1質量%以上とすることにより、塗布膜の膜厚が十分に厚くなり、焼成処理によって導電性の高い銅配線を形成することができる。この値を40質量%以下とすることにより、分散剤の粘度をインクジェット印刷に適した範囲に調整することができ、更に20質量%以下とすることにより、インクジェット印刷機の印刷ヘッドの目詰まりが防止される。
分散体をスクリーン印刷で適用する場合、該分散体における高沸点成分及び不揮発成分の合計の含有量は、分散体の全質量を基準として40〜90質量%であることが好ましく、60〜85質量%であることがより好ましい。
分散体を反転印刷で適用する場合、該分散体における高沸点成分及び不揮発成分の合計の含有量は、分散体の全質量を基準として5〜60質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
分散体は、長期保管安定性向上等の観点から、分散剤を含有してもよい。分散剤の構造は特に限定はないが、好ましい分散剤は、主骨格と結合性構造とを有する分散剤である。分散剤における結合性構造としては、例えば、アミン、N−ヒドロキシスクシンイミド、ピロリドン、チオール、セレノール、ポリスルフィド、ポリセレニド、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステル等の化学構造を挙げることができ、これらのうちの少なくとも1つの化学構造を用いることができる。長期保管安定性の観点から、N−ヒドロキシスクシンイミド、チオール、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びホスホン酸エステルから選択される構造が好ましい。チオール構造は、得られる導電性パターンの抵抗値を減少させる効果を有するため、より好ましい。
分散剤中の結合性構造の含有割合に特に限定はないが、該分散剤に含まれる結合性構造が有する官能基のモル数の合計として、2.5×10−5〜0.030モル/gであることが好ましく、1.0×10−4〜0.0030モル/gであることがより好ましく、2.5×10−4〜0.0010モル/gであることが更に好ましい。
分散剤の一分子中に含まれる結合性構造の数に特に限定はないが、1個以上100個以下であることが好ましく、1個以上20個以下であることがより好ましく、1個以上10個以下であることが更に好ましい。分散剤一分子中に含まれる結合性構造が100個以下である場合、粒子同士が架橋し凝集しにくくなり、十分な分散性を得ることができる。分散剤一分子中に含まれる結合性構造が20個以下であれば、粒子同士が凝集しにくく二次粒径を小さくすることができ、10個以下であれば比較的小さいエネルギーで粒子と分散剤との結合を解離することができるから、焼結が促進される。
分散剤の主骨格に特に限定はないが、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリアセタール、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオライド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスチレン(PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノールノボラック、ベンゾシクロブテン、ポリビニルフェノール、ポリクロロピレン、ポリオキシメチレン、ポリスルホン(PSF)、ポリスルフィド、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
分散剤の主骨格としては、特に、ポリエチレングリコール骨格、ポリププロピレングリコール骨格、ポリアセタール骨格、ポリブテン骨格、及びポリスルフィド骨格から選択される骨格を有する分散剤は、得られる金属膜中に残渣を残し難いため好ましく;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選択される骨格を有する分散剤は、印刷版に浸透し難く、印刷版が膨潤によって変形し難いため、より好ましい。印刷版には、後述する反転印刷に用いられる除去版、ブランケット等が含まれる。分散剤の主骨格中には、これらが単独で存在してもよいし、これらの共重合体が存在していてもよい。
分散剤は、主骨格及び結合性構造とは別に、官能基を更に有していてもよい。この官能基としては、例えば、ハロゲン、ニトロ基、アルキル基(例えばメチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等)、シアノ基、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、チエニル基等)、ハロアリール基(例えばペンタフルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基等)、アルケニル基、アルキニル基、アミド基、アシル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、ナフチル基等)、ハロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基等)、チオシアノ基、及び水酸基等を挙げることができる。
分散剤として、具体的には、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオールを好適に用いることができる。
分散剤の分子量に特に限定はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリエチレングルコール換算の分子量分布曲線において、分子量31以上1,000未満の領域に少なくとも1つのピークと、分子量1,000以上40,000以下の領域に少なくとも1つのピークと、が存在するものであってよい。ここで「ピーク」とは、分子量分布曲線における傾き(縦軸の強度値を横軸の分子量で微分した値)が正の値からゼロを介して負の値へと変化する明確なピークを意味し、分子量分布曲線の傾きの符号が変化しない、いわゆる「ショルダー」は含まない。ピークは、上記の各領域に1つずつ存在していてもよいし、上記領域のいずれか又はその双方に複数が存在してもよい。
分散剤が、分子量31以上1,000未満の低分子量成分を含有することにより、塗布膜の結晶化が防止され、良好な平滑性を得ることができるため好ましい。この低分子量成分の分子量は、900以下であることが、緩く凝集した粒子を解離して該粒子の分散性を向上させることができるためより好ましい。この低分子量成分の分子量が31以上であると、より良好な分散性を得ることができるため好ましい。
分散剤が、分子量1,000以上40,000以下の高分子量成分を含有することにより、塗布膜の強度が向上し、反転印刷時の除去性が向上するため好ましい。この高分子量成分の分子量が1,500以上であれば、粒子に結合又は吸着した分散剤の立体障害により、該粒子同士の凝集を防止して、長期保管安定性を得ることができるためより好ましい。この高分子量成分の分子量は、40,000以下であれば、該分散剤が溶媒に溶解し易くなり、粒子及び分散剤の濃度を上げることができるため好ましく;20,000以下であれば、長期保管安定性が向上するためより好ましく;7,000以下であれば、高い分散性を得ることができるため更に好ましい。
GPC測定条件は、例えば以下のとおりである。
ポンプ:Waters616
RI検出器:島津RID−10A
オートサンプラー:島津SIL−10Avp
カラム:TSKgel G3000PWXI+G2500PWXI(7.8mmID×30cm)
カラム温度:40℃
溶離液溶媒:pH=3.5リン酸水溶液
流速:1.0ml/min
注入量:10μl
標準試料:ポリエチレンオキサイド(Aldrich社、PRODUCT No.02393)
GPCは、分散剤を試料として測定してもよいし、分散剤以外の成分を含有する分散体を試料として測定してもよい。分散体を測定試料とする際には、該分散体に下処理を加えてもよい。下処理をすることにより、分散体から分散剤を単離することができるため、好ましい。この下処理の方法としては、例えば、抽出、蒸留、濃縮、希釈、pH調整、酸の添加、塩基の添加、濾過、凝集剤の添加、加熱及び乾燥、冷却、真空乾燥、緩衝液の添加、イオン交換、遠心分離等を用いることができる。これらの下処理は、単独で行ってもよいし、これらの複数を組み合わせた複合的な下処理を行ってもよい。
以下に、下処理の具体例として、酸の添加、塩基の添加、並びに加熱及び乾燥について説明する。
(1)酸の添加
本下処理方法は、分散体に酸を加えることによって金属又は金属酸化物の粒子を溶解したうえで、GPC測定を行う方法である。分散体に加える酸としては、例えば、硫酸、硝酸、シュウ酸、酢酸、塩酸等を挙げることができる。得られた溶液中の金属イオンをイオン交換樹脂により他のイオン種に交換してもよい。この場合の他のイオン種としては、例えば、水素、ナトリウム、カルシウム、カリウム等を用いることができる。酸を添加した後の溶液に、塩基を加えて溶液を中和したうえで測定に供してもよい。この場合の塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。上記の処理によって沈殿物が発生した場合には、該沈殿物を濾過したうえで測定に供することが好ましい。
(2)塩基の添加
本下処理方法は、分散体に塩基を加えることによって、金属又は金属酸化物の粒子と分散剤との間の結合を解離させたうえで、GPC測定を行う方法である。分散体中の分散剤がカルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸等の酸性の構造を有している場合、該分散体に塩基を加えることにより、粒子と分散剤との結合を解離させることができる。このことを利用して、粒子と分散剤とを分離させて分析する方法である。分離した粒子を遠心分離により沈殿させ、上澄みを分析してもよい。分離した分散剤を抽出して分析してもよい。
(3)加熱及び乾燥
本下処理方法は、分散体を加熱及び乾燥することによって、金属又は金属酸化物の粒子と分散剤との間の結合を解離させたうえで、GPC測定を行う方法である。分散体を加熱及び乾燥することによっても、粒子と分散剤との間の結合を解離させ、粒子を凝集させることができる。このことを利用して、粒子と分散剤とを分離させて分析する方法である。分離した粒子及び分散剤に溶媒を加え、分散剤を抽出して得られた抽出液を分析してもよいし;上記の抽出液に残留した粒子を濾別又は遠心分離によって除去して得られた溶液を分析してもよい。
分散剤は、反転印刷可能な塗布膜を得るために、重量平均分子量が300以上であることが好ましく、800以上であることがより好ましく、1,200以上であることが更に好ましい。また、該分散剤は、塗布膜の結晶化を防止するために、重量平均分子量が6,000以下であることが好ましく、5,000以下であることがより好ましく、4,000以下であることが更に好ましい。上記の重量平均分子量は、GPCで測定したポリエチレングリコール換算値である。
分散剤において、GPCで測定したポリエチレングリコール換算分子量が1,000以上40,000以下である高分子量成分の割合は、GPCで測定したポリエチレングリコール換算分子量が31以上1,000未満である低分子量成分100質量部に対して、5質量部以上500質量部以下であることが好ましい。低分子量成分100質量部に対する高分子量成分の割合が、500質量部以下であれば塗布膜の結晶化を防止して平滑性を向上できるため好ましく、300質量部以下であれば長期保管安定性を向上させることができるためより好ましく、100質量部以下であれば高い分散性を得ることができるため更に好ましい。この値が5重量部以上であれば、塗膜強度が向上して反転印刷時の除去性が向上するため好ましい。この値は、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。
分散剤中における高分子量成分と低分子量成分との割合は、GPCで測定したポリエチレングリコール換算の分子量分布曲線において、分子量31以上1,000未満の領域に相当する面積と、分子量が1,000以上40,000以下の領域に相当する面積との比によって知ることができる。
分散体における分散剤の含有量は、粒子100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。この分散剤の含有量は、粒子100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。粒子100質量部に対する分散剤の含有量が1質量部以上であれば、粒子が凝集せず、十分な分散性を得られる。粒子100質量部に対する分散剤の含有量が100質量部を超えると、分散剤の残渣によって得られる金属膜の抵抗が増加する。分散剤は、20℃において液体であると、平滑性の高い塗布膜が得られるため好ましい。
分散体は、上記のような粒子及び分散剤以外のその他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、表面エネルギー調整剤、還元剤、有機バインダ―、溶媒等を挙げることができる。
分散体が表面エネルギー調整剤を含むことにより、塗工性が向上し、得られる塗布膜の平滑性が向上し、従ってより均一な酸化第一銅を含む層が得られるため好ましい。表面エネルギー調整剤としては、商品名として、例えば、Triton X−45、Triton X−100、Triton X、Triton A−20、Triton X−15、Triton X−114、Triton X−405、Tween #20、Tween #40、Tween #60、Tween #80、Tween #85、Pluronic F−68、Pluronic F−127、Span 20、Span 40、Span 60、Span 80、Span 83、Span 85等;AGCセイミケミカル製の「サーフロンS−211」、「サーフロンS−221」、「サーフロンS−231」、「サーフロンS−232」、「サーフロンS−233」、「サーフロンS−242」、「サーフロンS−243」、「サーフロンS−611」等;スリーエム製の「NovecFC−4430」、「NovecFC−4432」等;DIC製の「メガファックF−444」、「メガファックF−558」等が挙げられる。
中でも含フッ素界面活性剤が特に好ましく、AGCセイミケミカル製の「サーフロンS−211」、「サーフロンS−221」、「サーフロンS−231」、「サーフロンS−232」、「サーフロンS−233」、「サーフロンS−242」、「サーフロンS−243」、及び「サーフロンS−611」;スリーエム製の「NovecFC−4430」及び「NovecFC−4432」;並びにDIC製の「メガファックF−444」及び「メガファックF−558」が好適に用いられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
分散体における表面エネルギー調整剤の添加量は、特に制限はないが、分散体の全量に対して、好ましくは0.010質量%以上であり、より好ましくは0.10質量%である。表面エネルギー調整剤の添加量は、分散体の全量に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。表面エネルギー調整剤を0.010質量%以上含有する場合、分散体を塗布する時に、得られる塗布膜の膜厚が均一となり、塗布ムラが生じ難い傾向がある。一方で、得られる金属膜において、表面エネルギー調整剤由来の残渣がなく、導電性を良好とするためには、表面エネルギー調整剤の添加量が2.0質量%以下であることが好ましい。
(分散体の塗布)
分散体を塗布する方法としては、限定されないが、スクリーン印刷、スプレーコート、スピンコート、スリットコート、ダイコート、バーコート、ナイフコート、オフセット印刷、反転印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷等の方法を用いることができる。
酸化第一銅微粒子を含む層は、基板表面のうち少なくともレーザを照射する領域に形成すればよい。酸化第一銅微粒子を含む層は、片面若しくは両面の全体に形成してもよく、又はレーザを照射する領域に沿ったパターンで形成してもよい。レーザを照射する領域に沿ったパターンで形成する場合、酸化第一銅微粒子の使用量を低減できる。酸化第一銅微粒子を含む層をパターンで形成する場合、特に限定されないが、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷、反転印刷等が好ましい。
(分散体の乾燥)
上記のようにして形成された塗布膜を乾燥させる方法としては限定されないが、塗布後の膜を例えば20〜150℃において、例えば1分〜2時間静置する方法が挙げられる。加熱方法としては、例えば熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
本実施形態のプリント配線板の製造方法における、酸化第一銅を含む層の表面粗さ(Ra)、基板の荷重たわみ温度等については、上記「《プリント配線板製造用キット》」の欄を参照されたい。
(コーティング層の形成)
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、酸化第一銅微粒子を含む層を形成する前に、基板上に−OH基を有するコーティング用化合物を含むコーティング層を形成することを更に含んでもよい。他の側面において、コーティング化合物は、−Ar−O構造又は−M−O構造を有することもまた好ましい。
基板上にコーティング層を形成する方法としては、特に限定されないが、一般に、ウェット法とドライ方があり、ウェット法としては、スプレーコート、スピンコート、スリットコート、ダイコート、バーコート、ナイフコート等の方法により基板上にコーティング剤を塗布した後、使用するコーティング剤に応じて、乾燥、熱硬化、光硬化等により硬化させる方法が挙げられる。またドライ法としては、各種蒸着法、例えば、加熱蒸着、電子線蒸着、パルスレーザ蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、及び化学蒸着等が挙げられる。基板上にコーティング層を形成する好ましい方法としては、バーコート、ダイコート、スピンコート、及びスパッタリングである。
コーティング用化合物、及びコーティング層の厚さ等については、上記「《プリント配線板製造用キット》」の欄を参照されたい。
〈光照射工程〉
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、酸化第一銅微粒子を含む層を有する基板の選択された領域に光を照射して、導電性パターンを得る、光照射工程を含む。
光照射工程における光のエネルギー密度の下限値は、好ましくは1kW/cm2以上、より好ましくは10kW/cm2以上、更に好ましくは100kW/cm2以上である。光のエネルギー密度の上限値は、好ましくは10MW/cm2以下、より好ましくは5MW/cm2以下、更に好ましくは1MW/cm2以下である。光のエネルギー密度が1kW/cm2以上であると、酸化第一銅が還元しやすく、より効率的に銅に変化し、導電性パターンの抵抗が低下するため好ましい。
光源としては、限定されないが、例えばキセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、LED、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、窒素レーザ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、ファイバーレーザ及び半導体レーザ等が挙げられる。光源としては、好ましくはファイバーレーザ、半導体レーザ、キセノンランプである。
光の波長としては、限定されないが、好ましくは200nm〜2000nm、より好ましくは300nm〜800nm、更に好ましくは400nm〜550nmである。
光照射時の温度は、典型的には試料台の温度として測定され、限定されないが、30℃以上150℃以下であることが好ましい。光照射時の温度が150℃以下であれば、基板としてポリエチレンテレフタレート(PET)等の耐熱性の低い樹脂基板であっても用いることができる。30℃以上であるとより緻密な導電性パターンが得られる。
光照射工程は空気中で行うことができ、任意に不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等の雰囲気下で行ってもよい。
光照射工程によって形成される導電性パターンの寸法としては、限定されないが、厚みに対して幅が2倍から3倍である。
〈保護膜形成工程〉
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、光照射工程の後であって現像工程の前に、照射部に保護剤によって保護膜を形成する工程を含むことが好ましい。現像工程の前に光照射部の表面に保護膜を形成することにより、光照射部の腐食を低減することができ、得られる導電性パターンの抵抗変化を低減することができる。
保護膜を形成する方法としては、特に限定されないが、浸漬、吹き付け、塗布、スパッタリング等が挙げられる。保護膜を形成する好ましい方法としては、浸漬である。
保護膜の厚さの上限値は特に限定されないが、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下、更に好ましくは0.02μm以下であり、下限値は好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.5nm以上、更に好ましくは1nm以上である。
保護膜は、酸化第一銅を含む層の表面のうち、光照射部のみに形成することが好ましい。
保護剤としては、銅に吸着しやすく酸化銅に吸着しにくい化合物、例えば、アミノ基又は窒素を含む複素環構造を有する化合物及びチオール化合物が挙げられる。該化合物を、酸化第一銅を含む層を膨潤しない溶媒に溶解させ、該溶液に基板を浸漬することで、酸化第一銅を含む層の光照射部に保護剤を吸着させることができる。
保護剤は、疎水性材料であることが好ましい。保護剤が疎水性材料であると、光照射部の腐食をより効果的に防止することができるため好ましい。疎水性材料としては、限定されないが、含フッ素材料、含珪素材料、アルキル基を有する材料が挙げられ、例えば、アルキルアミン、フッ化アルキルアミン、アルキルチオール、フッ化アルキルチオール等が挙げられる。疎水性材料としては、好ましくは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、エタンチオール、ブタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等が挙げられる。
〈現像工程〉
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、酸性の現像用化合物を含む現像液で上記基板を洗浄して、非照射部の上記酸化第一銅微粒子を除去する、現像工程を含む。
現像方法としては特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、ディップ法、バトル法、スプレー法、ブラッシング、スラッピング、スクラッピング、及び揺動浸漬等を挙げることができる。微細配線パターンを形成するためにはスプレー法が有効である。
現像用化合物の分子量、及び好ましい現像用化合物等については、上記「《プリント配線板製造用キット》」の欄を参照されたい。
図3は、本発明の好ましい実施形態によるプリント配線板の製造方法の例を示す模式図である。図3において、プリント配線板製造用基板(10)は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)などのフレキキブル基板(1)と、基板上に配置され、芳香族構造又はSi−O構造を有するコーティング層(6)と、コーティング層上に配置された酸化第一銅微粒子を含む層(2)とを有する。酸化第一銅微粒子の平均二次粒子径は、例えば500nm以下である。プリント配線板製造用基板(10)の酸化第一銅微粒子を含む層(2)上に、任意のパターンで、例えば1kW/cm2以上のエネルギー密度を有する光を照射して、導電性パターン(3)を形成する。酸化第一銅微粒子を含む層(2)の導電性パターン(3)上に、例えば疎水性材料から構成される保護膜(7)を形成する。次いで、チオール、リン酸、カルボン酸、並びにこれらのエステル及び塩からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する現像用化合物を含む現像液で基板を洗浄して、プリント配線板(20)を製造する。
本発明の好ましい実施形態によるプリント配線板の製造方法によれば、−OH基又はAr−O構造又はSi−O構造を有する化合物のコーティング層を有するため耐熱性の低い樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などのフレキシブル材料を使用することができ、光照射による酸化第一粒子を含む層の爆散を低減することができ、基板と銅配線パターンとの密着性がより良好になる。また、酸化第一銅微粒子の平均二次粒子径が500nm以下であり、1kW/cm2以上のエネルギー密度を有する光を照射することで、低抵抗かつ微細な銅配線パターンが得られる。さらに、疎水性材料の保護膜を有するため光照射部の腐食をより効果的に防止することができる。したがって、本発明の好ましい実施形態によるプリント配線板の製造方法は、より経済的かつ効率的に、高性能なフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
《測定及び評価方法》
〈平均一次粒子径〉
酸化第一銅微粒子の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。具体的な操作を説明する。サンプルを適当なサイズに切り分け、日立ハイテクノロジーズ社製、イオンミリング装置E−3500を用いてブロードイオンビーム(BIB)加工した。この際、必要に応じてサンプルを冷却しながらBIB加工を行った。加工したサンプルに導電処理を施し、導電性粘着剤部の断面を日立製作所社製、走査型電子顕微鏡S−4800にて観察した。1視野内に10点以上の一次粒子が存在する画像内のすべての一次粒子径を測定し、その平均値を、平均一次粒子径とした。
〈平均二次粒子径〉
酸化第一銅微粒子の平均二次粒径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡によって測定することができる。具体的な操作を説明する。サンプルを適当なサイズに切り分け、日立ハイテクノロジーズ社製、イオンミリング装置E−3500を用いてBIB加工した。この際、必要に応じてサンプルを冷却しながらBIB加工を行った。加工したサンプルに導電処理を施し、導電性粘着剤部の断面を日立製作所社製、走査型電子顕微鏡S−4800にて観察した。1視野内に10点以上の二次粒子が存在する画像内のすべての二次粒子径を測定し、その平均値を、平均二次粒子径とした。
〈表面粗さ(Ra)〉
酸化第一銅を含む層の表面粗さ(Ra)は、菱化システム製の白色干渉計「VertScan」を用いて測定できる。
〈荷重たわみ温度〉
基板の荷重たわみ温度は、JIS7191に準拠した方法で測定することができる。
〈現像用化合物の分子量〉
現像用化合物の分子量は、構造式が一意に決まる化合物であれば、化合物を構成する原子の原子量の総和であり、ポリマーのように構造式が一意に決まらない化合物であれば、重量平均分子量である。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定することができる。
上記GPC測定条件は、化合物が親水性の場合、例えば以下のとおりである。
データ処理:東ソー社 EcoSEC−WS
ポンプ:Waters社 Acquity H
RI検出器:東ソー社 RI8020
オーブン:東ソー社 CO8020
カラム:TSKgel G3000PWXI+G2500PWXI(7.8mmID×30cm)
カラム温度:40℃
溶離液:pH=3.5リン酸水溶液
流速:1.0ml/min
注入量:50μl
標準試料:ポリエチレンオキサイド(Aldrich社、PRODUCT No.02393)
化合物が疎水性の場合、例えば以下のとおりである。
データ処理:東ソー社 EcoSEC−WS
装置:東ソー社 EcoSEC
カラム:TSKgel SuperHZM−M(4.6mmID×15cm)+TSKgel SuperHZ2000(4.6mmID×15cm)
温度:40℃
溶離液:THF
流速:0.35ml/min
検出器:RI
標準資料:ポリスチレン(Agilent社 easy cal)
《分散体の作製》
水800g及び1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)400gから成る混合溶媒中に、酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)80gを溶解し、ヒドラジン(和光純薬製)24gを加えて攪拌した後、遠心分離を用いて上澄みと沈殿物とに分離した。得られた沈殿物(1)2.8gに、Disperbyk−145、(商品名、ビックケミー社製)0.4g及び溶媒としてn−ブタノール(和光純薬製)3.0gを加え、ホモジナイザーを用いて分散することにより、銅(I)酸化物粒子を含有する分散体(A)を得た。
Disperbyk−145の添加量を0.8gにしたこと以外は分散体(A)と同様の製法により、分散体(B)を得た。
《実施例1》
ポリイミド(PI)基材(東レ・デュポン社製、厚み50μmのカプトンフィルム)上に、分散体(B)を乾燥時膜厚25μmになるよう塗布し、さらに室温で60分間乾燥することで、実施例1の基板を得た。
《比較例1》
ポリイミド基材(東レ・デュポン社製、厚み50μmのカプトンフィルム)上に、分散体(B)を乾燥時膜厚25μmになるよう塗布し、さらに室温で60分間乾燥することで、比較例1の基板を得た。
《比較例2〜4》
使用した基材及び分散体を表1のように変更した以外は、比較例1と同様の製法により、比較例1〜4の基板を得た。
《実施例2》
PET基材(東洋紡社製、厚み100μmのコスモシャインA4100)上に、コーティング層としてコルコートN103X(コルコート社製、商品名)を膜厚0.15μmになるよう形成した。このコーティング層上に、分散体(A)を乾燥時膜厚25μmになるよう塗布し、さらに室温で60分間乾燥することで、実施例2の基板を得た。
《実施例3〜6、比較例5》
コーティング剤及びコーティング層厚みを表1のように変更した以外は、実施例2と同様の製法により、実施例3〜6及び比較例5の基板を得た。
表中の名称はそれぞれ以下の化合物を指す。
PI:東レ・デュポン社製、厚み50μmのカプトンフィルム
PET:東洋紡社製、厚み100μmのコスモシャインA4100
PP:厚み100μmのポリプロピレンフィルム
COP:Zenon社製、ゼオノアフィルムZF−16
エポキシ:日本化薬社製、SU−8−3005
コルコートN103X:コルコート社製、コルコートN103X
KR5206:信越化学社製、KR5206
ITO−PET:アルドリッチ社製、酸化インジウムスズコートPET、品番639281−1EA
《光照射》
水素3%窒素97%の雰囲気下で、波長532nm、出力0.4Wのレーザー光を、直径10μmの円状に倍率100倍の対物レンズで集光し、走査速度100mm/分で移動している基板に照射した。このとき、面積当たりの照射光のエネルギーは、510kW/cm2であった。
《現像》
表2に記載の量比で現像用化合物を溶媒に溶解させた現像液を得た。現像液で満たしたシャーレに、光照射後の基板を入れ、シーソー型の振とう機(池田理科社製、ミニ・シェーカーNA−101N)で50rpmでシャーレを振とうさせ現像した。現像後、水及びエタノールでリンスした。
《評価》
〈密着性評価〉
比較例及び実施例の基板の密着性を、現像液(100%酢酸)で現像後の光照射部の残存率で評価した。
◎:95〜100面積%残存
○:80〜95面積%未満残存
△:20〜80面積%未満残存
×:0〜20面積%未満残存
残存率(面積%)は、現像前後の照射部の顕微鏡写真を比較し、以下の式によって計算した。
(残存率)=100×{(照射後の照射部の面積)/(照射前の照射部の面積)}
実施例2の基板を用いて、種々の現像液の特性を評価した結果を表2に示す。
なお、表中の分散剤は、それぞれ以下のサンノプコ株式会社製分散剤である。
9228:SN ディスパーサント 9228、エステル型非イオン系界面活性剤
2190:SN スパース 2190、ポリカルボン酸アルキルアミン塩
980:SN ウェット 980、非イオン系界面活性剤
SN20T:ノプコウェット SN‐20T、非イオン系界面活性剤
5600:ノプコスパース 5600、ポリカルボン酸アンモニウム塩
366:SN ウェット 366、非イオン系界面活性剤
92:ノプコスパース 092、カチオン系界面活性剤
〈未照射部の溶解〉
未照射部の溶解性を、以下の基準で評価した。
○:未照射部の90〜100%が溶解
△:未照射部の50〜90%未満が溶解
×:未照射部の50%未満が溶解
現像前後の未照射部の吸収率及び基材の吸収率を測定し、以下の式によって溶解率(%)を計算した。吸収率は405nmの光の吸収率を測定した。
〈照射部の残存〉
照射部の残存性を以下の基準で評価した。残存率については、密着性と同様の方法で評価した。変色については、目視によって変色の有無を確認した。導電性については、20MΩ未満であれば導電性有と評価した。
○:照射部の80〜100面積%が残存し、変色がなく、導電性がある
△:照射部の20〜80面積%未満が残存し、導電性がある
×:照射部の20面積%未満が残存、または、導電性がない
〈最小現像時間〉
光照射後の基板を現像液に入れてから、光未照射部が完全に溶けきるまでの時間(秒)を記録した。
〈導電性評価〉
現像前後で光照射部の抵抗値(kΩ)をマルチメータで測定した。
表2中、「∞」は光未照射部が溶解しなかったことを示す。また、「−」はデータがないことを示す。未照射部の溶解が△又は○であり、かつ照射部の残存が△又は○場合は現像できたことを示す。どちらかの項目が×であるものは現像できなかったことを示す。
実施例2の基板に光照射を施した後、1−オクタデカンチオールの5mmol/Lエタノール溶液に30分間浸漬し、エタノールで洗浄することで、光照射部に保護膜を形成した。次いで、1%の2−アミノエタンチオール水溶液を用いて現像し、現像前後の抵抗値を測定した。保護膜を表3に示す材料に変え、同様に評価した結果を表3に示す。
保護膜を形成することで現像前後での抵抗上昇が抑制されたことがわかる。また、疎水性の保護膜は抵抗上昇抑制効果が大きいことがわかる。