JP4932050B2 - 酸化第一銅分散体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅薄膜を形成するのに適した酸化第一銅微粒子の分散体の製造方法に関する。本発明により得られる、酸化第一銅濃厚分散体は高い保存安定性を示すので、長期保管が可能になる。また、高純度の酸化第一銅分散体を容易に希釈作製ができる。電極、配線、回路等の銅薄膜を安定性高く作製することが可能となる。
従来、基板上に金属薄膜を形成する方法には、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、金属ペースト法等が知られている。
メッキ法によると、導電性を有する基材の上に、比較的容易に金属薄膜を形成することが可能であるが、絶縁基材の上に形成する場合には、導電層をはじめに形成する必要があるため、そのプロセスは煩雑なものになるという問題がある。また、メッキ法は溶液中での反応を利用するため、大量の廃液が副生し、この廃液処理に多大な手間とコストがかかるという問題がある。
金属ペースト法は、金属フィラーを分散させた溶液を絶縁基板上に塗布し、加熱処理して金属薄膜を得る方法である。この方法によると、真空装置等の特別な装置を必要とせず、プロセスが簡易であるという利点を有するが、金属フィラーを溶融するには、通常、1000℃以上の高温を必要とする。したがって、基材はセラミック基材等の耐熱性を有するものに限られ、また、基材が熱で損傷したり、加熱により生じた残留応力により基材が損傷を受けやすいという問題がある。さらに、得られる金属薄膜の基板への密着性が充分ではない。
一方、金属フィラーの粒径を低減することによって、金属ペーストの焼成温度を低減する技術は公知であり、例えば、特許文献1には、粒径100nm以下の金属微粒子を分散した分散体を用いて金属薄膜を直接、絶縁基板上に形成する方法が開示されている。しかしながら、ここで用いられている100nm以下の金属粒子の製造方法は、低圧雰囲気で揮発した金属蒸気を急速冷却する方法であるために、大量生産が難しく、したがって、金属フィラーのコストが高くなるという問題を有している。
金属酸化物フィラーを分散させた金属酸化物ペーストを用いて、金属薄膜を直接、絶縁基板上に形成する方法も知られている。特許文献2には、結晶性高分子を含み、粒径300nm以下の金属酸化物を分散させた金属酸化物ペーストを加熱し、結晶性高分子を分解させて金属薄膜を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では、300nm以下の金属酸化物を結晶性高分子中にあらかじめ分散させる必要があり、非常な手間を必要とするのに加えて、結晶性高分子を分解するのに400℃〜900℃の高温を必要とする。したがって、使用可能な基材は、その温度以上の耐熱性を必要とし、その種類に制限があるという問題がある。
これらの課題を解決する金属薄膜の製造方法として、すでに本出願人は、安価な金属酸化物フィラーを分散させた分散体を基材上に塗布し、比較的低温での加熱処理によって金属薄膜を得るという方法を開示している(特許文献3)。この技術によって基板上に薄い銅等の金属薄膜を容易に形成することが可能であるが、分散体の保存安定性をさらに改善することが求められている。
特許第2561537号公報 特開平5−98195号公報 国際公開第03/051562号パンフレット
本発明の課題は、保存安定性が高い酸化第一銅濃厚分散体の製造方法を提供することであり、また、高い導電性を有する銅薄膜を形成することが可能な、酸化第一銅分散体の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 1次粒径が100nm以下の酸化第一銅微粒子の分散体であって、該酸化第一銅含量が40重量%以上90重量%以下であり、水含有量が0重量%より多く最大8.0重量%であることを特徴とする、分散媒が有機分散媒である酸化第一銅濃厚分散体。
(2) 金属不純物含有量が150ppm以下であることを特徴とする(1)に記載の酸化第一銅濃厚分散体。
(3) 有機分散媒が多価アルコールであることを特徴とする(1)または(2)に記載の酸化第一銅濃厚分散体。
(4) 直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が含有されていることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の酸化第一銅濃厚分散体。
(5) (1)〜(4)いずれかに記載の酸化第一銅濃厚分散体を希釈して得られる酸化第一銅分散体であって、酸化第一銅含量が1重量%以上40重量%未満であることを特徴とする酸化第一銅分散体。
(6) 1次粒径が100nm以下の酸化第一銅微粒子軟凝集体を有機分散媒に分散する工程(I)、及び、分散した分散体を濃縮する工程(II)とを含む、(1)〜(4)いずれかに記載の酸化第一銅濃厚分散体の製造方法。
(7) 工程(II)の濃縮を、超遠心分離濃縮もしくはUF濃縮によって行うことを特徴とする(6)に記載の酸化第一銅濃厚分散体の製造方法。
(8) (1)〜(5)のいずれかに記載の分散体を、基板の上に塗布し、加熱処理して、銅薄膜を形成することを特徴とする銅薄膜の製造方法。
本発明において、酸化第一銅濃厚分散体は高い保存安定性を示すので、長期保管が可能になる。また、高純度の酸化第一銅分散体を容易に希釈作製ができ、これらを用いて、電極、配線、回路等の銅薄膜を安定性高く作製することが可能となる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の方法で得られる酸化第一銅濃厚分散体は、1次粒径が100nm以下の酸化第一銅微粒子の分散体であって、該酸化第一銅含量が40重量%以上であり、水含有量が最大で8.0重量%であることを特徴とする。分散体中の酸化第一銅の含量は、分散体の取り扱いができる限りにおいて特に制約はないが、好ましくは50重量%以上であり、上限は90重量%以下である。
酸化第一銅微粒子の好ましい粒子径は、分散体の安定性を高いレベルで確保する観点から、より好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。また、分散体の粘度、取り扱い性の観点から、1次粒子径は1nm以上であることが好ましい。
酸化第一銅微粒子は粒子表面に難分解性の界面活性剤あるいは難分解性の嵩高い有機化合物を有していないことが、加熱処理によって低抵抗の銅膜を形成する上で、好ましい。
ここで界面活性剤とは、親水基と親油基を分子中に有する両親媒性物質を指し、その種類としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非極性界面活性剤等がある。ここでは、低分子のアルコール化合物等の非両親媒性物質であって、粒子表面に配位・吸着して界面活性を示す化合物は除外する。界面活性剤の分子量等に特に制限はないが、例えば、油性を発現するに十分な鎖長をもったアルキル基末端に、硫酸塩、アンモニウム塩、ポリエチレングリコール等の親水基を有する化合物が例示できる。嵩高い有機化合物とは、非両親媒性物質であって、炭素数の大きな有機化合物であり、例えば、ドデシルベンゼン、トリデカン、ヘキサデカン等の化合物を指す。これら、界面活性剤あるいは嵩高い有機化合物の炭素数は通常は8以上の有機化合物を指す。
これらの酸化第一銅微粒子は、市販品を用いてもよいし、公知の合成方法を用いて合成することも可能である。例えば、粒子径が100nm未満の酸化第一銅微粒子の合成方法としては、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で200℃程度で加熱して合成する方法が公知である(アンゲバンテ ケミ インターナショナル エディション、40号、2巻、p.359、2001年)。
本発明の濃厚分散体中に含まれる水分の量は、酸化第一銅微粒子の含有量が40重量%以上の条件において、最大で8.0重量%である必要がある。水分量をこの範囲で調整することにより、分散体の保存安定性が高く保たれる。分散体の安定性を保つ上でより好ましい水分量は7.0重量%以下であり、特に好ましい水分量は5.0重量%以下である。水含有量は最大で8.0重量%である範囲内において少ないことが好ましいが、水を含有する反応溶媒で酸化第一銅微粒子を合成する場合においては、通常は0重量%より大きい範囲にある。
本発明の製造方法で得られる濃厚分散体中に含まれる金属不純物含有量が150ppm以下であると、保存安定性が特に高く保たれるので好ましい。分散体の安定性を保つ上でより好ましい金属不純物含量は100ppm以下であり、特に好ましい金属不純物含量は80ppm以下である。金属不純物とは、Al、Ca、B、Ba、Fe、Mg、Mn、Na、Ni、Pb、Fe、Znなどの銅成分以外の金属成分を指す。金属不純物含有量は150ppm以下である必要があり、金属不純物含有量はその範囲内において少ないことが好ましいが、通常は1ppbより大きい範囲にある。
分散体中に含まれるハロゲン不純物量に特に制約は無いが、50ppm以下に制御すると、分散体の安定性がさらに高まるので好ましい。ハロゲン不純物とは、Cl、Br、I、Fのハロゲン成分を指す。
本発明の酸化第一銅濃厚分散体の製造方法としては、1次粒径が100nm以下の酸化第一銅微粒子軟凝集体を有機分散媒に分散する工程(1)、及び、分散した分散体を濃縮する工程(2)とを含む工程を例示することができる。
有機分散媒の中で特に好ましいものは、多価アルコールである。多価アルコールは酸化第一銅微粒子の高濃度での分散安定性を高めるので好ましい。
多価アルコールは、分子中に複数の水酸基を有する化合物である。多価アルコールの中で好ましいのは、炭素数が10以下の多価アルコ−ルであり、その中でも、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ヘキシルグリコール等が特に好ましい。これらの多価アルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
酸化第一銅微粒子軟凝集体とは、酸化第一銅微粒子同士が再分散可能な弱い力で引き合っていて、物理的・化学的な手法によって凝集体を構成する微粒子を開裂・分散することが可能である凝集体のことを指す。物理的手法とは、超音波、ビーズミル、高速ジェットミル、スクリュー攪拌、プラネタリーミキサー、3本ロール等の物理エネルギーを印加する手法であり、また、化学的手法とは、液中に酸・塩基を加えて分散体のpHを調整する等の化学エネルギーを印加する手法である。軟凝集体を分散させるには、構成する個々の微粒子間に働く引力を超えるエネルギーを与えて開裂・分散させればよい。
酸化第一銅微粒子軟凝集体の有機分散媒への分散には、上記、超音波、ビーズミル、高速ジェットミル、スクリュー攪拌、プラネタリーミキサー、3本ロールなどの手法を適用可能である。この有機分散媒への分散時に、分散体の特性を調整する目的で、分散媒以外の化合物を同時に加え、分散を施しても良く、また、一旦有機分散媒へ分散させた後で、分散媒以外の化合物を加え、必要に応じ、再度分散処理を施しても良い。
分散した分散体の濃縮法としては、超遠心分離濃縮もしくはUF濃縮する手法がある。
超遠心分離の手法は、特に制約は無く、バッチ処理であってもよく、連続処理であってもよい。微粒子の粒径に応じて、遠心力と遠心時間を適宜選定して分離を行う。
UF膜の材質は特に限定されるわけではなく、ポリアクリルニトリル、ポリスルホンなどの有機膜、セラミック、カーボンなどの無機膜などが使用できる。UF濃縮膜の分画分子量は微粒子の粒径に応じて適宜選択される。UF膜の形態にも制約は無く、中空糸型、スパイラル型、などが例示できる。操作圧力は使用する膜の許容圧力以下に設定することが好ましい。
本発明の製造方法で得られる酸化第一銅微粒子の含量が40重量%以上の酸化第一銅濃厚分散体を希釈することによって、酸化第一銅含量が1重量%以上40重量%未満の酸化第一銅分散体を形成することが可能である。ここで、希釈とは、酸化第一銅微粒子とは異なる化合物を加えて酸化第一銅の含量を減らす操作を指し、該希釈操作においては、濃厚分散体に使われた分散媒と同一の化合物を加えて希釈してもよい。また、濃厚分散体に使われた分散媒とは異なる化合物を加えて希釈してもよく、好ましくは水を含まない有機溶媒を加えるのがよい。希釈のために添加する化合物は、1種類でもよいし、複数種類を加えても良い。
これらの希釈操作においては、希釈のための化合物を添加した後、超音波、ビーズミル、高速ジェットミル、スクリュー攪拌、プラネタリーミキサー、3本ロールなどの手法を用いて、分散操作を加えても良い。
分散体が直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有すると、銅薄膜形成時の成膜性を向上させる効果に加えて、加熱処理して得られる銅薄膜の抵抗値が低減するので好ましい。直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が成膜性を向上させ、かつ抵抗値を低減させる理由は、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が易分解・易焼失性バインダーとして加熱処理中の酸化第一銅微粒子の局所的な造粒を防ぐためと考えられる。
直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の好ましい数平均分子量は、150〜600である。分子量がこの範囲にあると、銅薄膜形成時の成膜性が極めて高く、一方、容易に分解・焼失するので得られる銅薄膜の体積抵抗値が下がりやすい。数平均分子量が150より小さいと、焼成して銅薄膜を得るときの成膜性が低下する傾向があり、数平均分子量が600を越えると、得られる銅薄膜の体積抵抗値が高くなる傾向がある。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、繰り返し単位が炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましい。直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物、2元以上のポリエ−テルコポリマ−やポリエ−テルブロックコポリマ−であってもよい。
具体的には、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ルのようなポリエ−テルホモポリマ−のほかに、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ルの2元コポリマ−、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル/エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル/エチレング
リコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ル/エチレングリコ−ル等の直鎖状の3元コポリマ−が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ブロックコポリマ−としては、ポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルのような2元ブロックコポリマ−、さらにポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルポリエチレングリコ−ル等の直鎖状の3元ブロックコポリマ−のようなポリエ−テルブロックコポリマ−が挙げられる。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の末端の構造は、微粒子の分散性や分散媒への溶解性に悪影響を与えない限り制限は無いが、少なくとも一つの末端がアルキル基であると、焼成時におけるポリエーテル化合物の分解・焼失性が向上し、得られる銅薄膜の体積抵抗値が下がるので好ましい。アルキル基の長さが長すぎると、微粒子の分散性を阻害して分散体の粘度が増大する傾向があるので、アルキル基の長さとしては、炭素数1〜4が好ましい。少なくとも一つの末端がアルキル基であることによって、焼成時の分解・焼失性が向上する理由は定かではないが、微粒子とポリエーテル化合物の間、またはポリエーテル化合物とポリエーテル化合物間の水素結合等に基づく相互作用の力が弱まることが寄与しているものと推察される。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の特に好ましい構造は、一つの末端がアルキル基であり、もう一方の末端が水酸基である構造であり、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
分散体中の多価アルコールの割合は、分散体総量に対して、重量%で、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜50%である。
分散体中の直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の割合は、分散体総量に対して、重量%で、好ましくは0.1〜70%、より好ましくは1〜50%である。ポリエーテル化合物の添加量が0.1%未満である場合には、得られる銅薄膜の緻密性が低くなる場合や、基材との密着性が低下する場合があり、一方、ポリエ−テル化合物の添加量が70%を越えると、分散体の粘度が増加する場合がある。
酸化第一銅微粒子に対するポリエーテル化合物の好ましい重量比は、用いる微粒子の種類とポリエーテル化合物の種類により異なるが、通常は0.01〜10の範囲である。この範囲にあると得られる銅薄膜の緻密性が向上し、その体積抵抗値がさらに低下する。
本発明では、上記分散体に、必要に応じ、消泡剤、レベリング剤、粘度調整剤、安定剤等の添加剤を添加してもよい。
上記分散体の製造には、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、酸化第一銅微粒子と分散媒と直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物等の構成原料を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。酸化第一銅微粒子以外の構成物が固体である場合には、これらを液状になる温度に加熱しながら微粒子を加え、上記操作を行うことが好ましい。分散体が流動可能な固体となる場合には、ずり応力を加えながら分散を行うことが好ましく、3本ロール法、ミキサー法等が好ましい。
銅薄膜は、絶縁基板上に酸化第一銅を含有する分散体を塗布し、さらに加熱処理することで形成される。分散体の塗布の後、塗布膜を乾燥する工程を含んでも良い。
絶縁基板は、有機材料および無機材料のいずれでもよいが、銅薄膜を形成する際に加熱処理を行うことから、耐熱性のものが好ましい。例えば、セラミックスやガラスなどの無機材料、ポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂が好適に用いられる。
絶縁基板は、電気配線回路基板に通常用いられている程度の絶縁性を有するものであればよく、好ましくは、体積抵抗率として1013Ωcm以上を有するものである。
本発明で、絶縁基板として特に好適に使用される基板は熱硬化性ポリイミドフィルムである。ポリイミドフィルムはピロメリット酸またはピロメリット酸誘導体と、芳香族ジアミンとを縮合してなるもの、例えば、カプトン(登録商標、東レ・デュポン株式会社製)、アピカル(登録商標、鐘淵化学株式会社製)等、ビフェニルテトラカルボン酸またはビフェニルテトラカルボン酸誘導体と、芳香族ジアミンとを縮合してなるもの、例えば、ユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)等である。ポリイミドフィルムの膜厚は限定されないが、通常、15〜100μm程度のものを用途に応じて適宜選択して用いることができる。
本発明では、このような基板をそのまま用いてもよいが、銅薄膜層との密着性の向上を図るための密着層を形成しても良い。密着層としては、イミド結合および/またはアミド結合を有する熱可塑性絶縁性樹脂層などが例示される。また、絶縁基板は、脱脂処理、酸またはアルカリによる化学処理、熱処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、サンドブラスト処理等の表面処理を行ってもよい。
酸化第一銅の分散体を塗布する方法として、例えば、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法、バーコーティング方法、ロールコーティング方法、インクジェット方法、コンタクトプリンティング方法、スクリーン印刷方法等が挙げられる。分散体の粘度にあわせ、最適な塗布手法を適宜選択すればよい。塗布する分散体の膜厚を調整することによって、最終的に得られる銅薄膜の膜厚を調整することが可能である。
酸化第一銅の分散体を、回路形状に塗布し加熱処理すると、金属回路パターンを形成でき、本用途には、例えば、インクジェットプリンターやディスペンサー等、ドロップオンデマンドタイプの塗布装置が用いられる。
インクジェット法においては、分散体をインクジェットプリンターヘッドに入れて、ピエゾ素子等に電気駆動によって微小振動を加えることによって分散体液滴が吐出される。ディスペンサー法においては、分散体を先端に吐出針のついたディスペンサーチューブに入れ、空気圧を加えることによって分散体が吐出される。
回路パターンは、インクジェットヘッドやディスペンサー吐出針をロボットによって平面方向に動かすことにより任意のパターンを形成することができる。これらの塗布手法においては、段差を有する基板においても、ロボットを垂直方向に動かすことで、段差に追従した回路を形成することも可能である。
インクジェット法においては、描画される配線パターンの線幅は、インクジェットプリンターヘッドから吐出される分散体液滴サイズとその着弾パターンを制御することにより、またディスペンサー法においては吐出針から吐出される分散体の幅を吐出針の内外径や、吐出圧、描画スピード等によってコントロールすることにより、描画される配線パターンの線幅を調整することが可能である。
回路形状に塗布する用途においては、塗布する分散体の線幅は、通常は1〜400μmの範囲であり、得られる金属配線の線幅は0.5〜300μmである。また、塗布する分散体の厚みを調整することによって、最終的に得られる金属配線の厚みを調整することが可能である。通常は、塗布する分散体の厚みは0.1〜100μmであり、得られる金属配線の厚みは0.05〜50μmである。 加熱処理は、酸化第一銅の銅薄膜への変換温度よりも高い温度で行う必要があるが、通常は、100℃以上400℃以下の温度で行われる。
加熱処理の雰囲気は、不活性雰囲気、還元雰囲気、酸化性雰囲気など例示されるが、得られる銅薄膜が酸化されやすい場合には、不活性雰囲気や還元雰囲気が好ましい。この際
、不活性雰囲気や還元雰囲気中に酸素を2000ppm程度含んでいても構わない。分散体中の直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を分解する場合には、不活性または還元ガス中に20〜2000ppmの酸素を含むことが好ましい。不活性雰囲気とは、例えば、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気を指す。還元雰囲気は水素や一酸化炭素などの雰囲気を指す。
これらの加熱処理には、遠赤外線、赤外線、マイクロ波、電子線等の放射線加熱炉や、電気炉、オーブン等の加熱手段が用いられる。
以下に、本発明の実施例および比較例を示す。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
酸化第一銅微粒子の粒子径、分散体の表面張力、銅薄膜の体積抵抗率、及び、ピンホールの測定法は以下のとおりである。
(1)酸化第一銅微粒子の粒子径
カーボン蒸着された銅メッシュ上に、溶解・希釈した微粒子分散体を1滴たらし、減圧乾燥したサンプルを作製する。(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(JEM−4000FX)を用いて観察し、視野の中から、粒子径が比較的そろっている個所を3ヶ所選択し、被測定物の粒子径測定に最も適した倍率で撮影する。おのおのの写真から、一番多数存在すると思われる粒子を3点選択し、その直径をものさしで測り、倍率をかけて一次粒子径を算出する。これらの値の平均値を粒子径とする。
(2)水分測定
島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14B、検出器TCDの装置に、ジーエルサイエンス(株)のカラムGaskuropack56を組み合わせ、インジェクションした分散体の水ピーク強度をあらかじめ作成した検量線で定量分析した。
(3)不純物測定
ICP発光分析により、検出されたNa、K、Mg、Ca、Fe、Niを定量し、合計した数値を金属不純物含有量とした。
(4)銅薄膜の体積抵抗率
低抵抗率計「ロレスタ−(登録商標)」GP(三菱化学株式会社製)を用いて測定した。
[実施例1(参考例)]
(酸化第一銅微粒子の合成と分散体の調製)
精製水70mlに無水酢酸銅(和光純薬工業(株)製)8gを加え、25℃で攪拌しながらヒドラジン対酢酸銅のモル比が1.2になるように64重量%のヒドラジン1水和物(和光純薬工業(株)製)2.6mLを加えて、酸化第一銅微粒子の沈殿物を得た。得られた沈殿物は、20重量%の水を含む酸化第一銅微粒子軟凝集体のウエットケーキであり、酸化第一銅微粒子の一次粒径は20nmであった。
これをジエチレングリコール100mLに超音波分散機により再分散し、次に、超遠心分離により固液分離を行って、下層に沈殿した酸化第一銅のウエットケーキを取り出した。酸化第一銅の含量は80重量%であった。
これを再びジエチレングリコールに加えて分散処理を施し、酸化第一銅の含量が55重量%のジエチレングリコール分散体を得た。得られた分散体中の水分量は4.2重量%、金属不純物含量は80ppmであった。得られた分散体を冷蔵庫で2ヶ月放置しても沈殿物が生成することは無く、保存安定性が極めて高かった。
上記で取り出した酸化第一銅を80重量%含むウエットケーキ3.0gにジエチレングリコール2.0g、ポリエチレングリコール(数平均分子量200、アルドリッチ製)1.0gとを加え、超音波分散を施して酸化第一銅を30重量%含む酸化第一銅分散体を得た。
(銅薄膜の形成)
得られた酸化第一銅分散体を120mm口のガラス板上に、塗布厚50μmのバーコーターで50mm×100mmの面積に塗布を行った。塗布したガラス板を、窒素ガス気流下のホットプレート上で350℃×1h焼成を行なって、ガラス板上に銅薄膜を得た。得られた銅薄膜は、厚み1.2μm、体積抵抗値6×10−6Ωcmであった。
[実施例2]
実施例1と同一の操作で得た酸化第一銅軟凝集体のウエットケーキの沈殿物を、ジエチレングリコール100mLに超音波分散機により再分散した。得られたジエチレングリコール分散体をUF濃縮装置(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP−0013モジュール)で酸化第一銅含量が53重量%になるまで濃縮操作を行った。得られた濃厚分散体中の、水分量は7.2重量%、金属不純物含量は140ppmであった。得られた分散体を冷蔵庫で2ヶ月以上放置しても沈殿物が生成することは無く、保存安定性は極めて高かった。
[実施例3]
実施例2で得られた濃厚分散体に硝酸ナトリウムを加え、分散体中の水分量と金属不純物含量をそれぞれ7.2重量%、170ppmに調整した。得られた分散体は冷蔵庫で放置すると、3週間経過後に初めて沈殿が見られ、保存安定性は良好であった。
[比較例1]
実施例2で得られた濃厚分散体に超純水を加え、分散体中の水分量と金属不純物含量をそれぞれ10.0重量%、140ppmに調整した。得られた分散体は冷蔵庫で放置すると、1週間以内に粘度上昇と沈殿が見られ、保存安定性は悪かった。
本発明の方法により得られる分散体は、基板上に塗布し加熱処理することによって導電性の高い銅薄膜を形成することができる。本発明の方法により得られる酸化第一銅濃厚分散体は高い保存安定性を示すので、長期保管が可能になる。また、高純度の酸化第一銅分散体を容易に希釈作製ができる。
また、本発明の分散体を用いて、インクジェット法等で配線パターン形状を直接描画し、これを加熱処理することによって、接着性の高い金属配線を形成することが可能である。従って、プリント配線板の回路形成だけでなく、プラズマディスプレイパネルや液晶パネル等のフラットパネルディスプレイ製造におけるガラス基板上に形成されたバス電極、アドレス電極の製造にも使用することができる。

Claims (6)

  1. 1次粒径が100nm以下の酸化第一銅微粒子軟凝集体を有機分散媒に分散する工程(1)、及び、分散した分散体をUF濃縮する工程(2)とからなる、該酸化第一銅含量が40重量%以上90重量%以下であり、水含有量が0重量%より多く最大8.0重量%である酸化第一銅濃厚分散体の製造方法。
  2. 酸化第一銅濃厚分散体の金属不純物含有量が150ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化第一銅濃厚分散体の製造方法。
  3. 前記有機分散媒として多価アルコールを使用することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の酸化第一銅濃厚分散体の製造方法。
  4. 酸化第一銅分散体の製造方法であって、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法において得られた酸化第一銅濃厚分散体を、酸化第一銅含量が1重量%以上40重量%未満に希釈する工程(3)をさらに含むことを特徴とする酸化第一銅分散体の製造方法。
  5. 希釈する工程(3)での希釈剤として直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を使用することを特徴とする請求項に記載の酸化第一銅分散体の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の分散体を、基板の上に塗布し、加熱処理して、銅薄膜を形成することを特徴とする銅薄膜の製造方法。
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