JP6718737B2 - 炭素繊維束の開繊装置 - Google Patents
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Description
2 開繊された炭素繊維(開繊炭素繊維)
3a、3b、3c 繊維束接触手段
4 蒸気ドレイントラップ
5 蒸気圧力調節弁
6 クリール部(ボビン)
7 開繊装置
8 ロータリーカッター
9 切断された炭素繊維
10a、10b フィルム(シート)
11 熱硬化性樹脂組成物(マトリックス)
12 圧縮ロール
13 巻取部
以下では、本発明の開繊装置の好ましい形態を、図1を参照して説明する。図1中、1は、開繊対象の炭素繊維束である。この炭素繊維束1は、例えば図2で示されるクリール部から連続的に供給されるが、断続的に供給してもよい。開繊効率向上の観点では、連続供給することが好ましい。使用される炭素繊維束のフィラメント収束本数は特に限定されず、例えば1000本(1K)〜60000本(60K)であることが好ましく、炭素繊維束のコストや繊維強化成形材料の生産性を考慮すれば12000本(12K)〜60000本(60K)であることがさらに好ましい。
上述した本発明の開繊装置を用いることで、開繊品質が安定した開繊炭素繊維2を容易かつ高効率で、しかも安全に得ることができる。このように上記開繊装置を用いる開繊炭素繊維の製造方法もまた、本発明の1つである。
上述した本発明の開繊装置を用いれば、熱硬化性樹脂組成物と炭素繊維とを含む繊維強化成形材料を容易かつ高効率で、しかも安全に得ることができる。また本発明の開繊装置を用いれば、開繊工程と、該開繊された炭素繊維を熱硬化性樹脂組成物に含浸させる含浸工程とを連続して行うことができるため、工業上有利である。このように、熱硬化性樹脂と炭素繊維とを含む繊維強化成形材料を製造する方法であって、上記開繊装置を用いて炭素繊維束を開繊する工程(開繊工程とも称す)と、該開繊された炭素繊維を熱硬化性樹脂組成物に含浸させる工程(含浸工程とも称す)とを含む製造方法もまた、本発明の1つである。必要に応じて更に他の工程を含んでいてもよい。なお、本発明の開繊装置を含む繊維強化成形材料の製造装置は、本発明の好ましい実施形態である。以下に、各工程について説明する。
含浸工程において、開繊炭素繊維の使用量は、例えば、開繊炭素繊維と熱硬化性樹脂組成物との総量100体積%に対し、5〜50体積%であることが好適である。これにより、充分な含浸状態を得ることができるとともに、繊維強化成形材料から形成される成形品において充分な機械的強度を発揮することができる。より好ましくは10〜45体積%である。
マトリックスとして使用される熱硬化性樹脂組成物は、その粘度が100〜20000mPa・sであることが好ましい。これにより、作業性が向上する他、開繊炭素繊維への含浸性がより良好になり、開繊炭素繊維が樹脂組成物中でより安定して分散されるため、成形材料中の各成分に由来する効果がより充分に発揮される。より好ましくは150mPa・s以上、更に好ましくは200mPa・s以上であり、また、より好ましくは15000mPa・s以下、更に好ましくは10000mPa・s以下、特に好ましくは5000mPa・s以下である。
上記粘度は、25℃における粘度を意味し、ブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂は、ラジカル重合性オリゴマーとラジカル重合性単量体とからなるものが好ましい。これらの質量比(ラジカル重合性オリゴマー/ラジカル重合性単量体)は特に限定されないが、粘性や機械的特性、強化繊維への含浸性等を考慮すると、10〜90/10〜90(質量%)であることが好適である。より好ましくは30〜70/30〜70、更に好ましくは40〜60/40〜60である。
上記ラジカル重合性オリゴマーとしては特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の1種又は2種以上を使用することが好ましい。中でも、靱性や機械的強度、耐熱性、耐熱水性、表面平滑性等の観点から、不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルが好適である。すなわち熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
なお、不飽和ポリエステル樹脂とは、不飽和ポリエステルとラジカル重合性単量体とからなるものであり、ビニルエステル樹脂とは、ビニルエステルとラジカル重合性単量体とからなるものである。
−不飽和ポリエステル−
上記不飽和ポリエステルは、例えば、多塩基酸と多価アルコールとの反応により得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。また、ジシクロペンタジエン(DCPD)により変性されていてもよい。
上記多塩基酸と多価アルコールとの反応では、これらの使用量比は特に限定されないが、例えば、多塩基酸100モル%に対し、多価アルコールを80〜120モル%とすることが好ましい。より好ましくは95〜110モル%である。
上記反応は特に限定されず、通常の合成手段で行えばよい。一般には、加熱下で実施され、副生する水を除去しながら反応を進めることが好適である。具体的には、例えば、不活性ガス雰囲気下、トルエンやキシレン等の水共沸用溶剤、シュウ酸スズ等のエステル化触媒の存在下又は非存在下に、120〜250℃の温度範囲に加熱し、所望の酸価又は粘度(分子量)となるまで脱水縮合する方法が好ましい。温度範囲としてより好ましくは、150〜220℃である。
上記多塩基酸としては、不飽和多塩基酸や飽和多塩基酸が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記不飽和多塩基酸としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β−不飽和多塩基酸;ジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル;等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えば、グリコール(ジオールとも称す)や、エポキシ化合物が挙げられる。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルキル置換アルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレングリコール類の縮合物;ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノール類等;トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等のアリル基含有アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール類;等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ) アクリレート、ビスフェノールAのグリシジルエーテル類が挙げられる。
上記ビニルエステルは、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応により得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。上記反応は特に限定されず、通常の合成手段で行えばよい。
−ラジカル重合性単量体−
ラジカル重合性単量体は、1分子中に1個以上の重合性基(好ましくは炭素炭素二重結合)を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1分子中に1個の重合性基を有する化合物(「単官能化合物」とも称す)や、2個以上の重合性基を有する化合物(「多官能化合物」とも称す)のいずれも好適に使用できる。
上記単官能化合物としては特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族系単量体;(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては水酸基等が挙げられる。
上記多官能化合物としては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の炭素数2〜12を有するアルカンポリオールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の炭素数3〜12を有するアルカンポリオールの、3価以上のポリ(メタ)アクリレート;ジアリルフタレート、ジアリルフタレートプレポリマー;トリアリルシアヌレート;等が挙げられる。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては水酸基等が挙げられる。
上記ラジカル重合性単量体の中でも、揮発性重合性単量体を用いると、本発明の開繊装置による効果をより確認できるため、好適である。すなわち上記熱硬化性樹脂組成物は、揮発性重合性単量体を含むことが好ましい。揮発性重合性単量体の中でも、特にスチレン系単量体が好ましく、スチレンモノマーが特に好ましい。
<その他の成分>
上記熱硬化性樹脂組成物はまた、必要に応じて、熱可塑性樹脂、充填材、硬化剤、硬化促進剤、禁止剤、離型剤(内部離型剤とも称す)、顔料、増粘剤等のその他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
〔成形品〕
本発明の製造方法で得られる繊維強化成形材料から形成される成形品は、例えば、電気・電子用途、住宅用途、土木・建築用途、自動車用途、航空機用途、船舶用途等の様々な用途に有用なものである。このように上記繊維強化成形材料から形成される成形品、及び、上記繊維強化成形材料を用いて成形品を形成する工程を含む成形品の製造方法は、本発明の好適な実施形態の1つである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を、それぞれ意味するものとする。
実施例
図1の開繊装置を用いて、ZOLTEK社製の炭素繊維束1(商品名「PX35」、初期幅:15〜20mm)の開繊を行った。
その際、蒸気圧力調節弁5では、ゲージ圧を0.55MPa(絶対圧力:約0.45MPa)に調節した。繊維束接触手段3a、3b、3cとしては、外径34mm、厚さ3.4tの圧力配管用炭素鋼鋼管の外表面を表面粗さRmax=8μm程度に加工したものを使用した。この3本は、図3に示すように、3aと3cとの横方向ピッチが100mm、3aと3bとの間及び3cと3bとの間の縦方向ピッチが68mmとなるように調整して固定した。3a、3b、3cの表面温度は145±5℃であり、3a、3b、3cを通過する炭素繊維束の流速(線速)は20m/分であった。
得られた開繊炭素繊維2(開繊処理後の炭素繊維束)の幅は25〜30mmであった。
この開繊では、火花や異常発熱は生じず安全であり、容易かつ安定して開繊を行うことが可能であった。
なお、開繊に続いて、図2に示す装置を用い、スチレンモノマー等の揮発性重合性単量体を使用してSMCを製造したが、揮発性重合性単量体に引火することもなく、非常に安全で、しかも高効率で製造を行うことができた。
Claims (6)
- 炭素繊維束を幅方向に開繊させる装置であって、
該開繊装置は、炭素繊維束が屈曲しながら通過するように配置された複数の繊維束接触手段を有し、
該繊維束接触手段の少なくとも1以上は、その内部に絶対圧力で0.1〜2.0MPaに圧力制御された蒸気を通過又は保持させることによって加熱される
ことを特徴とする炭素繊維束の開繊装置。 - 前記繊維束接触手段は、固定バー又は回転ロールである
ことを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維束の開繊装置。 - 前記加熱温度は、80〜200℃である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素繊維束の開繊装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の開繊装置を用いる
ことを特徴とする開繊炭素繊維の製造方法。 - 熱硬化性樹脂組成物と炭素繊維とを含む繊維強化成形材料を製造する方法であって、
該製造方法は、
請求項1〜3のいずれかに記載の開繊装置を用いて炭素繊維束を開繊する工程と、
該開繊された炭素繊維を熱硬化性樹脂組成物に含浸させる工程とを含む
ことを特徴とする繊維強化成形材料の製造方法。 - 前記熱硬化性樹脂組成物は、揮発性重合性単量体を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
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