以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置10を含む電動車両の放電システム100の概要を示すブロック図である。電動車両は、電力変換装置10により変換されたバッテリ1の電力を使用してモータ4を駆動する車両である。放電システム100は、電力変換装置10とバッテリ1との間での電力授受が行われない場合に、電力変換装置10がコンデンサ31に蓄積された電荷を放電するシステムである。
放電システム100は、バッテリ1と、ヒューズ2と、リレー3と、モータ4と、回転子位置センサ5と、車両コントローラ6と、電力変換装置10とを備える。
本実施形態に係る電力変換装置10が対象とする電動車両としては、電気自動車やハイブリッド自動車(HEV)を例示することができる。何れの電動車両においても、バッテリ1からの電力で動作するモータ4が搭載されており、モータ4は電動車両の車軸(図示しない)に連結されている。
バッテリ1は、直流電源であって、本実施形態の電動車両の駆動用電源として用いられる。例えば、バッテリ1にはリチウムイオン電池などの二次電池が用いられる。バッテリ1は、ヒューズ2と、リレー3とを介して、電力変換装置10に接続されている。リレー3は、車両のメインスイッチ(図示しない)のオン/オフ操作に連動して、車両コントローラ6により開閉駆動する。メインスイッチは、運転者の操作によってオン/オフを切り換える。メインスイッチがオンの時に、リレー3が閉じられ、メインスイッチがオフの時に、リレー3が開かれる。
車両コントローラ6は、中央演算装置(CPU)、リードオンメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)を備え、本実施形態の電動車両の全体を制御する制御部であって、アクセル信号等に基づきトルク指令値を算出し、当該トルク指令値を制御回路36に出力する。また車両コントローラ6は、電動車両を駆動させる際の起動要求指令と、当該車両を停止させる際の停止要求指令とを制御回路36に出力する。また車両コントローラ6は、メインスイッチに基づき、開閉駆動信号をリレー3へ出力しつつ、当該開閉信号に関する情報を制御回路36へ出力する。
回転子位置センサ5は、レゾルバやエンコーダなどのセンサであって、モータ4に設けられ、モータ4の回転子の位置を検出し、回転子の位置を制御回路36に出力する。
電力変換装置10は、インバータ回路20、コンデンサ31、給電母線32、電圧センサ33、電流センサ34、駆動回路35及び制御回路36、放電回路40を備えている。コンデンサ31、電圧センサ33、及び放電回路40は、リレー3とインバータ回路20との間に接続されている。
インバータ回路20は、複数の電圧型駆動素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT)及び複数の整流素子(還流ダイオード)を有している。図1では、複数の電圧型駆動素子はトランジスタTr1〜Tr6であって、複数の整流素子はダイオードD1〜D6である。トランジスタTr1〜Tr6とダイオードD1〜D6とはそれぞれ並列に接続されている。ダイオードD1〜D6は、トランジスタTr1〜Tr6の電流方向とは逆方向に電流が流れる向きに、トランジスタTr1〜Tr6に接続されている。インバータ回路20は、バッテリ1の直流電力を交流電力に変換して、モータ4に供給する。本実施形態では、2つのトランジスタを直列に接続した3対の回路がバッテリ1に並列に接続され、各対のトランジスタ間とモータ4の三相入力部とがそれぞれ電気的に接続されている。各トランジスタTr1〜Tr6には、同一のトランジスタが用いられ、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられる。またトランジスタTr1、Tr2及びダイオードD1、D2がパワーモジュール21としてモジュール化されており、同様に、トランジスタTr3、Tr4及びダイオードD3、D4がパワーモジュール22として、トランジスタTr5、Tr6及びダイオードD5、D6がパワーモジュール23としてモジュール化されている。
図1に示す例でいえば、トランジスタTr1とTr2、トランジスタTr3とTr4、トランジスタTr5とTr6がそれぞれ直列に接続されている。トランジスタTr1とTr2の間とモータ4のU相、トランジスタTr3とTr4の間とモータ4のV相、トランジスタTr5とTr6の間とモータ4のW相がそれぞれ接続されている。トランジスタTr1、Tr3、Tr5は、バッテリ1の正極側に電気的に接続されており、トランジスタTr2、Tr4、Tr6は、バッテリ1の負極側に電気的に接続されている。各トランジスタTr1〜Tr6のオン及びオフの切り換えは、駆動回路35を介して制御回路36により制御される。
コンデンサ31は、給電母線32間に接続されている。コンデンサ31はバッテリ1から供給される直流電力を平滑化するために設けられる。電圧センサ33は、給電母線32間に接続されており、コンデンサ31に並列に接続されている。電圧センサ33はコンデンサ31の電圧を検出することで、給電母線32間の電圧を検出するセンサである。電流センサ34は、インバータ回路20からモータ4に供給される各相電流(Iu、Iv、Iw)を検出センサである。図1では、電流センサ34は、トランジスタTr1、Tr2の接続点、トランジスタTr3、Tr4の接続点及びトランジスタTr5、Tr6の接続点と、モータ4との間の各相に設けられている。そして、電流センサ34は検出電流の信号を制御回路36に出力する。
放電回路40は、給電母線32間に接続されており、コンデンサ31及び電圧センサ33に並列に接続されている。放電回路40は、放電抵抗41及びスイッチング素子42を備えている。図1に示す例では、放電回路40は、放電抵抗41とスイッチング素子42との直列回路で構成されている。スイッチング素子42には、例えば、MOSFETが用いられる。スイッチング素子42のオン及びオフは、駆動回路35を介して、制御回路36により制御される。スイッチング素子42はリレー3に対して独立に動作する。
駆動回路35は、各トランジスタTr1〜Tr6に対してゲート信号を出力し、各トランジスタTr1〜Tr6のオン及びオフを駆動させる。駆動回路35は、電圧センサ33からの信号を入力とし、当該信号を制御回路36により認識できる波形レベルに変換し、コンデンサ31の電圧を示す信号として、制御回路36に出力する。さらに、駆動回路35は、制御回路36からの信号を入力とし、当該入力信号に基づき、スイッチング素子42にゲート信号を出力し、スイッチング素子42のオン及びオフを駆動させる。
制御回路36は、駆動回路35を介して各トランジスタTr1〜Tr6を制御し、モータ4の動作を制御する。制御回路36は、車両コントローラ6から出力されるトルク指令値を示す信号、回転子位置センサ5からの信号、電流センサ34から出力されるフィードバック信号、及び、電圧センサ33からの信号を読み込む。そして、制御回路36は、読み込んだ信号に基づき、PWM(パルス幅変調)信号を生成し、当該信号を駆動回路35に出力する。駆動回路35は、当該パルス幅変調信号に基づき、トランジスタTr1〜Tr6を所定のタイミングでオン及びオフさせる。これにより、インバータ回路20は、モータ4の力行及びモータ4の回生に対応する動作を行う。
次に、インバータ回路20の動作について説明する。インバータ回路20は、モータ4の力行及びモータ4の回生に対応する動作を行う。電動車両において、力行とはモータ4の動力を車輪(図示しない)に伝えて加速、又は均衡速度を保つことである。電動車両の場合には、モータ4の力行は運転者がアクセルを踏んでいる状態に相当する。モータ4の力行時には、インバータ回路20は、バッテリ1の直流電力を交流電力に変換しつつ、モータ4に出力する。一方、電動車両において、回生とは交流電力を変換して駆動回転力として出力しているモータ4に対して、軸回転を入力して発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することである。モータ4の回生時には、インバータ回路20はモータ4で発生する回生電力を直流電力に変換して、バッテリ1に出力する。以降の説明においては、モータ4の力行に対応するインバータ回路20の動作を、インバータ回路20の力行動作と称し、モータ4の回生に対応するインバータ回路20の動作を、インバータ回路20の回生動作と称する。
ここで、再び、制御回路36について説明する。制御回路36は、リレー3の開放信号に基づいて、駆動回路35に対して、スイッチング素子42がオンするように信号を出力する。そして、駆動回路35は、スイッチング素子42をオンさせる。スイッチング素子42がオンすると、給電母線32間は放電抵抗41を介して導通した状態になり、コンデンサ31に蓄積された電荷は放電抵抗41で放電される。放電動作の詳細な説明については後述する。以降の説明においては、上述した運転終了時における制御回路36のスイッチング素子42への制御を、通常放電制御と称する。
次に、図2を用いて、電力変換装置10の通常放電制御を説明する。図2は、通常放電制御の一例でコンデンサ31の電圧特性を示すグラフである。縦軸はコンデンサ31の電圧を示し、横軸は時間を示す。電力変換装置10の動作の終了時、例えば、時刻tMSW_OFFにおいて、運転者が車両のメインスイッチをオフにした場合に、車両コントローラ6は、時刻t1において、リレー3の開放信号をリレー3へ出力する。その後、時刻tFETON1において、制御回路36は、放電回路40のスイッチング素子42がオンするように信号を駆動回路35に出力する。駆動回路35は、スイッチング素子42に対してゲート信号を出力し、スイッチング素子42をオンさせる。スイッチング素子42がオンすると、給電母線32間は放電抵抗41を介して導通した状態になり、コンデンサ31に蓄積されている電荷は、放電抵抗41で放電される。図2に示すグラフでは、時刻tFETON1において、コンデンサ31に蓄積された電荷の放電を開始し、その後、時刻t2において、放電を終了したことを示している。
ここで、図1に戻り、制御回路36について再び説明する。制御回路36は、電流センサ34からのフィードバック信号、及び回転子位置センサ5からの信号を読み込む。そして、制御回路36は、読み込んだ信号に基づき、インバータ回路20が力行動作中なのか回生動作中なのかを検知する。なお、当該検知について、制御回路36は上述したPWM生成制御から独立して検知してもよいし、PWM信号の生成過程に組み込んで検知してもよい。
また制御回路36は、駆動回路35から出力される電圧センサ33による検出電圧を示す信号を入力信号とする。制御回路36は、入力信号に基づき、コンデンサ31の電圧が所定の電圧閾値より高いことを検知する。インバータ回路20の回生動作中において、制御回路36は、当該検知結果に基づき、スイッチング素子42とインバータ回路20とを制御する。以降の説明においては、制御回路36がコンデンサ31の電圧が所定の電圧閾値より高いことを検知したことを、所定の条件と称する。また、所定の電圧閾値には、例えばリレー3、コンデンサ31、又はトランジスタTr1〜Tr6の耐電力に基づき、設定された値が用いられる。
インバータ回路20の回生動作中において、制御回路36は、所定の条件を満たすと、駆動回路35にスイッチング素子42がオンするように信号を出力する。そして、駆動回路35は、スイッチング素子42をオンさせる。
また制御回路36は、所定の条件を満たすと、所定の時間経過後に、インバータ回路20の動作を停止するように制御する。制御回路36は、PWM信号の生成を止め、制御回路36に対して、当該信号の出力を止める。そして、駆動回路35はトランジスタTr1〜Tr6をオフさせ、インバータ回路20の回生動作を停止させる。
一旦、スイッチング素子42がオンすると、制御回路36は、インバータ回路20の回生動作停止後に、駆動回路35に対して、スイッチング素子42がオフするように信号を出力する。そして、駆動回路35は、スイッチング素子42をオフさせる。以降の説明においては、インバータ回路20の回生動作中において、制御回路36がスイッチング素子42に行う制御のことを、強制放電制御と称する。制御回路36は、強制放電制御と、運転動作終了時の通常放電制御とを独立して行う。
ところで、インバータ回路の回生動作中に、インバータ回路の出力電力がバッテリに供給できない場合において、本実施形態とは異なる電力変換装置のコンデンサの電圧特性を説明する。図3は、本実施形態とは異なる電力変換装置50を含む電動車両の放電システム200の概要を示すブロック図である。電力変換装置50は比較例(参考例)の電力変換装置の一例である。電力変換装置50は、本実施形態に係る電力変換装置10と比べて放電回路を有しない点以外は、本実施形態に係る電力変換装置10と同様の構成を有する。また、電力変換装置50は、以下に説明するように動作すること以外は、本実施形態と同様に動作する。
制御回路66は、本実施形態の機能からスイッチング素子に関する機能を除き、本実施形態と同様の機能を有する。駆動回路65は、本実施形態の機能からスイッチング素子に関する機能を除き、本実施形態と同様の機能を有する。
次に、図4を用いて、インバータ回路20の回生動作中に、インバータ回路20の出力電力がバッテリに供給できない場合において、図3に示す電力変換装置50のコンデンサ31の電圧特性を説明する。図4は、インバータ回路20の回生動作中の一例でコンデンサ31の電圧特性を示すグラフである。縦軸はコンデンサ31の電圧を示し、横軸は時間を示す。図4に示すグラフでは、時刻0において、インバータ回路20は回生動作中で、モータ4の回生電力がバッテリ1へ供給されている。図4では、回生動作中のインバータ回路20の出力電力がバッテリ1へされている状態において、コンデンサ31の電圧をV1として示している。時刻t1において、インバータ回路20が回生動作中に、ヒューズ2又はリレー3が何らかの原因で開放され、電力変換装置10とバッテリ1との接続が切断する。そして、電力変換装置50はモータ4の回生電力をバッテリ1へ供給できない状態になる。インバータ回路20の出力電力はコンデンサ31に溜まり、コンデンサ31の電圧は上昇し始める。
コンデンサ31の電圧上昇開始後、時刻tDETにおいて、制御回路66は、電圧センサ33により検出された検出電圧に基づき、コンデンサ31の電圧が電圧閾値VTHより高いことを検知する。所定の時間経過後、時刻tPWM_OFFにおいて、制御回路66は駆動回路65を介してインバータ回路20のトランジスタTr1〜Tr6をオフする。トランジスタTr1〜Tr6がオフされると、インバータ回路20は回生動作を停止する。インバータ回路20が回生動作を停止すると、モータ4の励磁インダクタンスに蓄積されたエネルギー(以降、励磁エネルギーと称す)がインバータ回路20に入力される。入力された励磁エネルギーは給電母線32を介してコンデンサ31に溜まり、コンデンサ31の電圧はさらに上昇し始める。その後、時刻t2において、モータ4の励磁エネルギーによるコンデンサ31の電圧上昇は止まり、コンデンサ31の電圧は平衡状態になる。図4に示すグラフでは、平衡状態になったコンデンサ31の電圧をV2として示している。
図4について説明したように、インバータ回路20の回生動作中に何らかの原因でモータ4で発生する回生電力がバッテリ1へ供給できなくなると、インバータ回路20の出力電力はコンデンサ31に溜まり、コンデンサ31の電圧は上昇する。その後、インバータ回路20の動作停止に伴い、モータ4の励磁エネルギーがコンデンサ31に入力され、コンデンサ31の電圧はさらに上昇する。その結果、コンデンサ31の電圧は過電圧になる可能性がある。このため、コンデンサ31が過電圧になるのを防ぐには、コンデンサ31の容量を予め大きくする必要がある。その結果、コンデンサの体積は大きくなり、電力変換装置50が大型化し、コストも増加する。
次に、上述した比較例の動作を踏まえたうえで、図5A及び図5Bを用いて、本実施形態に係る電力変換装置10の動作を説明する。図5Aは、インバータ回路20の回生動作中の一例でコンデンサ31の電圧特性を示すグラフである。図5Aにおいて、点線は、図4に示す比較例でのコンデンサの電圧波形を示し、図5と同じ波形であるため、説明を省略する。図5Aに示す電圧V1、V2は、図4に示す電圧と同じ電圧であるため、説明を省略する。図5Bは、インバータ回路20の回生動作中の一例でスイッチング素子42の電圧特性を示すグラフである。図5Bにおける時刻は、図5Aと同じ時刻であるため、説明は省略する。
図5Aに示すグラフでは、時刻t1において、ヒューズ2又はリレー3が何らかの原因で開放され、インバータ回路20とバッテリ1との接続が切断した場合に、コンデンサ31の電圧は上昇し始める。コンデンサ31の電圧上昇開始後、時刻tFET_ON2において、制御回路36は、電圧センサ33により検出された検出電圧に基づき、コンデンサ31の電圧が電圧閾値VTHより高いことを検知する。制御回路36は、放電回路40のスイッチング素子42がオンするように駆動信号を駆動回路35に出力する。駆動回路35は、スイッチング素子42に対してゲート信号を出力し、スイッチング素子42をオンさせる。
図5Bに示すグラフでは、時刻tFET_ON2において、スイッチング素子42がオンしていることを示している。図5Bでは、スイッチング素子42がオンする電圧を電圧VONとして示している。
図5Aに戻り、時刻tFET_ON2において、スイッチング素子42がオンすると、給電母線32間は放電抵抗41を介して導通し、電力変換装置10は、コンデンサ31に蓄積された電荷を放電抵抗41で放電し始める。コンデンサ31の電荷が放電抵抗41で放電されると、コンデンサ31の電圧は低くなる。図5Aに示す例では、時刻tFETON2以降において、インバータ回路20の出力電力がコンデンサ31に溜まっている状態で、コンデンサ31に蓄積された電荷は放電抵抗41で放電されることを示している。そのため、コンデンサ31の電荷の放電が開始されると、コンデンサ31の電圧の上昇速度は、当該電荷の放電が開始される前に比べて遅くなる。図5Aに示すグラフでは、電圧の上昇速度を示す電圧の傾きについて、時刻tFET_ON2〜tPWM_OFF間の電圧の傾きが時刻t1〜tFETON2間の電圧の傾きよりも小さいことを示している。
時刻tFET_ON2から所定の時間経過後、時刻tPWM_OFFにおいて、制御回路36はインバータ回路20が過電圧にならないように、インバータ回路20のトランジスタTr1〜Tr6をオフする信号を駆動回路35に出力する。駆動回路35により、トランジスタTr1〜Tr6はオフされ、インバータ回路20は回生動作を停止する。インバータ回路20が回生動作を停止すると、モータ4の励磁エネルギーがインバータ回路20に入力される。励磁エネルギーは給電母線32を介してコンデンサ31に溜まり、コンデンサ31の電圧はさらに上昇し始める。
その後、時刻t2において、制御回路36は、スイッチング素子42がオフするように駆動信号を駆動回路35に出力する。駆動回路35は、スイッチング素子42に対してゲート信号を出力し、スイッチング素子42をオフさせる。図5Bに示すグラフでは、時刻t2において、スイッチング素子42がオフしていることを示している。図5Bでは、スイッチング素子42がオフする電圧を0として示している。
図5Aに戻り、時刻t2において、モータ4の励磁エネルギーによるコンデンサ31の電圧上昇は止まり、コンデンサ31の電圧は平衡状態になる。図5Aに示すグラフでは、平衡状態の電圧をV2Aとして示している。さらに、図5Aに示すグラフでは、コンデンサ31の平衡状態の電圧について、本実施形態での平衡状態の電圧V2Aは、比較例の平衡状態の電圧V2よりも低い電圧になることを示している。
以上のように、本実施形態において、電力変換装置10は、インバータ回路20と、バッテリ1とインバータ回路20とを接続する給電母線32と、給電母線32間に接続されるコンデンサ31と、給電母線32間に接続される放電回路40と、インバータ回路20及び放電回路40を制御する制御回路36とを備える。放電回路40は、放電抵抗41と、放電抵抗41とコンデンサ31との間に接続されるスイッチング素子42とを有する。制御回路36は、インバータ回路20の回生動作中に、インバータ回路20の出力電力がバッテリ1に供給できない状態において、スイッチング素子42をオンする制御を実行する。これにより、電力変換装置10は、インバータ回路20の出力電力がバッテリ1に供給されずに、コンデンサ31の電圧が上昇する状態において、コンデンサ31に蓄積された電荷を放電抵抗41で放電することができる。そのため、コンデンサ31の電圧が過電圧にならないように、コンデンサ31の容量を予め大きくする必要がなくなり、コンデンサの体積を抑制することができる。コンデンサ体積の抑制により、電力変換装置を小型化、低コスト化することができる。
また、本実施形態において、電力変換装置10は、コンデンサ31の電圧を検出す電圧センサ33を備え、制御回路36は、電圧センサ33により検出された検出電圧が所定の電圧閾値よりも高い場合に、スイッチング素子42をオンする制御を実行する。これにより、電力変換装置10は、コンデンサ31が過電圧になるのを防ぎつつ、コンデンサ31に蓄積された電荷を放電することができる。その結果、コンデンサ31の容量を大きくする必要がなくなり、コンデンサの体積を抑制することができる。
さらに、本実施形態において、制御回路36は、リレー3をオフした後に、スイッチング素子42をオンする。これにより、運転終了時において、電力変換装置10はコンデンサ31に蓄積された全ての電荷を放電抵抗41で放電することができる。その結果、運転開始時において、運転終了時に放電されずにコンデンサ31に蓄積された電荷が、バッテリ1へ流れ込むことを防ぐことができる。
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る電力変換回路について説明する。第2実施形態に係る電力変換装置10は、第1実施形態に係る電力変換装置10と同様の構成を有し、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態と同様に動作する。
第2実施形態に係る制御回路36は、第1実施形態の機能に加えて、電圧センサ33の検出電圧が所定の電圧閾値より高くなってから、所定の時間経過後に、インバータ回路20の動作を停止させる制御をしつつ、スイッチング素子42をオンさせるように制御する。制御回路36は、PWM信号の生成を止め、制御回路36に対して、当該信号の出力を止めつつ、駆動回路35に対して、スイッチング素子42がオンするように信号を出力する。
次に、図6A及び図6Bを用いて、本実施形態において、電力変換装置10の動作を説明する。図6Aは、インバータ回路20の回生動作中の一例でコンデンサ31の電圧特性を示すグラフである。図6Aにおいて、点線は、比較例でのコンデンサの電圧波形を示し、図4、5Aと同じ波形であるため説明を省略する。図6Aに示す電圧V1、V2は、図4、5Aに示す電圧V1、V2と同じ電圧であるため、説明を省略する。図6Bは、インバータ回路20の回生動作中の一例でスイッチング素子42の電圧特性を示すグラフである。図6Bにおける時刻は、図6Aと同じ時刻であるため、説明は省略する。
図6Aに示すグラフでは、時刻t1において、ヒューズ2又はリレー3が何らかの原因で開放され、インバータ回路20とバッテリ1との接続が切断した場合に、コンデンサ31の電圧は上昇し始める。コンデンサ31の電圧上昇開始後、時刻tDETにおいて、制御回路36は、電圧センサ33により検出された検出電圧に基づき、コンデンサ31の電圧が電圧閾値VTHより高いことを検知する。
時刻tDETから所定の時間経過後、時刻tPWM_OFFにおいて、制御回路36はインバータ回路20が過電圧にならないように、インバータ回路20のトランジスタTr1〜Tr6をオフする信号を駆動回路35に出力すると同時に、スイッチング素子42がオンするように駆動信号を駆動回路35に出力する。駆動回路35は、スイッチング素子42に対してゲート信号を出力し、スイッチング素子42をオンさせる。
図6Bに示すグラフでは、時刻tPWM_OFFにおいて、スイッチング素子42がオンしていることを示している。図6Bでは、スイッチング素子42がオンする電圧を電圧VONとして示している。なお、図6A及び図6Bでは、時刻tFET_ON3はスイッチング素子42がオンしている時刻を示しており、時刻tFET_ON3は時刻tPWM_OFFと同じ時刻であることを示している。
図6Aに戻り、時刻tPWM_OFFにおいて、駆動回路35により、トランジスタTr1〜Tr6はオフされ、インバータ回路20は回生動作を停止する。インバータ回路20が回生動作を停止すると、モータ4の励磁エネルギーがインバータ回路20に入力される。一方、制御回路36のスイッチング素子42に対する制御により、スイッチング素子42がオンすると、コンデンサ31に蓄積された電荷は放電される。時刻tPWM_OFFにおける電力変換装置10のエネルギーの入出力について考えると、励磁エネルギーがインバータ回路20に入力されるが、コンデンサ31に蓄積されたエネルギーは放電抵抗41を介して出力(放電)されることになる。図6Bに示すグラフでは、時刻tPWM_OFF〜t2間の電圧の上昇率について、本実施形態における電圧上昇率は、比較例における電圧上昇率よりも低いことを示している。
その後、時刻t2において、制御回路36は、放電回路40のスイッチング素子42がオフするように駆動信号を駆動回路35に出力する。駆動回路35は、スイッチング素子42に対してゲート信号を出力し、スイッチング素子42をオフさせる。図6Bに示すグラフでは、時刻t2において、スイッチング素子42がオフしていることを示している。図6Bでは、スイッチング素子42がオフする電圧を0として示している。
図6Aに戻り、時刻t2において、モータ4の励磁エネルギーによるコンデンサ31の電圧上昇は止まり、コンデンサ31の電圧は平衡状態になる。図6Aに示すグラフでは、平衡状態の電圧をV2Bとして示している。さらに、図6Aに示すグラフでは、コンデンサ31の平衡状態の電圧について、本実施形態での平衡状態の電圧V2Bは、比較例の平衡状態の電圧V2よりも低い電圧になることを示している。
以上のように、本実施形態において、制御回路36は、インバータ回路20の回生動作中に、インバータ回路20の出力電力がバッテリ1に供給できない状態において、インバータ回路20の動作を停止させるとともに、スイッチング素子42をオンする制御を実行する。これにより、電力変換装置10は、モータ4の励磁エネルギーがインバータ回路20に入力されると同時に、コンデンサ31の電荷を放電抵抗41で放電することができる。そのため、電力変換装置10は、モータ4の励磁エネルギーを放電することができ、放電抵抗41の耐電力定格は少なくとも励磁エネルギーに対応できる耐電力定格を必要とする。これにより、放電抵抗41の耐電力定格を絞ることができる。その結果、放電抵抗41の耐電力定格を不必要に大きくする必要がなくなり、放電抵抗41の体積を最適にすることができる。コンデンサ体積の最適化により、電力変換装置のコストも最適にすることができる。
本実施形態における放電抵抗41の抵抗値について、放電抵抗41の抵抗値はモータ4の励磁エネルギーの放出時間と、コンデンサ31とで示すことができる。例えば、放電抵抗41の抵抗値をR
DIS、モータ4の励磁エネルギーの放出時間をT
DIS、コンデンサ31の容量値をC
DISとすると、放電抵抗41の抵抗値をR
DISは、下記式(1)で示すことができる。
本実施形態において、放電抵抗41の抵抗値は上記の式のように示すことができる。そのため、放電抵抗41の耐電力定格を不必要に大きくする必要がなくなり、放電抵抗41の体積を最適にすることができる。コンデンサ体積の最適化により、電力変換装置10のコストも最適にすることができる。
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る電力変換装置について説明する。第3実施形態に係る電力変換装置10は、第1、第2実施形態に係る電力変換装置10と同様の構成を有し、以下に説明するように動作すること以外は、第1、第2実施形態と同様に動作する。
第3実施形態に係る制御回路36は、スイッチング素子42のオン時間、及び、スイッチング素子のオンする回数について、制御する。制御回路36は、通常放電制御において、スイッチング素子42がオンする回数と、スイッチング素子42のオン時間とを制御する。また、制御回路36は、強制放電制御においても、スイッチング素子42がオンする回数と、スイッチング素子42のオン時間とを制御する。制御回路36は、スイッチング素子42がオンする回数の制御のために、スイッチング素子42が1回ずつオン及びオフする制御をオンオフ制御として実行する。
制御回路36は、通常放電制御において、オンオフ制御を複数サイクル実行する。制御回路36は、駆動回路35に対して、スイッチング素子42が複数回オン及びオフするように信号を出力する。さらに、制御回路36は、通常放電制御におけるスイッチング素子42のオン時間について、強制放電制御におけるオン時間よりも、短くなるように設定する。また、制御回路36は、強制放電制御において、オンオフ制御を1サイクル実行する。制御回路36は、駆動回路35に対して、スイッチング素子42が1回オン及びオフするように信号を出力する。
図7A、図7Bは、第3実施形態に係る電力変換装置10の制御について、スイッチング素子42のゲート信号の一例を示したグラフである。図7Aは、通常放電制御において、スイッチング素子42のゲート信号を示したグラフであり、図7Bは、強制放電制御において、スイッチング素子42のゲート信号を示したグラフである。図7A、図7Bに示すグラフでは、スイッチング素子42がオンする電圧をVONとして示している。
図7Aに示すように、制御回路36は、通常放電制御の場合に、オンオフ制御を複数サイクル実行しつつ、オンオフ制御におけるオン時間をオフ時間より短くするように制御する。これにより、通常放電制御において、コンデンサ31に蓄積された電荷は、スイッチング素子42がオンするごとに、放電される。図7Aでは、スイッチング素子42のオン時間TON1は、スイッチング素子42のオフ時間TOFF1より短いことを示している。
一方、図7Bに示すように、制御回路36は、強制放電制御の場合に、オンオフ制御を1サイクル実行する。これにより、強制放電制御において、コンデンサ31に蓄積され電荷を短時間で放電することができる。本実施形態では、強制放電制御の場合には、制御回路36は、コンデンサ31の高電圧を維持し続けるのを防ぐために、コンデンサ31の電荷を1サイクルのオンオフ制御で放電させている。
図7Aに戻り、図7Aに示されているスイッチング素子42のオン時間TON1について説明する。本実施形態では、制御回路36は、通常放電制御におけるスイッチング素子42のオン時間について、強制放電制御におけるオン時間よりも、短くなるように設定する。そのため、図7Aに示すスイッチング素子42のオン時間TON1は、図7Bに示すスイッチング素子42のオン時間TON2よりも短い。
以上のように、本実施形態において、制御回路36は、スイッチング素子42を1回ずつオン及びオフする制御をオンオフ制御として実行する。制御回路36は、インバータ回路20の回生動作中に、インバータ回路20の出力電力がバッテリ1に供給できない状態において、オンオフ制御を少なくとも1サイクル実行する強制放電制御を実行する。制御回路36は、リレー3がオフした場合に、オンオフ制御を複数サイクル実行する通常放電制御を実行し、通常放電制御においては、オンオフ制御におけるオン時間は、強制放電制御におけるオフ時間より短くなる。これにより、電力変換装置10は、通常放電制御において、コンデンサ31に蓄積された全ての電荷を複数回に分けて放電することができる。また、電力変換装置10は、通常放電制御において、オン時間に応じて、1回当たりの放電量を放電抵抗41の耐電力定格の範囲内の放電量に調整することができる。そのため、各制御ごとに放電抵抗41を設ける必要がなく、言い換えると、各制御に対して共通の放電抵抗41を使用することができる。その結果、放電抵抗41の数を減らすことができ、電力変換装置10を小型化することができる。さらに、強制放電制御において、コンデンサ31に蓄積された電荷を放電抵抗41で短時間で放電することと、通常放電制御において、複数回に分けて当該電荷を放電抵抗41で放電することを両立することができる。
なお本実施形態では、制御回路36は、通常放電制御において、スイッチング素子42のオン時間をオフ時間より短く設定したが、通常放電制御におけるスイッチング素子42のオン時間を強制放電制御におけるオン時間より短く設定してもよい。これにより、通常放電制御でのコンデンサ31に蓄積された電荷の放電量は、強制放電制御での当該電荷の放電量より少なくなるため、強制放電制御のみを考慮して、放電抵抗41の耐電力定格を設定することができる。その結果、不必要に耐電力定格を大きくする必要がなくなり、放電抵抗41の体積を抑制することができる。
また本実施形態では、制御回路36は、強制放電制御において、オンオフ制御を1サイクル実行するが、複数サイクル実行してもよい。
さらに本実施形態では、放電回路40は、放電抵抗41とスイッチング素子42とが接続された直列回路で構成されているが、放電抵抗41とスイッチング素子42との間に電流計等の他の装置やその他の素子を設けて、放電抵抗41とスイッチング素子42とが当該他の装置又は当該他の素子を介して直列回路を構成してもよい。
上述した実施形態に係るバッテリ1は本発明の蓄電部に、リレー3は本発明のリレー素子に、モータ4は本発明の負荷に、電圧センサ33は本発明のセンサに、駆動回路35及び制御回路36は本発明のコントローラに、強制放電制御は本発明の第1制御に、通常放電制御は本発明の第2制御にそれぞれ相当する。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。