以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さないものとする。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に従う電源回路5aの概略構成を説明する回路図である。
図1を参照して、電源回路5aは、外部電源10から供給された交流電力を、直流電圧Voutに変換して電源配線120へ出力する。代表的には、外部電源10は、所定周波数(たとえば、50Hzまたは60Hz)の交流電圧を供給する商用交流電源によって構成される。以下では、電源回路5aから出力される直流電圧Voutを、単に出力電圧Voutとも称する。たとえば、出力電圧Voutは、15(V)程度である。出力電圧Voutは、電源配線120に電気的に接続された負荷301に供給される。
出力電圧Voutは、三端子レギュレータ150によって、直流電圧Vccへ降圧されてもよい。たとえば、直流電圧Vccは、5(V)程度である。図1の例では、三端子レギュレータ150から電源配線200を経由して、マイクロコンピュータ300および負荷302に対して、直流電圧Vccが供給される。
まず、電源回路5aの構成について説明する。電源回路5aは、整流フィルタ部11と、電圧変換部20と、電圧検出回路80と、制御IC(Integrated Circuit)100と、ドライブ回路110とを備える。
整流フィルタ部11は、ダイオードブリッジ12および平滑コンデンサ14を含む。ダイオードブリッジ12は、外部電源10からの交流電圧を全波整流して、電源配線13へ出力する。平滑コンデンサ14は、電源配線13上のダイオードブリッジ12によって整流された電圧を平滑する。この結果、平滑コンデンサ14によって、電源配線13の電圧は、外部電源10による交流電圧の振幅相当の直流電圧(たとえば、140V程度)に保持される。このため、電源配線13から負荷303へ直流電圧を供給することも可能である。
電圧変換部20は、たとえば、絶縁型のフライバックコンバータで構成されて、メイントランジスタ15と、絶縁トランス30と、絶縁トランス30の二次側に接続されたダイオードD1および平滑コンデンサ34とを含む。絶縁トランス30は、一次側巻線31,32と、二次側巻線33とを有する。一次側巻線31および32は、共通の接地配線19と接続される。二次側巻線33は、接地配線19から絶縁された接地配線121と電気的に接続される。
一次側巻線31は、電源配線13と電気的に接続される。メイントランジスタ15は、一次側巻線31および接地配線19の間に接続される。制御IC100は、マイクロコンピュータによって構成されて、電圧変換部20の動作を制御する。具体的には、制御IC100は、入力端子102の電圧をサンプリングしたデジタル電圧値を用いて、出力電圧Voutをデジタル制御する機能を有する。
メイントランジスタ15は、制御IC100によって制御されるドライブ回路110によって、周期的にオンオフされる。これにより、電源配線13の入力電圧Vinを振幅とするパルス状の交流電圧が発生される。メイントランジスタ15によって生成された交流電圧は、一次側巻線31に印加される。
二次側巻線33には、一次側巻線31および二次側巻線33の巻数比に従って振幅が変換された、一次側巻線31の交流電圧と同一周波数の交流電圧が出力される。同様に、一次側巻線32には、一次側巻線31および一次側巻線32の巻数比に従って振幅が変換された、一次側巻線31の交流電圧と同一周波数の交流電圧が出力される。メイントランジスタ15によってスイッチングされた高周波の交流電圧を絶縁トランス30によって伝達することにより、絶縁トランス30を小型化することができる。
一次側巻線32に出力された交流電圧は、ダイオードD3によって整流されて、制御IC100の電源配線65へ出力される。電源配線65には平滑コンデンサ62が接続される。これにより、外部電源10からの電力によって、制御IC100の電源電圧を確保することができる。
なお、外部電源10に電圧変動が生じても制御IC100を安定的に動作させるため、三端子レギューレータ(図示せず)をさらに配置して、制御IC100の電源電圧を供給する構成としてもよい。この場合には、当該三端子レギュレータは、平滑コンデンサ62によって保持される電圧を入力電圧として、制御IC100の電源電圧を電源配線65に出力する。すなわち、この構成では、平滑コンデンサ62は、電源配線65ではなく、三端子レギューレータの入力側に接続される一方で、抵抗素子91は、三端子レギューレータの出力側に接続される電源配線65と、ノードNcとの間に電気的に接続される。
また、電源回路5aの起動時の電源は、図示しないバッテリによって確保されてもよく、電源回路5aの停止時にも作動する容量の小さい電源系を別途設けてもよい。
絶縁トランス30の二次側では、二次側巻線33に出力された交流電圧が、ダイオードD1および平滑コンデンサ34によって、電源配線120および接地配線121間の出力電圧Voutに変換される。出力電圧Voutは、メイントランジスタ15のオンオフ制御により、一次側巻線31に入力される交流電圧の実効値を調整することによって制御することができる。
図2は、メイントランジスタ15による電圧変換部20の電圧変換比の制御を説明する概念図である。
図2を参照して、メイントランジスタ15は、所定のスイッチング周期Tswで周期的にオンオフを繰り返すように制御される。スイッチング周期Tswの逆数であるスイッチング周波数fswは、たとえば50kHz程度とすることができる。すなわち、メイントランジスタ15は「スイッチング素子」の一実施例に相当する。
絶縁トランス30の一次側巻線31に印加される交流電圧の実効値は、メイントランジスタ15のデューティDTによって制御できる。ここでは、スイッチング周期Tswに対する、メイントランジスタ15のオン期間Tonの比である、Ton/Tsw=DTと定義する。
Ton:Toff=1:1であるDT=0.5において、交流電圧の実効値は最大となる。一方で0<DT≦0.5の範囲内でデューティDTを変化させることによって、一次側巻線32および二次側巻線33に現れる交流電圧の実効値を調整することができる。したがって、電圧変換部20による電圧変換比Vout/Vinについても、メイントランジスタ15のデューティDTに応じて変化する。このため、デューティDTの増減による電圧変換比の可変制御によって、出力電圧Voutを制御することができる。制御IC100は、少なくとも出力電圧Voutをサンプリングしたデジタル電圧値を用いてデューティDTを制御する。制御IC100によって制御されたデューティDTに従って、ドライブ回路110がメイントランジスタ15のオンオフを制御することによって、出力電圧Voutを所定電圧に一定制御することができる。なお、デューティDTの最大値は0.5より大きくすることも可能である。
再び図1を参照して、制御IC100の入力端子102には、電圧検出回路80によって、出力電圧Voutに従った検出電圧Vcが入力される。制御IC100は、入力端子102の検出電圧Vcを所定周期でサンプリングすることによって、出力電圧Voutを検出する。
電圧検出回路80は、シャントレギュレータ82と、抵抗素子83,84と、分圧回路を構成する抵抗素子Rx,Ry,Rzと、フォトカプラ85と、コンデンサ86とを有する。フォトカプラ85は、電流通流時に発光するフォトダイオード85aと、フォトダイオード85aの発光量に応じた電流が流れるフォトトランジスタ85bとを有する。
抵抗素子Rx,Ry,Rzは、電源配線120および接地配線121の間に直列に接続される。抵抗素子Rx,Ry,Rzによる出力電圧Voutの分圧電圧が、シャントレギュレータ82のリファレンス(R)端子に入力される。フォトダイオード85aは、電源配線120および接地配線121の間に、シャントレギュレータ82および抵抗素子83と直列に接続される。シャントレギュレータ82のリファレンス(R)端子と、フォトダイオード85aのカソードとの間には、抵抗素子84およびコンデンサ86が接続される。
制御IC100側において、フォトカプラ85のフォトトランジスタ85bは、ノードNcおよび接地配線19の間に、コンデンサ92と並列に接続される。ノードNcは、抵抗素子91によって制御IC100の電源配線65にプルアップされる。
電圧検出回路80では、シャントレギュレータ82は、リファレンス(R)端子に入力される分圧電圧k・Vout(k<1.0)が一定となるように、カソード(K)端子およびアノード(N)端子間に流れる電流を調整するように動作する。これにより、フォトダイオード85aの電流についても、出力電圧Voutの上昇時には増加し、出力電圧Voutの低下時には減少するように変化する。
フォトダイオード85aの電流に応じて発光量が変化することにより、出力電圧Voutの変化に連動して、フォトトランジスタ85bの電流が変化する。したがって、出力電圧Voutが上昇すると、フォトトランジスタ85bの電流が増加することにより、ノードNcの電圧である検出電圧Vcが低下する。反対に、出力電圧Voutが低下すると、フォトトランジスタ85bの電流が減少することにより、検出電圧Vcが上昇する。この結果、電圧検出回路80では、出力電圧Voutの変化に応じて、検出電圧Vcも変化するので、検出電圧Vcから出力電圧Voutを逆算することが可能である。たとえば、既知の分圧比kや、フォトダイオード85aおよびフォトトランジスタ85bの特性に基づいて、検出電圧Vcから出力電圧Voutを算出するための換算式や換算テーブルを予め作成することができる。
制御IC100は、入力端子102に入力された検出電圧Vcを所定周期でサンプリングしたデジタル電圧値を、上記換算式や換算テーブルに代入することによって、絶縁トランス30の一次側および二次側間の絶縁を確保した上で、出力電圧Voutを検出することができる。したがって、制御IC100は、検出電圧Vcのサンプリングにより、出力電圧Voutのデジタル電圧値を取得することができる。さらに、制御IC100は、このデジタル電圧値を用いて、メイントランジスタ15のデューティDTの調整によって出力電圧Voutを制御することが可能である。すなわち、出力電圧Voutのデジタル電圧値は、「第1のデジタル電圧値」に対応する。
上記のように、電圧変換部20では、メイントランジスタ15のスイッチングによって生じる交流電圧の実効値を調整することによって、出力電圧が増減される。このため、整流フィルタ部11から電源配線13へ供給される直流電圧(以下、入力電圧Vinとも称する)が変化すると、メイントランジスタ15の同一のデューティDTに対して出力電圧Voutが変化する。
一方で、整流フィルタ部11からの入力電圧Vinには、交流電源周波数に従ったリップル成分が生じることが知られている。
図3は、入力電圧に生じるリップル成分を説明する概念的な波形図である。
図3を参照して、入力電圧Vinは、外部電源10からの交流電圧Vac(周波数fac)に対して、ダイオードブリッジ12による全波整流によって得られた|Vac|を、平滑コンデンサ14によって平滑化した波形を有する。以下では、交流電圧Vacの周波数を、電源周波数facとも称する。
したがって、入力電圧Vinには、|Vac|のピーク出現と同期した、リップル成分が生じる。リップル成分の周期Trp(リップル周期)の逆数であるリップル周波数frpは、電源周波数facの2倍となる(frp=2・fac)。
図4は、出力電圧に生じるリップル成分を説明する概念的な波形図である。
この結果、電圧変換部20での電圧変換比を一定としても、出力電圧Voutには、入力電圧Vinのリップル成分に起因するリップル電圧Vrpが生じる。すなわち、出力電圧Voutは、平均電圧Vavとリップル電圧Vrpとの和で示される。
リップル電圧Vrpは、理想的には、下記(1)式に示される、電圧振幅Vaの正弦波電圧変動で示すことができる。
Vrp=Va・sin(frp・t) …(1)
制御IC100によってサンプリングされたデジタル電圧値を用いたデジタル制御では、単純なフィードバック制御によって、出力電圧Voutからリップル電圧を除去するには、制御周期を短くするために、演算速度を高めることが要求される。これは、制御IC100の高スペック化によるコスト上昇を招く虞がある。さらに、設計自由度が高いデジタル制御の利点を活かすために、出力電圧Voutのフィードバック制御以外の機能を持たせることを考えると、出力電圧Voutの制御周期を短くすることと、低コスト化との両立が困難になることが懸念される。
したがって、実施の形態に従う電源回路では、出力電圧Voutの平均値によるフィードバック制御と、リップル電圧相当の周波数の交流電圧を補償するための制御との組み合わせによって、演算処理速度を過度に高めることなく、出力電圧Voutをデジタル制御する。
図5は、実施の形態1に従う電源回路による出力電圧制御の制御処理を説明するフローチャートである。図5に示されたフローチャートの制御処理は、制御IC100により、所定周期毎(たとえば、検出電圧Vcのサンプリング周期毎)に実行される。
制御IC100は、ステップS100により、サンプリング周期の経過に応じて、検出電圧Vcをサンプリングする。上述のように、検出電圧Vcのサンプリング値から出力電圧Voutのデジタル電圧値が取得される。
さらに、制御ICは、ステップS200により、現在のサンプリングタイミングから遡って、ステップS100で取得したデジタル電圧値を含むN個のデジタル電圧値の平均値に相当する平均電圧値Voavを算出する。ここで、N個は、リップル周期Trpに相当するサンプリング回数に相当する。すなわち、サンプリング周期Tspおよび電源周波数facを用いると、Nは下記の式(2)によって示される。
N=Trp/Tsp=1/(2・fac・Tsp) …(2)
ステップS200では、制御開始からのサンプリング回数がNに達するまでは、全てのサンプリング電圧を用いて平均電圧値Voavを算出してもよい。サンプリング回数がNに達した後は、平均電圧値Voavは、リップル周期分の単純移動平均として算出される。
制御IC100は、ステップS300により、平均電圧値Voavに基づいて、デューティDTのうちの直流成分である平均補償デューティDTdcを算出する。平均補償デューティDTdcは、直流電圧Voutを一定の目標電圧Vout*に維持するように計算される。たとえば、電圧偏差ΔV=Vout*−VoavのPI(比例積分)演算等によって、平均補償デューティDTdcを算出することができる。平均補償デューティDTdcは、「第1の制御値」に対応する。
さらに、制御IC100は、ステップS400により、リップル電圧振幅、すなわち、式(1)のVaを決定する。ここで、リップル電圧振幅Vaの取得手法について詳細に説明する。
図6は、出力電圧のリップル1周期分の推移を模式的に示す波形図である。
図6を参照して、リップル1周期分では、出力電圧VoutはN回サンプリングされる。そして、サンプリングで得られたN個のデジタル電圧値には、リップル電圧による増減のため、最高電圧Vmaxおよび最低電圧Vminが存在する。したがって、最新のN個のデジタル電圧値を用いて、平均電圧値Voavを算出するとともに、N個中での最高電圧Vmaxおよび最低電圧Vminをさらに求めることが可能である。
ここで、三角関数の性質より、最高電圧Vmaxおよび最低電圧Vminが現われる位相は固定されるので、当該位相でサンプリングされたデジタル電圧値を用いて最高電圧Vmaxおよび最低電圧Vminを求めることが可能である。
図7は、リップル電圧の最高点および最低点の位相を説明するための概念的な波形図である。
図7を参照して、出力電圧Voutについて、ステップS200で算出された平均電圧値Voavに対する高低関係が入れ替わる点を、ゼロクロス点として検出することができる。以下では、Vout<Voavから、Vout>Voavに変化する点をゼロクロス点ZP1とし、Vout>Voavから、Vout<Voavに変化する点をするゼロクロス点ZP2とする。
三角関数の性質より、ゼロクロス点ZP1から、リップル電圧の1/4周期経過後、すなわち、サンプリングで(N/4)回後の時点に、最高電圧Vmaxが発現する。同様に、最低電圧Vminは、ゼロクロス点ZP2から、リップル電圧の1/4周期経過後、すなわち、サンプリングで(N/4)回後の時点に発現する。
したがって、最高電圧Vmaxまたは最低電圧Vminが発現するタイミングでサンプリングされたデジタル電圧値を用いて、リップル電圧振幅Vaを決定することも可能である。
図8は、リップル電圧振幅を決定する制御処理例を説明するフローチャートである。図8に示す制御処理は、図5のステップS400の処理の詳細を示したものである。
図8を参照して、制御IC100は、ステップS410により、今回サンプリングされたデジタル電圧値(S100)を用いて、出力電圧Voutと平均電圧値Voav(S200)とを比較する。
そして、制御IC100は、ステップS410での比較結果と、前回サンプリング時での比較結果を示すフラグFLGとを用いて、ステップS420,S425により、当該比較結果が変化するとゼロクロス点を検出する。ここでは、Vout>Voavの状態をFLG=1、Vout<Voavの状態をFLG=0で表記するものとする。
制御IC100は、今回のサンプリングでVout>Voavのとき(S410のYES判定時)には、FLG=0であると(S420のYES判定時)、ステップS430に処理を進めて、ゼロクロス点ZP1を検出する。
ゼロクロス点ZP1が検出されると、制御IC100は、ステップS432により、最高電圧Vmaxの位相に対応した判定値Nspを設定する。たとえば、Nsp=N/4と固定的に設定することが可能である。
あるいは、外部電源10の周波数変動に対応するために、ゼロクロス点検出間でのサンプル数に基づいて、判定値Nspを設定してもよい。ここでは、サンプリング毎にインクリメントされるカウント値iについて、ゼロクロス点ZP1,ZP2の検出後にクリアすることによって(i=0)、ゼロクロス点検出時のカウント値i(リップル周期の1/2相当)を用いて、Np=i/2と設定することも可能である。
そして、制御IC100は、ステップS434により、ゼロクロス点ZP1の検出に応じて、i=0にクリアするとともに、フラグFLG=1に変更する。
一方で、制御IC100は、今回のサンプリングでVout>Voavのとき(S410のYES判定時)に、FLG=1であると(S420のNO判定時)、Vout>Voavの状態が継続していると判断して、ステップS436によりカウント値iをインクリメントするとともに、ステップS437により、インクリメント後のカウント値iが判定値Nsp(S432)以上であるか否かを判定する。
制御IC100は、カウント値iが判定値Nspと等しいと(S437のYES判定時)、ステップS438により、今回サンプリングされたデジタル電圧値(Vout)に従って、最高電圧Vmaxを更新する。さらに、更新された最高電圧Vmaxを用いて、リップル電圧振幅Vaが、Va=Vmax−Voavに更新される。
カウント値iが判定値Nspとは異なるとき(S437のNO判定時)には、ステップS439により、最高電圧Vmaxおよびリップル電圧振幅Vaは維持される。また、フラグFLG=1に維持される。
一方で、今回のサンプリングでVout<Voavのとき(S410のNO判定時)には、制御IC100は、FLG=1であると(S425のYES判定時)、ステップS440に処理を進めて、ゼロクロス点ZP2を検出する。
ゼロクロス点ZP2が検出されると、制御IC100は、ステップS442により、最低電圧Vminの位相に対応した判定値Nspを設定する。判定値Nspは、ステップS432と同様に、Nsp=N/4に固定してもよく、当該時点でのカウント値iに従ってNp=i/2としてもよい。
制御IC100は、ステップS444により、ゼロクロス点ZP2の検出に応じて、i=0にクリアするとともに、フラグFLG=0に変更する。
一方で、制御IC100は、今回のサンプリングでVout<Voavのとき(S410のNO判定時)に、FLG=0であると(S425のNO判定時)、Vout<Voavの状態が継続していると判断して、ステップS446によりカウント値iをインクリメントするとともに、ステップS447により、インクリメント後のカウント値iが判定値Nsp(S442)以上であるか否かを判定する。
制御IC100は、カウント値iが判定値Nspと等しいと(S447のYES判定時)、ステップS448により、今回サンプリングされたデジタル電圧値(Vout)に従って、最低電圧Vminを更新する。さらに、更新された最低電圧Vminを用いて、リップル電圧振幅Vaが、Va=Voav−Vminに更新される。
カウント値iが判定値Nspとは異なるとき(S447のNO判定時)には、ステップS449により、最低電圧Vminおよびリップル電圧振幅Vaは維持される。また、フラグFLG=0に維持される。
これにより、ゼロクロス点検出によって、特定タイミングでサンプリングされたデジタル電圧値を用いて、リップル電圧振幅Vaを決定することができる。なお、図8の処理において、ノイズの影響を除去するために、近傍の複数個のデジタル電圧値から最高電圧Vmaxおよび最低電圧Vminを求めることも可能である。
再び図5を参照して、制御IC100は、ステップS500aにより、決定されたリップル電圧振幅Vaを用いて、リップル電圧を逆位相で打ち消すようにリップル補償デューティDTrpを算出する。たとえば、リップル補償デューティDTrpは、下記(3)式によって算出することができる。
DTrp=−(kp・Va+∫(ki・Va))・sin(frp・t−θr)
…(3)
式(3)において、ki,kpは、それぞれ、比例制御ゲインおよび積分制御ゲインであり、θrは、位相合わせのための固定値である。リップル補償デューティDTrpは、周期的なリップル電圧Vrpに対して、リップル電圧Vrpと同一周期かつ逆位相でデューティを増減するための補償項である。すなわち、リップル補償デューティDTrpは、電源周波数に依存したリップル周波数frpの成分を有することが理解される。すなわち、リップル補償デューティDTrpは、「第2の制御値」に対応する。なお、制御開始初期の出力電圧が定常状態となるまでの一定時間経過までの間は、DTrp=0とすることが好ましい。
制御IC100によるデューティ設定と、出力電圧Voutの実際の変化挙動との間には、制御IC100によるサンプリングおよび演算処理、ならびに、ハードウェア系での遅れ時間等に起因する時間遅れが存在するが、この時間遅れは一定値である。したがって、事前に実機実験等により、リップル電圧Vrpおよびリップル補償デューティDTrpを逆位相とするためのθrを予め調整することができる。
なお、Va=Vmax−VoavまたはVa=Voav−Vminとして算出しているため、リップル補償デューティDTrpの影響(過補償等)によって、リップル電圧が想定とは反転しても(たとえば、Vmaxが現れるべきタイミングで、Vout<Voavとなるケース)、Va<0と演算されたVaのPI演算によってDTrpの符号が反転することにより、自動的に対応することができる。
制御IC100は、ステップS600により、平均補償デューティDTdcおよびリップル補償デューティDTrpの和に従って、デューティDTを算出する(DT=DTdc+DTrp)。さらに、制御IC100は、ステップS700により、算出されたデューティDTに従って、メイントランジスタ15のドライブ回路110への指令信号を生成する。当該指令信号は、たとえば、デューティDTを表すための複数ビットのデジタル信号によって構成される。ドライブ回路110は、制御IC100からの指令信号に従って、図2で説明したデューティ制御を実行する。
以上説明したように、実施の形態1に従う電源回路によれば、出力電圧Voutをサンプリングしたデジタル電圧を用いて、平均電圧値Voavを目標電圧Vout*に一致させるためのフィードバック制御(平均補償デューティDTdc)と、リップル電圧相当の交流電圧を予測的に補償する制御(リップル補償デューティDTrp)との組み合わせによって、出力電圧Voutを制御することができる。
この結果、出力電圧Voutおよび目標電圧Voutの偏差に基づく単純なフィードバック制御と比較して、制御周期を過度に短くすることなく、リップル電圧を除去することが可能となる。
なお、検出電圧Vcのサンプリング周期は、リップル周波数facによる正弦波状の電圧変動を表現可能であればよいため、たとえば、fac=120Hzに対して、1周期を500分割するように設定しても、サンプリング周期(すなわち、デジタル制御の制御周期)は、16.7μs程度に抑えられる。したがって、演算処理速度を過度に高めることなく、出力電圧Voutのデジタル制御を実現することができる。なお、1周期の分割数については、100分割程度としても、正弦波状の電圧変動を表現可能である。
なお、図1の構成においては、入力電圧Vinが出力される電源配線13には力率改善回路(PFC回路)がさらに配置されてもよい。PFC回路の適用時には、電源配線13の電流波形が、|Vac|と位相が近付くように制御されるが、入力電圧Vinには、図3相当のリップル電圧が生じる。このため、PFC回路の出力電圧がメイントランジスタ15によってスイッチングされる構成においても、実施の形態1で説明した出力電圧制御を適用することが可能である。
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1の変形例では、出力電圧Voutをサンプリングしたデジタル電圧値からリップル電圧振幅Vaを決定するための他の処理例について説明する。
図9は、実施の形態1の変形例によるリップル電圧振幅の決定処理を説明する概念的な波形図である。
図9を参照して、図7と同様に定義されたゼロクロス点ZP1,ZP2により、リップル電圧の1周期に対して、Vout>Voavの領域における面積Vs1(以下、電圧面積Vs1と称する)および、Vout<Voavの領域における面積Vs2(以下、電圧面積Vs2と称する)を定義することができる。すなわち、Vs1>0,Vs2<0であることが想定される。
sin関数の積分値から、リップル電圧振幅に相当する(Vmax−Vaov)は、電圧面積Vs1の1/2倍に相当し、同様に、(Vaov−Vmin)は、電圧面積Vs2の1/2倍に相当する。電圧面積Vs1およびVs2の各々は、当該期間におけるサンプル電圧値の積算値とサンプリング周期との乗算によって求めることができる。
図10は、実施の形態1の変形例によるリップル電圧振幅を決定する制御処理を説明するフローチャートである。図10に示す制御処理についても、図5のステップS400で実行される。
図10を参照して、制御IC100は、図8と同様のステップS410〜S440によりゼロクロス点ZP1,ZP2を検出する。
制御IC100は、ゼロクロス点ZP1の検出時(S430)には、ステップS460により、前回のゼロクロス点ZP2の検出時点から積算された電圧面積Vs2に従って、リップル電圧振幅Vaを更新する。たとえば、上述のように、Va=−(Vs2)/2とすることができる。
そして、制御IC100は、ステップS462により、電圧面積Vs2の値をクリアする(Vs2=0)。さらに、ステップS464により、フラグFLG=1に変更される。
制御IC100は、Vout>Voavの状態が継続している期間、すなわち、S420のNO判定時には、ステップS466により、今回サンプリングしたデジタル電圧値による電圧面積の増加分、具体的には、電圧差(Vout−Voav)を加算して、電圧面積Vs1の値を順次更新する。これにより、電圧面積Vs1は、サンプリング周期毎にデジタル電圧値に基づく変化分を積算するように演算される。
さらに、制御IC100は、ステップS468により、FLG=1に維持する。この期間では、リップル電圧振幅Vaの値も更新されることなく、前回のゼロクロス点ZP1の検出時に算出されたリップル電圧振幅Vaの値が維持される。
同様に、制御IC100は、ゼロクロス点ZP2の検出時(S440)には、ステップS470により、前回のゼロクロス点ZP1の検出時点から積算された電圧面積Vs1に従って、リップル電圧振幅Vaを更新する。たとえば、上述のように、Va=(Vs1)/2とすることができる。
そして、制御IC100は、ステップS472により、電圧面積Vs1の値をクリアする(Vs1=0)。さらに、ステップS474により、フラグFLG=0に変更される。
制御IC100は、Vout<Voavの状態が継続している期間、すなわち、S425のNO判定時には、ステップS476により、今回サンプリングしたデジタル電圧値による電圧面積の増加分、具体的には、電圧差(Vout−Voav)を加算して、電圧面積Vs2の値を更新する。これにより、電圧面積Vs2は、サンプリング周期毎にデジタイル電圧値に基づく変化分を積算するように演算される。
さらに、制御IC100は、ステップS478により、FLG=0に維持する。この期間では、リップル電圧振幅Vaの値も更新されることなく、前回のゼロクロス点ZP2の検出時に算出されたリップル電圧振幅Vaの値が維持される。
実施の形態1の変形例では、図10に示した制御処理によって、ゼロクロス点ZP1またはZP2の検出毎に、リップル電圧振幅Vaを算出することができる。これにより、サンプリング値に含まれるノイズの影響を抑制して、リップル電圧振幅Vaを算出することができる。電圧面積Vs1,Vs2からリップル電圧振幅Vaを演算した場合にも、リップル補償デューティDTrpの影響(過補償等)によって、リップル電圧が想定とは反転しても、Va<0と演算されることを通じてDTrpの符号が反転することにより、自動的に対応することができる。
なお、実施の形態1の変形例においても、図5のステップS100〜S300および、ステップS500a〜S700の処理は、実施の形態1と同様である。すなわち、図10の制御処理によって算出されたリップル電圧振幅Vaを用いて、実施の形態1と同様に、メイントランジスタ15のデューティDTが制御される。したがって、ノイズの影響を抑制されたリップル電圧振幅Vaに基づいてリップル補償デューティDTrpを適切に設定することにより、リップル電圧の除去効果を高めることができる。
[実施の形態2]
実施の形態1およびその変形例では、リップル電圧が電源周波数facに従う固定周波数を有すると想定して、リップル補償デューティDTrpを演算した。しかしながら、商用交流電源の電圧波形が歪む等により、電源周波数が一定とならない可能性も存在する。このようなケースでは、リップル補償デューティDTrpによる制御誤差が発生して、リップル電圧が除去できなくなる虞がある。
したがって、実施の形態2では、外部電源10の周波数に依存した周波数成分を持たせるリップル補償デューティDTrpについて、出力電圧Vinを用いて演算する。
図11は、実施の形態2に従う電源回路5bの概略構成を説明する回路図である。
図11を参照して、実施の形態2に従う電源回路5bでは、実施の形態1に従う電源回路5aと比較して、入力電圧Vinを制御IC100へ伝達するための入力回路95をさらに備える点で異なる。入力回路95は、電源配線13および制御IC100の入力端子104の間に接続された、ダイオード96および抵抗素子97を有する。さらに、図示しない分圧回路を経由して、入力電圧Vinは入力端子104へ伝達される。
制御IC100は、入力端子104の電圧を所定周期でサンプリングすることによって、入力電圧Vinのデジタル電圧値を取得することができる。入力電圧Vinのサンプリング周期は、リップル周波数facによる正弦波状の電圧変動を把握できるように、実施の形態1およびその変形例における検出電圧Vc(出力電圧Vout)のサンプリング周期と同等に設定することが好ましい。すなわち、入力電圧Vinのデジタル電圧値は「第2のデジタル電圧値」に対応する。
これにより、実施の形態2による電源回路5bでは、制御IC100は、入力電圧Vinをサンプリングしたデジタル電圧値を取得することができる。電源回路5bのその他の部分の構成は電源回路5aと同様であるので詳細な説明は繰返さない。
図12は、実施の形態2に従う電源回路5bにおける出力電圧制御の制御処理を説明するフローチャートである。
図12を参照して、制御IC100は、図5と同様のステップS100によって、検出電圧Vcのサンプリングによって出力電圧Voutのデジタル値を取得するとともに、ステップS105により、入力端子104の電圧をサンプリングすることによって、入力電圧Vinのデジタル電圧値を取得する。さらに、制御IC100は、図5と同様のステップS200,S300により、実施の形態1と同様に、検出電圧Vcのサンプリングによって得られた出力電圧Voutのデジタル値を用いて、平均補償デューティDTdcを算出する。
さらに、制御IC100は、ステップS500bにより、入力電圧Vinをサンプリングしたデジタル電圧値を用いてリップル補償デューティDTrpを算出する。そして、制御IC100は、図5と同様のステップS600およびS700により、平均補償デューティDTdcおよびリップル補償デューティDTrpの和に従って算出されたデューティDTによって、メイントランジスタ15のオンオフを制御する。実施の形態2に従う電源回路では、実施の形態1と比較して、リップル補償デューティDTrpの算出処理(S500b)のみが異なり、その他の制御処理は実施の形態1と同様である。
図13は、実施の形態2に従う電源回路の出力電圧制御におけるリップル補償項の算出処理を説明するフローチャートである。すなわち、図13に示した制御処理は、図12のステップS500bにおける処理を具体化したものである。
図13を参照して、制御IC100は、ステップS512により、現在のサンプリングタイミングから遡って、ステップS105で取得されたデジタル電圧値を含むN個のデジタル電圧値(Vin)の平均電圧値Viavを算出する。これにより、入力電圧Vinについて、リップル電圧の1周期における平均電圧が求められる。
図14は、入力電圧の挙動を説明する概念的な波形図が示される。
図14を参照して、入力電圧Vinは、リップル周期Trp毎の移動平均に相当する平均電圧値Viavと、当該平均電圧からの電圧差Vrとの和で示される。すなわち、Vr=Vin−Viavで定義される。Vin>ViavのときにはVr>0であり、Vin<ViavのときにはVr<0であることが理解される。
実際には、図3で説明したように、入力電圧Vinのリップルは、完全な正弦波状とはならない。このため、入力電圧Vinのデジタル電圧値を用いる実施の形態2では、実施の形態1のような正弦波近似ではなく、実際の電圧差Vrに基づいて、リップル電圧を把握する。ただし、入力電圧Vinのリップル電圧に基づく電圧差Vrについても、リップル周波数frp相当の、電源周波数facに従った周波数成分を有していることが理解される。
再び図13を参照して、制御IC100は、ステップS514により、今回のサンプリングされたデジタル電圧値(Vin)について、図14で定義された電圧差Vrを算出する。
さらに、制御IC100は、ステップS516により、ステップS514で算出された電圧差Vrに−kiを乗算することによって、今回(第i番目)のサンプリングにおけるリップル補償項DTrp(i)を算出する。
制御IC100は、ステップS518により、L回前のサンプリング時における、リップル補償項DTrp(i−L)を読み出して、リップル補償デューティDTrpに設定する(DTrp=DTrp(i−L))。
ここで、Lは、式(3)でのθrと同様の位相合わせのための固定値(整数)である。Lについては、入力電圧Vinの変動が出力電圧Voutに出現するまでの時間遅れや、デューティDTを調整する指令信号を生成してから実際の出力電圧Voutが変化するまでの時間遅れによって決まる。ただし、これらの時間遅れは一定値であるので、事前に実機実験等によって、電圧差Vrに基づくデューティ調整と出力電圧Voutのリップル電圧との位相を合致させるための適正値を求めることが可能である。
さらに、制御IC100は、ステップS520により、ステップS518で読み出したDTrp(i−L)を消去するとともに、ステップS516で演算されたDTrp(i)を新たに記憶するように、メモリ内容を更新する。これにより、最新のLサンプル分のリップル補償項DTrp(i)のみが記載されるので、必要な記憶容量を抑制できる。
再び図12を参照して、制御IC100は、ステップS500b(S518)で算出されたリップル補償デューティDTrpを用いて、メイントランジスタ15のデューティDTを制御する(S600,S700)。
このように実施の形態2に従う電源回路5bによれば、実施の形態1およびその変形例と同様に、平均補償デューティDTdcと、入力電圧Vinに実際に生じたリップル電圧に対応するリップル補償デューティDTrpとの組み合わせによって、演算処理速度を過度に高めることなく、出力電圧Voutのデジタル制御を実現することができる。
特に、入力電圧Vinの実際の変動に基づいて、電源周波数facに従った周波数成分を有することとなるリップル補償デューティDTrpを算出できるので、電源周波数facが変動した場合にも、リップル電圧を抑制することができる。
また、実施の形態2に従う電源回路5bについても、実施の形態1で説明したのと同様に、電源配線13にPFC回路をさらに配置することが可能である。PFC回路の適用時には、入力電圧Vinとして、PFC回路の出力電圧が制御IC100(入力端子104)へ伝達されるように、入力回路95(図11)を配置すれば、実施の形態2で説明した出力電圧制御を同様に適用することが可能である。
なお、実施の形態1およびその変形例、ならびに、実施の形態2では、外部電源10からの単相交流電圧が全波整流されるものとして、リップル周波数frpを電源周波数の2倍(frp=2・fac)としたが、単相交流電圧が半波整流される場合にも、式(3)でのfrp=facとして、実施の形態1およびその変形例と同様の制御を適用することが可能である。また、外部電源10が三相交流電圧を供給する場合には、各相で半波整流する場合には、frp=3・facとする一方で、3相ブリッジで全波整流する場合には、frp=6・facとして式(3)を用いれば、実施の形態1およびその変形例の制御を適用することが可能である。同様に、実施の形態2についても、外部電源10および整流の態様を問わず適用することが可能である。
さらに、実施の形態1またはその変形例と、実施の形態2とを組み合わせて、たとえば、両者に従って演算されたリップル補償デューティDTrpを加算したものと、平均補償デューティDTdcとの組み合わせによって、メイントランジスタ15のデューティDTを制御することも可能である。
また、電源回路5a,5bでは、いわゆる、一石型のフライバックコンバータによって電圧変換部20を構成する例を示したが、本発明の適用は、このような例に限定されることはない。すなわち、サンプリングされたデジタル電圧値を用いてデューティ(すなわち、電圧変換比)を調整する構成であれば、電圧変換部20の回路構成を限定することなく、本発明を共通に適用することが可能である。なお、スイッチング素子(メイントランジスタ)のデューティ制御についても、所定のスイッチング周期Tswで制御とするものを例示したが、スイッチング周期自体を可変として制御されてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。