JP6716876B2 - 遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法、及びこの製造方法により作製された、遺伝的に改変された形質転換植物体 - Google Patents

遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法、及びこの製造方法により作製された、遺伝的に改変された形質転換植物体 Download PDF

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Description

本発明は、遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法、及びこの製造方法により作製された、遺伝的に改変された形質転換植物体に関する。
植物に遺伝子を導入して形質転換植物を作出する研究が多くなされており、数多くの植物種で成功した例が報告されている。
ところで、通常、木本植物の品種改良育種は交雑育種により行われているが、木本植物は、実生から開花、結実までに数年、場合によっては数十年単位の長期間を要するため、草本植物に比べ遺伝子解析に長期を要する。
一方で、植物の遺伝子操作は商業的に重要な植物種の改良に大きな可能性を提供できる。近年では、樹木への遺伝子操作も種々検討されており、特にパルプ及び木材業界において応用されている。
現在、工業用ゴム製品に用いられている天然ゴム(ポリイソプレノイドの1種)は、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)や桑科植物のインドゴムノキ(Ficus elastica)などのゴム産生植物を栽培し、その植物体が有する乳管細胞で天然ゴムを生合成させ、該天然ゴムを植物から手作業により採取することにより得られる。
現状、工業用天然ゴムは、パラゴムノキをほぼ唯一の採取源としている。またゴム製品の主原料として、様々な用途において幅広くかつ大量に用いられている。しかしながら、パラゴムノキは東南アジアや南米などの限られた地域でのみ生育可能な植物である。更に、パラゴムノキは、植樹からゴムの採取が可能な成木になるまでに7年程度を要し、また、採取出来る季節が限られる場合がある。また、成木から天然ゴムを採取できる期間は20〜30年に限られる。
今後、開発途上国を中心に天然ゴムの需要の増大が見込まれており、天然ゴム資源の枯渇が懸念されていることから、安定的な天然ゴムの供給源が望まれている。
このような状況下において、パラゴムノキによる天然ゴムの増産を図る動きが見られる。パラゴムノキは、播種により実生苗を育成させ成長させた後台木とし、クローン苗から得た芽を台木に接ぎ木することで苗を増殖させる。クローン苗から得られる芽には限りがあるため、優良品種を普及させるには、優良品種のクローン苗を大量増殖させる必要がある。
また、遺伝子操作技術の適用を検討した例としては、パラゴムノキにおいて、未熟胚等の組織由来カルスを用いた遺伝子導入から不定胚を誘導し、再分化の後、植物体として再生させる不定胚形成系を利用した形質転換体の作出に成功した例が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
ジャヤシュリー(R.Jayashree)、外12名、「プラント セル レポート(Plant Cell Reports)」、2003年、第22巻、p.201−209
上述のように、木本植物であるパラゴムノキにおいて、不定胚形成系を利用した形質転換体の作出が行われているが、このような方法は、形質転換効率が低く不安定であったり、再分化効率が悪かったりして、所望する遺伝子型をもつ形質転換植物を得る有効な形質転換方法としては改善の余地があった。
また、受精した種子の未熟胚を利用する場合、親と同形質をもった個体を得られないため、品種の品質を維持することは難しかった。
そのため、再分化の難しい木本植物において、短期間で効率的に遺伝子導入でき、該植物の有用な形質を保持しながら目的の遺伝子を導入することができる遺伝子導入方法、及び、効率的に再分化可能な形質転換体作出方法が望まれている。
本発明は、前記課題を解決し、短期間で効率的に遺伝子導入でき、遺伝子導入される植物の有用な形質を保持しながら、目的の遺伝子を導入することが可能な、また、効率的な再分化が可能な、遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法を提供することを目的とする。
従来、木本植物において、葉柄や葉片、胚軸等からの不定芽誘導や不定胚誘導を利用した遺伝子導入が行われている。しかしながら、個体の再分化が難しく、不定芽や不定胚の形成が難しい品種によっては、遺伝子導入して、形質転換植物を作出することが困難であった。
本発明者らは、鋭意検討した結果、標的植物の組織片を培養して得られる培養組織片を用いて、形質転換を行い、当該形質転換によって得られる形質転換された組織片から植物体を再生することで、遺伝的に改変された遺伝子導入植物を短期間で効率的に得ることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る培養工程、該培養工程で得られた培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換する形質転換工程、該形質転換工程により形質転換された組織片から植物体を再生する再生工程を含むことを特徴とする遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法に関する。
上記標的植物は、木本植物であることが好ましい。
上記標的植物は、Hevea属に属する植物であることが好ましい。
上記培養工程後、更に、該培養工程により得られた培養組織片を採取し、分割した後、該分割された培養組織片を、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養することで、培養組織片を得る増殖工程を行い、該増殖工程により得られた培養組織片を形質転換工程に供することが好ましい。
上記形質転換工程は、上記培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換されたアグロバクテリウム属菌とともに培養する感染工程を含むことが好ましい。
上記遺伝子コンストラクトは、選択試薬に対する抵抗性を付与する選択マーカー遺伝子を含み、上記製造方法は、更に、上記選択試薬を含む選択培養培地で培養して、上記形質転換工程により形質転換された組織片を選択する選択培養工程を含むことが好ましい。
上記選択培養培地中の選択試薬の濃度は、0.01〜10mMであることが好ましい。
上記遺伝子コンストラクトは、上記標的植物のゲノムと同種の遺伝物質を含むことが好ましい。
上記遺伝子コンストラクトは、上記標的植物のゲノムと異種の遺伝物質を含むことが好ましい。
上記再生工程は、上記形質転換された組織片を発根誘導培地で培養して発根させる発根工程を含むことが好ましい。
本発明はまた、培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換する形質転換工程を含むことを特徴とする遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法に関する。
上記製造方法は、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る培養工程を含み、該培養工程で得られた培養組織片を形質転換工程に用いることが好ましい。
本発明はまた、上記製造方法により作製された、遺伝的に改変された形質転換植物体に関する。
本発明の遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法は、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る培養工程、該培養工程で得られた培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換する形質転換工程、該形質転換工程により形質転換された組織片から植物体を再生する再生工程を含む製造方法であるので、遺伝的に改変された遺伝子導入植物を短期間で効率的に得ることができる。
実施例1において、形質転換用の材料とするシュートの様子を示す写真である。 実施例1において、アグロバクテリウムに感染後のシュートの様子を示す写真である。
本発明の製造方法は、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る培養工程、該培養工程で得られた培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換する形質転換工程、該形質転換工程により形質転換された組織片から植物体を再生する再生工程を含む製造方法である。上述のように、このような方法で、遺伝的に改変された遺伝子導入植物を作製することにより、遺伝子導入植物を短期間で効率的に得ることができる。特に、培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換する形質転換工程を含むところに特徴があり、このような遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法もまた、本発明の1つである。その際、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る培養工程を含み、該培養工程で得られた培養組織片を形質転換工程に用いることが好ましい。
なお、本発明の製造方法は、上記各工程を含む限りその他の工程を含んでいてもよく、上記各工程は、1回行ってもよいし、植え継ぐなどして複数回行ってもよい。
上記培養工程に用いられる標的植物由来の組織片としては、特に限定されず、例えば、葉柄、葉片、体細胞胚の胚軸、節、腋芽、頂芽等が挙げられる。なかでも、培養組織片(好ましくは、シュート)を安定的に誘導することが可能であることから、節、腋芽、又は頂芽を含む組織を上記組織片として用いることが好ましい。このように、上記培養工程は、標的植物由来の節、腋芽、又は頂芽を含む組織を培養して培養組織片(好ましくは、シュート)を得る工程であることが好ましい。
上記標的植物としては特に制限されないが、本発明の製造方法は再分化の難しい木本植物においても適用することができることから、上記標的植物が木本植物である場合に本発明の効果がより顕著に発揮される。このように、上記標的植物が木本植物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記木本植物としては、特に制限されず、落葉樹、常緑樹の広い範囲の種類及び品種の木本植物を挙げることができるが、特に、ゴムを資源として採取できるゴムノキであることが好ましく、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)等のHevea属;イチジク(Ficus carica)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、オオイタビ(Ficus pumila L.)、イヌビワ(Ficus erecta Thumb.)、ホソバムクイヌビワ(Ficus ampelas Burm.f.)、コウトウイヌビワ(Ficus benguetensis Merr.)、ムクイヌビワ(Ficus irisana Elm.)、ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)、オオバイヌビワ(Ficus septica Burm.f.)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)等のFicus属;グアユール(Parhenium argentatum)がより好ましい。更に好ましくは、Hevea属に属する植物等のトウダイグサ科(Euphorbiaceae)に属する植物であり、更により好ましくは、Hevea属に属する植物である。なかでも、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)が特に好ましい。
以下において、本発明の製造方法における各工程について説明する。なお、以下の説明においては、標的植物の一例としてパラゴムノキを使用する場合について述べるが、パラゴムノキ以外の他の植物においてもこれと同様に実施することができる。
(培養工程)
培養工程では、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る。この工程は、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得るために通常行われる方法を採用することができ特に制限されないが、例えば、パラゴムノキ由来の節、腋芽、又は頂芽を含む組織を、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養することで、培養組織片(好ましくは、シュート)を誘導、形成させる誘導工程であることが好ましい。
培養組織片としては、シュート、節等が挙げられるが、なかでも、以降の遺伝子導入植物を作製するための各工程をより効率よく、より安定的に行うことができることから、シュートが好ましい。なお、以下においては、主として、培養組織片がシュートである場合について説明するが、培養組織片がシュート以外の場合においてもこれと同様に実施することができる。
上記シュートを誘導するための材料(組織)としては、パラゴムノキの節、腋芽、又は頂芽を含む組織を用いることができるが、具体的には、成木や幼木、苗木、クローン苗、又は試験管内で実生から生育させた無菌苗(無菌実生苗)由来の節、腋芽、若しくは頂芽を含む組織などが挙げられる。成木や幼木、苗木、又はクローン苗由来の節、腋芽、若しくは頂芽を含む組織を使用する場合には、適宜必要な大きさに切断した後、表面を殺菌又は滅菌することで使用することができるが、試験管内で実生から生育させた無菌苗(無菌実生苗)由来の節、腋芽、又は頂芽を含む組織を使用する場合には、適宜必要な大きさに切断した後に使用することが可能である。
成木や幼木、苗木、又はクローン苗由来の節、腋芽、若しくは頂芽を含む組織を用いる場合、誘導培地で培養する前にまず、組織の表面を洗浄する。例えば、磨き粉で洗浄したり、柔らかいスポンジで洗浄したりしても良いが、流水で洗浄するのが好ましい。当該洗浄用の水は、界面活性剤を約0.1質量%含むものであってもよい。
次に、組織を殺菌又は滅菌する。殺菌又は滅菌は、周知の殺菌剤、滅菌剤を用いて行うことができるが、エタノール、塩化ベンザルコニウム、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が好ましい。なお、殺菌又は滅菌処理の後、更に滅菌水で洗浄してもよい。
上記洗浄、殺菌又は滅菌処理を行う具体例として例えば以下の手順が挙げられる。流水で表面組織を洗浄した後、エタノールで洗浄。次いで次亜塩素酸ナトリウム水溶液で必要に応じて撹拌しながら滅菌。その後、滅菌水を用いて洗浄。
誘導工程では、パラゴムノキの節、腋芽、又は頂芽を含む組織を、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養することにより、シュートを誘導、形成させる。なお、誘導培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地に上記組織を差し込んで培養することでシュートを誘導しやすくなるため、固体培養が好ましい。また、誘導培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
また、殺菌又は滅菌処理を行った組織を用いる場合には、殺菌剤、滅菌剤の影響を除くため切り口を切除して培養に用いてもよい。
植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。中でも、サイトカイニン系植物ホルモンを用いることが好ましい。
オーキシン系植物ホルモンとしては、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、1−ナフタレン酢酸、インドール−3−酪酸、インドール−3−酢酸、インドールプロピオン酸、クロロフェノキシ酢酸、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、パラクロロフェノキシ酢酸、2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸、4−フルオロフェノキシ酢酸、2−メトキシ−3,6−ジクロロ安息香酸、2−フェニル酸、ピクロラム、ピコリン酸等が挙げられる。なかでも、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、1−ナフタレン酢酸、インドール−3−酪酸が好ましく、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、1−ナフタレン酢酸がより好ましい。
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチン、ベンジルアミノプリン、イソペンチニルアミノプリン、チジアズロン、イソペンテニルアデニン、ゼアチンリポシド、ジヒドロゼアチン等が挙げられる。なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましく、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。
炭素源としては、特に限定されず、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、マルトース等の糖類が挙げられる。なかでも、スクロースが好ましい。
誘導培地は、上記組織への成長阻害物質の蓄積を防止するために、更に活性炭を含むことが好ましい。また、シュートの形成を促進するために、更に硝酸銀を含むことが好ましい。更には、シュートの形成を促進するために、ココナッツウォーター(ココナッツミルク)を含んでもよい。
誘導培地としては、Whiteの培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、Hellerの培地(Heller R, Bot.Biol.Veg.Paris 14 1−223(1953))、SH培地(SchenkとHildebrandtの培地)、MS培地(MurashigeとSkoogの培地)(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、LS培地(LinsmaierとSkoogの培地)(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、Gamborg培地、B5培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)、MB培地、WP培地(Woody Plant:木本類用)等の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地を使用すればよい。なかでも、MS培地又はその組成に変更を加えたMS改変培地が好ましい。
誘導培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
好適な誘導培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、パラゴムノキの場合は)以下の組成である。
誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。なお、本明細書において、炭素源の濃度とは、糖類の濃度を意味する。
誘導培地にオーキシン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
誘導培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、誘導培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。特に好ましくは0.8mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは7.0mg/L以下、より好ましくは6.0mg/L以下である。
特に、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニンを使用する場合の、該ベンジルアデニンの濃度は、4.0〜6.0mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、5.0mg/Lである。他方、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてカイネチンを使用する場合の、該カイネチンの濃度は、0.8〜1.2mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、1.0mg/Lである。
誘導培地中の活性炭の濃度は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。該活性炭の濃度は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
誘導培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.5〜6.0が更に好ましい。
なお、本明細書において、固体培地のpHは、固形化剤を除く全成分を添加した培地のpHを意味する。
誘導工程は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜40℃がより好ましく、25〜35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、12.5μmol/m/sの照明の下、14〜16時間の明時間という条件などが挙げられる。培養時間は、特に限定されないが、1〜10週間培養することが好ましく、4〜8週間がより好ましい。
固体培地の場合、誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン、又はカイネチン)で、その濃度が0.8〜6.0mg/Lであり、培養温度が25〜35℃であることが特に好ましい。
以上のように、パラゴムノキの節、腋芽、又は頂芽を含む組織を上記誘導培地で培養することにより、シュートを誘導、形成することが可能である。
上記誘導工程(培養工程)により形成されたシュートは、後述する形質転換工程に供されるが、また後述する増殖工程に供することにより、シュートの数を増加させることができ、接ぎ穂となる組織を大量に増殖させることが可能となる。そしてこのように増殖工程により大量に増殖させた接ぎ穂となる組織を後述の形質転換工程に供することもできる。これにより、シュートの数を増加させることができ、接ぎ穂となる組織を大量に増殖させることが可能である。そして更には、この増殖工程を繰り返し行ったり、植え継ぎ培養したりすることによって更に大量に増殖させることができる。このように、上記培養工程後、更に増殖工程を経た後、形質転換工程を行い、いわゆるマイクロプロパゲーション法により増殖されたシュートを形質転換工程に供してもよい。すなわち、本発明の製造方法が、上記培養工程後、更に、該培養工程により得られた培養組織片を採取し、分割した後、該分割された培養組織片を、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養することで、培養組織片を得る増殖工程を行い、該増殖工程により得られた培養組織片を形質転換工程に供する形態であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
ここで、上記誘導工程により形成されたシュートは、シュートが安定して成長したことが確認できれば形質転換工程や増殖工程に供することが可能であるが、例えば誘導培地で4週間培養すると、シュートが誘導されるだけでなく、伸長することとなり、誘導されたシュートだけでなく、このような誘導、伸長されたシュートを形質転換工程、増殖工程に供してもよい。この際のシュートの伸長度合いは、誘導培地での培養期間等の培養条件により適宜調整することができる。そして更には、誘導工程により誘導されたシュートを後述する伸長工程に供して伸長させた後に、形質転換工程や増殖工程に供してもよい。
(伸長工程)
伸長工程では、誘導工程により形成させたシュートを、植物生長ホルモン及び炭素源を含む伸長培地で培養することにより、シュートを伸長させる。具体的には、誘導工程により形成させたシュート(例えば、2〜3cm程度)を伸長培地に差し込み移植し、4週間程度培養することで、シュートが伸長し、また新たな芽を取得することも可能となる。
なお、伸長培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地にシュートを差し込んで培養することでシュートが伸長しやすくなるため、固体培養が好ましい。また、伸長培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
伸長培地は、植物生長ホルモン及び炭素源を含むものであるが、該植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。中でも、オーキシン系植物ホルモンとサイトカイニン系植物ホルモンとを併用することが好ましい。
オーキシン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるオーキシン系植物ホルモンと同様のものを用いることができるが、なかでも、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、1−ナフタレン酢酸、インドール−3−酪酸が好ましく、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、1−ナフタレン酢酸がより好ましく、1−ナフタレン酢酸が特に好ましい。
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるサイトカイニン系植物ホルモンと同様のものを用いることができるが、なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましく、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましく、ベンジルアデニンが更に好ましい。
伸長培地に用いられる炭素源としては、特に限定されず、上記誘導培地に用いられる炭素源と同様のものを用いることができるが、なかでも、スクロースが好ましい。
伸長培地は、上記誘導培地同様、更に、活性炭、硝酸銀を含むことが好ましい。
伸長培地としては、上記誘導培地として用いられる基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地を用いることができるが、なかでも、MS培地、B5培地、WP培地が好ましく、MS培地又はその組成に変更を加えたMS改変培地がより好ましい。
伸長培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
好適な伸長培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、パラゴムノキの場合は)以下の組成である。
伸長培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
伸長培地にオーキシン系植物ホルモンを加える場合の、伸長培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.03mg/L以上、更に好ましくは0.05mg/L以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは2.0mg/L以下、より好ましくは1.0mg/L以下、更に好ましくは0.1mg/L以下、特に好ましくは0.08mg/L以下である。
伸長培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、伸長培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上、特に好ましくは0.8mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは2.0mg/L以下である。
伸長培地中の活性炭の濃度は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。該活性炭の濃度は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
伸長培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
伸長培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.5〜6.0が更に好ましい。
伸長工程は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜40℃がより好ましく、25〜35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、12.5μmol/m/sの照明の下、14〜16時間の明時間という条件などが挙げられる。培養時間は、特に限定されないが、1〜10週間培養することが好ましく、3〜5週間がより好ましい。
固体培地の場合、伸長培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがオーキシン系植物ホルモン(特に、1−ナフタレン酢酸)及びサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン)で、その濃度がそれぞれ0.05〜0.08mg/L、0.8〜2.0mg/Lであり、培養温度が25〜35℃であることが特に好ましい。
以上のように、誘導工程により形成させたシュートを上記伸長培地で培養することにより、シュートを伸長させることができる。また、この伸長工程では、シュートが伸長するだけではなく、新たなシュートも形成される。この伸長工程により伸長させたシュートは更に後述の形質転換工程や増殖工程に使用することができる。
(増殖工程)
増殖工程では、誘導工程により形成させたシュート、又は、伸長工程により伸長させたシュートを採取し、分割した後、該分割されたシュートを、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養することで、シュートを形成させる。この工程を行うことにより、シュートの数を増加させることができ、接ぎ穂となる組織を大量に増殖させることが可能である。そして更には、この工程を繰り返し行ったり、植え継ぎ培養したりすることによって更に大量に増殖させることができる。
増殖工程において、誘導工程により形成させたシュート、又は、伸長工程により伸長させたシュートを採取する際には、節、腋芽や頂芽の部分は採取しないようにしてシュートを採取すると、増殖工程において安定的にシュートの数を増加させることが可能となり好ましい。
なお、採取したシュートの分割は従来公知の方法により行うことができ、分割する大きさは適宜設定することができる。
増殖工程において用いる誘導培地としては、上記誘導工程において用いられる誘導培地と同様のものを用いることができる。
以上のように、増殖工程では、シュートを採取、分割した後、該分割されたシュートを上記誘導培地で培養することにより、シュートを形成させ、シュートを大量に増殖させることが可能である。この増殖工程により形成させたシュートは後述の形質転換工程に供される。シュートが安定して成長したことが確認できれば形質転換工程に供することが可能であるが、形質転換工程に供する前に、形成させたシュートを上記誘導培地に植え継いで成長させてから形質転換工程に供してもよいし、上述の伸長工程を経てから形質転換工程に供してもよい。
(形質転換工程)
形質転換工程では、培養工程で得られた培養組織片、又は、増殖工程により得られた培養組織片、具体的には、誘導工程により形成されたシュート、又は、増殖工程により形成されたシュート、を遺伝子コンストラクトで形質転換する。
上記形質転換の方法としては、例えば、アグロバクテリウム属菌を用いて遺伝子を間接的に植物体に導入する方法や、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法、エレクトロポーレーション法等の遺伝子を直接細胞に導入する方法などが挙げられる。なかでも、本発明においては、アグロバクテリウム属菌を用いた方法が好適に採用される。
すなわち、上記形質転換工程が、培養工程で得られた培養組織片、又は、増殖工程により得られた培養組織片を、遺伝子コンストラクトで形質転換されたアグロバクテリウム属菌とともに培養する感染工程を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記感染工程においては、標的遺伝子又はそのフラグメント(以下、標的遺伝子等、又は、遺伝物質、とも称する。)を含む遺伝子コンストラクトを含有するアグロバクテリウム属菌を、誘導工程により形成されたシュート、又は、増殖工程により形成されたシュートに感染させる。そこで、まず、アグロバクテリウム属菌の調製方法(アグロバクテリウム属菌調製工程)について説明する。
(アグロバクテリウム属菌調製工程)
上記感染工程において用いられるアグロバクテリウム属菌としては、含有する遺伝子コンストラクトを植物細胞に導入させることができるアグロバクテリウム属菌であれば特に限定されるものではないが、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)であることが好ましい。感染効率が良好であり、アグロバクテリウム法において汎用されているためである。
標的遺伝子等を含む遺伝子コンストラクトを含有するアグロバクテリウム属菌は、従来公知の何れの手法を用いて作製してもよい。例えば、アグロバクテリウム属菌が有するTiプラスミドのT−DNA領域と相同組み換え可能なプラスミドに、標的遺伝子等を組み込んだ標的遺伝子組み換え中間ベクターを作製し、該標的遺伝子組み換え中間ベクターをアグロバクテリウム属菌に導入することで、標的遺伝子等を含む遺伝子コンストラクトを含有するアグロバクテリウム属菌を作製する方法や、アグロバクテリウム法において汎用されているバイナリーベクターに標的遺伝子等を組み込んだ標的遺伝子バイナリーベクターをアグロバクテリウム属菌に導入することで、標的遺伝子等を含む遺伝子コンストラクトを含有するアグロバクテリウム属菌を作製する方法などが挙げられる。
上記遺伝子コンストラクトに含まれる標的遺伝子とは、標的植物に導入する目的の遺伝子を意味する。標的遺伝子としては、標的植物に導入された結果、当該標的植物の遺伝的形質を変化させ得るものであれば特に限定されるものではなく、導入される標的植物が本来有している遺伝子であってもよく、当該標的植物以外の生物由来の遺伝子であってもよく、人工的に作製した遺伝子であってもよい。人工的に作製した遺伝子としては、例えば、2種類以上の遺伝子をつなぎ合わせたキメラ遺伝子であってもよく、いずれかの生物が有する遺伝子を変異させた変異遺伝子であってもよい。変異遺伝子としては、例えば、遺伝子を構成するDNAの塩基配列のうちの一部の塩基を欠損させたものであってもよく、置換させたものであってもよい。また、該塩基配列の途中に部分塩基配列を挿入したものであってもよい。
このように、上記遺伝子コンストラクトが、標的植物のゲノムと同種の遺伝物質を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つであり、また、標的植物のゲノムと異種の遺伝物質を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、標的遺伝子は、構造遺伝子であってもよく、調節領域であってもよい。例えば、プロモーターやターミネーター等の転写や翻訳の制御領域を含む構造遺伝子であってもよい。なお、制御領域の遺伝子は、遺伝子が導入される標的植物中で機能し得るものであればよく、遺伝子が導入される標的植物と同種の生物由来の遺伝子であってもよいし、異種の生物由来の遺伝子であってもよいことは言うまでもない。このような異種プロモーターとしては、例えば、CaMV35 promoter、NOS promoter等の遺伝子組み換えに係る分野において汎用されているプロモーターを使用することができる。
標的植物に導入される標的遺伝子は、遺伝子の全長であってもよいし、フラグメントであってもよい。例えば、構造遺伝子の機能ドメインのみからなるフラグメントを導入するものであってもよい。
標的植物に導入する標的遺伝子としては、後述するレポーター遺伝子、又は、標的植物の細胞内で所望する効果を発揮する遺伝子であれば特に制限されない。当該所望する効果は、例えば、成長促進、耐病性、植物生産物の品質の変化や向上など、任意の変化であればよい。
また、これらの遺伝子に組織特異的に機能するプロモーター等の調節領域を含ませることにより、標的遺伝子がコードしているタンパク質を、植物体の特定の組織において発現させることもできる。
上記遺伝子コンストラクトに含まれる標的遺伝子等は、好適には、マーカー遺伝子、場合により、レポーター遺伝子とともにベクターに組み込まれる。
マーカー遺伝子(選択マーカー遺伝子ともいう。)としては、後述する選択培養培地に含まれる選択試薬に対する抵抗性を付与する選択マーカーをコードする遺伝子であればよく、例えば、カナマイシン耐性遺伝子(nptII)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(hptI)、グリフォサート耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。植物体での発現位置を確認するためのレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、GUS(βグルクロニダーゼ)遺伝子、GFP(緑色蛍光タンパク質)、RFP(赤色蛍光タンパク質)等を挙げることができる。
このように、上記遺伝子コンストラクトが、選択試薬に対する抵抗性を付与する選択マーカー遺伝子を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
アグロバクテリウム属菌調製工程では、上述の説明等の通りに作製した標的遺伝子等を含む遺伝子コンストラクトを含有するアグロバクテリウム属菌を、常法により培養(例えば、培養温度20〜35℃で、YEB培地で10〜30時間振とう培養)し、増殖させることにより、標的植物由来のシュートに感染させるために必要な量を調製することができる。
(感染工程)
感染工程では、標的遺伝子等を含む遺伝子コンストラクトを含有するアグロバクテリウム属菌(アグロバクテリウム属菌調製工程により得られたアグロバクテリウム属菌)を、誘導工程により形成されたシュート、又は、増殖工程により形成されたシュートに感染させる。
感染工程は、アグロバクテリウム法において一般的に行われている手法で行うことができる。例えば、アグロバクテリウム属菌を液体の感染培地中に懸濁させ、該懸濁液中に、上記誘導工程により形成されたシュート、又は、増殖工程により形成されたシュートを浸漬させることにより、感染させることができる。そして、浸漬後、懸濁液と、上記シュートをろ紙等で分離すればよい。なお、浸漬中は、静置してもよく、振とうしてもよいが、シュートにアグロバクテリウム属菌を感染させやすいことから、振とうすることが好ましい。
感染に用いられるアグロバクテリウム属菌懸濁液の菌濃度は、アグロバクテリウム属菌の種類や増殖活性、感染させるシュートのシュート誘導後の培養期間、浸漬時間等を考慮して適宜決定することができる。例えば、シュート5本に対し、600nmで測定した吸光度(O.D.600)が0.01〜1.0(好ましくは0.05〜0.8、より好ましくは0.08〜0.6)のアグロバクテリウム属菌懸濁溶液10〜50mL(好ましくは20〜40mL、より好ましくは25〜35mL)に相当する菌体数のアグロバクテリウム属菌を接触させることが好ましい。これにより、シュートへ感染するアグロバクテリウム数を最適化でき、形質転換シュートを効率的に作成できる。
感染工程におけるアグロバクテリウム属菌とシュートとの共存時間、すなわち、アグロバクテリウム属菌とシュートを接触させる時間は、0.5〜60分が好ましく、1〜40分がより好ましく、25〜35分が更に好ましい。これにより、シュートへ感染するアグロバクテリウム数を最適化でき、形質転換シュートを効率的に作成できる。なお、該共存時間は、例えば、アグロバクテリウム属菌懸濁液中に、シュートを浸漬させる場合、浸漬時間を意味する。
アグロバクテリウム属菌を懸濁させる感染培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に必要に応じて植物生長ホルモン、炭素源を加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、LS培地、B5培地、WP培地が好ましく、MS培地がより好ましい。植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。なお、炭素源として、スクロースとグルコースとを併用して用いてもよい。
また、感染培地は、上記誘導培地同様、更に、硝酸銀を含むことが好ましい。
好適な感染培地の組成は、植物種により異なるが、通常は(特に、パラゴムノキの場合は)以下の組成である。
感染培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
感染培地にオーキシン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、感染培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
感染培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、感染培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。特に好ましくは0.8mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは7.0mg/L以下、より好ましくは6.0mg/L以下である。
特に、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニンを使用する場合の、該ベンジルアデニンの濃度は、4.0〜6.0mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、5.0mg/Lである。他方、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてカイネチンを使用する場合の、該カイネチンの濃度は、0.8〜1.2mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、1.0mg/Lである。
感染培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
シュートがアグロバクテリウムに感染しやすくなるという理由から、感染培地は更にアセトシリンゴンを含むアセトシリンゴン含有培地であることも好ましい形態の1つである。感染培地にアセトシリンゴンを加える場合の、感染培地中のアセトシリンゴン濃度としては、好ましくは1〜500μM、より好ましくは10〜400μM、更に好ましくは50〜250μMである。
感染培地のpHは、特に限定されないが、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.0がより好ましい。感染させる温度(感染培地の温度)は、0〜40℃が好ましく、20〜36℃がより好ましく、22〜30℃が更に好ましく、28℃が最も好ましい。感染工程は、暗所で行っても明所で行ってもよい。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン)で、その濃度が4.0〜6.0mg/Lであり、培養温度が22〜30℃であることが特に好ましい。
以上のように、感染工程では、例えば、アグロバクテリウム属菌調製工程により得られたアグロバクテリウム属菌を液体の感染培地中に懸濁させ、該懸濁液中に、誘導工程により形成されたシュート、又は、増殖工程により形成されたシュートを浸漬させることにより、シュートにアグロバクテリウム属菌を感染させることができる。そして、浸漬後、懸濁液と、シュートをろ紙等で分離し、分離したシュートは、次の共存培養工程に供される。すなわち、上記感染工程を含む形質転換工程では、感染工程に続いて、共存培養工程が行われる。
(共存培養工程)
共存培養工程では、感染工程により得られたシュート(アグロバクテリウム属菌が感染したシュート)を共存培養培地中で培養する。これにより、感染によりシュートに導入された標的遺伝子等の遺伝子断片が、植物細胞の遺伝子中に組み込まれ、安定した形質転換シュートを得ることができる。
なお、共存培養培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、安定した形質転換シュートを得ることができるため、固体培養が好ましい。また、共存培養培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよいし、振とう培養を行ってもよい。
共存培養培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に必要に応じて植物生長ホルモン、炭素源を加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、B5培地、WP培地が好ましく、MS培地又はその組成に変更を加えたMS改変培地がより好ましい。植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に用いられる。
また、共存培養培地は、上記誘導培地同様、更に、硝酸銀を含むことが好ましい。
好適な共存培養培地の組成は、植物種により異なるが、通常は(特に、パラゴムノキの場合は)以下の組成である。
共存培養培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
共存培養培地にオーキシン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、共存培養培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
共存培養培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、共存培養培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。特に好ましくは0.8mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは7.0mg/L以下、より好ましくは6.0mg/L以下である。
特に、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニンを使用する場合の、該ベンジルアデニンの濃度は、4.0〜6.0mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、5.0mg/Lである。他方、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてカイネチンを使用する場合の、該カイネチンの濃度は、0.8〜1.2mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、1.0mg/Lである。
共存培養培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
安定した形質転換シュートがより得やすくなるという理由から、共存培養培地は更にアセトシリンゴンを含むアセトシリンゴン含有培地であることが好ましい。共存培養培地中のアセトシリンゴン濃度としては、好ましくは1〜500μM、より好ましくは10〜400μM、更に好ましくは50〜250μMである。
共存培養培地を固体培地とする場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。
固体培地の場合、共存培養培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
共存培養培地のpHは、特に限定されないが、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.0がより好ましい。
培養温度は、0〜40℃が好ましく、10〜36℃がより好ましく、20〜28℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、暗所で培養を行うことが好ましく、暗所の照度は、0〜0.1lxが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、2〜4日間培養することが好ましい。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン)で、その濃度が4.0〜6.0mg/Lであり、培養温度が20〜28℃であることが特に好ましい。
以上のように、共存培養工程では、感染工程により得られたシュート(アグロバクテリウム属菌が感染したシュート)を上記共存培養培地中で培養することにより、感染によりシュートに導入された標的遺伝子等の遺伝子断片が、植物細胞の遺伝子中に組み込まれ、安定した形質転換シュートを得ることができる。この共存培養工程により得られたシュート(形質転換されたシュートと、形質転換されていないシュートの混合物)は、先ず、次の除菌工程に供され、その後、次の選択培養工程に供されることが好ましい。
(除菌工程)
除菌工程は、アグロバクテリウム法において一般的に行われている手法で行うことができる。この工程により、共存培養工程により得られるシュートとともに存在するアグロバクテリウム属菌を除菌することができる。
除菌工程は、共存培養工程により得られるシュート(形質転換されたシュートと、形質転換されていないシュートの混合物)とともに存在するアグロバクテリウム属菌を除菌し、除くことができれば特に制限されないが、例えば、共存培養工程により得られたシュートを液体除菌培地で洗浄し、その後、除菌培地中で培養することによりアグロバクテリウム属菌を除菌することができる。具体的には、共存培養工程により得られたシュートを液体除菌培地中に浸漬させて洗浄し、浸漬後、液体除菌培地と上記シュートとをろ紙等で分離して、分離した当該シュートを除菌培地で培養することにより行うことができる。
なお、液体除菌培地に浸漬する際には、静置してもよいし、振とうしてもよい。また、液体除菌培地での洗浄は、1回行ってもよいし、複数回繰り返し行ってもよい。
液体除菌培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に除菌剤を加え、必要に応じて植物生長ホルモン、炭素源を加えたものを使用すればよい。具体的には、上記感染培地と同様の培地に除菌剤を加えたものを好適に使用できる。
また、液体除菌培地は、上記感染培地同様、更に、硝酸銀を含むことが好ましい。
上記除菌剤としては、アグロバクテリウム属菌を除菌することができればその種類は特に制限されないが、例えば、セフォタキシム、カルベニシリン、メロペネム三水和物等が挙げられる。
液体除菌培地中の除菌剤の濃度としては、好ましくは50mg/L以上、より好ましくは100mg/L以上であり、50mg/L未満であると、アグロバクテリウム属菌を充分に除菌できないおそれがある。また、該除菌剤の濃度は、好ましくは800mg/L以下、より好ましくは500mg/L以下であり、800mg/Lを超えると、除菌剤が高濃度過ぎて、アグロバクテリウム属菌のみならず、シュートの生存にまで悪影響が及ぶおそれがある。
液体除菌培地での洗浄時間、すなわち、液体除菌培地とシュートとを接触させる時間は、0.5〜60分が好ましく、1〜40分がより好ましく、5〜30分が更に好ましい。これにより、アグロバクテリウム属菌を充分に除菌することができる。なお、該洗浄時間は、例えば、液体除菌培地中に、シュートを浸漬させる場合、浸漬時間を意味する。
好適な液体除菌培地の組成は、植物種により異なるが、通常は(特に、パラゴムノキの場合は)以下の組成である。
液体除菌培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
液体除菌培地にオーキシン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、液体除菌培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
液体除菌培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、液体除菌培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。特に好ましくは0.8mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは7.0mg/L以下、より好ましくは6.0mg/L以下である。
特に、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニンを使用する場合の、該ベンジルアデニンの濃度は、4.0〜6.0mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、5.0mg/Lである。他方、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてカイネチンを使用する場合の、該カイネチンの濃度は、0.8〜1.2mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、1.0mg/Lである。
液体除菌培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
液体除菌培地のpHは、特に限定されないが、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.0がより好ましい。除菌温度(液体除菌培地の温度)は、0〜40℃が好ましく、20〜36℃がより好ましく、22〜30℃が更に好ましく、24〜28℃が特に好ましい。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン)で、その濃度が4.0〜6.0mg/Lであり、除菌剤(特に、セフォタキシム)を濃度100〜500mg/Lで含むことが特に好ましい。
除菌工程は、共存培養工程により得られたシュートを液体除菌培地で洗浄した後、液体除菌培地と上記シュートとをろ紙等で分離して、分離した当該シュートを除菌培地で培養する。
上記除菌培地は、液体であってもよいし固体であってもよいが、培地上に置床して培養することで、より効果的に除菌することができるため、固体培養が好ましい。また、除菌培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよいし、振とう培養を行ってもよい。
除菌培地としては、上記液体除菌培地と同様のものを用いることができる。ただし、除菌培地における除菌剤の濃度は、50mg/L以上が好ましく、100mg/L以上がより好ましい。50mg/L未満であると、アグロバクテリウム属菌を充分に除菌できないおそれがある。また、該除菌剤の濃度は、400mg/L以下が好ましく、300mg/L以下がより好ましい。400mg/Lを超えると、除菌剤が高濃度過ぎて、アグロバクテリウム属菌のみならず、シュートの生存にまで悪影響が及ぶおそれがある。
除菌培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
除菌培地が固体培地の場合、除菌培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
除菌培地中での培養は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜40℃がより好ましく、25〜35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、12.5μmol/m/sの照明の下、14〜16時間の明時間という条件などが挙げられる。培養時間は、特に限定されないが、1〜10週間培養することが好ましく、3〜5週間がより好ましい。そして、1〜4週間おきに再度液体除菌培地での洗浄を行い継代培養することが好ましい。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン)で、その濃度が4.0〜6.0mg/Lであり、除菌剤(特に、セフォタキシム)を濃度100〜300mg/Lで含み、培養温度が25〜35℃であることが特に好ましい。
(選択培養工程)
選択培養工程は、アグロバクテリウム法において一般的に行われている手法で行うことができる。この工程により、形質転換されたシュートと、形質転換されていないシュートを選別することができる。
選択培養工程では、上記除菌工程で除菌されたシュートを選択培養培地中で培養する。選択培養工程の培養条件は、形質転換シュート(標的遺伝子を獲得したシュート)が選択的に生育できる条件であれば、特に限定されない。
なお、選択培養培地は、液体であっても固体であってもよい。また、選択培養培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
選択培養培地としては、上述の基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地に、選択マーカー遺伝子に対応する選択試薬を加えたものを使用すればよい。なかでも、MS培地、B5培地、WP培地に上記選択試薬を加えたものが好ましく、MS培地に上記選択試薬を加えたものがより好ましい。なお、必要に応じて、植物生長ホルモン、炭素源を加えてもよい。植物生長ホルモン、炭素源としては、上記誘導培地と同様のものが好適に使用できる。また、選択培養培地は、上記誘導培地同様、更に、硝酸銀を含むことが好ましい。
上記選択マーカー遺伝子に対応する選択試薬としては、特に限定されないが、当業者であれば、使用した選択マーカー遺伝子に応じて適宜選択することができる。例えば、上記選択マーカー遺伝子として、グリフォサート耐性遺伝子を使用した場合にはグリフォサートを培地に添加し、カナマイシン耐性遺伝子を使用した場合にはカナマイシンを培地に添加し、また、ハイグロマイシン耐性遺伝子を使用した場合にはハイグロマイシンを培地に添加して、シュート(除菌工程で除菌されたシュート(形質転換されたシュートと、形質転換されていないシュートの混合物))を培養することにより、形質転換されたシュートは、標的遺伝子と共にグリフォサート耐性遺伝子も導入されているため当該培地中で生育することができるが、形質転換されていないシュートは、当該培地中で生育することがない。このように、上記選択マーカー遺伝子に対応する選択試薬を加えた培地で、形質転換されたシュートと、形質転換されていないシュートの混合物を培養することにより、形質転換されたシュートを選択的に生育させることができる。すなわち、本発明の製造方法が、更に、上記選択試薬を含む選択培養培地で培養して、上記形質転換工程により形質転換された組織片を選択する選択培養工程を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
選択培養培地中の選択試薬の濃度としては、好ましくは0.01mM以上、より好ましくは0.05mM以上であり、0.01mM未満であると、形質転換されていないシュートの生育を充分に阻害することができずに、形質転換されたシュートを選択的に生育させることができないおそれがある。また、該選択試薬の濃度は、好ましくは10mM以下、より好ましくは5mM以下、更に好ましくは3mM以下である。10mMを超えて選択試薬を添加しても、形質転換されたシュートの選択性に大きな影響はなく不経済となる場合がある。このように、選択培養培地中の選択試薬の濃度が、0.01〜10mMである形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
好適な選択培養培地の組成は、植物種により異なるが、通常は(特に、パラゴムノキの場合は)以下の組成である。
選択培養培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
選択培養培地にオーキシン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、選択培養培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
選択培養培地にサイトカイニン系植物ホルモンを加える場合の、選択培養培地中のサイトカイニン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.01mg/L以上、より好ましくは0.1mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。特に好ましくは0.8mg/L以上である。該サイトカイニン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは7.0mg/L以下、より好ましくは6.0mg/L以下である。
特に、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてベンジルアデニンを使用する場合の、該ベンジルアデニンの濃度は、4.0〜6.0mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、5.0mg/Lである。他方、上記サイトカイニン系植物ホルモンとしてカイネチンを使用する場合の、該カイネチンの濃度は、0.8〜1.2mg/Lであることが好ましく、最も好ましくは、1.0mg/Lである。
選択培養培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
選択培養培地が固体培地の場合、上記誘導培地の場合と同様に、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
選択培養培地が固体培地の場合、選択培養培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
選択培養培地のpHは、特に限定されないが、5.0〜7.0が好ましく、5.6〜6.5がより好ましい。
選択培養培地中での培養は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜40℃がより好ましく、25〜35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、12.5μmol/m/sの照明の下、14〜16時間の明時間という条件などが挙げられる。培養時間は、特に限定されないが、1〜10週間培養することが好ましく、3〜5週間がより好ましい。そして、1〜4週間おきに継代培養することが好ましい。
選択培養工程は、1回行ってもよいし、複数回繰り返し行ってもよい。なお、複数回繰り返し選択培養工程を実施する場合の、選択培養培地中の選択試薬の濃度は、毎回同一であってもよいし、少なくとも1回異なるものであってもよい。なかでも、より選択的に形質転換されたシュートを選別することができることから、複数回繰り返し選択培養工程を行い、その際、選択培養培地中の選択試薬の濃度を段階的に上げていく形態も好ましい形態の1つである。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがサイトカイニン系植物ホルモン(特に、ベンジルアデニン)で、その濃度が4.0〜6.0mg/Lであり、選択試薬(例えば、グリフォサート)を濃度0.05〜1mMで含み、培養温度が25〜35℃であることが特に好ましい。
以上のように、選択培養工程では、共存培養工程により得られ、除菌工程で除菌されたシュート(形質転換されたシュートと、形質転換されていないシュートの混合物)を、選択培養培地中で培養することにより、形質転換されたシュートを選択的に生育させることができ、形質転換されたシュートと、形質転換されていないシュートを選別することができる。この選択培養工程により選別された形質転換シュートは、次の再生工程に供される。
また、このようにして選別された形質転換シュートを上述の増殖工程に供すれば、標的遺伝子等の導入された形質転換シュートを大量に増殖させることも可能である。
なお、上記選別された形質転換シュートが実際に形質転換されているかは、当該シュートからDNA抽出を行い、標的遺伝子等が導入されているかをPCR分析により分析する、といった従来公知の方法により確認することができる。
(再生工程)
再生工程では、形質転換工程により形質転換された組織片、より好ましくは、選択培養工程により選別された形質転換組織片、から植物体を再生する。
上記再生方法としては、形質転換された組織片から植物体を再生できれば特に制限されないが、例えば、形質転換された組織片を発根誘導培地で培養して発根させる発根工程に供することで植物体を再生することができる。そして更には、該発根工程により発根した組織片を栽培用土に移植して馴化させることで、より大きく生育させることが可能となる。このように、上記再生工程が、形質転換された組織片を発根誘導培地で培養して発根させる発根工程を含む形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
以下、発根工程について説明する。
(発根工程)
発根工程では、形質転換された組織片を発根誘導培地で培養することにより発根させる。ここで、形質転換された組織片としては、上記形質転換工程により形質転換された組織片(シュート)、より好ましくは、上記選択培養工程により選別された形質転換組織片(シュート)が使用される。
発根誘導培地は、液体であっても固体であってもよいが、培地にシュートを差し込んで培養することで発根させやすくなるため、固体培養が好ましい。また、発根誘導培地が液体培地である場合には、静置培養を行ってもよく、振とう培養を行ってもよい。
発根誘導培地は、植物生長ホルモン及び炭素源を含むものであるが、該植物生長ホルモンとしては、例えば、オーキシン系植物ホルモン及び/又はサイトカイニン系植物ホルモンが挙げられる。中でも、オーキシン系植物ホルモンを用いることが好ましい。
オーキシン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるオーキシン系植物ホルモンと同様のものを用いることができるが、なかでも、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、1−ナフタレン酢酸、インドール−3−酪酸、インドール−3−酢酸が好ましく、インドール−3−酪酸がより好ましい。
サイトカイニン系植物ホルモンとしては、上記誘導培地に用いられるサイトカイニン系植物ホルモンと同様のものを用いることができるが、なかでも、ベンジルアデニン、カイネチン、ゼアチンが好ましく、ベンジルアデニン、カイネチンがより好ましい。
発根誘導培地に用いられる炭素源としては、特に限定されず、上記誘導培地に用いられる炭素源と同様のものを用いることができるが、なかでもスクロースが好ましい。
発根誘導培地は、上記誘導培地同様、更に、硝酸銀を含むことが好ましい。
発根誘導培地としては、上記誘導培地として用いられる基本培地や、該基本培地の組成に変更を加えた改変基本培地等のベースとなる培地を用いることができるが、なかでも、MS培地、B5培地、WP培地が好ましく、MS培地又はその組成に変更を加えたMS改変培地がより好ましい。
発根誘導培地を固体培地とする場合、固形化剤を使用して培地を固体にすればよい。固形化剤としては、特に限定されず、寒天、ゲランガム、アガロース、ゲルライト、アガー、フィタゲル等が挙げられる。
好適な発根誘導培地の組成及び培養条件は、植物種により異なり、また培地が液体培地であるか固体培地であるかによっても異なるが、通常は(特に、パラゴムノキの場合は)以下の組成である。
発根誘導培地中の炭素源の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上である。該炭素源の濃度は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下である。
発根誘導培地にオーキシン系植物ホルモンを加える場合の、発根誘導培地中のオーキシン系植物ホルモンの濃度としては、好ましくは0.5mg/L以上、より好ましくは1.0mg/L以上、更に好ましくは3.0mg/L以上である。該オーキシン系植物ホルモンの濃度は、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは6.0mg/L以下、更に好ましくは5.0mg/L以下である。
発根誘導培地にサイトカイニン系植物ホルモンを実質的に加えないことが好ましく、具体的には、好ましくは1.0mg/L以下、より好ましくは0.1mg/L以下、更に好ましくは0.05mg/L以下、特に好ましくは0.01mg/L以下である。
発根誘導培地中の硝酸銀の濃度は、好ましくは0.1mg/L以上、より好ましくは0.3mg/L以上、更に好ましくは0.5mg/L以上である。該硝酸銀の濃度は、好ましくは5.0mg/L以下、より好ましくは3.0mg/L以下である。
発根誘導培地のpHは、4.0〜10.0が好ましく、5.0〜6.5がより好ましく、5.5〜6.0が更に好ましい。
発根工程は、通常、温度、照明時間等の培養条件の管理された制御環境下で行われる。培養条件は適宜設定することができるが、例えば、培養温度は、0〜40℃が好ましく、20〜40℃がより好ましく、25〜35℃が更に好ましい。培養は、暗所で行っても明所で行ってもよいが、光条件としては、例えば、12.5μmol/m/sの照明の下、14〜16時間の明時間という条件などが挙げられる。培養時間は、特に限定されないが、1〜10週間培養することが好ましく、4〜8週間がより好ましい。
固体培地の場合、発根誘導培地中の固形化剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。該固形化剤の濃度は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。
上述の条件のなかでも、植物生長ホルモンがオーキシン系植物ホルモン(特に、インドール−3−酪酸)で、その濃度が3.0〜6.0mg/Lであり、培養温度が25〜35℃であることが特に好ましい。
以上のように、形質転換されたシュートを上記発根誘導培地で培養することにより、発根させることが可能であり、発根させたシュートが得られ、完全な植物体であるクローン苗が形成される。
なお、上記形成されたクローン苗を用いて、上述した増殖工程を繰り返し実施することにより、優良品種のクローン苗を大量に生産することも可能である。
以上の説明の通り、本発明では、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得、得られた培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換し、形質転換された組織片から植物体を再生することができ、これにより、遺伝的に改変された遺伝子導入植物を短期間で効率的に得ることができる。このように、本発明の遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法により作製された、遺伝的に改変された形質転換植物体もまた、本発明の1つである。
まとめとして、本発明の遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法の一例について、標的植物としてパラゴムノキを用いた場合を例に、一連の工程の流れを説明する。まず、パラゴムノキの成木から腋芽を含む組織を採取し、誘導培地で培養して、シュートを形成させ(誘導工程)、形成させたシュートを伸長培地で培養し(伸長工程)、伸長させたシュートを採取し、分割した後、該分割されたシュートを誘導培地で培養してシュートを形成させ(増殖工程)、形成させたシュートを遺伝子コンストラクトで形質転換し(形質転換工程)、形質転換されたシュートを発根誘導培地で培養して発根、成長させる(発根工程)。
このように、本発明の遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法は、短期間で効率的に、遺伝的に改変された遺伝子導入植物(形質転換植物)を得ることができる方法であることから、標的植物としてパラゴムノキを用いることで、イソプレノイドの産業利用上、パラゴムノキ由来の天然ゴムの可能性を広げることができる。また、パラゴムノキをはじめとしたイソプレノイド産生植物の大量培養、分子育種に貢献することができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BA:ベンジルアデニン
IBA:インドール−3−酪酸
硝酸銀:メルク社製の硝酸銀
アガー:フルカ(FLUKA)社製のアガー(Agar)(パウダー)
アセトシリンゴン:東京化成工業社製の4−ヒドロキシ−3′,5′−ジメトキシアセトフェノン
セフォタキシム:UTOPIAN社製のセフォタキシム(CEFOX(商品名))
グリフォサート:ALDRICH社製のグリフォサート(N−(phosphonomethyl)glycine〔N−(ホスホノメチル)グリシン〕)
アグロバクテリウム:EHA105株
パラゴムノキ:プリンス・オブ・ソンクラ大学内に自生しているパラゴムノキ
(実施例1)
<誘導工程>
パラゴムノキの成木、苗木から節、腋芽、頂芽を含む組織を採取した。また、パラゴムノキの種子を試験管内で無菌的に発芽させて培養した実生苗(無菌実生苗)から節、腋芽、頂芽を含む組織を採取した。
次に、成木、苗木から採取した節、腋芽、頂芽を含む組織を流水で洗浄し、更に70質量%エタノールで洗浄した後、約5〜10体積%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム水溶液で滅菌し、滅菌水で洗浄した。
次に、滅菌した組織及び無菌実生苗由来の組織をまとめて誘導培地(固体培地)に差し込み、培養を行った(誘導工程)。誘導培地は、MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)に、ベンジルアデニン(BA)、硝酸銀、活性炭、スクロースをそれぞれ、5.0mg/L、1.0mg/L、0.05質量%、3.0質量%添加し、培地のpHを5.7に調整した後、アガーを0.75質量%となるように添加して、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。
パラゴムノキの上記組織を誘導培地(固体培地)に差し込み、培養温度28℃、12.5μmol/m/sの照明の下、16時間の明時間という条件で4週間培養し、シュートを誘導した。良好にシュートが誘導され、シュートや多芽体の形成が見られた。形成されたシュート、多芽体については4週間ごとに同じ組成の誘導培地に移植する植え継ぎを行った。
引き続いて、植え継ぎにより3cm程度に成長したシュートを、節、腋芽や頂芽の部分を残して1〜2.5cmに分割し、形質転換用の材料とした。実施例1における、形質転換用の材料とするシュートの様子を示す写真を図1に示す。
<アグロバクテリウム属菌調製工程>
GUS(βグルクロニダーゼ)遺伝子と共に選択マーカー遺伝子であるグリフォサート耐性遺伝子を挿入したバイナリーベクターを導入したアグロバクテリウム(アグロバクテリウム・ツメファシエンス;EHA105株)をYEB培地中で培養温度28℃、24時間、振とう培養した。600nmで測定した吸光度(OD600)=約1.0になるまで培養し、遠心分離で集菌し、懸濁用溶液(5.0mg/LのBA、3.0質量%のスクロース、1.0mg/Lの硝酸銀を添加したMS液体培地)でOD600=0.6になるように調整した。
<感染工程、共存培養工程>
準備したアグロバクテリウム懸濁液25mLと、誘導工程で調製した形質転換用の材料(シュート)5本を50mLチューブに入れ、28℃で30分間穏やかに振とうした(感染工程)。振とう後、シュートを滅菌したろ紙上に置き、余分な懸濁液をよく除去した。当該シュートを共存培養培地(固体培地)に差し込み、培養温度28℃、暗所(0.1lx未満の明るさ)で、3日間共存培養した(共存培養工程)。実施例1における、アグロバクテリウムに感染後のシュートの様子を示す写真を図2に示す。
共存培養培地は、MS培地に、ベンジルアデニン(BA)、硝酸銀、スクロース、アセトシリンゴンをそれぞれ、5.0mg/L、1.0mg/L、3.0質量%、200μM添加し、培地のpHを5.7に調整した後、アガーを0.75質量%となるように添加して、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。
<除菌工程>
共存培養させたシュートを取り出し、液体除菌培地(5.0mg/LのBA、3.0質量%のスクロース、1.0mg/Lの硝酸銀、400mg/Lのセフォタキシムを添加したMS液体培地)に10分間浸漬し、洗浄した。
洗浄後、シュートを滅菌したろ紙上に置き、余分な水気を拭き取った。当該シュートを除菌培地(固体培地)に差し込み、培養温度28℃、12.5μmol/m/sの照明の下、14時間の明時間という条件で4週間培養した(除菌工程)。なお、1週間ごとに同じ組成の除菌培地に移植する植え継ぎを行った。
除菌培地は、MS培地に、ベンジルアデニン(BA)、硝酸銀、スクロース、セフォタキシムをそれぞれ、5.0mg/L、1.0mg/L、3.0質量%、200mg/L添加し、培地のpHを5.7に調整した後、アガーを0.75質量%となるように添加して、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。
除菌培地での培養後のシュートの生存率を下記式により算出した。
(シュート生存率(%))={(枯渇せずに生存が確認できたシュート数)/(除菌工程に供したシュート数)}×100
実施例1におけるシュート生存率は、95%であった。
<選択培養工程>
除菌培地で培養したシュートを取り出し、当該シュートを選択培養培地(固体培地)に差し込み、遺伝子導入個体の選抜のために、培養温度28℃、12.5μmol/m/sの照明の下、14時間の明時間という条件で4週間培養した(選択培養工程)。なお、1週間ごとに同じ組成の選択培養培地に移植する植え継ぎを行った。
選択培養培地は、MS培地に、ベンジルアデニン(BA)、硝酸銀、スクロース、グリフォサートをそれぞれ、5.0mg/L、1.0mg/L、3.0質量%、0.05mM添加し、培地のpHを5.7に調整した後、アガーを0.75質量%となるように添加して、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。
選択培養培地での培養後のシュートの生長確認率を下記式により算出した。
(シュート生長確認率(%))={(新芽又は伸長等の生長が確認できたシュート数)/(選択培養工程に供したシュート数)}×100
実施例1におけるシュート生長確認率は、78%であった。このように、選択培養培地での培養後にシュートの生長が確認され、遺伝子が導入された個体を選抜することができた。選抜された遺伝子導入個体は更に同じ組成の選択培養培地に移植する植え継ぎを継続して培養し、シュートや多芽体を得た。
<発根工程>
選択培養工程後、植え継ぎを継続して成長したシュートを発根誘導培地(固体培地)に差し込み、培養温度28℃、12.5μmol/m/sの照明の下、16時間の明時間という条件で4週間培養した(発根工程)。4週間の培養後、発根が確認され、形質転換植物体が得られた。
発根誘導培地は、1/2MS培地(植物細胞工学入門(学会出版センター)p20〜p36に記載)に、インドール−3−酪酸(IBA)、硝酸銀、スクロースをそれぞれ、5.0mg/L、1.0mg/L、3.0質量%添加し、培地のpHを5.7に調整した後、アガーを0.75質量%となるように添加して、オートクレーブ(121℃、20分)で滅菌し、クリーンベンチ内で冷却することにより調製した。

Claims (10)

  1. 標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る培養工程、前記培養工程で得られた培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換する形質転換工程、前記形質転換工程により形質転換された組織片から植物体を再生する再生工程を含み、
    前記培養組織片が、シュートであり、
    前記標的植物が、Hevea属に属する植物である
    遺伝的に改変された植物体を作製するための形質転換植物体の製造方法。
  2. 前記培養工程後、更に、該培養工程により得られた培養組織片を採取し、分割した後、該分割された培養組織片を、植物生長ホルモン及び炭素源を含む誘導培地で培養することで、培養組織片を得る増殖工程を行い、該増殖工程により得られた培養組織片を形質転換工程に供する請求項1記載の形質転換植物体の製造方法。
  3. 前記形質転換工程が、前記培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換されたアグロバクテリウム属菌とともに培養する感染工程を含む請求項1又は2記載の形質転換植物体の製造方法。
  4. 前記遺伝子コンストラクトが、選択試薬に対する抵抗性を付与する選択マーカー遺伝子を含み、
    前記製造方法が、更に、前記選択試薬を含む選択培養培地で培養して、前記形質転換工程により形質転換された組織片を選択する選択培養工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の形質転換植物体の製造方法。
  5. 前記選択培養培地中の選択試薬の濃度が、0.01〜10mMである請求項4記載の形質転換植物体の製造方法。
  6. 前記遺伝子コンストラクトが、前記標的植物のゲノムと同種の遺伝物質を含む請求項1〜5のいずれかに記載の形質転換植物体の製造方法。
  7. 前記遺伝子コンストラクトが、前記標的植物のゲノムと異種の遺伝物質を含む請求項1〜5のいずれかに記載の形質転換植物体の製造方法。
  8. 前記再生工程が、前記形質転換された組織片を発根誘導培地で培養して発根させる発根工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の形質転換植物体の製造方法。
  9. 培養組織片を遺伝子コンストラクトで形質転換する形質転換工程を含み、
    前記培養組織片が、シュートである
    遺伝的に改変されたHevea植物体を作製するための形質転換Hevea植物体の製造方法。
  10. 前記製造方法は、標的植物由来の組織片を培養して培養組織片を得る培養工程を含み、該培養工程で得られた培養組織片を形質転換工程に用いる請求項9記載の形質転換Hevea植物体の製造方法。
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