JP4228044B2 - シバ属植物の再分化植物体及び形質転換植物体 - Google Patents

シバ属植物の再分化植物体及び形質転換植物体 Download PDF

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    • Y02A40/138Plants tolerant to heat

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基本的に他殖性で遺伝的背景が個体ごとに異なり、かつ高い再分化率の遺伝子型の種子あるいは植物を見出すことが困難なシバ属植物において、効率的に再分化可能なカルスを誘導し、さらにこのカルスにアグロバクテリウムを感染させて任意の遺伝子を導入した植物体を効率よく得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シバ属植物において組織培養を行う場合には以下のような方法が採られている。すなわち、完熟種子を次亜塩素酸ナトリウム水溶液および70%エタノール水溶液で滅菌した後、ホルモンを含まないムラシゲ・スクーグ(Murashige & Skoog)培地(MS培地)を基本とする培地やガンボルグB5培地等の寒天培地または湿らせた滅菌濾紙上に置床して発芽させ、次に胚軸、子葉または根をオーキシンやサイトカイニン等の植物ホルモンを含むMS培地やガンボルグB5培地等に移植し、培養することで再分化可能なカルスを得る、というものである(例えば非特許文献1及び2参照)。
【0003】
適切な条件を選べば、種子以外にも根や走出枝(ランナー)などからもカルスを誘導することができるが、それらのカルスは必ずしも再分化能を持っているとは限らない。例えば、器官による特異性やカルスを維持する培養条件及び培養期間によっても、再生能力に違いが見られる事が知られている(非特許文献3参照)。
【0004】
また、シバ属植物の中でも特にノシバ(Zoysia japonica)やコウライシバ(Zoysia tenuifolia)の種子は、堅い外えいに覆われていること、種子中のアブシジン酸濃度が高いこと等の理由で発芽率が低い事が知られている上、遺伝的背景が個体ごとに異なり、再分化効率の高い遺伝子型の種子あるいは植物を見出すことが困難であることが知られている(非特許文献4参照)。従って、効率的に再分化可能なカルスを得るためには、種子以外の組織、器官から再分化可能なカルスを誘導する方法を開発する必要があった。
【0005】
しかしながら、上記記載のように種子以外の組織、器官から誘導したカルスは必ずしも再分化能を持っていない。このため、シバ属植物の研究を進めるには、ごく稀な遺伝子型である高い再分化能を示すカルスのスクリーニングを、多大な労力と手間を掛けて実施する必要があり、特殊な事例としてのみ研究が行われてきた。
【0006】
さらに、シバ属植物において任意の遺伝子を導入するためには、細胞壁を酵素消化したプロトプラストに対し電気的に穴を開けて遺伝子を取り込ませる電気穿孔法や、カルスに遺伝子をまぶした金属球を打ち込むパーティクルボンバートメント法を用いる必要があった。しかしこれらの技術は高価な機器が必要であること、プロトプラストから植物体を再生させるまでには煩雑な操作が必要なうえ長い培養期間が必要であるためにアルビノなどのいわゆる培養変異を起こす確率が高いこと、電気穿孔法やパーティクルボンバートメント法では一細胞あたり複数の遺伝子が導入されてしまうこと、等の欠点が指摘されていた(非特許文献5参照)。
【0007】
一方、アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法は、実験操作が簡便である、培養変異が少ない、遺伝子が1コピーのみ導入されることが多い、等の優れた特徴を持つが、アグロバクテリウムは本来イネ科の植物に対する感染能力が低いため、従来はシバ属植物に対して適用できなかった(非特許文献6参照)。
【0008】
近年、ノシバにおいてアグロバクテリウム法を用いて外来遺伝子を導入した事例が報告された(非特許文献7参照)。しかしながら上記方法は種子からカルス誘導を行っているために、新たに再分化率の高い遺伝子型をスクリーニングするのに多大な労力と時間を必要とする上、同じ遺伝子型の植物体は得られないので再現性がない、不稔の個体には適用できない、操作法そのものはイネなどで用いられているものとほぼ同じであるためシバ属植物に適用すると形質転換効率が低い、等の問題が依然として解消されないままであった。
【0009】
【非特許文献1】
ムラシゲら(Murashige et al.)、 Physiol. Plant. 第15巻 473〜497頁、1962年
【非特許文献2】
クランスら(Krans et al.)、 Crop Sci. 第22巻 1193〜1197頁、1982年
【非特許文献3】
ゾングら(Zhong et al.)、 Plant cell rept. 第10巻、453〜456頁、1991年
【非特許文献4】
アサノ(Asano)、 Plant Science 第72巻、267〜273頁、1990年
【非特許文献5】
ザオら(Xiao et al.)、 Plant cell rept. 第16巻、874〜878頁、1997年
【非特許文献6】
ヒエイら(Hiei et al.)、 Plant J. 第6巻、271〜282頁、1994年
【非特許文献7】
遠山ら、育種学研究 第3巻 別冊2号 第86項、2001年
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような実状に鑑み、高い再分化率の遺伝子型を再度スクリーニングする必要のない、不稔性のシバ属植物においても効率的に再分化可能なカルスを得ることならびに任意の遺伝子を導入することを可能にする技術を提供し、有用な形質を持つシバ属植物を取得、提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、シバ属植物の走出枝の節の生長点から誘導したカルスが高い分化能を有していること、ならびにかかるカルスに対してはアグロバクテリウムが高い効率で感染することを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、シバ属植物の走出枝の節の生長点から誘導したカルスを無菌的に培養して植物体を再生させることを特徴とする、シバ属植物の再分化法である。また、本発明はアグロバクテリウムを走出枝の節の生長点から誘導したカルスと共培養することを特徴とする、シバ属植物の形質転換法に関し、さらにはシバ属植物の走出枝の節の生長点から誘導したカルスあるいは該カルスのアグロバクテリウムを用いて得た形質転換体からそれぞれ再生される植物体に関する。
【0013】
本発明にいうシバ属植物とは、Zoysia属に含まれるすべての植物を言う。その代表例としては、ノシバ(Zoysia japonica)やコウシュンシバ(Zoysia matrella)、コウライシバ(Zoysia tenuifolia)等を挙げることができる。シバ属植物は、一般家庭、公園、運動競技場などで広い面積にわたって使用される極めて商業的需要の高い植物であり、薬剤耐性、害虫耐性などを付与した改良品種の創出が望まれている。かかる点から、シバ属植物の品種改良を効率的に行うことのできる本発明の有する意義は大きい。
【0014】
走出枝とは、ほふく枝、ランナー、あるいはストロンとも呼ばれ、地表または浅い地下を水平に細長く伸びる茎を指し、栄養繁殖の役割を果たし、地上部のもととなる芽をもつ。また不定根を出して、母体側の走出枝が切れれば新個体を生じる機能も併せ持つ。シバ族植物のほかにはオランダイチゴ、ユキノシタなども走出枝を有する。また、成長点とは、シュ−ト頂または茎頂とも呼ばれ、茎や根の先端にある分裂能力の高い細胞の集まった茎頂分裂組織であって、茎の伸長成長のもととなる部分を指す。
【0015】
本発明は、シバ属植物の走出枝の節に存在する成長点部分を、カルス誘導を行うため一般に使用される培地、好ましくはオーキシンとサイトカイニンを添加したMS培地を基本とする培地などで培養してカルスを誘導増殖させることを特徴の一つとする。かかるカルスが、種子あるいは走出枝の他の部分に由来するカルスに比べて高い分化能を有していることは新たな知見である。この場合、成長点から細胞を単離して、細胞から再生させても良いが、再生効率の点から成長点を利用する方がより好ましい。
【0016】
さらに、かかるカルスは、任意の遺伝子を含むアグロバクテリウムと混合して振とう培養することで、シバ属植物としては意外な高効率でアグロバクテリウムを感染させることができることも明らかとなった。また、この感染後のカルスは依然として高い再分化能を有しており、カルスを選抜薬剤を含む再分化培地に移植し、無菌条件下で静置培養することによって、効率的に植物体を再生させることができる。
【0017】
本発明により、任意の遺伝子を導入したシバ属植物を高効率に得ることが可能となる。すなわち、シバ属植物の固体毎に異なる遺伝子型に左右されず、一定して再生植物や形質転換植物を入手することが可能となる。
以下、実施例と共に発明をより詳細に述べるが、本発明はこれら説明にのみ限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
1.カルス誘導
本発明において、シバ属植物の走出枝の節の成長点を分離する方法それ自体は、特別な方法や装置を要することなく、植物組織から細胞を分離する一般的な方法により行うことができる。例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液および70%エタノール水溶液を用いて走出枝を滅菌し、良く水洗いした後に、滅菌条件下でメスを用いて各節より生長点を取り出せばよい。
【0019】
本発明は、この分離した生長点をそのまま、あるいは成長点より分離した細胞を、オーキシン及びサイトカイニン様作用を持つ適当な植物ホルモンを含む培地(以下、カルス誘導培地と称する)に置床し、カルスを再生させる。この培地は通常用いられている植物培養用の培地であれば何でも良いが、好ましくはMS培地、ガンボルグB5培地、LS培地等、より好ましくはMS培地を用いることができる。また、上記培地に添加する植物ホルモンとしては、オーキシン及びサイトカイニン様作用を持つものであれば何でも良く、具体的にはオーキシンとしては2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、ナフタレン酢酸(NAA)、3−アミノ−3,4,6−トリクロロピコリン酸(Picloram)、又は3、6−ジクロロ−2−メチルベンゼン酸(DICAMBA)等が挙げられ、サイトカイニンとしてはカイネチン、ゼアチン、又はベンジルアデニン(BA)等が挙げられる。
【0020】
カルスを誘導するための培養条件も、通常の培養条件を適用することができる。例えば、生長点を置床したカルス誘導培地を、20〜30℃(好ましくは25℃)、0〜3000ルクス(lx)で15〜20時間日長(好ましくは暗条件)の条件下で培養し、成長点からカルスを誘導する。この培養条件下、通常約一ヶ月でカルスが誘導される。さらに、誘導されたカルスを、1〜3ヶ月ほど上記のカルス誘導培地で継代培養した後、再分化能を持つカルスを選抜する。
【0021】
この様にして、カルスには、完熟種子などから誘導されたカルスとは比較にならないほど高い頻度で高い再分化率を示すカルスを誘導、増殖させることができる。
【0022】
2.アグロバクテリウムによる形質転換
1.で述べた方法に準じて誘導した高い再分化能を持つカルスを、適当な大きさ、好ましくは5mm程度に分割したもの、又はそのままを、以下に述べるアグロバクテリウムによる形質転換に使用することができる。
【0023】
形質転換に用いるアグロバクテリウムの調製も、通常採用される方法により行うことができる。また、該アグロバクテリウムの遺伝子への外来遺伝子の導入もまた、通常の操作方法に従って任意の遺伝子を保持させればよい。
【0024】
例えば、Agrobacterium tumefaciensのLBA4404株、EHA101株、EHA105株、C58C1株、あるいはAgrobacterium rhizogenesのD6株、1724株、A5株、A13株などを用い、28℃で1日〜3日間、適当な培地を用いて振とう培養する。その後、新しい培地に交換することでアグロバクテリウムを洗浄し、OD600における濁度が0.2になるように新しい培地に懸濁する。培地は、一般にアグロバクテリウムの培養に用いられる培地であればどのようなものを用いても良いが、好ましくはAB培地、AAM培地等の無機培地、さらに好ましくはAAM培地などが挙げられる。
【0025】
この様にして培養したアグロバクテリウムを含む懸濁液の適当量に前述のカルスを浸して共培養を行う。使用するアグロバクテリウム懸濁液の量は、10〜40ml、好ましくは20ml程度であれば良く、カルスは5mm程度に分割したものの使用が好ましい。
【0026】
また、培養温度は20〜30℃、好ましくは25℃、照射条件は0〜3000ルクス(lx)で15〜20時間日長、好ましくは暗条件下で、振蕩条件は0〜100rpm、好ましくは50rpm、培養時間は3〜14日、好ましくは3〜7日、さらに好ましくは5日間がおよその目安である。
【0027】
さらに、10mg/lのアセトシリンゴンを含むカルス誘導培地にカルスとアグロバクテリウムを移して、カルスにアグロバクテリウムを感染させる。培養温度は20〜30℃、好ましくは28℃が、照射条件0〜3000ルクス(lx)で15〜20時間日長、好ましくは暗条件が、培養時間は3〜14日、好ましくは5〜9日、さらに好ましくは7日間静置培養し、カルスにアグロバクテリウムを感染させる。
【0028】
3.再分化
本発明において誘導したカルスから植物体を再生させる、いわゆる再分化は、特別な方法を必要とせず、植物カルス一般から再分化させる方法と条件に準じて行うことができる。例えば、走出枝の成長点から直接再分化させる場合には、MS培地、ガンボルグB5培地、LS培地などの適当な培地に成長点を置き、20〜30℃(好ましくは25℃)、0〜3000ルクス(lx)で15〜20時間日長(好ましくは暗条件)などの条件下で21〜56日、好ましくは21〜35日、さらに好ましくは28日間静置培養を行うことで効率的に再分化させることができる。
【0029】
また、アグロバクテリウムを用いて形質転換させたカルスは、500mg/lのカルベニシリンなど適当な抗生物質を加えた滅菌水でアグロバクテリウムが付着したカルスをすすぐことにより除菌した後、ハイグロマイシンなどの適当な選抜薬剤を加えたカルス誘導培地に置床し、20〜30℃(好ましくは25℃)、0〜3000ルクス(lx)で15〜20時間日長(好ましくは暗条件)の条件下で21〜56日、好ましくは21〜35日、さらに好ましくは28日間静置培養すればよい。
【0030】
遺伝子が導入されなかったカルスは、徐々に褐変化し死滅化するので、変色せずに生き残ったカルスのみを、適当な選抜薬剤を含みかつオーキシンやサイトカイニンなどを含まないカルス誘導培地(以下再生培地)に置床し、20〜30℃(好ましくは25℃)、0〜3000ルクス(lx)で15〜20時間日長(好ましくは暗条件)の条件下で21〜56日、好ましくは21〜35日、さらに好ましくは28日間静置培養する。さらに、変色せずに生き残ったカルスのみを新しい再生培地に置床し、上記と同じ条件で静置培養することを1〜5回、好ましくは2回繰り返せばよい。再分化能を持つカルスは、一般に透明感のある黄色で、硬く、ピンセットで触れるとぽろぽろと崩れる性質を有している。
【0031】
早いものではこの段階で幼植物体が確認される。幼植物体が見られるカルスおよび変色せずに生き残ったカルスのみを再び新しい再生培地に置床し、20〜30℃(好ましくは25℃)、0〜3000ルクス(lx)で15〜20時間日長(好ましくは3000ルクス(lx))の条件下で21〜56日、好ましくは21〜35日、さらに好ましくは28日間静置培養する。この操作を、幼植物体が得られるまで適宜繰り返すことで、再分化した完全な植物個体を得ることができる。
【0032】
【実施例】
<実施例1>
Zoysia japonicaの走出枝を次亜塩素酸ナトリウム水溶液および70%エタノール水溶液を用いて滅菌し、良く水洗いした後に滅菌条件下でメスを用いて各節より生長点を取り出した。上記生長点をカルス誘導培地(3.52g/l MURASHIGE AND SKOOG BASAL MEDIUM WITH GAMBORG‘S VITAMINS(SIGMA社製)、30g/l Sucrose、2mg/l 2,4−D、0.5mg/l BA、100mg/l α−ケトグルタル酸、100mg/l ミオイノシトール、1mg/l リボフラビン、0.25% PHYTAGEL(SIGMA社製)、pH5.8)に置床した。上記生長点を置床したカルス誘導培地を、25℃、暗条件下で培養し、カルスを誘導した。約一ヶ月後、誘導されたカルスを新しいカルス誘導培地に置床し、再び25℃、暗条件下で継代培養した。1ヶ月おきに植え継ぐことを3ヶ月ほど繰り返し、再分化能を持つカルスを選抜した。
【0033】
上記カルスを5mm程度に分割したものを再生培地(3.52g/l MURASHIGE AND SKOOG BASAL MEDIUM WITH GAMBORG‘S VITAMINS(SIGMA社製)、30g/l Sucrose、100mg/l ミオイノシトール、0.1mg/l GA3、0.25% PHYTAGEL(SIGMA社製)、pH5.8)に置床し、25℃、暗条件下で静置培養した。約1ヵ月後には、幼植物体が得られる。新しい再生培地に置床し、25℃、3000ルクス(lx)で16時間日長において静置培養し、緑化させた。約1ヶ月ごとに新しい培地に植え継ぎ、充分な大きさになった段階で鉢上げした。これらの再生個体と元の個体との間には、形態的な差はなかった。
【0034】
<実施例2>
鉢上げした再分化個体の走出枝より生長点を調製してカルスを誘導し、実施例1と同じ条件で植物体に再分化させた。この再分化個体と元の個体との間には形態的な差はなかった。以上より、継続的に再分化可能な手法およびシバの系統を確立した。
【0035】
<実施例3>
生長点より誘導した高い再分化能を持つカルスを5mm程度に分割し、以下の形質転換実験に用いた。植物由来のイントロンを持つβ−グルクロニダーゼ遺伝子(Intron−GUS遺伝子)をカリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーターに繋いだ融合遺伝子(35S−Intron−GUS)を、選抜マーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子およびカナマイシン耐性遺伝子を持つバイナリ−ベクターに挿入したプラスミド(pIG121 Hm、名古屋大中村教授より分譲)をアグロバクテリウムLBA4404株に導入した。図1にpIG121 Hmの構造を示す。P35Sは35Sプロモーター遺伝子を、GUS(In)はIntron−GUS遺伝子を示す。
【0036】
pIG121 Hmを保持したアグロバクテリウムをAB培地(5g/l Glucose、3g/l KHPO、1g/l NaHPO、1g/lNHCl、0.3g/l MgSO・7HO、150mg/l KCl、10mg/l CaCl・2HO、2.5mg/l FeSO・7HO、pH7.2)に植菌し、3日間、28℃で振とう培養した。AB培地は抗生物質であるカナマイシンを50mg/l、ハイグロマイシンを50mg/l、スペクチノマイシンを50mg/l含む。新しいAB培地に交換することでアグロバクテリウムを1回洗浄し、OD600における濁度が0.2になるようにAAM培地(36g/l Glucose、68.5g/l Sucrose、10mg/l MnSO・6HO、3mg/l HBO、2mg/l ZnSO・7HO、250μg/l NaMoO・2HO、25μg/lCuSO・5HO、25μg/l CoCl・6HO、750μg/l KI、150mg/l CaCl・2HO、250mg/l MgSO・7HO、150mg/l NaHPO・HO、3g/l KCl、40mg/l Fe−EDTA、1mg/l ニコチン酸、10mg/l 塩酸チアミン、1mg/l 塩酸ピリドキシン、100mg/l myo−イノシトール、177mg/l L−アルギニン、7.5mg/l L−グリシン、900mg/l L−グルタミン、300mg/l L−アスパラギン酸、500mg/l カザミノ酸、1.5%アガロース、pH5.2)に懸濁した。AAM培地はアセトシリンゴンを50mg/l含む。上記のアグロバクテリウム懸濁液20mlに、5mm程度に分割したカルスを浸し、25℃、暗条件下において5日間緩やかに振とう培養した。アグロバクテリウム懸濁液から取り出したカルスを50mg/lのアセトシリンゴンを含むカルス誘導培地に移し、25℃、暗条件に7日間静置することで共存培養した。この振とう培養および共存培養の期間にアグロバクテリウムがカルスに感染することになる。共存培養後のカルスを、250mg/lのカルベニシリンおよび200mg/lのセファタキシムを加えた滅菌水ですすぐことにより、付着しているアグロバクテリウムを除菌した。50mg/lのハイグロマイシン、500mg/lのカルベニシリン、100mg/lのセファタキシムを加えたカルス誘導培地に除菌したカルスを置床し、25℃、暗条件で約3ヶ月静置培養した。但し約1ヶ月ごとに、50mg/lのハイグロマイシン、500mg/lのカルベニシリン、100mg/lのセファタキシムを加えた新しいカルス誘導培地にカルスを植え替えた.褐変せずに生き残ったカルスのみを50mg/lのハイグロマイシン、500mg/lのカルベニシリン、100mg/lのセファタキシムを含む再生培地(以下選抜培地)に置床し、25℃、暗条件で約1ヶ月静置培養した。変色せずに生き残ったカルスのみをさらに新しい選抜培地に置床し、25℃、3000ルクス(lx)で16時間日長の条件下で約1ヶ月静置培養した。発根したものを選抜薬剤を含まない再生培地に移し、25℃、3000ルクス(lx)で16時間日長の条件下で約2ヶ月培養し、生育を促進させた後に鉢上げした。
【0037】
<実施例4>
実施例3で35S−Intron−GUS遺伝子を導入した形質転換シバの葉よりゲノムDNAを抽出し、遺伝子が導入されていることをPCRによって確認した。形質転換シバの葉0.1gよりCTAB法に従い、ゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNA30〜50ngを鋳型として用い、35Sプロモーター遺伝子とGUS遺伝子の間を配列番号1と配列番号2で示すプライマーを用いてPCRを行った。
【0038】
PCR反応に用いた反応液の組成は以下の通りである。なお、耐熱性DNAポリメラーゼには、Ex Taq(宝酒造社製)を用いた。
【0039】
Figure 0004228044
また、PCR反応の条件は、95℃で10分間保持、続いて94℃で30秒間、55℃で1分間、72℃で90秒間保持するサイクルを30回、最後に72℃で10分間保持する、と設定した。
【0040】
PCR反応後、反応液10μLを1%アガロースゲル電気泳動に供試して目的の領域が増幅されているかどうかを確認した。その結果、形質転換体においてのみ約500bpのバンドが検出されたことから、シバのゲノムDNAにGUS遺伝子が挿入されたことが確認された。図2に、GUS遺伝子の挿入を確認したPCR産物電気泳動の結果を示す。レーン1から13は組み換えシバのPCR産物であり、導入遺伝子特異的なバンドが検出されている。レーンMは分子量マーカー(λ−EcoT14I)、レーンPはバイナリ−ベクターpIG121 HmのPCR産物、レーンCは非組み換えシバのPCR産物をそれぞれ泳動したものである。
【0041】
<実施例5>
形質転換シバのゲノムDNAを用いてサザン解析を行った。形質転換シバのなるべく新しい葉約0.1gより、DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてゲノムDNAを抽出した。約1μgのゲノムDNAを制限酵素Hind IIIで切断し、1%アガロースゲル電気泳動によって分離後、Molecular Cloning [Fristch et al., Cold Spring Harbour Press(1989)]に記載されている方法に従い、ナイロンメンブレン(Hybond N、Amersham Biosciences社製)に転写した。プローブには、プラスミド(pIG121 Hm)を鋳型として配列番号1と配列番号2で示すプライマーを用いてGUS遺伝子を増幅したPCR産物を、AlkPhos Direct Labelling and Detection System(Amersham Biosciences社製)によりラベルして用いた。AlkPhos Direct Labelling and Detection System(Amersham Biosciences社製)の方法に従って化学発光によりシグナルを検出し、X線フィルムに露光した。非形質転換体にはまったくシグナルが見られなかったのに対し、組み換え体ではシグナルが検出された。図3に、サザンハイブリダイゼーションの結果を示す。レーン1から14は組み換えシバのゲノムDNAであり、シグナルが検出された。レーンCは非組み換えシバのゲノムDNAであり、シグナルは検出されなかった。
【0042】
<実施例6>
形質転換シバに導入されたGUS遺伝子が働いていることを確認するため、葉を用いた組織染色を行った。組み換えシバの葉を約2cmの長さに切り取り、固定液(0.3% ホルムアミド、10mM MES、0.3M マンニトール)に浸し、真空ポンプで吸引後、室温で約1時間処理した。組織を緩衝液(50mM リン酸ナトリウム pH7.0)で洗浄し、5−bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−glucuronic acid (X−Gluc)溶液に浸し、真空ポンプで吸引後、37℃で2時間以上処理した。発色を確認後、70%エタノールにより脱色した。その結果、組み換えシバの葉がindigotin形成により青く染色されたことが確認された。
シバに導入したGUS遺伝子はストップコドンを含むイントロンが挿入されているため、植物細胞内では正しくスプライシングを受けて活性のあるGUS蛋白質が合成されるが、アグロバクテリウム内ではスプライシングが起こらないためGUS蛋白質が合成されない。そのため組み換えシバの葉が染色されたことは、アグロバクテリウムの混入ではなく、シバの染色体内にGUS遺伝子が挿入され、発現していることを示している。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、従来品種改良が困難であったシバ属植物の新品種を、例えば、耐寒性、常緑性、耐塩性、耐暑性、耐乾性、耐病性、耐除草剤性、耐害虫性等に優れる品種を効率的に育成することができる。これら特性の改善により、省力管理が可能なシバ属植物を育成することができる。また、葉の幅や長さなどを変える事や、出穂しない性質、よりきれいな緑を長い期間保つことができる性質などを持ったシバ属植物を育成することも可能となる。本発明を用いることで、従来シバ属植物が生育できなかった寒地や乾燥地帯などにも生育可能なシバ属植物を育成することができ、シバ属植物の市場を広げる画期的な効果が得られる。
【0044】
【配列表】
Figure 0004228044

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明においてシバ属植物の形質転換実験に用いた、バイナリ−ベクター「pIG121 Hm」の構造を示す。
【図2】本発明によって得られた形質転換シバの、PCR産物電気泳動の結果を示す。
【図3】本発明によって得られた形質転換シバの、サザンハイブリダイゼーションの結果を示す。

Claims (2)

  1. シバ属植物の走出枝の節の生長点から誘導したカルスを無菌的に培養して植物体を再生させることを特徴とする、シバ属植物の再分化法。
  2. 遺伝子を導入したアグロバクテリウムを、シバ属植物の走出枝の節の生長点から誘導したカルスと共培養することを特徴とする、シバ属植物の形質転換法。
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