JPWO2007064037A1 - サトイモ科植物の形質転換方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、サトイモ科植物のエンブリオジェニック・カルスにアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、を感染させて外来遺伝子を導入し、これによって形質転換エンブリオジェニック・カルスを作製することを含む、サトイモ科植物の形質転換方法を提供する。

Description

本発明は、サトイモ科植物への遺伝子導入方法及び形質転換方法に関する。
サトイモ科(Araceae)植物として、食用とされるサトイモや熱帯性のタロイモ(Colocasia)、コンニャクイモなど食糧として重要な作物、スパティフィラム、アンスリウム、カラジウム、アグラオネマ、アローカシア、ディエフェンバキア、モンステラ、フィロデンドロン、ポトス、シンゴニュームなど観葉植物としても重要性および人気の高い植物、カラスビシャク、セキショウなどの薬用植物、などが知られている。
そのなかでもスパティフィラム属(Spathiphyllum)は、熱帯アメリカに30種ほど、南東マレーシアに2種が分布しており、そのうち約10種が観葉植物として鉢栽培され、熱帯・亜熱帯ではグランドカバーとしても用いられており、観葉植物の中で最も人気のある植物である。耐陰性もあり室内で開花することから室内での観賞による‘いやし’の他に、室内の環境を整える植物としての期待も高い。
近年、植物バイオテクノロジーが進展する中で、組織培養、葯培養、細胞培養、細胞融合、変異処理などの技術を利用して多様な特性を有する品種が育成されてきた。更に遺伝子組換えDNA技術の発達により通常交配不可能な他の生物種の遺伝子を導入することにより、従来期待し得なかった特性を有する品種が育成されている。このような遺伝子組換え植物の栽培はアメリカ、カナダ、アルゼンチン、中国で耕地面積を拡大し広く利用されている。遺伝子組換えを利用した品種を育種するためには、求められる機能を持つ遺伝子を単離し対象植物に適合した遺伝子導入することが必要である。植物への外来遺伝子導入方法としては、アグロバクテリウムによる方法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、PEG法、ウイスカー法等が知られている。植物細胞中に外来遺伝子を導入するためのベクターや、形質転換細胞を選択し識別する各種のレポーターやマーカー遺伝子、導入した外来遺伝子を発現させる制御遺伝子(プロモーター等)等も試行錯誤を繰返しながらも開発が進められてきた。しかし上記のような方法や手段を用いても、スパティフィラムを含むサトイモ科植物は一般に形質転換が困難とされており、わずかな種類の植物でしか成功例が知られていない。
例えば、特許文献1で報告されているものは、薬用植物サトイモ科カラスビシャクのカルス由来のプロトコーム様多芽体からの個体再生系とパーティクルガンによる遺伝子導入を組み合わせた系を報告している。得られた個体数・効率などの記述はなく、難易度が非常に高く、熟練した一部の研究者にのみ実施が可能であったと思われる。また、当文献にはサトイモ科を含む単子葉植物でのアグロバクテリウムによる植物形質転換は、アグロバクテリウムの感染を受けないため困難と断じている。
サトイモ科タロイモ(非特許文献1)も同様にタロイモを含む単子葉植物でのアグロバクテリウムによる植物形質転換は、アグロバクテリウムの感染を受けないため困難と断じている。彼らは品種エグイモの塊茎由来のカルス(非特許文献2)に対しパーティクルガンを使うことで形質転換体を得たことを報告している。しかし、非特許文献1の中でも述べているようにカルス2gを使った実験を96回行い2つの形質転換体を得たという極めて効率の低いものであった。
サトイモ科植物の中ではアンスリウムの形質転換体がハワイ大学のグループから報告されている。彼らの確立した形質転換の方法は非特許文献3に、具体的な実施データは非特許文献4と非特許文献5に記載されている。彼らの最も良いとする材料は軟白化した節間で、アグロバクテリウムを感染させ1〜2ヶ月でカルスを誘導する。1ヶ月で弱光で薄く緑化、9ヶ月で緑化したシュートを誘導し、1〜2ヶ月で発根し小植物体を得る。さらに開花まで2年を要すると記述されている。根を材料としたものについては遺伝子導入効率が1.3%であると記載されているが、軟白化した節間を材料とした場合の遺伝子導入効率は不明で、数百の薬剤耐性の植物体を得た記述(非特許文献4)があるが、PCRなどで実際遺伝子が導入されていることを確認しているのは6系統、mRNAの発現を確認しているのは2系統、蛋白の発現を確認しているのは1系統だけである。非特許文献5では13系統の取得を報告している。通算21ヶ月かかったことが記述されており形質転換体を得るためには長期の培養が必要である。またキメラ率も26〜62%と高率であり、さらに他の選抜方法が必要であるとしている(非特許文献3)。
以上から、サトイモ科植物の効率的な形質転換を実現するためには、培養材料へのより効率的な形質転換および当該形質転換し易い培養材料の選択と作出が求められる。
スパティフィラムでは形質転換を目的として花糸から不定胚を得ている(非特許文献6)。しかし、その手法においては、エンブリオジェニック・カルスを誘導して増殖するものではなく、花糸から直接不定胚を誘導する方法であり1つの外植片からの増殖率は極限られる(増殖率の記載はない)。また、不定胚が花糸と分離せず誘導され、その後の植物体再生には好ましい条件ではないと指摘されている。加えて、花糸を外植片として用いる場合には、その部位を採取する時期が開花期に限られ、増殖を目的とした場合には初期の材料の数も限られているという点において適切ではない。実際、彼らは、その後、その材料を含めて形質転換に成功したことは報告していない。
本発明者らは、母株として維持しているスパティフィラム培養苗の種々の組織を用いエンブリオジェニック・カルスの誘導に適した部位を検討したところ、葉鞘、特にその基部またはその基部に近い部分が最も高いカルス誘導率を示し、それらカルスの中にエンブリオジェニック・カルスが高い頻度で存在することを見出した。さらに葉鞘から不定胚誘導効率の極めて高いカルス(すなわち、エンブリオジェニック・カルス)を培養材料として用いることでアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、を介した飛躍的に効率のよい遺伝子組換え方法を開発することに成功した。
日本国特開平10−75673号公報 Fukino,N,Hanada,K.,Ajisaka,H.,Sakai,J.,Hirochika,H.,Hirai,M.,Hagio,T.,Enomoto,S.(2000)Jpn Agri.Res.Quarterly,34(3),159−165 Karube,M.,Shimonishi,K.,Kukimura,H.(1992)Jpn.J.Breed.,42(1),58−59 Kuehnle,A.R.,Chen F.−C.,Sugii N.C.(2001)Biotechnology in Agriculture and Forestry,48,3−15 Chen F.−C.,Kuehnle A.R.(1996)J.Amer.Soc.Hort.Sci.,121(1),47−51 Kuehnle,A.R.,Fujii,T.,Chen,F.−C.,Alvarez,A.,Sugii,N.,Fukui,R.,Aragon,S.L.,Jaynes.J.M.(2004)HortSci.,39(6),1327−1331 Werbrouck,S.P.O.,Eeckhaut,T.G.R,Debergh,P.C.(2000)Acta Horticulturae,520,263−269
本発明の目的は、食糧や観葉植物、薬用植物として遺伝子操作の対象として期待されるサトイモ科植物に対して高効率の遺伝子導入方法及び形質転換植物の作出方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた実験を行った結果、個体への再分化能に優れる葉鞘、特に葉鞘の基部またはその基部に近い部分からエンブリオジェニック・カルスを得たのち、これにアグロバクテリウム(アグロバクテリウム属に属する微生物)、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、を感染させて共存培養し、抗生物質によって選抜を行い、さらに、得られた形質転換エンブリオジェニック・カルスを再分化させ不定胚から幼植物体を誘導することで、サトイモ科植物への遺伝子導入効率、形質転換植物の作出効率が顕著に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
本発明は、その態様において、サトイモ科植物のエンブリオジェニック・カルスにアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、を感染させて外来遺伝子を導入し、これによって形質転換エンブリオジェニック・カルスを作製することを含む、サトイモ科植物の形質転換方法を提供する。
その実施形態において、エンブリオジェニック・カルスが、葉鞘を外植片として得られるエンブリオジェニック・カルスである。
本明細書中で使用される「葉鞘」とは、茎を鞘状に包むような形になった葉の基部をいう。
その別の実施形態において、サトイモ科植物がスパティフィラム属植物である。
その別の実施形態において、本発明の方法はさらに、形質転換エンブリオジェニック・カルスから不定胚を誘導し発芽、発根させて形質転換植物を作出することを含む。
本明細書中で使用される「不定胚」なる用語は、培養された植物体細胞(組織)から生ずる胚であって、更に正常な植物体へと発達することができる胚を指す。
本発明により、従来困難であると考えられてきたサトイモ科植物のアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、による形質転換が可能となったため、この植物に外来遺伝子を容易に導入可能となり、これによって形質転換サトイモ科植物を効率よく作出することができる、という格別の利点が提供される。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005−348259号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、形質転換に利用したベクターの構造を示す。ここで、pKT11は基本ベクターを、またpKT152およびpKT167は本発明の植物形質転換用ベクターをそれぞれ示す。RBはライトボーダー配列、LBはレフトボーダー配列、35SP−Gus−nosTはカルフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターで駆動されるβグルクロニダーゼ遺伝子、Km耐性遺伝子はカナマイシン耐性遺伝子、UbiP−I−Luc−nosTはトウモロコシ・ユビキチンプロモーターで駆動されるイントロンを含むルシフェラーゼ遺伝子、35SP−hyg−nosTはカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターで駆動されるハイグロマイシン耐性遺伝子、UbiP−hyg−nosTはトウモロコシ・ユビキチンプロモーターで駆動されるハイグロマイシン耐性遺伝子をそれぞれ示す。
図2は、カルス選択培地に置床した後、7日目のエンブリオジェニック・カルスとルシフェラーゼ発光活性を示す。各ベクターを持つアグロバクテリアで処理後,7日目のエンブリオジェニック・カルス塊の明視野(pKT152:A、pKT165:C)と暗視野での発光測定(ARGUS50測定レベル0〜3、pKT152:B、pKT165:D)の結果を示す。発光測定では発光量が多いほど明るくなるよう画像処理されている。それぞれ10個のエンブリオジェニック・カルス塊を測定に供した。エンブリオジェニック・カルスにはアグロバクテリアが効率よく感染しルシフェラーゼ遺伝子導入した後、エンブリオジェニック・カルスで発現していることがわかる。
図3は、カルス選択培地に置床した後、3ヶ月目の形質転換されたエンブリオジェニック・カルスとルシフェラーゼ発光活性を示す。ベクターpKT165を持つアグロバクテリアで処理後,1月毎継代し3ヶ月目のエンブリオジェニック・カルス塊の暗視野での発光測定(ARGUS50測定レベル0〜5)の結果を示す。発光測定では発光量が多いほど明るくなるよう画像処理されている。本写真は2つの実験区の1つを示したものである。2つの実験区の総数42個置床されているエンブリオジェニック・カルス塊のうち、強く発光するものが22個、弱く発光するものが5個確認できた。強く発光するエンブリオジェニック・カルスはキメラ性のない均一な形質転換体である。
図4は、再分化した植物体の葉片におけるルシフェラーゼ発光活性を示す。再分化した個体のうちPCRで遺伝子導入されていることが確認できた個体の葉片の暗視野での発光測定(ARGUS50測定レベル0〜5)の結果を示す。発光測定では発光量が多いほど明るくなるよう画像処理されている。試薬の吸収による理由で発光していない、もしくはムラのある葉片もあるが発光しているもの(16片)はほぼ全面で発光が観察できキメラ性はとても低い。
(1)宿主と植物部位
形質転換のための植物宿主の例としては、サトイモ科植物の細胞が挙げられ、特に好ましい具体例としては、サトイモ、タロイモ、コンニャク、スパティフィラム、アンスリウム、カラジウム、アグラオネマ、アローカシア、ディエフェンバキア、モンステラ、フィロデンドロン、ポトス、シンゴニューム、カラー、ミズバショウ、ザゼンソウ、ショウブ等の植物細胞などが挙げられる。その中で最も好ましいスパティフィラムは品種に特に制限はなく、市販品種(ペティート「Petite」、米国トワイフォード社のダブル テイク「Double Take」やクラウディア「Claudia」等)を用いることができる。
具体的な植物材料としては、葉鞘、生長点、苗条原基、分裂組織、葉片、茎片、根片、塊茎片、葉柄片、プロトプラスト、カルス、葯、花粉、花粉管、花柄片、花茎片、花弁、がく片等が挙げられる。好ましい具体例としてこれら材料の基部に近い部分が挙げられる。更に好ましくは、葉鞘の基部またはその基部に近い部分が挙げられる。ここで葉鞘の基部とは葉鞘長片の下1/4部分を指し、葉鞘基部に近い部分とは当該葉鞘基部を除いた葉鞘長片の下1/2部分を指す。
(2)エンブリオジェニック・カルスの誘導
本発明において、エンブリオジェニック・カルスとは個体までに分化できる能力があり、形態は柔らかく(力を加えることで崩れやすい)、個々の径が1mm未満の大きさを持ち、クリーム色を呈する粒状の脱分化した細胞または組織である。サトイモ科の組織片を培養して作製したもので遺伝子導入後、個体レベルにまで分化できる能力があり、アグロバクテリウムに感染性を有するものであればどのようなものでもよい。好ましくは、in vitroの組織片をカルス誘導用培地に置床し、培養してカルス誘導を行ったエンブリオジェニック・カルスでよい。
材料の好ましい1例である葉鞘は、必ずしも培養苗から採取する必要はない。温室などの開放条件で維持されている植物から採種してもよい。その場合は常法によって表面殺菌をして外植片とする。培養苗を用いる場合は表面殺菌の必要はない。葉鞘であればどの部位を用いても良いが、好ましくは基部に近い部分が良い。更に好ましくはその基部、例えば葉鞘を植物苗から採取する際に、メスなどで切断するのではなく、葉鞘を植物苗から剥がす様に採取し、その剥離した部分を含む部位を用いる。葉や根からもカルスが得られる場合があるが、葉鞘に比して頻度は著しく低くまた次工程でのエンブリオジェニック・カルスも誘導されにくいので好ましくない。
次に調製した葉鞘外植片を培地に置床し、エンブリオジェニック・カルスを製造する方法について説明する。
前述のように得られた葉鞘外植片をカルス誘導培地に置床することによって先ずカルスを誘導する。その培地はMS培地(Physiol.Plant.,15,p143,1962)など通常組織培養に用いる培地を基本培地とし、糖源として蔗糖1〜6%(重量/体積%、以下同じ)、望ましくは2〜4%、植物生長調節物質のオーキシン類として望ましくは2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)を1〜8ppm、望ましく3〜5ppm、その他のオーキシン類としてインドール−3−酢酸(IAA)、インドール−3−酪酸(IBA)、1−ナフタレン酢酸(NAA)、4−クロロフェノキシ酢酸(CPA)、クロロメチルフェノキシ酢酸(MCPA)、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5−T)、ジクロロメトキシ安息香酸(DICAMBA)、トリクロロアシノピコリン酸(PICROLAM)を、サイトカイニン類として望ましくは6−ベンジルアデニン(BA)を0.05〜2ppm、望ましく0.1〜0.3ppm、その他のサイトカイニン類としてゼアチン(ZEA)、カイネチン(KN)、6−(ベンジルアミノ)−9−(2−テトラヒドロピラニル)−9H−プリン(PBA)、2−イソペンテニルアデニン(2ip)、チジアズロン(TDZ)等を用いる。最も良好な結果は2,4−DとBAを組合せた条件で得られる。2,4−Dが1ppm未満の場合、カルスと共に植物体が発生しやすく、8ppmを超えると組織が褐変しやすい。また、カゼイン酸加水分解物を50〜200ppm、バッファーとしてMESを0.1〜10mMを加えても良い。培地のpHは5〜7とする。pH調整後に寒天(0.8〜1.2%)またはゲルライト(0.1〜0.3%)を用いて培地を固形化する。容器は植物組織培養に用いられるものであれば特に限定はない(例えばプラントボックス、旭テクノグラス社(東京、日本国)製、内容積300ml)。光環境は暗所、温度は20℃〜30℃、望ましくは23℃から27℃とする。培養期間は4〜12週、望ましくは5〜8週とする。
誘導されたカルスを同じ培地に継代培養し、生じてくるエンブリオジェニック・カルスを選抜し同じ培地に移植してエンブリオジェニック・カルスのみの増殖を行う。以後、同様の操作にてエンブリオジェニック・カルスを維持、増殖する。光、温度条件はカルス誘導時と同じとし、培養期間は4〜6週とする。
すなわち一旦、エンブリオジェニック・カルスが得られると形質転換材料として、毎回、エンブリオジェニック・カルスを誘導する必要が無く、エンブリオジェニック・カルスを必要量だけ増殖し、形質転換実験に供することが可能となる。
(3)アグロバクテリウム感染方法
本発明の方法において、外来遺伝子の導入は、目的遺伝子を含有するアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、の感染液にエンブリオジェニック・カルスを浸漬し、浸漬後の組織片を共存培養培地で共存培養することを含む。近年、アグロバクテリウム属以外のリゾビウム属でも植物での遺伝子導入が、同様の機構で起こることが報告されており(Chilton,M.D.(2005)Nat.Biotechnol.,23(3),309−10)、導入効率もアグロバクテリウムに遜色なく積極的に共同利用が図られている(Weir,B.J.,Mitchell,H.J.,Broothaerts,W.,Jefferson,R.A.(2005)Plant Biology 2005 Final Program,93)。このことでも明らかなように、遺伝子導入に際しては、アグロバクテリウムだけでなく、アグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物(例えばリゾビウム属の微生物、シノリゾビウム属の微生物、メソリゾビウム属の微生物等)も用いることができる。なおアグロバクテリウム・ツメファシエンスはAmerican Type Culture Collection(ATCC)(米国)ではリゾビウム属として登録されている。
アグロバクテリウムとしては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が好ましく、具体的にはAGLO株、LBA4404株、CIB542/A136株、EHA101株等を用いることができるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用する「アグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする」とは、アグロバクテリウムだけでなく、アグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物(例えばリゾビウム属の微生物、シノリゾビウム属の微生物、メソリゾビウム属の微生物等)で形質転換することを意味する。
外来遺伝子は、特に限定されないが、公知のものを目的に応じて適宜使用することができる。例えば、アントシアニンやカロテノイド色素の生合成遺伝子や色素合成を調節する遺伝子、形態形成(開花や草丈等)を調節する遺伝子、耐病性を付与する遺伝子、乾燥耐性を付与する遺伝子などを含む。
アグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、に目的とする遺伝子を導入するベクターとしては、pBI121(DDBJAccession No.AF485783)等を用いることができる。さらに改良型であるpKT11(日本国特開2001−161373号公報)を用いることもできる。またベクターは、目的とする遺伝子の他に、例えばレポーター遺伝子、選抜マーカー遺伝子、プロモーター遺伝子等の他の遺伝子を含有していてもよい。レポーター遺伝子としては、例えばルシフェラーゼ遺伝子、GFP遺伝子、GUS遺伝子等が挙げられる。ルシフェラーゼ遺伝子としてはイントロンを含むものを用いることができる(DDBJ Accession No.U84006)。これは、アグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、の残存によるアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、が持つルシフェラーゼ遺伝子の影響を排除して、植物での発現のみを確認することができる。
選抜マーカー遺伝子としては、例えばカナマイシン耐性遺伝子、G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
また、プロモーター遺伝子としては、例えばトウモロコシ・ユビキチンプロモーター[Plant Mol Biol.1994;26(3):1007−12.]やカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(日本国特許第2645217号)等が挙げられる。
公知のものを適宜組み合わせて翻訳エンハンサー、ターミネーター等の構成要素を含むことができる。ウイルス起源の翻訳エンハンサーとしては、例えば、タバコモザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルスRNA4、ブロモモザイクウイルスRNA3、ポテトウイルスX、タバコエッチウイルスなどの配列が挙げられる[Gallieら、Nuc.Acids Res.,15(1987)8693−8711]。また、植物起源の翻訳エンハンサーとして、ダイズのβ−1,3グルカナーゼ(Glu)由来の配列[石田功、三沢典彦著、講談社サイエンティフィク編、細胞工学実験操作入門、講談社(東京、日本国)、p.119、1992]やタバコのフェレドキシン結合性サブニニット(PsaDb)由来の配列[Yamamotoら、J.Biol.Chem.,270(1995)12466−12470]などが挙げられる。ターミネーターとしては、例えば、nos遺伝子のターミネーター、ocs遺伝子のターミネーターなどが挙げられる[Annu.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.,44(1993)985−994、「Plant genetic transformation and gene expression;a laboratory manual」、Draper,J.et.al.編,Blackwell Scientific Publication,1988]。また、プロモーター中の転写エンハンサーとして、35S遺伝子のエンハンサー部分が同定され、それらを複数個並べて繋げることにより、活性を高めることが報告されており(Plant Cell,1(1989)141−150)、この部分をDNA鎖の一部として用いることも可能である。これらの各種構成要素は、その性質に応じて、それぞれが機能し得る形でDNA鎖中に組み込まれることが好ましい。そのような操作は、当業者であれば適切に行うことができる。
上記ベクターは、遺伝子工学の分野で慣用されている手法を用いることにより、当業者であれば容易に製造することができる。また、本発明のベクターは、天然の供給源から単離されたものに限定されるものではなく、上記のような構造を有するものであれば、人工的な構築物であってもよい。該DNA鎖は、周知慣用されている核酸合成の方法に従って合成する事により、得ることができる。
目的とする遺伝子及び他の遺伝子を組み込んだ前記ベクターのアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、への導入は、エレクトロポレーション法、freeze−thaw法等の当業者に公知の手法により実施することができる。
感染液(接種用培地)としては、LB、YEP、YMB等の液体培地で前培養し、遠心分離により集菌したアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、を同培地又はMSやB5等の植物培養用培地等にて希釈したものを用いることができるが、これらに限定されない。
感染液における前記微生物の濃度は、組織片に十分に遺伝子導入が行われる濃度であれば特に限定されないが、例えば、感染液1mLあたり10,000〜10,000,000個の微生物菌体とすることができる。感染を確実なものとするためには高濃度の菌体へ長時間浸漬すればよいが、植物体へのダメージが大きいので望ましくない。
次に、アグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、の感染を確実にするため、浸漬処理の終わった組織片を共存培養用培地で培養する。共存培養用培地は、植物の組織片の培養に必要な成分、例えば、炭素源、窒素源、無機塩類、固化剤等を含むものであればどのようなものでもよい。炭素源としては、例えば、シュクロース、グルコース等を用いることができ、無機塩類としては、MS無機塩、B5無機塩等を用いることができ、固化剤としては、寒天、ゲルライト等を用いることができる。また、共存培養後のカルス誘導を促進するために植物生長調節物質が添加されてもよい。
共存培養期間は、例えば1〜14日、好ましくは1〜5日行うとよい。共存培地にはアセトシリンゴンを入れることが好ましく、濃度は100mMとするのが好ましい。共存培養のpHや温度は、植物の組織片に悪影響を及ぼさない範囲であれば特に制限はないが、例えばpHは5〜8とするのが好ましく、温度は20〜28℃とするのが好ましい。また光条件は暗所とするのが好ましい。
(4)形質転換エンブリオジェニック・カルスの選択
共存培養したエンブリオジェニック・カルスに付着しているアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、を除菌し、その後カルス選択培地を用いて、遺伝子導入したエンブリオジェニック・カルスを選択する。除菌は、例えば、前記の共存培養用培地をセフォタキシム等の抗生物質を含んだ培地に置床することで行う。
ここで用いるカルス選択用培地は、カルス増殖用培地に除菌用抗生物質及び形質転換細胞選抜用物質を添加する。除菌用抗生物質としては、セフォタキシム、モキサラクタム、メロペネム等が挙げられる。除菌用抗生物質の濃度は、例えばセフォタキシムの場合は100〜300μg/mlの範囲が好ましい。
形質転換細胞選抜用として抗生物質や除草剤、アミノ酸アナログを用いることができる。抗生物質を用いる場合は、前記選抜用マーカー遺伝子に応じた抗生物質であれば特に限定はないが、ハイグロマイシンが好ましい。形質転換細胞選抜用抗生物質の濃度は、例えばハイグロマイシンの場合3〜100μg/mlの範囲が好ましい。
光条件は暗所とするのが好ましい。
上記の培地条件、光条件を採用し、エンブリオジェニック・カルスを通常の植物細胞の培養条件、例えば20〜28℃で7日から4カ月培養することにより、形質転換したエンブリオジェニック・カルスを得ることができる。
(5)形質転換エンブリオジェニック・カルスから不定胚の誘導
形質転換エンブリオジェニック・カルスを不定胚誘導用培地に置床し、培養して不定胚誘導を行う。ここで用いる不定胚誘導用培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含むものであればどのようなものでもよい。炭素源としては、例えば、シュクロース、グルコース等を用いることができ、無機塩類としては、MS無機塩、B5無機塩等の基本培地を用いることができ、さらに固化剤としては、寒天、ゲルライト等を用いることができるが液体培地で誘導することも可能である。さらに植物生長調節物質を添加することが好ましい。
具体的には不定胚誘導培地はMS培地などを基本培地とし、糖源として蔗糖を0.5〜4%、望ましくは1〜2%、フラクトースを0.5〜4%、望ましくは0.5〜2%を添加する。また、その他の糖類としてソルビトール又はマンニトールを1〜6%、望ましくは2〜4%を添加しても良い。植物生長調節物質のオーキシン類として望ましくは2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)を0〜2ppm、望ましくは0.01〜0.05ppm、その他のオーキシン類としてインドール−3−酢酸(IAA)、インドール−3−酪酸(IBA)、1−ナフタレン酢酸(NAA)、4−クロロフェノキシ酢酸(CPA)、クロロメチルフェノキシ酢酸(MCPA)、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5−T)、ジクロロメトキシ安息香酸(DICAMBA)、トリクロロアシノピコリン酸(PICROLAM)を、サイトカイニン類として望ましくは6−ベンジルアデニン(BA)を0〜0.5ppm、望ましく0.05〜0.2ppm、その他のサイトカイニン類としてゼアチン(ZEA)、カイネチン(KN)、6−(ベンジルアミノ)−9−(2−テトラヒドロピラニル)−9H−プリン(PBA)、2−イソペンテニルアデニン(2ip)、チジアズロン(TDZ)等を用いる。また、グルタミン酸及び/またはプロリンを夫々1〜10mM、望ましくは2〜5mM添加する。バッファーとしてMESを0.1〜10mMを加えても良い。培地のpHは5〜7とする。光環境は明条件(12〜16時間日長、光合成光量子束密度5.7〜34.2μmole/m/secが望ましいが、暗条件でも良い。温度は20℃〜30℃、望ましくは23℃〜27℃とする。培養期間は4〜12週、望ましくは5〜10週とする。
(6)不定胚の発芽、発根
不定胚は固体培地上でも液体培地中でも高効率で発芽する。発芽に用いる培地はMS培地などを基本培地とし、糖源として蔗糖を1〜6%、望ましくは2〜4%添加する。発芽に比し発根が著しい場合は、それを抑えるためにその他の糖類としてソルビトール又はマンニトールを1〜6%、望ましくは2〜4%を添加しても良い。植物生長調節物質は特に添加する必要はないが、オーキシン類やサイトカイニン類を添加して発芽を促進させても良い。培地のpHは5〜7とする。光環境は明条件、12〜16時間日長、光合成光量子束密度1.1〜34.2μmole/m/sec、望ましくは2.3〜11.4μmole/m/secとする。温度は20℃〜30℃、望ましくは23℃から27℃とする。固体培地の場合は寒天(0.8〜1.2%)またはゲルライト(0.1〜0.3%)を用いて培地を固形化する。容器は植物組織培養に用いられるものであれば特に限定されるものではないが、固体培地の場合は前述のプラントボックス、液体培地の場合は前述の攪拌式もしくはエアーリフトタイプの培養槽を用いる。培養期間は、固体培地の場合は4〜12週間、液体培地の場合は3〜6週間とする。その期間中に、不定胚は発根もして数枚の葉を展開するサイズの植物体となる。
(7)温室への移植
不定胚から再分化した植物体は、温室にて正常に生育する。移植に用いる土は特に限定されるものではなく、育苗用に市販されている培養土で良い。植物体を移植した後、1〜3週間程度、適度の加湿と遮光を行うことが望ましい。
(8)遺伝子導入植物体における遺伝子の導入及び発現の確認
上記の操作により得られた遺伝子導入カルスや植物体における遺伝子の導入及び発現の確認は、当業者に公知のレポーター遺伝子を用いる方法、例えばルシフェラーゼの発光、緑色蛍光タンパク質(GFP)の蛍光、β−グルクロニダーゼ(GUS)の青色呈色にて行うことができる。また、当業者に公知の手法に従い、該遺伝子の配列を基に作製したプライマーを用いて、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法又はノーザンハイブリダイゼーション法により行ってもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら制限するものではない。
スパティフィラムのエンブリオジェニック・カルスの取得
スパティフィラム(品種Petite)の培養苗の各種組織から、カルス誘導及びそれらカルスからのエンブリオジェニック・カルスの誘導を行った。
同培養苗は、MS培地に蔗糖3%、寒天(和光純薬社)0.8%を添加しpHを5.8に調整した固体培地上にて、明所(光合成光量子束密度5.7μmole/m/sec、16時間日長)、25℃の条件下にて継代維持されているものである。培養容器には旭テクノグラス社(東京、日本国)製のプラントボックスを用いた(内容積300ml)。
培養4週目の培養苗から、葉鞘を株から剥がす様に採取し、剥離部分を含む約2cmの切片(葉鞘基部)を外植片とした。その外植片を、蔗糖3%、2,4−D 4ppm、BA 0.2ppm、カゼイン酸加水分解物100ppm、MES 5mMを添加し0.8%寒天にて固化したMS培地(pH5.8、以下「カルス誘導・増殖培地」)に6切片/容器ずつ置床した(容器はプラントボックス、培地量は50ml)。全部で4個の容器を使用した。25℃、暗所条件にて8週間培養しカルスの誘導状況を調査した。
その結果、置床切片の92%(カルス誘導切片数/置床切片数=22/24)においてその剥離部分にカルスが誘導された。それらカルスを0.2g/容器ずつ同一培地に継代し1ヶ月培養することによって、エンブリオジェニック・カルスが選抜された。このようなエンブリオジェニック・カルスは、50%の率(エンブリオジェニック・カルス誘導容器数/処理容器=4/8)にて誘導された。
このエンブリオジェニック・カルスを、蔗糖1%、ソルビトール3%、MES 5mMを含むMS液体培地(pH5.8)を160ml添加した500mlの三角フラスコに各0.05gずつ置床し、25℃、明所(16時間日長、光合成光量子束密度22.8μmole/m/sec)にて6週間浸とう培養を行った(80rpm)ところ、不定胚が形成された。それら不定胚を、蔗糖3%を含み寒天0.8%にて固化したMS培地(pH5.8、以下「発芽培地」)50mlを添加したプラントボックスに0.2gずつ置床し、25℃、明所(16時間日長、光合成光量子束密度5.7μmole/m/sec)にて8週間培養を行ったところ、不定胚は発芽し完全な植物が得られた。エンブリオジェニック・カルスは、4週間毎にカルス誘導・増殖培地へ継代することにより、不定胚誘導能を保持したまま2年間の維持が可能であった。
さらに品種Petiteの手法と同様に、他のスパティフィラム品種であるDouble Take、Claudiaのin vitroの葉鞘から葉を切り取った基部をそれぞれ、70、68切片ずつカルス誘導培地に置床した。25℃暗所で4〜8ヶ月培養することでエンブリオジェニック・カルスが誘導できた。誘導率:%((エンブリオジェニック・カルス誘導基部切片数/置床基部切片数)×100)はそれぞれ80%、88%であった(それぞれの(エンブリオジェニック・カルス誘導基部切片数/置床基部切片数)は、56/70,60/68)。これらのエンブリオジェニック・カルスをカルス誘導・増殖培地で増殖した。以降の実験では温室での栽培特性に優れるDouble Takeのエンブリオジェニック・カルスを使用した。
植物形質転換用ベクターの作製
選抜マーカーとして使用したハイグロマイシン耐性(hyg)遺伝子は、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターと大腸菌由来のhyg遺伝子はpIG121(特開平11−69979号公報)から利用した。トウモロコシ由来のユビキチン・プロモーター[Plant Mol Biol.1994;26(3):1007−12.]、カリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターとアグロバクテリア由来のnosターミネーターはクロンテック社製ベクターpBI121を利用した。これらの発現カセットを、アグロバクテリアと大腸菌で増幅可能なバイナリー型ベクターであるpKT11(特許文献2)を基本ベクターとして、Gus遺伝子、NptII遺伝子と置き換えることにより、pKT152とpKT163を構築した。(図1)
遺伝子導入アグロバクテリアの調製
実施例2で作製されたベクターをエレクトロポレーション法(Plant Molecular Biology Manual,C2(1994)1−32(Ed.)GelvinとSchilperoort,Kluwer Academic Publishers)により、アグロバクテリウム・ツメファシエンスAGLO株(ATCC No.BAA−100)に導入した。
遺伝子導入アグロバクテリアのエンブリオジェニック・カルスへの感染
各ベクターを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスAGLO株を、50ppmのカナマイシンを含むYEB液体培地(5g/lビ−フエキス、1g/l酵母エキス、5g/lペプトン、5g/l蔗糖、2mM硫酸マグネシウム(pH7.2))で28℃、12時間振とう培養した。培養液1mlを10,000rpm、3分間遠心して集菌後、10mlのminA培地(2.1g/lリン酸水素ニカリウム、0.9g/lリン酸ニ水素カリウム、0.2g/l硫酸アンモニウム、0.1g/lクエン酸ナトリウム2水和物、0.02%硫酸マグネシウム7水和物、0.2%ブドウ糖)に再懸濁し感染用菌液とした。
〔実施例2〕で得られたエンブリオジェニック・カルスを一回の形質転換実験当たり1−7g(7gの場合は、エンブリオジェニック・カルスを20−50個含むエンブリオジェニック・カルス塊が約500個)を上記のアグロバクテリウムの菌液内に1分間浸漬した後、滅菌済みの濾紙上にエンブリオジェニック・カルスを置いて過剰のアグロバクテリウムを除いた。その後、シャーレ内の共存培地(MS無機塩、3%蔗糖、100ppmカゼイン酸加水分解物、4ppm2.4−D、0.2ppm BA、5mM MES、100mMアセトシリンゴン、0.8%寒天pH5.6)へ置床し暗所・25℃で4ないし5日間培養した。
〔比較例1〕エンブリオジェニック・カルスから不定胚誘導を行う際の選抜
共存培地にあるエンブリオジェニック・カルスを不定胚誘導選択培地(MS無機塩、1%蔗糖、1%フルクトース、3mMプロリン、3mMグルタミン、0.2ppm2.4−D、0.1ppm BA、5mM MES、6ppmハイグロマイシン、250ppmセフォタキシム、0.8%寒天pH5.6)へ置床し形質転換体がえられるかどうかを検証した。
〔実施例4〕の一回の実験で得られたエンブリオジェニック・カルス約7gを不定胚誘導選択培地へ置床した。しかし、すべてのエンブリオジェニック・カルスは置床後1−2ヶ月の間に褐色になり死滅した。よって、この方法では形質転換されたエンブリオジェニック・カルスならびに不定胚は得られず結果として形質転換植物は得られなかった。
エンブリオジェニック・カルスを増殖する培地での選抜
〔実施例4〕で得られたアグロバクテリウムにて感染したエンブリオジェニック・カルスをカルス選択培地(MS無機塩、3%蔗糖、100ppmカゼイン酸加水分解物、4ppm 2.4−D、0.2ppm BA、5mM MES、3または6ppmハイグロマイシン、250ppmセフォタキシム、0.8%寒天pH5.6ルシフェリン溶液:5mMルシフェリン、0.1%トリトンX−100)に置床した。1ヶ月ごと培地を新しくして継代を繰り返した。形質転換カルスの確認はマーカー遺伝子であるルシフェラーゼ活性を測定し確認した。
方法は培地にルシフェリン溶液をカルスに5−10μl添加し15分間暗所に放置する。その後、発光したカルスから出る光子をARGUS50(浜松ホトニクス社(静岡、日本国)製)で50分間検出・積算し画像解析を行った。
カルス選択培地に置床した後、7日目にルシフェラーゼ活性を測定した結果を図2に示す。褐色に変色せず黄色で生育しているベクターpKT152、pKT165を導入したアグロバクテリアで処理した任意の10個のエンブリオジェニック・カルス塊すべてで、導入されたルシフェラーゼ遺伝子による発光が観察できた。このことからエンブリオジェニック・カルスにはアグロバクテリウムが効率よく感染しルシフェラーゼ遺伝子導入した後、エンブリオジェニック・カルスで発現していることがわかる。
1ヶ月毎継代し2〜4ヶ月目のエンブリオジェニック・カルス塊を不定胚誘導培地へ移した。図3ではpKT165を導入したアグロバクテリウムで処理した3ヶ月目のルシフェラーゼ活性を測定した結果を示す。生育の良かったこの区では42個置床されているカルスのうち、強く発光するものが22個、弱く発光するものが5個確認できた。強く発光するエンブリオジェニック・カルスはキメラ性のない均一な形質転換体であることがわかる。
形質転換エンブリオジェニック・カルスの不定胚の形成、発芽から個体再生
〔実施例5〕で得られた形質転換エンブリオジェニック・カルスを不定胚誘導培地(MS無機塩、1%蔗糖、1%フルクトース、3mMプロリン、3mMグルタミン、0.2ppm 2.4−D、0.1ppm BA、5mM MES、250ppmセフォタキシム、0.8%寒天pH5.6)に置床した。明所・25℃で培養したところ、置床後1〜2ヶ月の間に緑色になり不定胚を形成した。
さらに、この不定胚を個体再生培地(MS無機塩、1%蔗糖、0.8%寒天pH5.6)に置床し再分化個体を得た。
再分化した個体が確かに遺伝子を含有することを確認するため再分化した植物体の中から外来遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を含有する個体を、PCRを行うことによって検出し、該再分化植物体が形質転換体であることを確認した。ここで、ルシフェラ−ゼ遺伝子特有の配列を特異的に増幅するプライマーとして、5’−AGAGATACGCCCTGGTTCCT−3’(配列番号1)、及び5’−ATAAATAACGCGCCCAACAC−3’(配列番号2)を用いた。PCRの反応条件は、94℃で5分間の加熱後、94℃(30秒)、55℃(1分)及び72℃(1分)のサイクルを30回行い、最後に72℃で10分間反応させた。この反応では、酵素としてTaqポリメラーゼ(宝酒造社(京都、日本国)製)を用いた。反応産物をアガロース電気泳動で分離し増幅産物をエチジウムブロマイドで染色し紫外線下で観察した。
上記の手法によって、表1に示すように、各遺伝子を含むベクター(pKT152,pKT165)が別個に導入されたエンブリオジェニック・カルス計、およそ21.9g(生体重)から、それぞれ別個の形質転換体であるスパティフィラム植物体計33個体を取得できた。また、PCRで遺伝子導入が確認できた再分化した個体の葉片でのルシフェラーゼ活性の結果を図4に示す。発光しているものはほぼ全面で発光が確認できることからキメラ性はとても低いことがわかった。
Figure 2007064037
本発明により、サトイモ科植物に外来遺伝子を容易に導入可能となり、これによって形質転換サトイモ科植物の効率的作出が可能になり産業上有用である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
[配列表]
Figure 2007064037

Claims (4)

  1. サトイモ科植物のエンブリオジェニック・カルスにアグロバクテリウム、またはアグロバクテリウムと同様の機構で遺伝子導入を可能にする微生物、を感染させて外来遺伝子を導入し、これによって形質転換エンブリオジェニック・カルスを作製することを含む、サトイモ科植物の形質転換方法。
  2. エンブリオジェニック・カルスが、葉鞘を外植片として得られるエンブリオジェニック・カルスである請求項1に記載の形質転換方法。
  3. サトイモ科植物がスパティフィラム属植物である請求項1に記載の形質転換方法。
  4. 形質転換エンブリオジェニック・カルスから不定胚を誘導し発芽、発根させて形質転換植物を作出することをさらに含む請求項1に記載の形質転換方法。
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