JP6715916B2 - 高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢 - Google Patents

高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢 Download PDF

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Description

本発明は、食品の味を損ねることなく優れた食品を得るために用いる食品の日持向上を目的とした高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢及び該高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を用いた食品の日持向上方法並びに日持向上を目的とした製剤に関する。
加工食品を製造する場合、食品の日持向上の目的で様々な有機酸が用いられている。なかでも醸造酢は、古くから食品の日持向上の目的にも利用されてきた。
しかしながら、醸造酢は日持ちを良くするために、食品への添加量を増やすと、酸味や酸臭がでて食品の風味を損なうことがある。
現状では醸造酢ではなく、氷酢酸の中和物である食品添加物の酢酸ナトリウムが日持向上剤の主体のひとつになっている。
特許第6077948号公報には、食品添加物である無水酢酸ナトリウムと酢酸溶液とショ糖脂肪酸エステルを混合・加熱・冷却・粉砕することにより含水結晶物とし酢酸を含有した酢酸ナトリウム粉末の製造方法が提案されている(特許文献1)。
特許第4299752号公報には、酸度99%と高酸度の醸造酢を無水酢酸ナトリウム又はデキストリンとに吸着させ酸度15%以上の粉末醸造酢の製造方法が提案されている(特許文献2)。
特開2006−6232号公報には、澱粉を含んだ加工食品に醸造酢と酢酸ナトリウムとマルトースを含む溶液を米飯に使用し、米飯の老化防止と保存性を向上させる提案がなされている(特許文献3)。
特開昭60−164475号公報には、醸造酢を水酸化ナトリウムでpH7.0〜8.4に中和して得られた酢酸ナトリウムを減圧下で濃縮粉末化した後無水有機酸を添加する醸造酢粉末の製造法が提案されている(特許文献4)。
特許第6077948号公報 特許第4299752号公報 特開2006−6232号公報 特開昭60−164475号公報
近年、欧米を含めて日本でも消費者の声として、食品の製造に、化学合成品を避け天然素材の利用を求める声があり、醸造酢の利用は、この流れに沿うことが出来るものと思われる。本発明者らは醸造酢を部分中和し、酢酸ナトリウムを生成させ、酸味、酸臭を減らした酢酸ナトリウム含有醸造酢を食品の日持向上に生かすことを考えた。
高酸度の醸造酢を、それに含まれる酢酸と等モルの炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムで中和すると、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢ができる。この時のpHは7〜8になっている。あいにく、この高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢には、酢酸ナトリウム固有の欠点であるエグ味がついて、食品に添加するには味が好ましくない。
そこで、本発明は、酢酸ナトリウムのエグ味が抑制された高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢及び該高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を用いた食品用日持向上剤並びに食品の日持向上方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、酢酸ナトリウム由来のエグ味を減らすことを目的として種々検討したところ、意外にも、少量の酢酸の酸味がこのエグ味を減殺するとの知見を得た。すなわち、醸造酢の中和に際して酢酸を少量残すように中和(部分中和)することで上記課題を解決することを見出した。
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、高酸度醸造酢に含まれる酢酸を無機のナトリウム塩で中和してなる、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢であって、酢酸/酢酸ナトリウムの比率が0.05〜0.14の範囲内であることを特徴とする、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を提供するものである。
また、本発明は、前記高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を含有することを特徴とする、食品用日持向上剤を提供するものである。
さらに、本発明は、前記高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を食品に添加することを特徴とする、食品の日持向上方法を提供するものである。
本発明によれば、醸造酢(調味酢)という長年利用されてきた安全性の高い調味料から、中和により生成された酢酸ナトリウムのエグ味を、少量の酢酸を残存させることにより抑えた、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を製造することができるため、安全で日持向上効果に優れ、かつ、食品の風味を損なわない食品用日持向上剤並びに食品の日持向上方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢について説明する。本実施形態の高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢は、高酸度醸造酢に含まれる酢酸を無機のナトリウム塩で中和してなる、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢であって、酢酸/酢酸ナトリウムの比率が0.05〜0.14の範囲内である。
本実施形態において、「高酸度醸造酢」とは、酸度が10%以上の醸造酢をいい、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。但し、中和剤の溶解性の観点から、上限は30%程度であることが好ましい。すなわち、高酸度醸造酢の酸度は10〜30%の範囲内にあることが好ましい。
本実施形態において、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢における「高濃度」とは、液状の場合は、酢酸ナトリウムの0℃の水に対する溶解度である26%付近を意味し、粉状の場合は60%以上であることを意味する。
本実施形態において、前記無機のナトリウム塩は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムであることが好ましい。
本実施形態において、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢は液状であることが好ましい。液状であれば、一般的な醸造酢と同様の使い方ができる。
本実施形態において、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢は粉末状であることもできる。粉末状であれば、濃度を60%以上まで高めることができる。
本実施形態に係る高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢は、酢酸濃度が10〜30%の範囲内にある高酸度醸造酢を無機のナトリウム塩で部分中和することにより製造することができる。
部分中和の条件は、酢酸/酢酸ナトリウムの比率が0.05〜0.14の範囲内となるようにするが、使用目的により、醸造酢の酸度と部分中和の程度を適宜選択することが好ましい。
次に、本発明の食品用日持向上剤について説明する。本実施形態に係る食品用日持向上剤は、上述した高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を含有することを特徴とする。
本実施形態の食品用日持向上剤の形態は特に限定されない。例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠剤、液状、ペースト状としてよい。粉末状、粒状又は顆粒状とした場合、保管コストや輸送コストを大きく減少させることができるので好ましい。
本実施形態において、食品用日持向上剤の添加量は、食品の重量に対し0.1〜3重量%であることが好ましく、0.2〜1重量%であることがより好ましく、0.3〜0.8重量%であることがさらに好ましい。
次に、本発明の食品の日持向上方法について説明する。本実施形態に係る食品の日持向上方法は、上述した高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を食品に添加することを特徴とする。
添加のタイミングは特に限定されることなく、食品の調理前、調理中、調理後のいずれかに、必要量の高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を食品に添加すればよい。
本実施形態に係る高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢は、天然抗菌物質や日持向上効果のある食品添加物と組み合わせて、食品全般に利用できる。本実施形態において、「食品」とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等を幅広く含むものである。
本実施形態においては、澱粉系の加工食品、チルド食品に高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を含有させることが、その抗菌スペクトル、抗菌力、食味などの観点から好ましい。
ここで「澱粉系の加工食品」とは、カロリーベースで50%以上澱粉が占めている食品をいう。澱粉系の加工食品としては、例えば、水産練り製品、畜産練り製品、和洋菓子、麺類、パン類、米飯類、総菜類、ソース・タレなどの食品を挙げることができる。
ここで「チルド食品」とは、凍結寸前の所定温度まで冷却して保存された食品をいい、JAS法(食品保存基準)によれば5℃以下の温度の場合をチルドと規定し、JIS9607(冷蔵庫の規格)では0℃付近の温度をチルドと規定しており、基本的には、0℃〜5℃の温度範囲内をチルドとして使用し、食品業界では、製造から販売まで0℃〜10℃の温度で管理されている食品をチルド食品としている場合が多く、或いは、チルド食品とは、5℃〜−5℃のチルド温度帯で低温管理することが要求される食品であると定義している場合もあり、更に、品質保持上では0℃に近い状態が望まれるとしている場合もある。チルド食品としては、チルド流通する食品の全てが含まれるが、例えば、寿司、おにぎり、米飯弁当類、麺類、パスタ、皮物(ぎょうざの皮、シュウマイの皮等)、サンドウィッチ類、和洋菓子、漬物、総菜類、液体スープ・タレ、カット野菜、カットフルーツなどが挙げられる。
天然抗菌物質や日持向上効果のある食品添加物としては、トウガラシ抽出物、ペクチン分解物、ホップ抽出物、プロタミン、ポリリジン、ナイシン、卵白リゾチーム、甘草抽出物などの天然物由来の添加物;ベタイン、グリシン、アラニンなどのアミノ酸系添加物;乳酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、グルコン酸などの有機酸及びこれらの無機塩;低級脂肪酸エステル、シュガーエステル、ビタミンB1ラウリル硫酸塩;などがある。いずれも食品添加物規格品を用いることが好ましい。
1.酢酸が酢酸ナトリウム含有醸造酢の風味に及ぼす影響(その1)
(1)酢酸ナトリウム含有醸造酢の調製
酸性中和の中身、すなわち中和により生成した酢酸ナトリウム(以下ナトリウムを「Na」と略記する)の味に、少量の酢酸が酢酸Na含有醸造酢の風味に及ぼす影響について詳細に検討を行った。酸度30、20、15、10%と4段階の高酸度醸造酢を用いた。具体的には、酸度20%品は内堀醸造(株)の醸造酢スーパービネガー20(商品名、酸度20%)、酸度15%品はキューピー醸造(株)の醸造酢HDV(商品名、酸度15%)、酸度10%品はキューピー醸造(株)の醸造酢DV(商品名、酸度10%)を用いた。酸度30%品は20%品を凍結濃縮して調製した。炭酸水素Naの溶解性が高まるように20%醸造酢を使用した時は40℃に加温して参考例1〜10の調製に用いた。また30%の高酸度醸造酢を用いたときには醸造酢を45℃に加温した。
表1は20%高酸度醸造酢を部分中和して、食品用日持向上剤として参考例1〜10を調製したものである。表1の見方を説明する。参考例1の場合、酢酸濃度1%とは、20%醸造酢の1%すなわち100gの醸造酢中の0.2gの酢酸が残るように中和する。すなわち20−0.2=19.8gの酢酸を中和に回すことになる。19.8gの酢酸は19.8/60 =0.33モルであり、この酢酸を中和するのに0.33モル(27.7g)の炭酸水素Naを使う。従って中和により0.33モルの酢酸Na(27.1g)ができる。なお、醸造酢中の酸度含量は、酸度と濃度がほぼ一致するため、参考例での計算は濃度表示で行った。
0.2gの酢酸と27.1gの酢酸Naの比率をみたところ、0.2/27.1=0.007であった。参考例1〜10では、20%醸造酢100gあたり酢酸が0.2〜3.6g残るように中和した。生成した酢酸Naの範囲は27〜22%であった。
(2)官能検査
表2は参考例1〜10までの調製品について、白粥に添加して官能検査を行ったものである。白粥の調製方法は以下の通りである。すなわち、ご飯700gに水1000gを加え、鍋にて15分間加熱した。粗熱をとったあとに、100gずつ小分けし、参考例1〜10の食品用日持向上剤を0.6重量%ずつ上乗せ添加し良く攪拌した。なお、予備試験により、0.6%が適当と思われたので0.6%を採用した。官能検査は酢酸および酢酸ナトリウムによる酸味とエグ味に対して評価を行い、採点法(0点;感じない、1点;注意すれば感じる、2点;少し感じる、3点;はっきりと感じる)にて各参考例の評価を行った。パネラー10名に対して官能検査を行い、その採点結果の平均値を−、±、+に変換して表2に示した。また、総合評価は、パネラー10名の酸味及びエグ味の採点結果の平均値が共に2.0点未満の場合は合格品として「可」、酸味及びエグ味の採点結果の平均値どちらか一方または共に2.0点以上の場合は不合格品として「不可」を表した。
参考例4〜9までの調製品が、酸味、エグ味とも好ましいもの(可)であった。すなわち中和後の酢酸濃度は1.2〜3.2%、酢酸Na濃度は26〜23%の範囲にあった。本発明者らは中和後の残存酢酸と中和生成された酢酸Naの比率に注目したところ、総合評価が可の調製品は酢酸/酢酸Naの比率が0.05〜0.14の範囲にあった。
2.酢酸が酢酸Na含有醸造酢の風味に及ぼす影響(その2)
(1)酢酸Na含有醸造酢の調製
20%高酸度醸造酢を用いて造った酢酸Na含有醸造酢の調製と同じ手法で、今度は15%高酸度醸造酢を用いて酢酸Na含有醸造酢を調製した。調製データを参考例11〜20に、表3として示す。
(2)官能検査
表4は、表3に基づいて作った酢酸Na含有醸造酢の官能検査の結果である。官能検査は1(2)と同様の手法で行った。参考例11〜20までの調製品の中で、酸味、エグ味とも好ましかったもの(可)は参考例14〜19までであった。すなわち中和後の酢酸濃度は0.9〜2.4、酢酸Na濃度は19〜17%の範囲にあった。可の調製品の、中和後の残存酢酸と中和生成された酢酸Naの比率(A/B)は0.05〜0.14の範囲にあった。
3.酢酸が酢酸Na含有醸造酢の風味に及ぼす影響(その3)
(1)酢酸Na含有醸造酢の調製
20%高酸度醸造酢を用いて造った酢酸Na含有醸造酢の調製と同じ手法で、今度は10%高酸度醸造酢を用いて酢酸Na含有醸造酢を調製した。参考例21〜26までの調製データを表5に示す。
(2)官能検査
表6は、表5に基づいて作った酢酸Na含有醸造酢の官能検査の結果である。官能検査は1(2)と同様の手法で行った。参考例21〜26までの調製品の中で、酸味、エグ味とも好ましかったもの(可)は参考例22〜25までであった。すなわち中和後の酢酸濃度は0.6〜1.6%、酢酸Na濃度は13〜12%の範囲にあった。可の調製品のA/B比は0.05〜0.14の範囲にあった。
4.酢酸が酢酸Na含有醸造酢の風味に及ぼす影響(その4)
(1)酢酸Na含有醸造酢の調製
また、30%高酸度醸造酢についても同様の検討を行った。中和には炭酸Naを用いた。まず、30%高酸度醸造酢100gを45℃に加温し、炭酸Na24.9gを徐々に加えて溶解し、100gの高濃度酢酸Na含有醸造酢を得た。酢酸濃度は1.8%、酢酸Na濃度は38.5%、A/B比は0.05であり、酸味、エグ味は無かった(参考例27)。このものには酢酸Naが約39%含まれており、常温では結晶が析出するので水で2倍希釈して保存した。
同様に30%高酸度醸造酢100gを45℃に加温し、炭酸Naを22.3g添加中和して、100gの高濃度酢酸Na含有醸造酢を得た。酢酸濃度は4.8%、酢酸Na濃度は34%、A/B比は0.14であり、表2の官能検査と同様に評価したところ、酸味が少し感じられたが、エグ味はなく、総合して可であった(参考例28)。これも酢酸Naの結晶化を防ぐために、水で2培希釈して保存した。
5.表1〜表7のまとめ
表8に表1〜7までの結果をまとめた。本試験は高酸度醸造酢の中和によって生ずる高濃度酢酸Na含有醸造酢のエグ味の改良を試みたものである。10〜30%の高酸度醸造酢(10、15、20、30%の4水準の高酸度醸造酢)で高濃度酢酸Na含有醸造酢を調製し、官能検査を行った。また、残存酢酸(A)と生成酢酸Na(B)の比率について調べた。
参考例1〜28までの調製と官能検査を通じて明らかになったことは、(1)少量の酢酸が酢酸Naのエグ味のマスキング効果を有していた:(2)酢酸Naのエグ味の許容範囲がA/B比で0.05以上であった:(3)酸味の許容範囲はA/B比で0.14以下であった。醸造酢の濃度に関係なく、エグ味と酸味の両面から、「可」の範囲はA/B比で0.05〜0.14であった。
すなわち本発明の高濃度酢酸Na含有醸造酢は、10〜30%の高酸度醸造酢の中和に際し、少量の酢酸を残すこと、その量は残存酢酸と生成酢酸Naの濃度比が0.05〜0.14の範囲であった。なお、高酸度醸造酢の酸度が10%未満又は30%を超える場合であっても、酢酸/酢酸Naの比率が0.05〜0.14の範囲内であれば、発明の目的が達成されると考えられる。
6.高濃度粉末酢酸Na含有醸造酢の製造
45℃に加温した30%高酸度醸造酢3kgに炭酸Naの762gを徐々に加え、溶解させた。加温したままで、スプレードライヤーの実験機(東京理科機械株式会社SD−1010型)で噴霧乾燥し900gの粉末醸造酢が得られた。なお、30%高酸度酢は、酢酸酸度20%の高酸度酢を凍結濃縮して得た。
7.高濃度酢酸Na含有醸造酢の日持向上効果の検討(標準寒天培地)
以下に高濃度酢酸Na含有醸造酢の単独使用の例を、実際の食品で実施例、比較例として実施した。高濃度酢酸Na含有醸造酢の日持向上効果は、含まれる酢酸Naに依存しているので、その効果は限定的である。そこで、有効性を発揮しやすいと思われた澱粉系の加工食品について、またチルド(0〜10℃)流通食品についてその効果を検証した。
澱粉系の食品については、澱粉系の食品が耐熱性芽胞菌であるバチルス・ズブチルスやバチルス・セレウスの汚染度が高く、これらの微生物に対して、酢酸Naや酢酸がきわめて有効に作用するからである。バチルス・セレウスに対する参考例18の有効性を示す抗菌性の一例を表9に示す。
チルド流通食品については、グラム陰性の低温細菌がチルド流通食品の主要増殖菌であり、これらの微生物に対して酢酸Naや酢酸が有効に作用する。
8.チルド食品の保存試験(1)(実施例1〜4、比較例1〜3)
炊飯後のご飯200g、みじん切りの玉ネギ60g、細切れにしたベーコン60g、料理酒15g、醤油6g、塩1g、コショウ0.1gを用意し、玉葱とベーコンを軽く炒めておき、鉄製の中華鍋を強火にかけ、そこに油を入れて全体になじませた。割りほぐした卵を鍋に注ぎ入れ、すぐにご飯を入れて中華ヘラなどで手早くかき混ぜ、ご飯がパラパラにほぐれたらあらかじめ炒めた玉葱とベーコンとを加えさらによくかき混ぜ、塩、コショウ、料理酒、醤油を入れ、最後に参考例1〜10の調製品を0.8重量%加えて充分に混合してチャーハンを得た。
10℃における保存試験の一般生菌数の推移を表10に示す。官能検査は1(2)と同様の手法で行った。実施例1〜4と比較例1〜3の結果からわかるように、比較例1と3はエグ味が出てしまい、比較例2は酸味が出てしまう結果となり、さらに微生物的な保存効果は比較例1、3が劣る結果となった。総合評価で可の参考例6、7、8、9を使用した実施例1、2、3、4はいずれも保存性に優れ、味も可であった。特に実施例3、4はチルド流通で2週間保存できた。
9.チルド流通食品の保存試験(2)(実施例5〜8、比較例4〜6)
参考例11〜20を用いて白粥の保存試験を行った。白粥の調製方法は耐熱性の袋に洗米した米40gと水250gと各参考例の調製品を1.2g入れ、シールをして、湯煎(90〜95℃)で4時間加熱した後冷却し、10℃で保存試験を行い、目視と官能検査で評価した。官能検査は1(2)と同様の手法で行い、試作翌日に白粥を再加熱して酸味とエグ味の有無を評価することにより行った。また、目視により表面の変化やネトの出具合を観察し、開封して腐敗臭が発生した日を保存日数とした。
結果を表11に示す。試験結果からわかるように比較例4と6はエグ味が認められ、比較例5ははっきりと酸味を感じた。実施例8はわずかに酸味を感じたが許容範囲内であり、それ以外の実施例5〜7は酸味とエグ味は感じられなかった。また、保存性に関しても実施例5〜8は優れたものであった。本発明品はチルド流通温度帯で14〜22日保存でき、評価出来る結果であった。
10.常温温度帯における澱粉系食品、茹でうどんの保存試験(実施例9〜11、比較例7〜9)
参考例21〜26の調製品を小麦粉に対して各1.5重量%を練水に加えた。なお小麦粉に対して加水40重量%、食塩2重量%で常法により生うどんを試作した。各生うどんは10倍量のお湯でそれぞれ14分間茹で、水洗いを行い、よく水を切ってから100gずつ袋に入れたものを各群10袋作り、25℃で保存した。保存性は目視でネトやカビ、酵母が認められたものは開封して臭いで確認し、試作日からネトやカビ、酵母が認められるまでの日数を保存日数として表した。官能検査は1(2)と同様の手法にて行い、試作当日、試作4時間後に茹でうどんを食し、酸味とエグ味の有無を評価することにより行った。
表12の結果からわかるように比較例7、8は食味で劣り、比較例9は食味が良いが保存性にやや劣った。実施例9〜11は保存性、食味とも良好であった。本発明品は澱粉系の代表的な食品であるうどんでの保存効果が確認できた。
11.各種食品添加物との併用試験(実施例12〜18、比較例10〜15)
(1)酢酸Na含有醸造酢の調製
30%高酸度醸造酢100gを45℃に加温し、炭酸Na24.5gを徐々に加えて溶解し、100gの高濃度酢酸Na含有醸造酢を得た。酸度は2.4%、酢酸Na濃度は37.7%、A/B比は0.064であり、酸味、エグ味は無かった(参考例29)。このものには酢酸Naが約38%含まれており、常温では結晶が析出するので水で2倍希釈して保存した。
(2)厚焼き玉子の保存試験
本発明品とグリシンとの併用効果を検討するため、食品用日持向上剤を厚焼き玉子に添加して試験した。全卵730g、だし汁161g、砂糖40g、塩4gの処方で、pHを醸造酢で6.3に合わせてから、3試験区に分け、比較例10と実施例13にグリシンを添加して、常法により厚焼き玉子を試作し、小分け包装後、湯殺菌して、10℃で保存し、一週間ごとに一般生菌数を測定した。また、ホップ抽出物、ポリリジン、卵白リゾチーム、乳酸ナトリウム、シュガーエステル(P-1570)についても、グリシンと同様の要領で保存試験を行った。
保存試験の結果を表14に示す。本発明品と各種添加物の併用効果が認められた。なお、1(2)と同様の手法にて官能検査を行ったが、酸味、エグ味についてはいずれの厚焼き玉子も感じられず問題ないものであった。

Claims (8)

  1. 酸度が10〜30%の範囲内にある高酸度醸造酢に含まれる酢酸を無機のナトリウム塩で部分中和してなる、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢であって、
    酢酸/酢酸ナトリウムの比率が質量比で0.05〜0.14の範囲内であることを特徴とする、高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢。
  2. 前記無機のナトリウム塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢。
  3. 前記高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢が液状である、請求項1又は2に記載の高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢。
  4. 前記高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢が粉末状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢からなることを特徴とする、食品用日持向上剤。
  6. 前記食品が澱粉系の加工食品である、請求項5に記載の食品用日持向上剤。
  7. 前記食品がチルド食品である、請求項5に記載の食品用日持向上剤。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高濃度酢酸ナトリウム含有醸造酢を食品に添加することを特徴とする、食品の日持向上方法。
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