以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下説明は、図中に矢印で示す上下、左右、前後を使用する。なお、図1に示すテーブルこんろ1(以下、単に、こんろ1と称する。)は、テーブルこんろであるが、ビルトインこんろ等であってもよい。
図1および図2を参照して、こんろ1の構造について説明する。こんろ1は、器具本体を構成する筐体2と、トッププレート3とを備える。筐体2は、上面に開口部21(図6参照)を備えた略直方体状に形成された金属製である。筐体2の内部には、左右一対のガスバーナ5,5が配置されている。トッププレート3は、板金をプレス加工することで形成される。トッププレート3の少なくとも上面には、煮こぼれした液体等による汚れの固着を防止するため、ホーローによるコーティングが施されている。トッププレート3は、筐体2の開口部21を閉塞して、筐体2の上部に固定されている。トッププレート3には、左右一対の略円形のバーナ開口4,4が形成されており、トッププレート3が筐体2の上部に設置されることで、ガスバーナ5が筐体2側から上方に突出して、各バーナ開口4の中央に臨む。ガスバーナ5,5の各周囲には、五徳50,50がそれぞれ配置されている。五徳50,50の各上部には、鍋、フライパン等を含む調理器具等の被加熱物(図示せず)が載置される。
ガスバーナ5は、筐体2の内部に配置されたバーナ本体5D(図5参照)と、バーナ本体5Dの上部に設置され、外周部に多数の炎口5Aが形成されたバーナヘッド5Bとを備える。炎口5Aは、バーナ開口4,4よりも上方に配置されるので、バーナヘッド5Bは、燃料ガスの燃焼に必要な空気を十分に確保できる。バーナヘッド5Bの中央には、内部にサーミスタを格納し、鍋底温度等、被加熱物の温度を検知するための鍋センサ5Cが設けられている。図示しないが、バーナヘッド5B後方の炎口5A近傍には、放電による点火を行うための点火電極および火炎の有無を検知するための熱電対が設けられている。
筐体2の正面中央には、グリル扉24が設けられている。グリル扉24の前面にはガラス窓部25が設けられている。こんろ1の使用者は、ガラス窓部25を介して筐体2の内部に設置されるグリル庫20(図6参照)内部の被調理物の焼け具合等を視認できる。ガラス窓部25の下方には、取っ手26が前方に突出して設けられている。こんろ1の使用者は、取っ手26を把持してグリル扉24を引き出すことで、グリル庫20を開閉できる。トッププレート3の後方には、複数の排気孔を備える排気口カバー8が設置されている。排気口カバー8は、後述のグリル排気口7(図2参照)を上側から覆うカバー部材である。
グリル扉24の右側には、点火スイッチ11,12、火力調節つまみ16,17等がそれぞれ設けられている。点火スイッチ11は、グリル扉24の右側に隣接して設けられ、右側のガスバーナ5の点火/消火の操作を行う。点火スイッチ11が押下操作されると、バーナ本体へ一次空気と燃料ガスが供給され、混合気となってバーナヘッド5Bの炎口5Aから流出する。同時に、筐体2の内部に設けられた図示しないコントローラが点火電極を放電させて混合気に点火し、バーナヘッド5Bの外周部に火炎が形成される。また、ガスバーナ5が点火されている状態で点火スイッチ11が操作されると、ガスバーナ5は消火される。点火スイッチ12は、点火スイッチ11の右隣に設けられ、グリル庫20の内部に設けられた上バーナおよび下バーナ(図示せず)の点火/消火の操作を行う。
火力調節つまみ16は、点火スイッチ11の上方に設けられ、略左右方向におけるスライド操作に応じて、右側のガスバーナ5の火力を調節する。火力調節つまみ17は、点火スイッチ12の上方に設けられ、上火用調整つまみ17Aと下火用調整つまみ17Bとを上下に備える。上火用調整つまみ17Aおよび下火用調整つまみ17Bは、グリル庫20の上バーナおよび下バーナの火力調節を行う。グリル扉24の左側には、点火スイッチ13、火力調節つまみ18、電池ケース14等がそれぞれ設けられている。点火スイッチ13は、グリル扉24の左側に隣接して設けられ、左側のガスバーナ5の点火/消火の操作を行う。火力調節つまみ18は、点火スイッチ13の上方に設けられ、左側のガスバーナ5の火力調節を行う。電池ケース14は、点火スイッチ13の左隣に設けられ、こんろ1の電源として、例えば二つの乾電池(図示せず)を格納する。
図2を参照して、トッププレート3およびトッププレート3におけるバーナ開口4,4の周辺部の構造について説明する。トッププレート3は、筐体2の上面開口部に対応する大きさの矩形状に形成されている。トッププレート3の上面31における後方には、左右に延びる略長方形状の孔部であるグリル排気口7が設けられている。グリル排気口7は、前述のグリル庫20と連通して、グリル庫20内部の排気を行う。グリル排気口7の左右の両側には、排気口カバー8を位置決めするための複数の孔部7Bが設けられている。
トッププレート3の外縁には、上面31から延設された板金が筐体2上部の外周に沿うように下方に折り返された外周部39が設けられている。トッププレート3は、筐体2の上部に配置され、外周部39の複数の所定位置においてねじ止めされて筐体2に固定される。
トッププレート3の上面31における略中央には、バーナ開口4,4を含み、上面31よりも一段下方に窪んだ部分である中央凹部32が設けられている。本実施形態では、中央凹部32は、板金をプレス加工することで、トッププレート3に一体に成型されている。中央凹部32は、上面31よりも下方に設けられているので、例えばこんろ1の使用において生じた煮こぼれを受け止めることができる。これにより、こんろ1は、煮こぼれが上面31に流出したり、上面31および外周部39を介して筐体2に向けて流出したりすることを防止できる。こんろ1は、トッププレート3を筐体2に固定するためのねじ止め部分を上面31および中央凹部32に設けていないので、上側から見たトッププレート3の美観が保たれる。また、こんろ1は、煮こぼれを直接に受けにくい外周部39にねじ止め部分を設けているので、ねじ孔の隙間を介して煮こぼれ等の液体が浸入し難く、トッププレート3の下面および筐体2の内部に汚れや錆等が生じ難い。
中央凹部32において、バーナ開口4,4およびその周辺部は、それぞれ同じ構成を備える。バーナ開口4の周縁部には、五徳装着部33が設けられている。五徳装着部33は、トッププレート3に五徳50を配置するために設けられる部位である。また、五徳装着部33は、バーナ開口4の周囲を上方から覆うことで、煮こぼれがバーナ開口4とガスバーナ5との間の隙間から筐体2内へ浸入することを防止している。本実施形態では、五徳装着部33は、板金のプレス加工によってトッププレート3に一体に成型されている。
五徳装着部33は、円環部332、電極挿通部334、熱電対挿通部335、凹部336,337,338を備える。円環部332は、中央凹部32に対して上方に隆起してバーナ開口4の周縁部を取り囲む円環状の平面部である。
電極挿通部334および熱電対挿通部335は、点火電極および熱電対を円環部332の下面側から上面側へ挿通させるための部位であり、前述の点火電極および熱電対の設置位置に対応して設けられている。電極挿通部334および熱電対挿通部335はバーナ開口4の後側の部分を、円環部332の後側および右斜め後側のそれぞれに向けて広げられた形状で設けられた、バーナ開口4に連続した凹みである。
凹部336,337,338は、円環部332の外周部に嵌め合わされる五徳リング51に設けられている後述の三つの突起部6(図3参照)のそれぞれを受け入れて、五徳装着部33に対して五徳50を位置決めするための部位である。凹部336,337,338のそれぞれは、円環部332の径方向外側から内側へ向けて窪んだ平面視略U字形状に形成されている。凹部336,337,338は、円環部332において、バーナ開口4の中心を基準に周方向に120度ずつ間隔を置いて配置されており、凹部336は、円環部332の正面に配置されている。
図3を参照して、五徳50の構造について説明する。五徳50は、五徳リング51、五徳爪52A〜52Fを主に備える。五徳リング51は、耐熱性を有する金属線材による円環形状である。五徳リング51は、五徳50を中央凹部32に載置するときに、円環部332の外周部を囲むようにして五徳装着部33に装着される部分である。
五徳爪52A〜52Fは、五徳リング51の内側に向けて開口する略U字形状の、耐熱性を有する金属製である。五徳爪52A〜52Fは、五徳リング51の中心を基準に五徳リング51に放射状に立設されて、五徳50に載置される被加熱物を下側において支持する。五徳爪52A〜52Fは、五徳リング51の中心を基準に周方向に60度ずつ間隔を置いて配置される。このため、五徳爪52Aと五徳爪52D、五徳爪52Bと五徳爪52E、五徳爪52Cと五徳爪52Eのそれぞれが、五徳リング51の中心を基準に五徳リング51において対向配置される。
五徳爪52A〜52Fは、それぞれの開口部側における下側の端部において五徳リング51に取り付けられている。五徳爪52A,52C,52Eの五徳リング51に対する取付位置に対応する端部には、五徳リング51の内縁部511から五徳リング51の径方向内側に向けて突出する突起部6が形成されている。五徳爪52A〜52Fの五徳リング51の径方向外側に配置される側の端部の下端部53は、五徳リング51の下縁部と上下方向において略同じ位置に配置される。
図4を参照して、五徳装着部33に対する五徳50の装着について説明する。五徳リング51が円環部332の外周部に装着されることで、五徳50がトッププレート3の中央凹部32における五徳装着部33に装着される。このとき、五徳リング51の下縁部および五徳爪52A〜52Fの下端部53が中央凹部32の上面に接した状態で、五徳50が中央凹部32に載置される。
五徳リング51が五徳装着部33に装着されると、五徳爪52A,52C,52Eが、凹部336,337,338のそれぞれに嵌まり、五徳50は、五徳装着部33に対して回転しないように固定される。ここで、凹部336は五徳装着部33の正面側に配置されているので、凹部336に嵌まる突起部6に対応する五徳爪52Aは、筐体2に対して正面側を向くように配置される。このため、こんろ1は、五徳50に載置される被加熱物を、筐体2の正面側に、より傾きにくくできる。なお、本実施形態では、五徳50の三つの突起部6および凹部336,337,338が、五徳リング51および五徳装着部33のそれぞれにおいて周方向に120度間隔で配置されている。このため、五徳リング51は120度回転される毎に、五徳装着部33に対して装着される。
図5を参照して、トッププレート3全体の形状について説明する。なお、図5では、トッププレート3全体の形状をわかりやすく示すため、中央凹部32における五徳装着部33の図示を省略している。トッププレート3の中央凹部32は、中央凹部32の左右の端部Pの上下方向における位置と、中央凹部32の中央部Qとの上下方向における位置とが異なるように形成されている。前述のように、中央凹部32は、トッププレート3に一体に成型されており、中央凹部32の左右の端部Pと中央部Qとは一枚の板金によって連続して形成されている。このため、中央凹部32は、中央部Qが最も下方になるように、なだらかに湾曲した形状を有している。中央凹部32の左右の端部Pと中央部Qとの上下方向における距離をL1とする。
トッププレート3の中央凹部32は、バーナ開口4,4およびバーナ開口4の周縁部に設けられた五徳装着部33を含む部分である。バーナヘッド5Bにおいて燃料ガスが燃焼されると火炎が形成され、火炎による熱が発生する。バーナヘッド5Bに近接するバーナ開口4,4および五徳装着部33には、火炎による熱が伝導しやすい。五徳装着部33に火炎の熱が伝導すると、五徳装着部33の温度が上昇する。また、五徳装着部33は中央凹部32とともに一体成型されており、五徳装着部33に伝導した熱は、中央凹部32にも伝導しやすい。板金製の五徳装着部33および中央凹部32は、ともに比較的高温になることがある。この場合、温度上昇した板金が熱膨張することで、五徳装着部33および中央凹部32の形状に歪み(以下、「熱歪み」という。)が生ずることがある。
本実施形態では、中央凹部32は中央部Qを中心に下方に湾曲した形状に予め形成されているので、中央凹部32が熱膨張した場合、中央凹部32の熱歪みは、中央凹部32をさらに下方に撓ませる方向に発生しやすい。即ち、五徳装着部33を含む中央凹部32に熱歪みが発生した場合、中央凹部32は上方よりも下方に変位しやすい。このようにして、こんろ1は、五徳装着部33等のバーナ開口4の周縁部が、熱歪みによってバーナヘッド5Bの炎口5Aよりも上方に変位し難くできる。こんろ1は、トッププレート3のうち、少なくとも中央凹部32を下方に湾曲した形状にすることで、ガスバーナ5の火炎の熱の影響を特に受けやすい中央凹部32の熱歪みによる変位が下方に発生するように規制できる。仮に、五徳装着部33が上方に変位して炎口5Aを上側から覆うと、燃料ガスの燃焼に必要な空気が炎口5A近傍において不足する可能性があるが、こんろ1はこのような事態を防止して、ガスバーナ5の燃焼性能を良好に保つことができる。従って、こんろ1は、五徳装着部33を含む中央凹部32がガスバーナ5の火炎の熱による影響を受けても、こんろ1の使用に不具合が生ずることを防止し、使用者に安全にこんろ1を使用させることができる。
なお、中央凹部32に発生する熱歪みの度合いは、トッププレート3に使用する板金の剛性および厚み等、また、ホーロー等による表面処理の種類等によって様々である。このため、上述の距離L1の長さは、中央凹部32の熱歪みを下方に規制するために予め行った実験結果等に応じた所定の長さとしてよい。
図6を参照して、筐体2の内部の構造について説明する。筐体2からトッププレート3を取り除くと、筐体2における開口部21の内側に、ガスバーナ5,5、グリル庫20、排気部29、グリル庫カバー28、二つの第一規制部71および二つの第二規制部72等が備えられている。
ガスバーナ5,5は、フレーム部材22,22に対してねじ止めによって固定されている。フレーム部材22,22は、筐体2の左部および右部から開口部21の内側へ向けて延び、筐体2の内部にガスバーナ5,5のバーナ本体5Dを固定するための骨組である。グリル庫20は、左右一対のガスバーナ5,5に挟まれるようにして、筐体2の略中央に設置されている。図示しないが、グリル庫20の内部には被調理物が載置される焼網が設けられており、焼網の上方および下方に、前述の上バーナおよび下バーナがそれぞれ設けられている。排気部29はグリル庫20の後面側に配置され、グリル庫20の内部と前述のグリル排気口7とに連通してグリル庫20内部の燃焼排気をこんろ1の外部へ排出する。
グリル庫カバー28は、上下方向においてグリル庫20とトッププレート3との間に位置に配置され、グリル庫20の上側を覆う金属製の板状である。グリル庫カバー28は、グリル庫20の熱を受け止めて、グリル庫20の熱がトッププレート3に直接伝導することを防止できる。
ここで、前述のように、トッププレート3の中央凹部32に熱歪みが発生した場合、中央凹部32は下方に向けて変位することがある。二つの第一規制部71および二つの第二規制部72は、熱歪みによって下方に変位した中央凹部32に対して、中央凹部32の下面側から当接して、中央凹部32が第一規制部71および第二規制部72よりさらに下方へ変位することを規制する部材である。
二つの第一規制部71は、グリル庫カバー28の上面281に対して上方に隆起して設けられる部分であり、グリル庫カバー28の左部および右部に一つずつ配置される。二つの第一規制部71は、左右方向に所定の幅を有し、グリル庫カバー28の前後方向における略中央において前後方向に延びる平面視略長方形状である。二つの第一規制部71の上下方向における位置は、グリル庫カバー28の上面281とトッププレート3の中央凹部32の下面との間の所定の位置である。第一規制部71の前後方向の長さは、バーナヘッド5Bの前後方向の長さよりも長い。左側の第一規制部71は左側のガスバーナ5の右方に、右側の第一規制部71は右側のガスバーナの左方に、それぞれ配置されている。
二つの第二規制部72は、フレーム部材22,22のそれぞれの上側において上方に突出して設けられる部分である。二つの第二規制部72は、上方へ突出する段部を形成するように所定の幅で折り曲げられた金属製の板がフレーム部材22,22に固定されてなる。二つの第二規制部72は、左右方向に所定の幅を有し、筐体2の左部および右部において前後方向に延びる平面視略長方形状である。二つの第二規制部72の上下方向における位置は、二つの第一規制部71よりもわずかに上方であり、且つ、トッププレート3の中央凹部32の下面よりも下方である。なお、中央凹部32の形状が中央部Qを中心に下方に湾曲した形状のため、筐体2において第二規制部72よりも内側に配置される第一規制部71の方が、第二規制部72よりも低い位置に配置されている。第二規制部72の前後方向の長さは、第一規制部71の前後方向の長さと略同一である。左側の第二規制部72は、左側のガスバーナ5の左方に配置されている。右側の第二規制部72は、右側のガスバーナの右方に配置されている。
左側の第一規制部71および左側の第二規制部72は、左側のガスバーナ5を左右に互いに挟むように配置されている。右側の第一規制部71および右側の第二規制部72は、右側のガスバーナ5を左右に互いに挟むように配置されている。バーナヘッド5Bから第一規制部71までの左右方向の距離は、バーナヘッド5Bから第二規制部72までの左右方向の距離よりも若干長い。
トッププレート3の中央凹部32の下面よりも下方において、上述のように二つの第一規制部71および二つの第二規制部72が配置されるので、熱歪みによって中央凹部32が第一規制部71および第二規制部72よりも下方に変位することが防止される。中央凹部32には五徳装着部33が設けられているので、こんろ1の使用時における中央凹部32は、五徳50および五徳50に載置された被加熱物の重みがかかることで撓んで、より下方に変位しやすい状態になっている。また、バーナヘッド5Bにおける火炎の熱を受けて板金が高温になった中央凹部32は、火炎の熱を受ける前よりも剛性が低下する。この場合、五徳50および五徳50に載置された被加熱物の重みによっては、五徳装着部33およびその近傍が、より下方へ変位する可能性がある。仮に、五徳爪52A〜52Fの上端部がバーナヘッド5Bよりも下方に位置するまで五徳装着部33が下方に変位すると、被加熱物の下部(例えば鍋底)とバーナヘッド5Bとが接触し、五徳50による被加熱物の支持が不安定になる可能性がある。こんろ1においては五徳装着部33を含む中央凹部32の下方への変位範囲が第一規制部71および第二規制部72によって所定範囲に規制されているので、こんろ1の使用におけるこのような事象の発生が防止される。従って、こんろ1は、五徳50によって被加熱物を安定して支持できる。
また、中央凹部32および五徳装着部33が下方に変位した状態において、五徳50の上から被加熱物が取り除かれると、中央凹部32が元の形状に戻ろうとして、板金の撓みが急激に復元されることがある。被加熱物の荷重による板金の撓みの復元度合によっては、板金が元の形状に戻る反動に伴って異音を発することがある。ここで、こんろ1は、第一規制部71および第二規制部72を備えるので、熱歪みによる中央凹部32の下方への変位が所定範囲内に規制される。このため、こんろ1は、中央凹部32に被加熱物の荷重による撓みが生じても、形状復元時に異音を発し難いので、こんろ1の使用者に不快感を与えることなくこんろ1を使用させることができる。
前述したように、中央凹部32に発生する熱歪みの度合い、および被加熱物の荷重による撓みの度合いは、トッププレート3の形成材料および形成手法によって様々である。このため、二つの第一規制部71および二つの第二規制部72と中央凹部32の下面との間のそれぞれの距離は、こんろ1を安全に使用するために予め行った実験結果等に応じた所定の距離としてよい。
図7を参照して、平面視における五徳50、第一規制部71および第二規制部72の配置の関係について説明する。図7は、右側のガスバーナ5に対応する五徳装着部33に装着された五徳50と、右側のガスバーナ5を左右に挟んで配置されている右側の第一規制部71および第二規制部72のそれぞれの配置を模式的に示している。なお、図7では、五徳50、第一規制部71および第二規制部72の配置をわかりやすく示すため、ガスバーナ5、トッププレート3および五徳装着部33の図示を省略している。
第二規制部72は、平面視において五徳リング51と重なる位置に配置される。中央凹部32のうち平面視において五徳リング51と重なる位置は、五徳50および五徳50に載置された被加熱物の重みが直接加わりやすく、こんろ1の使用時に熱歪みおよび変形が起こりやすい部分である。第二規制部72は、このような中央凹部32の熱歪みおよび変形が起こりやすい部分の真下の位置に配置されている。このため、中央凹部32のこの部分に熱歪みおよび変形が生じた場合には、第二規制部72は、当該位置の真下の位置から当接して中央凹部32を支持し、第二規制部72よりも下方に変位しない様に規制できる。従って、こんろ1は、五徳リング51と重なる位置における中央凹部32の熱歪みによる下方への変位を効果的に防止できる。これにより、五徳50が中央凹部32において傾く可能性が低減されるので、こんろ1の使用者は、こんろ1を安心して使用できる。なお、本実施形態のように、第二規制部72が前後方向に延びる形状を有することは、五徳リング51が前後方向に延びる部分に対して広く重なるように第二規制部72を配置できる点において好ましい。
また、第一規制部71は、平面視において五徳リング51の外側であり、且つ、五徳爪52Eと五徳爪52Fとの間に挟まれる領域である領域Sに重なる位置に配置されている。五徳爪52E,52Fは、平面視において第二規制部72に近接して配置される五徳爪52B,52Cに対して、五徳リング51の中心を基準にして五徳リング51において対向配置される五徳爪である。五徳リング51の下縁部および五徳爪52A〜52Fの下端部53は、五徳50および五徳50に載置された被加熱物の重みがかかる部分である。本実施形態では、平面視で五徳爪52B,52Cに近接する位置に第二規制部72が配置されている。仮に第一規制部71が設けられていない場合、中央凹部32に熱歪みが発生すると、五徳爪52E,52Fが配置される側を下方にして五徳リング51が傾き、五徳爪52E,52Fの配置される側の五徳リング51の下縁部および五徳爪52E,52Fの下端部53に当接する中央凹部32が、下方へ変位する可能性がある。五徳リング51の下縁部および五徳爪52E,52Fの下端部53に中央凹部32が接する部分が下方へ変位するときには、これらの部分に連設されている中央凹部32の領域Sも引っ張られて下方へ変位する可能性がある。
第一規制部71は、平面視において領域Sに重なる位置に配置されるので、熱歪みによって下方に変位しようとする中央凹部32の領域Sに対応する部分を、当該部分の下面側から支持できる。これにより、第一規制部71は、五徳リング51および五徳爪52E,52Fの下端部53の近傍位置である領域S内において、中央凹部32が第一規制部71よりも下方へ変位しないように規制できる。特に、本実施形態において、第一規制部71は、平面視において五徳爪52E,52Fの下端部53に重なる位置まで前後方向に延びている。このため、中央凹部32に五徳爪52E,52Fの下端部53が当接する部分に熱歪みおよび変形が生じた場合には、第二規制部72は、五徳爪52E,52Fの下端部53の真下の位置から当接して中央凹部32を支持できる。このように、第一規制部71は、平面視において五徳爪52E,52Fの双方の下端部53に重なる位置に配置されていることが好ましい。しかしながら、第一規制部71は、平面視で少なくとも領域Sに重なる位置に配置されていればよく、第一規制部71の配置が平面視において五徳爪52E,52Fに重なることは必須の構成ではない。第一規制部71の配置される位置に対応する領域S内の中央凹部32の下方への変位が規制されれば、五徳リング51の下縁部および五徳爪52E,52Fの下端部53に中央凹部32が接する部分が下方に大きく変位することが間接的に防止されるためである。従って、第一規制部71を平面視において領域Sに重なる位置に配置することで、こんろ1は、中央凹部32が下方へ変位することを防止し、五徳50が中央凹部32において傾く可能性を低減できる。
このような第一規制部71および第二規制部72は、五徳リング51の中心を左右に互いに挟むように配置されている。五徳リング51の中心にはガスバーナ5が配置される。仮に中央凹部32に熱歪みが発生しても、ガスバーナ5を挟んだ左右の両側で中央凹部32の下方への変位が規制されるので、五徳リング51は左右方向に傾きにくい。このため、こんろ1が使用されて中央凹部32に熱歪みおよび変形が生じても、ガスバーナ5に対して五徳リング51が左右に傾きにくいので、こんろ1の使用者は、安心してこんろ1を使用できる。
以上説明したように、本実施形態のこんろ1では、板金をプレス加工することでトッププレート3が形成される。トッププレート3に形成されるバーナ開口4,4およびバーナ開口4の周縁部は、バーナヘッド5Bに形成される火炎の熱の影響を受け、熱歪みが発生する場合がある。こんろ1では、トッププレート3のうち五徳装着部33を含む中央凹部32が、中央部Qを中心に下方に湾曲した形状に形成されている。このため、中央凹部32の熱歪みは、中央凹部32をさらに下方に撓ませる方向に発生しやすい。即ち、中央凹部32は、熱歪みによって下方に変位しやすい。このため、こんろ1は、五徳装着部33等のバーナ開口4の周縁部が、熱歪みによってバーナヘッド5Bの炎口5Aよりも上方に変位するような事象の発生を低減できる。従って、こんろ1は、中央凹部32がガスバーナ5の火炎の熱による影響を受けても、こんろ1の使用に不具合が生ずることを防止し、使用者に安全にこんろ1を使用させることができる。
トッププレート3の上面31における略中央には、バーナ開口4,4を含み、上面31よりも一段下方に窪んだ部分である中央凹部32が設けられている。このため、中央凹部32は、こんろ1の使用において生じた煮こぼれを受け止めて、煮こぼれが上面31に向けて流出したり、上面31および外周部39を介して筐体2に向けて流出したりすることを防止できる。また、こんろ1は、中央凹部32を、中央部Qを中心に下方に湾曲した形状に予め形成しているので、トッププレート3のうち、特にガスバーナ5の火炎の熱の影響を受けやすい中央凹部32の熱歪みの方向を下方に規制できる。これにより、こんろ1は、こんろ1の使用において、熱歪みによる不具合が生ずる可能性を低減できる。
第一規制部71および第二規制部72の上下方向における位置は、トッププレート3の中央凹部32の下面よりも下方の所定の位置である。第一規制部71および第二規制部72は、熱歪みにより中央凹部32が下方に変位した場合に、中央凹部32の下側から当接することで、中央凹部32が第一規制部71および第二規制部72よりもさらに下方へ変位することを規制できる。中央凹部32には五徳装着部33が設けられ、五徳装着部33に対して五徳50が装着される。仮に、五徳爪52A〜52Fの上端部がバーナヘッド5Bよりも下方に位置するまで五徳装着部33が下方に変位すると、五徳50による被加熱物の支持が不安定になる可能性がある。また、中央凹部32に熱歪みが生じている場合において、五徳50に載置されている被加熱物が五徳50から取り除かれると、被加熱物の荷重による中央凹部32の撓みが復元するとともに、中央凹部32が元の形状に戻る反動に伴って異音を発し、こんろ1の使用者を驚かすこともある。こんろ1では、第一規制部71および第二規制部72によって熱歪みによる中央凹部32の下方への変位が第一規制部71および第二規制部72よりも上方の所定の範囲に規制されるので、これらのような熱歪みに起因する事象、および被加熱物の荷重による撓みに起因する事象の発生は低減される。従って、使用者は、こんろ1の使用に際して不快感を抱きにくく、また、安全にこんろ1を使用できる。
第一規制部71および第二規制部72は、ガスバーナ5を左右に互いに挟む位置に配置される。このため、仮に中央凹部32に熱歪みが発生しても、ガスバーナ5を挟んだ左右の両側で中央凹部32の下方への変位が所定の範囲に規制される。第一規制部71および第二規制部72は、ガスバーナ5を互いに挟む位置の双方において、バーナ開口4の周辺部における中央凹部32が下方に変位することを規制するので、五徳リング51は左右方向に傾きにくい。
第二規制部72は、平面視において五徳リング51と重なる位置に配置されるので、五徳リング51と重なる位置における中央凹部32が、熱歪みによって第二規制部72よりも下方に変位しないように規制できる。これにより、五徳50が中央凹部32において傾く可能性が低減されるので、こんろ1の使用者は、こんろ1を安心して使用できる。
五徳リング51の下縁部および五徳爪52A〜52Fの下端部53は、五徳50および五徳50に載置された被加熱物の重みがかかる部分であるので、これらの部分に接する中央凹部32には熱歪みによって下方に変位することがある。また、五徳リング51の下縁部および五徳爪52A〜52Fの下端部53から連設される中央凹部32の領域Sに対応する部分も、熱歪みによって下方に変位する可能性がある。第一規制部71は、平面視において領域Sに重なる位置に配置されるので、五徳50が中央凹部32において傾く可能性を低減できる。
本実施形態において、こんろ1が、本発明の「こんろ」に相当する。ガスバーナ5が、本発明の「バーナ」に相当する。筐体2が、本発明の「筐体」に相当する。バーナ開口4が、本発明の「バーナ開口」に相当する。トッププレート3が、本発明の「天板」に相当する。中央凹部32が、「本体部」に相当する。第一規制部71および第二規制部72が、本発明の「規制部材」に相当する。五徳装着部33が、本発明の「五徳装着部」に相当する。五徳50が、本発明の「五徳」に相当する。五徳リング51が、本発明の「五徳リング」に相当する。五徳爪52A〜52Fが、本発明の「五徳爪」に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、トッププレート3の上面31に中央凹部32が設けられているが、これに限られない。例えば、中央凹部32が設けられず、五徳装着部33が設けられる部分を含むトッププレート3の上面が、トッププレート3の他の部分の上面と同じ高さに形成されていてもよい。また、この場合、トッププレート3の上面31の全体が下方に湾曲した形状に形成されれば良い。
第一規制部71および第二規制部72に例示される規制部材の配置は、上記実施形態に限られない。例えばガスバーナ5を左右に挟む位置に配置された二つの規制部材の両方が、五徳リング51と重なる位置に配置されてもよい。または、ガスバーナ5を左右に挟む位置に配置された二つの規制部材の一方が領域Sに重なる位置に配置され、他方が平面視において五徳リング51の外側であり、且つ、五徳爪52Bと五徳爪52Cとの間に挟まれる領域に重なる位置に配置されてもよい。
上記実施形態では、こんろ1において、ガスバーナ5,5と、二つの第一規制部71と、二つの第二規制部72とが設けられており、一つの第一規制部71と一つの第二規制部72とが、互いに一つのガスバーナ5を挟むように配置されている。言い換えると、一つのガスバーナ5に対して第一規制部71および第二規制部72が一つずつ設けられているが、ガスバーナ5と第一規制部71および第二規制部72との個数の関係はこれに限られない。例えば、ガスバーナ5,5および第二規制部72の配置は上記実施形態のとおりであって、第一規制部71がグリル庫カバー28の略中央に一つだけ設けられるような構成であってもよい。この場合であっても、ガスバーナ5を左右に互いに挟む位置に第一規制部71および第二規制部72が配置されるので、ガスバーナ5を挟んだ左右の両側で中央凹部32の熱歪みによる下方への変位が規制され、ガスバーナ5に対して五徳50が左右に傾きにくくできる。
第一規制部71および第二規制部72がガスバーナ5を互いに挟む方向は左右方向に限られず、前後方向等、他の方向にガスバーナ5を互いに挟んでもよい。
上記実施形態では、中央部Qが最も下方に位置するように下方に湾曲した中央凹部32の形状に合わせて、筐体2において第二規制部72よりも内側に配置される第一規制部71の方が、第二規制部72よりも低い位置に配置されているが、第一規制部71および第二規制部72が略同じ高さに設けられてもよい。中央凹部32の湾曲の度合い、中央凹部32における熱歪みによる下方への変位の度合いに応じて、第一規制部71および第二規制部72の上下方向における位置を適宜調整してもよい。
上記実施形態では、第一規制部71および第二規制部72のいずれも、前後方向に延びる長手形状を有しているが、第一規制部71および第二規制部72の形状はこれに限られない。上記実施形態では、五徳爪52Fの下端部53および五徳爪52Eの下端部53が、第一規制部71の前部および後部のそれぞれに平面視において重なるように配置されている。例えば、左右方向において略同じ位置に前後に並んだ二つの第一規制部71が設けられ、前方側の第一規制部71と五徳爪52Fの下端部53、後方側の第一規制部71と五徳爪52Eの下端部53のそれぞれが、平面視において重なるように配置されてもよい。また複数の第一規制部71が、平面視において領域Sに重なる位置に複数点在していてもよい。
また、例えば、第二規制部72は、平面視において五徳リング51と略同じ曲率半径を有する円弧状に設けられてもよい。この場合、第二規制部72は、五徳リング51と重なる位置における中央凹部32の熱歪みを、五徳リング51の形状に沿って規制できる。このように、第一規制部71および第二規制部72は、中央凹部32の下方への変位を規制可能な様々な形状とされてよいし、その個数も中央凹部32の下方への変位を規制可能な様々な個数とされてよい。
上記実施形態では、五徳50は、五徳装着部33に装着されたときに、五徳リング51の下縁部および五徳爪52A〜52Fの下端部53において中央凹部32に接するように形成されている。五徳50の形状はこれに限られず、例えば、五徳爪52A〜52Fの下縁部の全体が五徳リング51の下縁部と上下方向において略同じ位置に配置されて、五徳爪52A〜52Fの下縁部の全体が中央凹部32と接するように形成されていてもよい。