JP6711102B2 - 絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法 - Google Patents

絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法に関する。
炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド(C)などのワイドバンドギャップ半導体は、その高い絶縁破壊電界、高い熱伝導率などの優れた特性により、パワーデバイスへの応用が期待されている。特にSiCはシリコン(Si)と同様に、熱酸化により酸化膜を形成することが可能である。
SiC半導体基板を用いたパワーデバイスの中でも縦型パワーMOSFETは制御が容易なことから注目されている。SiC縦型パワーMOSFETの基本的な動作は、Si縦型パワーMOSFETの場合と変わりは無いが、ワイドバンドギャップ半導体では絶縁破壊電界が、4H−SiCで約10倍、GaNで約11倍、ダイヤモンドで約19倍と、Siに比較して高いため、ドリフト領域の不純物濃度を高く、厚さを薄くすることが可能となり、高い耐圧で低いオン抵抗を実現することが可能となる。
しかしSiCデバイスの場合、同耐圧のSiデバイスに対し、ドリフト領域の濃度を高くできるメリットを生かそうとすると、ゲート−ドレイン間の容量が大きくなる。そしてドレイン電圧のdV/dtにより、ゲート−ドレイン間容量を介して電流が流れ、この電流によるゲートインピーダンスの電圧降下によって、ゲート電圧が上昇し、本来オフである状態にもかかわらずオンしてしまう、いわゆる誤オン状態が発生し易くなる。
この誤オンを防止するには、ゲートに負バイアスを印加することが有効であるが、負バイアス電源が別途必要で、制御回路のコストが上昇してしまう。また負バイアスを印加する場合、SiC半導体を含む現状のワイドバンドギャップ半導体MOSFETでは、NBTI(Negative Bias Temperature Instablity)により、しきい値が変動するなどの不具合が発生することが知られている。
そこで、負バイアスを印加しないで、誤オンを防止する有効な方法として、ゲート電圧のしきい値を大きくすることが考えられる。Siデバイスでは一般に、チャネル領域濃度を高濃度化したりゲート絶縁膜の膜厚を増加させたりして、しきい値を上昇させる。しかしSiCデバイスの場合、しきい値を大きくするために、チャネル領域を高濃度化させたり、ゲート絶縁膜の膜厚を増加させたりすると、ゲート電圧の変化に対するドレイン電流の変化(相互コンダクタンス)すなわちゲインが低下してしまうという問題が生じる。
この点、SiC基板においてゲート絶縁膜を酸化ケイ素(SiO)膜及び酸化アルミニウム(Al)膜等を積層した複合膜とする技術が開示されている(特許文献1〜4参照。)が、これらのゲート絶縁膜形成技術では、相互コンダクタンスの低下が考慮されていないため、単に膜厚を増加させることに近い効果だけに留まり、十分な解決手段とならない。
特開2013−162073号公報 特許第5197474号公報 特許第5072482号公報 特開2009−016530号公報
本発明は上記した問題に着目して為されたものであって、相互コンダクタンスを低下させることなく、ゲートしきい値を大きくすることができる、炭化ケイ素を主電流の経路に用いた絶縁ゲート型半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る絶縁ゲート型半導体装置のある態様は、炭化ケイ素からなる第1導電型のドレイン領域と、このドレイン領域の上に設けられた第1導電型のドリフト領域と、このドリフト領域の上部の一部に設けられた第2導電型のチャネル領域と、このチャネル領域の上部の一部に設けられた第1導電型のソース領域と、チャネル領域の上に設けられた第1の絶縁膜と、この第1の絶縁膜の上に設けられ、第1の絶縁膜よりもバンドギャップが小さな絶縁膜又は半導体膜からなる電子トラップ層と、電子トラップ層の上に設けられたゲート電極と、を備え、前記第1の絶縁膜は酸化シリコン膜であり、前記電子トラップ層は酸化アルミニウム膜であり、前記電子トラップ層の膜厚は50nm以上100nm以下であり、第1の絶縁膜を介してチャネル領域から電子トラップ層に電子を注入し、電子トラップ層の電子トラップに電子を捕獲させることを要旨とする。
また本発明に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法のある態様は、炭化ケイ素のドレイン領域の上に、ドレイン領域より低濃度の第1導電型のドリフト領域を有する構造を用意する工程と、ドリフト領域の上部の一部に、第2導電型のチャネル領域を形成する工程と、チャネル領域の上部の一部に、第1導電型のソース領域を形成する工程と、チャネル領域の上に、酸化シリコン膜からなる第1の絶縁膜を形成する工程と、第1の絶縁膜の上に、膜厚が50nm以上100nm以下の酸化アルミニウム膜からなる電子トラップ層を形成する工程と、電子トラップ層の上にゲート電極を形成する工程と、を含み、第1の絶縁膜を介してチャネル領域から電子トラップ層に電子を注入し、電子トラップ層の電子トラップに電子を捕獲させることを要旨とする。
従って本発明に係る絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法によれば、相互コンダクタンスを低下させることなく、ゲートしきい値を大きくすることができる、炭化ケイ素を主電流の経路に用いた絶縁ゲート型半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
第1の実施の形態に係る半導体装置の要部の構成の概略を模式的に説明する断面図である。 図2(a)は図3(c)の電子注入時における半導体装置と直流電源とが接続された状態を説明する回路図であり、図2(b)は半導体装置とパルス電源とが接続された状態を説明する回路図である。 図1中のA−A部分のエネルギーバンドの変化の状態を、図3(a)→図3(b)→図3(c)→図3(d)→図3(e)の順に従って模式的に説明する図である。 比較例に係る半導体装置の要部の構成の概略を模式的に説明する断面図である。 図5(a)は、第1比較例に係る半導体装置の特性の変化を模式的に説明するグラフ図であり、図5(b)は、第2比較例に係る半導体装置の特性の変化を模式的に説明するグラフ図であり、図5(c)は、第1実施例に係る半導体装置の特性の変化を模式的に説明するグラフ図である。 第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である(その1)。 第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である(その2)。 第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である(その3)。 第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である(その4)。 第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程断面図である(その5)。 本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の要部の構成の概略を模式的に説明する断面図である。 図11中のB−B部分のエネルギーバンドの変化の状態を、図12(a)→図12(b)の順に従って模式的に説明する図である。 本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の要部の構成の概略を模式的に説明する断面図である。 図13中のC−C部分のエネルギーバンドの変化の状態を、図14(a)→図14(b)の順に従って模式的に説明する図である。
以下に本発明の第1〜第3の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。また本明細書及び添付図面においては、n又はpを冠した領域や層では、それぞれ電子又は正孔が多数キャリアであることを意味する。またnやpに付す+や−は、+及び−が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。
(半導体装置の構造)
第1の実施の形態に係る半導体装置は、図1に示すように、高濃度のn型(n)の4H−SiCからなるドレイン領域1と、このドレイン領域1の上に設けられた低濃度のn型(n)のSiCからなるドリフト領域2と、このドリフト領域2の上部の一部に設けられた、複数の高濃度のp型(p)のベース領域4a,4bと、を備える。
また第1の実施の形態に係る半導体装置は、ドリフト領域2の上部で、それぞれのベース領域4a,4bの上にベース領域4a,4bと接触するように設けられたp型のSiCからなるチャネル領域3a,3bを備える。
また第1の実施の形態に係る半導体装置は、それぞれのチャネル領域3a,3bの内部の一部に選択的に設けられた高濃度のn型(n)のソース領域5a,5bと、チャネル領域3a,3bの内部にベース領域4a,4bの近傍に至るまで深く形成された高濃度のp型(p)のベースコンタクト領域6a,6bと、を備える。尚、ベースコンタクト領域6a,6bは、ベース領域4a,4bと接して設けられてもよい。
また第1の実施の形態に係る半導体装置は、チャネル領域3a,3b上に設けられた第1の絶縁膜7aと、この第1の絶縁膜7aの上に設けられた、絶縁膜又は半導体を用いて構成した電子トラップ層7bと、この電子トラップ層7bの上に設けられたゲート電極8と、を備える。第1の絶縁膜7aと電子トラップ層7bとの複合膜で、ゲート絶縁膜(7a,7b)を構成している。
また第1の実施の形態に係る半導体装置は、ソース領域5aとベースコンタクト領域6aとを短絡するソース電極9aと、ソース領域5bとベースコンタクト領域6bとを短絡するソース電極9bと、ドレイン領域1をなす半導体基板の下面(裏面)に設けられたドレイン電極10と、を備える。
尚、図1中では、説明を分かり易くする目的で、半導体装置の表面付近の構造の一部を拡大して示す。また第1の絶縁膜7a及び電子トラップ層7bの、ゲート電極8の下側以外の領域及びゲート電極8の周囲の層間絶縁膜の図示を意図的に省略している。実際には図10に示すように、層間絶縁膜13がゲート電極8を囲むように設けられており、ゲート電極8、電子トラップ層7b及び第1の絶縁膜7aは、ドリフト領域2の表面上で、互いに対向するソース領域5a,5bの間に挟まれた区間に亘って形成されている。
ベース領域4a,4bは、チャネル領域3a,3bとドリフト領域2の間のpn接合に、高い逆バイアスが印加された場合に、チャネル領域3a,3bがパンチスルーすることを防止する。
ゲート電極8は、第1の実施の形態に係る半導体装置においては、不純物元素が添加されたドープドポリシリコン(Poly−Si)膜からなる。ゲート電極8は、Poly−Si膜以外にも、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属等を用いても構成できる。
ゲート絶縁膜(7a,7b)の下層となる第1の絶縁膜7aはSiOから成り、ドリフト領域2の表面、チャネル領域3a,3bの表面及びソース領域5a,5bとの表面すなわちSiCとの界面側で、MOSFETの動作時に形成されるチャネル領域3a,3bの反転層に接触して、10nm程度以上50nm程度以下の比較的薄い厚みで形成されている。
またゲート絶縁膜(7a,7b)の上層となる電子トラップ層7bは、Alからなり、50nm程度以上100nm程度以下の比較的厚い厚みで形成されている。
図2は、第1の実施の形態に係る半導体装置100のゲート電圧印加時の回路接続図で、ソースに対しゲートに通常の素子をオンするために必要な電圧以上の正の高い電圧を印加する方法を示している。図2(a)に示す様に直流電源11を用いた直流(DC)的な印加であっても良いし、図2(b)に示す様にパルス電源12を用いたパルス的な印加(単発又は連続パルス印加)であっても良い。
またドレインは、図2(a)に示す様にソースと短絡しても良いし、図2(b)に示す様にオープンにしても良いが、ソースに接続されたチャネル領域3a,3b上に注入されれば良く、ドレインに接続された低濃度n型ドリフト領域2上に注入する必要は必ずしも無く、ドレインオープンの方が酸化膜の信頼性の点からは望ましい。
(半導体装置の動作)
ソース電極9a,9bに対しゲート電極8に閾値以上の電圧を印加すると、ゲート電極8直下のチャネル領域3a,3bの表面に反転層が形成される。そしてソース電極9a,9bに対して正の電圧をドレイン電極10に印加すると、ドレイン電極10−ドレイン領域1−ドリフト領域2−チャネル領域3a表面の反転層−ソース領域5a−ソース電極9aに至る主電流経路ができる。
また同時に、ドレイン電極10−ドレイン領域1−ドリフト領域2−チャネル領域3b表面の反転層−ソース領域5b−ソース電極9bに至る主電流経路ができる。これらの経路によりドレイン電極10からソース電極9a,9bへ電流が流れる。一方、ソース電極9a,9bに対しゲート電極8に閾値以下の電圧を印加すると、チャネル領域3a,3b表面の反転層が消滅するため電流は流れない。
図3(a)〜(e)は、図1のA−A部におけるバンド図であり、図3(a)は、無バイアス時の状態でのチャネル領域3a、第1の絶縁膜7a、電子トラップ層7b及びゲート電極8のバンド構造を示す。また図3(b)は、ゲート電極8にVth1の正電圧を印加し、反転層31が形成された状態すなわちゲートしきい値状態のチャネル領域3a、第1の絶縁膜7a、電子トラップ層7b及びゲート電極8のバンド構造を示す。
図3(c)は、ゲート電極8にさらに大きな正の電圧を印加した場合で、反転層31ができた状態でさらに大きな電圧Vgiを印加しても、反転層31の電荷が増加するだけでSiC側のバンドの曲がりは大きく変化せず、殆どの電圧は第1の絶縁膜7aと電子トラップ層7bに印加されている状態を表している。
SiOに比較して誘電率が大きい電子トラップ層7bのAl部の電界強度は小さいため、比較的薄いSiOの第1の絶縁膜7aであっても多くの電圧が印加される。このため、第1の絶縁膜7a中の強い電界により反転層31中の電子が、図3(c)中に符号Pを付した破線の円中に示したように、チャネル領域3aの反転層31から第1の絶縁膜7aの伝導帯にトンネルし、電子トラップ層7bの伝導帯を経由して流れ、その一部が電子トラップ層7bの電子トラップ32にトラップされる。
図3(d)は、図3(c)により、電子トラップ層7bの電子トラップ32に多くの電子をトラップさせた状態で、ゲートバイアスを0(ゼロ)にした状態を示す。この状態は図3(a)の場合と比較して、電子トラップ層7b内のトラップした電子の電荷の影響でSiCのチャネル領域3aのバンドの曲がりが小さくなっていることがわかる。
図3(e)は、ゲート電圧として、チャネル領域3aの表面に反転層31を形成するための電圧Vth2を印加した場合で、もともとのチャネル領域3aのバンドの曲がりが小さいため、Vg2>Vg1の関係すなわちゲートしきい値が上昇することがわかる。
チャネル領域3aと第1の絶縁膜7aの界面に比較的深い電子トラップがある場合にも、同様にVthを上昇させることができるが、界面に電子がトラップされると、その電荷によるクーロン散乱によりチャネル移動度の低下が発生するが、第1の実施の形態に係る半導体装置ではトラップされた電荷は、チャネル領域3aと第1の絶縁膜7aの界面から第1の絶縁膜7aの厚み分隔てて離れているため、チャネル移動度の低下が発生しない。電子トラップ層7bにAlを使用した場合はAl中にトラップされた電荷は、高温でもデトラップされないことが知られており、高温で使用可能であるSiCへの適用に都合が良い。
第1の実施の形態に係る半導体装置では電子トラップ層7bとしてAlを使用した場合のバンド構造を示しているが、Al以外でもSiOよりバンドギャップが狭く電子トラップの活性化エネルギーが大きな絶縁物であれば良い。
また電荷がチャネル領域3aの表面に近いほど効果が大きいので、電子トラップ層7bのバルク内の電子トラップ32が少なくても、第1の絶縁膜7aとの界面に電子トラップが存在する絶縁物等でも良い。また膜中や第1の絶縁膜7aとの界面に、負の固定電荷をもつ絶縁物等を使用しても同様の効果が得られる。
尚、電子を注入する過程で、第1の絶縁膜7a内の電子トラップにも電子がトラップされる可能性があるが、第1の絶縁膜7aをSiO膜とした場合は、SiOの電子トラップは、比較的小さな活性化エネルギーを持っているため、アニールにより除去が可能である。現状では通常SiC素子の最高使用温度は150℃程度から250℃程度以下であるため、このような最高使用温度で十分な熱処理を行えばSiO等の比較的浅いトラップの電荷はデトラップされるため、使用時にしきい値が変動することを抑制できる。
次に、第1の実施の形態に係る半導体装置において、しきい値を大きくする際に考慮される電子の個数について説明する。しきい値上昇が求められる値ΔVthは、1Vより小さくては効果が十分でないため、1V程度以上のしきい値増加が必要で、最大でも10V程度である。絶縁膜中の電荷によるしきい値変化ΔVthは、電子トラップ層7bの領域にのみ電荷が蓄積されるとし、t,εをそれぞれ第1の絶縁膜の厚さ、誘電率とし、t,εをそれぞれ電子トラップ層7bの厚さ、誘電率とした時にtが十分小さくt/εがt/εに比較して十分小さいとすると、単位面積に関して式(1)で表される。
ΔVth=Q1eff・t/ε ・・・(1)
ここでQ1effは単位面積当たりの実効電荷量である。よって単位面積当たりの実効電荷量Q1effは、式(1)を変形して、
1eff=ΔVth・ε/t ・・・(2)
で表される。
またQ1effは、電子トラップ層7b中に電荷が均一に分布していると仮定して、総電荷量をQとすると、式(3)で表される。
1eff=Q/2 ・・・(3)
よって総電荷量Qは、式(3)を変形して、式(4)で表される。
=2・Q1eff ・・・(4)
すなわち1Vのしきい値増加に必要な単位面積あたりの電荷量である電荷Q(1V)は、式(2)及び式(4)より、
(1V)=2ε/t・・・(5)
となる。
またトラップされた電子の個数nは、電子の素電荷qを用いて
(1V)=Q(1V)/q=2ε/(t・q) ・・・(6)
となる。また最大値10Vのしきい値増に必要な電子の個数n(10V)は、式(6)を用いて、
(10V)=10・n(1V)=20ε/(t・q) ・・・(7)
で求められる。
第1の実施の形態に係る半導体装置では、このように電子トラップ層7bに捕獲させる電子の個数を考慮して、電子トラップ層7bの膜厚を制御して成膜し、この電子トラップ層7bを含めたゲート絶縁膜(7a,7b)を構成することにより、相互コンダクタンスgを低下させることなく、ゲート電圧のしきい値を大きくすることができる。
(第1実施例)
第1実施例に係る半導体装置では、t=50nm(5×10−6cm)、電子トラップ層7bのAlの比誘電率を9とする。
1Vのしきい値増加に必要な単位面積[cm−2]あたりの電荷量である電荷Q(1V)は、式(5)より、
(1V)=2・ε/t=2×9×8.85×10−14/(5×10−6
≒3×10−7[C・cm−2
となる。
また電子の素電荷qを1.602×10−19とすると、トラップされた電子の個数nは、式(6)より、
=Q(1V)/q≒2×1012[cm−2
となり、これが第1実施例における、1Vのしきい値増に必要な単位面積[cm−2]あたりの電子の個数となる。
一方、最大値10Vのしきい値増に必要な電子の個数は、式(7)より、約2×1013[cm−2]となる。尚、tが比較的大きく無視できない場合は必要な電荷量が増加するが、その値はt,ε,t,εから計算可能である。
(比較例)
図4に示した比較例に係る半導体装置は、ゲート電極8zとSiCの表面の間に、図1に示した半導体装置の第1の絶縁膜7a及び電子トラップ層7bに替えて、SiOからなる単層の酸化膜7zがゲート絶縁膜として設けられている、通常のMOSFETである。図4に示した比較例に係る半導体装置のゲート絶縁膜をなす酸化膜7z以外の構造については、図1に示した半導体装置における同じ名称及び符号を有するそれぞれの層と等価であるため、重複説明を省略する。
そして図4に示した比較例に係る半導体装置のチャネル領域3a,3bを高濃度化(p→p)して、ゲートしきい値を増加させた、第1比較例に係る半導体装置の特性を、ゲート電圧Vgとドレイン電流Idの関係を用いて、図5(a)のグラフ図中に模式的に示す。尚、図5中ではドレイン電流(Id)の値は対数表示(LogId)で表している。
図5(a)中では、高濃度化前の半導体装置の元の特性を(i)の軌跡で、またチャネル領域を高濃度化した第1比較例に係る半導体装置の特性を(ii)の軌跡でそれぞれ示す。(i)→(ii)への変化で示すように、通常のゲート絶縁膜を有する第1比較例に係る半導体装置のチャネル領域を高濃度化すると、ゲート電圧Vgの変化率に対してドレイン電流Idの変化率が全体的に小さくなり、相互コンダクタンスgが低下することがわかる。これはチャネル領域の高濃度化により移動度が低下するためである。特にSiC素子ではバルクの移動度に対してMOSFETのチャネル移動度が非常に低く、1200V以上の高耐圧素子においてもチャネル抵抗がオン抵抗に与える影響が大きい。そこでチャネル領域の濃度を高くすると、移動度が低下し、SiCの低オン抵抗のメリットが低下する。このようにチャネル領域の高濃度化は、特性悪化を引き起こす。
また図4に示した比較例に係る半導体装置の酸化膜7zの膜厚を増加させて、ゲートしきい値を増加させた第2比較例に係る半導体装置の特性を、ゲート電圧Vgとドレイン電流Idの関係を用いて、図5(b)のグラフ図中に模式的に示す。図5(b)中では、膜厚増加前の半導体装置の元の特性を(i)の軌跡で、また酸化膜7zの膜厚を増加させた第2比較例に係る半導体装置の特性を(iii)の軌跡でそれぞれ示す。
(i)→(iii)への変化で示すように、通常のゲート絶縁膜の構造を有する第2比較例に係る半導体装置の場合、膜厚が増加すると、ゲート電圧Vgの変化率に対してドレイン電流Idの変化率が全体的に小さくなり相互コンダクタンスgが低下することがわかる。これは、酸化膜7zにかかる電圧分担が増加するためであり、チャネルモビリティの影響が無くても、相互コンダクタンスgの低下が生じてしまう。
このように、チャネル領域の高濃度化及びゲート絶縁膜の膜厚増加のいずれの方法を用いても、ゲートしきい値の増加は可能であるが、相互コンダクタンスgの低下を回避することはできない。
一方、ゲート絶縁膜を異なる材料を用いて複合化し、電子トラップ層7bに電子を注入した第1実施例に係る半導体装置の特性を、図5(c)のグラフ図中に模式的に示す。図5(c)中では、ゲートしきい値を増加させる前の図4に示した半導体装置の元の特性を(i)の軌跡で、また第1実施例に係る半導体装置の特性を(iv)の軌跡でそれぞれ示す。
(i)→(iv)への変化で示すように、第1実施例に係る半導体装置の場合、ゲート電圧Vgの変化率に対してドレイン電流Idの変化率が追従し、相互コンダクタンスgは通常の半導体装置と略同じであった。よって第1実施例に係る半導体装置によれば、チャネル領域3a,3bの濃度の増加や、ゲート絶縁膜の膜厚の大幅な増加を行うことなくゲートしきい値を増加させ、半導体装置の相互コンダクタンスgを低下させずに望ましい特性を得られる。
<半導体装置の製造方法>
次に、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を、図6〜図10を参照して例示的に説明する。まず、図6に示すように、例えば4H−SiCのn+型の半導体基板1subを用意し、この半導体基板1subの上面上に4H−SiCの単結晶層をエピタキシャル成長してn型のドリフト領域2を形成する。
そしてフォトリソグラフィ技術により選択イオン注入用のレジストマスクを形成し、ドリフト領域2の上部の一部に、例えばアルミニウム(Al)イオン等のp型を呈する不純物元素イオンを多段イオン注入法により注入し、注入後にレジストマスクを除去して所定の活性化処理を施し、p型のベース領域4a,4bを選択的に形成する。
次にベース領域4a,4bより不純物濃度の低いp型のチャネル領域3a,3bを形成する為にアルミニウム等のp型を呈する不純物元素イオンを含むエピタキシャル層3を形成する。
次に図7に示すようにフォトリソグラフィ技術により選択イオン注入用のレジストマスクを形成し、チャネル領域3a,3bの上部の一部に、p型を呈する不純物元素イオンを、注入飛程がチャネル領域3a,3bの内部に留まるか、又はベース領域4a,4bの上面に届く程度になるように調整して多段イオン注入法により注入し、チャネル領域3a,3bより高不純物濃度のp型のベースコンタクト領域6a,6bを選択的に形成する。残存したレジストマスクは剥離液又はアッシング等で除去する。
同様に、フォトリソグラフィ技術により選択イオン注入用のレジストマスクを形成し、エピタキシャル層3の一部に、窒素(N)、砒素(As)や燐(P)等のn型を呈する不純物元素イオンを、エピタキシャル層3よりも注入飛程を浅くして多段イオン注入法により注入して、n型のソース領域5a,5bを形成する。
そして、同様に、ベース領域4a,4bの間上に位置するエピタキシャル層3に砒素(As)や燐(P)等のn型を呈する不純物元素イオンを、多段イオン注入法により注入して、n型の打ち返し領域2aを形成する。このn型の打ち返し領域2aをドリフト領域2よりも高不純物濃度とするとオン抵抗が低減できる。図7中には、図1で示したようなドリフト領域2の上部に、ドリフト領域2よりも高不純物濃度の打ち返し領域2aが設けられた場合が例示されている。所定の活性化処理を施すことによりイオン注入領域を活性化して半導体基板1sub上のドリフト領域2の表面構造を形成する。
次に図8に示すように、半導体基板1sub上の表面構造上に、熱酸化処理によりSiO膜を積層して第1の絶縁膜7aを形成する。次に、半導体基板1sub上の表面構造上に、例えばCVD法等によりAlの導電性膜を成膜して電子トラップ層7bを形成する。
次に電子トラップ層7bの上に、不純物元素が添加されたドープドポリシリコン膜(DOPOS膜)を成膜すると共に、このDOPOS膜を、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術等を用いて選択的に除去してパターニングし、図9に示すように、ゲート電極8のパターンを形成する。また同時に電子トラップ層7bもゲート電極8のエッチング用マスクを利用してパターニングする。
次に半導体基板1sub上の表面構造上に、例えばCVD法等によりSiO膜を成膜して層間絶縁膜を形成する。
次に、フォトリソグラフィ技術により、ソースコンタクトホール開孔用のエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクを用いて、ベースコンタクト領域6aとソース領域5aの上部、及び、ベースコンタクト領域6bとソース領域5bの上部の層間絶縁膜及び第1の絶縁膜7aを、反応性イオンエッチング(RIE)等で除去する。
層間絶縁膜及び第1の絶縁膜7aを選択的に除去したベースコンタクト領域6a、ソース領域5a、ベースコンタクト領域6b及びソース領域5bの上に、例えばニッケル(Ni)等の導電性膜を成膜する。そしてこの導電性膜を図10に示すようにパターニングしてソース電極9a,9bを、ソース領域5a,5bに接触するように形成する。
また半導体基板1subの下面側を、図10に示すように化学的機械研磨(CMP)して厚みを減じ、ドレイン領域1を形成する。そしてドレイン領域1の表面にNi等の導電性膜を成膜し、この導電性膜をパターニングしてドレイン電極10を形成する。尚、図示を省略しているが、層間絶縁膜13上とニッケルのソース電極9a,9b上の全面にチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)及びチタン(Ti)からなる多層のバリアメタルが設けられ更にアルミニウムの電極が設けられることにより、ソース電極の表面側電極とすることができる。
そして所定のアニール等の処理を施した後、アルミニウムの表面側電極の周囲に、図示を省略するSiO膜やパッシベーション膜等を積層する。そして複数のチップにダイシングして分割した後、それぞれのチップをリードフレーム上に搭載してパッケージする。以上の図6〜図10を参照して説明した一連の工程により、第1の実施の形態に係るMOSFETを製造することができる。
第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、ゲート電極8の下に電子トラップ層7bを含み、互いに異なる材料からなる層を複合化したゲート絶縁膜(7a,7b)を形成することにより、相互コンダクタンスgの低下を引き起こすことなく、ゲートしきい値を大きくした半導体装置を製造することができる。
尚、図6〜図10では、半導体基板1subの上にドリフト領域2をなす単結晶層をエピタキシャル成長する場合を示したが、これに限定されるものではない。例えばnのSiC基板の大部分をドリフト領域2として用い、SiC基板の下面にn型の不純物添加領域をイオン注入等により形成してドレイン領域1としてもよい。
<第2の実施の形態>
図11に示す第2の実施の形態に係る半導体装置は、第1の絶縁膜7aの上の電子トラップ層7bとゲート電極8との間に、SiOからなる第2の絶縁膜7cが積層されている点が、図1に示した第1の実施の形態に係る半導体装置と異なる。すなわち第2の実施の形態に係る半導体装置は、ゲート電極8とチャネル領域3a,3bの間に、第1の絶縁膜7a、電子トラップ層7b及び第2の絶縁膜7cの3層で複合的に形成されたゲート絶縁膜(7a,7b,7c)を有する。
第2の実施の形態に係る半導体装置の、ゲート絶縁膜(7a,7b,7c)以外の構造については、第1の実施の形態に係る半導体装置における同じ名称及び符号を有するそれぞれの層と等価であるため、重複説明を省略する。
第2の実施の形態に係る半導体装置の場合、Alからなる電子トラップ層7bの電子トラップが高温で、Alの伝導帯に励起されたとしても、バンドギャップの大きいSiOに厚み方向で囲まれているため、電子は容易にゲート電極8やSiC側に抜け出すことができず、半導体装置をより高い温度まで使用することができる。
また電子トラップ層7bは、厚み方向でSiOに囲まれていることにより、深い電子トラップを有する物質である必要性はなく、SiOよりバンドギャップの小さい、より正確には伝導帯側のSiOに対するバンドオフセットが負の絶縁膜、例えば窒化物を含む窒化珪素(Si)膜であっても良い。
また第2の実施の形態に係る半導体装置では第1の絶縁膜7a及び第2の絶縁膜7cをSiOとしたが、電子トラップ層7bに対する伝導帯側のバンドオフセットが正となる絶縁膜であれば、SiOではなくても良く、第1の絶縁膜7a及び第2の絶縁膜7cは互いに異なる絶縁体が用いられて良い。但し、第1の絶縁膜7aはSiCに対する伝導帯側のバンドオフセットが大きい絶縁膜である方が、通常使用時のトンネル電流による酸化膜の劣化が小さく、信頼性的に有利である。
図12に、図11中のB−B部における負電荷注入前後のチャネル領域3a、第1の絶縁膜7a、電子トラップ層7b及びゲート電極8のバンド図を示す。第2の実施の形態に係る半導体装置においても、図3の場合と同様に、負電荷注入により、SiC側のバンドの曲がりが減少し、ゲートしきい値が増加することがわかる。尚、第2実施例における負電荷の注入時の接続図は、図2の場合と同様である。
第2の実施の形態に係る半導体装置においても、しきい値上昇が求められる値ΔVthは、1Vより小さくては効果が十分でないため、1V程度以上のしきい値増加が必要で、最大でも10V程度である。
第2の実施の形態に係る半導体装置の場合、しきい値変化ΔVthは、3層構造の中央の電子トラップ層7bの膜厚を無視し、第1の実施例の場合と同様tが十分小さくt/εがt/εに比較して十分小さいとして無視すると、最上層の第2の絶縁膜7cの膜厚をtとすると、単位面積に関して、式(1)と同様に式(8)で表される。
ΔVth=Q2eff・t/ε ・・・(8)
ここでεは第2の絶縁膜7cの誘電率である。よって単位面積当たりの実効電荷量Q2effは、式(8)を変形して、式(9)で表される。
2eff=ΔVth・ε/t ・・・(9)
但し、単位面積当たりの実効電荷量Q2effは、電荷がAl部の電子トラップ層7bに集中して蓄積されていると仮定して、総電荷量Qに等しく、
2eff=Q ・・・(10)
とする。
すなわち1Vのしきい値増加に必要な単位面積あたりの電荷量である電荷Q(1V)は、式(9)及び式(10)より、
(1V)=ε/t・・・(11)
となる。
またトラップされた電子の個数nは、電子の素電荷qを用いて
(1V)=Q(1V)/q=ε/(t・q) ・・・(12)
となる。また最大値10Vのしきい値増に必要な電子の個数n(10V)は、式(12)を用いて、
(10V)=10・n(1V)=10ε/(t・q) ・・・(13)
で求められる。
第2の実施の形態に係る半導体装置では、このように電子トラップ層7bに捕獲させる電子の個数を考慮して、電子トラップ層7bの膜厚を制御して成膜し、この電子トラップ層7bを含めたゲート絶縁膜(7a,7b,7c)を構成することにより、第1の実施の形態に係る半導体装置の場合と同様に、相互コンダクタンスgを低下させることなく、ゲート電圧のしきい値を大きくすることができる。
(第2実施例)
第2実施例に係る半導体装置では、t=50nm(5×10−6cm)、第2の絶縁膜7cのSiOの比誘電率を3.9とする。1Vのしきい値増加に必要な単位面積[cm−2]あたりの電荷量である電荷Q(1V)は、式(11)より、
(1V)=ε/t=3.9×8.85×10−14/(5×10−6
≒7×10−8[C・cm−2
となる。
電子の素電荷qを1.602×10−19とすると、トラップされた電子の個数nは、式(12)より、
=Q(1V)/q≒4×1011[cm−2
となり、これが第2実施例における、1Vのしきい値増に必要な単位面積[cm−2]あたりの電子の個数となる。一方、最大値10Vのしきい値増に必要な電子の個数は、式(13)より、約4×1012[cm−2]となる。尚、実施例1と同様tが比較的大きく無視できない場合は必要な電荷量が増加するが、その値はt,ε,t,εから計算可能である。
<第3の実施の形態>
図13の断面図に示す第3の実施の形態に係る半導体装置は、第1の絶縁膜7aの上に、フローティングゲート電極である電子トラップ層8aが積層され、さらに電子トラップ層8aの上に、SiOからなる第2の絶縁膜7dが形成され積層されている点が、図1に示した第1の実施の形態に係る半導体装置と異なる。すなわち第3の実施の形態に係る半導体装置のゲート絶縁膜(7a,8a,7d)は、第1の絶縁膜7a、電子トラップ層8a及び第2の絶縁膜7dの3層で複合的に形成されている。
電子トラップ層8aは、例えばn型のドープドポリシリコン(Poly−Si)で形成できる。第3の実施の形態に係る半導体装置の、ゲート絶縁膜(7a,8a,7d)以外の構造については、第1及び第2の実施の形態に係る半導体装置における同じ名称及び符号を有するそれぞれの層と等価であるため、重複説明を省略する。
第3の実施の形態に係る半導体装置の場合、チャネル領域3a,3bと第1の絶縁膜7aとのバンドオフセットは、電子トラップ層8aと第1の絶縁膜7aとのバンドオフセットより小さいため、電子は導電性を有する電子トラップ層8aに、比較的容易に注入され蓄積される。第3の実施の形態に係る半導体装置においても、第2の実施の形態に係る半導体装置の場合と同様に、電子トラップ層8aの電子トラップが、バンドギャップの大きいSiOに囲まれているため、電子は容易に電子トラップ層8aから抜け出すことができず、半導体装置をより高い温度まで使用することができる。
図14に、図13中のC−C部におけるチャネル領域3a、第1の絶縁膜7a、電子トラップ層7b及びゲート電極8のバンド図を示す。第3の実施の形態に係る半導体装置においても、図3の場合と同様に、負電荷注入により、チャネル領域3a側のバンドの曲がりが減少し、ゲートしきい値が増加することがわかる。尚、第3の実施の形態に係る半導体装置における負電荷の注入時の接続図は、図2の場合と同様である。
第3の実施の形態に係る半導体装置においても、しきい値上昇が求められる値ΔVthは、1Vより小さくては効果が十分でないため、1V程度以上のしきい値増加が必要で、最大でも10V程度である。
第3の実施の形態に係る半導体装置の場合、第2の実施の形態に係る半導体装置の場合と同様に、しきい値変化ΔVthは、電子トラップ層8aの膜厚を無視し、第1の実施例の場合と同様tが十分小さくt/εがt/εに比較して十分小さいとして無視すると、第2の絶縁膜7dの膜厚をtとすると、単位面積に関して式(8)と同様に、式(14)で表される。
ΔVth=Q3eff・t/ε ・・・(14)
ここでεは第2の絶縁膜7dの誘電率である。よって単位面積当たりの実効電荷量Q3effは、式(14)を変形して、式(15)で表される。
3eff=ΔVth・ε/t ・・・(15)
また単位面積当たりの実効電荷量Q3effは、第2の実施の形態に係る半導体装置の場合と同様に、電荷が電子トラップ層8aに集中して蓄積されていると仮定して、総電荷量Qに等しく、
3eff=Q ・・・(16)
とする。
すなわち1Vのしきい値増加に必要な単位面積あたりの電荷量である電荷Q(1V)は、式(15)及び式(16)より、
(1V)=ε/t・・・(17)
となる。
またトラップされた電子の個数nは、電子の素電荷qを用いて
(1V)=Q(1V)/q=ε/(t・q) ・・・(18)
となる。また最大値10Vのしきい値増に必要な電子の個数n(10V)は、式(18)を用いて、
(10V)=10・n(1V)=ε/(t・q) ・・・(19)
で求められる。
第3の実施の形態に係る半導体装置では、このように電子トラップ層8aに捕獲させる電子の個数を考慮して、電子トラップ層8aの膜厚を制御して成膜し、この電子トラップ層8aを含めたゲート絶縁膜(7a,8a,7d)を構成することにより、第1及び第1の実施の形態に係る半導体装置の場合と同様に、相互コンダクタンスgを低下させることなく、ゲート電圧のしきい値を大きくすることができる。
(第3実施例)
第3実施例に係る半導体装置では、t=50nm(5×10−6cm)、第2の絶縁膜7dのSiOの比誘電率を3.9とする。1Vのしきい値増加に必要な単位面積[cm−2]あたりの電荷量である電荷Q(1V)は、式(17)より、
(1V)=ε/t=3.9×8.85×10−14/(5×10−6
≒7×10−8[C・cm−2
となる。
電子の素電荷qを1.602×10−19とすると、トラップされた電子の個数nは、式(18)より、
=Q(1V)/q≒4×1011[cm−2
となり、これが第3実施例における、1Vのしきい値増に必要な単位面積[cm−2]あたりの電子の個数となる。一方、最大値10Vのしきい値増に必要な電子の個数は、式(19)より、約4×1012[cm−2]となる。尚、実施例1、2と同様tが比較的大きく無視できない場合は必要な電荷量が増加するが、その値はt,ε,t,εから計算可能である。
(その他の実施の形態)
本発明は上記の開示した第1〜第3の実施の形態及び第1〜第3実施例によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
例えば上記の第1〜第3の実施の形態では、絶縁ゲート型半導体装置としてMOSFETの場合を例示したが、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)でも構わない。すなわち例えば図1中に示したn型のドレイン領域1の下にp型の半導体領域を設ける、或いはドレイン領域1をp型とした半導体装置とすることもできる。以上のとおり本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
本発明は、特にインバータ、スイッチング電源等に使用されるワイドバンドギャップ材料を用いたパワー半導体装置、特に絶縁ゲート型半導体装置に適用して有効である。
1 半導体基板(ドレイン領域)
2 ドリフト領域
2a 打ち返し領域
3 エピタキシャル層
3a,3b チャネル領域
4a,4b ベース領域
5a,5b ソース領域
6a,6b ベースコンタクト領域
7a 第1の絶縁膜
7b 電子トラップ層
7c,7d 第2の絶縁膜
7z 酸化膜
8,8z ゲート電極
8a 電子トラップ層
9a,9b ソース電極
10 ドレイン電極
11 直流電源
12 パルス電源
13 層間絶縁膜
20a,20b フォトレジスト
31 反転層
32 電子トラップ
100 半導体装置

Claims (5)

  1. 炭化ケイ素からなる第1又は第2導電型のドレイン領域と、
    前記ドレイン領域の上に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
    該ドリフト領域の上部の一部に設けられた第2導電型のチャネル領域と、
    該チャネル領域の上部の一部に設けられた第1導電型のソース領域と、
    前記チャネル領域の上に設けられた第1の絶縁膜と、
    該第1の絶縁膜の上に設けられ、前記第1の絶縁膜よりもバンドギャップが小さな絶縁膜又は半導体膜からなる電子トラップ層と、
    前記電子トラップ層の上に直接設けられたゲート電極と、を備え、
    前記第1の絶縁膜は酸化シリコン膜であり、前記電子トラップ層は膜厚が50nm以上100nm以下の酸化アルミニウム膜であり、
    前記第1の絶縁膜を介して前記チャネル領域から前記電子トラップ層に電子を注入し、前記電子トラップ層のバルク内又は前記第1の絶縁膜との界面に設けられている電子トラップに前記電子を捕獲させることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置。
  2. 前記電子トラップ層に捕獲される電子によるしきい値シフトが1V以上10V以下であることを特徴とする請求項に記載の絶縁ゲート型半導体装置。
  3. 炭化ケイ素のドレイン領域の上に、前記ドレイン領域より低濃度の第1導電型のドリフト領域を有する構造を用意する工程と、
    前記ドリフト領域の上部の一部に、第2導電型のチャネル領域を形成する工程と、
    前記チャネル領域の上部の一部に、第1導電型のソース領域を形成する工程と、
    前記チャネル領域の上に、酸化シリコン膜からなる第1の絶縁膜を形成する工程と、
    前記第1の絶縁膜の上に、膜厚が50nm以上100nm以下の酸化アルミニウム膜からなる電子トラップ層を形成する工程と、
    前記電子トラップ層の上にゲート電極を直接形成する工程と、
    を含み、
    前記第1の絶縁膜を介して前記チャネル領域から前記電子トラップ層に電子を注入し、前記電子トラップ層のバルク内又は前記第1の絶縁膜との界面に設けられている電子トラップに前記電子を捕獲させることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
  4. 前記電子トラップに前記電子を捕獲させる工程の後に熱処理によって、前記電子トラップ層の電子トラップより浅いトラップを有する層の電子をデトラップさせることを特徴とする請求項に記載の絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
  5. 前記電子トラップに電子を捕獲させる工程の後に熱処理を150℃以上250℃以下で行うことを特徴とする請求項に記載の絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
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