JP6710484B2 - 粉末高速度工具鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、切削工具や金型等に使用される粉末高速度工具鋼に関する。
従来、高速度工具鋼はC、Cr、W、Mo、V、Co等の合金元素を多量に加えて高温で硬さや耐摩耗性を一層高めた工具鋼であり、エンドミルやドリルのように比較的靱性が要求される切削工具の素材として汎用されている。ところで、このような高速度工具鋼は、従来では溶製法によって製造されていたのであるが、この溶製法によって得られた高速度工具鋼では、粗大炭化物の存在や偏析という問題があったことから、近年では、従来の溶製法に代わって、粉末冶金法を用いた粉末高速度工具鋼が広く使用されるようになっている。この粉末高速度工具鋼は、高速度工具鋼の溶湯をアトマイズ法によって急冷凝固粉末とし、この粉末を熱間静水圧加圧(HIP)等の粉末冶金法によって製造される。
一方、上記のような粉末高速度工具鋼を切削工具の素材として実際使用した場合には、耐摩耗性および靱性が不十分なことから、工具の切削性能の向上という要求に十分対応できない。このようなことから、耐摩耗性および靱性をより高めて工具の切削性能をより向上させるという観点で、これまでにも様々な粉末高速度工具鋼について提案されている。
例えば、特許文献1に開示されているように、質量%で、C:1.2〜3%、Si:3.0%以下、Mn:3.0%以下、Cr:3〜6%、W:10〜15%、Mo:1.0%以下、V:3〜5%、Co:10%以下を含有する高速度工具鋼用粉末が提案されている。
特許文献2は、重量比で、C:0.7〜2.0%、Si:≦1.0%、Mn:≦0.6%、Cr:3.0〜6.0%、WまたはさらにMoをW+2Moで14〜20%かつV:≦5.0%、Nb:2.0〜7.0%、但しNb/V≧0.5、残部がFeおよび不可避的不純物よりなる粉末高速度工具鋼が提案されている。
また、特許文献3に開示されているように、NiおよびCoを含むMo系高速度工具鋼であって、Nbを0.5〜2.0%含有すると共に、炭化物の平均粒径が0.40〜0.80μmであり、かつ最大粒径が5μm以下である耐摩耗性および耐チッピング性に優れた粉末高速度工具鋼が提案されている。
特開2001−294986号公報 特開平05−163551号公報 特開平09−59748号公報
上述した、特許文献1は成分制御により耐摩耗性、靱性の改善を狙っているが、炭化物サイズが2.0μmと耐摩耗性に懸念があり十分ではない。特許文献2はNbを2.0〜7.0%添加により耐摩耗性、靱性を持たせているが、しかし、V:≦5.0%、Nb/V≧0.5とV添加量が少ないために耐摩耗性に劣るという問題がある。さらに、特許文献3はNbを0.5〜2.0%添加かつNi、Coを含む粉末高速度鋼と耐摩耗性、靱性を高めているが、しかしながら、Nbを含む必要があり、そのため成分系に制約があるという問題がある。それらの問題に対し、本発明は、C濃度が異なる金属粉末を母材にして粉末高速度工具鋼を製造し、熱処理を加えて炭化物を制御することで耐摩耗性と靭性を兼ね備えた粉末高速度工具鋼が得られることを見出し、その粉末高速度工具鋼を提供することにある。
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、粉末高速度工具鋼は、通常は単一粉末を母材に作製するのが一般的であるが、C濃度が0.5%以上異なる2種類以上の金属粉末を母材に用いて焼結し、さらに熱処理により粗大なMC炭化物と微細なM6C炭化物が混在する組織とすることで、耐摩耗性と靭性を両立できることを見出し、その粉末高速度工具鋼を得ることを見出した。
上記の課題を解決する手段としては、第1の手段は、質量%で、C:1.30〜2.30%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、Mo:0.5〜5.0%、W:5.0〜20.0%、V:3.0〜7.5%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼であり、該鋼中にある炭化物のうち、MC炭化物の最大径は3.5〜10μmを、M6C炭化物の最大径は2.5μm以下を満たすことを特徴とする粉末高速度工具鋼である。
第2の手段は、上記の第1手段の成分組成に加えて、さらにCo:10.0%以下(ただし0%は含まない。)を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼であり、該鋼中にある炭化物のうち、MC炭化物の最大径は3.5〜10μmを、M6C炭化物の最大径は2.5μm以下を満たすことを特徴とする粉末高速度工具鋼である。
第3の手段は、上記の第1手段または第2手段の粉末高速度鋼の成分組成を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる金属粉末のうち、C濃度が0.5%以上異なる2種類以上の金属粉末を混合し固化成形した鋼であり、該鋼中にある炭化物のうち、MC炭化物の最大径は3.5〜10μm、M6C炭化物の最大径は2.5μm以下を満たすことを特徴とする粉末高速度工具鋼である。
以上述べたように、本発明により耐摩耗性および靱性を兼ね備えた粉末高速度工具鋼を得ることができる。
本発明例No.1に示す2種類の混合粉末を固化成型後、熱処理によって炭化物径を調整(以下、「熱処理粒度調整」という。)して作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。 比較例No.4に示す単一粉末を固化成型後、熱処理粒度調整なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。 比較例No.5に示す2種類の混合粉末を固化成型後、熱処理粒度調整なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。 比較例No.7に示す単一粉末を固化成型後、熱処理粒度調整して作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明成分範囲内の粉末高速度工具鋼において、組織内に析出している炭化物は、VCから成るMC炭化物と(Fe、W、Mo)6Cを主体とするM6C炭化物の2種類に分類される。これら炭化物のうち、MC炭化物は高硬度であるため、材料の耐摩耗性を向上させる働きをする。そのため、MC炭化物を粗大化させることで、耐摩耗性を改善させることが可能であるが、一方で粗大な炭化物は靭性を阻害してしまうため、一部の炭化物は微細な炭化物のままで保持しておくことが必要とされる。また、M6C炭化物はMC炭化物ほど耐摩耗性に寄与しないため、M6C炭化物は微細なままに保ちつつ、MC炭化物を粗大化させた組織に制御することで耐摩耗性と靭性を両立させた粉末高速度工具鋼が得られると考えた。
このような組織を達成するために鋭意開発を進めた結果、粉末高速度工具鋼をC(炭素)濃度が0.5%以上異なる2種類以上の金属粉末を母材に用いてHIPまたは押出しにより固化成型後、熱処理を行い、MC炭化物の最大径が3.5〜10μm、M6C炭化物の最大径は2.5μm以下を満たすように炭化物径を制御することで靱性と耐摩耗性を兼ね備えた粉末高速度工具鋼が得られることを発見した。
粉末高速度工具鋼を作製する際に、C濃度差が0.5%以上ある高C粉末と低C粉末を混合、固化成型して粉末高速度工具鋼を作製すると、マトリックス中のC濃度に大きな濃淡が生じる。この状態で、高温保持熱処理を行い、C拡散を促進させた場合、C濃度が高い領域の炭化物は優先して粗大化するが、C濃度が低い領域は、マトリックス中にCが溶け込んでいないために、炭化物の粗大化が殆ど起こらない。この際に、炭化物の融点の差から優先して粗大化が起こるのはMC炭化物であり、M6C炭化物は微細なままで保たれる。結果として、粗大なMC炭化物と微細なM6C炭化物が共に存在する組織となる。
図1は本発明例No.1に示す2種類の混合粉末を母材として固化成型した後に、熱処理によって炭化物径を調整して作製し、この母材である本発明鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。これに対し、図2は比較例であるNo.4に示す単一粉末を熱処理粒度調整なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織であり、図3は比較例であるNo.5に示す2種類の混合粉末を母材に作製し、熱処理粒度調整なしで作製した鋼の光学顕微鏡による組織であり、図4は比較例であるNo.7に示す単一粉末を熱処理粒度調整して作製した鋼の光学顕微鏡による組織を示す写真である。これから分かるように、図1の本発明は、図2〜4に比較して粗大なMC炭化物と微細なM6C炭化物が混在した組織となり、図2〜4に見られる組織とは異なることが分かる。粉末の製法はガスアトマイズ法が低酸素粉末が得られ好ましいが、水アトマイズ粉末、粉砕粉末等の製法も可である。
以下、本発明の粉末高速工具鋼に係る金属粉末の化学成分の限定理由について説明する。
C:1.30〜2.30%
Cは、硬さ、焼入性に必要な元素である。しかし、Cは1.30%未満ではその効果が十分でない。また、Cが2.30%を超えると粗大すぎる炭化物を形成し靱性を悪化させることから、Cは1.30〜2.30%とする。
Si:0.1〜1.0%
Siは、脱酸剤であり、基地の硬さを得るために必要な元素である。しかし、Siは0.1%未満ではその効果が十分に得られず、1.0%を超えると靱性と加工性が悪化する。そこでSiは0.1〜1.0%とする。
Mn:0.1〜1.0%
Mnは、脱酸剤であり、焼入性を得るために必要な元素である。しかし、Mnは0.1%未満では、その効果が十分に得られず、1.0%を超えるとマトリックスを脆化させ靱性、熱間加工性が悪化する。そこでMnは0.1〜1.0%とする。
Cr:3.0〜5.0%
Crは、焼入性を得るために必要な元素である。しかし、Crは3.0%未満ではその効果が十分でない。また、5.0%を超えると靱性、熱間加工性が悪化する。そこでCrは3.0〜5.0%とする。
Mo:0.5〜5.0%
Moは、焼入性、硬さ、耐摩耗性、焼戻し軟化抵抗性を得るために必要な元素である。しかし、Moは0.5%未満ではその効果が十分でなく、また、5.0%を超えると靱性、熱間加工性が悪化する。そこでMoは0.5〜5.0%とする。好ましくはMoは0.5〜4.0%とする。
W:5.0〜20.0%
Wは、焼入性、硬さ、耐摩耗性、焼戻し軟化抵抗性を得るために必要な元素である。しかし、Wは5.0%未満ではその効果が十分でなく、20.0%を超えると靱性、熱間加工性が悪化する。そこでWは5.0〜20.0%とする。好ましくはWは8.0〜12.0%とする。
V:3.0〜7.5%
Vは、硬さ、耐焼付き性、靱性を得るために必要な元素である。しかし、Vは3.0%未満ではその効果が十分でなく、7.5%を超えると靱性、被削性が悪化する。そこでVは3.0〜7.5%とする。好ましくはVは4.6〜7.0%とする。
Co:10.0%以下(ただし、0%は含まない。)
Coは、耐熱性、耐摩耗性、耐焼戻し軟化抵抗性に必要な元素である。本元素を含まなくても本発明の耐摩耗性および靱性の効果は得られるが、上記の耐熱性、耐摩耗性、耐焼戻し軟化抵抗性の点から含有することが好ましい。しかし、Coが10.0%を超える添加は炭化物の偏析や脱炭を促進することから、その上限を10.0%とした。
本願でいう炭化物の最大径は以下の通りに定義する。
炭化物の形状は真円ではないのでその断面には径の長いところと短いところがある。その径も最も長い径(以下、最長径という。)を取上げて、ある観察面積中に存在する炭化物を観察し、これらの各炭化物の最長径を計測し、その中で最も大きな値を示す炭化物の最長径のことを本願では炭化物の最大径というものとする。
上記の炭化物の最大径の定義の下で、焼入、焼戻したミクロ組織の、MC炭化物の最大径が3.5〜10μmと限定した理由は以下の通りである。
MC炭化物はM6C炭化物よりも硬く、その径が大きいほど耐摩耗性を向上させる。ただし、MC炭化物の最大径が3.5μm未満だと耐摩耗性向上の効果が十分に得られず、10μmより大きいと破壊の起点となり靭性を阻害するため、MC炭化物の最大径の範囲を3.5〜10μmとした。
同じく上記の炭化物の最大径の定義の下で、M6C炭化物の最大径は2.5μm以下と限定した理由は以下の通りである。
6C炭化物はMC炭化物よりも耐摩耗性に寄与しないため、2.5μm以下に制御することによって耐摩耗性を確保した上で靭性を向上させた。マトリックス中の微細な炭化物は結晶粒を微細に保持し靭性を向上させる効果があるためである。ここで、M6C炭化物を2.5μm以下としたのは、2.5μmよりも大きいと靭性確保の効果が十分に得られないためである。
その上で、本発明では上記の最大径を有する炭化物について、1000平方μm中に1個以上あればよいものとする。つまり本願発明において、MC炭化物の最大径が3.5〜10μmであるということは、最大径が3.5〜10μmの範囲内にあるMC炭化物が1000平方μmの鋼中に少なくとも1個は存在することを意味する。従って残りのMC炭化物の最長径は最大径よりも小さければ3.5〜10μmの範囲にあっても3.5μm未満でも構わないということである。なおM6C炭化物については下限がないので、係る個数比率を論じる必要はない。
請求項3の手段でC濃度差を0.5%以上と限定した理由は以下の通りである。
混合する粉末のCの質量%の差、つまりCの濃度差は0.5%以上とする。このように、0.5%以上とするのは、母相内のC濃度分布をばらつかせ、熱処理時に一部の炭化物のみの成長を促すには、0.5%以上のC濃度差が必要であるためである。なお、3種類以上の粉末を混合する場合は、最もC濃度が近い粉末同士の差が0.5%以上かどうかを判断する。
さらに、上記のC濃度が0.5%以上異なる2種類の金属粉末について、その混合比は以下の通りである。
混合量は高C濃度金属粉末の質量%を1.0とすると、低C濃度金属粉末の質量%は0.25〜4.0が好ましい。すなわち、高C濃度金属粉末と低C濃度金属粉末の混合比は、「1.0:0.25〜4.0」の範囲が好ましい。そして、高C濃度金属粉末と低C濃度金属粉末の混合比が、この範囲を超えて離れると、固化成形後のマトリックスのC濃度差が確保できず、一部の炭化物のみの成長を促すことができない。
固化成型中や成形後の熱処理の適正条件は、鋼種によって異なるが、例えばHIP処理後や押出し工程中や固化成形後の成形体に1100〜1240℃で2〜12時間の熱処理が適正である。しかし、1100℃未満では炭化物が殆ど大きくならない。また、1240℃を超えると、炭化物が急激に大きくなりすぎてしまい、微細な析出物が消失しやすく制御が難しい。
以下、本発明について実施例および比較例によって具体的に説明する。
合金添加元素は同じで、C(炭素)濃度を振って作製した2種類あるいは3種類の金属粉末{例えば、2種類では、0.3Si−0.3Mn−4.2Cr−1.0Mo−12.0W−4.6V−5.0Co(数値は質量%)に1.3Cと2.5C(数値は質量%)のふたつに振って添加したものおよびそれらの残部にFeを加えて100質量%としてなる2種類の金属粉末}をガスアトマイズ法で作製し、粉末高速度工具鋼の2種類あるいは3種類の母材金属粉末とした。その後、それらを上記の1.0:0.25〜4.0あるいは1.0:1.0:1.0〜2.0の混合比で混合した後、1170℃でHIP処理して固化成形し、表1に示す鋼のA、B、C、D、E、F、Gの成分組成からなる固化成形体を作製した。なお、母材金属粉末のC濃度差および粉末混合比は表2に示すとおりである。これらの固化成形体に対して、表2に示す各No.ごとに定めた調整温度および調整時間で熱処理粒度調整を行った。その後、30mm径に鍛造加工し、1190℃で油冷焼入れ、560℃で3回焼戻し処理を行った。比較例としては、上記の粉末高速度工具鋼の母材金属粉末を表2の粉末混合比において、無しとあるものは混合を行わずに単一粉末のままとし、その他のものは、表2に示す各No.ごとに定めた粉末混合比で高C濃度の粉末と低C濃度の粉末の混合比を1:0.2〜5とし、1170℃でHIP処理して固化成形して固化成形体を作成した。なお、母材金属粉末のC濃度差および粉末混合比は表2に示すとおりである。これらの固化成形体に対し、成形後は熱処理粒度調整において無しとあるものは粒度調整を行わずそのまま、それ以外のものは表2に示す各No.ごとに定めた調整温度および調整時間で熱処理粒度調整を行い、その後、これらを30mm径に鍛造加工し、1190℃で油冷焼入れ、560℃で3回焼戻し処理を行った。
靱性の評価方法として、上記の焼入れ焼戻し後の試料において、JIS3号シャルピー衝撃性試験(2mmUノッチ)を行い、シャルピー衝撃性値を測定し、表2における母材金属粉末種類が1種類の単一粉末でかつ熱処理粒度調整が無しの比較例をベンチマーク材とし、これらのベンチマーク材と比較して、靱性が同等以上(下がり幅10%未満)であれば、表2の靱性の欄に○を、悪化(10%以上減)であれれば×を付して評価した。また、耐摩耗性の評価方法として、上記の焼入れ焼戻し後の試料において、大越式摩耗試験を実施し、表2において、ベンチマーク材の耐摩耗性を1.0とし、これらのベンチマーク材と比較して、その倍数で耐摩耗性を評価した。なお、大越式摩耗試験の条件は、相手材リングSCM420、荷重61.8N、摩耗距離200m、摩耗速度3.62mm/secおよび乾式とした。
また、炭化物は、熱処理した鋼材から縦20mm、横20mm、長さ10mmの角棒を切出し、湿式研磨および腐食液はピクラル液でMC炭化物とM6C炭化物の両方を腐食させた場合と村上試薬でM6C炭化物のみを腐食させた場合について、光学顕微鏡にてミクロ組織を確認し、画像解析ソフトにより、MC炭化物およびM6C炭化物の最大径をそれぞれ算出した。その結果を表2に示す。
なお、表2における下線部は請求項の範囲から外れることを示す。
表2において、比較例のNo.4、No.14、No.23、No.27、No.30、No.32、No.35の各母材金属粉末種類1種類からなる単一組成の粉末を作製してベンチマーク材とした。これらの比較例のベンチマーク材については、各単一組成であるので母材金属粉末のC濃度差は無いので0%であり、粉末混合比は無し、かつ熱処理粒度調整も無しであることから、MC炭化物は3.5μmよりも小さく、一方、M6C炭化物径も2.5μm以下で小さく、粗大な3.5μm以上の炭化物は存在しない。しかし、これらのベンチマーク材はMC炭化物が3.5μmより小さく、したがって、請求項で規定する3.5〜10μmの範囲外であるので切削工具や金型等に使用する際に要求される耐摩耗性が劣る。すなわち、これらは、母材金属粉末の種類が1種類であり、熱処理粒度調整も無しのためMC炭化物が粗大化しないので、耐摩耗性が最も低く、ベンチマークの1である。
比較例のNo.5、15、24は、2種類の粉末を母材金属粉末に作製するので母材金属粉末にC濃度差はあるが、熱処理粒度調整は無しであるので、MC炭化物は3.5μmよりも微細なままであるために、耐摩耗性は1.1で低い。比較例のNo.6、No.17は、熱処理粒度調整の温度が1080℃と低く、MC炭化物は3.5μmよりも微細であるため、耐摩耗性が1.2、1.1といずれも低い。比較例のNo.7は、母材金属粉末種類1種類からなる単一組成の粉末であるため、母材金属粉末のC濃度差がなく0であり、熱処理粒度調整を行った時に、MC炭化物は粗大化せず、M6C炭化物は2.5μmより大きく、炭化物が粗大化し、靱性が×である。比較例のNo.8、9、16は、2種類の母材金属粉末の熱処理粒度調整を行っているが、母材金属粉末のC濃度差が、No.8、16では0.25%、No.9では0.45%と少なく、熱処理粒度調整を行った時に、M6C炭化物が粗大化したので、靱性は×である。比較例のNo.10は、2種類の母材金属粉末の熱処理粒度調整の温度が1250℃と高いため、MC炭化物およびM6C炭化物が粗大化し、靱性が×である。比較例のNo.18は、2種類の母材金属粉末の混合比が大きく、熱処理粒度調整の温度が1250℃と高いため、MC炭化物およびM6C炭化物が粗大化し、靱性が×である。比較例のNo.11、No.19は、2種類の母材金属粉末の混合比が大きいので、母材のC濃度差が確保できず、M6C炭化物が粗大化し、靱性が×である。比較例のNo.25は、熱処理粒度調整が無しであるので、MC炭化物は3.5μmよりも微細であるために、耐摩耗性は1.2で低い。比較例のNo.29は、熱処理粒度調整の温度が1250℃と高いため、MC炭化物およびM6C炭化物が粗大化し、靱性が×である。
上記の比較例に対し、本発明例であるNo.1〜3、No.12〜13、No.20〜22、No.26、No.28、No.31、およびNo.33〜34は、いずれも本発明の請求項の条件を満足していることから、靱性は○でかつ耐摩耗性に優れていることが分かる。
以上述べたように、本発明における粉末高速工具鋼を、母材金属粉末のC濃度が0.50%以上異なる2種類以上の金属粉末を母材に用いて焼結し、さらに熱処理により適性大きさの3.5〜10μmのMC炭化物と微細なM6C炭化物が混在する組織とすることで、靱性と耐摩耗性を兼ね備えた粉末高速度工具鋼が得られた。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:1.30〜2.30%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:3.0〜5.0%、Mo:0.5〜5.0%、W:5.0〜20.0%、V:3.0〜7.5%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼であり、該鋼中にある炭化物のうち、MC炭化物の最大径は3.5〜10μmを、M6C炭化物の最大径は2.5μm以下を満たすことを特徴とする粉末高速度工具鋼。
  2. 請求項1に記載の成分組成に加えて、さらにCo:10.0%以下(ただし0%は含まない。)を含有し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる鋼であり、該鋼中にある炭化物のうち、MC炭化物の最大径は3.5〜10μmを、M6C炭化物の最大径は2.5μm以下を満たすことを特徴とする粉末高速度工具鋼。
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