JP6709603B2 - 切削インサートの取り付け機構、刃先回転式ミーリング工具及び刃先回転式ターニング工具 - Google Patents

切削インサートの取り付け機構、刃先回転式ミーリング工具及び刃先回転式ターニング工具 Download PDF

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Description

本発明は、円板状をなす切削インサートがそのインサート軸線回りに回転可能とされてインサート取付座に装着される切削インサートの取り付け機構、並びに、これを用いた刃先回転式ミーリング工具及び刃先回転式ターニング工具に関するものである。
従来、例えば耐熱合金等の難削材(被削材)をミーリング加工(転削加工)する刃先回転式ミーリング工具(ロータリーミーリング工具)として、下記特許文献1、2に記載されたものが知られている。
特許文献1、2の刃先回転式ミーリング工具は、円板状をなし外周縁に切れ刃を有する切削インサートが、そのインサート軸線回りに回転自在とされてインサート取付座に装着される切削インサートの取り付け機構を備えている。切削インサートは、超硬合金等からなり、インサート取付座は、鋼等からなる工具本体の先端外周部に形成されている。
また、切削インサートとインサート取付座との間には、鋼等からなるシート部材が介装されている。シート部材は、インサート取付座に対してインサート軸線回りの回転が規制された状態、又は回転が許容された状態で、該インサート取付座に配設される。
そして、切削時には、切削インサートが切れ刃で被削材に切り込み、この際に被削材から受ける力(切削力又は切削抵抗であり、刃先力又はエッジフォースの成分を含む。以下同様)によって、切削インサートはインサート取付座に対してインサート軸線回りに従動回転させられる。このように、切削インサートが回転させられつつ切削加工することで、円形状の切れ刃全体が均等に切削に用いられて、該切れ刃の部分的な切れ味の低下や刃先欠損等が防止される。
特開2014−12308号公報 特開2014−12309号公報
しかしながら、上記従来の切削インサートの取り付け機構では、下記の課題を有していた。
すなわち、切削時に被削材から受ける力によって、シート部材やインサート取付座が片減りする(偏摩耗する)おそれがあった。具体的に、切削時に切削インサートが被削材から受ける力は、この被削材に切り込む切削インサートの切れ刃近傍の所定位置で大きくなるため、この所定位置に対応するシート部材の部分やインサート取付座の部分が、他の部分に比べて早期に摩耗しやすかった。
なお、上記所定位置とは、インサート取付座に装着され回転する切削インサートが被削材に切り込む所定の位置であり、つまり切削インサートとともに回転移動するものではなく、インサート取付座(工具本体)に対してほぼ移動することのない所定の位置である。
すなわち、シート部材が、インサート取付座に対してインサート軸線回りの回転移動を規制された状態で設けられた場合は、回転する切削インサートとの摩擦により、シート部材におけるインサート軸線方向の切削インサート側を向く表面が、早期に偏摩耗する。
また、シート部材が、インサート取付座に対してインサート軸線回りの回転移動を許容された状態で設けられた場合は、切削インサートの回転に伴って回転するシート部材との摩擦により、インサート取付座におけるインサート軸線方向のシート部材側を向く表面が、早期に偏摩耗する。
そして、このような偏摩耗が生じると、切削インサートの着座安定性が確保できなくなり、がたつきが生じて、切削精度を確保することが難しくなる。
特に、耐熱合金等の難削材を被削材とする切削加工においては、切削時に、切削インサートを介してシート部材やインサート取付座へ伝達されるインサート軸線方向の荷重が大きくなり、例えば3000Nにも及ぶため、上記課題が顕著なものとなりやすい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、シート部材やインサート取付座の偏摩耗を抑制して、切削インサートの着座安定性を良好に維持することができ、これにより高精度な切削加工を安定して行える切削インサートの取り付け機構、並びに、これを用いた刃先回転式ミーリング工具及び刃先回転式ターニング工具を提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、前記複数のシート部材のうち、前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ、前記第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び前記他のシート部材の各硬度よりも、低い硬度を有する材料により形成されていることを特徴とする。
また本発明は、円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、前記複数のシート部材のうち、前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ、前記第1のシート部材は、超硬合金により形成され、前記第2のシート部材は、鋼材により形成されていることを特徴とする。
また本発明は、円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、前記複数のシート部材のうち、前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ、前記切削インサートには、前記インサート軸線上を延びて該切削インサートの前記インサート軸線に交差する表裏面に開口する貫通孔が形成されており、前記インサート取付座に装着されて、前記切削インサートを前記インサート軸線回りに回転自在に支持する支持軸を備え、前記支持軸は、前記貫通孔内に挿通されて前記インサート取付座に取り付けられる軸部と、前記軸部に接続されるとともに、前記貫通孔の内径よりも大径とされ、前記切削インサートの前記表裏面のうち表面との間に隙間をあけて配置される頭部と、を有し、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向への移動が規制可能に構成され、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向の位置が調整可能とされ、前記頭部は、前記切削インサートの前記表面に当接可能とされ、前記軸部は、前記インサート取付座に螺着されるネジ部と、当該軸部の中心軸に垂直な断面が多角形状をなす被係止部と、を有し、前記被係止部に前記中心軸回りに形成された複数の平坦面のうちの1つに当接可能とされるとともに、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記中心軸回りの回転を規制する係止部を備えることを特徴とする。
また本発明は、円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、前記複数のシート部材のうち、前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ、前記切削インサートには、前記インサート軸線上を延びて該切削インサートの前記インサート軸線に交差する表裏面に開口する貫通孔が形成されており、前記インサート取付座に装着されて、前記切削インサートを前記インサート軸線回りに回転自在に支持する支持軸を備え、前記支持軸は、前記貫通孔内に挿通されて前記インサート取付座に取り付けられる軸部と、前記軸部に接続されるとともに、前記貫通孔の内径よりも大径とされ、前記切削インサートの前記表裏面のうち表面との間に隙間をあけて配置される頭部と、を有し、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向への移動が規制可能に構成され、前記支持軸の前記頭部と、前記切削インサートとの間に、前記切削インサートを、前記第2のシート部材に対して前記インサート軸線方向に付勢する付勢手段として圧縮ばねが介装されることを特徴とする。
この切削インサートの取り付け機構では、切削時に、切削インサートが切れ刃で被削材に切り込み、この際に被削材から受ける力によって、切削インサートはインサート取付座に対してインサート軸線回りに従動回転させられる。
切削インサートとインサート取付座との間には、複数のシート部材が重ねて介装されており、これらシート部材のうち、インサート取付座の直上に隣接配置された第1のシート部材は、インサート取付座に対して回転不能である一方、切削インサートの直下に隣接配置された第2のシート部材は、該切削インサートの回転に伴ってインサート軸線回りに回転(供回り)させられる。
本発明によれば、インサート取付座に対する第1のシート部材の回転が規制されているので、これらインサート取付座と第1のシート部材との摩擦が抑えられて、従来課題とされていたインサート取付座の偏摩耗を防止することができる。従って、このインサート取付座が形成されたホルダ等の工具本体を、長期に亘り安定して使用することができる。
また、第2のシート部材は、そのインサート軸線方向の両側に隣接する切削インサート及び他のシート部材に対して回転可能とされており、つまり第2のシート部材は切削インサート及び他のシート部材とは別体とされているので、例えばこの第2のシート部材の硬度を、切削インサート及び他のシート部材の各硬度に比べて、同等以下の値とすることができる。従って、切削インサートや他のシート部材との摩擦により、第2のシート部材を優先的に摩耗させることが可能である。
そして、この第2のシート部材の摩耗は、該第2のシート部材が回転することによって、第2のシート部材のインサート軸線回りの全周に亘って進行していく。つまり、第2のシート部材は、インサート軸線回りに均等に摩耗させられていくため、偏摩耗が生じにくくされている。
このように、本発明によれば、複数のシート部材及びインサート取付座の偏摩耗を抑制できるので、切削インサートの着座安定性を良好に維持することができる。
さらに、上述のように偏摩耗を防止する作用効果が得られつつも、切削インサートの取り付け機構全体としては、省スペース化を図ることが可能である。つまり本発明は、切削インサートとインサート取付座との間に、複数のシート部材を介装したシンプルな構成を採用しているので、例えば、従来構成よりも増加したシート部材の枚数(厚さ)に応じて、又はこの厚さ以上となるように、切削インサートの厚さを減少させたり、インサート取付座の位置を後退させるなどして、機構全体をコンパクトに形成することが容易である。従って、種々様々な切削態様への要望に対応しやすい。
以上より、本発明によれば、シート部材やインサート取付座の偏摩耗が抑制されて、切削インサートの着座安定性を良好に維持することができ、これにより高精度な切削加工を安定して行うことができる。
また、切削インサートの取り付け機構全体をコンパクトに形成することが容易であり、省スペース化を図ることが可能である。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び前記他のシート部材の各硬度よりも、低い硬度を有する材料により形成されている。
この場合、切削インサートや他のシート部材との摩擦により、第2のシート部材を優先的に摩耗させて、偏摩耗を抑制できる、という上述した本発明の作用効果が、より確実に奏功される。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記第1のシート部材は、超硬合金により形成され、前記第2のシート部材は、鋼材により形成されている。
この場合、第1のシート部材の摩耗を顕著に防止することが可能になる。
また、第2のシート部材の製造が容易であり、製造コストを低減できる。また切削時に、第2のシート部材に大きな力(インサート軸線方向への高荷重など)が作用しても、第2のシート部材が靱性により破損しにくくなる。なお、鋼材としては、例えばSKD等の鋼材の中でも高硬度のものを用いることが好ましい。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記切削インサートには、前記インサート軸線上を延びて該切削インサートの前記インサート軸線に交差する表裏面に開口する貫通孔が形成されており、前記インサート取付座に装着されて、前記切削インサートを前記インサート軸線回りに回転自在に支持する支持軸を備え、前記支持軸は、前記貫通孔内に挿通されて前記インサート取付座に取り付けられる軸部と、前記軸部に接続されるとともに、前記貫通孔の内径よりも大径とされ、前記切削インサートの前記表裏面のうち表面との間に隙間をあけて配置される頭部と、を有し、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向への移動が規制可能に構成される。
この場合、切削インサートは、その貫通孔内に挿通された支持軸の軸部によって、インサート軸線に直交するインサート径方向の内側から支持されつつ、インサート取付座に対して従動回転させられ、かつ、支持軸の頭部によって抜け止めされている。そして、支持軸の頭部と切削インサートの表面との間の隙間(クリアランス)を所期する値に設定して、インサート取付座に対する支持軸のインサート軸線方向への移動を規制することができる。
従って、支持軸により切削インサートを、インサート軸線回りに安定して回転させることができる。また支持軸により、切削インサート(及び複数のシート部材)が、インサート取付座からインサート軸線方向に大きく離間するような移動を規制することができて、がたつきの発生を抑えることができる。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向の位置が調整可能とされ、前記頭部は、前記切削インサートの前記表面に当接可能とされ、前記軸部は、前記インサート取付座に螺着されるネジ部と、当該軸部の中心軸に垂直な断面が多角形状をなす被係止部と、を有し、前記被係止部に前記中心軸回りに形成された複数の平坦面のうちの1つに当接可能とされるとともに、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記中心軸回りの回転を規制する係止部を備える。
この場合、インサート取付座に対する支持軸のインサート軸線方向の位置を調整することで、該支持軸の頭部と切削インサートの表面との間の隙間(クリアランス)を所期する値に設定することができ、この調整後には、インサート取付座に対する支持軸のインサート軸線方向への移動を規制することができる。詳しくは、支持軸の軸部に形成されたネジ部をインサート取付座にねじ込む程度(ねじ込み量)を調整することによって、インサート取付座に対して支持軸を軸部の中心軸方向(インサート軸線方向)に精度よく移動させることができ、支持軸の位置の微調整が容易である。
また、支持軸の軸部に形成された断面多角形状の被係止部のうち、1つの平坦面に対して係止部を当接させることによって、インサート取付座に対する支持軸の回転を確実に規制して、支持軸のインサート軸線方向への移動を規制することができる。
また、例えば、第2のシート部材がインサート軸線回りに周方向に均等に摩耗して、該第2のシート部材のインサート軸線方向の厚さが小さくなったときには、切削インサートとインサート取付座との間の距離の減少量に応じて、支持軸をインサート軸線方向に移動させることにより、所期する上記隙間(クリアランス)となるように位置を微調整することができる。また、この微調整後には、支持軸の位置を固定して、所期する上記隙間を維持できる。
具体的には、下記に説明する手順により、支持軸の頭部と切削インサートの表面との間の隙間(クリアランス)を所期する値に容易に設定できる。
すなわち、まず、支持軸の頭部が切削インサートの表面に当接するまで、該支持軸のネジ部をインサート取付座にねじ込む。支持軸の頭部が切削インサートの表面に当接したら、係止部を該支持軸の被係止部に当接させる。
このとき、係止部が、被係止部の平坦面における最も中心軸に近い部分(つまり被係止部のうち最も小径となる部分)以外の部位に当接した場合には、支持軸をインサート軸線回りに回転させることができる(インサート取付座へのねじ込みを緩めることができる)ので、支持軸をねじの緩み側へ僅かに回転させる。
なお、この際に支持軸を回転させる角度(中心軸回りの回転角)は、被係止部の断面に表れる多角形の1つの外角以下であることが好ましい。具体的には、例えば被係止部が断面正六角形状をなす場合には、回転角は60°以下である。また、被係止部が断面正八角形状をなす場合には、回転角は45°以下である。
そして、再び係止部を被係止部に当接させる。この作業を繰り返すことにより、係止部が、被係止部の平坦面に正面から当接し(つまり平坦面の最も小径となる部分に当接し)、この当接によって、支持軸のそれ以上の回転が規制されて、該支持軸の中心軸方向(インサート軸線方向)への移動も規制される。
またこれにより、支持軸の頭部と切削インサートの表面との間に、支持軸のネジ部のねじピッチと上記回転角に応じた所定の隙間(クリアランス)が形成される。具体的に、例えば支持軸のネジ部のねじピッチ(リード)が中心軸回りの一周あたり中心軸方向へ向けて0.5mmである場合、支持軸の頭部が切削インサートの表面に当接した状態から、該支持軸をねじの緩み側に60°以下の範囲で回転させて係止部で固定した場合には、0.5mm×60°/360°=0.0833mmより、0.0833mm以下の上記隙間(クリアランス)を精度よく設定することができる。また、支持軸をねじの緩み側に45°以下の範囲で回転させて係止部で固定した場合には、0.5mm×45°/360°=0.0625mmより、0.0625mm以下の上記隙間(クリアランス)を精度よく設定することができる。
なお、上記隙間は、例えば0.01〜0.6mmの範囲に設定されることが好ましく、より望ましくは、0.03〜0.2mmの範囲に設定される。
また、係止部が、最初から、被係止部の平坦面に正面から当接(平坦面の最も小径の部分に当接)した場合には、この当接によって、支持軸のそれ以上の回転が規制されるので、一旦係止部を平坦面から後退させた後、支持軸をねじの緩み側へ僅かに回転させて、上述と同様の手順で作業を行えばよい。
このように、上記構成によれば、作業者に熟練を要することなく、支持軸の中心軸方向(インサート軸線方向)の位置合わせを正確かつ簡単に行うことができ、該支持軸の頭部と切削インサートの表面との隙間(クリアランス)を精度よく設定できる。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記支持軸の前記頭部と、前記切削インサートとの間に、前記切削インサートを、前記第2のシート部材に対して前記インサート軸線方向に付勢する付勢手段として圧縮ばねが介装される。
この場合、後述の作用効果が得られる付勢手段を、圧縮コイルばねや皿バネ等の圧縮ばねにより簡単に形成することができ、切削インサートの取り付け機構の製造やメンテナンスが容易である。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記切削インサートを、前記第2のシート部材に対して前記インサート軸線方向に付勢する付勢手段を備えることが好ましい。
この場合、付勢手段が、切削インサートを第2のシート部材に向けて付勢するので、切削インサートが第2のシート部材に密着させられるとともにがたつきが抑えられて、切削時における切削インサートの着座安定性をより顕著に向上させることが可能になる。
具体的に、付勢手段により付勢された切削インサートは、概ね被削材に切り込んだ際に受ける力のみによって回転させられるため、各切り込み毎に所期する回転量を付与しやすく、安定した回転が得られやすい。
すなわち、上記構成とは異なり、付勢手段により付勢されていない単に回転自在とされた切削インサートでは、切削時に、切削インサートが被削材から受ける力以外の遠心力やそれ以外の慣性力、切屑やクーラントとの接触による力など種々の力が作用して、切削インサートが不規則に回転させられるため、該切削インサートに各切り込み毎に所期する回転量を付与しにくく、安定した回転が得られにくくなるおそれがある。
一方、本発明の上記構成によれば、切削インサートに所期する回転を安定して付与しやすくなり、該切削インサートの切れ刃全体が満遍なく(均等に)切削加工に寄与することとなって、良好な切削状態を安定して維持することが可能になる。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記切削インサートの前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記第2のシート部材に当接する裏面、及び、前記第2のシート部材の前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記切削インサートに当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されていることが好ましい。
この場合、切削インサートの裏面、及び、該裏面に当接する第2のシート部材の表面の、いずれか一方又は両方に、潤滑被膜が形成されており、つまり切削インサートと第2のシート部材との間に潤滑被膜が介在しているので、これらが安定して摺動しやすくなるとともに、切削インサートと第2のシート部材とがインサート軸線回りに安定して相対回転させられる。
なお、被削材から受ける力により回転させられる部材である切削インサートの裏面に、潤滑被膜が形成される場合には、被膜の偏摩耗を防止でき、より好ましい。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記第2のシート部材の前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記他のシート部材に当接する裏面、及び、前記他のシート部材の前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記第2のシート部材に当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されていることが好ましい。
この場合、第2のシート部材の裏面、及び、該裏面に当接する他のシート部材の表面の、いずれか一方又は両方に、潤滑被膜が形成されており、つまり第2のシート部材と他のシート部材との間に潤滑被膜が介在しているので、これらが安定して摺動しやすくなるとともに、第2のシート部材と他のシート部材とがインサート軸線回りに安定して相対回転させられる。
なお、被削材から受ける力により回転させられる部材である第2のシート部材の裏面に、潤滑被膜が形成される場合には、被膜の偏摩耗を防止でき、より好ましい。
このように、切削インサートと第2のシート部材の間、又は/及び、第2のシート部材と他のシート部材の間に、潤滑被膜が設けられていることにより、切削時に被削材から受ける力によって、切削インサートや第2のシート部材が安定的に回転しやすくなり、上述した偏摩耗を抑制する効果がより顕著なものとなる。
さらに、インサート軸線方向に隣接する部材同士の間に潤滑被膜が介在することによって、該潤滑被膜を介して当接するこれら部材同士が滑りやすくなり、これら部材(特に第2のシート部材)の摩耗そのものを顕著に抑制することができる。
より詳しくは、第2のシート部材のインサート軸線回りの回転状態には、下記の3つのモードが考えられる。
1.切削インサートとの摩擦抵抗により回転するモード。
2.他のシート部材との摩擦抵抗により回転しなくなるモード。
3.上記1.2.が混在するモード(回転と回転停止が交互に繰り返されるモード)。
そして、本発明の上記構成によれば、潤滑被膜が設けられることにより、上記2.のモードを確実に回避できるようになっている。
また、本発明の切削インサートの取り付け機構において、前記潤滑被膜は、潤滑剤からなる膜、PVD膜、及びめっき膜のいずれかであることが好ましい。
このように、潤滑被膜が、潤滑剤からなる膜、PVD膜、及びめっき膜のいずれかで形成されることにより、該潤滑被膜のメンテナンスを概ね必要とすることなく、高い潤滑性能を安定して維持することができる。
具体的に、潤滑被膜が、潤滑剤からなる膜で形成される場合は、この潤滑被膜を簡単に作製することができ、かつ、種々の所期する性能(摩擦抵抗、回転力、寿命等)を安定して付与することが可能である。また、潤滑被膜が、PVD膜で形成されていたり、めっき膜で形成されている場合には、所期する潤滑性能が得られつつ、該潤滑被膜の膜厚制御等が容易である。
また、本発明の刃先回転式ミーリング工具は、上述した切削インサートの取り付け機構と、前記インサート取付座が形成された工具本体と、を備えたことを特徴とする。
上述した切削インサートの取り付け機構を、例えば、円柱状や円盤状をなし工具軸線回りに回転させられる工具本体の先端外周部に、工具軸線回りの工具周方向に間隔をあけて複数配設して、刃先回転式ミーリング工具に採用することができる。つまり刃先回転式ミーリング工具は、工具本体がその工具軸線回りに回転させられて、被削材を転削加工するように構成される。
この刃先回転式ミーリング工具は、上述の切削インサートの取り付け機構を備えているので、高精度な転削加工(ミーリング加工)を安定して行うことができる。
また、本発明の刃先回転式ターニング工具は、上述した切削インサートの取り付け機構と、前記インサート取付座が形成された工具本体と、を備えたことを特徴とする。
上述した切削インサートの取り付け機構を、例えば、軸状をなす工具本体の先端部に配設して、刃先回転式ターニング工具に採用することができる。つまり刃先回転式ターニング工具は、回転する被削材を旋削加工するように構成される。
この刃先回転式ターニング工具は、上述の切削インサートの取り付け機構を備えているので、高精度な旋削加工(ターニング加工)を安定して行うことができる。
本発明の切削インサートの取り付け機構、並びに、これを用いた刃先回転式ミーリング工具及び刃先回転式ターニング工具によれば、シート部材やインサート取付座の偏摩耗を抑制して、切削インサートの着座安定性を良好に維持することができ、これにより高精度な切削加工を安定して行うことができる。
本発明の一実施形態に係る切削インサートの取り付け機構を備えた刃先回転式ミーリング工具を示す正面図(刃先回転式ミーリング工具を工具軸線方向の先端から基端側へ向けて見た図)である。 図1の刃先回転式ミーリング工具のA矢視を示す側面図である。 図1の刃先回転式ミーリング工具のB矢視を示す側面図である。 図1の刃先回転式ミーリング工具の切削インサートの取り付け機構を分解して示す斜視図である。 図1の刃先回転式ミーリング工具の切削インサートの取り付け機構を示す断面図である。 図5のD−D断面を示す図である。 本発明の一実施形態に係る切削インサートの取り付け機構に用いられる切削インサートを示す斜視図である。 図7の切削インサートの上面図である。 図7の切削インサートの側断面図(縦断面図)である。 本発明の一実施形態に係る切削インサートの取り付け機構に用いられるシート部材を示す(a)上面図、(b)側断面図(縦断面図)である。 本発明の一実施形態に係る切削インサートの取り付け機構に用いられる支持軸を示す斜視図である。 図11の支持軸の(a)上面図、(b)側面図である。 本発明の一実施形態に係る切削インサートの取り付け機構の変形例を示す断面図である。 図13のE−E断面を示す図である。 図13の切削インサートの取り付け機構に用いられる支持軸を示す斜視図である。 図15の支持軸の(a)上面図、(b)側面図である。 図14の切削インサートの取り付け機構において、係止部の変形例を示す断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る切削インサートの取り付け機構1を備えた刃先回転式ミーリング工具30について、図面を参照して説明する。
〔切削インサートの取り付け機構及び刃先回転式ミーリング工具の概略構成〕
図1〜図6に示されるように、本実施形態の刃先回転式ミーリング工具30は、鋼材等で形成された工具本体2と、超硬合金等の硬質材料で形成された切削インサート3と、を備えており、工具軸線O回りに回転させられる工具本体2の先端外周部に形成されたインサート取付座4に、円板状をなす切削インサート3がそのインサート軸線C回りに回転可能とされて、着脱可能に装着される。
切削インサート3は、インサート軸線C回りに延びる円形状の切れ刃5を有する、所謂丸駒インサートである。インサート取付座4に取り付けられた切削インサート3は、その切れ刃5が、工具本体2の先端側及び径方向外側に突出して配置される。
本実施形態の切削インサートの取り付け機構1は、切削インサート3と、インサート取付座4と、切削インサート3とインサート取付座4との間に介装されてインサート軸線C方向に重なる複数のシート部材21、22と、を少なくとも備えている。また、本実施形態の刃先回転式ミーリング工具30は、上記切削インサートの取り付け機構1と、インサート取付座4が形成された工具本体2と、を有している。
刃先回転式ミーリング工具30は、その工具本体2の基端部(シャンク部)が工作機械(不図示)の主軸に取り付けられ、工具軸線O回りの工具回転方向Tに回転させられて、耐熱合金などの難削材等の被削材の転削加工(ミーリング加工)に供される。
この刃先回転式ミーリング工具30は、切削インサート3が被削材に切り込んで加工する際に切れ刃5が受ける力(切削力又は切削抵抗であり、刃先力又はエッジフォースの成分を含む)によって、インサート取付座4に対して該切削インサート3がインサート軸線C回りに従動(受動)的に回転する、ロータリーミーリング工具である。
〔本明細書で用いる向き(方向)の定義〕
本明細書においては、工具本体2の工具軸線O方向に沿うインサート取付座4側を工具先端側(図2及び図3における下側)といい、工具軸線O方向に沿うインサート取付座4とは反対側(工作機械の主軸側)を工具基端側(図2及び図3における上側)という。
また、工具軸線Oに直交する方向を工具径方向といい、工具径方向のうち、工具軸線Oに接近する向きを工具径方向の内側といい、工具軸線Oから離間する向きを工具径方向の外側という。
また、工具軸線O回りに周回する方向を工具周方向といい、工具周方向のうち、切削時に主軸により工具本体2が回転させられる向きを工具回転方向Tといい、これとは反対の回転方向を、工具回転方向Tとは反対側(つまり反工具回転方向)という。
また、切削インサート3のインサート軸線Cが延在する方向をインサート軸線C方向といい、図9に示される切削インサート3の縦断面視(側断面視)で、インサート軸線C方向に沿って上から下へ向かう方向を、インサート軸線C方向の表面9から裏面10側といい、インサート軸線C方向に沿って下から上へ向かう方向を、インサート軸線C方向の裏面10から表面9側という。なお、インサート軸線C方向に沿って切削インサート3の表裏面9、10からインサート内部へ向かう方向を、インサート軸線C方向のインサート内側といい、インサート内部から表裏面9、10へ向かう方向を、インサート軸線C方向のインサート外側ということがある。
また、インサート軸線Cに直交する方向をインサート径方向といい、インサート径方向のうち、インサート軸線Cに接近する向きをインサート径方向の内側といい、インサート軸線Cから離間する向きをインサート径方向の外側という。
また、インサート軸線C回りに周回する方向をインサート周方向という。
〔工具本体〕
図1〜図4において、工具本体2は、円柱状又は円盤状をなしており、その中心軸である工具軸線O回りに、主軸により回転させられる。本実施形態の例では、工具本体2は円柱状をなしており、該工具本体2の先端部(刃部)に比べて、該先端部以外の部位(シャンク部)が大径に形成されている。また、工具本体2の先端部は、工具先端側へ向かうに従い縮径されている。
工具本体2の先端外周部には、工具周方向に互いに間隔をあけて、該先端外周部から凹状に切り欠かれるように複数のチップポケット6が形成されている。これらチップポケット6において、工具回転方向Tを向く壁面には、切削インサート3が着脱可能に装着されるインサート取付座4がそれぞれ形成されている。
また、特に図示していないが、チップポケット6には、インサート取付座4に装着された切削インサート3に向けて、クーラント孔が開口していてもよい。この場合、クーラント孔は、工具本体2の内部を工具軸線O方向に沿うように延びて形成されるとともに、該工具本体2を貫通し、工具本体2の基端部に装着される工作機械の主軸に連通する。クーラント孔内には、主軸を通して油性又は水溶性の切削剤(クーラント)が流入され、この切削剤はクーラント孔内を工具先端側へ向けて流れていき、該クーラント孔のチップポケット6への開口部分から切削インサート3へ向けて噴出される。なお、クーラント孔は、設けられていなくてもよい。
また、工具本体2の先端部において工具周方向に隣り合うチップポケット6同士の間には、該先端部の外周面に開口するとともに、工具径方向に沿うように延びて後述するインサート取付座4の支持軸装着孔4c内に連通するネジ孔7が形成されている。
図4〜図6において、ネジ孔7には、イモネジ(係止部)18が螺着されており、イモネジ18はネジ孔7内に収容されるとともに、支持軸装着孔4c内に突出可能である。
〔インサート取付座〕
図4において、インサート取付座4には、工具回転方向Tを向く取付面4aと、取付面4aの周縁部から立ち上がる壁面4bと、取付面4aに穿設された支持軸装着孔4cと、が形成されている。また、このインサート取付座4には、切削インサート3と取付面4aとの間に介装される円板状の複数のシート部材21、22が着脱可能に装着される。
取付面4aは、切削インサート3の形状に対応して略円形平面状に形成されている。
図3に示される工具本体2の側面視(インサート取付座4の側面視)で、取付面4aは、工具本体2の工具先端側(図3における下側)へ向かうに従い漸次工具回転方向Tとは反対側(図3における右側)へ向かって傾斜している。
壁面4bは、取付面4aの周縁部から工具回転方向Tへ向けて立ち上がるように形成されており、本実施形態の例では、取付面4aにおける工具基端側の端縁から工具径方向の内側の端縁にわたって延在するように形成されている。また本実施形態では、壁面4bが、後述する第1のシート部材21の外周形状に対応するように凹曲面状をなしているとともに、該第1のシート部材21の外周を、工具基端側から工具径方向の内側にわたって囲うように形成されている。
なお、本実施形態においては図5に示されるように、壁面4bと第1のシート部材21との間に若干の隙間が設けられているが、これに代えて、壁面4bを第1のシート部材21の外周に当接させて係止することとしてもよい。この場合、壁面4bは、インサート取付座4に対する第1のシート部材21のインサート軸線C回りの回転を規制するように機能する。
図5において、支持軸装着孔4cは、多段円柱孔状をなしており、該支持軸装着孔4cにおいて取付面4aに開口する端部(開口部)の内径は、該開口部よりも深い位置に配置され雌ネジ加工が施された雌ネジ部4dの内径よりも、大きくされている。また、支持軸装着孔4cのうち、前記開口部と雌ネジ部4dとの間に位置する中間部の内径は、該支持軸装着孔4cにおいて最も大きくされている。なお、本実施形態では、支持軸装着孔4cが、工具周方向に隣り合うチップポケット6同士を連通するように工具本体2の先端部に形成された貫通孔となっているが、これに代えて、取付面4aにのみ開口する止め穴としてもよい。
〔切削インサート〕
図7〜図9に示されるように、切削インサート3は、インサート軸線Cに交差する(インサート軸線Cに略直交する)表裏面9、10(表面9及び裏面10)と、これら表裏面9、10の周縁同士を接続する外周面11と、を有している。
なお、本明細書でいう「インサート軸線Cに交差する表裏面9、10」とは、インサート軸線Cが直接的に表裏面9、10に交差している構成に限らず、例えば本実施形態のように、インサート軸線Cが表裏面9、10に開口する後述する貫通孔14内に位置しつつも、該インサート軸線Cがこれら表裏面9、10の中心(仮想中心)を貫いている構成を含んでいる。
また、外周面11は、表裏面9、10の周縁同士を、インサート軸線C方向に沿うように繋いでいる。
図3及び図5に示されるように、切削インサート3が工具本体2のインサート取付座4に装着された状態で、表裏面9、10のうち、表面9が、工具回転方向Tを向くように配置され、裏面10が、工具回転方向Tとは反対側を向くように配置されるとともに、インサート取付座4に配設された後述する第2のシート部材22に着座される。
図7〜図9において、表面9の周縁には、インサート周方向に沿って延びる円形状をなし、インサート軸線Cに直交する仮想平面(不図示)上に配置された切れ刃5が形成されている。切れ刃5は、表面9における該切れ刃5以外の部位よりもインサート軸線C方向の裏面10から表面9側(インサート軸線C方向のインサート外側)へ向けて突出している。
また、表面9における切れ刃5のインサート径方向の内側には、該切れ刃5からインサート径方向の内側へ向かうに従い漸次インサート軸線C方向の表面9から裏面10側(インサート軸線C方向のインサート内側)へ向けて傾斜するテーパ状のすくい面12が形成されている。
図9に示される切削インサート3のインサート軸線Cを含む縦断面視において、すくい面12は、切れ刃5からインサート径方向の内側へ向かって、緩傾斜部12aと、緩傾斜部12aよりも傾斜が大きい急傾斜部12bと、をこの順に備えている。具体的には、すくい面12の急傾斜部12bにおけるインサート径方向に沿う単位長さあたりのインサート軸線C方向へ向けた変位量が、緩傾斜部12aにおける前記変位量よりも大きくされている。
図7〜図9において、表面9におけるすくい面12のインサート径方向の内側には、インサート軸線Cに垂直な2つの平面部13、15と、これら平面部13、15同士を接続するインサート軸線Cに平行な内周壁16と、が形成されている。
平面部13、15は、それぞれ円形リング状をなしている。これら平面部13、15のうち、すくい面12のインサート径方向の内側に隣接する平面部13の直径は、該平面部13よりもインサート径方向の内側に配置される平面部(頭部当接部)15の直径よりも大きくなっている。内周壁(頭部収容部)16は、大径の平面部13におけるインサート径方向の内側の周縁と、小径の平面部15におけるインサート径方向の外側の周縁と、をインサート軸線C方向に繋いでいる。
平面部15のインサート径方向の内側には、貫通孔14が開口している。
切削インサート3には、インサート軸線C上を延びて表裏面9、10に開口する貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、多段円柱孔状をなしており、表面9に開口する大径部(付勢手段収容部)14aと、大径部14aよりもインサート軸線C方向の表面9から裏面10側に配置される小径部(軸部支持部)14bと、を有している。つまりこの貫通孔14は、インサート軸線C方向の表面9から裏面10側へ向かって、大径部14a及び小径部14bをこの順に備えているとともに、段階的に縮径されている。
具体的に、貫通孔14の大径部14aは、表面9のうち平面部15のインサート径方向の内側に開口している。
また、貫通孔14における小径部14bよりもインサート軸線C方向の表面9から裏面10側に位置する部分は、該小径部14bよりも大径に形成されており、前記部分は裏面10に開口している。
また、切削インサート3の外周面11のうち、切れ刃5に隣接する部分が逃げ面とされている。本実施形態では、外周面11全体が、インサート軸線Cに平行に形成されているとともに、インサート軸線Cを中心とする円筒面状をなしていて、この切削インサート3はネガティブインサートとされている。
また、裏面10における外周縁部は、該外周縁部以外の部位よりもインサート軸線C方向の裏面10から表面9側へ向けて窪まされている。裏面10における前記外周縁部及び貫通孔14以外の部位は、後述する第2のシート部材22の表面(切削インサート3側を向く面)に着座する着座面とされている。本実施形態の例では、切削インサート3の裏面10(着座面)が、インサート軸線Cに垂直な平面状をなしている。
〔複数のシート部材〕
図4及び図5に示されるように、切削インサートの取り付け機構1は、切削インサート3とインサート取付座4との間に、インサート軸線C方向に積層された複数のシート部材21、22を備えている。本実施形態では、切削インサート3とインサート取付座4との間に、円板状のシート部材21、22が2枚重ねて介装されている。
これらシート部材21、22のうち、インサート取付座4に対してインサート軸線C方向から当接するシート部材が、第1のシート部材21とされ、切削インサート3に対してインサート軸線C方向から当接するシート部材が、第2のシート部材22とされている。
本実施形態では、シート部材21、22は計2枚であり、よってこれら第1、第2のシート部材21、22同士も、インサート軸線C方向に互いに当接している。
また、第1、第2のシート部材21、22は、各中心軸がインサート軸線Cに同軸とされて、インサート取付座4に配置されている。本明細書では、これらシート部材21、22の中心軸についても、インサート軸線Cと同一の符号Cを用いて表し、またシート部材21、22の各中心軸を、インサート軸線Cと言い換えることがある。
図10(a)(b)に示されるように、本実施形態の例では、第1、第2のシート部材21、22が、互いに同一形状とされており、具体的には、互いに同一の外径寸法、内径寸法及び厚さ寸法とされている。シート部材21、22には、該シート部材21、22をインサート軸線C方向に貫通する円孔21a、22aが形成されている。これら円孔21a、22a内には、後述する支持軸17の軸部17aが挿通される。
図5において、インサート取付座4に当接する第1のシート部材21は、インサート取付座4の硬度よりも高い硬度を有する材料により形成されている。また、第2のシート部材22は、該第2のシート部材22のインサート軸線C方向の両側に隣接する切削インサート3及び他のシート部材(本実施形態においては第1のシート部材21)の各硬度よりも、低い硬度を有する材料又は同等の硬度を有する材料(つまり同等以下の硬度を有する材料)により形成されている。
具体的に本実施形態では、切削インサート3及び第1のシート部材21が、超硬合金により形成されており、第2のシート部材22は、超硬合金よりも硬度が低いSKD等の鋼材により形成されている。
なお、第2のシート部材22は、鋼材よりも高硬度の材料で形成されていてもよく、例えば超硬合金により形成されていてもよい。
そして、第1のシート部材21は、インサート取付座4に対して、インサート軸線C回りに回転不能に設けられており、第2のシート部材22は、切削インサート3及び他のシート部材(第1のシート部材21)に対して、インサート軸線C回りに回転可能に設けられている。
なお、本実施形態では、第1のシート部材21は、インサート取付座4に対して、該インサート取付座4との間の摩擦抵抗によって回転不能とされており、回転を規制するための特別な構造が設けられているわけではない。ただしこれに限定されるものではなく、例えば第1のシート部材21の外周に横断面視で直線状をなす切り欠き部を設けるとともに、該切り欠き部を壁面4bに当接させることで第1のシート部材21の回転を規制する構成などにより、第1のシート部材21をインサート取付座4に対して回転不能としてもよい。
特に図示していないが、切削インサート3の表裏面9、10のうち、第2のシート部材22に当接する裏面10、及び、第2のシート部材22のインサート軸線Cに交差する表裏面のうち、切削インサート3に当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されている。
また、第2のシート部材22の表裏面のうち、他のシート部材(第1のシート部材21)に当接する裏面、及び、他のシート部材のインサート軸線Cに交差する表裏面のうち、第2のシート部材22に当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されている。
具体的には、切削インサート3の裏面10及び該裏面10に当接する第2のシート部材22の表面の少なくともいずれかに潤滑被膜が形成されており、又は/及び、第2のシート部材22の裏面及び該裏面に当接する他のシート部材(第1のシート部材21)の表面の少なくともいずれかに潤滑被膜が形成されている。
なお、本実施形態では、製造容易性などの観点から、第2のシート部材22における表裏面(表面及び裏面)に、潤滑被膜が形成されている。
上記潤滑被膜は、潤滑剤からなる膜、PVD膜、及びめっき膜のいずれかである。
具体的に本実施形態では、潤滑被膜として、エポキシ系、グラファイト系などの塗料タイプの潤滑剤からなる膜、つまり有機系結合剤又は無機系結合剤を含有し、塗布面に塗布した後、加熱硬化又は常温乾燥させることにより固化して形成された乾性被膜潤滑剤を採用している。このような潤滑剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング社の製品名:モリコート(登録商標)を挙げることができる。本実施形態においては、潤滑被膜の静摩擦係数が、例えば5/100以下となっている。
なお、潤滑被膜として、PVD膜を採用する場合には、例えばクロム系PVD膜等を用いることができる。また、潤滑被膜として、めっき膜を採用する場合には、例えば硬質クロムめっき膜等を用いることができる。
〔支持軸〕
図4、図5、図11及び図12(a)(b)に示されるように、切削インサートの取り付け機構1は、インサート取付座4に装着されて、切削インサート3をインサート軸線C回りに回転自在に支持する支持軸17を備えている。
支持軸17は、切削インサート3の貫通孔14内に挿通されてインサート取付座4に取り付けられる軸部17aと、軸部17aに接続されるとともに、貫通孔14の内径よりも大径とされ、切削インサート3の表裏面9、10のうち表面9との間に隙間をあけて配置され、かつ、表面9に当接可能とされた頭部17bと、を有している。
また、支持軸17は、その中心軸がインサート軸線Cに同軸に配置されて、インサート取付座4に着脱可能に装着されている。本明細書では、支持軸17の中心軸についても、インサート軸線Cと同一の符号Cを用いて表し、また支持軸17の中心軸を、インサート軸線Cと言い換えることがある。
図5において、軸部17aは、切削インサート3の貫通孔14及び第1、第2のシート部材21、22の円孔21a、22aに挿通されるとともに、これら切削インサート3及び複数のシート部材21、22を、インサート径方向の内側から摺動可能に支持する円柱状の軸本体17eと、インサート取付座4に螺着される雄ネジ部(ネジ部)17dと、軸部17aの中心軸(インサート軸線C)に垂直な断面が多角形状をなす被係止部17cと、を有している。
本実施形態の例では、軸部17aにおいて、頭部17bからインサート軸線C方向に離間する向きに、軸本体17e、被係止部17c及び雄ネジ部17dがこの順に配置されている。また、軸本体17e、被係止部17c、雄ネジ部17dは、この順に外径が小さくなっている。
なお、軸部17aにおいて、被係止部17cと雄ネジ部17dのインサート軸線C方向の位置が、互いに入れ替えられて形成されていてもよい。この場合、軸本体17e、雄ネジ部17d、被係止部17cは、この順に外径が小さくされる。
軸本体17eは、軸部17aにおいて最も大径に形成されており、頭部17bに隣接して配置されている。
また、図6に示されるように本実施形態の例では、被係止部17cが、インサート軸線Cに垂直な横断面視で正六角形状をなしている。すなわち、この被係止部17cには、インサート軸線C回りに複数の平坦面が形成されており、本実施形態の例では、これら平坦面が6つ設けられている。
なお、被係止部17cは、横断面視で多角形状をなしているとともに、インサート周方向に沿って配列する複数の平坦面を備えていればよいことから、上述した断面(横断面視)正六角形状に限定されるものではなく、例えばそれ以外の断面四角形状、断面五角形状、断面七角形状、断面八角形状、・・・等に形成されていてもよい。また、図11に示されるように、被係止部17cにおいてインサート周方向に隣り合う平坦面同士の間には、断面円弧状をなす凸曲面部が形成されていてもよい。
図5に示されるように、雄ネジ部17dは、インサート取付座4の雌ネジ部4dに螺着される。また、雌ネジ部4dに対する雄ネジ部17dのねじ込み量を調整することにより、支持軸17は、インサート取付座4に対してインサート軸線C方向の位置が調整可能とされている。
また、頭部17bには、レンチ等の作業用工具を係止可能な係止穴が形成されている。また、本実施形態の例では、頭部17bが、軸部17aから中心軸方向(インサート軸線C方向)に離間するに従い漸次縮径して形成されており、頭部17bの外周面が、テーパ状をなしている。
このように構成された支持軸17が、切削インサート3及び第1、第2のシート部材21、22に挿通され、インサート取付座4に装着された状態において、図5に示されるように、該支持軸17の頭部17bは、切削インサート3の表面9における平面部(頭部当接部)15との間に所定の隙間(クリアランス)をあけて配置される。なお、前記隙間は、例えば0.01〜0.6mmの範囲に設定されることが好ましく、より望ましくは、0.03〜0.2mmの範囲に設定される。
また、雌ネジ部4dに対する雄ネジ部17dのねじ込み量を調整することにより(深くねじ込むことにより)、頭部17bは、表面9の平面部15に当接可能である。
また、頭部17bにおける少なくともインサート軸線C方向の軸部17a側の端部が、切削インサート3の表面9における内周壁(頭部収容部)16内に収容される。
また、軸部17aの軸本体17eが、切削インサート3の貫通孔14における小径部(軸部支持部)14b、及び、複数のシート部材21、22の円孔21a、22aを、インサート径方向の内側から支持する。
なお、図5に示される例では、軸部17aの軸本体17eにおける被係止部17c側の部分が、インサート取付座4における支持軸装着孔4cの開口部に嵌合するように挿入されているとともに、該開口部によって軸部17aは、インサート径方向の外側から支持されている。
〔係止部〕
図4〜図6に示されるように、切削インサートの取り付け機構1は、被係止部17cにインサート軸線C回りに形成された複数の平坦面のうちの1つに当接可能とされるとともに、インサート取付座4に対する支持軸17のインサート軸線C回りの回転を規制する係止部として、ネジ孔7に螺着するイモネジ18を備えている。
本実施形態では、イモネジ18の先端が、支持軸17の被係止部17cに当接して該支持軸17のインサート周方向の回転を規制することにより、インサート取付座4に対する支持軸17のインサート軸線C方向への移動を規制可能に構成されている。
〔付勢手段〕
図4及び図5に示されるように、切削インサートの取り付け機構1は、切削インサート3を、第2のシート部材22に対してインサート軸線C方向に付勢する付勢手段として、圧縮コイルばね(圧縮ばね)23を備えている。圧縮コイルばね23は、その中心軸がインサート軸線Cに同軸とされて、支持軸17の頭部17bと、切削インサート3の貫通孔14における大径部14aの底面との間に、インサート軸線C方向に縮むように弾性変形させられた状態で介装されている。
圧縮コイルばね23は、切削インサート3の大径部(付勢手段収容部)14a内に収容される。
なお、付勢手段として、圧縮コイルばね23を用いる代わりに、皿バネ(圧縮ばね)を用いてもよく、或いはそれ以外の板バネ等を用いてもよい。
〔インサート取付座への切削インサートの装着姿勢〕
図3に示されるように、本実施形態の例では、インサート取付座4に切削インサート3が装着された状態で、該切削インサート3のインサート軸線C(図3においては不図示)が、工具回転方向Tに向かうに従い漸次工具先端側へ向けて傾斜して延びている。ただしこれに限定されるものではなく、切削インサート3のインサート軸線Cは、工具回転方向Tに向かうに従い漸次工具径方向の外側へ向けて傾斜して延びていてもよく、或いは、工具回転方向Tに向かうに従い漸次工具先端側かつ工具径方向の外側へ向けて傾斜して延びていてもよい。
具体的に、切削インサート3のインサート軸線Cが傾斜する向きは、例えば、切削時において支持軸17に作用するインサート径方向の力を十分に抑えることができ、かつ、切削インサート3をより従動回転させやすくできること等を考慮して設定される。
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の切削インサートの取り付け機構1では、切削時に、切削インサート3が切れ刃5で被削材に切り込み、この際に被削材から受ける力によって、切削インサート3はインサート取付座4に対してインサート軸線C回りに従動回転させられる。
切削インサート3とインサート取付座4との間には、複数のシート部材21、22が重ねて介装されており、これらシート部材21、22のうち、インサート取付座4の直上に隣接配置された第1のシート部材21は、インサート取付座4に対して回転不能である一方、切削インサート3の直下に隣接配置された第2のシート部材22は、該切削インサート3の回転に伴ってインサート軸線C回りに回転(供回り)させられる。
本実施形態によれば、インサート取付座4に対する第1のシート部材21の回転が規制されているので、これらインサート取付座4と第1のシート部材21との摩擦が抑えられて、従来課題とされていたインサート取付座4の偏摩耗を防止することができる。従って、このインサート取付座4が形成された工具本体2を、長期に亘り安定して使用することができる。
また、第2のシート部材22は、そのインサート軸線C方向の両側に隣接する切削インサート3及び他のシート部材(第1のシート部材21)に対して回転可能とされており、つまり第2のシート部材22は切削インサート3及び他のシート部材21とは別体とされているので、本実施形態で説明したように例えばこの第2のシート部材22の硬度を、切削インサート3及び他のシート部材21の各硬度に比べて、同等以下の値とすることができる。従って、切削インサート3や他のシート部材21との摩擦により、第2のシート部材22を優先的に摩耗させることが可能である。
そして、この第2のシート部材22の摩耗は、該第2のシート部材22が回転することによって、第2のシート部材22のインサート軸線C回りの全周に亘って進行していく。つまり、第2のシート部材22は、インサート軸線C回りに均等に摩耗させられていくため、偏摩耗が生じにくくされている。
このように、本実施形態によれば、複数のシート部材21、22及びインサート取付座4の偏摩耗を抑制できるので、切削インサート3の着座安定性を良好に維持することができる。
さらに、上述のように偏摩耗を防止する作用効果が得られつつも、切削インサートの取り付け機構1全体としては、省スペース化を図ることが可能である。つまり本実施形態は、切削インサート3とインサート取付座4との間に、複数のシート部材21、22を介装したシンプルな構成を採用しているので、例えば、従来構成よりも増加したシート部材の枚数(厚さ)に応じて、又はこの厚さ以上となるように、切削インサート3の厚さを減少させたり、インサート取付座4の位置を後退させるなどして、機構1全体をコンパクトに形成することが容易である。従って、種々様々な切削態様への要望に対応しやすい。
以上より、本実施形態によれば、シート部材21、22やインサート取付座4の偏摩耗が抑制されて、切削インサート3の着座安定性を良好に維持することができ、これにより高精度な切削加工を安定して行うことができる。
また、切削インサートの取り付け機構1全体をコンパクトに形成することが容易であり、省スペース化を図ることが可能である。
また本実施形態では、切削インサート3を、第2のシート部材22に対してインサート軸線C方向に付勢する付勢手段(圧縮コイルばね23)を備えているので、下記の作用効果を奏する。
すなわち上記構成によれば、付勢手段が、切削インサート3を第2のシート部材22に向けて付勢するので、切削インサート3が第2のシート部材22に密着させられるとともにがたつきが抑えられて、切削時における切削インサート3の着座安定性をより顕著に向上させることが可能になる。
具体的に、付勢手段により付勢された切削インサート3は、概ね被削材に切り込んだ際に受ける力のみによって回転させられるため、各切り込み毎に所期する回転量を付与しやすく、安定した回転が得られやすい。
すなわち、上記構成とは異なり、付勢手段により付勢されていない単に回転自在とされた切削インサートでは、切削時に、切削インサートが被削材から受ける力以外の遠心力やそれ以外の慣性力、切屑やクーラントとの接触による力など種々の力が作用して、切削インサートが不規則に回転させられるため、該切削インサートに各切り込み毎に所期する回転量を付与しにくく、安定した回転が得られにくくなるおそれがある。
一方、本実施形態の上記構成によれば、切削インサート3に所期する回転を安定して付与しやすくなり、該切削インサート3の切れ刃5全体が満遍なく(均等に)切削加工に寄与することとなって、良好な切削状態を安定して維持することが可能になる。
また、本実施形態では、支持軸17の頭部17bと、切削インサート3との間に、付勢手段として圧縮コイルばね(圧縮ばね)23が介装されるので、付勢手段を簡単に形成することができ、切削インサートの取り付け機構1の製造やメンテナンスが容易である。
なお、本実施形態では、圧縮コイルばね23が、切削インサート3の貫通孔14の大径部(付勢手段収容部)14a内に収容されているので、該圧縮コイルばね23が切屑やクーラントの影響を受けにくくされて、この圧縮コイルばね23の性能を安定して良好に維持することができる。
また、付勢手段として、圧縮コイルばね23以外の皿バネや板バネ等を用いた場合にも、上記同様の効果を得ることができる。
また本実施形態では、切削インサート3の表裏面9、10のうち、第2のシート部材22に当接する裏面10、及び、第2のシート部材22の表裏面のうち、切削インサート3に当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されているので、下記の作用効果を奏する。
すなわち上記構成によれば、切削インサート3の裏面10、及び、該裏面10に当接する第2のシート部材22の表面の、いずれか一方又は両方に、潤滑被膜が形成されており、つまり切削インサート3と第2のシート部材22との間に潤滑被膜が介在しているので、これらが安定して摺動しやすくなるとともに、切削インサート3と第2のシート部材22とがインサート軸線C回りに安定して相対回転させられる。
なお、被削材から受ける力により回転させられる部材である切削インサート3の裏面10に、潤滑被膜が形成される場合には、被膜の偏摩耗を防止でき、より好ましい。
また、第2のシート部材22の表裏面のうち、他のシート部材(第1のシート部材21)に当接する裏面、及び、他のシート部材の表裏面のうち、第2のシート部材22に当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されているので、下記の作用効果を奏する。
すなわち上記構成によれば、第2のシート部材22の裏面、及び、該裏面に当接する他のシート部材(第1のシート部材21)の表面の、いずれか一方又は両方に、潤滑被膜が形成されており、つまり第2のシート部材22と他のシート部材との間に潤滑被膜が介在しているので、これらが安定して摺動しやすくなるとともに、第2のシート部材22と他のシート部材とがインサート軸線C回りに安定して相対回転させられる。
なお、被削材から受ける力により回転させられる部材である第2のシート部材22の裏面に、潤滑被膜が形成される場合には、被膜の偏摩耗を防止でき、より好ましい。
このように、切削インサート3と第2のシート部材22の間、又は/及び、第2のシート部材22と他のシート部材(第1のシート部材21)の間に、潤滑被膜が設けられていることにより、切削時に被削材から受ける力によって、切削インサート3や第2のシート部材22が安定的に回転しやすくなり、上述した偏摩耗を抑制する効果がより顕著なものとなる。
さらに、インサート軸線C方向に隣接する部材(切削インサート3、シート部材21、22)同士の間に潤滑被膜が介在することによって、該潤滑被膜を介して当接するこれら部材同士が滑りやすくなり、これら部材(特に第2のシート部材22)の摩耗そのものを顕著に抑制することができる。
より詳しくは、第2のシート部材22のインサート軸線C回りの回転状態には、下記の3つのモードが考えられる。
1.切削インサート3との摩擦抵抗により回転するモード。
2.他のシート部材(第1のシート部材21)との摩擦抵抗により回転しなくなるモード。
3.上記1.2.が混在するモード(回転と回転停止が交互に繰り返されるモード)。
そして、本実施形態の上記構成によれば、潤滑被膜が設けられることにより、上記2.のモードを確実に回避できるようになっている。
なお、本実施形態では、付勢手段(圧縮コイルばね23)により切削インサート3が第2のシート部材22に押し付けられることで、切削インサート3は、被削材に切り込んだときのみ該被削材から受ける力によって、従動回転させられる。従って、第2のシート部材22においても、切削インサート3の回転状態に応じて、上記3.のモードに近い回転状態が付与されている。
具体的に、切削時には、切削インサート3がインサート軸線C回りに毎秒十数回転させられており、第2のシート部材22が、毎秒その半分程度の回転数で回転させられている。
また、本実施形態では、上記潤滑被膜が、潤滑剤からなる膜、PVD膜、及びめっき膜のいずれかで形成されているので、該潤滑被膜のメンテナンスを概ね必要とすることなく、高い潤滑性能を安定して維持することができる。
具体的に、潤滑被膜が、潤滑剤からなる膜で形成される場合は、この潤滑被膜を簡単に作製することができ、かつ、種々の所期する性能(摩擦抵抗、回転力、寿命等)を安定して付与することが可能である。また、潤滑被膜が、PVD膜で形成されていたり、めっき膜で形成されている場合には、所期する潤滑性能が得られつつ、該潤滑被膜の膜厚制御等が容易である。
また本実施形態では、切削インサート3は、その貫通孔14内に挿通された支持軸17の軸部17aによって、インサート径方向の内側から支持されつつ、インサート取付座4に対して従動回転させられ、かつ、支持軸17の頭部17bによって抜け止めされている。そして、支持軸17の頭部17bと切削インサート3の表面9との間の隙間(クリアランス)を所期する値に設定して、インサート取付座4に対する支持軸17のインサート軸線C方向への移動を規制することができる。
従って、支持軸17により切削インサート3を、インサート軸線C回りに安定して回転させることができる。また支持軸17により、切削インサート3(及び複数のシート部材21、22)が、インサート取付座4からインサート軸線C方向に大きく離間するような移動を規制することができて、がたつきの発生を抑えることができる。
また、例えば、第2のシート部材22がインサート軸線C回りに周方向に均等に摩耗して、該第2のシート部材22のインサート軸線C方向の厚さが小さくなったときには、切削インサート3とインサート取付座4との間の距離の減少量に応じて、支持軸17をインサート軸線C方向に移動させることにより、所期する上記隙間(クリアランス)となるように位置を微調整することができる。また、この微調整後には、支持軸17の位置を固定して、所期する上記隙間を維持できる。
具体的に、本実施形態では、支持軸17の軸部17aに形成された雄ネジ部(ネジ部)17dをインサート取付座4にねじ込む程度(ねじ込み量)を調整することによって、インサート取付座4に対して支持軸17を軸部17aの中心軸方向(インサート軸線C方向)に精度よく移動させることができ、支持軸17の位置の微調整が容易である。
また、支持軸17の軸部17aに形成された断面多角形状の被係止部17cのうち、1つの平坦面に対してイモネジ(係止部)18をねじ込み当接させることによって、インサート取付座4に対する支持軸17の回転を確実に規制して、支持軸17のインサート軸線C方向への移動を規制することができる。
より詳しくは、下記に説明する手順により、支持軸17の頭部17bと切削インサート3の表面9との間の隙間(クリアランス)を所期する値に容易に設定できる。
すなわち、まず、支持軸17の頭部17bが切削インサート3の表面9に当接するまで、該支持軸17の雄ネジ部17dをインサート取付座4の雌ネジ部4dにねじ込む。支持軸17の頭部17bが切削インサート3の表面9に当接したら、イモネジ18をねじ込んで該支持軸17の被係止部17cに当接させる。
このとき、イモネジ18の先端が、被係止部17cの平坦面における最も中心軸(インサート軸線C)に近い部分(つまり被係止部17cのうち最も小径となる部分)以外の部位に当接した場合には、支持軸17をインサート軸線C回りに回転させることができる(インサート取付座4の雌ネジ部4dへのねじ込みを緩めることができる)ので、支持軸17をねじの緩み側へ僅かに回転させる。
なお、この際に支持軸17を回転させる角度(インサート軸線C回りの回転角)は、被係止部17cの断面に表れる多角形の1つの外角以下であることが好ましい。具体的には、本実施形態のように被係止部17cが断面正六角形状をなす場合には、回転角は60°以下である。また、例えば被係止部17cが断面正八角形状をなす場合には、回転角は45°以下である。
そして、再びイモネジ18をねじ込んで、該イモネジ18の先端を被係止部17cに当接させる。この作業を繰り返すことにより、イモネジ18が、被係止部17cの平坦面に正面から当接し(つまり平坦面の最も小径となる部分に当接し)、この当接によって、支持軸17のそれ以上の回転が規制されて、該支持軸17の中心軸方向(インサート軸線C方向)への移動も規制される。
またこれにより、支持軸17の頭部17bと、切削インサート3の表面9の平面部15との間に、支持軸17の雄ネジ部17dのねじピッチと上記回転角に応じた所定の隙間(クリアランス)が形成される。具体的に本実施形態では、例えば支持軸17の雄ネジ部17dのねじピッチ(リード)が中心軸(インサート軸線C)回りの一周あたり中心軸方向へ向けて0.5mmである場合、支持軸17の頭部17bが切削インサート3の表面9に当接した状態から、該支持軸17をねじの緩み側に60°以下の範囲で回転させてイモネジ18で固定した場合には、0.5mm×60°/360°=0.0833mmより、0.0833mm以下の上記隙間(クリアランス)を精度よく設定することができる。
また、例えば被係止部17cが断面正八角形状をなすとともに、支持軸17をねじの緩み側に45°以下の範囲で回転させて、イモネジ18で固定した場合には、0.5mm×45°/360°=0.0625mmより、0.0625mm以下の上記隙間(クリアランス)を精度よく設定することができる。
また、イモネジ18の先端が、最初から、被係止部17cの平坦面に正面から当接(平坦面の最も小径の部分に当接)した場合には、この当接によって、支持軸17のそれ以上の回転が規制されるので、一旦イモネジ18の先端を平坦面から後退させた後、支持軸17をねじの緩み側へ僅かに回転させて、上述と同様の手順で作業を行えばよい。
このように、上記構成によれば、作業者に熟練を要することなく、支持軸17の中心軸方向(インサート軸線C方向)の位置合わせを正確かつ簡単に行うことができ、該支持軸17の頭部17bと切削インサート3の表面9との隙間(クリアランス)を精度よく設定できる。
また、本実施形態では、支持軸17の頭部17bのうち、少なくとも切削インサート3の表面9側に位置する部分が、該表面9における内周壁(頭部収容部)16内に収容されており、かつ、頭部17bのうち内周壁16内に収容されない露出部分については、表面9からインサート軸線C方向に離間するに従い漸次縮径して形成されている。
従って、切削インサート3の表面9上を流れる切屑が、支持軸17の頭部17bに強く当たって切削抵抗が増大させられたり、該頭部17bを摩耗させるようなことが抑制される。
また、本実施形態では、第1のシート部材21が、超硬合金により形成されているので、該第1のシート部材21の摩耗を顕著に防止することが可能になる。
また、第2のシート部材22が、鋼材又は超硬合金により形成されているので、下記の作用効果を奏する。
すなわち、第2のシート部材22を鋼材により形成した場合は、該第2のシート部材22の製造が容易であり、製造コストを低減できる。またこの場合、切削時に、第2のシート部材22に大きな力(インサート軸線C方向への高荷重など)が作用しても、第2のシート部材22が靱性により破損しにくくなる。なお、第2のシート部材22を鋼材で形成する場合には、例えばSKD等の鋼材の中でも高硬度のものを用いることが好ましい。
また、第2のシート部材22を超硬合金により形成した場合は、該第2のシート部材22の偏摩耗は勿論のこと、摩耗そのものが顕著に抑制されて、工具寿命を長寿命化することができる。
また、第2のシート部材22が、この第2のシート部材22のインサート軸線C方向の両側に隣接する切削インサート3及び他のシート部材(第1のシート部材21)の各硬度よりも、低い硬度を有する材料により形成されている場合には、切削インサート3や他のシート部材との摩擦により、第2のシート部材22を優先的に摩耗させて、偏摩耗を抑制できる、という上述した本実施形態の作用効果が、より確実に奏功される。
また、本実施形態では、上述した切削インサートの取り付け機構1を、例えば、円柱状や円盤状をなし工具軸線O回りに回転させられる工具本体2の先端外周部に、工具軸線O回りの工具周方向に間隔をあけて複数配設して、刃先回転式ミーリング工具30に採用している。つまり刃先回転式ミーリング工具30は、工具本体2がその工具軸線O回りに回転させられて、被削材を転削加工するように構成される。
この刃先回転式ミーリング工具30は、上述の切削インサートの取り付け機構1を備えているので、高精度な転削加工(ミーリング加工)を安定して行うことができる。
なお、特に図示していないが、切削インサートの取り付け機構1を、例えば、軸状をなす工具本体の先端部に配設して、刃先回転式ターニング工具に採用することとしてもよい。この場合、刃先回転式ターニング工具は、上述した切削インサートの取り付け機構1と、インサート取付座4が形成された工具本体と、を備え、回転する被削材を旋削加工(ターニング加工)するように構成される。
この刃先回転式ターニング工具は、切削インサート3が被削材に切り込んで加工する際に切れ刃5が受ける力(切削力又は切削抵抗であり、刃先力又はエッジフォースの成分を含む)によって、インサート取付座4に対して該切削インサート3がインサート軸線C回りに従動(受動)的に回転する、ロータリーターニング工具である。
この刃先回転式ターニング工具は、上述の切削インサートの取り付け機構1を備えているので、高精度な旋削加工を安定して行うことができる。
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、切削インサート3とインサート取付座4との間に介装されてインサート軸線C方向に重なる複数のシート部材21、22として、2枚のシート部材21、22が設けられることとしたが、シート部材の数は、上述の2枚に限定されるものではない。
すなわち、インサート取付座4の取付面4aに当接する第1のシート部材21と、切削インサート3の裏面10に当接する第2のシート部材22との間に、さらに他のシート部材が、一枚又は複数枚インサート軸線C方向に重ねて設けられていてもよい。この場合、第1、第2のシート部材21、22間に挟まれる他のシート部材は、インサート軸線C回りに回転してもよく、或いは回転しなくてもよい。
またこの場合、第2のシート部材22は、その直下(インサート軸線C方向の切削インサート3とは反対側)に隣接配置される前記他のシート部材に対して、インサート軸線C回りに回転可能に設けられる。また好ましくは、第2のシート部材22は、前記他のシート部材の硬度よりも、低い硬度を有する材料又は同等の硬度を有する材料で形成される。
また、付勢手段は、切削インサート3を、第2のシート部材22に対してインサート軸線C方向に付勢する構成を有していればよく、よって付勢手段は、上述した圧縮コイルばね23、皿バネ、板バネ以外の弾性変形可能な部材や機構等であってもよい。
さらに、付勢手段が設けられていなくてもよい。
また、前述の実施形態では、切削インサート3は、その外周面11がインサート軸線Cに平行に形成されたネガティブインサートであることとしたが、これに限定されるものではない。
すなわち、切削インサート3は、その外周面11が、切れ刃5からインサート軸線C方向の表面9から裏面10側へ向かうに従い漸次拡径するように形成された、上記とは異なる形状のネガティブインサートであってもよい。或いは、切削インサート3は、その外周面11が、切れ刃5からインサート軸線C方向の表面9から裏面10側へ向かうに従い漸次縮径するように形成された、ポジティブインサートであってもよい。
また、切削インサート3、複数のシート部材21、22、及び、インサート取付座4が形成された工具本体2の各材質は、前述の実施形態で説明したものに限定されない。
また、係止部として、イモネジ18以外のネジ部材や、ピン部材等を用いてもよい。
図13〜図17に示されるものは、前述の実施形態で説明した切削インサートの取り付け機構1の変形例である。なお、前述の実施形態と同じ構成要素については詳細な説明を省略し、主として異なる点についてのみ、下記に説明する。
この変形例は、前述の実施形態とは、主に支持軸17、支持軸装着孔4c及びイモネジ(係止部)18の構成が異なっている。
図13〜図16に示されるように、支持軸17の軸部17a及び頭部17bのうち、軸部17aは、該軸部17aの中心軸(インサート軸線C)方向の先端に位置する雄ネジ部17dと、雄ネジ部17dと頭部17bとの間に位置して、雄ネジ部17dよりも大径に形成された軸本体17eと、雄ネジ部17dと軸本体17eとの間に形成された当接段部17fと、を有している。
当接段部17fは、雄ネジ部17dと軸本体17eとの間に位置してこれらを接続しており、図示の例では、軸部17aの中心軸方向の先端側(雄ネジ部17d側)を向く円形リング状をなしている。また、軸本体17eの外周面のうち中心軸方向の先端部(下端部)には、他の部位(該先端部以外の部位)よりも縮径された被係止部17gが形成されている。図14に示されるように、被係止部17gは、断面円形状をなしている。
図13において、インサート取付座4は、支持軸17が装着される支持軸装着孔4cを有している。支持軸装着孔4cは、支持軸17の雄ネジ部17dが螺着される雌ネジ部4dと、雌ネジ部4dよりも大径に形成され、軸本体17eが挿通される挿通孔部4eと、雌ネジ部4dと挿通孔部4eとの間に形成され、当接段部17fに当接される被当接段部4fと、を有している。
被当接段部4fは、雌ネジ部4dと挿通孔部4eとの間に位置してこれらを接続しており、図示の例では、支持軸装着孔4cの中心軸方向の開口部側(支持軸17の頭部17b側)を向く円形リング状をなしている。
そして、図13及び図14に示されるように、工具本体2のネジ孔7に螺着するイモネジ(係止部)18が、支持軸装着孔4cの挿通孔部4e内に突出するとともに、支持軸17の軸本体17eにおける被係止部17gに当接可能とされている。イモネジ18が軸本体17eに当接することにより、支持軸装着孔4cに対する軸部17aの中心軸回りの回転が規制される。
なお、図14に示される例では、イモネジ18の中心軸(ネジ孔7の中心軸)の延長線上に、支持軸17の中心軸(支持軸装着孔4cの中心軸。インサート軸線C)が位置しており、つまりイモネジ18の中心軸と支持軸17の中心軸とが交差しており、支持軸17の軸本体17eに対して、イモネジ18の先端面が当接している。
ただしこれに限定されるものではなく、図17に示される例のように、イモネジ18の中心軸(ネジ孔7の中心軸)の延長線上に、支持軸17の中心軸(支持軸装着孔4cの中心軸。インサート軸線C)が位置しておらず、つまりイモネジ18の中心軸と支持軸17の中心軸とが交差させられずに、支持軸17の軸本体17eに対して、イモネジ18の先端部に設けられたテーパ面18aが当接させられてもよい。
図13〜図17により説明した変形例によれば、インサート取付座4の支持軸装着孔4cの雌ネジ部4dに、支持軸17の軸部17aの雄ネジ部17dをねじ込んでいき、支持軸装着孔4cの被当接段部4fに対して、軸部17aの当接段部17fを突き当てることにより、インサート取付座4に支持軸17が安定して立設される。つまり、支持軸装着孔4cに対する軸部17aの中心軸方向の位置が安定してがたつきが抑えられるため、この軸部17aの軸力を高めることができ、該軸部17aによって切削インサート3を安定して支持することが可能になる。
そして、軸部17aの軸本体17eに対してイモネジ(係止部)18を当接させることによって、支持軸装着孔4cに対する軸部17aの中心軸回りの回転を規制するとともに、インサート取付座4に対する支持軸17の回転を規制して、支持軸17のインサート軸線C方向への移動を規制することができる。
なお、上記変形例では、支持軸装着孔4cの雌ネジ部4dに、軸部17aの雄ネジ部17dをねじ込んでいき、被当接段部4fに対して当接段部17fを突き当てることにより、支持軸17の頭部17bが、切削インサート3の表面9における平面部15との間に、所定の隙間(クリアランス)をあけて配置される。従って、インサート取付座4に対して、支持軸17のインサート軸線C方向の位置を調整する操作が不要となり、操作性がよい。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
1 切削インサートの取り付け機構
2 工具本体
3 切削インサート
4 インサート取付座
4c 支持軸装着孔
4d 雌ネジ部
4e 挿通孔部
4f 被当接段部
5 切れ刃
9 表面
10 裏面
14 貫通孔
17 支持軸
17a 軸部
17b 頭部
17c 被係止部
17d 雄ネジ部(ネジ部)
17e 軸本体
17f 当接段部
18 イモネジ(係止部)
21 第1のシート部材(他のシート部材)
22 第2のシート部材
23 圧縮コイルばね(付勢手段)
30 刃先回転式ミーリング工具
C インサート軸線
O 工具軸線

Claims (10)

  1. 円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、
    前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、
    前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、
    前記複数のシート部材のうち、
    前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、
    前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ
    前記第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び前記他のシート部材の各硬度よりも、低い硬度を有する材料により形成されていることを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  2. 円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、
    前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、
    前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、
    前記複数のシート部材のうち、
    前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、
    前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ、
    前記第1のシート部材は、超硬合金により形成され、
    前記第2のシート部材は、鋼材により形成されていることを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  3. 円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、
    前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、
    前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、
    前記複数のシート部材のうち、
    前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、
    前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ、
    前記切削インサートには、前記インサート軸線上を延びて該切削インサートの前記インサート軸線に交差する表裏面に開口する貫通孔が形成されており、
    前記インサート取付座に装着されて、前記切削インサートを前記インサート軸線回りに回転自在に支持する支持軸を備え、
    前記支持軸は、
    前記貫通孔内に挿通されて前記インサート取付座に取り付けられる軸部と、
    前記軸部に接続されるとともに、前記貫通孔の内径よりも大径とされ、前記切削インサートの前記表裏面のうち表面との間に隙間をあけて配置される頭部と、を有し、
    前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向への移動が規制可能に構成され、
    前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向の位置が調整可能とされ、
    前記頭部は、前記切削インサートの前記表面に当接可能とされ、
    前記軸部は、
    前記インサート取付座に螺着されるネジ部と、
    当該軸部の中心軸に垂直な断面が多角形状をなす被係止部と、を有し、
    前記被係止部に前記中心軸回りに形成された複数の平坦面のうちの1つに当接可能とされるとともに、前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記中心軸回りの回転を規制する係止部を備えることを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  4. 円板状をなし、インサート軸線回りに延びる円形状の切れ刃を有する切削インサートと、
    前記切削インサートが前記インサート軸線回りに回転可能に装着されるインサート取付座と、を備えた切削インサートの取り付け機構であって、
    前記切削インサートと前記インサート取付座との間に、前記インサート軸線方向に重ねて複数のシート部材が介装され、
    前記複数のシート部材のうち、
    前記インサート取付座に当接する第1のシート部材は、前記インサート取付座に対して、前記インサート軸線回りに回転不能に設けられており、
    前記切削インサートに当接する第2のシート部材は、この第2のシート部材の前記インサート軸線方向の両側に隣接する前記切削インサート及び他のシート部材に対して、前記インサート軸線回りに回転可能に設けられ、
    前記切削インサートには、前記インサート軸線上を延びて該切削インサートの前記インサート軸線に交差する表裏面に開口する貫通孔が形成されており、
    前記インサート取付座に装着されて、前記切削インサートを前記インサート軸線回りに回転自在に支持する支持軸を備え、
    前記支持軸は、
    前記貫通孔内に挿通されて前記インサート取付座に取り付けられる軸部と、
    前記軸部に接続されるとともに、前記貫通孔の内径よりも大径とされ、前記切削インサートの前記表裏面のうち表面との間に隙間をあけて配置される頭部と、を有し、
    前記インサート取付座に対する前記支持軸の前記インサート軸線方向への移動が規制可能に構成され、
    前記支持軸の前記頭部と、前記切削インサートとの間に、前記切削インサートを、前記第2のシート部材に対して前記インサート軸線方向に付勢する付勢手段として圧縮ばねが介装されることを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削インサートの取り付け機構であって、
    前記切削インサートを、前記第2のシート部材に対して前記インサート軸線方向に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサートの取り付け機構であって、
    前記切削インサートの前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記第2のシート部材に当接する裏面、及び、前記第2のシート部材の前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記切削インサートに当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されていることを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサートの取り付け機構であって、
    前記第2のシート部材の前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記他のシート部材に当接する裏面、及び、前記他のシート部材の前記インサート軸線に交差する表裏面のうち、前記第2のシート部材に当接する表面、の少なくともいずれかに、潤滑被膜が形成されていることを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  8. 請求項又はに記載の切削インサートの取り付け機構であって、
    前記潤滑被膜は、潤滑剤からなる膜、PVD膜、及びめっき膜のいずれかであることを特徴とする切削インサートの取り付け機構。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサートの取り付け機構と、
    前記インサート取付座が形成された工具本体と、を備えたことを特徴とする刃先回転式ミーリング工具。
  10. 請求項1〜のいずれか一項に記載の切削インサートの取り付け機構と、
    前記インサート取付座が形成された工具本体と、を備えたことを特徴とする刃先回転式ターニング工具。
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