以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る圧縮機を含む冷凍サイクルを概略的に表す図である。
圧縮機100は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される。圧縮機100は、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器111(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置113により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器115にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器115で蒸発された冷媒は、再び圧縮機100へと戻されて冷凍サイクルを循環する。
圧縮機100は、そのハウジング内に冷媒を圧縮するための機構のほか、冷媒の吐出容量を制御する制御弁1と、吐出冷媒の逆流を防止する吐出弁160を備える。圧縮機100のハウジングは、シリンダブロック102と、シリンダブロック102の前端側に接合されたフロントハウジング104と、シリンダブロック102の後端側に接合されたリアハウジング106とを組み付けて構成される。シリンダブロック102とリアハウジング106との間にはバルブプレート108が介装されている。シリンダブロック102は、その軸線周りに複数のシリンダ110を有する。シリンダブロック102とフロントハウジング104とに囲まれた空間にクランク室112が形成されている。なお、本実施形態ではクランク室112が「制御室」に該当するが、変形例においてはクランク室内又はクランク室外に別途設けられた圧力室を「制御室」としてもよい。
リアハウジング106の内部に吸入室114、吐出室116および取付孔118が区画形成されている。リアハウジング106には、また、蒸発器115側から吸入室114に冷媒を導入する冷媒入口120、吐出室116から凝縮器111側へ吐出冷媒を導出する冷媒出口122、吸入室114と取付孔118とを連通させる連通路124、クランク室112と取付孔118とを連通させる連通路126、吐出室116と取付孔118とを連通させる連通路128が設けられている。
連通路128,126および制御弁1の主通路(後述する)が、吐出室116からの吐出冷媒の一部をクランク室112に導入するための給気通路170を構成する。一方、連通路126,124および制御弁1の副通路(後述する)が、クランク室112の冷媒の一部を吸入室114へ導出するための抽気通路172(第1抽気通路)を構成する。制御弁1は、「給気機構」および「抽気機構」として機能する。また、ハウジングには、クランク室112と吸入室114とを連通する抽気通路174(第2抽気通路)が設けられている。抽気通路174は、断面積が固定されたオリフィス176を有し、クランク室112から吸入室114への最低流量の冷媒の流れを許容する。給気通路170および抽気通路172,174により、圧縮機100における冷媒の内部循環が確保されている。
クランク室112には、その中心を貫通するように回転軸130が配置されている。回転軸130は、シリンダブロック102に設けられた軸受132と、フロントハウジング104に設けられた軸受134とによって回転自在に支持されている。回転軸130にはラグプレート136が固定されており、ラグプレート136に突設された支持アーム138等を介して斜板140が支持されている。回転軸130には、クランク室112と連通路126とを連通させるための連通路180が設けられている。
斜板140は、回転軸130の軸線に対して傾動可能となっており、複数のシリンダ110に摺動自在に配置されたピストン142にシュー144を介して連結されている。回転軸130は、その前端部分がフロントハウジング104を貫通して外部に延出しており、その先端部分にはブラケット146が螺着されている。また、回転軸130とフロントハウジング104との前端部分の隙間を外側からシールするようにリップシール148が設けられている。リップシール148は、回転軸130の周面に摺接しつつ、その周面に沿った冷媒ガスの漏洩を防止している。なお、シリンダ110に導入された冷媒の一部は、いわゆるブローバイガスとして、シリンダ110とピストン142とのクリアランスを通ってクランク室112へ漏れる。このブローバイガスも内部循環に寄与している
フロントハウジング104の前端部分には軸受150が設けられ、プーリ152が回転自在に支持されている。プーリ152は、エンジンの駆動力をブラケット146を介して回転軸130に伝達する。すなわち、圧縮機100は、クラッチレス方式で外部駆動源と作動連結される。
吸入室114は、バルブプレート108に設けられた吸入用リリーフ弁154を介してシリンダ110に連通する一方、冷媒入口120を介して蒸発器115の出口にも連通している。吐出室116は、バルブプレート108に設けられた吐出用リリーフ弁156を介してシリンダ110に連通する一方、冷媒出口122を介して凝縮器111の入口にも連通している。
斜板140の角度は、クランク室112内でその斜板140を付勢するスプリング157、158の荷重や、斜板140につながるピストン142の両面にかかる圧力による荷重等がバランスした位置に保持される。この斜板140の角度は、クランク室112内に吐出冷媒の一部を導入して制御圧力Pcを変化させ、ピストン142の両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変化させることができる。この斜板140の角度の変化によってピストン142のストロークを変えることにより、冷媒の吐出容量が調整される。制御圧力Pcは、制御弁1により制御される。
吐出弁160は、リアハウジング106における吐出室116と冷媒出口122との間に配置されている。吐出弁160は、圧縮機100の吐出冷媒の順方向の流れを許容し、逆方向の流れを遮断する「逆止弁」として機能する。冷媒の流動抵抗による圧力損失等を考慮すると、圧縮機100の出口圧力PdLは、吐出室116の吐出圧力PdHよりも若干低くなる。ただし、これら吐出圧力PdHと出口圧力PdLは大差がないため、以下の説明では特に区別しない限り「吐出圧力Pd」と総称する。
以上のように構成された圧縮機100は、蒸発器115側から吸入室114に導入された冷媒ガスをシリンダ110に導入して圧縮し、吐出室116から凝縮器111側へ高温・高圧の冷媒を吐出する。その吐出冷媒の一部は、制御弁1を介してクランク室112内に導入され、圧縮機100の容量制御に供される。
図2は、第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、圧縮機100の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室116からクランク室112に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される常開型の電磁弁である。弁本体2は、圧縮機100の吐出冷媒の一部をクランク室112へ導入するための主弁7と、圧縮機100の最小容量運転時にクランク室112の冷媒を吸入室114へ逃がすための抽気弁8と、圧縮機100の最大容量運転時にクランク室112の冷媒を吸入室114へ逃がすためのブリード弁9とを含む。ソレノイド3は、主弁7を開閉方向に駆動してその開度を調整し、クランク室112へ導入する冷媒流量を制御する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ソレノイド力に対抗する力を発生するパワーエレメント6等を備えている。パワーエレメント6は「感圧部」として機能する。
ボディ5の上端部にはポート12が設けられ、側部にはポート14が設けられている。ボディ5の下端部は、ソレノイド3のコア42(後述する)に設けられたポート16に連通する。ポート12は、クランク室112に連通する「制御室連通ポート」として機能し、ポート14は吐出室116に連通する「吐出室連通ポート」として機能し、ポート16は吸入室114に連通する「吸入室連通ポート」として機能する。また、ボディ5内には、ポート12とポート14とを連通させる主通路と、ポート12とポート16とを連通させる副通路(後述する第1,第2副通路)とが形成されている。主通路は給気通路170を構成し、副通路は抽気通路172を構成する。主通路に主弁7が設けられ、第1副通路に抽気弁8が設けられ、第2副通路にブリード弁9が設けられている。主通路を構成するボディ5の一部には弁孔18(主弁孔)が設けられ、その下端開口部のテーパ面に弁座20(主弁座)が形成されている。
ポート14は、吐出室116から吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート12は、圧縮機100の定常制御時(可変容量運転時)に主弁7を経由した制御圧力Pcの冷媒をクランク室112へ向けて導出し、最小容量運転時および最大容量運転時にはクランク室112から排出された制御圧力Pcの冷媒を導入する。このとき導入された冷媒は、抽気弁8又はブリード弁9に導かれる。ポート16は、定常制御時に吸入圧力Psの冷媒を導入し、最小容量運転時および最大容量運転時には副弁を経由した吸入圧力Psの冷媒を吸入室114へ向けて導出する。
ボディ5の上端部の隔壁の中央には取付孔22が軸線方向に設けられ、その取付孔22の周囲には、複数の連通孔23が設けられている。取付孔22には、段付円柱状の支持部材27がその上端を支持されるように圧入されている。支持部材27は、ボディ5の内方で軸線方向下方に延在し、パワーエレメント6の上端部を上方から支持している。連通孔23は、ポート12と弁孔18とを連通させる。
弁孔18のポート12とは反対側には弁室24が設けられている。弁室24は、環状の空間からなり、ポート14と半径方向に連通している。弁室24の弁孔18とは反対側には、弁孔18と同軸状にガイド孔26が形成されている。ガイド孔26の弁室24とは反対側には作動室28が形成され、ポート16と連通している。
ポート14には環状のフィルタ部材15が取り付けられている。フィルタ部材15は、ボディ5の内部へのごみ等の侵入を抑制するためのメッシュを含む。一方、ポート12には有底円筒状のフィルタ部材13が取り付けられている。フィルタ部材13は、ボディ5の内部へのごみ等の侵入を抑制するためのメッシュを含む。
ボディ5には、段付円筒状の弁駆動体30が設けられている。弁駆動体30は、軸線方向に延びる内部通路35を有する。この内部通路35は、弁孔18および連通孔23を介してポート12と連通する。弁駆動体30は、段付円筒状の第1部材31と、有底段付円筒状の第2部材32とを軸線方向に接合して構成される。第1部材31は、その上部が縮径され、下部が第2部材32の上部に圧入されている。第1部材31の先端部には弁体33(主弁体)が一体に設けられている。弁体33は、弁座20に着脱して主弁7を開閉し、吐出室116からクランク室112へ流れる冷媒流量を調整する。
第2部材32は、下半部が縮径され、その底部に複数の円孔からなる連通孔34が設けられている。第2部材32における連通孔34の周囲に弁座36(ブリード弁座)が形成されている。弁駆動体30の内方には、パワーエレメント6と弁体38とが上下に同軸状に配設されている。弁体38は有底円筒状をなし、「ブリード弁体」および「抽気弁体」として機能する。弁体38が弁座36に着脱してブリード弁9を開閉し、クランク室112から吸入室114への冷媒のリリーフを許容又は遮断する。パワーエレメント6は、ベローズ10を含み、そのベローズ10の変位によりソレノイド力に対抗する力を弁体38を介して弁駆動体30ひいては弁体33に付与する。
弁体38とパワーエレメント6との間には、両者を離間させる方向に付勢するスプリング39(「付勢部材」として機能する)が介装されている。また、弁駆動体30とソレノイド3(コア42)との間には、弁駆動体30を主弁7の閉弁方向に付勢するスプリング40が介装されている。スプリング39,40は、円筒状のコイルスプリングからなる。スプリング39は弁体38に内挿され、スプリング40は第2部材32に外挿されている。
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア42と、コア42の下端開口部を封止するように同軸状に組み付けられた有底円筒状のスリーブ44と、スリーブ44に収容されてコア42と軸線方向に対向配置された円筒状のプランジャ46と、コア42およびスリーブ44に外挿された円筒状のボビン48と、ボビン48に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル50と、電磁コイル50を外方から覆うように設けられ、ヨークとしても機能する円筒状のケース52と、ケース52の下端開口部を封止するように設けられた端部材54とを備える。
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア42の上端開口部に圧入されることにより固定されている。コア42は、その上半部が拡径されており、ボディ5との間に吸入圧力Psを満たすための作動室28を形成する。ポート16は、コア42とボディ5との接合部近傍に設けられている。コア42には軸線方向に沿った挿通孔43が設けられ、その挿通孔43を軸線方向に貫通するように、長尺状の作動ロッド58が挿通されている。スリーブ44は、その上端開口部がコア42の下端開口部に外挿され、全周溶接によりコア42に固定されている。スリーブ44の内方には、大気から遮断された内部空間45が形成されている。
プランジャ46は、スリーブ44に摺動可能に支持され、スリーブ44の内部空間45をコア42側の間隙空間76と底部側の背圧室70とに区画している。作動ロッド58の下端部がプランジャ46に設けられた貫通孔47の上半部に遊嵌され、作動ロッド58とプランジャ46とが同軸状に接続されている。プランジャ46とスリーブ44との間には、スプリング64が介装されている。スプリング64がプランジャ46を上方に向けて付勢することにより、プランジャ46と作動ロッド58とが軸線方向に一体変位可能に保持されている。なお、スプリング39は、弁体38および作動ロッド58を介してプランジャ46をコア42から離間させる方向に付勢するオフばねとして機能する。
作動ロッド58には、リング状の係合部材59が嵌着されている。作動ロッド58は、係合部材59を介して弁駆動体30と作動連結可能であり、弁体38を介してパワーエレメント6と作動連結可能とされている。作動ロッド58は、コア42とプランジャ46との吸引力であるソレノイド力を、係合部材59を介して弁駆動体30ひいては弁体33に適宜伝達する。
一方、作動ロッド58には、パワーエレメント6の伸縮作動による駆動力(「感圧駆動力」ともいう)が弁体38を介して伝達され、ソレノイド力と対抗するように負荷される。すなわち、主弁7の制御状態においては、ソレノイド力と感圧駆動力とにより調整された力が弁体33に作用し、主弁7の開度を適切に制御する。主弁7の閉時には、ソレノイド力の大きさに応じて作動ロッド58が弁駆動体30に対して相対変位し、弁体38を押し上げてブリード弁9を開弁させる。
コア42の上端部にはリング状の軸支部材60が圧入されており、作動ロッド58は、その軸支部材60によって軸線方向に摺動可能に支持されている。軸支部材60の外周面の所定箇所には、軸線に平行な連通溝が形成されている。このため、主弁7の制御時には、作動室28の吸入圧力Psが、その連通溝、コア42の挿通孔43と作動ロッド58との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ44の内部にも導かれる。
スリーブ44は非磁性材料からなる。プランジャ46の側面には軸線に平行な複数の連通溝が設けられ、プランジャ46の下端面には半径方向に延びて内外を連通する複数の連通溝が設けられている(いずれも同図には表れていない)。このような構成により、吸入圧力Ps又は制御圧力Pcがプランジャ46とスリーブ44との間隙を通って背圧室70にも導かれるようになっている。
ボビン48からは電磁コイル50につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部材54を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部材54は、ケース52に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部材54は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース52と電磁コイル50との間隙にも介在する。
図3は、図2の上半部に対応する部分拡大断面図である。
ボディ5の軸線方向中間部には、弁孔18とガイド孔26とが同軸状に設けられている。支持部材27は、ボディ5の上端部に片持ち状に支持される態様で軸線方向下方に延在する。ボディ5の内径は、作動室28の位置で拡径されている。ボディ5の下部はやや縮径してガイド孔74を形成する。
弁駆動体30の第1部材31は、ガイド孔26に摺動可能に支持され、その上端部が弁体33を構成する。第1部材31の摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール84が設けられている。第1部材31の下部の外周面には、摺動部86が環状に突設されている。第1部材31は、その摺動部86を介してガイド孔74に摺動可能に支持されている。すなわち、弁駆動体30は、その一端側がガイド孔26に摺動可能に支持され、他端側がガイド孔74に摺動可能に支持される態様で、ボディ5により2点支持されている。
コア42の上面中央部には円ボス状の弁座88が突設されており、第2部材32の下端部がその弁座88に着脱することにより、弁駆動体30の下端部を介した内外の連通状態が制限又は開放される。すなわち、弁座88の周方向の一部が切り欠かれ、径方向の連通路89を形成している。弁駆動体30の下端部とコア42の上面とにより、冷媒の流れを規制する規制弁が構成される。弁駆動体30が弁座88に着座して規制弁が閉弁状態となっても、連通路89を介した限られた範囲での冷媒の流通は許容されることとなる。第2部材32の底部は、作動ロッド58と適宜係合連結可能な「被係合部」として機能する。作動ロッド58は、第2部材32の底部中央に設けられた挿通孔92および弁体38を貫通し、その上端部がパワーエレメント6を軸線方向にガイドしている。
弁体38は、作動ロッド58に同軸状に接続され、パワーエレメント6と作動ロッド58との間に配設されている。弁体38は有底円筒状をなし、その底部中央に挿通孔91が形成され、挿通孔91の周囲には冷媒を通過させるための複数の連通孔93が形成されている。
挿通孔91には、作動ロッド58の上端部が相対変位可能に挿通される。ソレノイド3がオンにされた主弁7の制御状態においては、作動ロッド58の上部に設けられた係合部94が弁体38の下面に係合する。また、スプリング39,40の付勢力により、弁駆動体30と弁体38とが互いに当接する方向に付勢される。それにより、作動ロッド58、弁体38および弁駆動体30が一体に変位することができる。
パワーエレメント6は、一対のベース部材97,98およびベローズ10を含んで構成される。ベース部材97,98は、金属材をプレス成形して有底円筒状に構成されており、その開口端部に半径方向外向きに延出するフランジ部81を有する。ベース部材98におけるフランジ部81の下面には、弁座83(抽気弁座)が形成されている。弁体38の上端開口部がその弁座83に着脱することにより抽気弁8を開閉させる。
ベローズ10は、蛇腹状の本体の上端開口部がベース部材97のフランジ部81に気密に溶接され、下端開口部がベース部材98のフランジ部81に気密に溶接されている。それにより、ベース部材98の上下端が閉止されている。ベース部材97,98は、それぞれの本体がベローズ10の内方に延在し、互いの底部が近接配置されている。
ベース部材97の本体には、支持部材27の下端部が圧入されている。一方、ベース部材98の本体には、作動ロッド58の上端部が遊嵌されている。すなわち、作動ロッド58の係合部94よりも上部が縮径されており、その縮径部99が挿通孔91を貫通してベース部材98に部分的に挿通される。ただし、作動ロッド58の挿入量は、その縮径部99の基端である係合部94が弁体38の下面に係止されることにより規制される。なお、縮径部99の横断面はD形断面とされており、ベース部材98の内方の圧力を逃がせるように構成されている。作動ロッド58は、係合部94が弁体38に係止された状態でパワーエレメント6と一体に変位可能となっている。また、図示のように弁駆動体30と弁体38とが互いに押しつけられた状態においては、作動ロッド58が弁体38を介して弁駆動体30と一体に変位可能となる。
ベローズ10の内部は密閉された基準圧力室Sとなっている。ベース部材97とベース部材98との間には、ベローズ10を伸長方向に付勢するスプリング85が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。ベローズ10は、弁駆動体30の内部の制御圧力Pcと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(弁部の開閉方向)に伸長または収縮する。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ10が所定量収縮すると、ベース部材97とベース部材98とが当接して係止されるため、その収縮は規制される。
なお、弁体38は、作動ロッド58の上端部を軸芯としてパワーエレメント6と作動ロッド58との間に支持されるが、パワーエレメント6および作動ロッド58のいずれにも固定されてはいない。
作動ロッド58における係合部94のやや下方には凹溝が周設され、リング状の係合部材59が嵌着されている。このため、ブリード弁9の開弁後に作動ロッド58を弁駆動体30に対してさらに相対変位させると、係合部材59が弁駆動体30の底部と係合する。それにより、ソレノイド力を弁駆動体30に直接伝達することができ、弁駆動体30を主弁7の閉弁方向に押圧することができる。この構成は、万が一、弁駆動体30とガイド孔26との摺動部や、弁駆動体30とガイド孔74との摺動部への異物の噛み込みにより弁駆動体30がロックした場合に、それを解除するロック解除機構として機能する。
本実施形態においては、弁駆動体30の主弁7における有効受圧径A(シール部径)、弁駆動体30の摺動部における有効受圧径B、ベローズ10の有効受圧径C、弁体38のブリード弁9における有効受圧径D(シール部径)、弁駆動体30の規制弁における有効受圧径E(シール部径)、および弁体38の抽気弁8における有効受圧径F(シール部径)が等しく設定されている。このため、弁駆動体30とパワーエレメント6とが作動連結した状態においては、弁体33に作用する吐出圧力Pdおよび制御圧力Pcの影響がキャンセルされる。パワーエレメント6は、その有効受圧面積に吸入圧力Psのみを受けることになる。その結果、主弁7の制御状態において、弁体33は、作動室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。
本実施形態では、スプリング39,64の付勢力により、作動ロッド58の係合部94と弁体38とが常に当接する状態が維持される。一方、ブリード弁9の閉弁状態において、作動ロッド58の係合部材59と弁駆動体30の底面との間隔が所定値Lとなるように機構の形状および大きさが設定されている。制御弁1の起動時においては、ソレノイド3への通電により主弁7の閉弁方向かつブリード弁9の開弁方向のソレノイド力を弁体38に伝達することができる。これにより、弁体33を弁座20に着座させて主弁7を閉じ、さらに弁体38を弁座36からリフトさせてブリード弁9を開くことができる。すなわち、制御弁1は、ソレノイド3の駆動力を用いてブリード弁9を強制的に開弁させるための「強制開弁機構」を有する。
以上のような構成において、制御弁1の安定した制御状態においては、作動室28内の吸入圧力Psが所定の設定圧力Psetとなるよう主弁7が自律的に動作する。この設定圧力Psetは、基本的にはスプリング39,40,64,85のばね荷重およびベローズ10の荷重によって予め調整され、蒸発器内の温度と吸入圧力Psとの関係から、蒸発器の凍結を防止できる圧力値として設定されている。設定圧力Psetは、ソレノイド3への供給電流(設定電流)を変えることにより変化させることができる。本実施形態では、制御弁1の組み付けが概ね完了した状態で支持部材27の圧入量を再調整することで、スプリングの設定荷重を微調整することができ、設定圧力Psetを正確に調整できる。
次に、制御弁1の制御動作について説明する。
図4は、図3のA部拡大図である。図4(A)は、最小容量運転時の状態を示している。図4(B)は、最大容量運転時(起動時等)にブリード機能を発揮させたときの状態を示している。既に説明した図3は、比較的安定した定常制御状態を示している。以下では図2に基づき、適宜図3,図4を参照しつつ説明する。
本実施形態では、ソレノイド3への通電制御にPWM方式が採用される。このPWM制御は、図示しない制御部により実行される。この制御部は、指定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。
制御弁1においてソレノイド3が非通電のとき、つまり空調装置が動作していないときには、コア42とプランジャ46との間に吸引力が作用しない。このため、スプリング39の付勢力により弁体38が下方に変位し、弁駆動体30を下方に押圧する。その結果、弁体33が弁座20から離間して主弁7が全開状態となる。このとき、弁体38が弁座36に着座してブリード弁9が閉弁状態となり、弁駆動体30の下端部が弁座88に着座して規制弁が閉弁状態となる。このため、吐出室116からポート14に導入された冷媒は、全開状態の主弁7を通過し、ポート12からクランク室112へと流れる。したがって、制御圧力Pcが高くなり、圧縮機100は最小容量運転を行うようになる。
このとき、吸入圧力Psが比較的高いため、図4(A)に示すように、スプリング39の付勢力により弁体38が弁座83から離間し、抽気弁8が開弁する。その結果、弁駆動体30の内部通路35および弁体38の内部通路37に制御圧力Pcが満たされ、弁駆動体30および弁体38に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。各弁体に差圧(Pc−Ps)が作用しないため、次にソレノイド3へ通電したときには弁駆動体30ひいては弁体33を小さなソレノイド力で閉弁方向に駆動することができる。
このように規制弁が閉じられた状態であっても、抽気弁8が開かれ、連通路89によって限られた範囲での冷媒の流通が許容されるため、クランク室112から吸入室114へ所定流量の冷媒のリリーフがなされる(二点鎖線矢印参照)。その結果、圧縮機100に必要な範囲で冷媒の内部循環を確保することができる。なお、このように冷媒が弁駆動体30の内部通路35、抽気弁8、弁体38の内部通路37、連通路89および作動室28を経る通路が、「第1副通路」を構成する。抽気弁8の開弁により、この第1副通路が開放される。
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド3に制御電流(起動電流)が供給されると、図4(B)に示すように、ソレノイド力により作動ロッド58が駆動される。このソレノイド力は、作動ロッド58および弁体38を介して弁駆動体30ひいては弁体33にも伝達される。その結果、弁体33が弁座20に着座して主弁7を閉じ、その主弁7の閉弁とともに弁体38が弁座36から離間してブリード弁9を開弁させる。このとき、規制弁も開弁する。ただし、係合部材59が弁駆動体30に係止されることにより作動ロッド58の変位が規制されるため、弁体38のリフト量(つまりブリード弁9の開度)は、上記所定値Lに一致する。なお、起動時は通常、吸入圧力Psおよび制御圧力Pcが比較的高いため、ベローズ10がある程度縮小した状態を維持し、ブリード弁9の開弁状態が維持される。このとき、抽気弁8は閉弁状態を保つ。
すなわち、ソレノイド3に起動電流が供給されると、主弁7が閉じてクランク室112への吐出冷媒の導入を規制すると同時にブリード弁9が直ちに開いてクランク室112内の冷媒を吸入室114に速やかにリリーフさせる(二点鎖線矢印参照)。その結果、圧縮機100を速やかに起動させることができる。また、例えば車両が低温環境下におかれた場合のように、吸入圧力Psが低く、ベローズ10が伸長した状態においても、ソレノイド3に大きな電流を供給することでブリード弁9を開弁させることができる。それにより、圧縮機100は最大容量運転を行う。その結果、圧縮機100が速やかに起動する。なお、このように冷媒が弁駆動体30の内部通路35、ブリード弁9、規制弁および作動室28を経る通路が、「第2副通路」を構成する。ブリード弁9および規制弁の開弁により、この第2副通路が開放される。上記第1副通路と第2副通路とは、弁体38の内外に分かれており、互いに並列に接続されている。
そして、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された定常制御状態にあるときには、図3に示したように、吸入圧力Psおよび制御圧力Pcが比較的低いためにベローズ10が伸長し、弁体38が弁座36に着座してブリード弁9を閉弁させる。抽気弁8も閉弁状態に維持される。一方、弁体33が動作して主弁7の開度を調整する。このとき、弁体33は、スプリング39,64,85による開弁方向の力と、スプリング40による閉弁方向の力と、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じて動作するパワーエレメント6によるソレノイド力に対抗する力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
そして、たとえば冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ10が縮小するため、弁体33が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁7の弁開度が小さくなり、圧縮機100は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ10が伸長する。その結果、パワーエレメント6による付勢力がソレノイド力に対抗する方向に作用する。この結果、弁体33への閉弁方向の力が低減されて主弁7の弁開度が大きくなり、圧縮機100は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持される。
このような定常制御が行われている間にエンジンの負荷が大きくなり、空調装置への負荷を低減させたい場合、制御弁1においてソレノイド3がオンからオフに切り替えられる。そうすると、コア42とプランジャ46との間に吸引力が作用しなくなるため、ベローズ10が伸長し、スプリング39の付勢力により弁体33が弁座20から離間し、主弁7が全開状態となる。このとき、弁体38は弁座36に着座しているため、ブリード弁9は閉弁状態となる。吐出室116からポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁7を通過し、ポート12からクランク室112へと流れることになる。したがって、制御圧力Pcが高くなり、圧縮機100は最小容量運転を行うようになる。このとき、上述のように抽気弁8が開弁し、必要な内部循環量が確保される。
図5は、実施形態による作用効果を示す図である。同図は、ソレノイドへの通電状態と、給気通路および抽気通路の流量との関係を示している。同図の横軸はソレノイド3への供給電流(Isol)を示し、縦軸は各通路の開口面積を示す。図中の実線が給気通路170の開口面積を示し、一点鎖線が抽気通路の開口面積(抽気通路172,174の開口面積の合計)を示す。
ソレノイド3への通電状態によって可変容量運転域、最大容量運転域、最小容量運転域を切り替えることができる。ここで、「可変容量運転域」は、ソレノイド3に定常電流が供給され、設定圧力Psetに基づく通電制御がなされる制御領域である。「最大容量運転域」(Max運転域)は、ソレノイド3への供給電流値が所定の上限値(起動電流等)とされることにより冷媒の吐出容量が最大となる制御領域である。「最小容量運転域」(Min運転域)は、ソレノイド3への供給電流値が所定の下限値又はオフとされることにより冷媒の吐出容量が最小となる制御領域である。
図中一点鎖線で示されるように、抽気通路の開口面積に関し、可変容量運転域での開口面積をS1、最小容量運転域での開口面積をS2、最大容量運転域での開口面積をS3とした場合に、S1<S2<S3の関係が成立する。言い換えれば、そのような関係が成立するように、上述した主弁7、抽気弁8およびブリード弁9の構造が定められている。
すなわち、可変容量運転域で抽気通路の開口面積を小さくすることで、圧縮機100の制御中における内部循環量を抑えている。一方、最小容量運転域においては吐出流量が小さくなるところ、抽気通路の開口面積を可変容量運転域の場合よりも大きくすることで、必要な内部循環量を確保している。さらに、最大容量運転域で抽気通路の開口面積を最も大きくすることで、圧縮機100の起動性を確保している。その結果、圧縮機100の起動性を確保しつつ、冷媒の効率的な内部循環を実現することができる。
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。本実施形態では、第1実施形態の制御弁1に代えて制御弁201を圧縮機100に組み込む。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁201は、弁本体202とソレノイド203とを一体に組み付けて構成される。ボディ205の上端側からポート12(制御室連通ポート)、ポート14(吐出室連通ポート)、ポート16(吸入室連通ポート)が設けられている。弁孔18のポート12とは反対側には中間圧力室224が形成される。中間圧力室224は、ポート14と半径方向に連通している。中間圧力室224の弁孔18とは反対側には、ガイド孔26が形成されている。ガイド孔26の中間圧力室224とは反対側には作動室28が形成され、ポート16と連通している。
ボディ205の軸線に沿って、弁孔18とガイド孔26とが同軸状に設けられている。そして、弁孔18およびガイド孔26を軸線方向に貫通するように長尺状の作動ロッド230が配設されている。作動ロッド230は、段付円筒状をなし、ガイド孔26に摺動可能に支持され、その上端部が縮径して弁孔18を貫通し、その先端部に弁体33が一体に設けられている。すなわち、作動ロッド230は、縮径部232を介して弁体33と連設されている。弁体33は、ポート12側から弁座20に着脱して主弁7を開閉する。作動ロッド230には、軸線方向に貫通する内部通路35が設けられている。
ボディ205の上端開口部にはばね受け234が螺着されており、そのばね受け234と作動ロッド230との間には、弁体33を主弁7の閉弁方向に付勢するスプリング240が介装されている。スプリング240の荷重は、ばね受け234のボディ205への螺入量を変化させることにより調整することができる。
弁本体202とソレノイド203とは、磁性材料からなる筒状の接続部材247を介して接続されている。ボディ205の下端側部にポート16が設けられ、弁本体202とソレノイド203とに囲まれる空間に作動室28が形成されている。
ソレノイド203は、円筒状のケース252と、ケース252内に挿通された円筒状のスリーブ244と、スリーブ244の下端部に固定された円筒状のコア242と、コア242と軸線方向に対向配置されたプランジャ246と、コア242およびスリーブ244に外挿されたボビン248と、ボビン248に巻回された電磁コイル50と、ケース252の下端開口部を覆うように設けられた端部材254とを備える。
プランジャ246は、薄膜状のダイヤフラム265を挟んで分割された2つのプランジャからなる。その一方の第1プランジャ266がスリーブ244の内部に配置され、他方の第2プランジャ268が作動室28に配置されている。ダイヤフラム265は、スリーブ244の上端開口部を封止し、スリーブ244の内方に基準圧力室を形成する。ダイヤフラム265は、「感圧部」として機能する。この基準圧力室には大気が満たされるが、真空状態としてもよい。ダイヤフラム265は、可撓性を有する感圧部材である。ダイヤフラム265は、基準圧力室とは反対側面にて吸入圧力Psを感知し、その外周縁部を支点として変位することにより、プランジャ246に対して開弁方向または閉弁方向の駆動力を付与する。
第2プランジャ268の上端部には、半径方向外向きに延びるフランジ部222が設けられており、そのフランジ部222の下面を接続部材247の上面と対応させるようにしている。これにより、ソレノイド203の通電時にフランジ部222と接続部材247との間に軸線方向の吸引力を発生させ、弁体33が閉弁方向に迅速に移動できるようにしている。第2プランジャ268は、接続部材247内に形成された段差部との間に介装されたスプリング273(「付勢部材」として機能する)によって上方へ付勢されている。このスプリング273は、弁体33を付勢するスプリング240よりも大きな荷重を有する。
接続部材247の下端面には、シール用のOリング279が介装されている。スリーブ244の上端開口部には、半径方向外向きに延出するフランジ部225が設けられている。そして、フランジ部225と接続部材247との間にダイヤフラム265の外周縁部およびOリング279を挟むようにしてダイヤフラム265を固定している。接続部材247の下端部には環状のプレート278が圧入され、フランジ部225を下方から支持している。すなわち、スリーブ244は、プレート278の圧入により接続部材247ひいてはボディ205に対して固定されている。
スリーブ244とコア242とは、圧入および加締めにより軸線方向に接合されている。スリーブ244の内方には、第1プランジャ266が軸線方向に進退自在に配置されている。第1プランジャ266には、コア242の中心を軸線方向に延びるシャフト258の一端が圧入されている。シャフト258の他端は、コア242の下端部に螺合された軸受部材290によって支持されている。シャフト258の途中には止輪292が嵌合され、その止輪292によって上方への移動が規制されるようにばね受け294が設けられている。ばね受け294と軸受部材290との間には、第1プランジャ266をシャフト258を介してコア242から離れる方向へ付勢するスプリング275が介装されている。このスプリング275の荷重は、軸受部材290のコア242への螺入量を変えることによって調整することができる。
図7は、図6のB部拡大図である。
第2プランジャ268には、軸線に沿った貫通孔270が設けられている。貫通孔270は、大径部272と小径部274を有する段付円孔状をなし、それらの境界である段部に弁座36(ブリード弁座)が形成されている。大径部272の上端部は上方に向けて拡径するテーパ面276を有し、ボディ205の下面中央部と相補形状とされている。
一方、作動ロッド230の下端部が弁体38を形成している。弁体38は「ブリード弁体」として機能し、弁座36に着脱することによりブリード弁9を開閉する。第2プランジャ268の側部には、大径部272の内外を連通させる連通孔278が設けられている。第2プランジャ268は、作動ロッド230を下方から接離可能に支持する。
また、第2プランジャ268の下部が弁体280を形成している。そして、ダイヤフラム265の中央部上面が弁座282(抽気弁座)を形成している。弁体280は「抽気弁体」として機能し、弁座282に着脱することにより抽気弁8を開閉する。
本実施形態においては、弁体33の主弁7における有効受圧径A2(シール部径)と、作動ロッド230の摺動部における有効受圧径B2とが実質的に等しく設定されている。このため、弁体33に作用する吐出圧力Pdの影響がキャンセルされる。このように高圧の吐出圧力Pdの影響を受けないため、主弁7の制御状態において、弁体33は、作動室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作するようになる。
次に、制御弁201の動作について説明する。
図8は、図6のB部拡大図である。図8(A)は、最小容量運転時の状態を示している。図8(B)は、最大容量運転時(起動時等)にブリード機能を発揮させたときの状態を示している。既に説明した図7は、比較的安定した定常制御状態を示している。以下では図6に基づき、適宜図7,図8を参照しつつ説明する。
制御弁201において、ソレノイド203が非通電のときには、コア242とプランジャ246との間に吸引力が作用しない。また、吸入圧力Psが比較的高くなる。このため、図8(A)に示すように、ダイヤフラム265に当接した第1プランジャ266は、スプリング275の荷重に抗して下方へ変位する。一方、第2プランジャ268は、スプリング273によって第1プランジャ266から離れるよう上方へ付勢されているため、作動ロッド230を介して弁体33をその全開位置に付勢する。一方、作動ロッド230と第2プランジャ268との当接状態、つまりブリード弁9の閉弁状態は維持される。吐出室116からポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁7を通過し、ポート12からクランク室112へと流れることになる。したがって、制御圧力Pcが上昇し、圧縮機100は最小容量運転を行う。
一方、弁体280が弁座282から離間するため、抽気弁8が開弁する。その結果、作動ロッド230および第2プランジャ268の内部通路が作動室28に開放される。それにより、クランク室112から吸入室114へ所定流量の冷媒のリリーフがなされる(二点鎖線矢印参照)。その結果、圧縮機100に必要な範囲で冷媒の内部循環を確保することができる。なお、このように冷媒が作動ロッド230および第2プランジャ268の内部通路、抽気弁8、第2プランジャ268とダイヤフラム265との間隙および作動室28を経る通路が、「第1副通路」を構成する。抽気弁8の開弁により、この第1副通路が開放される。
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド203に制御電流(起動電流)が供給されると、図8(B)に示すように、第1プランジャ266がダイヤフラム265を介してスプリング273の付勢力に抗して第2プランジャ268を吸引する。このため、第2プランジャ268がダイヤフラム265に当接して下方へ移動し、これに伴って、弁体33がスプリング240により押し下げられて弁座20に着座し、主弁7が閉弁状態となる。このとき、作動ロッド230が、第2プランジャ268から離間した状態となる。すなわち、弁体38が弁座36から離間してブリード弁9が開弁し、ブリード機能が発揮される。
すなわち、ソレノイド203に起動電流が供給されると、主弁7が閉じてクランク室112への吐出冷媒の導入を規制すると同時にブリード弁9が直ちに開いてクランク室112内の冷媒を吸入室114に速やかにリリーフさせる(二点鎖線矢印参照)。それにより、圧縮機100は最大容量運転を行う。その結果、圧縮機100を速やかに起動させることができる。なお、このように冷媒が作動ロッド230の内部通路、ブリード弁9、および作動室28を経る通路が、「第2副通路」を構成する。ブリード弁9の開弁により、この第2副通路が開放される。上記第1副通路と第2副通路とは、互いに並列に接続されている。
こうして吸入圧力Psが十分に低くなると、ダイヤフラム265がその吸入圧力Psを感知して上方へ変位し、第2プランジャ268が作動ロッド230に当接する。このとき、ソレノイド203に供給される制御電流を空調の設定温度に応じて小さくすると、第2プランジャ268および第1プランジャ266は吸着状態のまま一体となって、吸入圧力Psによる力と、スプリング240,273,274の合力と、ソレノイド203の吸引力とがバランスする位置まで上方へ移動する。これにより、弁体33が第2プランジャ268により押し上げられ、弁座20から離れて所定の開度に設定される。したがって、吐出圧力Pdの冷媒が開度に応じた流量に制御されてクランク室に導入され、圧縮機は、制御電流に対応した容量の運転に移行するようになる。
ソレノイド203の電磁コイル50に供給される制御電流が一定の場合、ダイヤフラム265が吸入圧力Psを感知して弁開度を制御する。例えば冷凍負荷が大きくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなった場合には、弁体33が作動ロッド230,第2プランジャ268,ダイヤフラム265及び第1プランジャ266と一体となって下方へ変位するので、主弁7の開度が小さくなり、圧縮機は、吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下して設定圧力Psetに近づくようになる。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなった場合は、弁体33が上方へ変位して主弁7の開度を大きくするので、圧縮機は、吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが上昇して設定圧力Psetに近づくようになる。このようにして、制御弁201は、吸入圧力Psがソレノイド203によって設定された設定圧力Psetになるよう圧縮機の吐出容量を制御する。
本実施形態においても、図5に示したように、抽気通路の開口面積に関し、可変容量運転域での開口面積をS1、最小容量運転域での開口面積をS2、最大容量運転域での開口面積をS3とした場合に、S1<S2<S3の関係が成立する。そのような関係が成立するように、主弁7、抽気弁8およびブリード弁9の構造が定められている。このため、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。本実施形態では、第1実施形態の制御弁1に代えて制御弁301を圧縮機100に組み込む。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁301は、弁本体302とソレノイド303とを一体に組み付けて構成される。弁本体302は、ボディ305およびパワーエレメント306等を備えている。パワーエレメント306は「感圧部」として機能する。ボディ305の上端側からポート12(制御室連通ポート)、ポート14(吐出室連通ポート)、ポート16(吸入室連通ポート)が設けられている。ボディ305の上部に作動室28が区画形成され、パワーエレメント306が配置されている。作動室28は、ポート12に連通する。ポート14の内方に弁室24が形成されている。弁室24は、弁孔18を介して作動室28と連通している。ボディ305の上端開口部は端部材313により封止され、ボディ305の下端部は接続部材347を介してソレノイド303に連結されている。
ボディ305の内方には、ガイド孔26を軸線方向に貫通するように円筒状の作動ロッド330が設けられている。作動ロッド330の上部には第1弁体310が一体に設けられ、下部には第2弁体312が一体に設けられている。ボディ305のガイド孔26よりも下方には圧力室328が形成されており、第2弁体312はその圧力室328に配置されている。圧力室328は、ポート16に連通する。作動ロッド330の上端部には、円筒状の連結部材314が同軸状に固定されている。連結部材314は、弁孔18を貫通し、作動室28に延出している。連結部材314の上端部が半径方向外向きに突出して可動弁座320を形成している。
作動ロッド330の下部が縮径されて小径部322となっており、ソレノイド303の内方(コア342の拡径部343)に延出している。作動ロッド330の中間部には、内部通路35と圧力室328とを連通させる連通孔332が設けられている。小径部322には、内部通路35と拡径部343とを連通させる連通孔334が設けられている。小径部322の下部は、シャフト358の上端部と連結されている。
パワーエレメント306は、ベローズ10の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、連結部材314を介して作動ロッド330に伝達される。パワーエレメント306は、ベローズ10の上端開口部を第1ストッパ382により閉止し、下端開口部を第2ストッパ384により閉止して構成されている。ベローズ10の内部は基準圧力室Sとなっており、第1ストッパ382と第2ストッパ384との間にスプリング85が介装されている。第1ストッパ382は、端部材313と一体成形されている。したがって、第1ストッパ382は、ボディ305に対して固定された状態となる。
一方、第2ストッパ384の外周縁部から下方に向けて弁体350が突設されている。弁体350は、円環状をなし、「抽気弁体」として機能する。弁体350が可動弁座320に着脱することにより抽気弁8を開閉する。弁体350と可動弁座320とは互いのテーパ面にて着脱する。作動ロッド330は、連結部材314を介してパワーエレメント306と作動連結可能とされている。
スプリング85が第1ストッパ382と第2ストッパ384とを互いに離間させる方向に付勢するため、ベローズ10は、吸入圧力Ps又は制御圧力Pcと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向に伸長または収縮する。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ10が所定量収縮すると、第1ストッパ382と第2ストッパ384の互いの先端面が当接して係止されるため、その収縮は規制される。
ソレノイド303は、円筒状のケース352と、ケース352内に挿通された有底円筒状のスリーブ344と、スリーブ344の上半部に固定された円筒状のコア342と、スリーブ344の下半部に収容され、コア342と軸線方向に対向配置されたプランジャ346と、スリーブ344に外挿されたボビン348と、ボビン348に巻回された電磁コイル50と、ケース352の下端開口部を覆うように設けられた端部材354とを備える。
シャフト358がコア342を貫通し、その上端部がコア342の拡径部343にて作動ロッド330と接続されている。シャフト358の下端部が、プランジャ346の上端部に圧入されている。コア342とプランジャ346との間にスプリング375(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
コア342の上端開口部(拡径部343の開口端)に、弁座383(ブリード弁座)が形成されている。第2弁体312は「ブリード弁体」として機能し、弁座383に着脱することによりブリード弁9を開閉する。
本実施形態においては、第1弁体310の主弁7における有効受圧径A3(シール部径)と、作動ロッド330の摺動部における有効受圧径B3と、第2弁体312のブリード弁9における有効受圧径C3(シール部径)とが実質的に等しく設定されている。このため、各弁体に作用する冷媒圧力の影響がキャンセルされる。一方、図示のように抽気弁8が閉じた状態では、パワーエレメント306が、実質的に内部通路35の吸入圧力Psのみを感知して動作するようになる。すなわち、主弁7は、定常制御状態において吸入圧力Psに基づいて開閉動作するようになる。
次に、制御弁301の動作について説明する。
図10は、図9の上半部に対応する部分拡大断面図である。図10(A)は、最小容量運転時の状態を示している。図10(B)は、最大容量運転時(起動時等)にブリード機能を発揮させたときの状態を示している。以下では図9に基づき、適宜図10を参照しつつ説明する。
制御弁301において、ソレノイド303が非通電のときには、コア342とプランジャ346との間に吸引力が作用しない。このため、スプリング375の付勢力によって主弁7が全開状態となる。このため、図10(A)に示すように、ポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒が、全開状態の主弁7を通過し、ポート12からクランク室112へと流れることになる(一点鎖線矢印参照)。このため、制御圧力Pcが上昇し、圧縮機100は最小容量運転を行う。
このとき、第2弁体312が弁座383に着座してブリード弁9が閉じる。一方、吸入圧力Psが比較的高くなるため、パワーエレメント306が収縮し、弁体350が可動弁座320から離間して抽気弁8が開く。それにより、クランク室112から吸入室114へ所定流量の冷媒のリリーフがなされる(二点鎖線矢印参照)。その結果、圧縮機100に必要な範囲で冷媒の内部循環を確保することができる。なお、このように冷媒が抽気弁8、作動ロッド330の内部通路35、連通孔332および圧力室328を経る通路が、「第1副通路」を構成する。抽気弁8の開弁により、この第1副通路が開放される。
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド303に制御電流(起動電流)が供給されると、コア342がスプリング375の付勢力に抗してプランジャ346を吸引する。このため、作動ロッド330が押し上げられる。このとき、図10(B)に示すように、第1弁体310が弁座20に着座して主弁7を閉じる一方、第2弁体312が弁座383から離間してブリード弁9を開く。また、起動時は吸入圧力Psが比較的高いため、弁体350が可動弁座320から離間して抽気弁8が開く。すなわち、ブリード弁9と抽気弁8の双方が開く状態となる。それにより、クランク室112から吸入室114へ所定流量の冷媒のリリーフがなされて制御圧力Pcが低下し、圧縮機100は最大容量運転を行う(二点鎖線矢印参照)。つまり、ブリード機能が発揮され、圧縮機100が速やかに起動する。なお、冷媒が抽気弁8、作動ロッド330の内部通路35、連通孔334、ブリード弁9および圧力室328を経る通路が、「第2副通路」を構成する。抽気弁8およびブリード弁9の開弁により、この第2副通路が開放される。上記第1副通路と第2副通路とは、互いに並列に接続されている。本実施形態では、最大容量運転時に両副通路が開状態となる。
こうして吸入圧力Psが十分に低くなると、パワーエレメント306が伸長して抽気弁8を閉じる。このとき、ソレノイド303に供給される制御電流を空調の設定温度に応じて小さくすると、作動ロッド330とパワーエレメント306とが一体となって、吸入圧力Psによる力と、スプリング375による力と、ソレノイド303の吸引力とがバランスする位置まで下方へ移動する。これにより、第1弁体310が弁座20から離れ、主弁7が所定の開度に設定される。その結果、吐出圧力Pdの冷媒が開度に応じた流量に制御されてクランク室112に導入され、圧縮機100は、制御電流に対応した容量の運転に移行するようになる。なお、このときブリード弁9も開くこととなるが、抽気弁8が閉じられるため、ブリード機能が発揮されることはない。
ソレノイド303の電磁コイル50に供給される制御電流が一定の場合、パワーエレメント306が吸入圧力Psを感知して主弁7の開度を制御する。吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなった場合には、パワーエレメント306が収縮するため、主弁7の開度が小さくなり、圧縮機100は、吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下して設定圧力Psetに近づくようになる。逆に、吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなった場合は、パワーエレメント306が伸長するため、主弁7の開度が大きくなり、圧縮機100は、吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが上昇して設定圧力Psetに近づくようになる。このようにして、制御弁301は、吸入圧力Psがソレノイド303によって設定された設定圧力Psetになるよう圧縮機の吐出容量を制御する。
本実施形態においても、図5に示したように、抽気通路の開口面積に関し、可変容量運転域での開口面積をS1、最小容量運転域での開口面積をS2、最大容量運転域での開口面積をS3とした場合に、S1<S2<S3の関係が成立する。そのような関係が成立するように、主弁7、抽気弁8およびブリード弁9の構造が定められている。このため、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
[第4実施形態]
図11は、第4実施形態に係る制御弁の構成を示す部分拡大断面図である。以下では第2実施形態との相異点を中心に説明する。本実施形態の制御弁401は、制御室連通ポートを2つ有する点で第2実施形態の制御弁201と異なる。なお、同図において第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁401は、弁本体402とソレノイド203とを一体に組み付けて構成される。ボディ405には、上端側からポート12(第1制御室連通ポート)、ポート412(第2制御室連通ポート)、ポート14(吐出室連通ポート)、ポート16(吸入室連通ポート)が設けられている。ポート412は、主弁7を経た冷媒をクランク室112へ向けて導出する「導出ポート」として機能する。一方、ポート12は、クランク室112から冷媒を導入する「導入ポート」として機能する。なお、図示を省略するが、圧縮機100においては、ポート412,ポート12のそれぞれとクランク室112とを連通させる個別の連通路が形成されている。
弁孔18とポート412との間には、圧力室424が形成される。圧力室424は、ポート412と半径方向に連通している。圧力室424の弁孔18とは反対側には、ガイド孔426が形成されている。ガイド孔426の圧力室424とは反対側にポート12が設けられている。ガイド孔426、弁孔18およびガイド孔26を貫通するように作動ロッド430が設けられている。作動ロッド430は、ガイド孔426,26に2点支持される態様で軸線方向に摺動可能である。
このような構成によっても、第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2実施形態とは異なり、クランク室112への冷媒の導出ポートと、クランク室112からの冷媒の導入ポートとを別経路としたため、その冷媒の導入出を個別に調整することが可能となる。
[第5実施形態]
図12は、第5実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1〜4実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁501は、弁本体502とソレノイド503とを一体に組み付けて構成される。弁本体502は、ボディ505およびパワーエレメント506等を備えている。パワーエレメント506は「感圧部」として機能する。ボディ505の上端開口部を閉じるように端部材513が固定されている。制御弁501は、一端側からパワーエレメント506、抽気弁8およびブリード弁9、主弁7、ソレノイド503が順に配置される構成を有する。
ボディ505には、上端側からポート16(吸入室連通ポート)、ポート12(第1制御室連通ポート)、ポート412(第2制御室連通ポート)、ポート14(吐出室連通ポート)が設けられている。ポート412,ポート12は、第4実施形態と同様にクランク室112に連通し、それぞれ「導出ポート」、「導入ポート」として機能する。ボディ505内には、ポート14とポート412とを連通させる主通路と、ポート12とポート16とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁7が設けられ、副通路には抽気弁8およびブリード弁9が設けられる。
ガイド孔426の圧力室424とは反対側には、副弁室524が設けられている。副弁室524は、ポート12と半径方向に連通している。副弁室524のガイド孔426とは反対側には、ガイド孔526が形成されている。ガイド孔526の副弁室524とは反対側に作動室528が設けられている。作動室528はポート16と連通する。ガイド孔426、弁孔18およびガイド孔26を貫通するように主弁体530が設けられている。主弁体530は段付円筒状をなし、ガイド孔426,26に2点支持される態様で軸線方向に摺動可能である。また、ガイド孔526を貫通するように副弁体536が設けられている。副弁体536は有底円筒状をなし、ガイド孔526に摺動可能に支持されている。副弁体536は、「ブリード弁体」および「抽気弁体」として機能する。
主弁体530の上半部が縮径し、弁孔18を貫通しつつ内外を区画する区画部533となっている。主弁体530の中間部に形成された段部が、主弁座22に着脱して主弁7を開閉する。区画部533の上部が上方に向かってテーパ状に拡径し、その上端開口部に副弁座534が構成されている。副弁座534は、主弁体530と共に変位する可動弁座として機能し、また、「ブリード弁座」および「抽気弁座」として機能する。
副弁体536は、パワーエレメント506と一体に設けられ、主弁体530と同軸状に対向する。副弁体536の側部には、内部通路532と作動室528とを連通させる連通孔550が設けられている。副弁体536が副弁座534に着脱することにより抽気弁8又はブリード弁9を開閉する。
また、ボディ505の軸線に沿って長尺状の作動ロッド538が設けられている。作動ロッド538の上端部は、副弁体536の底部を介してパワーエレメント506と作動連結可能となっている。作動ロッド538の下端部は、プランジャ46に連結されている。作動ロッド538の上半部は主弁体530を貫通し、その上部が縮径されている。その縮径部に環状のばね受け560が挿通されている。ばね受け560は、縮径部の基端である段部562に支持されている。副弁体536の底部とばね受け560との間には、副弁体536を抽気弁8およびブリード弁9の開弁方向に付勢するスプリング564(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
作動ロッド538の軸線方向中間部には係合部材59が嵌着されている。主弁体530と係合部材59との間には、主弁体530を主弁7の閉弁方向に付勢するスプリング540(「付勢部材」として機能する)が介装されている。主弁7の制御時には、スプリング540の弾性力によって主弁体530と係合部材59とが突っ張った状態となり、主弁体530と作動ロッド538とが一体に動作する。
パワーエレメント506は、作動室528に配置されている。パワーエレメント506は、吸入圧力Psを感知して変位するベローズ10を含み、そのベローズ10の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、作動ロッド538および副弁体536を介して主弁体530にも伝達される。副弁体536が副弁座534に着座して抽気弁8およびブリード弁9を閉じることにより、クランク室112から吸入室114への冷媒のリリーフが遮断される。また、副弁体536が副弁座534から離間して抽気弁8又はブリード弁9を開くことにより、クランク室112から吸入室114への冷媒のリリーフが許容される。
パワーエレメント506は、ベローズ10の上端開口部を第1ストッパ582により閉止し、下端開口部を第2ストッパ584により閉止して構成されている。第1ストッパ582は、端部材513と一体成形されている。第2ストッパ584は、副弁体536と一体成形されている。端部材513は、パワーエレメント506の固定端となっている。端部材513のボディ505への圧入量を調整することにより、パワーエレメント506の設定荷重(スプリング85の設定荷重)を調整できるようにされている。
次に、制御弁501の動作について説明する。
図13は、図12の上半部に対応する部分拡大断面図である。図13(A)は、最小容量運転時に抽気機能が発揮されたときの状態を示している。図13(B)は、最大容量運転時(起動時等)にブリード機能が発揮されたときの状態を示している。以下では図12に基づき、適宜図13を参照しつつ説明する。
ソレノイド503が非通電のときには、コア542とプランジャ46との間に吸引力が作用しない。このため、主弁7が全開状態となり、図13(A)に示すように、ポート14に導入された吐出圧力Pdの冷媒が、全開状態の主弁7を通過し、ポート412からクランク室112へと流れることになる(一点鎖線矢印参照)。このため、制御圧力Pcが上昇し、圧縮機100は最小容量運転を行う。
このとき、吸入圧力Psが比較的高くなるため、パワーエレメント506が収縮し、副弁体536が副弁座534から離間して抽気弁8が開く。それにより、クランク室112から吸入室114へ所定流量の冷媒のリリーフがなされる(二点鎖線矢印参照)。その結果、圧縮機100に必要な範囲で冷媒の内部循環を確保することができる。
一方、空調装置の起動時など、ソレノイド503に制御電流(起動電流)が供給されると、コア542がプランジャ46を吸引する。このため、作動ロッド538が押し上げられる。このとき、スプリング540の付勢力により主弁体530が押し上げられ、図13(B)に示すように、主弁体530が弁座20に着座して主弁7を閉じる。一方、作動ロッド538が主弁体530に対して相対変位しつつさらに押し上げられ、作動ロッド538が副弁体536を押し上げる。その結果、副弁体536が副弁座534から離間してブリード弁9を開く。それにより、クランク室112から吸入室114へ所定流量の冷媒のリリーフがなされて制御圧力Pcが低下し、圧縮機100は最大容量運転を行う(二点鎖線矢印参照)。つまり、ブリード機能が発揮され、圧縮機100が速やかに起動する。
こうして吸入圧力Psが十分に低くなると、パワーエレメント506が伸長してブリード弁9を閉じる。このとき、ソレノイド503に供給される制御電流を空調の設定温度に応じて小さくすると、主弁体530とパワーエレメント506とが一体となって作動し、主弁7が所定の開度に設定される。その結果、吐出圧力Pdの冷媒が開度に応じた流量に制御されてクランク室112に導入され、圧縮機100は、制御電流に対応した容量の運転に移行するようになる。
ソレノイド503の電磁コイル50に供給される制御電流が一定の場合、パワーエレメント506が吸入圧力Psを感知して主弁7の開度を制御する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに近づくようになる。本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、抽気通路を、制御弁を経る抽気通路と、制御弁を経ない抽気通路とを含むように構成した。変形例においては、制御弁を経る通路のみから抽気通路を構成してもよい。その場合も、上述したS1<S2<S3の関係が成立するように構成する。
上記実施形態では、一つの制御弁が主弁、抽気弁およびブリード弁を備える構成を例示した。変形例においては、その制御弁が主弁および抽気弁を備え、ブリード弁を備えない構成としてもよい。あるいは、制御弁とは別体の抽気弁を圧縮機に設けてもよい。また、制御弁とは別体のブリード弁を圧縮機に設けてもよい。その場合も、上述したS1<S2<S3の関係が成立するように構成する。
上記実施形態では、制御弁として、吸入圧力Psを直接感知して動作するいわゆるPs感知弁を例示した。変形例においては、被感知圧力として制御圧力Pcを感知して動作するいわゆるPc感知弁としてもよい。あるいは、パワーエレメントを設けることなく、弁体を含む可動部材が差圧を感知して動作する差圧弁として構成してもよい。例えば、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が設定差圧となるように動作するPd−Ps差圧弁としてもよい。あるいは、吐出圧力Pdと制御圧力Pcとの差圧(Pd−Pc)が設定差圧となるように動作するPd−Pc差圧弁としてもよい。その場合も、少なくとも主弁7と抽気弁を必須要件とする。
上記実施形態では、制御弁として、ソレノイドをアクチュエータとする電磁弁を例示した。変形例においては、モータをアクチュエータとする電動弁としてもよい。あるいは、冷媒圧力を受けて作動する機械式のアクチュエータを有する制御弁としてもよい。その場合も、上述したS1<S2<S3の関係が成立するように構成する。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。