JP6007368B2 - 制御弁 - Google Patents

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Description

本発明は制御弁に関し、特に共用のボディに主弁と副弁とが設けられ、単一のソレノイドにより駆動される制御弁に関する。
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
この圧縮機としては、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。この圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、圧縮機の吐出室とクランク室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
このような制御弁は、駆動部としてのソレノイドに外部から電流を供給することで、その弁開度が調整される。空調装置の起動時などその空調機能を速やかに発揮させる必要があるときには、例えばソレノイドに最大電流を流すことで弁部を閉弁状態とし、クランク圧力Pcを低くして揺動板を回転軸に対して大きく傾けることで、圧縮機を最大容量で運転させることができる。車両のエンジン負荷が大きいときにはソレノイドをオフにすることで弁部を全開状態とし、クランク圧力Pcを高くして揺動板を回転軸に対してほぼ直角にすることで、圧縮機を最小容量で運転させることができる。
このような制御弁には、吐出室とクランク室とを連通させる主通路に主弁を設ける一方、クランク室と吸入室とを連通させる副通路に副弁を設け、それらの弁を単一のソレノイドにより駆動するものがある(例えば特許文献1参照)。この制御弁によれば、空調装置の定常運転時には副弁を閉じた状態で主弁の開度が調整される。それにより、上述のようにクランク圧力Pcを制御し、圧縮機の吐出容量を制御することができる。一方、空調装置の起動時には主弁を閉じた状態で副弁が開かれ、それによりクランク圧力Pcを速やかに低下させることで、圧縮機を比較的速やかに最大容量運転状態へ移行させることができる。また、単一のソレノイドにより複数の弁を開閉させる構成としたため、制御弁全体をコンパクトに構成することができる。
このような制御弁は、単一のソレノイドにより主弁と副弁とを駆動する関係上、主弁体と副弁体とを同一軸線上に設け、その軸線に沿って配設された作動ロッドを介して各弁体にソレノイド力を伝達する機構を有する。制御弁のボディには主弁孔が設けられ、主弁体に副弁孔が設けられる。すなわち、副通路が主弁体を貫通するように設けられる。そして、主弁孔の開口端部に設けられた主弁座に対して主弁体が着脱することにより主弁が開閉され、副弁孔の開口端部に設けられた副弁座に対して副弁体が着脱することにより副弁が開閉される。ただし、圧縮機の定常運転時は副弁体が副弁座に押しつけられ、副弁の閉弁状態が維持される。圧縮機の起動時にはソレノイド力を最大にし、主弁体を主弁座に着座させた状態でさらに副弁体を開弁方向に付勢することにより副弁を開くことができる。
特開2008−240580号公報
ところで近年、車両メーカにおいて圧縮機をより早く起動させたいという要望がある。空調性能をより速やかに発揮させることで更なる快適性を追求し、車両の販売促進につなげるものである。そのためには、副弁開時の冷媒流量を大きくしなければならない。しかしながら、上述の制御弁は副弁孔を主弁体に形成するため、副弁の大きさは主弁の大きさによる制約をうけることになり、所望の流量を得るのは容易ではない。すなわち、副弁孔を主弁孔よりも大きくすることは物理的に不可能である。そこで、副弁体の副弁座からのリフト量を大きく設定することも考えられるが、副弁体のストロークを大きくすることは制御弁全体を大きくすることになり、コスト的に不利となる。また、そのようにストロークを大きくしたとしても、副弁孔の大きさが変わらなければ、流量を顕著に増大させることはできない。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、主弁と副弁とを単一のソレノイドにより駆動する制御弁において、副弁開時に主弁の大きさに関わりなく流量が得られるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、作動流体を導入又は導出する導入出ポート、作動流体を導入する導入ポート、作動流体を導出する導出ポートが設けられたボディと、導入ポートと導入出ポートとを連通させる主通路に設けられた主弁と、導入出ポートと導出ポートとを連通させる副通路に設けられた副弁と、ボディに摺動可能に支持され、主通路に設けられた主弁座に着脱して主弁を開閉する主弁体と、副通路に設けられた副弁座に着脱して副弁を開閉する副弁体と、供給される電流量に応じた大きさのソレノイド力を発生させるソレノイドと、ソレノイドに連結され、主弁体および副弁体に対して直接又は間接的にソレノイド力を伝達可能な作動ロッドと、を備える。そして、副弁座がボディの一部に形成される。主弁の制御状態においては副弁の閉弁状態を維持しつつ作動ロッドを主弁体と一体変位させ、主弁の閉弁後においても作動ロッドを主弁体に対して相対変位させることにより副弁体を開弁方向に変位させる作動切替機構がさらに設けられる。
この態様によると、副弁座が主弁体ではなく、ボディの一部に形成される。このため、主弁とは独立して副弁の大きさを設定することができる。そして、主弁の制御状態においては副弁の閉弁状態を維持しつつ作動ロッドを主弁体と一体変位させることで、主弁の開度が調整される。また、主弁の閉弁後においても作動ロッドを主弁体に対して相対変位させることで、副弁を開弁させることができる。すなわち、ソレノイドの駆動に伴う作動切替機構の動作により、主弁と副弁とを独立に開閉制御することができるとともに、副弁開時における流量を十分に確保することが可能となる。
本発明によれば、主弁と副弁とを単一のソレノイドにより駆動する制御弁において、副弁開時に主弁の大きさに関わりなく流量が得られるようになる。
第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。 図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。 制御弁の動作を表す図である。 制御弁の動作を表す図である。 第2実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。 第3実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。 第4実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。 第5実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。 第6実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁の構成を示す断面図である。
制御弁1は、自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される図示しない可変容量圧縮機(単に「圧縮機」という)の吐出容量を制御する電磁弁として構成されている。この圧縮機は、冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻されて冷凍サイクルを循環する。圧縮機は、自動車のエンジンによって回転駆動される回転軸を有し、その回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結されている。その揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより、冷媒の吐出量が調整される。制御弁1は、その圧縮機の吐出室からクランク室へ導入する冷媒流量を制御することで揺動板の角度、ひいてはその圧縮機の吐出容量を変化させる。
制御弁1は、圧縮機の吸入圧力Ps(「被感知圧力」に該当する)を設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁1は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、圧縮機の運転時に吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する主弁と、圧縮機の起動時にクランク室の冷媒を吸入室へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する副弁とを含む。ソレノイド3は、主弁を開閉方向に駆動してその開度を調整し、クランク室へ導入する冷媒流量を制御する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5内に設けられた主弁および副弁、主弁の開度を調整するためにソレノイド力に対抗する力を発生するパワーエレメント6等を備えている。パワーエレメント6は、「感圧部」として機能する。
ボディ5には、その上端側からポート12,14,16が設けられている。このうち、ポート12はボディ5の上端開口部に設けられ、ポート14,16はボディ5の側部に設けられている。ポート12は吸入室に連通する「吸入室連通ポート」として機能し、ポート14はクランク室に連通する「クランク室連通ポート」として機能し、ポート16は吐出室に連通する「吐出室連通ポート」として機能する。ボディ5の上端開口部には端部部材13が固定されている。端部部材13の外周面には、ポート12を形成するための複数の連通溝15が設けられている。ボディ5の下端部はソレノイド3の上端部に連結されている。
ボディ5内には、ポート16とポート14とを連通させる主通路と、ポート14とポート12とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁が設けられ、副通路には副弁が設けられている。主弁と副弁は同軸状に設けられ、副弁が主弁の上方に配置されている。すなわち、制御弁1は図示のように、一端側からパワーエレメント6、副弁、主弁、ソレノイド3が配置される構成を有する。主通路には主弁孔18が設けられ、その下端開口端縁に主弁座20が形成されている。副通路には副弁孔32が設けられ、その上端開口端縁に副弁座34が形成されている。
ポート16は、吐出室から吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート14は、圧縮機の定常動作時に主弁を経由したクランク圧力Pcの冷媒をクランク室へ向けて導出する一方、圧縮機の起動時にはクランク室から排出されたクランク圧力Pcの冷媒を導入する。このとき導入された冷媒は、副弁に導かれる。ポート12は、圧縮機の定常動作時に吸入圧力Psの冷媒を導入する一方、圧縮機の起動時には副弁を経由した吸入圧力Psの冷媒を吸入室へ向けて導出する。ポート12と副弁孔32との間には、吸入圧力Psが満たされる圧力室22が形成される。パワーエレメント6は、圧力室22に配置される。
主弁孔18と副弁孔32とは同軸状に形成され、主弁孔18と副弁孔32との間の圧力室27がポート14と連通している。ポート16と主弁孔18との間には弁室26が形成されている。弁室26の主弁孔18とは反対側には、主弁孔18と同軸状にガイド孔24が形成されている。ガイド孔24には、有底円筒状の主弁体30が摺動可能に挿通されている。ガイド孔24の弁室26とは反対側には、圧力室28が形成されている。主弁体30は、弁室26側から主弁座20に着脱することにより主弁を開閉し、吐出室からクランク室へ流れる冷媒流量を調整する。
一方、副弁孔32を貫通するように副弁体36が設けられている。副弁体36は、主弁体30と軸線方向に対向配置され、圧力室22側から副弁座34に着脱することにより副弁を開閉する。副弁体36が副弁座34に着座して副弁を閉じることにより、クランク室から吸入室への冷媒のリリーフが遮断される。また、副弁体36が副弁座34から離間して副弁を開くことにより、クランク室から吸入室への冷媒のリリーフが許容される。主弁体30の上底部には内外を連通する連通孔35が設けられており、その内部通路37が圧力室27と圧力室28とを連通させている。すなわち、主弁体30の上下の圧力室および内部通路37は、クランク圧力が満たされる容量室を形成している。
また、ボディ5の軸線に沿って長尺状の作動ロッド38が設けられている。作動ロッド38は、その上半部が主弁体30および副弁体36を貫通してパワーエレメント6と作動連結可能に接続され、下端部がソレノイド3の後述するプランジャ50に接続されている。作動ロッド38は、主弁体30および副弁体36に対して直接又は間接的にソレノイド力を伝達する。作動ロッド38の中間部には、ばね受け部材40が設けられている。主弁体30とばね受け部材40との間には、主弁体30を主弁の閉弁方向に付勢するスプリング42(「第1付勢部材」として機能する)が介装されている。一方、パワーエレメント6と副弁体36との間には、副弁体36を副弁の閉弁方向に付勢するスプリング44(「第2付勢部材」として機能する)が介装されている。パワーエレメント6は、吸入圧力Psを感知して変位するベローズ45(「感圧部材」として機能する)を含み、そのベローズ45の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、作動ロッド38を介して主弁体30にも伝達される。
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア46と、コア46の下端開口部を封止するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ48と、スリーブ48に収容されてコア46と軸線方向に対向配置された円筒状のプランジャ50と、コア46およびスリーブ48に外挿された円筒状のボビン52と、ボビン52に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル54と、電磁コイル54を外方から覆うように設けられ、ヨークとしても機能する円筒状のケース56と、ケース56の下端開口部を封止するように設けられた端部部材58とを備える。なお、本実施形態においては、ボディ5、コア46、ケース56および端部部材58が制御弁1全体のボディを形成している。プランジャ50とコア46との間には、プランジャ50をコア46から離間する方向に付勢するスプリング47(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア46の上端開口部に圧入されることにより固定されている。コア46とボディ5との間に圧力室28が形成されている。一方、コア46の中央を軸線方向に貫通するように、作動ロッド38が挿通されている。作動ロッド38の下端部がプランジャ50の上半部に圧入され、作動ロッド38とプランジャ50とが同軸状に接続されている。
作動ロッド38は、プランジャ50により下方から支持され、主弁体30、副弁体36およびパワーエレメント6と作動連結可能に構成されている。作動ロッド38は、コア46とプランジャ50との吸引力であるソレノイド力を、主弁体30又は副弁体36に適宜伝達する。一方、作動ロッド38には、パワーエレメント6の伸縮作動による駆動力(「感圧駆動力」ともいう)がソレノイド力と対抗するように負荷される。すなわち、主弁の制御状態においては、ソレノイド力と感圧駆動力とにより調整された力が主弁体30に作用し、主弁の開度を適切に制御する。主弁の閉時には、ソレノイド力の大きさに応じて作動ロッド38が主弁体30に対して相対変位し、副弁体36を押し上げて副弁を開弁させる。それによりブリード機能を発揮させる。
コア46の上端部にはリング状の軸支部材60が圧入されており、作動ロッド38は、その軸支部材60によって軸線方向に摺動可能に支持されている。軸支部材60の外周面の所定箇所には、軸線に平行な図示しない連通溝が形成されている。圧力室28のクランク圧力Pcは、その連通溝、作動ロッド38とコア46との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ48の内部にも導かれる。
連通路62は、スリーブ48内をオイルダンパ室とするためのオリフィスとして機能する。すなわち、本実施形態では、制御弁1の製造工程において、圧縮機の潤滑用として冷媒に含まれるオイルと同種のオイルを予めスリーブ48内に入れておく。本実施形態では、軸支部材60に設けられた連通溝が、スリーブ48へのオイルの出入りに対して抵抗となる絞り通路として機能する。このような構成により、スリーブ48をオイルダンパ室として機能させることができ、そのスリーブ48に配置されたプランジャ50の微小振動などが抑制される。その結果、そのような微小振動による騒音の発生が防止または抑制される。なお、変形例においては、連通路62が、スリーブ48へのオイルの出入りに対して抵抗となる絞り通路として機能するようにしてもよい。すなわち、軸支部材60に設けられた連通溝および連通路62の少なくとも一方が、絞り通路として機能するようにすればよい。なお、スプリング47が、コア46とプランジャ50とを両者を互いに離間させる方向に付勢するオフばねとして機能する。
スリーブ48は非磁性材料からなる。プランジャ50の側面には軸線に平行な複数の連通溝66が設けられ、プランジャ50の下端面には半径方向に延びて内外を連通する複数の連通溝68が設けられている。このような構成により、図示のようにプランジャ50が下死点に位置しても、クランク圧力Pcがプランジャ50とスリーブ48との間隙を通って背圧室70に導かれるようになっている。
ボビン52からは電磁コイル54につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部部材58を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部部材58は、ケース56に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部部材58は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙にも満たされている。このように樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙に樹脂材を満たすことで、電磁コイル54で発生した熱をケース56に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部部材58からは接続端子72の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
ボディ5は、第1ボディ81と第2ボディ82とを組み付けて構成されている。第1ボディ81の内方に主弁が設けられ、第2ボディ82の内方に副弁が設けられている。第1ボディ81は、段付円筒状をなし、その内方に形成されたガイド孔24にて主弁体30を摺動可能に支持している。第2ボディ82は、段付円筒状をなし、その下半部が第1ボディ81の上半部に内挿されるように固定されている。第2ボディ82の下方側部には、内外を連通する連通孔83が設けられている。第1ボディ81と第2ボディ82とのオーバラップ部にポート14が形成されている。パワーエレメント6は、第2ボディ82に収容されるように設けられている。第2ボディ82の下端開口部の内径がやや縮径されることにより副弁孔32が形成されている。
主弁体30のガイド孔24との摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール90が設けられている。主弁体30の上底部は隔壁92を形成し、その下面が作動ロッド38と適宜係合連結可能な「被係合部」として機能する。作動ロッド38は、上方に向かって段階的に縮径する段付円柱状をなし、その第1の段差により第1係合部94が形成され、第2の段差により第2係合部96が形成される。作動ロッド38における第1係合部94と第2係合部96との間の中間部分が、隔壁92の中央に設けられた挿通孔を貫通する。また、その中間部分には円筒状の係止部材98が圧入されている。このため、第1係合部94と係止部材98とにより隔壁92の相対的な移動範囲が規制されることになる。すなわち、作動ロッド38に設けられた第1係合部94と係止部材98とが、主弁体30の相対的な移動範囲を規制する「規制部」として機能する。同図には、隔壁92が係止部材98に当接し、主弁体30が作動ロッド38に対して相対的に上死点に位置した状態が示されている。
このような構成により、ソレノイド3が非通電のときには、スプリング47(図1参照)の付勢力により作動ロッド38が押し下げられるが、その際、係止部材98が隔壁92に当接して主弁体30を開弁方向に付勢する。その結果、図示のように、主弁が全開状態となる。なお、主弁の制御状態においても、基本的にはスプリング42の付勢力により主弁体30が係止部材98を介して作動ロッド38と一体になり、作動連結されるようになる。作動ロッド38は、図示のように隔壁92が係止部材98に当接した状態においては、第1係合部94が隔壁92から所定間隔L1をあけて離間するように第1の段差の位置が設定されている。この所定間隔L1は、いわゆる「遊び」として機能する。
一方、第2ボディ82の下部が縮径され、その内方に副弁孔32が形成されている。副弁孔32の上端開口部に副弁座34が形成されている。副弁体36は段付円柱状をなし、その軸線に沿って貫通孔41が設けられている。作動ロッド38の上端部は、その貫通孔41を貫通してパワーエレメント6に接続される。副弁閉時において作動ロッド38は副弁体36と相対変位可能となっている。副弁体36は、その本体が副弁孔32を貫通するように配置され、上端部が半径方向外向きに延出して着脱部43を構成する。着脱部43が圧力室22側から副弁座34に着脱して副弁を開閉する。作動ロッド38の上部に設けられた第2係合部96は、押圧部として機能する。すなわち、第2係合部96は、図示の状態では副弁体36から離間しているが、作動ロッド38がボディ5に対して相対変位することにより副弁体36の底面に係合し、副弁体36に副弁の開弁方向のソレノイド力を直接伝達可能となる。
本実施形態では、主弁の全開時における作動ロッド38の第2係合部96と副弁体36との間隔L2が、主弁体30の主弁座20からのリフト量と等しくなるように第2の段差の位置が設定されている。これは、主弁の閉弁までは副弁の開弁を防止するとともに、主弁の閉弁後に副弁を速やかに開弁させるものである。すなわち、この構成によれば、主弁体30が主弁座20に着座して主弁を閉じると同時に第2係合部96が副弁体36に係合する。このため、その主弁閉後に作動ロッド38を主弁体30に対して相対変位させることにより副弁体36を押し上げ、副弁を開くことができる。ただし、その副弁体36の副弁座34からのリフト量は、所定間隔L1と等しい高さまでとなる。本実施形態におけるこの所定間隔L1,L2の設定と、それを実現するための主弁体30,副弁体36,作動ロッド38の構造およびそれらの配置構成が、「作動切替機構」を構成する。
なお、変形例においては、その間隔L2を主弁全開時の主弁体30のリフト量よりもやや大きくし、そのリフト量と所定間隔L1とを合わせた値よりも小さくしてもよい。これにより、主弁が閉じてから副弁が開くまでに適度な余裕をもたせることができる。すなわち、主弁の制御状態においても、場合によっては主弁を閉じることにより一時的に最大容量運転へ移行させることがあるが、そのような場合に副弁の閉弁状態(主弁と副弁の同時閉の状態)を安定に維持することができる。
パワーエレメント6は、ベローズ45の上端開口部を第1ストッパ84(「ベース部材」に該当する)により閉止し、下端開口部を第2ストッパ86(「ベース部材」に該当する)により閉止して構成されている。第1ストッパ84は段付円柱状をなし、ベローズ45の内方にて軸線方向に延在する。第2ストッパ86は円板状をなし、その上面中央部が第1ストッパ84の下端面と対向配置される。ベローズ45の内部は密閉された基準圧力室Sとなっており、第1ストッパ84と第2ストッパ86との間に、ベローズ45を伸長方向に付勢するスプリング88が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。第1ストッパ84は、端部部材13と一体成形されている。したがって、第1ストッパ84は、ボディ5に対して固定された状態となる。ベローズ45は、圧力室22の吸入圧力Psと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(主弁の開閉方向)に伸長または収縮する。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ45が所定量収縮すると、第2ストッパ86が第1ストッパ84に当接して係止されるため、その収縮は規制される。
本実施形態では、第2ストッパ86の底面は平坦面となっているが、作動ロッド38の上端面はR形状とされている。このため、作動ロッド38がパワーエレメント6に対して作動連結する際には、作動ロッド38と第2ストッパ86とがほぼ点接触となる。このため、仮に作動ロッド38とパワーエレメント6の一方に横荷重が生じても、その横荷重が他方に作用し難くなり、作動連結される各弁体の挙動が安定に保持される。副弁体36と第2ストッパ86との間にはスプリング44が介装されている。
以上の構成において、主弁体30と主弁座20とにより主弁が構成され、その主弁の開度によって吐出室からクランク室へ導入される冷媒流量が調整される。また、副弁体36と副弁座34とにより副弁が構成され、その副弁の開閉によりクランク室から吸入室への冷媒の導出が許容または遮断される。すなわち、制御弁1は、主弁と副弁のいずれか一方を開弁させることにより冷媒の流れを切り替える三方弁としても機能する。
本実施形態においては、主弁体30の主弁における有効受圧径B(シール部径)と、主弁体30の摺動部の有効受圧径C(シール部径)とが等しく設定されている。このため、主弁体30に作用する吐出圧力Pd、クランク圧力Pcおよび吸入圧力Psの影響はキャンセルされる。その結果、主弁の制御状態において、主弁体30は、圧力室22の吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能する。なお、本実施形態では、副弁体36の副弁における有効受圧径A(シール部径)を、主弁体30の主弁における有効受圧径Bよりも大きくしたが、それらの有効受圧径の大小関係(つまり主弁と副弁の大小関係)は、制御弁1の仕様に応じて適宜設定することが可能である。
このような構成において、制御弁1の安定した制御状態においては、圧力室22の吸入圧力Psが所定の設定圧力Psetとなるよう主弁が自律的に動作する。この設定圧力Psetは、基本的にはスプリング42,44,47,88のばね荷重およびベローズ45の荷重によって予め調整され、蒸発器内の温度と吸入圧力Psとの関係から、蒸発器の凍結を防止できる圧力値として設定される。設定圧力Psetは、ソレノイド3への供給電流(設定電流)を変えることにより変化させることができる。本実施形態では、制御弁1の組み付けが概ね完了した状態で端部部材13の圧入量を再調整することで、スプリングの設定荷重を微調整することができ、設定圧力Psetを正確に調整することができる。
一方、ソレノイド力を大きくすると、主弁の閉弁後においても作動ロッド38をボディ5に対して相対変位させ、それにより副弁体36を副弁座34からリフトさせて副弁を開くことができる。また、第1係合部94を隔壁92に係合(当接)させた状態でソレノイド力を主弁体30に直接伝達することができ、スプリング42の付勢力よりも大きな力で主弁体30を主弁の閉弁方向に押圧することができる。この構成は、主弁体30とガイド孔24との摺動部への異物の噛み込みにより主弁体30がロックした場合に、それを解除するロック解除機構(連動機構、押圧機構)としても機能する。
次に、制御弁の動作について説明する。
図3および図4は、制御弁の動作を表す図であり、図2に対応する。既に説明した図2は、制御弁の最小容量運転状態を示している。図3は、制御弁のブリード機能を動作させたときの状態を示している。図4は、比較的安定した制御状態を示している。以下においては、図1に基づき、適宜図2〜図4を参照しつつ説明する。
制御弁1においてソレノイド3が非通電のとき、つまり自動車用空調装置が動作していないときには、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しない。一方、吸入圧力Psは比較的高い状態にある。このため、図2に示すように、ベローズ45が縮小し、パワーエレメント6は実質的に機能しない。また、スプリング47の付勢力が係止部材98を介して主弁体30に伝達され、主弁体30が主弁座20から離間して主弁が全開状態となる。一方、スプリング44の付勢力により副弁体36が副弁座34に着座した状態を保ち、副弁は閉弁状態を保持する。
一方、自動車用空調装置の起動時など、ソレノイド3の電磁コイル54に制御電流が供給されると、ソレノイド力により作動ロッド38が上方に駆動される。その結果、図3に示すように、主弁体30が主弁座20に着座して主弁を閉じる。そして、さらに作動ロッド38がスプリング42の付勢力に抗して主弁体30と相対変位することにより、第2係合部96が副弁体36に係合してこれを押し上げ、副弁体36が副弁座34から離間して副弁を開弁させる。ただし、第1係合部94が隔壁92に係止されることにより作動ロッド38の変位が規制されるため、副弁体36のリフト量(つまり副弁の開度)も規制される。なお、起動時は通常、吸入圧力Psが比較的高いため、ベローズ45が縮小状態を維持し、副弁の開弁状態が維持される。
すなわち、ソレノイド3に起動電流が供給されると、主弁が閉じてクランク室への吐出冷媒の導入を規制するとともに副弁が開いてクランク室内の冷媒を吸入室に速やかにリリーフさせる。その結果、圧縮機を速やかに起動させることができる。なお、例えば車両が低温環境下におかれた場合のように、吸入圧力Psが低く、ベローズ45が伸長した状態においても、ソレノイド3に大きな電流を供給することで副弁を開弁させることができ、圧縮機を速やかに起動させることができる。
そして、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された制御状態にあるときには、図4に示すように、吸入圧力Psが比較的低いためにベローズ45が伸長し、主弁体30が動作して主弁の開度を調整する。このとき、主弁体30は、スプリング47による開弁方向の力と、スプリング42による閉弁方向の力と、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力と、吸入圧力Psに応じて動作するパワーエレメント6によるソレノイド力に対抗する力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。なお、主弁の制御状態においては、スプリング44の付勢力により副弁体36が副弁座34に着座した状態を保つため、副弁の閉弁状態が維持される。
そして、たとえば冷凍負荷が大きくなり吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも高くなると、ベローズ45が縮小するため、主弁体30が相対的に上方(閉弁方向)へ変位する。その結果、主弁の弁開度が小さくなり、圧縮機は吐出容量を増やすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが低下する方向に変化する。逆に、冷凍負荷が小さくなって吸入圧力Psが設定圧力Psetよりも低くなると、ベローズ45が伸長する。その結果、パワーエレメント6による付勢力がソレノイド力に対抗する方向に作用する。この結果、主弁体30への閉弁方向の力が低減されて主弁の弁開度が大きくなり、圧縮機は吐出容量を減らすよう動作する。その結果、吸入圧力Psが設定圧力Psetに維持される。
このような定常制御が行われている間にエンジンの負荷が大きくなり、空調装置への負荷を低減させたい場合、制御弁1においてソレノイド3がオンからオフに切り替えられる。そうすると、コア46とプランジャ50との間に吸引力が作用しなくなるため、スプリング47の付勢力により主弁体30が主弁座20から離間し、主弁が全開状態となる。このとき、副弁体36は副弁座34に着座しているため、副弁は閉弁状態となる。このとき、圧縮機の吐出室からポート16に導入された吐出圧力Pdの冷媒は、全開状態の主弁を通過し、ポート14からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが高くなり、圧縮機は最小容量運転を行うようになる。
以上に説明したように、本実施形態では、副弁孔32および副弁座34が主弁体30に形成されるのではなく、ボディ5の一部に形成される。このため、主弁体30の大きさに関わりなく、副弁孔32および副弁体36の大きさを設定することができる。すなわち、主弁の大きさに関わりなく副弁の大きさを設定することができる。そして、主弁の制御状態においては副弁の閉弁状態を維持しつつ作動ロッド38を主弁体30と一体変位させることで、主弁の開度が調整される。また、主弁の閉弁後においても作動ロッド38を主弁体30に対して相対変位させることで、ソレノイド力により副弁を開弁させることができる。すなわち、ソレノイド3の駆動に伴う作動切替機構の動作により、主弁と副弁とを独立に開閉制御することができるとともに、副弁開時における流量を十分に確保することが可能となる。このため、副弁を大きくして冷媒流量を増大させることができ、ブリード機能を高めることができるようになる。
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、弁本体の構成が第1実施形態と若干異なる。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁201は、弁本体202のボディ205にポート12とは別に、吸入室につながるポート212(「他の吸入室連通ポート」として機能する)が設けられている。すなわち、第1ボディ281におけるガイド孔224の軸線方向中間部にポート212が設けられている。一方、主弁体230の外周面におけるポート212との対向部には凹溝232が周設されている。これにより、主弁体230とガイド孔224との間には、ポート212に連通する圧力室222が形成される。本実施形態においては、ボディ205、コア46、ケース56および端部部材58が制御弁201全体のボディを形成している。なお、本実施形態では凹溝232をガイド孔224側に設けているが、主弁体230側に設けるようにしてもよい。あるいは、ポート212そのものを圧力室222として凹溝232を省略することもできる。
このような構成により、ポート16から導入される高圧の吐出冷媒がガイド孔224に漏洩しようとしても、これを圧力室222に導き、ポート212から導出させることができる。すなわち、その漏洩冷媒が圧力室28に侵入してクランク圧力Pcに影響を及ぼすことを防止することができる。また、吐出室からクランク室への漏洩部を主弁の弁部のみとすることができるため、最大容量運転の維持や制御状態における吸入圧力Psの設定圧力Psetからのずれを小さくすることができる。その結果、主弁の安定した制御状態を維持することができる。
このような構成を実現するために、主弁体230は、第1実施形態の主弁体30よりも軸線方向に長くされている。また、隔壁92が主弁体230の軸線方向中間部に設けられている。一方、第2ボディ282に形成された副弁孔32は、第1実施形態のそれよりも小さくされている。そして、副弁体236の副弁における有効受圧径A(シール部径)と、主弁体330の主弁における有効受圧径B(シール部径)とを等しくしている。なお、変形例においては、有効受圧径Aを有効受圧径Bよりも大きくしてもよい。
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、弁本体の構成が第2実施形態と異なる。このため、以下では第2実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁301は、弁本体302における圧力室28に吸入圧力Psが導入される。この吸入圧力Psは、ソレノイド3の内部にも導入される。すなわち、主弁体330における凹溝232には、内外を連通させる連通孔335が形成されている。この連通孔335は、隔壁92の前後も連通させる。一方、副弁体336は下方に延在し、その下部が主弁体330の上端開口部に挿通されている。また、副弁体336には圧力室22と主弁体330の内部通路37とを連通させる内部通路340が形成されている。
このような構成により、圧力室22と圧力室28とが副弁体336および主弁体330の各内部通路を介して連通される。その結果、ポート12又はポート212を介して導入される吸入圧力Psは、ソレノイド3の内部にも導入されるようになる。一方、主弁体330および副弁体336には、それぞれクランク圧力Pcと吸入圧力Psとの差圧(Pc−Ps)が作用するようになるが、スプリング42,44等の荷重を適切に設定することで、実用上問題ないと考えられる。
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、弁本体の構成が第3実施形態と異なる。このため、以下では第3実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第3実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁401は、第3実施形態のポート212をポート14とし、吸入室ではなくクランク室に連通させる。その結果、圧縮機につながる各ポートの配列が第3実施形態とは異なる。ポート16には環状のストレーナ417が取り付けられている。ストレーナ417は、ボディ405の内部への異物の侵入を抑制するためのフィルタを含む。ボディ405は単一のボディからなり、主弁孔18と副弁孔32とが共用の弁孔としてボディ405に一体成形されている。主弁体330の内部通路37は、主通路および副通路の双方を構成する。このような構成により、制御弁401全体をコンパクトに構成することができる。
また、ボディ405にばね受け部材25が圧入されており、ばね受け部材25と副弁体436との間にスプリング44が介装されている。このような構成により、ばね受け部材25の圧入量を調整することでスプリング44単体の荷重調整を容易に行えるようになる。
[第5実施形態]
図8は、第5実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、弁本体の構成が第4実施形態と若干異なる。このため、以下では第4実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第4実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁501は、弁本体502のボディ505に、ポート16からポート14への冷媒の漏洩を防止するためのシール構造が設けられている。すなわち、ガイド孔224の上端部には、円環状の凹溝からなるシール収容部510が設けられ、シール部材としてのOリング520が嵌着されている。Oリング520は、主弁体330とガイド孔224との間隙をシールし、弁室26から圧力室222ひいては圧力室28への冷媒の漏洩を規制する。一方、主弁体330とガイド孔224との間にはシール収容部510の前後に間隙が形成されるところ、シール収容部510の弁室26側の高圧側クリアランスCL1のほうが圧力室222側の低圧側クリアランスCL2よりも大きくなるように構成されている。本実施形態において、高圧側クリアランスCL1は、ストレーナ417のフィルタのメッシュの幅よりも大きく設定されている。一方、低圧側クリアランスCL2は、そのフィルタのメッシュの幅よりも小さく設定されている。
このような構成により、Oリング520に前後差圧が作用すると、Oリング520がシール収容部510に対して低圧側クリアランスCL2を閉じるように押しつけられる。その結果、主弁体330の摺動部のシール性を良好に維持することができる。また、低圧側クリアランスCL2が相対的に小さいため、Oリング520が変形してもその低圧側クリアランスCL2に挟まって摺動抵抗を増大させるといった問題を生じさせることもない。一方、高圧側クリアランスCL1が相対的に大きいため、仮に高圧側から異物が侵入してきたとしても、その異物の噛み込みが生じることを防止又は抑制することができる。その結果、主弁体330の円滑な作動を維持することができる。なお、ストレーナ417を設けることで、そもそもボディ405の内部に侵入してくる異物が高圧側クリアランスCL1に対して十分に小さいものに規制される。また、主弁体330とガイド孔224との間に導かれる異物の量そのものが抑えられる。その結果、異物の噛み込みが発生し難くなっている。
また、シール収容部510の底面とOリング520との間に空隙が形成されるように構成されている。このような構成により、Oリング520がその前後差圧により軸線方向に圧縮され、その結果、半径方向外向きに大きくなったとしても、Oリング520がシール収容部510の底面から反力を受け難い構成となっている。それにより、Oリング520と主弁体330との間の摺動抵抗が過大となることを防止し、主弁体330の円滑な動作を維持している。
なお、本実施形態では、Oリング520をガイド孔224側に設ける例を示したが、主弁体330側に設けてもよい。また、シール部材としてOリング以外のシールリングやシールワッシャーでもよいし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等からなるシール部材を採用してもよい。また、本実施形態では、シール収容部510の底面とOリング520との間に空隙を形成したが、このような空隙を設けない構成としてもよい。
[第6実施形態]
図9は、第6実施形態に係る制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。本実施形態の制御弁は、副弁の配置構成が第1実施形態と若干異なる。このため、以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
制御弁601は、弁本体602のボディ605が、第1ボディ681と第2ボディ682とを組み付けて構成されている。第2ボディ682の内方に主弁が設けられ、第1ボディ681と第2ボディ682との間に副弁が設けられている。すなわち、主弁と副弁との位置関係が、第1実施形態とは異なっている。
第2ボディ682は、その下半部が第1ボディ681の上半部に内挿されるように固定されている。第1ボディ681における第2ボディ682の下方に副弁孔32が形成されている。副弁体636は、有底円筒状をなし、第2ボディ682の下端部に摺動可能に外挿されている。第1ボディ681と第2ボディ682とのオーバラップ部の上半部側に、ポート16が形成されている。一方、第1ボディ681と第2ボディ682とのオーバラップ部の下半部側には圧力室27が形成されている。第1ボディ681には、圧力室27の内外を連通させるようにポート14が設けられている。副弁体636は、圧力室27に配置されている。第1ボディ681には、また、圧力室28の内外を連通させるようにポート17が設けられている。ポート17は、吸入室に連通して吸入圧力Psを導入する。
一方、主弁体630は、段付円筒状をなし、第2ボディ682の中央部に設けられたガイド孔24と、下端部に設けられたガイド孔624(「第2ガイド孔」として機能する)とにより、軸線方向に摺動可能に支持されている。主弁体630の軸線方向中間部の外径が縮径されており、その縮径部の下側基端部により、主弁座20に着脱して主弁を開閉する着脱部が構成されている。主弁体630のガイド孔24との対向面には、ラビリンスシール90が設けられている。圧力室22は、主弁体630の上方に形成されている。
副弁体636の底部中央には貫通孔41が設けられ、副弁体636および主弁体630を貫通するように、作動ロッド38が設けられている。作動ロッド38の中間部には係止部材698が固定されており、その上面が係合部696を形成している。作動ロッド38が上方に動作して、係止部材698が副弁体636の下面に係合すると、副弁体636に上向き(副弁の開弁方向)の力が伝達される。作動ロッド38の上端部にも係止部材699が固定されている。作動ロッド38が下方に動作して、係止部材699が主弁体630の上面に係合すると、主弁体630に下向き(主弁の開弁方向)の力が伝達される。
副弁体636は、主弁体630の下面と係合部696との間に挟まれるように配置されている。主弁体630と副弁体636との間には、互いを離間する方向に付勢するスプリング44が設けられている。副弁体636の底部の周縁近傍には、複数の連通孔635が設けられている。第2ボディ682と主弁体630と副弁体636とにより囲まれた空間は、圧力室690を形成する。圧力室28の吸入圧力Psは、連通孔635を介して圧力室690にも導入される。
本実施形態では、主弁の全開時(副弁の閉弁時)において、作動ロッド38の係合部696と副弁体636とが所定間隔L1をあけて離間するように、係合部696の位置が設定されている。本実施形態では、所定間隔L1を、主弁全開時における主弁体630の主弁座20からのリフト量に一致させている。これにより、主弁の制御状態において副弁が開弁されることが防止されている。また、主弁閉時での副弁体636と主弁体630との距離が、副弁の全開ストロークとなる。
また、本実施形態では、主弁体630の主弁における有効受圧径B(シール部径)と、主弁体630の上側摺動部の有効受圧径C(シール部径)とが等しく設定されている。このため、主弁体630に作用する吐出圧力Pdの影響はキャンセルされる。一方、主弁体630の下側摺動部の有効受圧径D(シール部径)が、上側摺動部の有効受圧径C(シール部径)よりも大きく設定されていることから、主弁体630には、その径の差分(C−D)に対応する開弁方向の差圧(Pc−Ps)が作用するようになる。また、副弁体636には、副弁体636の副弁における有効受圧径A(シール部径)と、副弁体636の摺動部の有効受圧径E(シール部径)との径の差分(A−E)に対応する閉弁方向の差圧(Pc−Ps)が作用するようになる。
このような構成において、主弁体630とガイド孔との摺動部への異物の噛み込みにより主弁体630がロックした場合には、ソレノイド力により係合部696が副弁体636を押圧して開弁させ、さらに副弁体636を介して主弁体630を閉弁方向に押圧することにより、そのロックを解除することができる。本実施形態によれば、第2ボディ682よりも大径の第1ボディ681に副弁孔32を設ける構成としたため、副弁を大きくすることが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記各実施形態では、作動ロッド38に設けた段差を利用して第1係合部94を構成し、その第1係合部94により主弁体30,230,330を直接押せる構成とした。変形例においては、例えばスプリング42のばね荷重又はばね定数を十分に大きくすることで、スプリング42(弾性体)を介しつつもソレノイド力が主弁体に対して大きく伝達される構成としてもよい。すなわち、主弁体に対してソレノイド力を直接付与するのが望ましいところ、このように弾性体を介して間接的に付与する構成としてもロックを解除することが可能となる。
上記各実施形態では、制御弁として、吸入圧力Psを感知して動作するいわゆるPs感知弁を示したが、クランク圧力Pcを感知して動作するいわゆるPc感知弁として構成してもよい。その場合、ポート12をクランク室に連通させるようにする。
上記実施形態では、パワーエレメント6を構成する感圧部材としてベローズ45を採用する例を示したが、ダイヤフラムを採用してもよい。その場合、その感圧部材として必要な動作ストロークを確保するために、複数のダイヤフラムを軸線方向に連結する構成としてもよい。
上記各実施形態では、クランク室に連通するクランク室連通ポート(導入出ポート)として、単一のポート14を設ける例を示した。変形例においては、クランク室連通ポートを、主弁を経由した冷媒をクランク室へ導出する第1ポート(導出ポート)と、クランク室の冷媒を導入する第2ポート(導入ポート)とに分けて構成してもよい。
上記実施形態では、スプリング42,44,47,78等に関し、付勢部材としてスプリング(コイルスプリング)を例示したが、ゴムや樹脂等の弾性材料、あるいは板ばね等の弾性機構を採用してもよいことは言うまでもない。
上記実施形態では、可変容量圧縮機の吐出室からクランク室に導入する冷媒の流量又は圧力を調整するいわゆる入れ制御の制御弁を示したが、変形例においては、クランク室から前記吸入室へ導出する冷媒の流量又は圧力を調整するいわゆる抜き制御の制御弁として構成してもよい。また、例えば他の形態の三方弁など、共用のボディに主弁と副弁とが設けられ、単一のソレノイドにより駆動される複合弁であれば、上記実施形態の構成を適用することができる。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
1 制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 6 パワーエレメント、 12,14,16 ポート、 18 主弁孔、 20 主弁座、 22 圧力室、 24 ガイド孔、 26 弁室、 27,28 圧力室、 30 主弁体、 32 副弁孔、 34 副弁座、 35 連通孔、 36 副弁体、 38 作動ロッド、 42,44 スプリング、 92 隔壁、 94 第1係合部、 96 第2係合部、 98 係止部材、 201 制御弁、 202 弁本体、 205 ボディ、 212 ポート、 222 圧力室、 224 ガイド孔、 230 主弁体、 236 副弁体、 301 制御弁、 302 弁本体、 330 主弁体、 336 副弁体、 401 制御弁、 405 ボディ、 436 副弁体、 501 制御弁、 502 弁本体、 505 ボディ、 510 シール収容部、 520 Oリング、 601 制御弁、 602 弁本体、 605 ボディ、 630 主弁体、 636 副弁体、 696 係合部。

Claims (10)

  1. 作動流体を導入又は導出する導入出ポート、作動流体を導入する導入ポート、作動流体を導出する導出ポートが設けられたボディと、
    前記導入ポートと前記導入出ポートとを連通させる主通路に設けられた主弁と、
    前記導入出ポートと前記導出ポートとを連通させる副通路に設けられた副弁と、
    前記ボディに摺動可能に支持され、前記主通路に設けられた主弁座に着脱して前記主弁を開閉する主弁体と、
    前記副通路に設けられた副弁座に着脱して前記副弁を開閉する副弁体と、
    供給される電流量に応じた大きさのソレノイド力を発生させるソレノイドと、
    前記ソレノイドに連結され、前記主弁体および前記副弁体に対して直接又は間接的にソレノイド力を伝達可能な作動ロッドと、
    を備え、
    前記副弁座が前記ボディの一部に形成され、
    前記主弁の制御状態においては前記副弁の閉弁状態を維持しつつ前記作動ロッドを前記主弁体と一体変位させ、前記主弁の閉弁後においても前記作動ロッドを前記主弁体に対して相対変位させることにより前記副弁体を開弁方向に変位させる作動切替機構をさらに備えることを特徴とする制御弁。
  2. 前記作動ロッドと前記副弁体とが前記主弁の制御状態において相対変位可能であり、
    前記作動ロッドは、前記ボディに対して相対変位することにより前記副弁体に係合し、前記副弁体に前記副弁の開弁方向のソレノイド力を直接伝達可能な係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
  3. 前記作動切替機構は、前記主弁の開閉状態にかかわらず、前記作動ロッドの係合部と前記副弁体との間隔が、前記主弁体の前記主弁座からのリフト量以上となるように保持することを特徴とする請求項2に記載の制御弁。
  4. 前記作動ロッドに前記主弁体の相対的な移動範囲を規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の制御弁。
  5. 前記副弁体のシール部径が、前記主弁体のシール部径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制御弁。
  6. 前記作動ロッドを前記主弁体に対して相対変位させることにより前記主弁体を前記主弁の閉弁方向に押圧する荷重を増大させる押圧機構を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制御弁。
  7. 吸入室に導入される冷媒を圧縮して吐出室から吐出する可変容量圧縮機の吐出容量を、前記吐出室からクランク室に導入する冷媒、および前記クランク室から前記吸入室へ導出する冷媒の少なくとも一方の流量又は圧力を調整することにより変化させる可変容量圧縮機用制御弁として構成され、
    前記導入出ポートとして前記クランク室に連通するクランク室連通ポートと、前記導入ポートとして前記吐出室に連通する吐出室連通ポートと、前記導出ポートとして前記吸入室に連通する吸入室連通ポートとが設けられた前記ボディと、
    前記吸入室の吸入圧力または前記クランク室のクランク圧力を被感知圧力として感知し、その被感知圧力が設定圧力よりも低くなると前記作動ロッドを介して前記主弁体に開弁方向の力を作用させる感圧部と、
    を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の制御弁。
  8. 前記ボディにおいて前記副弁体により区画される空間に前記吐出室連通ポートに連通することによりクランク圧力が満たされる容量室が形成され、
    前記主弁体が前記容量室の圧力を前記主弁の開閉方向に受圧するように配置されることにより、前記主弁体に作用する冷媒の圧力の影響がキャンセルされることを特徴とする請求項7に記載の制御弁。
  9. 前記ボディにおける前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとの間に前記主弁体を摺動可能に支持するガイド部が形成され、
    前記ガイド部と前記主弁体との間に、前記吐出室連通ポートから前記クランク室連通ポートへの冷媒の漏洩を規制するシール部材が設けられていることを特徴とする請求項7または8に記載の制御弁。
  10. 前記ボディにおける前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとの間に前記主弁体を摺動可能に支持するガイド部が形成され、
    前記ガイド部の中途に前記吸入室に連通する他の吸入室連通ポートが設けられていることを特徴とする請求項7または8に記載の制御弁。
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