JP6709128B2 - 熱交換システム - Google Patents

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Description

本発明は、熱交換システムに関する。
省エネへのニーズの高まりから、地中熱利用型のヒートポンプシステムの普及が進んでいる。これは、冬季には地中の温熱、夏季には地中の冷熱を利用して空調負担等を軽減するシステムである(例えば、特許文献1参照)。一方、建物の屋上を活用した空気熱利用型のヒートポンプシステムも普及しており、大気熱を同様に利用し空調負担等を軽減する。
特開2003-21360号公報
地中熱利用型のヒートポンプシステムでは、熱媒体を循環させるための配管を杭に設け、これを地中に打設するものがあるが、杭打ちコストなどの初期コストが課題となり、杭を打つためのスケジュール確保など工期面での課題もある。基礎コンクリートに配管を埋める場合もあるが、配管に不具合が生じた際のメンテナンス手法などに課題が残る。
空気熱利用型のヒートポンプシステムは大気熱を利用するため、一般的に地中熱と比較して効率が低くなる。また雨風にさらされるため劣化が早い、暴風雨に耐えうる設置をする必要がある、などの課題がある。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、施工やメンテナンスが容易であり、効率も良い熱交換システム等を提供することを目的とする。
前述した課題を解決するための第1の発明は、熱媒体を循環させるとともに当該熱媒体の熱交換を行うための配管を有する熱交換システムであって、構造物のスラブ上に設けられた土層に、前記配管が埋設され、前記配管に接続されたヒートポンプと、前記構造物に設置された設備で用いる熱媒体を循環させる設備配管と、を備え、前記ヒートポンプは、前記配管内の熱媒体を利用して前記設備配管内の熱媒体の温度を変化させることを特徴とする熱交換システムである。
第2の発明は、熱媒体を循環させるとともに当該熱媒体の熱交換を行うための配管を有する熱交換システムであって、構造物のスラブ上に設けられた水層に、前記配管が埋設され、前記配管に接続されたヒートポンプと、前記構造物に設置された設備で用いる熱媒体を循環させる設備配管と、を備え、前記ヒートポンプは、前記配管内の熱媒体を利用して前記設備配管内の熱媒体の温度を変化させ、前記配管は可とう性を有することを特徴とする熱交換システムである。
本発明では、熱交換用の配管を屋上水田や屋上公園の土層に埋設することで、従来の地中熱利用型のヒートポンプシステムと同様、夏季には地中の冷熱を利用し、冬季には地中の温熱を利用して効率よく熱交換ができる。また杭打ちなども不要で施工がしやすく、コンクリートに配管等を埋設する必要もないので配管の掘り出しも容易でメンテナンスもしやすい。また、空気熱利用型のヒートポンプシステムのように雨風にさらされて劣化することもなく、暴風雨によって損傷等が生じることもない。これは配管を池等の水層に埋設する場合も同様である。
また、配管に接続されたヒートポンプを備えることにより、屋上の土層等に埋設した配管を利用したヒートポンプシステムを構築できる。本発明の熱交換システムでは前記のように効率よく熱交換ができるので、屋上に設置されるような空気熱利用型のヒートポンプシステムと比べてヒートポンプを小規模のものとでき、スペースの有効利用が可能になり構造物の耐荷重やコストの低減につながり、排熱によるヒートアイランド化も抑制できる。
第1の発明の熱交換システムでは、前記土層に植生が行われることが望ましい。
この場合、植物の蒸散等による放熱効果により、土層に埋設した配管による熱交換の効率向上が夏季等において期待できる。また自然と触れ合える魅力ある景観を形成できる。
第1の発明の熱交換システムでは、前記土層の上に水層が設けられることが望ましい。前記水層は例えば水田であり、前記水田の水位が所定値以下になると前記水田に注水を行う注水設備を有することも望ましい。
この場合、土層を低温化でき、同じく土層に埋設した配管による熱交換の効率向上が夏季等において期待できる。また土層上で稲等を生育することで、食や自然環境への関心の向上や地域コミュニケーションの醸成、生物多様性などの点でも好ましい。上記の注水設備を設け水量を維持することで、稲の生育面だけでなく、夏季等における配管による熱交換の効率向上にも寄与する。
第1の発明の熱交換システムにおいて、前記土層は保水性を有することが望ましい。
これにより土層の水分量をコントロールでき、土層の熱伝導率の向上による熱交換の効率向上が期待できる。
土層または水層の表面の前記スラブからの高さの最大値は、300mm以上であることが望ましい。
これにより、土層等の300mm以上の深さに配管を埋設できるようになり、配管周囲の土層等の温度が安定し、熱交換システムを好適に稼働させることができる。
第1の発明の熱交換システムにおいて、前記配管は可とう性を有することが望ましい。
第1の発明の熱交換システムにおいて、第2の発明の熱交換システムと同様に配管が可とう性を有していることにより、配管がその設置高さの違いに追随できるようになる。
本発明により、施工やメンテナンスが容易であり、効率も良い熱交換システム等を提供することができる。
熱交換システム1を示す図。 配管11の配置を示す図。 熱交換システム1’を示す図。 配管11の配置を示す図。 熱交換システム1aを示す図。 配管11の配置を示す図。 土層35を示す図。
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る熱交換システム1を示す図である。この熱交換システム1は、構造物100の屋上スラブ上の屋上水田2に設けられる屋外設備であり、配管11、ヒートポンプ12、設備配管13等を有する。構造物100は特に限定されず、例えばビル、学校、住宅、駐車場、操車場、調整池その他の施設とすることができる。
配管11は熱媒体を循環させるとともに当該熱媒体の熱交換を行うためのものであり、例えば可とう性を有する樹脂製のチューブなどが用いられる。樹脂としては例えばポリエチレンや塩化ビニルなどを用いることができる。配管11はヒートポンプ12に接続され、屋上水田2の土層に埋設される。熱媒体は特に限定されず、この種の熱媒体として通常用いられる液体等を用いることができる。
配管11はヒートポンプ12から出てヒートポンプ12に戻るように一筆書き状に設けられ、略U字状の部分が連続するように配置される。ただし、配管11の配置はこれに限ることはない。例えば梯子状やスパイラル状に配管11を配置することも可能である。
ヒートポンプ12は、配管11内の熱媒体を利用して設備配管13内の熱媒体の温度を変化させるものである。ヒートポンプ12の構成は特に限定されず、熱交換器等を備えた既知のものを利用可能である。
設備配管13はヒートポンプ12に接続され、構造物100に設置された空調設備などの各種設備で用いる熱媒体等を循環させる。
図2は屋上水田2における配管11の配置の例を示す図である。屋上水田2は、構造物100のコンクリート製の屋上スラブ上に設けられる。
屋上水田2は、スラブ上に設けた遮水シート21(遮水層)の上に土層22を設け、土層22の凹部の上に水23(水層)を張り稲24の栽培を行うものである。
前記の配管11は遮水シート21の上に配置して土層22の最下部に埋設され、配管11内を循環する熱媒体と土層22との間で熱交換が行われる。水23の表面(水面)のスラブからの高さは、最大値で300mm以上としておき、配管11が水面から300mm以上の深さに埋設できるようにしておくが、これに限ることはない。
土層22内には排水用のドレーン25も埋設され、土層22内の水分量を適切な値に維持することができる。ドレーン25は透水性を有する素材で形成され、屋上スラブ上の相対的に低い位置に配置される。ドレーン25の上に防根シート(不図示)を設けて植物の根などによる目詰まりを防ぐことも可能である。
屋上水田2には注水設備27も設けられる。注水設備27は雨水等を貯留する貯水設備(不図示)に接続され、稲生育期の夏季等に屋上水田2の水位が所定値以下となった場合に注水を行うものである。水田の水位維持は、基本的に田植えから稲刈り前の水抜きまでの間行い、その期間は6月から9月あるいは10月までであるが、これに限ることはない。また、注水設備27は省略することも可能である。
熱交換システム1の施工時は、新築の構造物100の場合はその屋上スラブの完成後、屋上スラブの上に遮水シート21を敷設してその上に配管11やドレーン25その他の土層22に埋設する設備を配置して配管11とヒートポンプ12を接続し、土壌を搬入しこれを整形して土層22を構築する。以降は通常の水田と同様であり、必要な時期に稲24を植えて土層22上に水23を張ることとなる。既設の構造物100の場合は、既設の屋上スラブの上に上記の手順で熱交換システム1を構築することができる。
本実施形態では、熱交換用の配管11を屋上水田2の土層22に埋設することで、従来の地中熱利用型のヒートポンプシステムと同様、夏季には地中の冷熱を利用し、冬季には地中の温熱を利用して効率よく熱交換ができる。例えば夏季には外気温と土層22内の温度差を30度程度にまですることができる。また本実施形態の熱交換システム1は杭打ちなども不要で施工がしやすく、コンクリートに配管等を埋設することもないので配管11の掘り出しも容易でメンテナンスもしやすい。また、空気熱利用型のヒートポンプシステムのように雨風にさらされて劣化することもなく、暴風雨によって損傷等が生じることもない。
また本実施形態の熱交換システム1では、屋上の土層22に埋設した配管11を利用した効率の良いヒートポンプシステムが構築できるので、屋上に設置されるような空気熱利用型のヒートポンプシステムと比べてヒートポンプ12を小規模のものとでき、スペースの有効利用が可能になり構造物100の耐荷重やコストの低減につながり、排熱によるヒートアイランド化も抑制できる。
また、本実施形態では熱交換システム1を屋上水田2に適用し、配管11を埋設した土層22の上に水層(水23)を設けることで、土層22を低温化でき、特に夏季において外気温との差を大きくして熱交換の効率を向上させることが期待できる。土層22上で稲24等を生育することで、食や自然環境への関心の向上や地域コミュニケーションの醸成、生物多様性などの点でも好ましい。
また、屋上水田2に前記の注水設備27を設け稲生育期の夏季等に水量を維持することで、稲24の生育面だけでなく、夏季等における配管11による熱交換の効率向上にも寄与する。なお、屋上水田2で土を耕転する通常管理を行う場合、配管11を損傷するリスクもあるが、不耕起で管理を行う方法もあり、この場合には配管11を損傷する心配もない。
また、配管11は可とう性を有するので、本実施形態のように配管11を平面的に配置する場合に、スラブの段差などの設置高さの違いに追随することができる。また、300mm以上の深さに配管11を埋設することで、配管周囲の土層22の温度が安定し、熱交換システム1を好適に稼働させることができる。
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば本実施形態では熱交換システム1にヒートポンプ12を設けているが、ヒートポンプ12を設けずに、前記の設備配管13を図1の配管11と同様に配置して直接熱交換を行ってもよい。また図3の熱交換システム1’に示すように、屋上水田2を複数のゾーンにわけて、それぞれのゾーンに対して配管11やヒートポンプ12等を設けてもよい。
また、本実施形態では配管11として可とう性を有する樹脂製のチューブを用いたが、銅やステンレスなどの金属製のパイプなどを用いることも可能である。この場合、配管11の下に不織布などの緩衝材を設けて配管11の保護を行うことも可能である。
さらに、本実施形態では熱交換システム1を屋上水田2に適用しているが、屋上菜園などその他の屋上農園に適用することも可能であり、上記と同様の効果が得られる。
例えば図4は野菜26を栽培する屋上菜園の例であり、この場合は前記のような水層(水23)を設ける必要はないが、土層22の表面のスラブからの高さの最大値は300mm以上としておき、配管11を土層22の表面から300mm以上の深さに埋設できるようにしておくことが望ましい。特に既設の構造物100の場合など構造物100上の荷重が限定されるケースでは、新たに屋上農園等を施工する際に土層22の荷重を大きくせずに土層表面の高さを稼ぐため、空隙を有する袋体や発泡体などによる軽量のスペーサーや、軽量土壌を用いることも可能である。上記のスペーサーは、土層22を掘り起こして配管11のメンテナンスを行う際に配管11の位置を示す目印として役立てることも可能である。
以下、本発明の別の例について第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また、第1、第2の実施形態の構成は必要に応じて組み合わせることができる。
[第2の実施形態]
図5は本発明の第2の実施形態の熱交換システム1aを示す図である。本実施形態の熱交換システム1aは、緑地31や池32、樹木33などを有する屋上公園(庭園)3に設けられる点で第1の実施形態と異なる。
図6は屋上公園3における配管11の配置の例を示す図である。屋上公園3は、構造物100のコンクリート製の屋上スラブ上に設けられる。
屋上公園3は、スラブ上に設けた遮水シート34の上に土層35(土あるいは砂)を設け、土層35の凹部の上に水を張り池32(水層)とし、土層35の上に植生を行い緑地31としたものである。土層35の表面のスラブからの高さの最大値は例えば500mm以上とする。前記の配管11は、池32の水底に設置(埋設)されたり、緑地31の土層35に埋設されたりする。緑地31の土層35を掘り起こして配管11のメンテナンスを行うことも可能である。
この場合も、配管11が土層35に埋設されることにより第1の実施形態と同様の効果が得られ、池32において水中に配管11が設置されるケースでも同様の効果が得られる。また土層35の上に植生を行うことで、植物の蒸散等による放熱効果により、土層35に埋設した配管11による熱交換の効率向上が夏季等において期待でき、自然と触れ合える魅力ある景観も形成できる。これは前記のような屋上水田2における稲24や屋上菜園における野菜26に関しても同様である。
また、屋上公園3などの公共空間において配管11内の熱媒体の熱交換を行うことで、地域冷暖房などにも熱交換システム1aを好適に使用できる。さらに、豪雨時などには土層35で保水を行い都市内への流出を防止することもできる。
また緑地31などでは自動散水設備を設けることも可能であり、夏季等に散水を行うことで土層35の温度を安定させ、また土層35の水分量を所定の範囲に維持することで土層35の熱伝導率の向上による熱交換の効率向上が期待できる。この水分量(含水率)は、例えば重量比で20%程度とする。また土層35の水分量をモニタリング装置でモニタリングし、所定の範囲を外れたときに人手であるいは上記の自動散水設備で散水を行うことも可能である。これは前記した屋上菜園のケースなどでも同様である。
また土層35の水分量をコントロールするため、土層35を保水性を有するものとしてもよい。保水性は、水分を貯留するための空隙を有する部材によって実現でき、当該部材として空隙を有する繊維等による保水材や多孔質土壌を用いることができる。また図7に示すように、土層35の下部をより粗い粒子の層とし、上部をより細かい粒子の層としてこれらの層の空隙の表面張力効果によって保水性を実現することも可能である。これによっても、土層35の熱伝導率の向上による熱交換の効率向上が期待できる。
このように、本発明の熱交換システムは様々な屋外空間に適用可能であり、上記のような屋上農園や屋上公園以外にも、ビオトープや放牧地などに適用することも可能である。
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1、1’、1a;熱交換システム
2;屋上水田
3;屋上公園
11;配管
12;ヒートポンプ
13;設備配管
21、34;遮水シート
22、35;土層
23;水
24;稲
25;ドレーン
26;野菜
27;注水設備
31;緑地
32;池
33;樹木
100;構造物

Claims (9)

  1. 熱媒体を循環させるとともに当該熱媒体の熱交換を行うための配管を有する熱交換システムであって、
    構造物のスラブ上に設けられた土層に、前記配管が埋設され
    前記配管に接続されたヒートポンプと、
    前記構造物に設置された設備で用いる熱媒体を循環させる設備配管と、
    を備え、
    前記ヒートポンプは、前記配管内の熱媒体を利用して前記設備配管内の熱媒体の温度を変化させることを特徴とする熱交換システム。
  2. 熱媒体を循環させるとともに当該熱媒体の熱交換を行うための配管を有する熱交換システムであって、
    構造物のスラブ上に設けられた水層に、前記配管が埋設され
    前記配管に接続されたヒートポンプと、
    前記構造物に設置された設備で用いる熱媒体を循環させる設備配管と、
    を備え、
    前記ヒートポンプは、前記配管内の熱媒体を利用して前記設備配管内の熱媒体の温度を変化させ、
    前記配管は可とう性を有することを特徴とする熱交換システム。
  3. 前記土層に植生が行われたことを特徴とする請求項1記載の熱交換システム。
  4. 前記土層の上に水層が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項に記載の熱交換システム。
  5. 前記水層は水田であることを特徴とする請求項記載の熱交換システム。
  6. 前記水田の水位が所定値以下になると前記水田に注水を行う注水設備を有することを特徴とする請求項記載の熱交換システム。
  7. 前記土層は保水性を有することを特徴とする請求項1、3、4、5、6のいずれかに記載の熱交換システム。
  8. 土層または水層の表面の前記スラブからの高さの最大値は、300mm以上であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の熱交換システム。
  9. 前記配管は可とう性を有することを特徴とする請求項1、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載の熱交換システム。
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