以下、本発明を実施するための形態例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素は、同一の符号を付し、構成要素の重複説明は省略する。
<画像形成システムの概要>
まず、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの概要について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの概要図である。
画像形成システム1は、図1に示すように、画像形成装置2、PC(Personal Computer)端末P1及びP2(通信端末の一例)、並びに、出力許可ユーザーU1が所持する端末装置4を備える。画像形成装置2は、無線又は有線からなるLAN(Local Area Network)等のネットワークNにより、各PC端末(PC端末P1、P2)に接続される。
画像形成装置2は、用紙に画像を形成する画像形成装置本体3、画像形成装置本体3から排出される画像が形成された用紙(出力物)に対して所定の後処理を行う後処理装置FN、及び、排紙トレイ14を備える。画像形成装置本体3及び後処理装置FNの詳細な構成は、後述の図9を参照して詳述する。
排紙トレイ14は、画像形成装置本体3によって画像が形成され、後処理装置FNによって後処理が行われた用紙が排紙されるトレイである。出力許可ユーザーU1及び他ユーザーU2は、排紙トレイ14に排紙された用紙を取得することが可能である。なお、画像形成装置2の構成として、画像形成装置本体3の後段に後処理装置FNを設けない構成をとることも可能であり、この場合には、排紙トレイ14は画像形成装置本体3に直接取り付けられる。
PC端末P1は、セキュリティジョブJ1を発行する出力許可ユーザーU1によって操作される通信端末であり、発行したセキュリティジョブJ1を、ネットワークNを介して画像形成装置2に出力する。セキュリティジョブJ1は、セキュリティ印刷機能を利用する設定がなされた印刷ジョブであり、セキュリティジョブJ1には、セキュリティジョブJ1を発行したユーザーの識別情報であるオーナーIDが記載される。
セキュリティジョブJ1に基づく印刷物の出力処理は、画像形成装置2によって、出力許可ユーザーU1の遠隔ログインによるログイン認証が行われた後に実行される。出力許可ユーザーU1の遠隔ログインは、出力許可ユーザーU1が、出力許可ユーザーU1を画像形成装置2が検知可能な領域である検知可能領域A1内に到達したことを画像形成装置2が検知した時点で、画像形成装置2によって行われる。なお、以下の説明では、セキュリティジョブJ1を発行した出力許可ユーザーU1を、セキュリティジョブオーナーとも呼ぶ。
PC端末P2は、通常ジョブJ2を発行する他ユーザーU2によって操作される通信端末であり、発行した通常ジョブJ2を、ネットワークNを介して画像形成装置2に出力する。通常ジョブJ2は、ログイン認証を必要としない印刷ジョブである。したがって、画像形成装置2は、PC端末P2から発行された通常ジョブJ2を受信すると、即時に印刷処理を行う。以下の説明では、通常ジョブJ2を発行した他ユーザーU2を通常ジョブオーナーとも呼ぶ。通常ジョブJ2にもオーナーIDが含まれており、このオーナーIDは他ユーザーU2のユーザーIDと一致する。
なお、以下の説明において、セキュリティジョブJ1及び通常ジョブJ2を区別する必要がない場合には、単に「印刷ジョブ」と呼び、セキュリティジョブオーナー及び通常ジョブオーナーを区別する必要がない場合には、単に「ユーザー」と呼ぶ。
また、図1ではPC端末P1がセキュリティジョブJ1を発行し、PC端末P2が通常ジョブJ2を発行する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。PC端末P1が通常ジョブJ2を発行したり、PC端末P2がセキュリティジョブJ1を発行したりしてもよい。
端末装置4は、ユーザーによって所持される携帯型端末機器であり、例えば、スマートフォンやタブレット等のスマートデバイス、携帯電話機等で構成される。端末装置4には、ユーザーを識別するためのユーザーIDが設定されており、端末装置4は、該ユーザーIDを近距離無線通信によって画像形成装置本体3に送信する。近距離無線通信の規格には、例えば、Bluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)等を用いることができる。
画像形成装置本体3は、端末装置4から送信されたユーザーIDを受信すると、受信したユーザーIDと、印刷ジョブに記載されたオーナーIDとを照合する。画像形成装置本体3は、受信した印刷ジョブがセキュリティジョブJ1であり、かつ、ユーザーIDとオーナーIDとが一致した場合に、端末装置4を保持するユーザーを出力許可ユーザーU1として認証する。そして、画像形成装置本体3は、出力許可ユーザーU1が、画像形成装置本体3を中心とした略円形の領域として設定された出力処理開始領域A2内に到達したことを検知した時点で、印刷物の出力処理を開始する。出力処理開始領域A2については、後述の図2を参照して詳述する。
印刷物の出力処理は、印刷ジョブに基づいて行う画像形成処理であり、印刷ジョブに後処理の設定がされている場合には、出力処理に後処理の工程も含まれる。また、画像形成装置2のモードが節電モードである場合には、画像形成処理の前に画像形成装置2でウォームアップの処理が行われるが、このウォームアップ処理も、印刷物の出力処理に含まれる。
次に、図2を参照して、検知可能領域A1及び出力処理開始領域A2について説明する。図2は、検知可能領域A1、出力処理開始領域A2、及び、画像形成装置2とユーザーとの間の距離であるユーザー距離Lを示す説明図である。
検知可能領域A1は、図2に示すように、画像形成装置2を中心としたユーザー検知可能距離D1を半径とする略円形の領域である。ユーザー検知可能距離D1には、例えば、出力許可ユーザーU1が保持する端末装置4から発せられる電波を画像形成装置2が検知可能な距離が設定される。
出力処理開始領域A2は、画像形成装置2を中心とした出力処理開始距離D2を半径とする略円形の領域である。出力処理開始領域A2は、その領域内で出力許可ユーザーU1を検知した場合に、出力許可ユーザーU1が発行したセキュリティジョブに基づいて画像形成装置2が印刷物の出力処理を開始することが可能な領域である。本発明の一実施形態に係る画像形成装置2は、出力処理開始距離D2を、セキュリティジョブに設定されたジョブの内容に応じた長さに変化させる処理を行うが、出力処理開始距離D2の可変処理については後述する。
出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達したか否かの判定は、出力許可ユーザーU1と画像形成装置本体3との間の距離であるユーザー距離Lが、出力処理開始距離D2以下となったか否かの情報に基づいて行われる。なお、この判定処理は画像形成装置2により行われる。
ユーザー距離Lは、端末装置4が発する電波の強度を、画像形成装置本体3と出力許可ユーザーU1(端末装置4)との間の距離に変換することによって得ることができる。なお、ユーザー距離Lの起点は、例えば、画像形成装置2の排紙トレイ14(図1参照)の設置位置等に設定することが可能であるが、排紙トレイ14の配置位置以外の位置、例えば、画像形成装置本体3の任意の位置に設定してもよい。
ところで、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達したときに、画像形成装置本体3の周辺に他ユーザーU2が存在する場合も想定される。このような場合にも、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達したタイミングで画像形成装置2が出力処理を開始してしまうと、出力処理の結果、排紙トレイ14に排紙された出力物が、他ユーザーU2に見られてしまう。
また、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達したときに、出力許可ユーザーU1よりも画像形成装置2に近い位置に他ユーザーU2が存在しない場合であっても、他ユーザーU2が、画像形成装置2に向かって近づいてくる状況も想定される。図3Aに、このような状況の発生例を示す。図3Aに示す例では、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達した時点で、出力許可ユーザーU1よりも画像形成装置2から離れた位置に他ユーザーU2が存在する。
ところが、この他ユーザーU2が、画像形成装置2を使用する意思を持つユーザーである場合には、出力許可ユーザーU1より早く画像形成装置2の位置に到着してしまう可能性がある。画像形成装置2を使用する意思を持つユーザーとは、例えば、通常ジョブJ2に基づいて出力された出力物を取りに来たユーザーや、画像形成装置2のコピー機能を利用したいユーザー等を指す。図3Bに、このような状況の発生例を示す。図3Bでは、図3Aに示した、出力許可ユーザーU1の出力処理開始領域A2内への進入時における出力許可ユーザーU1及び他ユーザーU2の位置を、二点鎖線で示す。また、図3Aに示した時点から所定の時間が経過した時点における出力許可ユーザーU1及び他ユーザーU2の位置を、実線で示す。さらに、図3Aに示した時点から図3Bに示す時点までの間における出力許可ユーザーU1及び他ユーザーU2の移動の軌跡を、破線矢印で示す。
図3Bに示す時点では、図3Aの時点において、画像形成装置2に対して出力許可ユーザーU1より離れた位置に居た他ユーザーU2が、出力許可ユーザーU1よりも画像形成装置2に近い位置に移動している。他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する意思を有し、画像形成装置2の位置まで早足で移動した場合には、このような状況が発生し得る。この場合、出力許可ユーザーU1が発行したセキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物が、他ユーザーU2に見られてしまう。
一方、画像形成装置2の周囲に居る他ユーザーU2に画像形成装置2を使用する意思がなく、偶然、画像形成装置2の側を通りがかっただけである場合には、他ユーザーU2は、図3Bで示す時点の状況後、画像形成装置2の側を通り過ぎて他の場所に行くことが想定される。このような場合には、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に進入した時点で画像形成装置2による出力処理を行ったとしても、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物が、他ユーザーU2に見られる可能性は低い。
そこで、本発明では、画像形成装置2の周囲に存在する他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する可能性を精度良く判定し、該判定結果に基づいてセキュリティジョブJ1の出力開始タイミングを制御できる構成の画像形成システム1を提案する。
以下、図4を参照して本実施形態に係る画像形成システム1における、セキュリティジョブJ1に基づく出力動作の概要について説明する。図4は、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に進入するタイミングで、他ユーザーU2が画像形成装置2に近づいてきた状況を示す図である。図4に示す例では、他ユーザーU2が図中の左側の方向から右側の方向に移動する場合を想定する。なお、図4においては、ユーザーの移動の軌跡は破線矢印で示される。また、図4において、他ユーザーU2の移動中における位置の変遷を、時系列で古い順から位置U2_t1、位置U2_t2、位置U2_t3、位置U2_t4、及び位置U2_t5として示す。
本発明の画像形成システム1では、位置U2_t1〜位置U2_t5として示した各位置に他ユーザーU2が存在した各時点において、他者使用可能性を算出する。他者使用可能性は、他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する可能性の高さを示す値である。すなわち、他者使用可能性は、出力許可ユーザーU1が発行したセキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物のセキュリティ性が犯される可能性の高さを示す値でもある。そして、本発明の画像形成システム1は、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内で検出されており、かつ、他者使用可能性が所定の閾値以下となった場合に、画像形成装置2に出力処理を開始させる。他者使用可能性は、画像形成装置2が、他ユーザーU2の移動の軌跡の情報に基づいて算出する。
例えば、図4に示す位置U2_t1や位置U2_t2では、他ユーザーU2は、画像形成装置2に接近しているので、画像形成装置2を使用する可能性が高いと想定される。このような他ユーザーU2の位置や移動方向を検出した場合、画像形成装置2は、他者使用可能性として95%等の高い値を算出する。また、位置U2_t3では、他ユーザーU2は、画像形成装置2の側を横切る方向で移動している。このような動きをしている他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する可能性は、依然高いものの、他ユーザーU2が画像形成装置2に向かって進んできている場合(位置U2_t1、位置U2_t2等の場合)に比べると、他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する可能性は低いと想定される。したがって、画像形成装置2は、このような他ユーザーU2の位置や移動方向を検出した場合には、他者使用可能性として70%等の値を算出する。
また、位置U2_t4では、他ユーザーU2は、画像形成装置2から離れる方向に移動している。このような動きをしている他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する可能性は、低いと想定される。よって、画像形成装置2は、このような他ユーザーU2の位置や移動方向を検出した場合には、他者使用可能性として30%等の低い値を算出する。さらに、位置U2_t5では、他ユーザーU2は、画像形成装置2からさらに離れる方向に移動している。このような動きをしている他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する可能性は、非常に低い。よって、画像形成装置2は、このような位置や移動方向を検出した場合に、他者使用可能性として25%等の低い値を算出する。なお、「さらに離れる方向」であるという判定は、例えば、他ユーザーU2の移動方向が画像形成装置2から離れる方向であり、かつ、他ユーザーU2のユーザー距離Lが所定の距離以上である場合に行うことができる。
図5は、他者使用可能性Pと、その閾値Thとの関係を示すグラフである。図5の縦軸は他者使用可能性P(%)を示し、横軸は時間(s)を示す。図5は、図4で説明した他ユーザーU2の位置と他者使用可能性Pとの関係に対応する、他者使用可能性Pの変化特性を示すグラフである。それゆえ、図5中の時間t1〜時間t5は、それぞれ、図4中の位置U2_t1〜位置U2_t5と対応する。すなわち、例えば、図5に示す時間t1は、図4に示す他ユーザーU2が位置U2_t1に位置していた時間であり、図5に示す時間t2は、図4に示す他ユーザーU2が位置U2_t2に位置していた時間である。
図5に示す例では、時間t1における他者使用可能性Pが95%であり、時間t2における他者使用可能性Pも95%である。また、時間t3では他者使用可能性Pは70%になり、時間t4では他者使用可能性Pは30%になり、時間t5では他者使用可能性Pは25%となる。
また、図5に示す例では、他者使用可能性Pの閾値Thが25%に設定されており、他者使用可能性Pは、時間t5で閾値Thと同じ値になる。本実施形態に係る画像形成装置2は、他者使用可能性Pが閾値Th以下になった時点で、印刷の出力処理を開始する。すなわち、他ユーザーU2が、例えば図4の位置U2_t5のように画像形成装置2から遠い位置に存在し、かつ、画像形成装置2から離れる方向に移動していることが検出されたときに、画像形成装置2による出力処理が開始される。
上述のように、本実施形態に係る画像形成システム1では、出力許可ユーザーU1によりセキュリティジョブJ1が設定された場合、他者使用可能性Pが閾値Th以下となったとき、つまり、他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する可能性が低いと判断されるときにのみ、画像形成装置2による出力処理が開始される。これにより、画像形成装置2を使用する可能性が高い(画像形成装置2を使用する意思がある)他ユーザーU2に、出力許可ユーザーU1が発行したセキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物が見られてしまうことを防ぐことができる。
また、本実施形態に係る画像形成システム1では、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に進入した時点で、画像形成装置2の周囲に他ユーザーU2が存在していても、他者使用可能性Pが低い場合には、すぐに印刷の出力処理が開始される。したがって、本発明によれば、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物が、画像形成装置2の周辺に存在する他ユーザーU2に見られることを防ぎつつ、セキュリティジョブJ1に基づく出力処理が完了するまでの出力許可ユーザーU1の待ち時間を低減することができる。
なお、画像形成装置2に向かって進んできた他ユーザーU2の移動の軌跡の算出は、画像形成装置2により実行され、その処理は、他ユーザーU2の検出を行う範囲(領域)として設定された他者検知領域A3内で、画像形成装置2が他ユーザーU2を検出した時点から開始される。図4に示す例では、他者検知領域A3の範囲を、検知可能領域A1の範囲と同じ範囲に設定しているが、この例に限定されず、他者検知領域A3の範囲を、検知可能領域A1の範囲とは異なる範囲に設定してもよい。
本発明の一実施形態に係る画像形成装置2では、さらに、印刷ジョブ又はユーザーIDに含まれる様々な要因(情報)に応じて、算出する他者使用可能性Pの値又はその閾値Thを変動させる処理も行われる。
例えば、画像形成装置2が、ユーザー検知部19が検知した他ユーザーU2のユーザーIDの情報に基づいて、他ユーザーU2が、出力許可ユーザーU1と同じ会社内の他の営業所に所属するユーザーであると判定したものとする。このような他ユーザーU2が、画像形成装置2に近づく目的は、画像形成装置2を使用することである可能性が高いと想定される。したがって、本実施形態に係る画像形成装置2は、画像形成装置2の周囲に存在する他ユーザーU2が、他の営業所に所属するユーザーである場合には、算出する他者使用可能性Pの値を、通常の値(例えば図5に示す値:他ユーザーU2が出力許可ユーザーU1と同じ営業所内のユーザーである場合の値)よりも高い値に変更する。
図6に、他者使用可能性Pの値を、図5に示した値よりも5%高くした例を示す。また、図6に示す例では、他者使用可能性Pの変更後も、閾値Thは固定値(同じ値)とする。画像形成装置2がこのような制御を行うことにより、他者使用可能性Pが閾値Th以下となるタイミングが、他者使用可能性P変更前の出力開始タイミングである時間t5よりも後の、時間t6となる。すなわち、画像形成装置2の周囲に存在する他ユーザーU2が、同営業所内のユーザーである場合と比較して、画像形成装置2による出力処理が開始されるまでの時間が長くなる。
また、例えば、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが高い場合には、そのセキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物のセキュリティ性も高める必要がある。一方、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが低い場合には、そのセキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物のセキュリティ性はそれほど高くなくても問題がない。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置2は、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが高い場合には、閾値Thを、通常の設定値(例えば25%)よりも低い値に設定する。一方、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが低い場合には、画像形成装置2は、閾値Thを、通常の設定値よりも高い値に設定する。図7に、閾値Thの変更例を示す。図7に示す例では、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが高い場合には、閾値Thを、通常の設定値である25%よりも低い10%の閾値Th1に変更する。セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが低い場合には、閾値Thを、通常の設定値である25%よりも高い30%の閾値Th2に変更する。
画像形成装置2が閾値Thを閾値Th1に変更した場合には、他者使用可能性Pが閾値Th以下となるタイミングが、時間t5よりも後の時間t7となる。すなわち、セキュリティジョブJ1に設定されたジョブのセキュリティレベルが高レベルである場合、セキュリティレベルが中レベルである場合(通常の閾値Thを適用した場合)と比較して、画像形成装置2による出力処理が開始されるまでの時間が長くなる。これにより、他ユーザーU2によってセキュリティジョブJ1に基づく出力物が見られてしまう可能性をさらに低くすることが可能となり、出力物のセキュリティ性を高めることができる。
画像形成装置2が閾値Thを閾値Th2に変更した場合には、他者使用可能性Pが閾値Th以下となるタイミングが、時間t5よりも前の時間t4となる。すなわち、セキュリティジョブJ1に設定されたジョブのセキュリティレベルが低レベルである場合、セキュリティレベルが中レベルである場合(通常の閾値Thを適用した場合)と比較して、画像形成装置2による出力処理が開始されるまでの時間が短くなる。これにより、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物を出力許可ユーザーU1が取得するまでの待ち時間を、さらに短縮することが可能となる。
また、画像形成装置2の周辺に他ユーザーU2が存在する場合であっても、出力許可ユーザーU1と画像形成装置2との間の距離が短くなれば、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物を他ユーザーU2に見られる危険性も低くなる。したがって、本実施形態に係る画像形成装置2は、他者使用可能性Pの閾値Thを、出力許可ユーザーU1と画像形成装置2との間の距離であるユーザー距離Lに応じて変更する機能も備える。
図8に、画像形成装置2が、ユーザー距離Lが短くなるにつれて徐々に閾値Thを増加させる制御例(図8中の破線参照)を示す。画像形成装置2は、例えば、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが3mの時には閾値Thを30%に変更し、ユーザー距離Lが1mの時には閾値Thを40%に変更する制御を行う。画像形成装置2がこのような制御を行うことにより、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが3mの時には、他者使用可能性Pが30%以下となった時点で画像形成装置2の出力処理が開始される。また、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが1mの時には、他者使用可能性Pが40%以下となった時点で画像形成装置2の出力処理が開始される。
すなわち、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが短ければ(画像形成装置2との距離が近ければ)、他者使用可能性Pが高くても画像形成装置2の出力処理が開始される。図8に示す例では、時間t4の直前で、他者使用可能性P及び閾値Thが同じ値となっており、このタイミングで画像形成装置2の出力処理が開始される。すなわち、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが短くなった場合には、閾値Thを変動させない制御例(図5の制御例)と比較して、画像形成装置2による画像形成処理が早めに開始される。これにより、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物のセキュリティ性を確保しつつ、該出力物を出力許可ユーザーU1が取得するまでの待ち時間を少なくすることができる。
本実施形態に係る画像形成装置2は、上述した各要因以外の要因によっても他者使用可能性Pの値又は閾値Thを変動させる機能を有するが、該機能については後述の図16を参照して詳述する。
<画像形成装置のハードウェア構成>
次に、本実施形態に係る画像形成装置2の具体的な構成例について、図9を参照して説明する。図9は、画像形成装置2のハードウェア構成図である。
画像形成装置2は、図9に示すように、画像形成装置本体3、後処理装置FNを備える。画像形成装置本体3では、印刷方式として、静電気を用いて画像の形成を行う電子写真方式を採用しており、例えばY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の4色のトナー画像を重ね合わせたカラー画像を形成する処理が可能である。この画像形成装置本体3は、自動原稿給送装置(ADF)5と、操作パネル6と、給紙部7と、画像形成部10と、中間転写ベルト11(像担持体)と、2次転写部12と、定着部13とを有する。
自動原稿給送装置5は、原稿の読み取りに際して、原稿を自動給送する。そして、自動原稿給送装置5に設けられたスキャナー45(後述の図10参照)は、画像形成装置本体3の上部プラテンガラスに置かれた原稿や、自動原稿給送装置5で自動搬送される原稿の画像を読み取ることができる。
操作パネル6は、例えば画像形成処理等のジョブの開始を指示する機能である操作部41(後述の図10参照)を備えている。操作パネル6には、LCD(Liquid Crystal Display)が設置されている。LCDはタッチパネルで構成されており、LCDでは、出力許可ユーザーU1又は他ユーザーU2による操作、及び各種情報の表示が可能である。LCDは、後述の図10に示す操作部41と表示部42を兼用している。
給紙部7は、用紙のサイズや種類に応じて複数の用紙収納部を備える。給紙部7では、画像形成装置本体3からの指示に基づいて該当する用紙収納部が選択されると、用紙収納部から用紙が取り出され、搬送路Cに用紙が送られる。
画像形成部10は、Y,M,C,Kの各色のトナー画像を形成するために、4つの画像形成ユニット8Y,8M,8C,8Kを備えている。画像形成部10は、画像形成部10の画像形成ユニット8Y,8M,8C,8Kの動作を制御して、Y,M,C,Kのトナー画像を形成する。また、画像形成装置本体3は、搬送路Cに用紙を搬送するための複数のローラ(搬送ローラ)を備えている。これらのローラは、通常、ローラ対により構成される。
画像形成装置本体3は、画像形成モードにおいて、画像形成ユニット8Y,8M,8C,8Kが有する感光体を帯電させると共に、電荷を消去して露光し、感光体に静電潜像を形成する。そして、Y,M,C,Kの感光体の静電潜像に対し現像部を用いてトナーを付着させ、各色のトナー画像を形成する。次に、Y,M,C,Kの感光体に形成されたトナー画像を、破線矢印によって示される方向へ回転する中間転写ベルト11の表面に順次、1次転写する。
次に、2次転写部12(2次転写ローラ)により、中間転写ベルト11上に1次転写された各色のトナー画像を、給紙部7から供給されてローラにより搬送される用紙に2次転写する。中間転写ベルト11上の各色のトナー画像が用紙に2次転写されることにより、カラー画像が形成される。画像形成装置本体3は、カラーのトナー画像が形成された用紙を、定着部13へ搬送する。
定着部13は、カラーのトナー画像が形成された用紙に定着処理を行う装置である。定着部13は、搬送された用紙を加圧及び加熱して、転写されたトナー画像を用紙に定着させる。定着部13は、例えば、定着部材である定着上ローラ及び定着下ローラ(不図示)で構成されている。定着上ローラ及び定着下ローラは、互いに圧接した状態で配置されており、定着上ローラと定着下ローラとの圧接部として定着ニップ部が形成される。
定着上ローラの内部には、不図示の加熱部が設けられている。この加熱部からの輻射熱により定着上ローラの外周部にあるローラ部が温められる。用紙は、2次転写部12によりトナー画像が転写された面(定着対象面)が定着上ローラと向き合うように定着ニップ部に搬送される。定着ニップ部を通過する用紙には、定着上ローラと定着下ローラとによる加圧と、定着上ローラのローラ部の熱による加熱が行われる。定着部13により定着処理が行われた用紙は、後処理装置FNに排出される。
後処理装置FNは、例えば、紙折り装置FN1、断裁装置FN2、ステープル装置FN3及び製本装置FN4を備える。
紙折り装置FN1は、画像形成装置本体3から搬送される用紙に対し、必要に応じて紙折り処理を行い、次の断裁装置FN2に用紙を排出する。具体的には、紙折り装置FN1は、印刷ジョブに紙折り処理の実行が設定されている場合、用紙に対して紙折り処理を行った後、断裁装置FN2に排出する。一方、紙折り装置FN1は、印刷ジョブに紙折り処理の実行が設定されていない場合、用紙に対して紙折り処理を行わず、そのまま断裁装置FN2に用紙を排出する。
断裁装置FN2は、紙折り装置FN1から搬送される用紙に対し、必要に応じて断裁処理を行い、次のステープル装置FN3に用紙を排出する。具体的には、断裁装置FN2は、印刷ジョブに断裁処理の実行が設定されている場合、用紙に対して断裁処理を行った後、ステープル装置FN3に用紙を排出する。一方、断裁装置FN2は、印刷ジョブに断裁処理の実行が設定されていない場合、用紙に対して断裁処理を行わず、そのままステープル装置FN3に用紙を排出する。
ステープル装置FN3は、断裁装置FN2から搬送される用紙に対し、必要に応じてステープル処理を行い、次の製本装置FN4に用紙を排出する。具体的には、ステープル装置FN3は、印刷ジョブにステープル処理の実行が設定されている場合、用紙に対してステープル処理を行った後、製本装置FN4に用紙を排出する。一方、ステープル装置FN3は、印刷ジョブにステープル処理の実行が設定されていない場合、用紙に対してステープル処理を行わず、そのまま製本装置FN4に用紙を排出する。
製本装置FN4は、ステープル装置FN3から搬送される用紙に対し、必要に応じて製本処理を行い、排紙トレイ14に用紙を排紙する。具体的には、製本装置FN4は、印刷ジョブに製本処理の実行が設定されている場合、用紙に対して製本処理を行った後、排紙トレイ14に用紙を排紙する。一方、製本装置FN4は、印刷ジョブに製本処理の実行が設定されていない場合、用紙に対して製本処理を行わず、そのまま排紙トレイ14に用紙を排紙する。なお、図9に示す例では、カラー画像を形成する画像形成装置2を例示したが、モノクロ画像を形成する画像形成装置を用いてもよい。
<画像形成装置本体の概略構成例>
次に、図10を参照して画像形成装置本体3の概略構成例を説明する。図10は、画像形成装置本体3の概略構成を示すブロック図である。
画像形成装置本体3は、コピー機能、スキャン機能、印刷機能等を備えた、いわゆる複合機(MFP:Multi Function Printer)である。コピー機能とは、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を用紙に印刷する機能である。スキャン機能とは、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり、ネットワークNを通じて画像データをPC端末P1,P2に送信したりする機能である。印刷機能とは、ネットワークNを通じてPC端末P1,P2等の外部装置から受信した印刷ジョブに基づいて用紙に文書や画像を印刷して出力する機能である。
画像形成装置本体3は、画像形成装置本体3の動作を統括的に制御する制御部15を備える。制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等よりなり、画像形成装置本体3を構成する各部を制御し、処理を実行する。制御部15には、バスを介してROM(Read Only Memory)30、RAM(Random Access Memory)31、不揮発メモリ32、ハードディスク装置33、ネットワークコントローラー34、無線通信部35、操作パネル6、印刷インターフェース43、読み取りインターフェース44等が接続されている。印刷インターフェース43には、画像形成部10が接続される。読み取りインターフェース44には、スキャナー45が接続される。
制御部15は、OS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラム等のプログラムを実行する。制御部15によって実行される各部の処理は後述する。
ROM30には各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従って制御部15が処理を実行することで画像形成装置本体3の各機能が実現される。また、ROM30には、後述の図11に示すジョブ枚数/距離変換テーブルTa1と、図12に示すジョブ種/距離変換テーブルTa2と、図14に示す特性図に対応する電波強度距離変換テーブルTa3とが格納される。また、ROM30には、図15に示す他者使用可能性テーブルTa4と、図16に示す閾値変動要因テーブルTa5と、図17に示す閾値変更テーブルTa6とが格納される。さらに、ROM30には、出力許可ユーザーU1及び他ユーザーU2が画像形成装置2にログインするためのユーザーID、パスワード等が格納される。
RAM31は、制御部15がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリとして使用される。また、RAM31には、制御部15内の後述のジョブ取得部16が取得した印刷ジョブが一時的に格納される。不揮発メモリ32には各種の設定が保存される。ハードディスク装置33には、ネットワークコントローラー34が受信した印刷ジョブ等が保存される。
ネットワークコントローラー34は、後述のジョブ取得部16の制御により、ネットワークNを通じて、PC端末P1,P2から印刷ジョブを受信する。無線通信部35は、上述したようにBluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)等を用いた近距離無線通信により、端末装置4との間で相互に通信を行う。さらに、無線通信部35は、端末装置4がユーザーIDを送信する電波の電波強度(受信信号強度)を測定する。無線通信部35が測定した端末装置4の電波強度の情報は、制御部15内の後述のユーザー検知部19に出力される。
操作パネル6は、操作部41及び表示部42を備える。操作部41は、スタートボタン等の各種操作スイッチ、表示部42の表示面上に設けられたタッチパネル等で構成される。すなわち、操作部41は、タッチパネルの部分において表示部42と一体的に構成されている。タッチパネルは、タッチペンや指等で押下された座標位置を検出する。また、タッチパネルは、フリック操作、ドラッグ操作、スクロールバーに対する操作等を検出する。表示部42は、液晶ディスプレイ(LCD)等で構成され、各種の操作画面、設定画面等を表示する。なお、操作部41をマウスやタブレット等で構成し、表示部42とは別体で構成することも可能である。
印刷インターフェース43を介して制御部15に接続された画像形成部10は、画像形成制御部25の制御により、後述のジョブ取得部16が取得した印刷ジョブに基づいて画像を用紙に形成する画像形成処理を行う。
読み取りインターフェース44を介して制御部15に接続されたスキャナー45は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する。スキャナー45は、例えば、ラインイメージセンサー、移動ユニット、光学経路、変換部等を備えて構成される。ラインイメージセンサーは、原稿に光を照射する光源を有し、原稿からの反射光を受けて原稿の幅方向の1ライン分の情報を読み取る。移動ユニットは、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる。光学経路は、原稿からの反射光をラインイメージセンサーに導いて結像させるレンズやミラー等からなる。変換部は、ラインイメージセンサーの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する。
続いて、制御部15が備える各部の構成例について説明する。制御部15は、ジョブ取得部16、ジョブ種判別部17、出力処理開始距離算出部18、ユーザー検知部19、移動軌跡算出部20、ユーザー判定部21及びログイン処理部22を備える。また、制御部15は、他者使用可能性算出部23、他者使用可能性/閾値変動部24、画像形成制御部25及び後処理制御部26を備える。
ジョブ取得部16は、ネットワークコントローラー34を制御して、PC端末P1,P2から送信された印刷ジョブを、ネットワークNを通じて取得する。
ジョブ種判別部17は、ジョブ取得部16が取得した印刷ジョブに設定されたジョブ種を判別する。ジョブ種には、例えば、画像が形成された用紙に行われる後処理の種類(紙折り、断裁、ステープル、製本)が含まれる。
出力処理開始距離算出部18は、ジョブ種判別部17により判別されたジョブ種に基づいて出力処理開始距離D2を算出する。出力処理開始距離算出部18が出力処理開始距離D2を算出する際には、ROM30に格納されているジョブ枚数/距離変換テーブルTa1及び/又はジョブ種/距離変換テーブルTa2が参照される。出力処理開始距離算出部18は、算出した出力処理開始距離D2をRAM31に保存する。
図11に、ジョブ枚数/距離変換テーブルTa1の構成図を示す。図11に示すように、ジョブ枚数/距離変換テーブルTa1は、ジョブ枚数のフィールド、及び、出力処理開始距離D2のフィールドを有する。ジョブ枚数/距離変換テーブルTa1は、印刷ジョブに設定されたジョブ枚数と、出力処理開始距離D2とを対応付けて管理する。ジョブ枚数は、画像形成部10により画像が形成される用紙の枚数である。なお、用紙の片面だけに画像が形成される場合にはジョブ枚数は1枚となるが、用紙の両面に画像が形成される場合にはジョブ枚数は2枚となる。
出力処理開始距離算出部18は、印刷ジョブに含まれるジョブ枚数に基づいてジョブ枚数/距離変換テーブルTa1から出力処理開始距離D2を決定する。例えば、出力処理開始距離算出部18は、印刷ジョブのジョブ枚数が「1枚」であった場合、出力処理開始距離D2を「0.5m」に決定する。また、出力処理開始距離算出部18は、印刷ジョブのジョブ枚数が「2枚」であった場合、出力処理開始距離D2を「1m」に決定する。ジョブ枚数が多いほど出力処理開始距離D2を長くするのは、ジョブ枚数が多いほど画像形成処理の開始から終了までの時間が長くなるからである。
図12に、ジョブ種/距離変換テーブルTa2の構成図を示す。図12に示すジョブ種/距離変換テーブルTa2は、印刷ジョブに設定されたジョブ種と、出力処理開始距離D2との関係を対応付けて管理する。ジョブ種/距離変換テーブルTa2は、後処理装置FNの後処理を識別可能に管理するための番号である管理番号のフィールド、後処理装置FNで実行される後処理の種類を示すジョブ種のフィールド、及び、出力処理開始距離のフィールドを有する。ジョブ種/距離変換テーブルTa2の出力処理開始距離には、出力処理開始距離算出部18がセキュリティ性を損なわないために用いるべき最短の出力処理開始距離が設定される。
図12に示す例では、ジョブ種/距離変換テーブルTa2の一番上のレコードには、管理番号「FN1」に該当する紙折り装置FN1が実行するジョブ種は「紙折り」処理であり、出力処理開始距離D2が「2m」である旨が示されている。また、上から二番目のレコードには、管理番号「FN2」に該当する断裁装置FN2が実行するジョブ種は「断裁」処理であり、出力処理開始距離D2が「1m」である旨が示されている。また、上から三番目のレコードには、管理番号「FN3」に該当するステープル装置FN3が実行するジョブ種は「ステープル」処理であり、出力処理開始距離D2が「0.5m」である旨が示されている。さらに、上から四番目のレコードには、管理番号「FN4」に該当する製本装置FN4が実行するジョブ種は「製本」処理であり、出力処理開始距離D2が「3m」である旨が示されている。
また、出力処理開始距離算出部18は、セキュリティジョブJ1に複数のジョブ種が含まれている場合は、ジョブ種/距離変換テーブルTa2から取得した各ジョブ種の出力処理開始距離の合算値を算出し、該合算値を出力処理開始距離D2とする。
図13に、ジョブ種の組合せ例を示す。例えば、印刷ジョブに設定されたジョブ種が「断裁」及び「ステープル」である場合には、2つのジョブ種に設定されたそれぞれの出力処理開始距離の合算値は「1.5m」となる。また、印刷ジョブに設定されたジョブ種が、例えば「紙折り」、「断裁」、「ステープル」及び「製本」である場合には、これらのジョブ種に設定された出力処理開始距離の合算値は「6.5m」となる。
なお、印刷ジョブに後処理(ジョブ種)が設定されていない場合には、出力処理開始距離算出部18は、一枚目の用紙が排紙トレイ14に排紙されるまでの時間(画像形成処理の開始から出力物が排紙トレイ14に排紙されるまでの時間)の情報に基づいて、出力処理開始距離D2を決定する。なお、出力処理開始距離算出部18は、ジョブ枚数/距離変換テーブルTa1で決定される出力処理開始距離D2と、ジョブ種/距離変換テーブルTa2で決定される出力処理開始距離D2とを合算した合算距離を、出力処理開始距離D2としてもよい。
ユーザー検知部19は、無線通信部35が端末装置4との間で行う近距離無線通信を介して、検知可能領域A1内に存在するユーザーが所持する端末装置4を検知する。ユーザー検知部19は、端末装置4を検知すると、無線通信部35によって測定された端末装置4が送信する電波の受信信号強度に基づいて、ROM30に格納されている電波強度距離変換テーブルTa3(不図示)を参照してユーザー距離Lを算出する。
図14に、ユーザー距離Lと電波強度(受信信号強度)との関係を示す特性図を示す。図14の縦軸は電波強度(dBm)を示し、横軸はユーザー距離L(m)を示す。図14に示すように、ユーザー距離Lが長いほど無線通信部35が端末装置4から受信する電波の電波強度は低くなり、ユーザー距離Lが短くなるにつれて電波強度が高くなる。図14に示す特性図に示されるユーザー距離Lと電波強度との関係は、電波強度距離変換テーブルTa3で規定され、ROM30に格納される。
ユーザー検知部19は、無線通信部35から受信電波の電波強度の情報を取得すると、ROM30に格納されている電波強度距離変換テーブルTa3を参照して、電波強度をユーザー距離Lに変換する。これによりユーザー検知部19は、画像形成装置2(自装置)からユーザー(出力許可ユーザーU1又は他ユーザーU2)までのユーザー距離Lを求めることができる。
また、ユーザー検知部19は、他者検知領域A3内に存在する他ユーザーU2を検知し、検知した他ユーザーU2のユーザー距離Lを算出する他者検知部としても機能する。他者検知領域A3内に存在する他ユーザーU2の検知は、上述したユーザー距離Lの算出と同様の手法で行うことができる。なお、端末装置4を所持していない他ユーザーU2の検知は、例えば、画像形成装置2に取り付けられた、又は、画像形成装置2の周辺に設けられたカメラが撮像した画像に含まれる情報を解析することにより行うことができる。
なお、ユーザー検知部19がユーザー距離Lを算出する手法は、電波の受信信号強度を得て該受信信号強度をユーザー距離Lに変換する手法に限定されない。例えば、ユーザー検知部19は、画像形成装置2に対するユーザーの方位や緯度経度等の絶対位置をGPS(Global Positioning System)等を用いて検出して、該検出した絶対位置をユーザー距離Lに設定してもよい。
移動軌跡算出部20は、他者検知領域A3内で検知された他ユーザーU2の位置を定期的にサンプリングし、該サンプリングによって得られた複数の位置の情報を用いて、他ユーザーU2の移動軌跡を算出する。他ユーザーU2の移動軌跡の算出は、例えば、ユーザー検知部19が検知した他ユーザーU2の画像形成装置2に対する方位の情報、及び、ユーザー検知部19が算出した他ユーザーU2のユーザー距離Lに基づいて行われる。
移動軌跡算出部20による移動軌跡の算出処理は、ユーザー検知部19による出力許可ユーザーU1の検知の有無の情報にかかわらず、他者検知領域A3で検知された全ての他ユーザーU2を対象として、他者検知領域A3内で他ユーザーU2が検出されている間、継続して行われる。そして、移動軌跡算出部20は、算出した各他ユーザーU2の移動の軌跡の情報をRAM31に記憶する。
ユーザー判定部21は、ユーザー検知部19によって検知可能領域A1内で検知されたユーザーが、セキュリティジョブJ1を発行した出力許可ユーザーU1であるか否かを判定する。具体的には、ユーザー判定部21は、無線通信部35が端末装置4から受信したユーザーIDを取得し、該取得したユーザーIDに基づいて、検知したユーザーが出力許可ユーザーU1であるか否かを判定する。
ログイン処理部22(認証部の一例)は、ユーザー判定部21によって判定された出力許可ユーザーU1をログイン認証する。このとき、ログイン処理部22は、検知可能領域A1内に進入した出力許可ユーザーU1のユーザーIDに基づいて、出力許可ユーザーU1に対して、遠隔ログインによるログイン認証を行う。
また、ログイン処理部22は、操作パネル6に対してユーザーID及びパスワードが入力された場合には、該ユーザーID及びパスワードと、ROM30に格納されているユーザーID及びパスワードを照合することにより、ユーザーのログイン認証を行う。また、ログイン処理部22は、ユーザー情報が登録されているRFID(Radio Frequency IDentification)を含むICカード等からユーザーIDを受信した場合には、該ユーザーIDを用いてログイン認証を行う。また、他ユーザーU2が所持する端末装置4から無線通信部35に送信されたユーザーIDに基づいてユーザー判定部21が検知可能領域A1内のユーザーを他ユーザーU2であると判定した場合には、ログイン処理部22は、この他ユーザーU2のログイン認証を行ってもよい。
他者使用可能性算出部23は、移動軌跡算出部20が算出した他ユーザーU2の移動軌跡の情報に基づいて、他者使用可能性Pを算出する。他者使用可能性Pの算出は、他者使用可能性算出部23が、他者使用可能性テーブルTa4を参照して行う。図15に、他者使用可能性テーブルTa4の構成例を示す。図15Aに示すテーブルは、他ユーザーU2の移動方向(他者移動方向)と、他者使用可能性Pとを対応づけた他者使用可能性テーブルTa4_1である。図15Bに示すテーブルは、他者移動方向とユーザー距離Lとの組み合わせと、他者使用可能性Pとを対応づけた他者使用可能性テーブルTa4_2である。
図15Aに示す他者使用可能性テーブルTa4_1では、他者移動方向「接近方向」には、他者使用可能性「95%」が対応づけられており、他者移動方向「横断方向」には、他者使用可能性は「70%」が対応づけられている。また、他者移動方向「移動無し」には、他者使用可能性は「50%」が対応づけられており、他者移動方向「離れる方向」には、他者使用可能性は「30%」が対応づけられている。さらに、他者移動方向「さらに離れる方向」に対は、他者使用可能性は「10%」が対応づけられている。
他者使用可能性算出部23は、他者使用可能性テーブルTa4_1を使用する場合には、ユーザー検知部19で検知された他ユーザーU2の移動方向が例えば「接近方向」であったときには、他者使用可能性Pを95%と算出する。また、他者使用可能性算出部23は、他ユーザーU2の移動方向が例えば「横断方向」であったときには、他者使用可能性Pを70%と算出し、他ユーザーU2の移動方向が例えば「移動無し」であったときには、他者使用可能性Pを50%と算出する。さらに、他者使用可能性算出部23は、他ユーザーU2の移動方向が例えば「離れる方向」であったときには、他者使用可能性Pを30%と算出し、他ユーザーU2の移動方向が例えば「さらに離れる方向」であったときには、他者使用可能性Pを10%と算出する。
他ユーザーU2が、例えば図4に示す移動軌跡で移動した場合には、位置U2_t1及び位置U2_t2に他ユーザーU2が位置していた時点では、他ユーザーU2の移動方向は、ユーザー検知部19によって「接近方向」と判定される。したがって、これらの時点では、他者使用可能性算出部23は、他者使用可能性Pを95%と算出する。このとき、図5に示す例のように他者使用可能性Pの閾値Thが25%に設定されているものとすると、他者使用可能性Pは閾値Thより大きいため、画像形成装置2による出力処理は開始されない。
他ユーザーU2が位置U2_t3に位置していた時点では、他ユーザーU2の移動方向は、ユーザー検知部19によって「横断方向」と判定される。したがって、他者使用可能性算出部23は、他者使用可能性Pを70%と算出する。しかしながら、この時点においても、他者使用可能性Pは閾値Th(25%)より大きいため、画像形成装置2による出力処理は開始されない。
他ユーザーU2が位置U2_t4に位置していた時点では、他ユーザーU2の移動方向は、ユーザー検知部19によって「離れる方向」と判定される。したがって、この時点では、他者使用可能性算出部23は、他者使用可能性Pを30%と算出する。しかしながら、この時点においても、他者使用可能性Pは閾値Th(25%)より大きいため、画像形成装置2による出力処理は開始されない。
他ユーザーU2が位置U2_t5に位置していた時点では、他ユーザーU2の移動方向は、ユーザー検知部19によって「さらに離れる方向」と判定される。したがって、この時点では、他者使用可能性算出部23は、他者使用可能性Pを10%と算出する。他者使用可能性Pは、閾値Th(25%)未満となる。それゆえ、閾値Thを25%として他者使用可能性テーブルTa4_1を使用した場合、他者使用可能性Pが閾値Th未満となった時間t5の時点で、画像形成装置2での出力処理が開始される。
図15Bに示す他者使用可能性テーブルTa4_2では、他者移動方向とユーザー距離との組み合わせと、他者使用可能性Pとが対応づけられており、他ユーザーU2のユーザー距離Lが短くなるにつれて、他者使用可能性Pの値として大きな値が割り当てられている。例えば、他者移動方向「接近方向」においては、ユーザー距離Lが「5m」である場合には他者使用可能性P「95%」が割り当てられ、ユーザー距離Lが「3m」である場合には他者使用可能性P「100%」が割り当てられ、ユーザー距離Lが「1m」である場合には他者使用可能性P「100%」が割り当てられている。また、他者移動方向の「横断方向」においては、ユーザー距離Lが「5m」である場合には他者使用可能性P「70%」が割り当てられ、ユーザー距離Lが「3m」である場合には他者使用可能性P「80%」が割り当てられ、ユーザー距離Lが「1m」である場合には他者使用可能性P「100%」が割り当てられている。すなわち、他ユーザーU2の移動方向が同じである場合にも、他ユーザーU2のユーザー距離Lが小さい場合、すなわち、他ユーザーU2と画像形成装置2との間の距離が近い場合には、他者使用可能性Pには高い値が算出される。
他者使用可能性/閾値変動部24は、他者使用可能性P又はその閾値Thを変動させる各種要因及びその要素に基づいて、他者使用可能性P又は閾値Thを変動させる処理を行う。他者使用可能性/閾値変動部24による閾値Thの変動処理は、例えば、閾値Thを変動させる各種要因及びその要素と、閾値Thを変更するための閾値変動係数とを対応づけた閾値変動要因テーブルTa5や、ユーザー距離Lと他者使用可能性Pの閾値Thとを対応付けた閾値変更テーブルTa6等を参照して行われる。また、他者使用可能性/閾値変動部24による他者使用可能性Pの変動処理は、他ユーザーU2の移動方向と、他者使用可能性Pを変動させるための他者使用可能性変動係数とを対応付けた、不図示の他者使用可能性変更テーブルを参照して行われる。
以下、図16及び17を参照して、閾値変動要因テーブルTa5及び閾値変更テーブルTa6の構成例について説明する。図16は、閾値変動要因テーブルTa5の構成例を示す図であり、図17は、閾値変更テーブルTa6の構成例を示す図である。
図16に示す閾値変動要因テーブルTa5は、要因フィールド、要素フィールド及び閾値変動係数フィールドを有する。要因フィールドには、閾値を変動させるべき要因の情報が格納され、要素フィールドには、上述した要因を構成する各要素の情報が格納される。閾値を変動させるべき要因及び要素の情報は、セキュリティジョブJ1や、セキュリティジョブJ1内に記載された出力許可ユーザーU1のオーナーID、ユーザー検知部19が検知した他ユーザーU2のユーザーIDの情報等に含まれる。
閾値変動要因テーブルTa5の要因フィールドには、具体的には、「セキュリティレベル」、「時間帯」、「スケジュール」、「役職」、「内容」及び「信頼関係」の各項目が格納される。「セキュリティレベル」は、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルを指し、「時間帯」は、セキュリティジョブJ1が発行された時間帯を指す。また、「スケジュール」は、他ユーザーU2のスケジュールを指し、「役職」は、出力許可ユーザーU1の役職を指す。さらに、「内容」は、セキュリティジョブJ1により出力された出力物の内容を指し、「信頼関係」は、出力許可ユーザーU1と他ユーザーU2との信頼関係を指す。
要素フィールドには、上述した要因を構成する各要素の情報が格納される。要因が例えば「セキュリティレベル」である場合、セキュリティジョブJ1のセキュリティレベルが高いか、低いかを示すパラメーターが要素として格納される。閾値変動係数フィールドには、要素毎に紐付けられた閾値変動係数が格納される。
例えば、要因「セキュリティレベル」の要素「高」に対しては、閾値変動係数として「−20%」が設定されており、要因「セキュリティレベル」の要素「低」に対しては閾値変動係数として「0%」が設定されている。この設定によれば、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが高い場合には、他者使用可能性/閾値変動部24は、他者使用可能性Pの閾値Thを20%下げる処理を行う。一方、セキュリティジョブJ1に設定されたセキュリティレベルが低い場合には、他者使用可能性/閾値変動部24は、閾値Thの値を変更しない。
例えば、要因「時間帯」の要素「朝」に対しては、閾値変動係数として「−20%」が設定されている。朝の時間帯には、出力許可ユーザーU1が仕事の始めに画像形成装置2でセキュリティジョブJ1に基づく印刷を行う可能性が高くなる。したがって、本実施形態に係る画像形成装置2は、セキュリティジョブJ1が発行された時間帯が朝である場合には、他者使用可能性Pの閾値Thを20%下げる処理を行う。この場合、変更前の閾値Thの使用時に比べて、他者使用可能性Pがより低くなった時点でないと、セキュリティジョブJ1に基づく印刷物の出力処理が開始されない。
また、要因「スケジュール」の要素「会議前」に対しては、閾値変動係数として「−30%」が設定されており、要素「会議後」に対しては、閾値変動係数として「0%」が設定されている。他ユーザーU2のスケジュールに関する情報は、他ユーザーU2のユーザーIDで管理されている他ユーザーU2のスケジュール情報を他者使用可能性/閾値変動部24が参照することにより取得される。それゆえ、他者使用可能性/閾値変動部24は、取得した他ユーザーU2のスケジュールの情報により、現時刻が、他ユーザーU2が参加する会議の開催前の時刻だと判断すれば、他者使用可能性Pの閾値Thを30%下げる処理を行う。
また、要因「信頼関係」の要素「社内の人(同部署)」に対しては、閾値変動係数として「10%」が設定されており、要素「社内の人(他部署)」に対しては、閾値変動係数として「0%」が設定されている。要素「社内の人(他営業所)」に対しては、閾値変動係数として「−20%」が設定されており、要素「社外の人」に対しては、閾値変動係数として「20%」が設定されている。
例えば、他ユーザーU2が他営業所に所属する人である場合には、出力許可ユーザーU1が居る営業所に出張で来ていることが想定される。このような場合は、他ユーザーU2が画像形成装置2に近づく理由は、印刷物の取得である可能性が高い。このような場合、他者使用可能性/閾値変動部24が、変動閾値変動係数「−20%」を適用して他者使用可能性Pの閾値Thを下げることにより、他者使用可能性Pが閾値Th以下となるまでの時間が長くなる。すなわち、画像形成部10が出力処理を開始するタイミングが遅くなるため、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物を他ユーザーU2の目から守れる時間も長くすることができる。
一方、他ユーザーU2が出力許可ユーザーU1と同部署に所属する人である場合には、出力許可ユーザーU1が発行したセキュリティジョブJ1に基づく出力物のセキュリティ性は、それほど高くなくてもよいものと想定される。このような場合、他者使用可能性/閾値変動部24が、変動閾値変動係数「20%」を適用して他者使用可能性Pの閾値Thを上げることになり、この結果、他者使用可能性Pが閾値Th以下となるまでの時間が短くなる。すなわち、画像形成部10が出力処理を開始するタイミングが早くなるため、出力許可ユーザーU1が出力物を取得するまでの時間を短くすることができる。
なお、1つのセキュリティジョブJ1中に、他者使用可能性Pの閾値Thを変動させる複数の要因が含まれる場合がある。例えば、出力許可ユーザーU1の役職が一般職であるが、人事資料を取り扱う業務に就いている場合、閾値変動係数としては「0%」及び「−30%」が抽出される。この場合、他者使用可能性/閾値変動部24は、最も低い値の閾値変動係数を閾値Thの変動に用いる。なお、他者使用可能性/閾値変動部24は、複数の閾値変動係数を加算した値を用いて、閾値を変動させてもよい。
図17に示す閾値変更テーブルTa6は、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが格納されるユーザー距離フィールドと、他者使用可能性Pの閾値Thが格納される閾値フィールドとを有する。閾値変更テーブルTa6において、出力許可ユーザーU1のユーザー距離L「5m」には閾値Th「0%」が対応付けられ、出力許可ユーザーU1のユーザー距離L「4m」には閾値Th「10%」が対応付けられる。そして、出力許可ユーザーU1のユーザー距離L「0.5m」には閾値Th「80%」が対応付けられる。このように、閾値変更テーブルTa6にでは、閾値Thは、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが短くなるほど大きな値に設定される。
このような構成の閾値変更テーブルTa6を用いて、他者使用可能性/閾値変動部24が他者使用可能性Pの閾値Thを変動させた場合、他ユーザーU2のユーザー距離Lが短いときには、他者使用可能性Pが高くても即時にセキュリティジョブJ1に基づく出力処理が開始される。
画像形成制御部25は、ジョブ取得部16が取得した印刷ジョブに基づき画像形成部10に画像形成を行わせる。具体的には、画像形成制御部25は、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lと、出力処理開始距離D2とを比較することにより、出力許可ユーザーU1が、出力処理開始距離D2で規定される出力処理開始領域A2内に存在するか否か判定する。出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に存在すると判定した場合には、画像形成制御部25は、他者使用可能性算出部23で算出された他者使用可能性Pと、その閾値Thとを比較する。そして、画像形成制御部25は、他者使用可能性Pが閾値Th以下であると判定した場合に、画像形成部10に出力処理(画像形成処理)を開始させる。
また、画像形成制御部25は、他者使用可能性Pが閾値Thより大きい場合であっても、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが予め設定された所定の距離以下となったことがユーザー検知部19で検知された場合には、画像形成部10に出力処理を開始させる。ここでいう予め定められた所定の距離には、出力許可ユーザーU1の手が排紙トレイ14に届くような距離(例えば、0.5mや1m等の短い距離)が設定される。すなわち、画像形成制御部25は、出力許可ユーザーU1が排紙トレイ14に排紙された出力物を取得可能な位置まで接近したことを検知した場合は、他者使用可能性Pが閾値Th以下となっていなくても、即時に画像形成部10に出力処理を開始させる。
なお、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが予め設定された所定の距離以下となったことがユーザー検知部19で検知された場合、画像形成制御部25は、他者使用可能性/閾値変動部24に閾値Thを「0」に変更させる制御を行ってもよい。画像形成制御部25がこのような制御を行った場合にも、画像形成部10による出力物の出力処理が即時に開始される。
また、画像形成制御部25は、操作パネル6の操作部41に対して出力許可ユーザーU1によってログイン用のIDやパスワード等が入力されたことを検知した場合にも、即時に画像形成部10に出力処理を開始させる。つまり、画像形成制御部25は、出力許可ユーザーU1の出力処理開始領域A2への進入時における他者使用可能性P及び閾値Th間の大小関係と、出力許可ユーザーU1の動作(操作)の内容とに基づいて、画像形成部10に出力処理を開始させるタイミングを制御する。
さらに、画像形成制御部25は、ジョブ取得部16が取得した印刷ジョブが通常ジョブJ2であった場合には、ログイン処理部22に認証処理を行わせることなく、画像形成部10に通常ジョブJ2に係る出力処理を行わせる。
なお、出力物の出力処理開始時に、画像形成部10が節電モードである場合には、画像形成制御部25は、画像形成部10を起動してウォームアップを行った後、画像形成処理を開始させる。
後処理制御部26は、ジョブ種判別部17が判別した印刷ジョブに設定されるジョブ種に基づいて、後処理装置FNを起動し、出力物に対する所定の後処理を後処理装置FNに行わせる。
<画像形成装置の処理>
次に、画像形成システム1の画像形成装置2により実行される出力物の出力開始処理の例について、図18〜図21を参照して説明する。図18及び19は、画像形成装置2により実行される出力物の出力開始処理の手順を示すフローチャートであり、図20は、図18に示した処理の中で行われる出力処理開始距離設定処理の手順を示すフローチャートである。図21は、図18に示した処理の中で行われる他者使用可能性/閾値変動処理の手順を示すフローチャートである。
ここでは、出力許可ユーザーU1がPC端末P1を操作して、1つのセキュリティジョブJ1を画像形成装置本体3に送信した場合を例示して説明する。なお、図18及び図19に示す処理は、画像形成部10が節電モード中であっても行われる。
まず、ジョブ取得部16は、PC端末P1からセキュリティジョブJ1を取得し、該取得したセキュリティジョブJ1からジョブ情報及び当該セキュリティジョブJ1のオーナーのオーナーIDを取得する(ステップS1)。セキュリティジョブJ1のジョブ情報には、当該セキュリティジョブJ1のジョブ種を示す情報、セキュリティジョブJ1に設定されたジョブ枚数を示す情報、セキュリティジョブJ1に設定された画像の種類(画像種)を示す情報、他者使用可能性Pの閾値Th変動の要因及びその要素等が含まれる。
次に、出力処理開始距離算出部18は、ステップS1で取得されたセキュリティジョブJ1のジョブ種の情報、及び/又はジョブ枚数の情報を用いて、出力処理開始距離設定処理を行う(ステップS2)。出力処理開始距離設定処理では、画像形成装置2(画像形成装置本体3及び後処理装置FN)の出力処理開始距離D2が設定される。出力処理開始距離設定処理については、後述の図20を参照して詳述する。
ステップS2の処理後、ユーザー検知部19は、検知可能領域A1内に存在する端末装置4から送信される電波を利用して、接近者(ユーザー)の検知を開始する。そして、ユーザー検知部19は、検知可能領域A1内への接近者の進入を検知したか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3において、検知可能領域A1内への接近者の進入が検知されない場合(ステップS3がNO判定の場合)には、ユーザー検知部19は、ステップS3の判定を繰り返す。一方、ステップS3において、検知可能領域A1内への接近者の進入が検知された場合(ステップS3がYES判定の場合)には、ユーザー検知部19は、検知可能領域A1内に存在する端末装置4から送信されたユーザーIDを取得する(ステップS4)。
次いで、ユーザー判定部21は、ステップS1で取得されたセキュリティジョブJ1のオーナーIDと、ステップS4で取得されたユーザーIDとを照合して、接近者がセキュリティジョブオーナー(出力許可ユーザーU1)であるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5において、接近者がセキュリティジョブオーナーでないと判定された場合(ステップS5がNO判定の場合)、ユーザー判定部21は、処理をステップS4に戻してステップS4以降の処理を繰り返す。
一方、ステップS5において、接近者がセキュリティジョブオーナーであると判定された場合(ステップS5がYES判定の場合)、ユーザー判定部21は、判定した内容をログイン処理部22に供給し、ログイン処理部22は、出力許可ユーザーU1をログイン認証する(ステップS6)。
次いで、ユーザー検知部19は、出力許可ユーザーU1が、ステップS2で設定された出力処理開始距離D2で規定される出力処理開始領域A2内に到達したか否かを判定する(ステップS7)。この処理では、まず、ユーザー検知部19は、電波強度/距離変換テーブルTa3(不図示)を参照して、出力許可ユーザーU1が所持する端末装置4から送信された電波の強度をユーザー距離Lに変換する。そして、ユーザー検知部19は、変換によって得られたユーザー距離Lと出力処理開始距離D2とを比較し、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達したか否かを判定する。
ステップS7において、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達したと判定された場合(ステップS7がYES判定の場合)、ユーザー検知部19は、図19中のステップS8の処理を行う。一方、ステップS7において、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内に到達していないと判定された場合(S7がNO判定の場合)、ユーザー検知部19はステップS7の判定処理を繰り返す。
ステップS7がYES判定の場合、ユーザー検知部19は、他者検知領域A3内に他ユーザーU2(他者)が存在するか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8において、他者検知領域A3内に他ユーザーU2が存在しないと判定された場合(ステップS8がNO判定の場合)、ユーザー検知部19は、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが、予め定められた所定の距離以下である否かを判定する(ステップS9)。
ステップS9において、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが予め定められた所定の距離より大きいと判定された場合(ステップS9がNO判定の場合)、ユーザー検知部19は、ステップS8に処理を戻し、ステップS8以降の処理を繰り返す。一方、ステップS9において、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが予め定められた所定の距離以下であると判定された場合(ステップS9がYES判定の場合)、後述のステップS14の処理が行われる。
一方、ステップS8において、他者検知領域A3内に他ユーザーU2が存在すると判定された場合(ステップS8がYES判定の場合)、他者使用可能性/閾値変動部24は、他者使用可能性/閾値変動処理を行う(ステップS10)。他者使用可能性/閾値変動処理については、後述の図21で詳述する。
ステップS10の処理後、他者使用可能性算出部23は、他者使用可能性Pを算出する(ステップS11)。具体的には、他者使用可能性算出部23は、ステップS8で検出された他者検知領域A3内の他ユーザーU2の移動の軌跡の情報を、移動軌跡算出部20から取得する。次いで、他者使用可能性算出部23は、取得した他ユーザーU2の移動の軌跡の情報に基づいて、他者使用可能性テーブルTa4(図15中の他者使用可能性テーブルTa4_1、Ta4_2)を参照して、他者使用可能性Pを算出する。
移動軌跡算出部20による他ユーザーU2の移動の軌跡の算出は、上述のように、出力許可ユーザーU1が検知可能領域A1内で検知されているか否かにかかわらず、他者検知領域A3で検知された全ての他ユーザーU2を対象として行われる。ステップS11においては、他者使用可能性算出部23は、移動軌跡算出部20が算出してRAM31に記憶した各他ユーザーU2の移動の軌跡の情報の中から、ステップS8で検出された他ユーザーU2に関する移動の軌跡の情報を抽出する。そして、他者使用可能性算出部23は、抽出した他ユーザーU2に関する移動の軌跡の情報を用いて、他者使用可能性Pを算出する。
次いで、画像形成制御部25は、ステップS11で算出された他者使用可能性Pが、その閾値Th以下であるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12で、他者使用可能性Pが閾値Th以下であると判定された場合(ステップS12がYES判定の場合)、後述のステップS14の処理が行われる。
一方、ステップS12において、他者使用可能性Pが閾値Thより大きいと判定された場合(ステップS12がNO判定の場合)、ユーザー検知部19は、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが、予め定められた所定の距離以下であるか否かを判定する(ステップS13)。
ステップS13において、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが予め定められた所定の距離より大きいと判定された場合(ステップS13がNO判定の場合)、処理はステップS11に戻され、ステップS11以降の処理が繰り返される。一方、ステップS13において、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが予め定められた所定の距離以下であると判定された場合(ステップS13がYES判定の場合)、後述のステップS14の処理が行われる。
ステップS9、ステップS12又はステップS13がYES判定の場合、画像形成制御部25は、出力許可ユーザーU1が発行したセキュリティジョブJ1に基づく出力物の出力処理を、画像形成部10に開始させる。そして、ステップS14の処理後、画像形成装置2は、出力開始処理を終了する。
なお、図18のステップS1でジョブ取得部16が取得したセキュリティジョブJ1に、後処理工程が設定されている場合には、画像形成部10が画像形成処理を行った後、後処理制御部26が後処理の制御を行う。また、画像形成制御部25は、ステップS14の処理を行う際に、画像形成装置2が節電モードであった場合には、節電モードを解除して画像形成装置2を起動した後に、画像形成部10に画像形成処理を開始させる。
次に、図20を参照して、図18及び図19で説明した出力物の出力開始処理中のステップS2で行われる出力処理開始距離D2の設定処理について説明する。まず、出力処理開始距離算出部18は、図18中のステップS1で取得されたセキュリティジョブJ1に後処理加工が設定されているか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21において、後処理加工が設定されていると判定された場合(ステップS21のYES判定の場合)、出力処理開始距離算出部18は、ジョブ種/距離変換テーブルTa2(図12参照)を参照する(ステップS22)。次いで、出力処理開始距離算出部18は、ステップS1で取得されたセキュリティジョブJ1のジョブ種に基づいて、出力処理開始距離D2を決定する(ステップS23)。そして、ステップS23の処理後、画像形成装置2は、出力処理開始距離設定処理を終了し、処理を図18中のステップS3の処理に戻す。
例えば、図18のステップS1で取得されたセキュリティジョブJ1のジョブ種が「紙折り」であった場合、出力処理開始距離算出部18は、出力処理開始距離D2を「2m」に決定する。また、出力処理開始距離算出部18は、ステップS1で取得されたセキュリティジョブJ1のジョブ種が「断裁」であった場合、図12に示すジョブ種/距離変換テーブルTa2を参照して、出力処理開始距離D2を「1m」に決定する。
また、ステップS1で取得されたセキュリティジョブJ1に2つ以上のジョブ種が設定されている場合、ステップS23において、出力処理開始距離算出部18は、ジョブ種ごとに設定された出力処理開始距離D2を全て加算することにより出力処理開始距離D2を決定する。例えば、ステップS1で取得したセキュリティジョブJ1のジョブ種が「紙折り」及び「断裁」であった場合、出力処理開始距離算出部18は、出力処理開始距離D2を、「紙折り」に対応付けられた「2m」及び「断裁」に対応付けられた「1m」の合算値である「3m」に決定する。
一方、ステップS21において、セキュリティジョブJ1に後処理加工が設定されていないと判定された場合(ステップS21のNO判定の場合)、出力処理開始距離算出部18は、1枚目の用紙(ファーストプリント)が排紙されるまでの時間の情報に基づいて出力処理開始距離D2を決定する(ステップS24)。そして、ステップS24の処理後、画像形成装置2は、出力処理開始距離設定処理を終了し、処理を図18中のステップS3の処理に戻す。
出力処理開始距離算出部18は、出力処理開始距離D2を決定後は、決定した出力処理開始距離D2を、セキュリティジョブJ1の管理番号及びセキュリティジョブJ1のオーナーIDと対応付けてテーブル形式でRAM31に一時的に記憶する。
次に、図21を参照して、図18及び図19で説明した出力物の出力開始処理中のステップS10で行われる他者使用可能性/閾値変動処理について説明する。まず、他者使用可能性/閾値変動部24は、セキュリティジョブJ1、及び、他ユーザーU2のユーザーIDから使用可能性変動要因又は閾値変動要因を抽出する(ステップS31)。なお、他ユーザーU2が端末装置4を所持していない場合には、ステップS31では他ユーザーU2のユーザーIDは検知されない。この場合、ステップS31ではセキュリティジョブJ1のみから使用可能性変動要因又は閾値変動要因が抽出される。さらに、他者使用可能性/閾値変動部24は、ステップS31において抽出した各変動要因から要素を抽出する。
次いで、他者使用可能性/閾値変動部24は、ステップS31で抽出した使用可能性変動要因又は閾値変動要因に基づいて、他者使用可能性P又は閾値Thの変動が必要であるか否かを判定する(ステップS32)。具体的には、他者使用可能性/閾値変動部24は、例えば図16に示す閾値変動要因テーブルTa5を参照して、抽出した閾値変動要因の要素に対応付けられている閾値変動係数が「0」か「0」以外であるかを判定する。閾値変動係数が「0」である場合には、閾値Thを変動する必要はない。
ステップS32において、他者使用可能性P又は閾値Thの変動は必要ないと判定された場合(ステップS32がNO判定の場合)、他者使用可能性/閾値変動部24は、閾値Thの値を変更せずに後述のステップS34の処理を行う。一方、ステップS32において、他者使用可能性P又は閾値Thの変動が必要であると判定された場合、他者使用可能性/閾値変動部24は、変動係数に基づいて他者使用可能性P又は閾値Thを再設定する(ステップS33)他者使用可能性/閾値変動部24は、他者使用可能性P又は閾値Thを再設定後は、再設定後の他者使用可能性P又は閾値Thを、RAM31に保存する。
ステップS33の処理後、又は、ステップS32がNO判定の場合、他者使用可能性/閾値変動部24は、全ての変動要因が抽出されたか否かを判定する(ステップS34)。ステップS34において、全ての変動要因が抽出されていないと判定された場合(ステップS34のNO判定の場合)、他者使用可能性/閾値変動部24は、処理をステップS31に戻し、ステップS31以降の処理を繰り返す。一方、ステップS34において、全ての変動要因が抽出されたと判定された場合(ステップS34がYES判定の場合)、他者使用可能性/閾値変動部24は、他者使用可能性/閾値変動処理を終了し、処理を図19中のステップS11に戻す。
以上説明した本実施形態に係る画像形成装置2では、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内で検知されており、かつ、他者使用可能性Pが閾値Th以下となった場合に、画像形成部10による出力処理が開始される。つまり、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2内で検知されていても、他者使用可能性Pが閾値Thより大きい場合は、画像形成部10による出力処理は開始されない。例えば、画像形成装置2を使用する意思のある他ユーザーU2が画像形成装置2の方向に近づいてきている場合などの、セキュリティジョブJ1に基づいて出力される出力物のセキュリティ性が犯される可能性が高い状況下では、出力物は出力されない。それゆえ、本実施形態では、画像形成装置2を使用する可能性が高い(画像形成装置2を使用する意思がある)他ユーザーU2に、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物を見られてしまうことを、防ぐことができる。
また、本実施形態に係る画像形成システム1では、出力許可ユーザーU1が出力処理開始領域A2に進入した時点で、画像形成装置2の周囲に他ユーザーU2が存在していても、他者使用可能性Pが低い場合には、すぐに出力処理が開始される。また、出力許可ユーザーU1が画像形成装置2の排紙トレイ14に手が届く距離まで近づいたり、出力許可ユーザーU1が画像形成装置2に対して操作を行ったりしたことを検知した場合、画像形成部10で即時に出力処理が開始される。
さらに、本実施形態に係る画像形成システム1では、出力処理開始距離算出部18が、出力処理開始領域A2を規定する出力処理開始距離D2を、セキュリティジョブJ1に設定されたジョブの内容に応じて変更する。例えばセキュリティジョブJ1に設定されたジョブ枚数が多い場合や、セキュリティジョブJ1に複雑な後処理工程が設定されている場合には、出力処理開始距離D2は長くなり、出力処理開始領域A2の範囲も広くなる。この場合、出力許可ユーザーU1が画像形成装置2から離れた位置に居ても、画像形成部10で印刷の出力処理が開始される。一方で、ジョブ枚数が少ない場合や後処理工程が設定されていない場合には、出力処理開始距離D2は短くなり、出力処理開始領域A2の範囲も狭くなる。この場合、出力許可ユーザーU1が画像形成装置2に近い位置まで移動した時点で、画像形成部10による出力処理が開始される。
このような制御が行われることにより、出力許可ユーザーU1は、画像形成装置2の位置に到着したときにすぐに出力物を取得することができる(出力許可ユーザーU1が、画像形成装置2の位置に到着したときに、セキュリティジョブJ1に基づく出力物の排紙トレイ14への排紙を完了させておくことが可能となる)。したがって、本実施形態によれば、セキュリティジョブJ1に基づく出力物のセキュリティ性を確保しつつ、セキュリティジョブJ1に基づいて出力される出力物の出力が完了するまでの出力許可ユーザーU1の待ち時間も低減することができる。すなわち、本実施形態では、セキュリティジョブJ1に基づいて出力された出力物のセキュリティ性の確保と、出力許可ユーザーU1の利便性の向上とを両立させることができる。
また、本実施形態に係る画像形成システム1では、移動軌跡算出部20が算出した他ユーザーU2の移動の軌跡の情報に基づいて、他者使用可能性算出部23が他者使用可能性Pを算出する。上述したように、他ユーザーU2の移動の軌跡は、他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する意思の有無によって変化する。したがって、本実施形態に係る画像形成システム1によれば、他ユーザーU2が画像形成装置2を使用する意思を有するか否かを精度よく判定でき、該判定結果に基づいて、印刷物の出力処理のタイミングを適切なタイミングに調整することができる。
また、本実施形態に係る画像形成システム1では、他者使用可能性/閾値変動部24が、他ユーザーU2のユーザーIDの情報、時間帯の情報、出力許可ユーザーU1と他ユーザーU2との信頼関係の情報等の各種変動要因及び要素に基づいて、他者使用可能性P又は閾値Thを変動する。それゆえ、本実施形態では、画像形成部10が出力処理を開始するタイミングを、状況に応じたより適切なタイミングに調整することができる。
[変形例1]
次に、変形例1に係る画像形成システムの移動軌跡算出処理及び他者使用可能性算出処理について、図22〜図26を参照して説明する。画像形成システムの画像形成装置本体3の構成は、図10に示した上記実施形態のそれと同一であるため、画像形成装置本体3の構成の重複する説明は省略する。
図22は、移動軌跡算出部20が算出した、他ユーザーU2の移動の軌跡の例を示す図である。移動軌跡算出部20は、ユーザー検知部19が検知した他ユーザーU2の位置を所定時間毎にサンプリングし、サンプリングにより得られた各位置Mを繋げることにより、他ユーザーU2の移動の軌跡を算出する。例えば、移動軌跡算出部20がサンプリングした他ユーザーU2の位置が、図22中に示す位置M1、M2、M3、…、Mm(mは自然数)である場合には、他ユーザーU2の移動軌跡は、位置M1、M2、M3、…、Mmを繋げた移動軌跡R1となる。移動軌跡R1は、図22に示すように、他ユーザーU2が画像形成装置2に到達することなく出力処理開始領域A2から退出することを示す軌跡となるため、このような移動軌跡R1で移動する他ユーザーU2は、画像形成装置2を使用する意思がないと想定される。
一方、移動軌跡算出部20がサンプリングした他ユーザーU2の位置が、図22中に示す位置N1、N2、N3、…、Nn(nは自然数)である場合には、他ユーザーU2の移動軌跡は、位置N1、N2、N3、…、Nmを繋げた移動軌跡R2となる。移動軌跡R2は、図22に示すように、他ユーザーU2が画像形成装置2に到達する軌跡となるため、このような移動軌跡R2で移動する他ユーザーU2は、画像形成装置2を使用する意思があると想定される。
次に、この例における、他者使用可能性算出部23による他者使用可能性Pの算出処理例について説明する。まず、移動軌跡算出部20は、移動軌跡算出部20がサンプリングして得た他ユーザーU2の位置毎に、自装置に対する他ユーザーU2の距離(ユーザー距離L)及び進行方向の角度を算出する。そして、他者使用可能性算出部23は、他ユーザーU2のユーザー距離L及び進行方向の角度に基づいて、他者使用可能性Pを算出する。他者使用可能性Pは、例えば以下のようにして算出される。
まず、画像形成装置2と他ユーザーU2と間の距離によって示される他者使用可能性を、距離依存可能性PL[%]と定義する。次いで、他ユーザーU2の進行方向を示す角度の大きさによって示される他者使用可能性を、角度依存可能性Pθ[%]と定義する。なお、角度依存可能性Pθは、ユーザー距離Lに応じて変化する。
そして、他者使用可能性Pを次式(1)のように定義する。
P=PL+Pθ…(1)
すなわち、他者使用可能性Pは、距離依存可能性PL及び角度依存可能性Pθを変数とする関数である。上記式(1)の距離依存可能性PL及び角度依存可能性Pθは、それぞれ0〜50%の範囲で変化する。他者使用可能性Pは、距離依存可能性PL及び角度依存可能性Pθを合算した値であるため、0〜100%の範囲で変化する。
ここで、距離依存可能性PL及び角度依存可能性Pθについて、図23を参照して説明する。図23は、距離依存可能性PL及び角度依存可能性Pθの概念を示す説明図である。例えば、他ユーザーU2が他者検知領域A3内に進入した時の他ユーザーU2の位置Q0を原点とした場合、原点Q0と画像形成装置2とを結ぶ破線で示されるユーザー距離Lが、距離依存可能性PLの変化量として定まる。また、他ユーザーU2及び画像形成装置2間を結ぶ破線を基準線とした場合の、他ユーザーU2の進行方向を示すベクトルと基準線との間の成す角度θが、角度依存可能性Pθの変化量として定まる。
例えば、他ユーザーU2が他者検知領域A3に進入した時点では、原点Q0と画像形成装置2とを結ぶ基準線の長さは、図2に示したユーザー検知可能距離D1に等しくなる。また、原点Q0における他ユーザーU2の進行方向の角度θ(角度θの初期値)は、0度とする。
他ユーザーU2が他者検知領域A3に進入した後は、移動軌跡算出部20により所定時間毎に他ユーザーU2の位置がサンプリング(算出)される。また、変形例1では、ユーザー検知部19は、例えば、画像形成装置2の周囲に配置された不図示の複数の無線装置が計測する電波強度の変化を計測することにより、他ユーザーU2の位置Qを算出する。無線装置には、例えば、アクセスポイントを使用することができる。画像形成装置2の周囲に配置する無線装置の個数は、少なくとも3個とすることが望ましい。
なお、ユーザー検知部19は、例えば、画像形成装置2の床面に配置された複数の感圧センサが発した圧力信号等を取得し、該取得した圧力信号を用いて他ユーザーU2の位置Qを算出してもよい。また、ユーザー検知部19は、画像形成装置2に取り付けられた、又は、画像形成装置2の周辺に設けられたカメラが撮像した画像を取得し、該取得した画像を解析することにより、他ユーザーU2の位置Qを算出してもよい。
移動軌跡算出部20は、ユーザー検知部19が検知した他ユーザーU2の位置Qの情報を用いて、他ユーザーU2の移動軌跡Rを算出する。
例えば、移動軌跡算出部20が、1秒毎に他ユーザーU2の位置Qをサンプリングする場合を想定する。このとき、他ユーザーU2は、他者検知領域A3内に進入して1秒後には位置Q1におり、2秒後には位置Q2におり、3秒後には位置Q3におり、4秒後には位置Q4に居るものとする。
他ユーザーU2が位置Q1に位置していたとき、他ユーザーU2の進行方向を示す角度θは、破線で示される基準線と、他ユーザーU2が位置Q0から位置Q1まで移動した移動方向を示す矢印とがなす角度θ1で示される。同様に、他ユーザーU2が位置Q2、Q3、Q4のそれぞれに位置していたときには、基準線に対する他ユーザーU2の進行方向の角度θは、それぞれ角度θ2、θ3及びθ4となる。他ユーザーU2のユーザー距離Lは、他ユーザーU2が位置Q1、Q2…と移動するに従って、短くなる。
図24は、他ユーザーU2のユーザー距離Lと、距離依存可能性PLとの対応関係を示すグラフである。距離依存可能性PLは、図24に示すグラフでは、ユーザー距離Lを横軸にとり、距離依存可能性PLを縦軸にとる。ここでは、他者検知領域A3の半径が10mである場合を想定している。距離依存可能性PLは、ユーザー距離Lが10mのときに0%となり、ユーザー距離Lが0mの時に50%となる。その間のユーザー距離Lでは、距離依存可能性PLは線形に変化する。すなわち、他ユーザーU2のユーザー距離Lが短くなるほど、距離依存可能性PLは高くなる。
図23に示す例では、画像形成装置2を使用する意思のある他ユーザーU2は、画像形成装置2に向かって進んでくることが想定される。そして、他ユーザーU2が画像形成装置2に向かって進んできた場合は、時間が経過するに従ってユーザー距離Lは短くなる。したがって、他ユーザーU2に画像形成装置2を使用する意思がある場合には、他ユーザーU2が画像形成装置2に近づくにつれて距離依存可能性PLは高くなり、画像形成装置2の位置に到達したときに、図24に示す例では、距離依存可能性PLは50%となる。
図25は、他ユーザーU2のユーザー距離Lと、角度依存可能性Pθとの対応関係を示すグラフである。図25に示すグラフでは、ユーザー距離Lを横軸にとり、角度依存可能性Pθを縦軸にとる。角度依存可能性Pθは、ユーザー距離Lが10mのときに0%となり、ユーザー距離Lが0mの時に50%となる。その間は、角度依存可能性Pθは非線形に変化し、その変化量は、ユーザー距離Lが短くなるほど大きくなる。
他ユーザーU2が画像形成装置2から離れた場所にいる場合には、他ユーザーU2の進行方向の角度θが小さくても、他ユーザーU2が意図して画像形成装置2に近づく可能性は低いと想定される。一方、他ユーザーU2が画像形成装置2に近い位置に居る場合には、角度θが0度に近づくほど、他ユーザーU2が意図して画像形成装置2に近づいている可能性が高いと想定される。
このため、他ユーザーU2が意図して画像形成装置2に向かって進んでいる場合には、画像形成装置2に近づくにつれて、ユーザー距離Lが短くなり、角度依存可能性Pθが高くなる。そして、他ユーザーU2が画像形成装置2に到達したときに、ユーザー距離Lが0mとなり、角度依存可能性Pθが50%となる。
図26は、この例で算出される他者使用可能性Pとその閾値Thとの関係を示すグラフである。横軸は、他ユーザーU2が他者検知領域A3内で検知されてからの経過時間を示し、縦軸は、他者使用可能性P(%)を示す。移動軌跡算出部20は、他ユーザーU2が他者検知領域A3に到達した時点(図23の原点Q0に示す時点)から他ユーザーU2の移動軌跡の算出を開始する。そして、他者使用可能性算出部23が、移動軌跡算出部20で算出された移動軌跡の情報を用いて、他者使用可能性Pを算出する。
例えば、図22の移動軌跡R1に示したように、他者検知領域A3内に進入した他ユーザーU2が、画像形成装置2に到達する前に、画像形成装置2から遠ざかった場合、他者使用可能性Pは破線W1に示す軌跡で推移する。すなわち、他ユーザーU2が他者検知領域A3に進入した直後は使用可能性Pが上がるが、時間の経過とともに使用可能性Pが下がり、時間t11以降で他者使用可能性Pが閾値Th以下の値となる。そして、他者使用可能性Pが閾値Thを下回った時点で、画像形成部10による印刷の出力処理が開始される。
一方、図22の移動軌跡R2に示したように、他者検知領域A3内に進入した他ユーザーU2が、画像形成装置2の方向に移動した場合、他者使用可能性Pは実線W2に示す軌跡で推移する。すなわち、他者使用可能性Pは、時間の経過に伴って上昇し続け、閾値Thを下回ることがない。ただし、このような場合においても、上記実施形態の説明で述べたように、出力許可ユーザーU1のユーザー距離Lが所定の距離以下となった場合は、出力許可ユーザーU1が発行したセキュリティジョブJ1に基づいて印刷物の出力処理が開始される。
上述した変形例1の画像形成システムによれば、画像形成装置2の周囲に存在する他ユーザーU2の、画像形成装置2を使用する意思の有無を、より精度よく判定することができる。
<その他の各種変形例>
なお、上述した実施形態では、他者使用可能性P又は閾値Thを変動させる要因及び要素の情報に基づいて、他者使用可能性/閾値変動部24が他者使用可能性Pの閾値Thを変動させる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、閾値Thを、出力許可ユーザーU1が設定できるように構成してもよい。図27A及び図27Bに、画像形成装置2が出力許可ユーザーU1に対して閾値Thの調整を促す通知を行う場合の、端末装置4の表示画面の表示例を示す。図27Aの端末装置4の表示画面には、「他の人がMFPに来る可能性は50%です。A:出力しますか? B:閾値を再設定しますか? C:出力を保留しますか?」のメッセージが表示されている。このメッセージでは、画像形成装置2の周辺に存在する他ユーザーU2による画像形成装置2の使用可能性Pの高さを通知するとともに、出力許可ユーザーU1に対して、その後の処理を決定するための選択肢を示している。
メッセージが表示された領域の下方には、「A」、「B」及び「C」の各文字が表示される。これらの文字の表示領域は、出力許可ユーザーU1によって選択可能な指示入力領域として形成される。したがって、出力許可ユーザーU1は、「A」、「B」又は「C」のいずれか1つを選択することにより、このまま出力物の出力を開始するか、閾値Thを変更するか、出力物の出力を保留にするかを選択することができる。
図27Bは、出力許可ユーザーU1によって、「B」が選択された後の表示画面の表示例を示す図である。図27Bに示す表示画面には、「閾値を入力してください」のメッセージとともに、閾値を入力するための数字が表示される。このような表示を行い、出力許可ユーザーU1に閾値Thを入力させることにより、閾値Thを所望の値に変更することができる。つまり、閾値Thを、出力許可ユーザーU1の意向を反映させたものとすることができる。
また、上述した実施形態では、移動軌跡算出部20が算出した他ユーザーU2の移動軌跡の情報を用いて、他者使用可能性算出部23が他者使用可能性Pを算出する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、他者使用可能性算出部23が、他ユーザーU2の移動速度の情報を用いて、他者使用可能性Pを算出するような構成としてもよい。他ユーザーU2の移動速度は、例えば、ユーザー検知部19で検知することができる。
具体的には、他ユーザーU2の歩く速度が所定の速度以上である場合に、他者使用可能性算出部23が、他者使用可能性Pを、閾値Thを超えるような高い値とする。このような制御を行うことにより、例えば他ユーザーU2が出力許可ユーザーU1の背後から出力許可ユーザーU1を抜かして画像形成装置2に向かうような状況では、画像形成部10による出力処理が行われなくなる。なお、他ユーザーU2の歩く速度が所定の速度以上である場合に、他者使用可能性Pの値を変動させるのではなく、画像形成制御部25が画像形成部10による出力処理を停止させる制御を行ってもよい。
また、上述した実施形態では、他者使用可能性/閾値変動部24が、状況に応じて可能性P又は閾値Thを変動させる例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。閾値Thを変動させずに、固定値として設定された閾値Thを常に用いてもよい。
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、図中に実線で示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。