以下、本発明を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
≪回路付き部材≫
まず、本発明の回路付き部材について説明する。
図1は、本発明の回路付き部材の好適な実施形態を模式的に示す断面図である。
なお、本明細書で参照する図面は、構成の一部を誇張して示したものであり、実際の寸法比率等を正確に反映したものではない。
図1に示す回路付き部材10は、導電部1と、絶縁部2とを備えている。
導電部1は、後に詳述するように、打ち抜き加工された厚さが70μm以上の金属膜(金属板)1’を用いて形成されたものである。
このように、導電部1が、十分な膜厚を有する金属膜1’を用いて形成されたものであることにより、通常、十分に大きな電流を通電することができ、回路付き部材10を、いわゆる大電流基板に好適に適用することができる。
また、このような金属膜を用いて形成された導電部を備えることにより、めっき法により形成された導電部を有する回路付き部材(回路基板)に比べて、導電部の層内剥離等を生じにくい。また、めっき、エッチングにより導電部を形成する場合、エッチングレートの関係から、導電部の厚さ方向において幅が変化したもの(導電部の外表面側に向かって幅が小さくなったもの)となり、このような傾向は、導電部の厚さが大きくなるほど顕著になるのに対し、上記のような打ち抜き加工された金属膜を用いることにより、導電部の幅の不本意なばらつきの発生を効果的に防止することができる。以上のようなことから、導電部と絶縁部との密着性を優れたものとすることができ、安定した通電特性が得られる。
導電部1の厚さ(図中、上下方向での厚さ)は、60μm以上であるのが好ましく、70μm以上2000μm以下であるのがより好ましく、80μm以上1000μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、導電部1に比較的大きな電流を通電した場合に、効率よく放熱を行うことができ、導電部1、回路付き部材10の温度上昇を効率よく抑制することができるとともに、導電部1の極端な温度上昇による弊害(例えば、抵抗率の急激な増大や、導電部1と絶縁部2との密着性の低下等)をより効率よく防止することができる。また、従来のめっき法を採用した場合では、このような膜厚がより大きい導電部を形成しようとした場合、成膜時間がさらに長くなり、回路付き部材(回路基板)の生産性がさらに低下し、また、回路付き部材(回路基板)の信頼性も低下するという問題が顕著になっていたが、本発明においては、このような問題を解消しつつ、上記のような優れた効果を得ることができる。また、導電部1の厚さが前記上限値未満であると、回路付き部材10の厚型化等を効率よく防止することができる。
回路付き部材10の使用時(導電部1への通電時)において導電部1に通電する電流の最大値は、特に限定されないが、20A以上150A以下であるのが好ましい。
導電部1は、金属材料(合金等を含む)で構成されたものであればよいが、Cu、Al、Agまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、導電部1の導電性をより優れたものとすることができるとともに、金属膜1’の入手が容易であり、回路付き部材10の生産コストの低減、安定供給の観点からも有利である。また、絶縁部2が後述するような材料で構成されたものである場合に、導電部1と絶縁部2との密着性をより優れたものとすることができ、回路付き部材10の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
導電部1が、Cu、Al、Agまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金で構成されたものである場合、導電部1中におけるCu、AlおよびAgの含有率の和は、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのがより好ましく、95質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
絶縁部2は、絶縁性を有する材料で構成されたものである。このような絶縁部2を有することにより、短絡等を防止することができる。
絶縁部2は、十分な絶縁性を有するものであればよいが、絶縁部2の25℃における体積抵抗率は、1×105Ω・cm以上であるのが好ましく、1×106Ω・cm以上1×1016Ω・cm以下であるのがより好ましく、1×107Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、例えば、リーク等の問題の発生をより確実に防止することができる。また、導電部1のピッチを小さくすることができ、回路付き部材10の小型化、導電部1が設けられた領域の小型化等を図る上で有利である。また、導電部1に通電する電流のさらなる大電流化を図ることができる。また、絶縁部2の25℃における体積抵抗率が前記上限以下であると、絶縁部2の構成材料として、比較的安価な材料、安定的に入手が可能な材料を用いることができ、回路付き部材10の生産コストの低減、回路付き部材10の安定供給の観点から有利である。
なお、体積抵抗率は、二重リング電極法(JIS K6911)に準じた測定により求めることができる。
絶縁部2は、絶縁性を有する材料であれば、いかなる材料で構成されたものであってもよく、例えば、硬化性樹脂の硬化物が挙げられるが、特に、フェノール樹脂、エポキシ樹脂のうちの少なくとも一方の硬化物を含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、比較的高い絶縁性を確実に確保することができる。また、これらの材料は、一般に、安価で入手が容易であるため、回路付き部材10の生産コストの低減、回路付き部材10の安定供給の観点から有利である。また、これらの材料は、各種金属(特に、前述したCu、Al、Agまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金)との密着性に優れているため、回路付き部材10の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
エポキシ樹脂は、芳香環構造および脂環構造(脂環式の炭素環構造)の少なくともいずれか一方を有するものであることが好ましい。
このようなエポキシ樹脂を使用することで、絶縁部2の耐熱性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
芳香環あるいは脂肪環構造を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。
また、耐熱性のさらなる向上、絶縁破壊電圧の向上等の観点から、エポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂が特に好ましい。ここで、ナフタレン型エポキシ樹脂とは、ナフタレン環骨格を有し、かつ、グリシジル基を2つ以上有するものをいう。
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、以下の下記式(5)で表されるもの、下記式(6)で表されるもの、下記式(7)で表されるもの、下記式(8)で表されるもの等を用いることができる。なお、下記式(6)において、m、nはナフタレン環上の置換基の個数を示し、それぞれ独立して1以上7以下の整数を示している。また、下記式(7)においては、Meはメチル基を示し、l、m、nは1以上の整数である。ただし、l、m、nは10以下であることが好ましい。
なお、上記式(6)の化合物の中でも、特に、下記式(6−1)、下記式(6−2)、下記式(6−3)で表されるものが好ましい。
また、ナフタレン型エポキシ樹脂としては、以下の下記式(8)で表されるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂も使用できる。
(上記式(8)式において、nは1以上20以下の整数であり、lは1以上2以下の整数であり、R
1はそれぞれ独立に水素原子、ベンジル基、アルキル基または下記式(9)で表される構造であり、R
2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である。)
(上記式(9)式において、Arはそれぞれ独立にフェニレン基またはナフチレン基であり、R
2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、mは1または2の整数である。)
上記式(8)で表されるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂の中でも特に好ましいものとしては、例えば、下記式(10)で表されるものが挙げられる。
(上記式(10)式において、nは1以上20以下の整数であり、好ましくは1以上10以下の整数であり、より好ましくは1以上3以下の整数である。Rはそれぞれ独立に水素原子または下記式(11)で表される構造であり、好ましくは水素原子である。)
(上記式(11)式において、mは1または2の整数である。)
上記式(10)で表されるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂の中でも特に好ましいものとしては、例えば、下記式(12)、下記式(13)、下記式(14)、下記式(15)、下記式(16)で表されるものが挙げられる。
また、フェノール樹脂としては、ノボラック型、レゾール型のもの等を用いることができるが、ノボラック樹脂が好ましい。
これにより、得られる高絶縁材料の耐熱性が特に優れたものとなり、硬化時の体積収縮率がより小さく、製造安定性が特に優れたものとなる。
絶縁部2を構成する樹脂成分中に占めるエポキシ樹脂のエポキシ数に対する、フェノール樹脂、酸無水物またはアミン系硬化剤の官能基数の当量比は、特に限定されないが、0.3以上1.5以下であるのが好ましく、0.5以上1.2以下であるのがより好ましい。
これにより、得られる高絶縁材料がより緻密な架橋構造を有するものとなり、高絶縁材料の耐熱性、耐湿性が特に優れたものとなる。
絶縁部2における樹脂成分の含有率は、特に限定されないが、10質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、25質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。
絶縁部2は、樹脂材料とともに、無機充填剤を含むものであるのが好ましい。
これにより、回路付き部材10の生産コストの上昇を効果的に抑制しつつ、絶縁部2の絶縁性をより高いものとすることができる。
特に、フェノール樹脂およびエポキシ樹脂を構成成分とする硬化物とともに、平均粒子径が2μm以上300μm以下の無機充填剤(第1の無機充填剤)と、平均粒子径が0.1μm以上9.0μm以下の無機充填剤(第2の無機充填剤)とを含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、回路付き部材10の生産コストの上昇をより効果的に抑制しつつ、絶縁部2の絶縁性を特に高いものとすることができる。
無機充填剤としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等の無機充填剤等が挙げられる。通電に伴い発生する熱が電子部品に悪影響を及ぼすことをより確実に防止する等の観点から、シリカのような熱伝導率が低い無機充填剤を好適に用いることができる。
本明細書において、平均粒子径とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指す。
また、粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000を用いて、水中にアルミナを1分間超音波処理することにより分散させ、測定することができる。
第1の無機充填剤の平均粒子径は、2μm以上300μm以下であるのが好ましいが、3μm以上100μm以下であるのがより好ましく、20μm以上50μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
第2の無機充填剤の平均粒子径は、0.1μm以上9.0μm以下であるのが好ましいが、1μm以上8.0μm以下であるのがより好ましく、3.0μm以上5μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
絶縁部2における第1の無機充填剤の含有率は、特に限定されないが、10質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、30質量%以上85質量%以下であるのがより好ましい。
絶縁部2における第2の無機充填剤の含有率は、特に限定されないが、5質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、30質量%以上85質量%以下であるのがより好ましい。
また、絶縁部2は、例えば、FR4やFR5などのガラス繊維を含む硬化物で構成されたものであってもよい。UL/ANSIタイプFR4は、主となる樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、ガラス繊維、無機フィラーを含む硬化物である。無機フィラーを除き、エポキシ樹脂は硬化物全体の50質量%以上含有し、無機フィラーを使用する場合は、無機フィラーの層含有量は硬化物全体の45質量%となっている。また、FR4以外に、エポキシ樹脂を主成分として、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系硬化物のいずれかを含む樹脂成分と、ガラスクロスと、平均粒子径が2μm以上300μm以下の無機充填剤と、平均粒子径が0.1μm以上9.0μm以下の無機充填剤とを含む材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、回路付き部材10全体の機械的強度を高くすることができる。
また、25℃における絶縁部2の構成材料の線膨張係数(線膨張率)は、30ppm以下であるのが好ましく、20ppm以下であるのがより好ましい。
このように、絶縁部2の構成材料の線膨張係数(線膨張率)が十分に小さいものであると、回路付き部材10(例えば、導電部1と絶縁部2との界面等)における剥離、クラック等の発生や、回路付き部材10に電子部品を実装してなる電子部品実装部材における剥離、クラック等の発生をより効果的に防止することができ、回路付き部材10、電子部品実装部材の耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
また、絶縁部2を構成する樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、120℃以上であるのが好ましく、140℃以上であるのがより好ましい。
これにより、回路付き部材10、電子部品実装部材の耐熱性を特に優れたものとすることができる。
絶縁部2の導電部1が設けられた面側(図中の上側)の外表面と、導電部1の外表面との高低差は、30μm以下であるのが好ましく、20μm以下であるのがより好ましく、10μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、例えば、回路付き部材10の取扱いのし易さ(取扱い性)をより優れたものとし、回路付き部材10への電子部品の実装をより好適に行うことができる。
特に、絶縁部2の導電部1が設けられた面側の外表面と、導電部1の外表面とが面一であるのが好ましい。
これにより、例えば、回路付き部材10の取扱いのし易さ(取扱い性)をさらに優れたものとし、回路付き部材10への電子部品の実装をさらに好適に行うことができる。
なお、図示の構成では、絶縁部2の導電部1が設けられた面側の外表面と、導電部1の外表面とが面一であるが、導電部1の外表面は、絶縁部2の導電部1が設けられた面側の外表面よりも外側に突出していてもよいし、絶縁部2の導電部1が設けられた面側の外表面に対して陥没しているものであってもよい。また、導電部1の少なくとも一部において、その断面全体が絶縁部2で覆われている部位を有していてもよい。
回路付き部材10は、前述した導電部1と絶縁部2とを備えるものであればよく、その他の構成をさらに備えるものであってもよい。例えば、回路付き部材10は、導電部1と絶縁部2とを有する回路層を支持する支持部(図示せず)を備えていてもよい。このような支持部を有することにより、例えば、回路付き部材10の形状の安定性、機械的強度をより優れたものとすることができる。
支持部は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、金属材料で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、回路層(導電部1および絶縁部2)を支持する機能をより効果的に発揮することができるだけでなく、回路付き部材10全体としての放熱性を特に優れたものとすることができ、耐熱性、信頼性を特に優れたものとすることができる。支持部を構成する金属材料としては、例えば、Cu、Au、Alや、これらを含む合金等が挙げられる。
図示の構成では、回路付き部材10は、板状をなすものである。
これにより、例えば、回路付き部材10への電子部品の実装をより好適に行うことができる。
また、図示の構成では、回路付き部材10は、導電部1が1層のみ設けられた単層配線基板であるが、本発明では、回路付き部材(回路基板)の厚さ方向の異なる部位に導電部1が設けられた多層配線基板であってもよい。
また、本発明に係る回路付き部材は、電子機器の筐体を構成するものであってもよい。
これにより、デッドスペースの有効利用(省スペース化)や部材の共通化、これらによるコストの低減等を図ることができ、電子機器全体としての小型化、軽量化等を図ることができる。
上述したような回路付き部材10は、以下に詳述するような方法を用いて、好適に製造することができる。
≪回路付き部材の製造方法≫
次に、本発明の回路付き部材の製造方法について説明する。
図2は、本発明の回路付き部材の製造方法の好適な実施形態を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態の製造方法は、打ち抜き加工された厚さが70μm以上の金属膜1’を準備する金属膜準備工程(1a)と、絶縁性材料で構成された絶縁部2を形成するとともに、金属膜1’の一部を絶縁部2中に埋入させ、金属膜1’で構成された導電部1を形成する絶縁部形成工程(1b)と、金属膜1’(導電部1)を研磨する研磨工程(1c)とを有している。
<金属膜準備工程>
本工程で用いる金属膜1’は、打ち抜き加工が施されたものである。
打ち抜き加工を採用することにより、導電部1の形成の効率、回路付き部材10の生産性を優れたものとすることができ、導電部1の形成、回路付き部材10の生産に要するコストを低減することができる。また、めっき法を用いた方法に比べて、導電部の強度、耐久性を優れたものとすることができ、回路付き部材全体としての信頼性、耐久性を優れたものとすることができる。
本工程で準備する金属膜1’は、導電部1となるべき線状の部位を橋渡しするブリッジ部11’を有するものである(図2中の(1a)参照)。
これにより、金属膜1’の取り扱いが容易となり、回路付き部材10の製造時における金属膜1’の不本意な変形等を効果的に防止しつつ、所望の部位に金属膜1’を配置することができ、所望の部位に所望の形状の導電部1を容易かつ確実に形成することができる。
このようなブリッジ部11’は、例えば、導電部1となるべき部位からなる金属膜1’を成形した後に、接合(接着、溶接等)したものであってもよいが、打ち抜き加工を採用することにより、導電部1となるべき線状の部位を橋渡しするブリッジ部11’を好適に形成することができる。
すなわち、ブリッジ部11’の形状(金属膜1’における部位、高さ、厚さ等を含む)は、例えば、打ち抜き加工を行う際に用いるパンチの形状を調整したり、打ち抜き加工に供される金属膜を支持する支持部材に、所定の形状の凹部を設けること等により、好適に調整することができる。
また、打ち抜き加工を採用することにより、金属膜1’の横断面において、回路付き部材10が有すべき導電部1とは重なり合わない部位(図示の構成では、図中の上側)にブリッジ部11’を好適に設けることができる。
これにより、後の工程(回路付き部材10の製造過程)において、選択的にブリッジ部11’を容易かつ確実に除去することができる。その結果、ブリッジ部11’に対応する部位が不本意に残存することが防止された回路付き部材10を、優れた生産性で製造することができる。
金属膜1’は、金属材料(合金等を含む)で構成されたものであればよいが、Cu、Al、Agまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金で構成されたものであるのが好ましい。
これにより、打ち抜き加工による加工性をより優れたものとすることができ、所望の形状に容易かつ確実に成形することができる。また、後述する研磨工程を好適に行うことができる。また、導電部1の導電性をより優れたものとすることができるとともに、金属膜1’の入手が容易であり、回路付き部材10の生産コストの低減、安定供給の観点からも有利である。また、絶縁部2が前述したような材料で構成されたものである場合に、導電部1と絶縁部2との密着性をより優れたものとすることができ、回路付き部材10の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
本工程で準備する金属膜1’の厚さ(ブリッジ部11’が設けられていない部位での厚さ)が、70μm以上である。
これにより、金属膜1’の取り扱いが容易であり、回路付き部材10の製造時における金属膜1’の不本意な変形等を効果的に防止することができる。また、めっき法により形成された導電部を有する回路付き部材(回路基板)に比べて、金属膜1’を用いて形成される導電部1において、層内剥離等を問題を生じにくく、安定した通電特性が得られる。また、導電部1の厚さを十分に大きいものとすることができるため、十分に大きな電流を通電することができ、回路付き部材10を、いわゆる大電流基板に好適に適用することができる。
本工程で準備する金属膜1’の厚さ(ブリッジ部11’が設けられていない部位での厚さ)が、70μm以上であればよいが、70μm以上2200μm以下であるのがより好ましく、80μm以上1100μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
ブリッジ部11’の厚さは、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、20μm以上300μm以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したようなブリッジ部11’としての機能をより効果的に発揮することができるとともに、研磨による除去をより容易に行うことができる。
なお、ブリッジ部11’は、導電部1となるべき部位とは異なる材料で構成されたものであってもよい。
<絶縁部形成工程>
次に、絶縁性材料で構成された絶縁部2を形成するとともに、金属膜1’の一部を絶縁部2中に埋入させ、金属膜1’で構成された導電部1を形成する(1b)。
このように、金属膜1’を絶縁部2中に埋入させて導電部1を形成することにより、導電部1と絶縁部2との密着性を優れたものとすることができ、回路付き部材10の信頼性、耐久性を優れたものとすることができる。なお、図示の構成では、金属膜1’の厚さ方向の一部のみを絶縁部2中に埋入させているが、金属膜1’の厚さ方向の全部を絶縁部2中に埋入させてもよい。
また、このような方法を採用することにより、例えば、複雑な表面形状を有する部材に対しても、好適に導電部1を形成することができる。したがって、例えば、表面の平坦性の低い部材(例えば、電子機器の筐体の内面等)にも好適に回路を形成することができる。
絶縁部2の形成には、絶縁性材料またはその前駆体を含む組成物(絶縁部形成用組成物)を好適に用いることができる。絶縁部形成用組成物としては、硬化性樹脂を含むものを好適に用いることができ、特に、フェノール樹脂、エポキシ樹脂のうちの少なくとも一方を含む組成物を用いるのが好ましい。
これにより、比較的高い絶縁性を確実に確保することができる。また、これらの材料は、一般に、安価で入手が容易であるため、回路付き部材10の生産コストの低減、回路付き部材10の安定供給の観点から有利である。また、これらの材料は、各種金属(特に、前述したCu、Al、Agまたはこれらのうち少なくとも1種を含む合金)との密着性に優れているため、回路付き部材10の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
絶縁部形成用組成物は、その他の成分(例えば、硬化剤、カップリング剤、酸化防止剤、レベリング剤等)を含むものであってもよい。
硬化剤(硬化触媒)としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;ジシアンジアミド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソフォロンジアミン、ノルボルネンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等のアミン系硬化剤;2−フェニル−イミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール系硬化剤;トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン、1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機リン化合物;フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物;酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸や、これらの誘導体等(酸無水物等)が挙げられる。硬化剤として、これらの中のから選択される1種類を単独で用いることもできるし、これらの中から2種類以上を併用したりすることもできる。
これらの中でも、接着性に優れ、かつ比較的低温で反応し、耐熱性が優れた硬化物が得られる点で、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤が好ましい。
絶縁部形成用組成物中における硬化触媒の含有量は、特に限定されないが、絶縁部形成用組成物の全固形分100質量部に対し、例えば、0.05質量部以上3.0質量部以下であるのが好ましい。
絶縁部形成用組成物がカップリング剤を含むものであると、例えば、絶縁部形成用組成物がエポキシ樹脂とシリカとを含むものである場合に、シリカに対するエポキシ樹脂の濡れ性を向上させることができ、絶縁部形成用組成物を用いて形成される絶縁部2の機械的強度等を特に優れたものとすることができる。
カップリング剤としては、例えば、カップリング剤として知られている各種材料を用いることができるが、具体的には、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。
カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、シリカ:100質量部に対して、0.05質量部以上3質量部以下であるのが好ましく、0.1質量部以上2質量部以下であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
絶縁部形成用組成物は、25℃における粘度(動的粘弾性測定装置を用いた測定により求められる粘度)が、0.1Pa・s以上1000Pa・s以下であるのが好ましく、10Pa・s以上500Pa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、絶縁部形成用組成物の取り扱い性(取扱いのし易さ)を特に優れたものとし、回路付き部材10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、絶縁部2中や、導電部1(金属膜1’)と絶縁部2との界面付近等に、不本意な気泡が混入することを効果的に防止することができ、回路付き部材10の信頼性を特に優れたものとすることができる。
本工程は、絶縁部形成用組成物を用いたインサート成形により、好適に行うことができる。この場合、成形型としては、例えば、金属膜1’を設置するための凹部や金属膜1’の設置部位を特定するためのアライメントマークが設けられたものを用いてもよい。これにより、金属膜1’の不本意な位置ずれ等を効果的に防止することができ、所望の部位に所望の形状の導電部1が設けられた回路付き部材10を優れた効率で得ることができる。
絶縁部形成用組成物として、硬化性樹脂を含むものを用いる場合、本工程では、通常、前記硬化性樹脂の硬化反応を行う。
硬化性樹脂の硬化方法は、硬化性樹脂の種類等により異なるが、絶縁部形成用組成物が熱硬化性樹脂を含むものである場合、通常、加熱により行う。
本工程における加熱温度は、絶縁部形成用組成物の組成等により異なるが、60℃以上200℃以下であるのが好ましく、80℃以上190℃以下であるのがより好ましい。
これにより硬化性樹脂の硬化反応をより速やかに進行させることができ、回路付き部材10の生産性を特に優れたものとすることができる。また、硬化反応を好適に進行させることができるため、回路付き部材10の耐熱性、機械的強度等をより確実に優れたものとすることができる。
本工程における加熱時間は、絶縁部形成用組成物の組成等により異なるが、3秒以上3時間以下であるのが好ましく、10秒以上1時間以下であるのがより好ましい。
これにより、回路付き部材10の生産性を十分に優れたものとしつつ、硬化反応をより好適に進行させることができ、回路付き部材10の耐熱性、機械的強度等をより確実に優れたものとすることができる。
<研磨工程>
前述した絶縁部形成工程の後に、金属膜1’(導電部1)を研磨する(1c)。
これにより、例えば、回路付き部材10において不要なブリッジ部11’を除去することができ、目的とする回路を有する回路付き部材10を得ることができる。また、例えば、金属膜1’(導電部1)のうち、絶縁部2の導電部1が設けられた面側の外表面よりも外側に突出していている部位の少なくとも一部を研磨により除去すること等により、導電部1が設けられた面側(図中の上側)の外表面と、導電部1の外表面との高低差を好適に調整すること(特に、高低差を小さくすること)ができる。その結果、最終的に得られる回路付き部材10の取扱いのし易さ(取扱い性)をより優れたものとすることができる。また、回路付き部材10への電子部品の実装をより好適に行うことができる。
本工程で行う研磨としては、例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨、化学機械研磨(CMP)等が挙げられる。
本工程では、金属膜1’(導電部1)だけでなく、絶縁部2を研磨してもよい。これにより、回路付き部材10の表面形状をより好適に調整することができる。より具体的には、例えば、導電部1と絶縁部2との間での不本意な高低差が生じることをより効果的に防止することができたり、回路付き部材10の表面の平坦性を向上させ、不本意な凹凸が発生することをより効果的に防止することができる。また、絶縁部2の厚さ、回路付き部材10全体の厚さの調整を好適に行うことができる。
≪電子部品実装部材≫
次に、本発明の電子部品実装部材について説明する。
図3は、本発明の電子部品実装部材の好適な実施形態を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、電子部品実装部材100は、前述したような回路付き部材10に、電子部品50が実装されてなるものである。
これにより、大電流の通電が可能で信頼性の高い電子部品実装部材100を提供することができる。
電子部品50は、導電部1の端子となるべき部位に接続されるものである。
電子部品実装部材100は、電子部品50としていかなる部品を備えるものであってもよいが、導電部1に前述したような大電流が通電するものである場合、電子部品50としては、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、トランス等のいわゆる発熱部品が挙げられる。
なお、電子部品実装部材100は、例えば、マイコン等のICチップ、セラミックコンデンサ、チップ抵抗器等の比較的小電流が通電する電子部品50を備えていてもよい。
回路付き部材10への電子部品50の実装(接続)は、例えば、ろう材を用いたろう接等により行うことができ、これにより、電子回路が形成される。
ろう材としては、例えば、半田、鉛フリー半田等を用いることができる。なお、鉛フリー半田とは、実質的に鉛を含まないか、または、鉛を含む場合でも、その含有量が極めて少ない半田(例えば、鉛の含有率が0.1質量%以下)のことを言う。
回路付き部材10、電子部品実装部材100の用途は、いかなるものであってもよいが、例えば、パワー半導体装置、LED照明、インバーター装置等の電子装置に適用されるもの等が挙げられる。
ここでインバーター装置とは、直流電力から交流電力を電気的に生成する(逆変換する機能を持つ)ものである。またパワー半導体装置とは、通常の半導体素子に比べて高耐圧化、大電流化、高速・高周波化されている特徴を有し、一般的にはパワーデバイスと呼ばれ、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアック等が挙げられる。
また、回路付き部材10、電子部品実装部材100は、自動車に適用されるものであるのが好ましい。
自動車では、大電流を要する大電流回路が用いられることが多いが、このような用途にも、本発明では、好適に対応することができる。また、一般に、自動車は、温度変動が大きい等、使用環境が過酷であるが、本発明では、導電部の層内剥離等を生じにくく、また、導電部と絶縁部との密着性を優れたものとすることができ、安定した通電特性が得られるため、使用環境が過酷な自動車にも好適に適用することができる。
また、本発明は、ワイヤーハーネス(ケーブルハーネス)の代替にも適用することができる。ワイヤーハーネスには、高電流を通電するものが多く、本発明を適用することによる効果がより顕著に発揮される。また、ワイヤーハーネスは、各種の装置等に適用されているが、取り回しが容易ではなく、前記装置等の組み立ての作業性は、作業者の技量等に大きく依存し、前記装置等の生産性に大きな影響を与えていた。これに対し、本発明をワイヤーハーネスに適用することにより、作業者の技量による作業性の差を小さくすることができるとともに、前記装置等の生産性をより高いものとすることができる。
特に、自動車では、通常、狭空間にワイヤーハーネスが多量に用いられており、上記のような問題がより顕著に発生していたが、本発明を適用することにより、このような問題を効果的に解消することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態では、回路付き部材、電子部品実装部材が平板状である場合について代表的に説明したが、本発明において、回路付き部材、電子部品実装部材は、屈曲板状(図4参照)、湾曲板状等の平板状以外の板状や、棒状、ブロック状等板状以外の形状等、いかなる形状のものであってもよい。
また、前述した実施形態では、絶縁部形成工程の後に、研磨工程を有する場合について代表的に説明したが、本発明では、研磨工程を省略してもよい。
また、前述した実施形態では、ブリッジ部の除去を研磨により行う場合について代表的に説明したが、ブリッジ部は、研磨以外の方法で除去してもよい。例えば、ブリッジ部は、切断、折取り、溶解、溶融等の方法により除去してもよい。
また、前述した実施形態では、金属膜としてブリッジ部を有するものを用いる場合について代表的に説明したが、金属膜としてブリッジ部を有さないものを用いてもよい。