JP6705538B2 - 液晶ポリエステル樹脂組成物、積層体および液晶ポリエステル樹脂フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物、積層体および液晶ポリエステル樹脂フィルムに関する。より詳しくは、液晶ポリエステル樹脂組成物、ならびに、それを用いて得られる積層体および液晶ポリエステル樹脂フィルムに関するものである。
液晶ポリエステル樹脂は、液晶構造を有するため、耐熱性、流動性、寸法安定性に優れる。このため、それらの特性が要求される電気・電子部品を中心に需要が拡大している。特に近年の機器の高性能化に伴い、上記部品の小型化や薄肉化が進んでいる。なかでも、スマートフォンに代表される携帯端末や車載基板などには、液晶ポリエステル樹脂フィルムと金属箔などを貼り合わせた積層体が用いられており、近年の高周波帯用途需要増加に伴い、大きく需要が拡大している。
液晶ポリエステル樹脂フィルムの製法としては、液晶ポリエステル樹脂を含む溶液を塗布した後に溶媒を除去する溶液製膜が挙げられる。液晶ポリエステル樹脂は、ベンゼン環に結合した水素原子が多数フッ素原子に置換されたフェノール(例えば、ペンタフルオロフェノール)のような溶媒を加温することで溶解させることができるが、このような溶媒は融点が高く、溶液を冷却すると固化してしまう。そのため、製膜時に溶液を再度100℃以上の高温に加温する必要がある。この際に、溶媒が沸点に近い温度になるため、場合によっては、製膜中に溶媒が蒸発し、得られるフィルムにクラックが発生したり、膜厚が一定にならないなどの問題が発生することもある。
上記を解決する手法として、樹脂溶液に融点の低い溶媒を混合することで製膜温度を低下する方法があり、例えば、クロロホルムなどのハロゲン溶媒を使用することが提案されている(例えば、特許文献1、2)。また、液晶ポリエステル樹脂の液晶性を落とす、または高極性とするなどの手法によって、液晶ポリエステル樹脂を易溶解性とし、p−クロロフェノールやN−メチルピロリドンなどに溶解させた溶液組成物が提案されている(例えば、特許文献3〜7)。
特開平8−281817号公報 特開平2−84440号公報 特開2002−114894号公報 特開2004−277731号公報 特開2004−269874号公報 特開2004−196930号公報 特開2004−315678号公報
前記特許文献1、2に記載された方法では、ハロゲン溶媒が貧溶媒であるため、用いる液晶ポリエステルによっては、液晶ポリエステル樹脂を高濃度で溶解することができず、製膜性や耐クラック性が不十分であった。また、前記特許文献3〜7に記載された方法では、製膜性が不十分であるほか、溶媒が高沸点であるため、溶媒除去時に高温に加温する必要があり、クラックが発生したり膜厚が一定にならないなど、フィルム形状が悪化する課題があった。
本発明の課題は、溶解性に優れ、低温で取り扱うことができ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムを得ることのできる液晶ポリエステル樹脂組成物、それから得られる液晶ポリエステル樹脂フィルムおよび該樹脂組成物を用いた積層体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高溶解性のフェノール系化合物に加え、低融点かつ特定の酸解離定数を有するプロトン性溶媒を含む液晶ポリエステル樹脂組成物により、溶液とした場合に溶解性に優れ、かつ低温で取り扱うことができ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は以下のとおりである:
(1)液晶ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、ベンゼン環に結合した水素原子が3つ以上フッ素原子に置換されたフェノール(B)を100〜3000重量部と、融点が30℃以下であり、かつ酸解離定数(pKa)が4〜12であるプロトン性溶媒(C)10〜1500重量部を含有する、液晶ポリエステル樹脂組成物であって、前記液晶ポリエステル樹脂(A)が、液晶ポリエステル樹脂(A)の全構造単位100モル%に対して、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を7モル%以上含む液晶ポリエステル樹脂組成物
(2)上記の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られる液晶ポリエステル樹脂フィルム。
(3)支持体および樹脂層が積層された積層体であって、上記の液晶ポリエステルフィルムから得られる樹脂層の少なくとも一方の面に、支持体が積層された積層体。
(4)上記の液晶ポリエステル樹脂組成物を、支持体上に塗布した後、溶媒を除去する、積層体の製造方法。
(5)上記の方法によって得られた積層体から、支持体を除去することにより液晶ポリエステル樹脂フィルムを得る、液晶ポリエステル樹脂フィルムの製造方法。

本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、溶解性に優れ、かつ低温で取り扱うことができ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムを得ることができる。かかるフィルムは、電気・電子部品や機械部品内のフレキシブルプリント配線板や半導体パッケージなどに使用される積層体に好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<液晶ポリエステル樹脂(A)>
液晶ポリエステル樹脂(A)は、異方性溶融相を形成するポリエステルである。このようなポリエステル樹脂としては、例えば、後述するオキシカルボニル単位、ジオキシ単位、ジカルボニル単位などから異方性溶融相を形成するよう選ばれた構造単位から構成されるポリエステルなどが挙げられる。
次に、液晶ポリエステル樹脂(A)を構成する構造単位について説明する。
オキシカルボニル単位の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸などに由来する構造単位が挙げられる。クラックがなく膜厚が均一で製膜性に優れる観点から、オキシカルボニル単位としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成した構造単位が好ましく、p−ヒドロキシ安息香酸または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する構造単位がより好ましく、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位が特に好ましい。
ジオキシ単位の具体例としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオールから生成した構造単位;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオールから生成した構造単位;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールから生成した構造単位などが挙げられる。クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、ジオキシ単位としては、エチレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニルまたはハイドロキノンから生成した構造単位が好ましく、エチレングリコールまたは4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位がより好ましい。さらには、溶解性に優れる観点からエチレングリコールから生成した構造単位が特に好ましい。
ジカルボニル単位の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸から生成した構造単位などが挙げられる。クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、ジカルボニル単位としては、芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位が好ましく、中でもテレフタル酸またはイソフタル酸から生成した構造単位が特に好ましい。
また、液晶ポリエステル樹脂には、上記構造単位に加えて、p−アミノ安息香酸、p−アミノフェノールなどから生成した構造単位を、液晶性や特性を損なわない程度の範囲でさらに有することができる。
上記の各構造単位を構成する原料となるモノマーは、各構造単位を形成しうる構造であれば特に限定されない。また、そのようなモノマーの水酸基のアシル化物、カルボキシル基のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物などのカルボン酸誘導体などが使用されてもよい。
液晶ポリエステル樹脂(A)は、液晶性を発現したうえで、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位を15モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上である。一方、不融物の生成を抑制し、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位を80モル%以下含むことが好ましい。より好ましくは75モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。
液晶ポリエステル樹脂(A)は、液晶性を発現したうえで、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、液晶ポリエステル樹脂(A)の全構造単位100モル%に対して、芳香族ジオールに由来する構造単位を3モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは4モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上である。一方、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、芳香族ジオールに由来する構造単位を20モル%以下含むことが好ましい。より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
液晶ポリエステル樹脂(A)は、液晶性を発現したうえで、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、液晶ポリエステル樹脂(A)の全構造単位100モル%に対して、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を7モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは12モル%以上である。一方、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を40モル%以下含むことが好ましい。より好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
液晶ポリエステル樹脂(A)は、後述する溶媒への溶解性に優れ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、液晶ポリエステル樹脂(A)の全構造単位100モル%に対して、炭素数2〜4の脂肪族ジオールに由来する構造単位を3モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上である。一方、液晶性を発現したうえで、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、炭素数2〜4の脂肪族ジオールに由来する構造単位を40モル%以下含むことが好ましい。より好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
液晶ポリエステル樹脂(A)は、強度に優れ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、前記液晶ポリエステル樹脂(A)の全構造単位100モル%に対する、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が60モル%以上であることが好ましい。より好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは68モル%以上である。一方、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計の上限は100モル%であるが、液晶ポリエステル樹脂の結晶性を制御することで溶解性に優れ、クラックがなく膜厚が均一で製膜性に優れるフィルムが得られる観点から、90モル%以下であることが好ましい。より好ましくは85モル%以下である。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、クラックがなく膜厚が均一で製膜性に優れるフィルムを得る観点から、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシナフトエ酸に由来する構造単位が好ましく、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位がより好ましい。また、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位は、いずれか一方の構造単位を有し、もう一方の構造単位が0モル%であってもよいが、それぞれが0モル%を超えることが好ましい。
液晶ポリエステル樹脂(A)について、各構造単位の含有量の算出法を以下に示す。まず、液晶ポリエステル樹脂をNMR(核磁気共鳴)試料管に量りとり、液晶ポリエステル樹脂が可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン−d混合溶媒)に溶解する。次に、得られた溶液について、H−NMRスペクトル測定を行い、各構造単位由来のピークの面積比から算出することができる。
液晶ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)は、耐熱性の観点から200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましい。一方、溶解性に優れる観点から、液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、360℃以下が好ましく、340℃以下がより好ましく、320℃以下がさらに好ましい。
融点(Tm)の測定は、示差走査熱量測定により行う。具体的には、まず、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm)を観測する。吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、吸熱ピーク温度(Tm)+20℃の温度でポリマーを5分間保持する。その後、20℃/分の降温条件で室温までポリマーを冷却する。そして、20℃/分の昇温条件でポリマーを加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm)を観測する。本発明における融点(Tm)とは、2回目の昇温過程における該吸熱ピーク温度(Tm)を指す。
液晶ポリエステル樹脂(A)の溶融粘度は、強度に優れることで、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、1Pa・s以上が好ましく、3Pa・s以上がより好ましく、5Pa・s以上がさらに好ましい。一方、溶解性に優れることで、クラックがなく膜厚が均一で製膜性に優れるフィルムを得る観点から、液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度は、35Pa・s以下が好ましく、20Pa・s以下が好ましく、10Pa・s以下がさらに好ましい。
なお、この溶融粘度は、液晶ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃の温度、または液晶ポリエステル樹脂(A)の融点が270℃以下の場合は280℃において、かつ、せん断速度1000/秒の条件下で、高化式フローテスターによって測定した値である。
<液晶ポリエステル樹脂(A)の製造方法>
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂(A)を製造する方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。具体的には、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位、およびエチレングリコールに由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂を例にすると、以下の方法が挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸、4,4’−ジアセトキシビフェニルとテレフタル酸、およびポリエチレンテレフタレ―トのポリマーもしくはオリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートから脱酢酸重縮合反応によって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸、およびポリエチレンテレフタレ―トなどのポリエステルのポリマーもしくはオリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートに無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(3)(1)または(2)の製造方法において出発原料の一部に特開平3−59024号公報のように1,2−ビス(4−ヒドロキシベンゾイル)エタンを用いる方法。
なかでも(2)の方法が、液晶ポリエステル樹脂(A)の重合度の制御に工業的に優れる点から、好ましく用いられる。
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂(A)の製造方法として、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。固相重合法による処理としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、液晶ポリエステル樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕する。粉砕したポリマーまたはオリゴマーを、窒素気流下、または、減圧下において加熱し、所望の重合度まで重縮合することで、反応を完了させる。上記加熱は、液晶ポリエステルの融点−50℃〜融点−5℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間行うことが好ましい。
液晶ポリエステル樹脂(A)の重縮合反応は、無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどを触媒として使用することもできる。
<液晶ポリエステル樹脂組成物>
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂(A)、ベンゼン環に結合した水素原子が3つ以上フッ素原子に置換されたフェノール(B)(以下、溶媒(B)と呼ぶ場合がある)、融点が30℃以下であり、かつ酸解離定数(pKa)が4〜12であるプロトン性溶媒(C)((以下、溶媒(C)と呼ぶ場合がある))を含む。なお、フェノール(B)、プロトン性溶媒(C)は液晶ポリエステル樹脂(A)の溶媒であるが、ここでいう液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂(A)が溶け残っている状態、液晶ポリエステル樹脂(A)が完全に溶解して液状となっている状態、および液晶ポリエステル樹脂(A)が溶解した後に溶液が冷されることにより固化した状態のいずれの状態であってもよい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、溶媒(B)を100〜3000重量部含む。溶媒(B)は液晶ポリエステル樹脂(A)の溶解性に優れる溶媒である。溶媒(B)が100重量部未満であると、加温しても液晶ポリエステル樹脂(A)が溶解しない。溶解性に優れる観点から、溶媒(B)の含有量は150重量部以上が好ましく、200重量部以上がより好ましい。一方、溶媒(B)が3000重量部より多いと、溶液の粘性が低くなり、後述の製造方法では厚みのあるフィルムを均一に製膜できず、さらにクラックが発生しやすくなる。クラックの発生なく、厚みのあるフィルムを均一に製膜できる観点から、溶媒(B)の含有量は2500重量部以下が好ましく、2000重量部以下がより好ましく、1500重量部以下がさらに好ましい。
溶媒(B)の具体例としては、3,4,5−トリフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール、2,3,4−トリフルオロフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール、2,3,4,5−テトラフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノールが挙げられ、特に溶解性に優れる観点から、ペンタフルオロフェノールが好ましい。
このような溶媒(B)は、溶解性に優れるものの、融点が30℃より高く、室温で固体であるため、製膜時に溶液を高温に加温する必要がある。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、より低温で液状にできるように、液晶ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、融点が30℃以下であるプロトン性溶媒(C)を1〜1500重量部さらに含む。融点が30℃より高いと、液晶ポリエステル樹脂の溶液を冷却して固化した状態の組成物を高い温度で再度加熱しなければ液状とならず、生産性が大幅に低下する。また、高温で製膜する必要があり、製膜中に溶媒が蒸発するため、クラックが生じたり、膜厚が不均一となる。より低温で液状とでき、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、溶媒(C)の融点は25℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。溶媒(C)の融点の下限に特に制限はない。
また、溶媒(C)の酸解離定数(pKa)は4〜12である。溶媒(C)のpKaが12より大きいと、液晶ポリエステル樹脂(A)の溶解性が大幅に低下する。溶媒(B)のpKaは、低い方が液晶ポリエステル樹脂の溶解性が向上し、クラックがなく膜厚が均一なフィルムを得ることができる観点から、pKaは11以下が好ましく、10以下がより好ましい。一方、溶媒(C)の酸解離定数(pKa)が4未満であると、酸性度が強いため、液晶ポリエステル樹脂(A)の分解を促進するおそれがあるため、クラックが生じたり、膜厚が不均一となる。クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、pKaは4.5以上が好ましく、5以上がより好ましい。なお、酸解離定数(pKa)は、25℃、水中における数値であり、化学便覧基礎編改訂5版II−331〜II−343(日本化学会編、丸善株式会社発行)に記載の方法によって算出することができる。
また、溶媒(C)の含有量が、液晶ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し1重量部未満であると、液晶ポリエステル樹脂(A)の溶液を冷却して固化した状態の組成物を高い温度で再度加熱しなければ液状とならず、製膜性が大幅に低下する。より低温で液状とでき、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、10重量部以上が好ましく、50重量部がより好ましい。一方、溶媒(C)の含有量が1500重量部より多いと、液晶ポリエステル樹脂(A)の溶解性が大幅に低下するほか、溶液の粘性が低くなり、後述の製造方法では厚みのあるフィルムを均一に製膜できず、さらにクラックが発生しやすくなる。クラックの発生なく、厚みのあるフィルムを均一に製膜できる観点から、溶媒(C)の含有量は1200重量部以下が好ましく、1000重量部以下がより好ましい。
溶媒(C)の種類としては、上記の融点およびpKaの範囲を満たすプロトン性溶媒であれば何でもよいが、液晶ポリエステル樹脂(A)の分解を抑制したうえで溶解性に優れ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、フェノール類、アルコール類が好ましく、フェノール類がより好ましい。上記の融点およびpKaの範囲を満たすアルコール類としては、水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されたフルオロアルコールが挙げられ、なかでもヘキサフルオロイソプロパノールが好ましい。また、上記の融点およびpKaの範囲を満たすフェノール類としては、ベンゼン環上の水素原子の少なくとも一部がアルキル基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基などで置換された化合物が挙げられる。なかでもベンゼン環上の水素原子の少なくとも一部がハロゲン基またはトリフルオロメチル基で置換された化合物が好ましい。このような化合物の具体例としては、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、4−クロロ−2−フルオロフェノール、2−クロロ−4−フルオロフェノール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノールなどが挙げられる。
また、溶媒(C)の沸点は、製膜時に溶媒(B)を低温で除去でき生産性に優れ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。また、溶媒(C)の沸点は、液晶ポリエステル樹脂(A)の溶解性の観点や、製膜時に容易に揮発しにくく、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。
溶媒(B)と溶媒(C)の混合比は、液晶ポリエステル樹脂(A)が溶解する混合比であれば特に制限はないが、溶解性に優れ、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、溶媒(B)と溶媒(C)の全量を100重量%とした場合に、溶媒(B)を35重量%以上とすることが好ましく、45重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。一方、より低温で液状とでき、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、溶媒(B)が99重量%以下であることが好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、生産性に優れ、クラックがなく膜厚が均一でなフィルムが得られる観点から、温度100℃以下で液状であることが好ましい。より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。ここでいう液状とは、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物が入った容器を90度傾けた際に、10秒以内に流動するものをいう。
なお、液晶ポリエステル樹脂(A)の溶解性を損なわない範囲で、溶媒(B)および溶媒(C)以外の溶媒を加えてもよい。また、液晶ポリエステル樹脂組成物を必要に応じて、フィルターなどによってろ過し、組成物中に含まれる微細な異物を除去してもよい。
<充填材>
本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物に公知の充填材、添加剤等を含有させてもよい。
充填材としては、例えば、繊維状充填材、ウィスカー状充填材、板状充填材、粉末状充填材、粒状充填材などの充填材を挙げることができる。具体的には、繊維状充填材またはウィスカー状充填材としては、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、セルロースナノファイバー、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、および針状酸化チタンなどが挙げられる。板状充填材としては、マイカ、タルク、カオリン、ガラスフレーク、クレー、二硫化モリブデン、およびワラステナイトなどが挙げられる。粉状または粒状の充填材としては、シリカ、ガラスビーズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などが挙げられる。上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。また、充填材は2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ハイドロキノン、ホスファイト、チオエーテル類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料または顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてのカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤から選択される通常の添加剤を配合することができる。
<液晶ポリエステル樹脂フィルムおよび積層体>
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂フィルムや積層体を製造するための原料として用いることができる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂フィルムは、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られるものである。例えば、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を、支持体上に塗布した後、前記溶媒(B)および前記溶媒溶媒(C)を除去して積層体を得た後、得られた積層体から支持体を除去する方法で液晶ポリエステル樹脂フィルムを製造することができる。
また、本発明の積層体は、支持体および樹脂層が積層された積層体であって、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られる樹脂層の少なくとも一方の面に、支持体が積層された積層体である。積層体は、例えば、下記(I)〜(IV)の方法で製造することができる。
(I)本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を、支持体上に塗布した後に、溶媒を除去する方法。
(II)上記の方法により製造されたフィルムを加熱圧着により支持体に貼付する方法。
(III)上記の方法により製造されたフィルムと支持体とを接着剤により貼付する方法。
(IV)上記の方法により製造されたフィルム上に支持体を蒸着により形成する方法。
容易に、均一な膜厚の樹脂層を形成することができる観点から、(I)の方法が好ましい。
上記液晶ポリエステル樹脂フィルムの製造方法、および上記(I)〜(IV)の積層体の製造方法に使用する支持体としては、特に制約は無く、金属、ガラス、高分子などから選ばれる。上記液晶ポリエステル樹脂フィルムの製造方法、および上記(I)の方法に用いられる支持体においては、使用する溶媒に対して耐性があることが重要である。支持体は金属、ガラス、高分子などの単体であっても、複合素材であってもよい。高分子フィルムとしては、絶縁性を有するポリイミドフィルム、液晶ポリエステルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。上記(I)〜(III)の方法において、支持体が金属箔である場合や、上記(IV)の方法において、支持体が金属層である場合に使用される金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなどが挙げられる。フレキシブルプリント配線板用途などでは銅が好ましい。支持体として金属箔を用いた場合、液晶ポリエステルフィルムを分離することなく、プリント配線板用の金属張積層板として用いてもよい。
以下、上記(I)の方法により積層体を製造する方法を説明する。
支持体に液晶ポリエステル樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、ローラーコート法、ディップコート法、スプレイコーター法、スピナーコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法等の各種手段が挙げられ、これらの手段によって液晶ポリエステル樹脂組成物を、支持体上に平坦かつ均一に流延して塗膜を形成する。
続いて、塗膜中の溶媒を除去することにより、支持体の表面に液晶ポリエステル樹脂層が形成される。溶媒の除去方法は、溶媒の蒸発により行うことが好ましい。溶媒を蒸発する方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられる。溶媒の急激な蒸発を抑制し、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、加熱により溶媒を除去することが好ましい。加熱温度は、溶媒が揮発する温度であれば特に限定されないが、溶媒の急激な蒸発を抑制し、クラックがなく膜厚が均一なフィルムが得られる観点から、溶媒の沸点より低い温度であることが好ましい。したがって、室温より高く、溶媒の沸点より低い温度で加熱することが好ましい。
このようにして積層体を形成した後、必要に応じて熱処理を行ってもよい。熱処理の方法は特に限定されるものではなく、熱風オーブン、減圧オーブン、ホットプレート等の装置を用いて行うことができる。また、熱処理は、大気圧下、あるいは支持体や液晶ポリエステル樹脂が劣化しない範囲で、加圧下や減圧下で行ってもよい。また、液晶ポリエステル樹脂の劣化を抑制する観点から、熱処理を不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、窒素気流下、液晶ポリエステル樹脂の融点−50℃〜融点−5℃の範囲から、融点+5℃〜融点+50℃の範囲まで、1〜50時間かけて昇温することで行うことができる。
このようにして得られる積層体の構造としては、例えば、フィルムと支持体との二層構造、フィルムの両面に支持体を積層させた三層構造、支持体の両面にフィルムを積層させた三層構造、さらにはフィルムと支持体を交互に四層以上積層させた多層構造などが挙げられる。
上記の方法により得られた液晶ポリエステル樹脂フィルムまたは積層体は、例えば、各種コンピュータ、OA機器、AV機器などに代表される電気・電子部品や電気・電子部品を実装したフレキシブルプリント配線板、リジットプリント配線板などの回路基板;車載用半導体、産業用半導体などに用いられる半導体パッケージ;透明導電性フィルムの基材、偏光フィルムの基材、各種調理食品用および電子レンジ加熱用の包装フィルム、電磁波シールド用フィルム、抗菌性フィルム、気体分離用フィルムなどに用いることができる。クラックがなく均一な膜厚のフィルムが得られることから、複数枚積層することを特徴とする積層板を用いるフレキシブルプリント配線板、リジットプリント配線板などの回路基板や、半導体パッケージに好適に使用される。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。実施例中、液晶ポリエステル樹脂(A)の組成および特性評価は以下の方法により測定した。
(1)液晶ポリエステル樹脂(A)の組成分析
液晶ポリエステル樹脂の組成分析は、H−核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定により実施した。液晶ポリエステル樹脂をNMR試料管に50mg秤量し、溶媒(ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン−d=65/35(重量比)混合溶媒)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃でH−NMR測定を実施し、7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位に由来するピークの面積比から組成を分析した。
(2)液晶ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)
示差走査熱量計DSC−7(パーキンエルマー製)を用いて、液晶ポリエステル樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)の観測後、Tm+20℃の温度で5分間保持した。その後、20℃/分の降温条件で室温までいったん冷却し、再度20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)を観測した。本発明においては、吸熱ピーク温度(Tm)を融点(Tm)と記載する。
(3)液晶ポリエステル樹脂(A)の溶融粘度
高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用いて、Tm+10℃、またはTmが270℃未満の場合は280℃で、せん断速度1000/sの条件で液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度を測定した。
[製造例1]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸960重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で80分反応させた後、145℃から320℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−1)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−1)について組成分析を行ったところ、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位は66.7モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位は6.3モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は16.7モル%、エチレングリコールに由来する構造単位は10.4モル%であった。また、Tmは313℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
[製造例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸901重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート346重量部および無水酢酸884重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で85分反応させた後、145℃から290℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を290℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−2)について組成分析を行ったところ、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位は56.9モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位は5.9モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は21.6モル%、エチレングリコールに由来する構造単位は15.7モル%であった。また、Tmは263℃、溶融粘度は13Pa・sであった。
[製造例3]
攪拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル352重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1314重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で90分反応させた後、145℃から330℃までを4時間かけて昇温した。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが10kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−3)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−3)について組成分析を行ったところ、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位は53.8モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位は16.2モル%、ハイドロキノンに由来する構造単位は6.9%、テレフタル酸に由来する構造単位は15.0モル%、イソフタル酸に由来する構造単位は8.1モル%であった。また、Tmは310℃、溶融粘度は13Pa・sであった。
[製造例4]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器に6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸725重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル479重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸556重量部、酢酸ナトリウム0.32重量部および無水酢酸1011重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた後、365℃まで4時間かけて昇温した。その後、365℃で1.5時間保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−4)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−4)について組成分析を行ったところ、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する構造単位は42.8モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位は28.6モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する構造単位は28.6モル%であった。また、Tmは345℃、溶融粘度は13Pa・sであった。
[製造例5]
撹拌翼および留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸528重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート865重量部および無水酢酸581重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で90分反応させた後、145℃から290℃まで4時間かけて昇温した。その後、重合温度を290℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−5)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−5)について組成分析を行ったところ、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位は27.0モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位は4.8モル%、テレフタル酸に由来する構造単位は36.5モル%、エチレングリコールに由来する構造単位は31.7モル%であった。また、Tmは210℃、溶融粘度は20Pa・sであった。
実施例1〜13、比較例1〜5
液晶ポリエステル樹脂(A)を粗粉砕機で粉砕して粉末とし、フェノール類(B)およびプロトン性溶媒(C)を表1に示す量で混合し、以下(4)〜(6)の評価を行った。
なお、各実施例および比較例において用いた、フェノール類(B)およびプロトン性溶媒(C)は次に示すとおりである。融点、沸点、酸解離定数(pKa)は文献値を引用した。
(B−1)ペンタフルオロフェノール(融点34℃、沸点143℃、pKa5.5)
(C−1)o−クロロフェノール(融点8℃、沸点175℃、pKa8.5)
(C−2)m−フルオロフェノール(融点8℃、沸点178℃、pKa9.3)
(C−3)m−クレゾール(融点8℃、沸点203℃、pKa10.0)
(C−4)ヘキサフルオロイソプロパノール(融点−4℃、沸点59℃、pKa9.3)
(C’−5)1,1,2,2−テトラクロロエタン(融点−43℃、沸点147℃)
(4)溶解性
樹脂粉末と溶媒を、溶媒(B)および溶媒(C)の沸点のいずれか低い方の温度より10℃低い温度で24時間攪拌し、液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。液晶ポリエステル樹脂が完全に溶解し、褐色透明で均一な溶液となったものを〇、液晶ポリエステル樹脂が褐色透明となっているが、不均一な溶液であるものを△、液晶ポリエステル樹脂が溶け残っているものを×として評価した。〇、△、×の順で溶解性に優れる。
(5)製膜性(液状化温度、膜厚均一性)
上記(4)の評価において、〇あるいは△であった液晶ポリエステル樹脂組成物について、25℃まで冷却し液晶ポリエステル樹脂組成物を固化させた後、10分ごとに5℃ずつ昇温し、樹脂組成物が液状化する温度(液状化温度)を測定した。液状化温度が低いほど製膜性に優れる。続いて、得られた溶液をアルミホイル箔(12μm厚)上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、ホットプレート上で液状化温度に加熱して溶媒を除去した後、各液晶ポリエステル樹脂の融点−10℃の温度で1時間熱処理を行い、液晶ポリエステル樹脂フィルム(平均膜厚50μm)を作製した。得られた液晶ポリエステル樹脂フィルムを剥がし、任意の30点について、マイクロメーターを用いて膜厚を測定した。この30点の膜厚について、(標準偏差)÷(30点の平均膜厚)(%)を算出した。この値が小さいほど、膜厚が均一であり、製膜性に優れる。また、溶液の粘性が低いなどして、平均膜厚50μmに満たなかった場合は、前記溶液塗布と溶媒除去を繰り返し、平均膜厚50μmの液晶ポリエステル樹脂フィルムを作製した。
(6)製膜時のクラック発生
上記(4)の評価を行った液晶ポリエステル樹脂組成物について、得られた溶液をアルミホイル箔(12μm厚)上にフィルムアプリケーターを用いて塗布し、排気雰囲気下、ホットプレート上で(4)で評価した液状化温度+20℃に加熱して溶媒を除去した後、各液晶ポリエステル樹脂の融点−10℃で1時間熱処理を行い、平均膜厚が50μmとなるように液晶ポリエステル樹脂フィルムを作製した。このとき、1cm以上のクラックが発生したものを×、1cm未満のクラックが発生したものを△、クラックが発生しなかったものを○として、耐クラック性を評価した。〇、△、×の順で耐クラック性に優れる。また、溶液の粘性が低いなどして、平均膜厚50μmに満たなかった場合は、前記溶液塗布と溶媒除去を繰り返し、平均膜厚50μmとなった際のクラックの発生を評価した。
製造例1〜5で得られたペレットについて、上記(1)〜(3)に記載の方法で測定した評価結果、および実施例1〜13、比較例1〜5について、(4)〜(7)に記載の方法で各特性を測定した評価結果を表1に示す。
Figure 0006705538
表1の結果から、前記フェノール類および前記プロトン性溶媒を含む本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いることにより、クラックがなく膜厚が均一なフィルムを得ることができる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、クラックがなく膜厚が均一なフィルムを得ることができる。本発明の液晶ポリエステル樹脂フィルムおよび積層体は、複数枚積層することを特徴とする積層板を用いるフレキシブルプリント配線板、リジットプリント配線板などの回路基板、および半導体パッケージへの使用に好適である。

Claims (10)

  1. 液晶ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、ベンゼン環に結合した水素原子が3つ以上フッ素原子に置換されたフェノール(B)を100〜3000重量部と、融点が30℃以下であり、かつ酸解離定数(pKa)が4〜12であるプロトン性溶媒(C)10〜1500重量部を含有する、液晶ポリエステル樹脂組成物であって、前記液晶ポリエステル樹脂(A)が、液晶ポリエステル樹脂(A)の全構造単位100モル%に対して、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位を7モル%以上含む液晶ポリエステル樹脂組成物
  2. 前記プロトン性溶媒(C)はフェノール類である、請求項1記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  3. 前記プロトン性溶媒(C)は、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、4−クロロ−2−フルオロフェノール、2−クロロ−4−フルオロフェノール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノールから選択される少なくとも1つ以上の化合物である請求項1または2に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  4. 前記液晶ポリエステル樹脂(A)が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位の合計が60〜100モル%である液晶ポリエステル樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  5. 前記液晶ポリエステル樹脂(A)が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、炭素数2〜4の脂肪族ジオールに由来する構造単位を3〜40モル%含む、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  6. 温度100℃以下において液状である、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られる液晶ポリエステル樹脂フィルム。
  8. 支持体および樹脂層が積層された積層体であって、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られる樹脂層の少なくとも一方の面に、支持体が積層された積層体。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を、支持体上に塗布した後、前記フェノール(B)および前記プロトン性溶媒(C)を除去する、積層体の製造方法。
  10. 請求項9に記載の方法によって得られた積層体から、支持体を除去することにより液晶ポリエステル樹脂フィルムを得る、液晶ポリエステル樹脂フィルムの製造方法。
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