図1を参照して自動運転制御について説明する。図1は、比較例及び本実施の形態に係る自動運転システムの説明図である。なお、図1A及び図1Bは比較例に係る自動運転システムの一例、図1Cは本実施の形態に係る自動運転システムの一例を示している。
図1A及び図1Bに示すように、自動運転制御は主に高速道路の走行中に実施されるものであり、自動運転車両1に設けられたレーダー装置9から四輪車2や二輪車3等の周辺車両に向けてレーダー波が送出されて、周辺車両の車体からの反射波をレーダー装置9で受けて周辺車両の存在を検知している。しかしながら、図1Aに示すように、周辺車両が比較的検知し易い四輪車2の場合であっても、悪天候時には雨や霧等によって、四輪車2に向かうレーダー波も、四輪車2で反射されたレーダー波も減衰されて、レーダー装置9の検知性能が低下するという問題がある。
また、図1Bに示すように、周辺車両が二輪車3の場合には、車両前後方向からのレーダー波に対して反射面積が狭く、さらに車体形状に曲面が多く反射波を多方向に反射し易いため、自動運転車両1まで反射波を届かせることができない可能性がある。レーダー波としては、ミリ波やレーザー波が使用されるが、これらのレーダー波は金属部分では反射される一方で、樹脂部分やガラスを透過して反射されないという性質がある。よって、仮に、大部分のレーダー波を反射できたとしても、二輪車3は反射面積が狭い上に、スクータ等のように樹脂部品を多用しているタイプの二輪車3では、レーダー装置9の検知性能が低下していた。
また、例えば、二輪車3のエンジンが略水平タイプのエンジンの場合には、車両前後方向からのレーダー波に対する反射面積が特に狭くなる。さらに、二輪車3のエンジンは前輪と後輪の間に配置されているが、ゴム製のタイヤによってエンジンに向かうレーダー波もエンジンに反射されたレーダー波も大きく減衰されてしまう。このため、略水平エンジンを持つ二輪車や、太目のタイヤを持つロードスポーツタイプの二輪車では、エンジンで反射されたレーダー波が大幅に減衰されて、レーダー装置9の検知性能がさらに低下していた。さらに、二輪車3のフレームは断面が円形のパイプ材を多く使用している場合があり、このようなパイプ材はレーダー波の反射方向が特定方向に向き難い。
そこで、本件発明者は、レーダー波の受け手側である周辺車両が、レーダー波の送り手側の自動運転車両1に向けて自車両の存在を積極的に訴えかける必要がある点に着目して本発明に至った。本発明の骨子は、図1Cに示すように、レーダー波の受け手側の車両に通信装置10を設けて、通信装置10において自動運転車両1から送出されたレーダー波を増幅して送り返すことである。これにより、悪天候時や周辺車両が二輪車の場合であっても、自動運転車両1にレーダー波を積極的に送り返して、周辺車両の存在を考慮した自動運転を促すことができる。
以下、図2を参照して、通信装置について説明する。図2は、本実施の形態に係る通信装置の模式図である。図2Aは通信装置の正面模式図、図2Bは通信装置の側面模式図をそれぞれ示している。なお、図2に示す通信装置は一例を示すものであり、適宜変更が可能である。また、本実施の形態に係る通信装置では、主にレーダー波として、ミリ波、レーザー波が適用される構成について説明するが、レーダー波として使用可能な電波が適用されてもよい。
図2A及び図2Bに示すように、通信装置10は、自動運転車両1(図1C参照)から送出されたレーダー波を受信アンテナ13で受信して装置ケース11内の増幅器14で増幅した後、送信アンテナ15から自動運転車両1に送信するように構成されている。受信アンテナ13及び送信アンテナ15は、装置ケース11の上面に設けられており、装置ケース11の上方を覆うカバー12によって保護されている。カバー12は、レーダー波を透過させるようにガラス又は樹脂等の材質で形成されている。受信アンテナ13で受信されたレーダー波は、装置ケース11内の受信回路(受信部)を通じて電気信号として増幅器14に出力される。
増幅器14には装置ケース11の電源プラグ16を通じて電力が取り込まれており、増幅器14ではこの電力を利用して電気信号(レーダー波)が所定レベルまで増幅される。増幅後の電気信号は送信回路(送信部)を通じて送信アンテナ15に出力され、送信アンテナ15からレーダー波として送信される。なお、レーダー波を受けて増幅した後にレーダー波を送り返すまでのタイムラグは約100nsであり、二輪車や四輪車の最高速度を想定しても自動運転に影響を与えることがない。また、増幅器14では、レーダー波の減衰量を補うように増幅してもよいし、所定倍率だけレベルを上げるように増幅してもよい。
装置ケース11には車両への取り付け用にブラケット17が設けられており、ブラケット17の一対の取付穴18で車両にネジ止めすることで、通信装置10が車両に固定される。通信装置10は、前方側及び後方側の自動運転車両1に検知されるように、車両の前側及び後側にそれぞれ1つずつ配置されている。このように構成された通信装置10は、自動運転車両1から送られたレーダー波を増幅して自動運転車両1に送り返すための最小限の部材だけで構成されている。このため、通信装置10が小型化されており、車両における様々な位置に配置することが可能になっている。
以下、車両に対する通信装置の配置例について詳細に説明する。先ず、四輪車における通信装置の配置例について3つのボディタイプ毎に説明する。図3は、本実施の形態に係るワゴンタイプの四輪車に対する通信装置の配置例を示す四面図である。図4は、本実施の形態に係るセダンタイプの四輪車に対する通信装置の配置例を示す四面図である。図5は、本実施の形態に係るトラックタイプの四輪車に対する通信装置の配置例を示す四面図である。なお、図3から図5において、説明の便宜上、通信装置の配置箇所の候補は円で示している。
図3に示すように、ワゴンタイプの四輪車20は、正面視及び背面視で車両の輪郭に重なるように通信装置10(図2参照)が配置される。具体的には、四輪車20の前側では、ボンネット21の中央位置21a、フロントグリル22の中央位置22a、フロントバンパ23におけるナンバープレート24の側方位置23aが通信装置10の有効な配置箇所である。これらの配置箇所に通信装置10が配置されると、前方から送出されたレーダー波を車体の前側で良好に受信することができる。ボンネット21に通信装置10が配置される場合には、車両のデザイン性が阻害されることなく、さらに空気抵抗にならないように通信装置10が配置されることが好ましい。
また、四輪車20の前側では、ヘッドライト25及びフロントバンパ23はレーダー波を透過させる材質で形成されているため、ヘッドライト25の内側位置25aやフロントバンパ23の裏側位置23bも通信装置10の有効な配置箇所である。通信装置10がヘッドライト25やフロントバンパ23によって隠されるため、車両のデザイン性が通信装置10の影響を受けることがない。また、サイドミラー26の周辺位置26aに通信装置10を配置することも可能である。サイドミラー26の周辺位置26aとして、例えば、サイドミラー26のハウジングの前面、又はハウジング内に通信装置10が配置されてもよい。
フロントウインドウ27の内側周辺では、ルームミラー28の周辺位置28a、インストルメントパネル29の上面位置29aが通信装置10の有効な配置箇所である。通信装置10が車内に配置されることで、乗員による保守点検を容易にすることができる。ルームミラー28の周辺位置28aとして、例えば、ルームミラー28の前面、又はフロントウインドウ27とルームミラー28の間に通信装置10が配置されてもよい。正面視においてルームミラー28に重なるように通信装置10が配置されることで、通信装置10が乗員の目に入ることがなく、室内のデザイン性が通信装置10の影響を受けることがない。
四輪車20の後側では、リヤドア31の周辺位置31a、リヤバンパ32におけるナンバープレート33の側方位置32aが通信装置10の有効な配置箇所である。これらの配置箇所に通信装置10が配置されると、後方から送出されたレーダー波を車体の後側で良好に受信することができる。また、四輪車20の後側では、レーダー波を透過させる材質で形成されたリヤコンビネーションランプ34の内側位置34aやリヤバンパ32の裏側位置32bも通信装置10の有効な配置箇所である。通信装置10がリヤコンビネーションランプ34やリヤバンパ32によって隠されるため、車両のデザイン性が通信装置10の影響を受けることがない。
リヤウインドウ35の内側周辺では、ハイマウントストップランプ36の周辺位置36aが通信装置10の有効な配置箇所である。これにより、通信装置10が車内に配置されることで、乗員による保守点検を容易にすることができる。ハイマウントストップランプ36の周辺位置36aとして、例えば、ハイマウントストップランプ36の内側、又はリヤウインドウ35とハイマウントストップランプ36の間に通信装置10が配置されてもよい。正面視においてハイマウントストップランプ36に重なるように通信装置10が配置されることで、通信装置10が乗員の目に入ることがなく、室内のデザイン性が通信装置10の影響を受けることがない。
また、四輪車20は、鋼板で覆われている部分が多く、鋼板でレーダー波を反射しているが、デザイン上、空気力学上、鋼板の表面に通信装置10を配置することが難しい。このため、鋼板の表面に通信装置10を配置する場合には、ルーフ37の上面位置37aが通信装置10の有効な配置候補である。ルーフ37上に通信装置10が配置されることで、通信装置10が乗員の邪魔になり難く、デザイン上、空気力学上も車両に大きな影響を与えることがない。
ヘッドライト25、リヤコンビネーションランプ34、ハイマウントストップランプ36等に通信装置10を配置する構成を例示したが、その他の灯火器類と共に配置されてもよい。通信装置10は電源を必要としているため、灯火器類と共に配置すると配線を短くすることが可能である。このように、四輪車20の適切な配置箇所に通信装置10を配置することで、自動運転車両1から送出されたレーダー波を良好に受信して、通信装置10で増幅した後に自動運転車両1に送り返すことができる。よって、増幅されたレーダー波が自動運転車両1に向けて送信されるため、レーダー波が霧や雨等の影響によって減衰しても、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。
図4に示すように、セダンタイプの四輪車40は、ワゴンタイプの四輪車20における通信装置10の各配置箇所に加え、シート後方のトリム56の上面位置56aに通信装置10の配置箇所が設けられている。すなわち、四輪車40の前側では、ボンネット41の中央位置41a、フロントグリル42の中央位置42a、フロントバンパ43の中央位置43a、ヘッドライト45の内側位置45a、フロントバンパ43の裏側位置43b、サイドミラー46の周辺位置46a、ルームミラー47の周辺位置47a、インストルメントパネル48上面位置48aが通信装置10の有効な配置箇所である。なお、ボンネット41上にターボ用の外気吸入口が設けられている場合には、外気吸入口に通信装置10が配置されてもよい。
四輪車40の後側では、リヤドア51の周辺位置51a、リヤバンパ52におけるナンバープレート53の下方位置52a、リヤコンビネーションランプ54の内側位置54a、ハイマウントストップランプ55の周辺位置55a、シート後方のトリム56の上面位置56aが通信装置10の有効な配置箇所である。さらに、四輪車40のルーフ57の上面位置57aも通信装置10の有効な配置候補である。セダンタイプの四輪車40においても、通信装置10が配置されることで、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。
図5に示すように、トラックタイプの四輪車60は、後側に荷台72を有しているため、他のボディタイプと比べて通信装置10の有効な配置箇所が少なくなっている。すなわち、四輪車60では、ボンネット61の中央位置61a、フロントグリル62の中央位置62a、フロントバンパ63におけるナンバープレート64の側方位置63a、ヘッドランプ65の内側位置65a、フロントバンパ63の裏側位置63b、サイドミラー66の周辺位置66a、ルームミラー67の周辺位置67a、インストルメントパネル68の上面位置68a、ルーフ69の上面位置69aが通信装置10の有効な配置箇所である。
また、四輪車60のキャビン71の後側では、運転席と助手席の中間位置71aも通信装置10の有効な配置箇所になっている。トラックタイプの四輪車60においても、通信装置10が配置されることで、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。
なお、図3から図5に示すように、四輪車20、40、60では、上記した通信装置10の配置箇所のいずれに通信装置10が配置されてもよいが、四輪車20、40、60の前側と後側のそれぞれ1箇所に通信装置10が配置されることが好ましい。また、上記した配置箇所に通信装置10が配置される構成が好ましいが、正面視及び背面視で車両の輪郭に通信装置10の少なくとも一部が重なるように配置されればよい。
また、四輪車20、40、60では、通信装置10から送信されるレーダー波が人体を通過しないように通信装置10が配置されている。このため、通信装置10から送信されるレーダー波が、人体の水分等によって減衰して電波レベルが低下することがない。また、通信装置10は、前方側及び後方側の自動運転車両1(図1参照)のバンパからルーフの高さ範囲を狙ってレーダー波を送信している。自動運転車両1では、バンパからルーフまで高さ範囲にレーダー装置9(図1参照)が配置されることが一般的なため、自動運転車両1に車両の存在を検知させ易くしている。
続いて、二輪車における通信装置の配置例について4つタイプ毎に説明する。図6は、本実施の形態に係るスクータタイプの二輪車に対する通信装置の配置例を示す図である。図7は、本実施の形態に係るアメリカンタイプの二輪車に対する通信装置の配置例を示す図である。図8及び図9は、本実施の形態に係るネイキッドタイプの二輪車に対する通信装置の配置例を示す図である。図10は、本実施の形態に係るスーパースポーツタイプの二輪車に対する通信装置の配置例を示す図である。なお、図6から図10において、説明の便宜上、通信装置の配置箇所の候補は円で示している。
図6に示すように、スクータタイプの二輪車80は、車両前後方向では車体の前端から後端までの範囲、車幅方向ではハンドル81の両端よりも内側の範囲に通信装置10が配置される。この範囲に通信装置が配置されると、二輪車の横転時にハンドル81が最初に路面に接するため、横転時の衝撃によって通信装置10が破損することが防止される。また、二輪車80は、フロントフェンダー82及びリヤフェンダー83の下端よりも上方に通信装置10が配置される。このため、前輪84や後輪85によって巻き上げられた泥や砂が通信装置10に付着し難くなり、泥や砂による通信装置10の送受信性能の劣化が防止される。
具体的には、二輪車80の前側では、ウインドシールド86の下部位置86a、フロントカウル87の前部位置87a、フロントレッグシールド88の上部位置88a、フロントフェンダー82の上面位置82aが通信装置10の有効な配置箇所である。これらの配置箇所に通信装置10が配置されると、前方から送出されたレーダー波を車体の前側で良好に受信することができる。ウインドシールド86の下部位置86aとして、例えば、ウインドシールド86の外側に通信装置10が配置されてもよいし、ウインドシールド86の内側に通信装置10が配置されてもよい。
フロントカウル87、フロントレッグシールド88がレーダー波を透過させる材質で形成されているため、フロントカウル87及びフロントレッグシールド88の裏面に通信装置10が配置されてもよい。また、二輪車80の前側では、ヘッドランプ91、ポジションランプ92も樹脂等で形成されているため、ヘッドランプ91、ポジションランプ92の内側位置91a、92aも通信装置10の有効な配置箇所である。通信装置10が、フロントカウル87、フロントレッグシールド88、ヘッドランプ91、ポジションランプ92によって隠されることで、車両のデザイン性が通信装置10の影響を受けることがない。
二輪車80の後側では、シート93の後方位置93a、リヤキャリア94の下方位置94a、リヤカバー95の後部位置95a、リヤフェンダー83の上面位置83aが通信装置10の有効な配置箇所である。これらの配置箇所に通信装置10が配置されると、後方から送出されたレーダー波を車体の後側で効率的に受信することができる。また、リヤカバー95がレーダー波を透過させる材質で形成されているため、リヤカバー95の裏面に通信装置10が配置されてもよい。また、テールランプ97、リヤコンビネーションランプ98の内側位置97a、98aも通信装置10の有効な配置箇所である。通信装置10がリヤカバー95、テールランプ97、リヤコンビネーションランプ98によって隠されることで、車両のデザイン性が通信装置10の影響を受けることがない。
車幅方向ではハンドル81の両端よりも内側に通信装置10が配置される構成を例示したが、ハンドル81の両端よりも外側のバックミラー99の表面位置99aに通信装置10が配置されてもよい。バックミラー99のアームは可撓性を有しているため、二輪車80が横転して路面からバックミラー99に外力が加わっても、アームが変形してバックミラー99を逃がして通信装置10の破損が防止される。また、ヘッドランプ91、ポジションランプ92、テールランプ97、リヤコンビネーションランプ98以外の灯火器類と共に通信装置10が配置されて、通信装置10の配線を短くするようにしてもよい。
このように、二輪車80の適切な配置箇所に通信装置10を配置することで、自動運転車両1(図1参照)から送出されたレーダー波を良好に受信して、通信装置10で増幅した後に自動運転車両1に送り返すことができる。よって、反射面積の狭い略水平タイプのエンジンを有するスクータタイプの二輪車80であっても、増幅されたレーダー波が自動運転車両1に向けて送信されるため、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。また、前輪84及び後輪85よりも上方に通信装置10が配置されているため、レーダー波が前輪84及び後輪85のタイヤによって減衰することがない。
図7に示すように、アメリカンタイプの二輪車100は、スクータタイプの二輪車80と同様に、車両前後方向では車体の前端から後端までの範囲、車幅方向ではハンドル101の両端よりも内側の範囲、高さ方向ではフェンダーの上方範囲に通信装置10が配置される。また、アメリカンタイプの二輪車100は、フロントカウルが設けられていないため、スクータタイプの二輪車80と比べて通信装置10の有効な配置箇所が少なくなっている。具体的には、二輪車100の前側では、ヘッドランプ102の下部位置102a、フロントフェンダー103の上面位置103a、燃料タンク104の前部位置104a、エンジン105上部の前方位置105aが通信装置10の有効な配置箇所である。
ヘッドランプ102の下部位置102aとして、例えば、一対のフロントフォーク106の間に通信装置10が配置されてもよい。燃料タンク104の前部位置104aとして、例えば、燃料タンク104の前部における左右片側に通信装置10が配置されてもよい。エンジン105上部の前方位置105aとして、例えば、ダウンチューブ107の上部に通信装置10が配置されてもよい。これらの配置箇所に通信装置10が配置されると、前方から送出されたレーダー波を車体の前側で良好に受信することができる。
二輪車100の後側では、シート109の後部位置109a、テールランプ111の下方位置111a、リアサスペンション112の後部位置112aが通信装置10の有効な配置箇所である。筒状のリアサスペンション112の後部位置112aに通信装置10が配置される場合には、通信装置10の外径形状を筒状にして、同乗者の足に配慮すると共にデザイン上の統一感が得られるようにしている。また、ハンドル101の両端よりも外側では、バックミラー108の表面位置108aに通信装置10が配置されてもよい。このように、アメリカンタイプの二輪車100においても、通信装置10を配置することで、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。
図8に示すように、ネイキッドタイプの二輪車120は、他のタイプの二輪車と同様に、車両前後方向では車体の前端から後端までの範囲、車幅方向ではハンドル121の両端よりも内側の範囲、高さ方向ではフェンダーの上方範囲に通信装置10が配置される。また、この二輪車120は、フロントカウルが設けられていないため、スクータタイプの二輪車80と比べて通信装置10の有効な配置箇所が少なくなっている。具体的には、二輪車120の前側では、ヘッドランプ122の上部位置122a、ヘッドランプ122の下部位置122b、フロントフォーク123の間位置123aが通信装置10の有効な配置箇所である。
二輪車120の後側では、テールランプ125の下方位置125a、リヤフェンダー126の表面位置126a、リアサスペンション127の後部位置127aが通信装置10の有効な配置箇所である。筒状のリアサスペンション127の後部位置127aに通信装置10が配置される場合には、通信装置10の外径形状を筒状にして、同乗者の足に配慮すると共にデザイン上の統一感が得られるようにしている。また、ハンドル121の両端よりも外側では、バックミラー124の表面位置124aに通信装置10が配置されてもよい。このように、ネイキッドタイプの二輪車120においても、通信装置10を配置することで、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。
図9に示すように、ハーフカウル137付きのネイキッドタイプの二輪車130は、他のタイプの二輪車と同様に、車両前後方向では車体の前端から後端までの範囲、車幅方向ではハンドル131の両端よりも内側の範囲、高さ方向ではフェンダーの上方範囲に通信装置10が配置される。具体的には、二輪車130の前側では、ヘッドランプ132の上方位置132a、フロントフェンダー133の上面位置133a、エンジン134の上部の前方位置134aが通信装置10の有効な配置箇所である。
エンジン134上部の前方位置134aとして、例えば、ダウンチューブ136の上部に通信装置10が配置されてもよい。この場合、上下方向ではハーフカウル137とフロントフェンダー133の間、車幅方向では一対のフロントフォーク138の間に通信装置10が配置される。また、ハーフカウル137がレーダー波を透過させる材質で形成されているため、ハーフカウル137の裏面に通信装置10が配置されてもよい。
二輪車130の後側では、テールランプ139の下方位置139a、リヤフェンダー141の表面位置141aが通信装置10の有効な配置箇所である。また、ハンドル131の両端よりも外側では、バックミラー135の表面位置135aに通信装置10が配置されてもよい。このように、ハーフカウル137付きのネイキッドタイプの二輪車130においても、通信装置10を配置することで、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。
図10に示すように、スーパースポーツタイプの二輪車150は、他のタイプの二輪車と同様に、車両前後方向では車体の前端から後端までの範囲、車幅方向ではハンドル151の両端よりも内側の範囲、高さ方向ではフェンダーの上方範囲に通信装置10が配置される。具体的には、ヘッドランプ152の内側位置152a、ラジエータ153の前部位置153aが通信装置10の有効な配置箇所である。ラジエータ153の前部位置153aとして、例えば、タイヤの上方に位置付けられるように、フロントカウル155とフロントフェンダー156の間に通信装置10が配置される。
二輪車150の後側では、リヤフレームカバー157の後部位置157aが通信装置10の有効な配置箇所である。また、ハンドル151の両端よりも外側では、バックミラー154の表面位置154aに通信装置10が配置されてもよい。このように、スーパースポーツタイプの二輪車150においても、通信装置10を配置することで、自動運転車両1に対して車両の存在を積極的に検知させることが可能になっている。また、二輪車150に通信装置10を配置する構成について説明したが、運転者161のヘルメット162の所定位置162aに通信装置10を設ける構成にしてもよい。これにより、二輪車150に通信装置10を配置することなく、自動運転車両1に向けてレーダー波を良好に送り返すことが可能になる。
ヘルメット162は樹脂等のレーダー波を透過させる材質で形成されているため、ヘルメット162の内側に通信装置10が配置される構成にしてもよい。また、運転者161のスーツに通信装置10が配置される構成にしてもよい。
なお、図6から図10に示すように、二輪車80、100、120、130、150では、上記した通信装置10の配置箇所のいずれに通信装置10が配置されてもよいが、二輪車80、100、120、130、150の前側と後側のそれぞれ1箇所に通信装置10が配置されることが好ましい。通信装置10は、上記した配置箇所に配置されることが好ましいが、正面視及び背面視で車両の輪郭に通信装置10の少なくとも一部が接するように配置されればよい。また、通信装置10は、二輪車80、100、120、130、150の前後方向に延びる車幅中心線上に配置されることが好ましい。通信装置10が車幅方向の中心に位置付けられることで、車体の重量バランスが幅方向で均等に近付けられて操縦安定性が向上される。
また、通信装置10は、ステアリング操作と共に動かない固定箇所に配置されることが好ましい。固定箇所に通信装置10が配置されることで、ステアリング操作によって通信装置10の受信性能が変わることがない。二輪車80、100、120、130、150における通信装置10の各配置箇所においても、レーダー波が人体を通過せず、かつ自動運転車両1(図1参照)のバンパからルーフの高さ範囲を狙ってレーダー波を送信するように通信装置10が配置されることが好ましい。
図11を参照して、本実施の形態に係る通信装置を備えた周辺車両に対する自動運転車両の車線変更時の影響について説明する。図11は、自動運転車両による車線変更時の自動運転動作の説明図である。なお、図11に示す検知動作は車線変更時の一例に過ぎず、他の局面で周辺車両を検知する際にも適用可能である。また、図11Aは、二輪車に通信装置が設けられていない例を示し、図11Bは、二輪車に通信装置が設けられた例を示している。
図11Aの上側車線に示す比較例では、走行車線を自動運転車両1が前方車両4と後方車両5で所定の車間距離を取りながら走行しており、追越車線を数台の二輪車3が走行している。自動運転車両1は、車体の前後のレーダー装置9からレーダー波が送出され、前方車両4及び後方車両5から反射されたレーダー波を受けて、前方車両4及び後方車両5を検知しながら自動運転を実施している。このとき、二輪車3に通信装置10が配置されておらず、二輪車3が追越車線を走行しているため、レーダー波で二輪車3の存在が検知され難くなっている。
そして、自動運転車両1が前方車両4との車間距離が詰まってきたので、矢印に示すように、自動運転車両1が追越車線に車線変更を実施すると、前後に並んだ二輪車3の間に自動運転車両1が入り込む形になる。このように、走行車線を走行中の自動運転車両1に追越車線を走行中の二輪車3の存在が見落とされて、自動運転車両1によって無理な車線変更が実施されるおそれがある。さらに、車線変更後の自動運転車両1の前方及び後方の二輪車3には通信装置10が設けられていないため、レーダー波によって検知し難い二輪車3の間を自動運転車両1が走行し続けなければならない。
一方、図11Bの上側車線に示す本実施の形態では、追越車線の走行中の二輪車3に通信装置10が配置されている。このため、自動運転車両1のレーダー装置9からのレーダー波が二輪車3の通信装置10で受信され、レーダー波が増幅された後に自動運転車両1に向けて送信される。二輪車3から自動運転車両1に向けて増幅後のレーダー波が送信されることで、自動運転車両1によって二輪車3の存在が検知され易くなっている。このため、自動運転車両1が前方車両4との車間距離が詰まってきたとしても、自動運転車両1によって二輪車3の存在が検知され無理な車線変更が実施されることがない。
よって、自動運転車両1では、上記したような無理な車線変更が禁止され、車線変更後の自動運転車両1と二輪車3との間に十分な車間距離が確保できる状態になってから、矢印に示すような車線変更が実施される。また、車線変更後の自動運転車両1の前方及び後方の二輪車3には通信装置10が設けられているため、自動運転車両1に前後の二輪車3の存在を検知させながら、安全走行を続けさせることができる。
次に、図11Aの下側車線に示す比較例では、走行車線を自動運転車両1が前方車両4と後方車両5で所定の車間距離を取りながら走行しており、前方車両4の前方及び後方車両5の後方に二輪車3が走行している。このとき、二輪車3には通信装置10が配置されておらず、自動運転車両1からは前方車両4及び後方車両5の影に二輪車3が隠れているため、自動運転車両1から送出されるレーダー波では二輪車3の存在が検知され難くなっている。
そして、自動運転車両1が前方車両4との車間距離が詰まってきたので、矢印に示すように、自動運転車両1が追越車線に車線変更を実施すると、後方の二輪車3も追い越しをかけており、二輪車3の追い越しを自動運転車両1が妨げる形になる。このように、後方車両5の影に隠れた二輪車3の存在が見落とされて、自動運転車両1によって二輪車3の存在が検知され無理な車線変更が実施されるおそれがある。
一方、図11Bの下側車線に示す本実施の形態では、前方車両4の前方及び後方車両5の後方の二輪車3に通信装置10が配置されている。このため、自動運転車両1のレーダー装置9からのレーダー波が二輪車3の通信装置10で受信され、レーダー波が増幅された後に自動運転車両1に向けて送信される。二輪車3から自動運転車両1に向けて増幅後のレーダー波が送信されることで、自動運転車両1によって二輪車3の存在が検知されている。このため、自動運転車両1によって後方車両5の影に隠れた二輪車3の追い越しが検知され、無理な車線変更が実施されることがない。
よって、自動運転車両1では、上記したような無理な車線変更が禁止され、二輪車3の追い越しが終わってから、矢印に示すような車線変更が実施される。また、本実施の形態では、車両の前側と後側に通信装置10が1つずつ配置されるため、1台の車両の1つの通信装置10からレーダー波が自動運転車両1に送信される。このため、自動運転車両1でレーダー波の自己発振現象が検知された場合には、自動運転車両1に複数の車両の集団の存在を検知させることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、自動運転車両1から送出されたレーダー波が周辺車両の通信装置10に受信され、通信装置10でレーダー波が増幅された後に自動運転車両1に送り返される。したがって、レーダー波が霧や雨等の影響によって減衰しても、通信装置10でレーダー波が増幅された後に自動運転車両1に向けて送信されるため、自動運転車両1に対して通信装置10が配置された周辺車両の存在を積極的に検知させることができる。また、検知し難い二輪車3に通信装置10を配置することで、二輪車3を自動運転車両に良好に検知させることができる。このように、レーダー波の受け手側である周辺車両が、レーダー波の送り手側の自動運転車両1に自車両の存在を積極的に訴えかけて、自動運転車両1に対して当該自車両の存在を考慮した自動運転を促すことができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記した実施の形態では、通信装置10が車両としての四輪車及び二輪車に配置される構成について説明したが、この構成に限定されない。通信装置10は、前輪又は後輪が2輪の三輪車に配置されてもよい。また、通信装置10は、原動機を有さない自転車に配置されてもよい。
また、上記した実施の形態では、受信アンテナ13及び送信アンテナ15でデータ波を送受信する構成にしたが、この構成に限定されない。1本のアンテナで送受信を切り替えて、受信アンテナ及び送信アンテナとして使用するようにしてもよい。
また、上記した実施の形態では、ブラケット17を介して通信装置10を車両にネジ止めする構成にしたが、この構成に限定されない。通信装置10の取り付け構成は、車両の取り付け箇所に応じて適宜変更が可能である。
また、上記した実施の形態では、レーダー波を受けて増幅した後にレーダー波を送り返すまでのタイムラグが大きくなる場合には、レーダー波と共に処理時間をデータとして自動運転車両1に送り返してリアルタイム性を確保することも可能である。
また、上記した実施の形態では、車両の前側と後側に通信装置10が1つずつ配置される構成にしたが、この構成に限定されない。車両の前側と後側にそれぞれ複数の通信装置10が配置される構成にしてもよい。
なお、本発明は、自動運転車両を中心に説明してきたが、自動運転車両に対してだけではなく、人間により運転される通常の車両に対しても効果がある。この場合には、運転者に対する他車両情報がより正確に伝わるので自動運転車両同様、運転者が車両をより運転し易くなる。