JP6704324B2 - 易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物を含有する不溶性化合物の分析方法 - Google Patents

易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物を含有する不溶性化合物の分析方法 Download PDF

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Description

本発明は、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物を含有する不溶性化合物の分析方法に属し、詳しくは、アルカリ金属を含有する易炭酸化性化合物、炭酸化合物の混合物からのアルカリ金属量の測定方法に属する。
リチウムニッケル複合酸化物は、非水電解質二次電池の正極材料に用いられる。リチウムニッケル複合酸化物を製造する際に、リチウムニッケル複合酸化物へと反応し切れなかったリチウム化合物(例えば、水酸化リチウムや炭酸リチウムの様な、水溶性リチウム化合物)が存在する場合がある。該水溶性リチウム化合物は、リチウムニッケル複合酸化物の表面に主として存在することになる。
表面に存在する該水溶性リチウム化合物におけるリチウムイオンの量(以降、リチウム量とも称する。)の分析については、既にR.B.Warder法やCl.Winkler法を基とした中和滴定法が、特許文献1〜6に記載されており、公知技術として一般的に知られている。
R.B.Warder法は、水酸化物と炭酸塩における終点pHの差を利用した2段滴定法である。これに対し、Cl.Winkler法は、全アルカリを滴定する一方で、炭酸塩を塩化バリウムにより沈澱させて水酸化物のみを滴定し、前後の滴定量差から、それぞれの分析結果を求める方法である。
どちらも、反応式(1)〜(3)に従った分析方法であり、R.B.Warder法のほうが迅速かつ簡便である。ただ、指示薬(目視)による終点判定を行うことを鑑みると、反応式(4)に示す通り、炭酸が共存しないCl.Winkler法の方が、変色の鋭敏さという面で優っている。
LiOH + HCl → LiCl + HO (1)
LiCO + HCl → LiCl + LiHCO(2)
LiHCO + HCl → LiCl + CO + HO (3)
LiCO + BaCl → 2LiCl + BaCO(4)
その態様例として、リチウムニッケル複合酸化物を純水に浸出し、濾過後の濾液を酸で滴定する中和滴定法を用いることにより、反応式(1)〜(3)に基づき、水酸化リチウム量と炭酸リチウム量を分別して求める分析方法が、特許文献3、5に記載されている。
また、リチウムニッケル複合酸化物に純水を注ぎ、スラリー化した後、表面に存在する水溶性のリチウム化合物が、スラリー中の全アルカリ量であると見なした上で、スラリーのアルカリ成分を酸で滴定する、中和滴定法を用いることによって全アルカリ量を求め、次いで、全アルカリ量をリチウムに換算してリチウム量を求める分析方法が、特許文献6に記載されている。
中和滴定法を用いた各特許文献について紹介したが、固形・粉末サンプルを対象とした中和滴定法としては、大別すると以下の様に分かれる。
(i)サンプルを完全溶解させずに、目的成分のみを溶解させ、所定の保持時間における目的成分の溶出量を求める。
(ii)サンプルを完全溶解させ、目的成分の全量を求める。
ここで、先に挙げた、リチウムニッケル複合酸化物へと反応し切れなかった、アルカリ金属であるリチウムを含有する化合物であって、リチウムニッケル複合酸化物の表面に主として存在する水溶性リチウム化合物の分析については、(i)を採用することになる。つまり、リチウムニッケル複合酸化物を純水中に投入し、純水に溶解した、水溶性リチウム化合物について分析を行う。詳しく言うと、リチウムニッケル複合酸化物の表面に残存していて、純水に溶解した、水溶性リチウム化合物である水酸化リチウムや、炭酸リチウムについて分析を行うことになる。
中和滴定法により、水酸化リチウム(LiOH)においては、OHの量を求めた上で、OHとLiが1:1であることを利用して、OHの量からリチウムイオン(Li)の量(LiOH由来のリチウム量)を算出する。そして、炭酸リチウム(LiCO)においては、CO 2−の量を求めた上で、CO 2−とLiが1:2であることを利用して、CO 2−の量からリチウムイオン(Li)の量(LiCO由来のリチウム量)を算出する。
(i)を採用し、かつ上記の様な水溶性リチウム化合物を分析対象とする場合、種々の留意点が存在する。例えば、該水溶性リチウム化合物のうち、水酸化リチウムは、易炭酸化性化合物であり、大気中の二酸化炭素(CO)と反応し、炭酸リチウムへと変化してしまう可能性がある。その変化の反応式を以下に示す。
2LiOH + CO → LiCO + HO (5)
そうなると、外部からCOが入り込むため、中和滴定法で求めたOHの量の一部がCO 2−に変化し、CO 2−の量に足されることで、水酸化リチウム由来のリチウムと、炭酸リチウム由来のリチウムの比が狂ってしまう。この炭酸化による悪影響によってで、水酸化リチウム由来のリチウムと、炭酸リチウム由来のリチウムを、正確に分けて分析することが出来なくなってしまう。
そこで、サンプルの炭酸化を抑制する手段として、一般的に行われているのが、特許文献7および8に示される方法である。具体的に言うと、グローブボックスに分析装置や器具を収め、その中を窒素などの不活性ガスでパージするという方法である。
特開2010−76963号公報 特開2011−96655号公報 WO2012/133434号公報 特開2014−7016号公報 特許第3769344号公報 特許第5894388号公報 特開平10−54899号公報 特開平10−185821号公報
ただ、特許文献7および8に示される方法を用いたなら、グローブボックスに取り付けられた専用手袋が届く範囲の操作しか出来ず、作業性が低下する。また、グローブボックスを基本とした設備自体も、中に収める装置等が大きく、かつ複雑な仕組みになる程、大掛かりなものにする必要がある。その他にも、この方法を採用するにあたってのイニシャルコストのほか、上記の不活性ガスの様な、作業に必要な物質に係るランニングコストについても無視出来ない。
その一方で、特許文献1〜6に記載されている中和滴定法の過程において、大気中の二酸化炭素の影響を抑制する対策が取られているのは、特許文献4に示された窒素ガスによるパージ操作のみであり、簡便で高精度に、しかも連続して測定可能な分析方法は、未だ見出されていないのが現状である。
この様に、グローブボックス中で、不活性ガスによりパージを行い、炭酸化を抑制して分析する方法以外に見出せない場合は、上記の水酸化リチウムの様な、アルカリ金属を含有する易炭酸化性化合物と、上記の炭酸リチウムの様なアルカリ金属を含有する炭酸化合物と、を含有する不溶性化合物において、易炭酸化性化合物と炭酸化合物が溶解した溶液を用いて、易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定するための、より簡便で、高精度に、しかも連続して測定可能な分析工程が無いこととなる。そして、例示した様に、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量に基づいて、更に、水酸化リチウム由来のリチウムと、炭酸リチウム由来のリチウムを分けて、簡便で、高精度に、しかも連続して分析することが出来ないという課題が残ることとなる。
上記の課題に加え、本発明者の鋭意検討により、以下の課題も明らかとなった。
そもそも、中和滴定法をはじめとする滴定法は、高精度かつ簡便な分析方法として、工業分野における製造工程の管理や製品の品質管理以外にも、医薬品、食品、環境関連、臨床関連など、現在も幅広く利用されている。
ただ、一般的な滴定法では、操作に10〜数10分の時間を要する。そのため、分析サンプルの数が増加するほど、滴定に対して莫大な時間を要することになる。この分析サンプル数の増加と連続分析化の要請に応えて、自動滴定装置とそれに付属するオートサンプラーが普及している。これにより、分析時間短縮と省力化が進んでいる。
ところが、易炭酸化性化合物を含有するサンプルで、易炭酸化性化合物量を測定する操作、あるいは、易炭酸化性化合物と炭酸化合物を含有する不溶性化合物サンプルで、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する操作などを、自動滴定装置とそれに付属するオートサンプラーを使用して分析を行った場合、大気中の二酸化炭素が易炭酸化性化合物に与える炭酸化が顕在化して、分析結果に悪影響を及ぼしていることに本発明者は気づいた。
例えば、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いて、無人で複数のサンプル(例えば、12サンプル)を連続分析する場合において、1サンプル当たりの分析に20分の時間を要すると仮定する。すると、1番目の検体が自動滴定装置に掛けられてから、12番目のサンプルが自動滴定装置に掛けられるのは、自動滴定装置の稼働開始時から11番目のサンプルの滴定が終了した後、即ち、220分経過した後になる。この様な状態で、分析サンプルに易炭酸化性化合物が含まれている場合、炭酸化について何ら手当てを行わないならば、サンプルの炭酸化の影響で、1番目の検体に係る分析結果と12番目の検体に係る分析結果との間で、大きな差が生じてしまうことを新たに確認した。
本発明は、上述した従来の実情を鑑みて提案するものであり、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物を含有する不溶性化合物において、易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する分析を、更には、易炭酸化性化合物由来のアルカリ金属と、炭酸化合物由来のアルカリ金属に分けて、それぞれのアルカリ金属量を測定する分析を、設備コストを掛けずに、簡便かつ高精度で、しかも連続して測定可能とする技術を提供することを目的とする。なお、易炭酸化性化合物のみを含有する不溶性化合物で、易炭酸化性化合物量を測定する分析も、上記分析方法に含めるものとする。
本発明者は、上述の問題点を解決するべく、分析結果の精度向上やコスト削減を念頭に置きつつ、滴定操作の簡便化、省力化、迅速化を図るため、鋭意研究を重ねた結果、本発明を見出し完成するに至った。
上記の知見に基づいて成された、本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物を含有する不溶性化合物を水溶性膜で包んだ包装体を載置した容器内に注水する注水工程と、
前記注水工程後、前記容器内の、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物が溶解した溶液を用いて、易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する分析工程と、を有する、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記水溶性膜の素材はオブラートまたはゼラチンである易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、
前記分析工程においては、前記易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物に対し、中和滴定法を用いた濃度分析を行う易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様に記載の発明において、
前記包装体を載置した前記容器を複数用意しておく準備工程を更に有し、
前記注水工程および前記分析工程においては、逐次、前記容器内に注水し、前記容器内の溶液を用いて、易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明の第5の態様は、第1〜第4のいずれかの態様に記載の発明において、
前記包装体を載置した前記容器に対し、更に浮き(うき)も載置しておく準備工程を更に有する易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の発明において、
前記浮き(うき)の素材は樹脂またはゴムである易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明の第7の態様は、第1〜第6のいずれかの態様に記載の発明において、
前記易炭酸化性化合物は、アルカリ金属を含有する易炭酸化性化合物であり、前記炭酸化合物は、アルカリ金属を含有する炭酸化合物であり、前記分析工程において前記易炭酸化性化合物由来のアルカリ金属量と前記炭酸化合物由来のアルカリ金属量をそれぞれ測定する、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法において、前記アルカリ金属を含有する易炭酸化性化合物は、水酸化リチウムであり、前記アルカリ金属を含有する炭酸化合物は、炭酸リチウムであり、前記分析工程において前記水酸化リチウム由来のリチウム量と前記炭酸リチウム由来のリチウム量をそれぞれ測定する、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法である。
本発明によれば、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物において、易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する分析を、更には、易炭酸化性化合物由来のアルカリ金属と、炭酸化合物由来のアルカリ金属に分けて、それぞれのアルカリ金属量を測定する分析を、設備コストを掛けずに、簡便かつ高精度で、しかも連続して測定可能とする。
本実施形態において、ビーカー内に包装体、浮き(うき)、回転子を載置した様子を示す断面概略図である。 本実施形態において、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いて中和滴定工程を行う様子を示す断面概略図(その1)である。 図2に示す状況の後の様子を示す図であって、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いて中和滴定工程を行う様子を示す断面概略図(その2)である。 図3に示す状況の後の様子を示す図であって、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いて中和滴定工程を行う様子を示す断面概略図(その3)である。 実施例1において、水溶性リチウム化合物であるLiOHに対する、水溶性膜による炭酸化抑制効果を示した図であり、横軸を放置時間(hr)、縦軸をLiOH由来のリチウム(Li)量(重量%)とした図である。 実施例1において、水溶性リチウム化合物であるLiCOに対する、水溶性膜による炭酸化抑制効果を示した図であり、横軸を放置時間(hr)、縦軸をLiCO由来のリチウム(Li)量(重量%)とした図である。
以下、本発明の実施の形態について、以下の順に説明する。
1.リチウム量の測定方法
1−1.準備工程
1−2.中和滴定工程(注水工程、分析工程)
2.変形例等
本明細書において、「〜」は所定の値以上、かつ所定の値以下のことを指す。
<1.リチウム量の測定方法>
本実施形態においては、先にも挙げたが、リチウムニッケル複合酸化物を製造する際に、リチウムニッケル複合酸化物へと反応し切れなかった、アルカリ金属であるリチウムを含有する化合物(例えば、水酸化リチウムや炭酸リチウム)であって、リチウムニッケル複合酸化物の表面に主として存在する、水溶性リチウム化合物におけるリチウムイオンの量(リチウム量)の定量、即ち濃度分析を行う例を挙げる。ここでは、水酸化リチウムが易炭酸化性化合物であり、炭酸リチウムが炭酸化合物にあたる。詳しく言うと、中和滴定法により、水酸化リチウム(LiOH)のOHの濃度、そして炭酸リチウム(LiCO)のCO 2−の濃度を、別々に求める。そして、水酸化リチウム(LiOH)のOHの濃度から、リチウムイオン(Li)の濃度(即ち、LiOH由来のリチウム量)を算出し、それとは別に、炭酸リチウムの(LiCO)のCO 2−の濃度から、リチウムイオン(Li)の濃度(即ち、LiCO由来のリチウム量)を算出する例を挙げる。
つまり、本実施形態においては、分析対象をリチウムニッケル複合酸化物、ひいてはその表面に存在する、水溶性リチウム化合物としている。
1−1.準備工程
本工程においては、リチウム量の測定に係る準備を行う。以下、特記の無い事項(例えば、中和滴定法)については、公知の装置や手法を採用しても構わない。
本実施形態における、大きな特徴の一つは、図1に示す様に、分析対象となるリチウムニッケル複合酸化物の表面に存在する水溶性リチウム化合物を、水中に溶解させて中和滴定に掛ける前(具体的には、後述の注水工程前)に、当該リチウムニッケル複合酸化物を水溶性膜にて予め包んでおき、この包装体を容器(ビーカー)に予め載置しておくことにある。
なお、図1において符号1はサンプル(その表面に、水溶性リチウム化合物が存在する、リチウムニッケル複合酸化物)、符号2は水溶性膜、符号3は包装体、符号4はビーカー、符号5は浮き(うき)、符号6は、マグネティックスターラーを用い溶液を撹拌する時に使用する回転子を示す。これらの符号については、説明の便宜上、以降省略する。
これらの操作により、以下の効果が得られる。仮に、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いて、無人で複数のサンプル(例えば、12サンプル)を連続分析する場合、先に挙げた様に、最後である12番目のサンプルの滴定が開始されるまでの長時間の間に、リチウムニッケル複合酸化物の表面に主として存在する水溶性リチウム化合物、特に、易炭酸化性化合物である水酸化リチウムが、大気中の二酸化炭素を取り込んでしまうことになる。その変化の反応式を以下に示す。まず、水溶性リチウム化合物が固体の場合は、先にも挙げた、以下の反応式が生じ得る。
2LiOH + CO → LiCO + HO (5)
また、水溶性リチウム化合物を、水に溶解させて溶液とした場合は、以下の反応式が生じ得る。
2OH + CO → CO 2− + HO (6)
ところが、本実施形態の様に、オートサンプラーに対して、リチウムニッケル複合酸化物を水溶性膜で包んだ包装体を、容器(例えば、ビーカー)に載置した状態でセットすることにより、リチウムニッケル複合酸化物を大気から保護することが可能となる。しかも、水溶性膜を使用することにより、後述の注水工程において、容器内に注水されると水溶性膜が溶解し、当初の予定通り、純水に対してリチウムニッケル複合酸化物を接触させることができ、その表面に存在する水溶性リチウム化合物を、純水に溶解させることが可能となる。つまり、オートサンプラーにサンプルをセットしてから滴定(注水)開始までのタイムラグの間の、大気の影響を排することが出来る。
上記の水溶性膜の素材は、オブラートまたはゼラチンであるのが、大気からの保護性能や費用等を鑑みると好ましい。
ちなみに、包装体の作製工程の具体的な内容としては、オブラートを使用する場合であると以下のものが挙げられる。以下の方法から、サンプルの状態等を考慮して適宜選択すればよい。
a)秤量したサンプルを、膜状のオブラートの上に載置した後、オブラートの端を摘んで円錐状にし、畳み込んでサンプルを包む。その際に、微量の純水でオブラートを湿らせ、湿らせた箇所で封止する。
b)秤量したサンプルを、薬包紙上に載置し、該サンプルを袋タイプのオブラートへ入れた後で、オブラートを畳み込み、サンプルを包む。その際に、微量の純水でオブラートを湿らせ、湿らせた箇所で封止する。
c)秤量したサンプルを、薬包紙上に載置し、該サンプルをカプセルタイプのオブラートへ入れた後で、カプセルを閉じる。
また、ゼラチンを使用する場合には、以下のものが挙げられる。この場合も、以下の方法から、サンプルの状態等を考慮して、適宜選択すればよい。
d)秤量したサンプルを、ビーカーへ入れ、純水でふやかした板状ゼラチンでサンプルを覆う。
e)秤量したサンプルを、ビーカーへ入れ、服薬ゼリータイプのゼラチンでサンプルを覆う。
また、本工程である、準備工程においては、図1に示す様に、包装体を載置した容器(ビーカー)に対し、更に浮き(うき)も載置しておくことも可能である。これも、本実施形態における、大きな特徴の一つである。
これらの操作により、以下の効果が得られる。先ほども挙げたが、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いて、従来通り、無人で12個のサンプルを連続分析する場合、大気中の二酸化炭素を、リチウムニッケル複合酸化物の表面に存在する、水溶性リチウム化合物(特に、易炭酸化性化合物である水酸化リチウム)が取り込んでしまう。ところが、ビーカー内に上記の包装体と共に、浮き(うき)を入れておけば、後述の図3の右図に示す様に、注水工程が行われると、浮き(うき)が水面に浮上し、水面を実質的に覆う(例えば、溶液表面の95%以上を覆う)ことになる。これによって、溶液が大気に対して接触する面積を減らすことが可能となり、ひいては大気から溶液を保護することが可能となる。しかも、滴定においては、操作に10〜数10分の時間を要するが、浮き(うき)を採用することにより、この時間の間においても大気から溶液を保護することが可能となる。
上記の浮き(うき)の素材は、浮上可能で、環境上の問題も無く、滴定電極を傷付けたり表面へ付着したりしないものであれば、特に限定は無いが、樹脂またはゴムであるのが好ましい。
樹脂の場合、ポリエチレンやポリスチレンなどの他の樹脂を用いても良い。また、発砲スチロールや発砲ウレタンなどの加工品や、中空タイプ以外に中身が詰まった中実タイプのものでも良い。
ゴムの場合、天然ゴムやシリコーンゴムなどのゴムを用いても良い。
なお、浮き(うき)の形状としては、真球のほか楕円状や塊状のものでも良いが、なるべく、最大幅が10mm以下のものを用いるのが好ましい。
また、浮き(うき)の数は任意で構わない。例えば、1個の浮き(うき)であってもドーナツ状のものであれば、自動滴定装置におけるpH電極、ビュレット、水ノズル等(図2右図参照)と干渉せずに済むし、複数の小さな浮き(うき)を準備することで、水面において浮き(うき)が密となり、溶液表面を実質的に覆い(例えば、溶液表面の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、非常に好ましくは95%以上を覆う。本明細書においては、単に“覆う”と記載する。)、大気から溶液を効率的に保護することが可能となる。
上記以外にも、後述の中和滴定工程(注水工程)のための準備を、適宜行う。例えば、包装体、浮き(うき)の他に、回転子もビーカー内に載置しておく。
また、本実施形態においては、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いるため、上記の様に、包装体および浮き(うき)を載置したビーカーを複数用意しておく。ビーカーの数は任意で構わないが、上記で挙げた例に従い、サンプル数が12の場合を例示する。
1−2.中和滴定工程(注水工程、分析工程)
本工程において、オートサンプラー付属の自動滴定装置を操作用PCで起動し、滴定を開始する。図2に示す様に、自動滴定装置のアームと付属のオートサンプラーが作動し、1番目のサンプルを収めたビーカー内へと、pH電極、滴定液を滴下するビュレット、純水を滴下する水ノズルが移動する。
なお、図2において、符号7はpH電極、符号8はビュレット、符号9は水ノズルを示す。
その後、上記包装体を載置した容器内に、注水が行われる(注水工程)。なお、ここで用いられる水は、純水や超純水などの炭酸イオンを含まない水である方が、定量精度向上のためには好ましい。所定量の純水の注入が行われた後、回転子を回転させる。これにより、図3に示す様に、水溶性膜が溶けて破れると共に、包装体中のサンプルが純水中に拡散し、水溶性リチウム化合物が溶解する。回転子を回転させた状態で、自動滴定装置による自動制御で滴定液(例えば、塩酸1mol/l)をビーカー内に添加し、滴定を行う。なお、滴定開始時にはpH電極、ビュレットおよび水ノズルの先端が、溶液に浸された状態になる様に設定する。
なお、その際に、自動分注機を増設したり、操作用PCでのシーケンスを設定することで、滴定の直前に純水を添加する条件としておく。これによって、溶液ひいてはリチウムニッケル複合酸化物の表面に存在する水溶性リチウム化合物が、大気と接触する時間を減らしたり、注水が行われてから滴定終了までの時間(保持時間)を、各サンプル間で一定に保つ様にすることが好ましい。
以上の作業により、ビーカー内の溶液を用い、リチウムニッケル複合酸化物の表面に存在していた水溶性であり、易炭酸化性化合物である水酸化リチウムと、炭酸化合物である炭酸リチウムに係る濃度分析が行われる(分析工程)。なお、この分析作業は、自動滴定装置により自動で行われ、水酸化リチウム(LiOH)のOHの濃度、そして、炭酸リチウムの(LiCO)のCO 2−の濃度が操作用PCに表示され、更にはLiOH由来のLiの濃度、および、LiCO由来のLiの濃度が自動で算出され、その値が操作用PCに表示される。
なお、1番目のサンプルに対する滴定が終了した後、自動滴定装置のアームと付属のオートサンプラーが再び作動し、図4に示す様に、2番目のサンプル(ビーカー)内へと、pH電極、ビュレット、水ノズルが移動する。その後、包装体を載置した容器内に注水が行われる。この作業を、12番目のサンプルに至るまで自動で行う。つまり、注水工程および分析工程においては、逐次、ビーカー内に注水し、容器内の溶液を用いて分析対象に係る分析を行う。1番目のサンプル、2番目のサンプル、3番目のサンプル・・・という順番通りに注水工程および分析工程を行うことにより、注水が行われてから滴定終了までの時間(保持時間)を、各サンプル間で一定に保つことが可能となる。
上記の各工程を経て、リチウム量の分析が行われる。具体的には、先にも挙げたが、中和滴定法により、水酸化リチウム(LiOH)のOHの濃度、そして、炭酸リチウムの(LiCO)のCO 2−の濃度を、別々に求める。そして、水酸化リチウム(LiOH)のOHの濃度から、水酸化リチウム由来のリチウムイオン(Li)の濃度を算出し、それとは別に、炭酸リチウムの(LiCO)のCO 2−の濃度から、炭酸リチウム由来のリチウムイオン(Li)の濃度を算出する。なお、最終的には、水酸化リチウム由来のリチウム量と、炭酸リチウム由来のリチウム量とを合計したものを算出する。
OHがどれだけCO 2−に置き換わっても、両リチウムイオン(Li)の量の合計は変わらないが、水酸化リチウム由来のリチウムと、炭酸リチウム由来のリチウムを、正確に分けて分析することが出来る。
本実施形態のリチウム量の分析方法は、リチウムニッケル複合酸化物をはじめ、リチウム二次電池の製造に使用される材料であるリチウム化合物において、未反応で残るリチウム化合物のリチウム量の分析に適している。また、本実施形態に従えば、グローブボックスの様な、大掛かりな炭酸化抑制設備を用いることなく、上述のサンプルにおけるリチウム量を連続測定することができ、ひいては二酸化炭素がサンプルに入り込む量を低減出来るため、リチウム量の測定精度を向上させることが可能となる。
その結果、本実施形態によれば、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物を含有する不溶性化合物において、易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する分析を、更には、易炭酸化性化合物は、アルカリ金属を含有する易炭酸化性化合物であり、炭酸化合物は、アルカリ金属を含有する炭酸化合物である場合、分析工程において、易炭酸化性化合物由来のアルカリ金属と、炭酸化合物由来のアルカリ金属に分けて、それぞれのアルカリ金属量を測定する分析を、設備コストをかけずに、簡便かつ高精度で、しかも連続して測定可能とする。
<2.変形例>
本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件や、その組み合わせによって得られる、特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
例えば、易炭酸化性化合物と炭酸化合物を含有する不溶性化合物を、純水に溶解した溶液を用いて分析を行う方法全般に、本発明の技術的思想は適用し得る。この分析対象としては、リチウムニッケル複合酸化物に含有される水溶性リチウム化合物以外では、工業用苛性ソーダに含有される、水溶性ナトリウム化合物等が挙げられる。工業用苛性ソーダの主たる構成物質である水酸化ナトリウムは、吸湿性を持つと共に、非常に炭酸化し易く、大気中の二酸化炭素を取り込み、炭酸化合物である炭酸ナトリウムを生成して変質していく。この易炭酸化性化合物である水酸化ナトリウムと、炭酸化合物である炭酸ナトリウムを分析することにより、保管過程における変質の度合いを、本発明の分析方法を用いて、正確に調査することが出来る。
また、分析工程における分析内容は、中和滴定法を用いた濃度分析に限らない。本発明の技術的思想は、易炭酸化性化合物と炭酸化合物を含有する不溶性化合物を、純水に溶解した溶液を用いた分析全般に対して適用可能である。
例えば、コンクリートのpH測定等に適用できる。コンクリートの中性化(炭酸化)は、セメント水和物中のカルシウム化合物が大気中の二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムに変化する現象である。大気中の二酸化炭素がコンクリート内に侵入し、炭酸化反応を引き起こすことにより、本来アルカリ性である細孔溶液のpHを下げる現象であり、中性化はコンクリート表面より進行し、鉄筋などの鋼材位置に達すると、不動態被膜を破壊する。これにより、鋼材を腐食させ、腐食生成物の堆積膨張により、コンクリートのひび割れ・剥離を引き起こし、耐荷力など構造物の性能低下が生じる。炭酸化の進行が鉄筋コンクリート構造物における鉄筋の腐食と密接に関連していることから、従来、コンクリートの炭酸化について研究が行われてきている。
コンクリートの中性化を調査するためには、コンクリートのpH測定が必要となるが、経年劣化由来のコンクリートのpHについて、本発明の分析方法を用いて正確に調査することが出来る。
また、本発明の分析方法においては、水溶性膜の素材としてオブラートまたはゼラチンを例示したが、オブラートまたはゼラチン以外であっても構わず、水溶性を備える公知のものを膜化したもの(例えば、農業用のシードテープにも用いられている、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性フィルム等)を採用しても構わない。
また、上記の実施の形態においては、12個のサンプルを設置可能な自動滴定装置と、それに付属するオートサンプラーを採用した例を挙げた。ただ、上記の実施の形態の手法は、あくまで分析対象を連続して測定可能とするものであって、自動滴定装置とそれに付属するオートサンプラーを使用しない場合(例えば、作業者が手作業で作業する場合)を排除するものではない。
また、上記の実施の形態では、準備工程において、包装体を載置した容器に対し、更に浮き(うき)を載置していたが、浮き(うき)を採用せずとも構わない。ただ、浮き(うき)を採用すると、中和滴定中の水面を大気から保護することが可能となり、水溶性膜と共にリチウムニッケル複合酸化物(ひいては、当該リチウムニッケル複合酸化物表面に存在する、水酸化リチウム)を、大気から保護することが可能となるため、非常に好ましい。
以下、本実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例においては、水溶性膜がサンプルを大気から保護できているか否かを確認した。
まず、リチウムニッケル複合酸化物である、粉末サンプルAの一定量(約2g)を水溶性膜で包み、包装体を得た。ここで、水溶性膜としては、オブラートとゼラチンとの2種を用意し、各々による包装体を得た。
水溶性膜をオブラートとした包装体の作製にあたっては、上記の準備工程で挙げたb)の方法を採用した。そして、水溶性膜をゼラチンとした包装体の作製にあたっては、上記の準備工程で挙げたe)の方法を採用した。
そして、水溶性膜の種類ごとに作製した、複数の包装体それぞれを、大気中に2時間、4時間、6時間、18時間と段階的に放置した。
その後、各包装体をビーカーに載置すると共に、浮き(うき)としては、多数の中空タイプのポリプロピレンボール(10mmΦ)を採用して、これをビーカー内に載置し、回転子も載置した。
この状態の各包装体に対し、オートサンプラー付属の自動滴定装置を用いて、上記リチウムニッケル複合酸化物へと反応し切れなかった、水溶性リチウム化合物(水酸化リチウムや炭酸リチウム)について、中和滴定工程を行った。中和滴定工程中においては、溶液液面をポリプロピレンボールで覆い、溶液を大気から保護した。そして、各サンプルにおけるリチウム量を求めた。このリチウム量としては、水酸化リチウムに由来するリチウム量と、炭酸リチウムに由来するリチウム量とを分けて求めた。
なお、自動滴定装置には、平沼産業(株)製のCOM−1750を、オートサンプラーには、平沼産業(株)製のC−1700を、ビーカーへの注水ポンプには、平沼産業(株)製のC−2000を、それぞれ使用した。
(比較例1)
その一方、比較例1として、水溶性膜による包装体を作製せず、粉末サンプルAの一定量(約2g)をビーカーに載置したことを除き、本実施例に記載の手法と同様にしてリチウム量を求めた。
この時の、リチウム量に対する水溶性膜の炭酸化抑制効果を示したものが、図5、6である。図5は、水溶性リチウム化合物であるLiOHに対する、水溶性膜による炭酸化抑制効果を示した図であり、横軸を放置時間(hr)、縦軸をLiOH由来のリチウム(Li)量(重量%)とした図である。図5を見ると、水溶性膜で包装体を作製しない場合においては、放置時間が長くなるにつれて、LiOH由来のリチウム量が減少している。これはつまり、LiOHが炭酸化したために、LiOH由来のリチウム(以降、LiOH−Liとも記載。)が減少したことを示している。
その一方で、オブラートでも、ゼラチンでも、水溶性膜により包装体を作製した場合は、放置時間が長くなったとしても、LiOH由来のリチウムの減少量を顕著に抑えることが出来ている。この様に、水酸化リチウム由来のリチウムと、炭酸リチウム由来のリチウムを、正確に分けて分析することが可能である。
また、図6は、水溶性リチウム化合物であるLiCOに対する、水溶性膜による炭酸化抑制効果を示した図であり、横軸を放置時間(hr)、縦軸をLiCO由来のリチウム(Li)量(重量%)とした図である。図6を見ると、水溶性膜で包装体を作製しない場合は、放置時間が長くなるにつれて、LiCO由来のリチウム量が増加している。これはつまり、LiOHが炭酸化したために、LiCOの量が増加し、その結果、LiCO由来のリチウム(以降、LiCO−Liとも記載。)が増加したことを示している。
その一方で、オブラートでも、ゼラチンでも、水溶性膜により包装体を作製した場合は、放置時間が長くなったとしても、LiCO由来のリチウムの増加量を顕著に抑えることが出来ている。
つまり、水溶性膜で包装体を作製することにより、少なくとも18時間までは炭酸化を抑制することが可能であることが分かった。また、水溶性膜としてオブラートを使用する場合、特に顕著に炭酸化抑制効果が発現することも分かった。
(実施例2)
本実施例においては、オートサンプラー付属の自動滴定装置を使用して、12個のサンプルに対して逐次、中和滴定工程を行う際の、本実施形態を適用することの有用性を確認した。
本実施例においては、以下の点を除き、実施例1と同様にして試験を行った。
・実施例1のサンプルとは別サンプルであって、リチウムニッケル複合酸化物である粉末サンプルBを使用した。
・サンプルBについて、12個のサンプルを用意し、これらの包装体を載置したビーカーをオートサンプラーにセットした。
・各サンプルに対する、意図的な大気中への放置は行わなかった。
・水溶性膜としては、オブラートを使用した。
(比較例2)
その一方、比較例2として、水溶性膜による包装体を作製せず、しかも浮き(うき)も使用せず、かつ自動滴定装置を用いずに手作業で滴定を行ったことを除き、本実施例に記載の手法と同様にしてリチウム量を求めた。
実施例2における、分析結果を示すのが、以下の表である。以下の表には、LiOH由来のリチウム量と、LiCO由来のリチウム量とを分けて記載している。なお、表中のリチウム量の数値は、各サンプルに対する重量%を示し、AVEは平均値、σは標準偏差を示す。
上記の表が示す様に、本実施形態を適用して、オートサンプラー付属の自動滴定装置による連続分析を行った実施例2の場合は、比較例2の様に手作業で滴定を行った場合に比べ、標準偏差が小さくなっていた。
また、12番目のサンプルを載置したビーカーが、オートサンプラーにセットされ、該12番目のサンプルが中和滴定工程にかけられるまでの時間は、約180分であるにも関わらず、実施例2においては、LiOH由来のリチウム量の減少も抑制され、LiCO由来のリチウム量の増加も抑制された、良好な結果を示していた。
以上の結果、本実施例によれば、自動滴定装置を使用することにより、炭酸化が更に抑制され、連続分析が可能になったことが分かった。そして、それと共に、装置での無人分析化によって作業者の関与が減り、分析精度面を向上させられることも分かった。
(実施例3)
実施例1,2により、本実施形態を適用すると高い精度で測定が可能であることが分かった。そこで、本実施例においては、今度は、自動滴定装置を用いて得られた結果が、手作業での中和滴定工程で得られた結果に比べ、高い値または低い値に偏ったものとなっていないかについて確認した。
実施例3においては、以下の点を除き、実施例2と同様にして試験を行った。
・実施例2のサンプルとは別サンプルであって、リチウムニッケル複合酸化物である、粉末サンプルC〜Nを使用した。なお、各サンプルにつき1個の包装体を用意し、計12個(C〜N)のサンプルに対し、試験を行った。
(実施例4)
実施例3においては、自動滴定装置を使用したが、これに対し、実施例4においては手作業で中和滴定工程を行った。それ以外については、実施例3と同様にして試験を行った。なお、比較例2とは異なり、実施例4においては包装体を作製し、しかも浮き(うき)を使用している。
実施例3、4における分析結果を表2に示す。以下の表2には、LiOH由来のリチウム量と、LiCO由来のリチウム量とを分けて記載している。なお、表中のリチウム量の数値は各サンプルに対する重量%を示し、AVEは平均値を示す。
そして、表2に示す結果に基づき、結果の値自体が高い値または低い値へと偏ったものかを調べるべく、t検定による調査を実施した。t検定は、JISZ9041−1〜5(特にJISZ9041−2〜3)に基づいて実施した。なお、有意水準は5%とし、t境界値に対する両側検定を行った。その結果を示すのが、以下の表である。表3は、LiOH由来のリチウム量についてのt検定の結果を示し、表4は、LiCO由来のリチウム量についてのt検定の結果を示す。
上記各表が示す様に、t値がt境界値よりも小さい値となっており、自動滴定装置を使用した実施例3での結果は、手作業で中和滴定工程を行った実施例4での結果に比べ、特に偏りは存在しないことが分かった。
1………サンプル(リチウムニッケル複合酸化物)
2………水溶性膜
3………包装体
4………ビーカー
5………浮き(うき)
6………回転子
7………pH電極
8………ビュレット
9………水ノズル

Claims (8)

  1. 易炭酸化性化合物と炭酸化合物を含有する不溶性化合物を水溶性膜で包んだ包装体を載置した容器内に注水する注水工程と、
    前記注水工程後、前記容器内の易炭酸化性化合物と炭酸化合物が溶解した溶液を用いて易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する分析工程と、
    を有する、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
  2. 前記水溶性膜の素材は、オブラートまたはゼラチンである、請求項1に記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
  3. 前記分析工程においては、前記易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物に対し、中和滴定法を用いた濃度分析を行う、請求項1または2に記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
  4. 前記包装体を載置した前記容器を複数用意しておく準備工程を更に有し、
    前記注水工程および前記分析工程においては、逐次、前記容器内に注水し、前記容器内の溶液を用いて、易炭酸化性化合物と炭酸化合物に係る分析を行い、易炭酸化性化合物量と炭酸化合物量をそれぞれ測定する、請求項1〜3のいずれかに記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
  5. 前記包装体を載置した前記容器内に、更に浮き(うき)も載置しておく準備工程を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
  6. 前記浮き(うき)の素材は、樹脂またはゴムである、請求項5に記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
  7. 前記易炭酸化性化合物は、アルカリ金属を含有する易炭酸化性化合物であり、前記炭酸化合物は、アルカリ金属を含有する炭酸化合物であり、前記分析工程において前記易炭酸化性化合物由来のアルカリ金属量と前記炭酸化合物由来のアルカリ金属量をそれぞれ測定する、請求項1〜6のいずれかに記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
  8. 請求項7に記載の易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法において、前記アルカリ金属を含有する易炭酸化性化合物は、水酸化リチウムであり、前記アルカリ金属を含有する炭酸化合物は、炭酸リチウムであり、前記分析工程においては、前記水酸化リチウム由来のリチウム量と前記炭酸リチウム由来のリチウム量を測定する、易炭酸化性化合物と炭酸化合物の混合物の分析方法。
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