以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1及び図2を参照しながら、第1実施形態に係る車両用空調装置100について説明する。車両用空調装置100は、車両10に搭載され、車室RM内の空調を行うための装置として構成されている。
図1に示されるように、車両用空調装置100は、制御装置110と、空調機構部120と、操作部141、142と、内気温センサ151と、外気温センサ152と、日射センサ160と、着座センサ171、172と、IRセンサ131と、搖動機構部132と、を備えている。
制御装置110は、車両用空調装置100の全体の動作を制御するための装置である。制御装置110は、CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータシステムとして構成されている。制御装置110の機能や、制御装置110によって行われる処理の具体的な内容については後に説明する。
操作部141は、空調設定を変更するための操作を、車両10の乗員から受け付ける部分である。「空調設定を変更する」とは、例えば、車室RM内に吹き出される空調風の風量や、吹き出される空調風の温度等の設定を変更することである。また、空調風の吹き出し方向の設定(フェイスモードやフットモード等)を変更することも、「空調設定を変更する」に含まれる。操作部141に対する操作が行われると、当該操作に基づく信号が操作部141から制御装置110へと入力される。制御装置110は、操作部141からの信号に基づいて、後述の空調機構部120の動作を制御する。
図2に示されるように、操作部141は、インストルメントパネル26のうち右側、すなわち運転席21側となる部分に設けられている。操作部141は、車両10の運転者M1によって操作されるスイッチとして設けられている。
操作部142は、上記の操作部141と同様に、空調設定を変更するための操作を乗員から受け付ける部分である。操作部142に対する操作が行われると、当該操作に基づく信号が操作部142から制御装置110へと入力される。制御装置110は、操作部142からの信号に基づいて空調機構部120の動作を制御する。
図2に示されるように、操作部142は、インストルメントパネル26のうち左側、すなわち助手席22側となる部分に設けられている。操作部142は、助手席22に着座した同乗者M2によって操作されるスイッチとして設けられている。
このように本実施形態では、空調設定を変更するための操作を受け付ける操作部141、142が、車室RM内における複数箇所に設けられている。操作部の数は2つに限定される必要はなく、3つ以上の操作部が、互いに異なる位置に設けられているような態様であってもよい。
内気温センサ151は、車室RM内の気温を検知するためのセンサである。また、外気温センサ152は、車両10の外側の気温を検知するためのセンサである。内気温センサ151及び外気温センサ152により測定されたそれぞれの気温は、いずれも制御装置110に入力される。
日射センサ160は、車室RM内に外から入射する日光の強度、及びその分布を計測するためのセンサである。日射センサ160によって計測される日光の強度分布は、制御装置110に入力される。
着座センサ171は、運転席21に運転者M1が着座していることを検知するためのセンサである。また、着座センサ172は、助手席22に同乗者M2が着座していることを検知するためのセンサである。着座センサ171、172の検知結果は、いずれも制御装置110に入力される。着座センサ171、172は、車両10のそれぞれの座席における乗員の有無を検知するためのものであり、本実施形態における「乗員検知部」に該当する。このような着座センサは、前方側の座席である運転席21及び助手席22のみならず、後部側の座席にも設けられていてもよい。
空調機構部120は、車室RM内の空調を行うための機構部分である。空調機構部120は、不図示のコンプレッサ、凝縮器、蒸発器、絞り弁、送風ファン、等を有しており、これら全体で一つの冷凍サイクルが構成されている。制御装置110によって、送風ファンの回転数や絞り弁の開度、空調機構部120に設けられた各種ドア(不図示)の動作等が制御され、これにより車室RM内に吹き出される空調風の温度や風量等が調整される。空調機構部120の具体的な構成は公知のものであるから、具体的な図示や説明は省略する。
IRセンサ131は、車室RM内にある物体の表面温度を、当該物体からの輻射(赤外線)に基づいて検知するセンサである。IRセンサ131は、車両10に乗っている乗員の表面温度を検知し、当該表面温度に基づいて空調を適切に行うための温度センサとして設けられている。IRセンサ131によって検知された表面温度は、制御装置110に入力される。IRセンサ131は、本実施形態における「温度検知部」に該当する。
搖動機構部132は、IRセンサ131を搖動させてその向きを変化させるための駆動装置である。搖動機構部132は不図示のステッピングモータを備えている。ステッピングモータは、その回転軸を鉛直方向に沿わせた状態でインストルメントパネル26上に配置されており、当該回転軸にIRセンサ131が固定されている。搖動機構部132が動作し、IRセンサ131の向きが変化すると、IRセンサ131によって表面温度が検知される領域(以下、「被検知領域」と称する)の位置が変化する。搖動機構部132の動作は制御装置110によって制御される。
制御装置110は、機能的な制御ブロックとして、搖動制御部111と、特定部112と、空調制御部113とを備えている。
搖動制御部111は、搖動機構部132の動作を制御する部分である。特定部112は、操作部141や操作部142に対し操作を行った乗員を特定する特定する部分である。つまり、特定部112は、空調設定を変更する操作を行った乗員を特定する部分である。その特定方法については後述する。空調制御部113は、空調機構部120の動作を制御する部分である。
引き続き図2を参照しながら、車両10のうち車室RM内の構成について説明する。車室RM内のうち前方側部分には、右側の座席である運転席21と、左側の座席である助手席22とが、互いに隣り合うように設けられている。また、後方側部分には、右側の座席である第1後部座席23と、左側の座席である第2後部座席24とが、互いに隣り合うように設けられている。図2には、運転席21に着座している運転者M1と、助手席22に着座している同乗者M2と、第1後部座席23に着座している同乗者M3と、第2後部座席24に着座している同乗者M4と、が示されている。符号25が付されているのはステアリングハンドルである。
運転席21及び助手席22の前方側には、インストルメントパネル26が設けられている。インストルメントパネル26のうち左右方向における中央部には、吹き出し口27が形成されている。吹き出し口27は、車両用空調装置100(具体的には空調機構部120)によって温度調整された空気、すなわち空調風の出口である。吹き出し口27から空調風が吹き出されることにより、車室RM内の空調が行われる。
インストルメントパネル26の上面のうち、左右方向における中央となる位置には、日射センサ160が設けられている。日射センサ160は、前方のフロントガラスから車室RM内に入射する日光の強度分布を測定する。日射センサ160により、運転席21側及び助手席22側のどちらから日光が入射しているのかを検知することができる。
インストルメントパネル26の上面のうち、左右方向における中央となる位置には、IRセンサ131が設置されている。既に述べたように、IRセンサ131は、車両10に乗っている乗員の表面温度を検知するための温度センサである。IRセンサ131は、搖動機構部132を介してインストルメントパネル26の上面に取り付けられている。
尚、IRセンサ131は、インストルメントパネル26の上面よりも高い場所、例えば天井にあるオーバーヘッドコンソール(不図示)に設置されてもよい。IRセンサ131の設置場所は、各乗員の表面からの輻射が直接到達し得るような場所とすることが好ましい。
図2では、IRセンサ131によって表面温度を一度に検知し得る範囲が、範囲RG1として示されている。本実施形態のIRセンサ131は画素数が少ない安価なものであり、その検知範囲が比較的狭角となっている。IRセンサ131によって表面温度を一度に検知し得る範囲RG1が狭いので、全ての乗員(運転者M1、同乗者M2、M3、M4)の表面温度を一度に且つ同時に検知することはできない。
そこで、本実施形態に係る車両用空調装置100では、搖動機構部132の動作によりIRセンサ131の向きを変化させて行くことで、それぞれの乗員の表面温度を順に検知して行くように構成されている。具体的には、搖動機構部132がIRセンサ131を周期的に左右に搖動させることで、車室RM内における各部の表面温度を検知して行くような構成となっている。
図2では、IRセンサ131の搖動によって表面温度を検知し得る範囲の全体が、範囲RG0として示されている。IRセンサ131が搖動すると、範囲RG1の向きが範囲RG0の中で変化していく。つまり、被検知領域の位置が、範囲RG0の中で左右に移動していく。図2に示されている状態においては、運転者M1の表面の一部が被検知領域となっている。範囲RG0は、着座している全ての乗員(運転者M1、同乗者M2、M3、M4)の表面を含むような範囲として設定されている。
車両用空調装置100による空調が行われているときには、制御装置110は、IRセンサ131が左右に搖動し、被検知領域の位置が範囲RG0の中を周期的に左右に移動するように、搖動機構部132の動作を制御する。これにより、それぞれの乗員の表面温度が順に検知されていく。制御装置110は、内気温センサ151で検知された車室RM内の気温、及び外気温センサ152で検知された外気温に加えて、IRセンサ131で検知された各乗員の表面温度をも考慮しながら、車室RM内の空調を制御する。各乗員の表面温度をも考慮しながら空調制御を行うことにより、それぞれの乗員が感じる温熱感を適切なものとすることができる。
ところで、車室RM内においてそれぞれの乗員が感じる温熱感は、時間の経過と共に変化する。このため、一部の乗員が例えば「寒い」と感じるようになったときには、車両用空調装置100は当該乗員の表面温度を迅速に検知し、当該乗員が再び快適と感じるように空調の制御を変更することが望ましい。
しかしながら、車両用空調装置100は、温度の測定範囲である被検知領域を移動させながら各乗員の表面温度を順次検知して行くように構成されている。このため、一部の乗員が感じる温熱感が不快なものとなっても、当該乗員の表面温度を検知するまでに時間がかかってしまうことが懸念される。その結果、空調の制御の変更が遅れてしまい、当該乗員が再び快適と感じるようになるまでに時間がかかってしまうことが懸念される。
そこで、本実施形態に係る車両用空調装置100では、不快と感じ始めた乗員の表面温度を迅速に検知することができるよう、搖動機構部132の動作を工夫している。本実施形態における搖動機構部132の動作の概要について、図3を参照しながら説明する。
図3(A)に示されるのは、IRセンサ131が向いている方向の時間変化である。図3(A)では、運転者M1の方向である方向P1と、同乗者M2の方向である方向P2との間で、IRセンサ131の向きが変化する様子が示されている。IRセンサ131が方向P1を向いているときには、図2の範囲RG1は、範囲RG0のうち最も右側にある状態となっている。また、IRセンサ131が方向P2を向いているときには、図2の範囲RG1は、範囲RG0のうち最も左側にある状態となっている。
図3(B)に示されるのは、空調風について設定温度の時間変化である。この設定温度は、先に述べた「空調設定」の一部であって、吹き出し口27から吹き出される空調風の目標温度として乗員が設定する温度である。図3(B)の例では、時刻t0から時刻t10までの期間における設定温度が温度T2に設定されている。時刻t10においては、運転者M1が操作部141に対して行った操作に基づいて、設定温度が温度T2から温度T1へと変更されている。温度T1は、温度T2よりも低い温度である。更に、時刻t10よりも後の時刻t20においては、運転者M1が再び操作部141又に対して行った操作に基づいて、設定温度が温度T1から温度T2へと変更されている。
図3(A)に示されるように、時刻t0から時刻t10までの期間においては、IRセンサ131は搖動機構部132によって駆動され、既に述べたような搖動動作を行っている。このため、IRセンサ131が方向P1を向いている状態と、方向P2を向いている状態とが周期的に繰り返されている。つまり、範囲RG0内の各部における表面温度が、IRセンサ131によってスキャンされ続けている。
時刻t10よりも前の時刻t09においては、IRセンサ131が方向P1を向いた状態となっている。つまり、IRセンサ131が搖動し得る範囲RG0のうち最も右側を向いた状態となっている。時刻t09以降は、IRセンサ131の向きが左側に向かって移動し始めている。
時刻t10において運転者M1が操作部141を操作すると、特定部112が、空調設定を変更する操作を行った乗員(つまり運転者M1)を特定する。運転者M1が空調設定を変更したということは、運転者M1は、現在の温熱感を不快と感じているものと推測される。
そこで、搖動制御部111は、時刻t10において搖動機構部132の動作方向を反転させる。具体的には、IRセンサ131の向きが左側に向かって移動している状態から、右側に向かって移動するように搖動機構部132の動作を制御する。このため、時刻t10の直後である時刻t11において、IRセンサ131が方向P1を向いた状態となっている。つまり、特定部112によって特定された乗員(つまり運転者M1)の身体が被検知領域に含まれた状態となっている。
制御装置110は、運転者M1が操作部141を操作した時点、すなわち運転者M1が不快と感じた時点から短期間のうちに、運転者M1の表面温度を取得して、運転者M1が感じている温熱感を把握することができる。運転者M1の表面温度を、操作部141が操作された時点から殆ど変化しないうちに取得することができるので、運転者M1が不快と感じていた時点において運転者M1が感じていた温熱感を正確に取得することができる。これにより、運転者M1に再び快適と感じさせるような制御を、短時間のうちに且つ正確に実行することができる。
IRセンサ131が方向P1を向いた状態となった時刻t11以降においては、搖動制御部111は、再び時刻t0以降と同様の制御を行う。これにより、IRセンサ131が方向P1を向いている状態と、方向P2を向いている状態とが再び繰り返される。
時刻t20において運転者M1が操作部141を操作したときにも、上記と同様の制御が行われる。すなわち、特定部112が、空調設定を変更する操作を行った乗員(つまり運転者M1)を先ず特定する。その後、搖動制御部111が、時刻t20において搖動機構部132の動作方向を反転させる。時刻t19以降において左側に向かって変化していたIRセンサ131の向きは、時刻t20以降は右側に向かって変化することとなる。時刻t20の直後である時刻t21には、IRセンサ131が方向P1を向いた状態となる。
以上のように、本実施形態においては、操作部141に対し乗員による操作が行われると、搖動制御部111は、特定部112によって特定された乗員の身体が被検知領域に含まれた状態となるように、搖動機構部132を動作させる。このような制御は、同乗者M2が操作部142を操作して空調設定を変更した場合でも同様に実行される。この場合、特定部112が、空調設定を変更する操作を行った乗員(同乗者M2)を先ず特定する。その後、搖動制御部111が、搖動機構部132の動作方向を必要に応じて反転させることにより、IRセンサ131の向きを同乗者M2側に移動させる。その結果、同乗者M2の身体が短時間のうちに被検知領域に含まれた状態となる。
このような制御を実現するために、制御装置110によって実行される処理の具体的な内容について、図4を参照しながら説明する。図4に示される一連の処理は、所定の制御周期が経過する毎に繰り返し実行される。尚、IRセンサ131の向きを左右に搖動させるための処理は、図4に示される一連の処理と並行して別途実行されている。
最初のステップS01では、空調設定を変更する操作が乗員によって行われたか否かが判定される。つまり、操作部141及び操作部142のいずれかに対する操作が行われたか否かが判定される。空調設定を変更する操作が行われていなかった場合には、図4に示される一連の処理を終了する。空調設定を変更する操作が行われていた場合には、ステップS02に移行する。
ステップS02では、空調設定を変更した乗員(以下では「操作者」とも称する)を特定するための処理が、特定部112によって行われる。
図5を参照しながら、特定部112によって行われる上記処理の内容について説明する。図5に示されるフローチャートは、図4のステップS02において実行される具体的な処理の流れを示している。
最初のステップS11では、2つの操作部141、142のうちどちらが操作されたのかが判定される。運転席21側の操作部141が操作された場合には、ステップS12に移行する。操作部141が操作されたのであれば、その操作を行ったのは、操作部141に近い方の座席、すなわち運転席21に着座している運転者M1である可能性が高い。そこで、ステップS12では、操作者として運転者M1が特定される。
ステップS11において、運転席21側の操作部141が操作されなかった場合、すなわち助手席22側の操作部142が操作された場合には、ステップS13に移行する。操作部142が操作されたのであれば、その操作を行ったのは、操作部142に近い方の座席、すなわち助手席22に着座している同乗者M2である可能性が高い。そこで、ステップS13では、操作者として同乗者M2が特定される。
このように、本実施形態における特定部112は、乗員による操作が行われた操作部(141又は142)の位置に基づいて、当該操作部に対し操作を行った乗員を特定する。具体的には、特定部112は、乗員による操作が行われた操作部の位置に最も近い座席、に着座している乗員を、操作部に対し操作を行った乗員として特定する。
図4に戻って説明を続ける。ステップS02に続くステップS03では、IRセンサ131を、ステップS02で特定された乗員に向ける処理が行われる。当該処理は、図3の時刻t10から時刻t11までの期間、及び時刻t20から時刻t21までの期間において、搖動制御部111によって実行される処理である。これにより、操作者の身体が被検知領域に含まれた状態となり、操作者の表面温度が迅速に測定される。
ステップS03に続くステップS04では、IRセンサ131の向きを左右に搖動させるための処理が再開される。当該処理は、図3の時刻t11以降、及び時刻t21以降の期間において、搖動制御部111によって実行される処理である。
第2実施形態について、図6を参照しながら説明する。本実施形態では、空調設定を変更する操作を受け付けるための操作部140が1つしか設けられていない点、及び、特定部112が行う処理の内容において第1実施形態と異なっている。その他については第1実施形態と同じである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
操作部140は、インストルメントパネル26のうち左右中央となる位置に設けられている。操作部140は、運転者M1及び同乗者M2のいずれによっても操作され得るスイッチとして設けられている。このため、第1実施形態のように、乗員による操作が行われた操作部(141又は142)の位置に基づいて、当該操作部に対し操作を行った乗員を特定部112が特定することはできない。
そこで、本実施形態における特定部112は、日射センサ160からの情報に基づいて操作者を特定する。そのために実行される具体的な処理の流れについて、図7を参照しながら説明する。図7に示される一連の処理は、図5に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS21では、運転席21側から日光が入射しているか否かが判定される。運転席21側における日光の強度が、助手席22側における日光の強度よりも大きい場合には、運転席21側から日光が入射していると判定されステップS22に移行する。
ステップS22に移行した場合には、運転席21に着座している運転者M1に多くの日光が当たっており、これにより運転者M1が不快(暑い)と感じている可能性が高い。このため、図4のステップS01において行われた設定変更が、例えば冷房時における空調風の風量を増加させるものであった場合には、その設定変更を行った乗員は運転者M1である可能性が高い。そこで、ステップS22では、操作者として運転者M1が特定される。
ステップS21における判定が否定であった場合、すなわち、助手席22側から日光が入射していると判定された場合には、ステップS23に移行する。ステップS23に移行した場合には、助手席22に着座している同乗者M2に多くの日光が当たっており、これにより同乗者M2が不快(暑い)と感じている可能性が高い。このため、図4のステップS01において行われた設定変更が、例えば冷房時における空調風の風量を増加させるものであった場合には、その設定変更を行った乗員は同乗者M2である可能性が高い。そこで、ステップS23では、操作者として同乗者M2が特定される。
本実施形態では、日射センサ160の検知結果に基づいて、運転者M1及び同乗者M2のどちらがより不快と感じているのかが推定され、これに基づいて操作者の特定が行われる。このような日射センサ160は、車両10の乗員が感じる温熱感に関する情報(本実施形態では日射量)を検知するための「温熱感センサ」に該当する。
特定部112は、温熱感センサである日射センサ160からの情報に基づいて操作者を特定する。具体的には、日射センサ160からの情報に基づいて最も不快と感じていると推測される乗員を操作者として特定する。以上のような態様であっても、第1実施形態において説明したものと同様の効果を奏する。
第3実施形態について、図8を参照しながら説明する。本実施形態では、特定部112が行う処理の内容において第2実施形態と異なっている。その他については第2実施形態と同じである。以下では、第2実施形態と異なる点についてのみ説明し、第2実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態でも図6に示される第2実施形態と同様に、空調設定を変更する操作を受け付けるための操作部140が1つしか設けられていない。本実施形態における特定部112は、図8に示される一連の処理を行うことによって操作者を特定する。図8に示される一連の処理は、図7に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
尚、制御装置110では、IRセンサ131の向きを左右に搖動させながら各乗員の表面温度を取得しており、これに基づいて各乗員の温熱感をそれぞれ算出している。この温熱感は、例えば乗員が暑いと感じているときには「+2」と算出され、乗員が少し暑いと感じているときには「+1」と算出され、乗員がちょうど良いと感じているときには「±0」と算出される。また、乗員が少し寒いと感じているときには温熱感が「−1」と算出され、乗員が寒いと感じているときには温熱感が「−2」と算出される。それぞれの乗員についての温熱感は、当該乗員の表面温度がIRセンサ131により測定された際において算出され、その後は次回の算出時までその値が維持される。
最初のステップS31では、運転者M1が感じている温熱感が不快なものであるか否かが判定される。ここでは、運転者M1について前回算出された上記温熱感の数値が0以外の値であれば、運転者M1が感じている温熱感が不快であると判定され、ステップS32に移行する。
ステップS32に移行した場合には、設定変更を行った乗員は、温熱感を不快と感じている運転者M1である可能性が高い。そこで、ステップS32では、操作者として運転者M1が特定される。
尚、運転者M1のみならず同乗者M2も不快と感じていた場合には、設定変更を行った乗員が同乗者M2である可能性もある。そこで、ステップS31の判定では、運転者M1について前回算出された上記温熱感の数値が0以外の値であり、且つ同乗者M2について前回算出された上記温熱感の数値が0である場合(同乗者M2は快適と感じている場合)にのみ、ステップS32に移行することとしてもよい。
ステップS31において、運転者M1について前回算出された上記温熱感の数値が0である場合には、ステップS33に移行する。ステップS33に移行した場合には、設定変更を行った乗員は、温熱感を快適と感じている運転者M1ではない可能性が高い。そこで、ステップS32では、操作者として同乗者M2が特定される。
本実施形態では、IRセンサ131の検知結果(つまり乗員の表面温度)に基づいて、運転者M1及び同乗者M2のどちらがより不快と感じているのかが推定され、これに基づいて操作者の特定が行われる。このようなIRセンサ131は、車両10の乗員が感じる温熱感に関する情報(本実施形態では表面温度)を検知するための「温熱感センサ」に該当する。つまり本実施形態では、温度検知部であるIRセンサ131が「温熱感センサ」としても機能する。
第4実施形態について、図9を参照しながら説明する。本実施形態では、特定部112が行う処理の内容において第2実施形態と異なっている。その他については第2実施形態と同じである。以下では、第2実施形態と異なる点についてのみ説明し、第2実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態でも図6に示される第2実施形態と同様に、空調設定を変更する操作を受け付けるための操作部140が1つしか設けられていない。本実施形態における特定部112は、着座センサ172の検知結果をも用いながら、図9に示される一連の処理を行うことによって操作者を特定する。図9に示される一連の処理は、図7に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS41では、着座センサ172により、助手席22における同乗者M2の着座が検知されたか否かが判定される。同乗者M2の着座が検知されなかった場合、すなわち、同乗者M2が助手席22にいなかった場合には、ステップS43に移行する。
ステップS43に移行したということは、操作部140に対し操作を行い得る位置に存在している乗員は、運転者M1の一人のみということである。このため、ステップS43では、当該乗員である運転者M1が操作者として特定される。
ステップS41において、同乗者M2の着座が検知された場合には、ステップS42に移行する。ステップS42に移行した場合には、操作部140に対し操作を行い得る位置に存在している乗員が二人(運転者M1と同乗者M2)存在するので、それだけでは操作者を特定することができない。この場合は、図7に示される方法と同じ方法で操作者の特定が行われる。
ステップS42では、運転席21側から日光が入射しているか否かが判定される。当該処理は、図7のステップS21において行われる処理と同一である。運転席21側における日光の強度が、助手席22側における日光の強度よりも大きい場合には、運転席21側から日光が入射していると判定されステップS43に移行する。その結果、運転者M1が操作者として特定される。
ステップS42における判定が否定であった場合、すなわち、助手席22側から日光が入射していると判定された場合には、ステップS44に移行する。その結果、同乗者M2が操作者として特定される。
このように、本実施形態における特定部112は、乗員検知部である着座センサ172によって検知された乗員(同乗者M2)の有無に基づいて、操作部140に対し操作を行った乗員を特定する。具体的には、特定部112は、着座センサ171、172によってその存在が検知された乗員のうち、操作部140に対し操作を行い得る位置に存在している乗員が一人のみであった場合に、当該乗員を、操作部140に対し操作を行った乗員として特定する。
更に、本実施形態における特定部112は、着座センサ171、172によって検知された乗員の有無に基づいて、操作部140に対し操作を行った乗員を特定することができなかった場合(ステップS41からステップS42に移行した場合)には、温熱感センサである日射センサ160からの情報に基づいて、操作部140に対し操作を行った乗員を特定する。以上のような態様であっても、第1実施形態において説明したものと同様の効果を奏する。
尚、ステップS42以降では、図8に示される方法と同じ方法で操作者の特定が行われることとしてもよい。つまり、日射センサ160からではなくIRセンサからの情報に基づいて、操作者の特定が行われることとしてもよい。
第5実施形態について、図10を参照しながら説明する。本実施形態では、特定部112が行う処理の内容において第2実施形態と異なっている。その他については第2実施形態と同じである。以下では、第2実施形態と異なる点についてのみ説明し、第2実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
本実施形態でも図6に示される第2実施形態と同様に、空調設定を変更する操作を受け付けるための操作部140が1つしか設けられていない。
図示は省略するが、本実施形態における車両10には、運転席21に向けて空調風を吹き出すための吹き出し口と、助手席22に向けて空調風を吹き出すための吹き出し口とが、個別に形成されている。また、本実施形態に係る車両用空調装置100は、それぞれの吹き出し口から吹き出される空調風の温度を互いに異ならせることができる。車両用空調装置100では、運転者M1又は同乗者M2が操作部140を操作することにより、運転席21に向けて吹き出される空調風の温度設定、及び助手席22に向けて吹き出される空調風の温度設定、のいずれをも行うことが可能となっている。
本実施形態における特定部112は、図10に示される一連の処理を行うことによって操作者を特定する。図10に示される一連の処理は、図7に示される一連の処理に換えて実行されるものである。
最初のステップS51では、操作部140に対して行われた操作が、運転席21に向けて吹き出される空調風の温度設定を変更するものであったか否か、すなわち、運転席21用の空調設定を変更するような態様の操作であったか否かが判定される。当該操作が運転席21用の空調設定を変更する態様の操作であった場合には、ステップS52に移行する。ステップS52に移行した場合には、操作部140の操作を行ったのは運転席21に着座している運転者M1である可能性が高い。このため、運転者M1が操作者として特定される。
ステップS51において、操作部140に対して行われた操作が運転席21用の空調設定を変更する態様の操作でなかった場合、すなわち、当該操作が助手席22用の空調設定を変更する態様の操作であった場合には、ステップS53に移行する。ステップS53に移行した場合には、操作部140の操作を行ったのは助手席22に着座している同乗者M2である可能性が高い。このため、同乗者M2が操作者として特定される。
以上のように、本実施形態における特定部112は、操作部140に対して行われた操作の態様に基づいて、操作部140に対し操作を行った乗員を特定する。このような態様であっても、第1実施形態において説明したものと同様の効果を奏する。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。