図1〜図8を用いて、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を、内燃機関(すなわち、エンジン)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。この冷凍サイクル装置10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たす。
冷凍サイクル装置10は、冷房モードの冷媒回路(図1参照)、直列除湿暖房モードの冷媒回路(図1参照)、並列除湿暖房モードの冷媒回路(図2参照)、および暖房モードの冷媒回路(図3参照)を切り替え可能に構成されている。図1〜図3では、それぞれの運転モードにおける冷媒の流れを太実線矢印で示している。
車両用空調装置1において、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、圧縮機11吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
冷凍サイクル装置10において、圧縮機11は、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車両のボンネット内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、後述する車両用空調装置1の室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、後述する室内蒸発器23を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
本実施形態では、室内凝縮器12として、複数の冷媒チューブ、分配用タンク、集合用タンク等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器を採用している。
冷媒チューブは、内部に冷媒を流通させる管状部材である。複数の冷媒チューブは、集合用タンクおよび分配用タンクの長手方向に積層配置されている。隣り合う冷媒チューブの間には、送風空気を流通させる空気通路が形成されており、さらに、冷媒と送風空気との熱交換を促進するフィンが配置されている。これにより、冷媒と送風空気とを熱交換させる熱交換部が形成されている。
複数の冷媒チューブの両端部には、集合用タンクおよび分配用タンクが接続されている。分配用タンクには、冷媒入口が形成されている。従って、冷媒入口から分配用タンク内へ流入した冷媒は、複数の冷媒チューブに分配される。集合タンクには、冷媒出口が形成されている。従って、複数の冷媒チューブから集合用タンク内に集合した冷媒は、冷媒出口から流出する。
つまり、本実施形態の室内凝縮器12では、冷媒が複数の冷媒チューブ内を分配用タンク側から集合用タンク側に向かって一方向へ流れる、いわゆるワンパスタイプの熱交換器として構成されている。また、本実施形態では、集合用タンクが分配用タンクよりも鉛直方向下方側に配置されている。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
さらに、冷凍サイクル装置10では、後述するように、第2〜第4三方継手13b〜13d等の複数の三方継手を備えている。第2〜第4三方継手13b〜13d等の基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
第1三方継手13aの一方の流出口には、第1膨張弁14aの入口側が接続されている。また、第1三方継手13aの他方の流出口には、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口側と第2三方継手13bの一方の流入口側とを接続する第1冷媒通路18aには、第1開閉弁15aが配置されている。
第1開閉弁15aは、第1冷媒通路18aを開閉する電磁弁である。さらに、冷凍サイクル装置10では、後述するように、第2開閉弁15bを備えている。第2開閉弁15bの基本的構成は、第1開閉弁15aと同様である。
第1、第2開閉弁15a、15bは、冷媒通路を開閉することで、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1、第2開閉弁15a、15bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置である。第1、第2開閉弁15a、15bは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
第1膨張弁14aは、少なくとも暖房モード時に、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒を減圧させる減圧装置である。第1膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
さらに、冷凍サイクル装置10では、後述するように、第2膨張弁14bを備えている。第2膨張弁14bの基本的構成は、第1膨張弁14aと同様である。これらの第1、第2膨張弁14a、14bは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能によって、第1、第2膨張弁14a、14bは、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1、第2膨張弁14a、14bは、冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。第1、第2膨張弁14a、14bは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第1膨張弁14aの出口には、室外熱交換器20の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器20は、第1膨張弁14aから流出した冷媒と外気ファン20aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器20は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。
室外熱交換器20は、少なくとも冷房モード時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能し、少なくとも暖房モード時には、低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。外気ファン20aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動式の外気送風機である。
室外熱交換器20の冷媒出口には、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cの一方の流出口には、第2三方継手13bの他方の流入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口には、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。
第3三方継手13cの他方の流出口側と第4三方継手13dの一方の流入口側とを接続する第2冷媒通路18bには、第2冷媒通路18bを開閉する第2開閉弁15bが配置されている。
第3三方継手13cの一方の流出口側と第2三方継手13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁21が配置されている。逆止弁21は、第3三方継手13c側(すなわち、室外熱交換器20側)から第2三方継手13b側(すなわち、第2膨張弁14b側)へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手13b側から第3三方継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する機能を果たすものである。
第2三方継手13bの流出口には、第2膨張弁14bの入口側が接続されている。第2膨張弁14bは、少なくとも冷房モード時に、室外熱交換器20から流出した冷媒を減圧させる電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁14bの出口には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器23は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内蒸発器23は、少なくとも冷房モード時に、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器23の冷媒出口側には、蒸発圧力調整弁26の入口側が接続されている。この蒸発圧力調整弁26は、機械的機構で構成されており、室内蒸発器23の着霜を抑制するために、室内蒸発器23における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に調整する機能を果たす。換言すると、蒸発圧力調整弁26は、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器23の着霜を抑制可能な基準温度以上に調整する機能を果たす。
蒸発圧力調整弁26の出口には、第4三方継手13dの他方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dの流出口には、アキュムレータ24の入口側が接続されている。アキュムレータ24は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ24の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すために、その外殻を形成する空調ケース31内に形成された空気通路内に送風機32、室内蒸発器23、ヒータコア39、室内凝縮器12等を収容したものである。
ヒータコア39は、エンジン冷却水と室内蒸発器23通過後の送風空気とを熱交換させることによって、送風空気を補助的に加熱する補助加熱用熱交換器である。ヒータコア39は、エンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水回路に接続されている。
空調ケース31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。空調ケース31の送風空気流れ最上流側には、空調ケース31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器23、ヒータコア39、室内凝縮器12が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器23は、ヒータコア39および室内凝縮器12よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
空調ケース31内には、室内蒸発器23通過後の送風空気を、ヒータコア39および室内凝縮器12を迂回して流すバイパス通路35が設けられている。また、空調ケース31内の室内蒸発器23の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア39および室内凝縮器12の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
エアミックスドア34は、室内蒸発器23通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12側を通過する送風空気の風量とバイパス通路35を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
室内凝縮器12およびバイパス通路35の送風空気流れ下流側には、ヒータコア39および室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気とバイパス通路35を通過して加熱されていない送風空気が合流する合流空間36が形成されている。このため、エアミックスドア34が、風量割合を調整することによって、合流空間36にて合流した送風空気の温度が調整される。
空調ケース31の送風空気流れ最下流部には、合流空間36にて温度調整された送風空気を、車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。具体的には、この開口穴としては、フット開口穴37a、フェイス開口穴37b、デフロスタ開口穴37cが設けられている。
フット開口穴37aは、空調風を乗員の足元に向けて吹き出すための開口穴である。フェイス開口穴37bは、空調風を車室内の乗員の上半身に向けて吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴37cは、空調風を車両前面窓ガラス内側面に向けて吹き出すための開口穴である。
ここで、本実施形態の空調ケース31では、フェイス開口穴37bおよびデフロスタ開口穴37cが、フット開口穴37aよりも鉛直方向上方側に配置されている。
このため、フェイス開口穴37bおよびデフロスタ開口穴37cから流出する送風空気は、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも上方側、すなわち分配用タンクに近い側の部位にて加熱された送風空気となりやすい。換言すると、フェイス開口穴37bおよびデフロスタ開口穴37cから流出する送風空気は、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ上流側の部位にて加熱された送風空気となる。
一方、フット開口穴37aから流出する送風空気は、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも下方側、すなわち集合用タンクに近い側の部位にて加熱された送風空気となりやすい。換言すると、フット開口穴37aから流出する送風空気は、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ下流側の部位にて加熱された送風空気となる。
さらに、フット開口穴37a、フェイス開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cの送風空気流れ上流側には、それぞれ、フット開口穴37aの開口面積を調整するフットドア38a、フェイス開口穴37bの開口面積を調整するフェイスドア38b、デフロスタ開口穴37cの開口面積を調整するデフロスタドア38cが配置されている。
フットドア38a、フェイスドア38b、およびデフロスタドア38cは、各開口穴37a〜37cを開閉して、吹出モードを切り替える吹出モードドアであり、吹出モード切替装置を構成している。各ドア38a〜38cは、リンク機構等を介して、吹出モードドア用の電動アクチュエータ61によって回転操作される。この電動アクチュエータ61は、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
フット開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびデフロスタ開口穴37cの送風空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。
また、吹出モード切替装置によって切り替えられる吹出モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス開口穴37bを全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて送風空気を吹き出す吹出モードである。バイレベルモードは、フェイス開口穴37bとフット開口穴37aの両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて送風空気を吹き出す吹出モードである。フットモードは、フット開口穴37aを全開するとともにデフロスタ開口穴37cを小開度だけ開口して、主にフット吹出口から送風空気を吹き出す吹出モードである。
従って、本実施形態のフェイスモードは、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ上流側の部位にて加熱された送風空気を吹き出す第1吹出モードである。また、本実施形態のフットモードは、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ下流側の部位にて加熱された送風空気を吹き出す第2吹出モードである。
さらに、乗員が操作パネル50に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ開口穴37cを全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に送風空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、図4を用いて、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器の作動を制御する。
空調制御装置40の出力側には、圧縮機11、第1、第2膨張弁14a、14b、第1、第2開閉弁15a、15b、外気ファン20a、送風機32、その他の電動アクチュエータ等が接続されている。
空調制御装置40の入力側には、内気温センサ41、外気温センサ42、日射センサ43、流入空気温度センサ44、第1〜第3冷媒温度センサ45a〜45c、高圧センサ46a、室外器圧力センサ46b、蒸発器温度センサ47、空調風温度センサ48等が接続されている。そして、空調制御装置40には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ41は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ42は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ43は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。流入空気温度センサ44は、室内凝縮器12へ流入する送風空気の流入空気温度TAinを検出する流入空気温度検出部である。
第1冷媒温度センサ45aは、圧縮機11から吐出されて室内凝縮器12へ流入する冷媒の入口側冷媒温度Tdを検出する第1冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ45bは、室内凝縮器12から流出した冷媒の出口側冷媒温度Thを検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ45cは、室外熱交換器20から流出した冷媒の温度(室外熱交換器20温度)Tsを検出する第3冷媒温度検出部である。
高圧センサ46aは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14aの入口側へ至る冷媒通路の高圧側冷媒圧力Phを検出する高圧冷媒圧力検出部である。室外器圧力センサ46bは、室外熱交換器20から流出した室外冷媒圧力Psを検出する室外器圧力検出部である。蒸発器温度センサ47は、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ48は、合流空間36から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
さらに、空調制御装置40の入力側には、図4に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続され、この操作パネル50に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル50に設けられた各種操作スイッチとしては、作動スイッチ、オートスイッチ、運転モード切替スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等がある。
作動スイッチは、車両用空調装置1の作動を要求する作動要求設定部である。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定部である。運転モード切替スイッチは、冷房モード等の運転モードを設定する運転モード設定部である。風量設定スイッチは、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定部である。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetをマニュアル設定する温度設定部である。吹出モード切替スイッチは、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード設定部である。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)は、吐出能力制御部40aである。第1膨張弁14aの絞り開度を制御する構成は、減圧装置制御部40bである。第1、第2開閉弁15a、15b等の冷媒回路切替装置の作動を制御する構成は、冷媒回路制御部40cである。外気ファン20aの送風能力を制御する構成は、外気ファン制御部40dである。送風機32の送風能力を制御する構成は、送風機制御部40eである。吹出モードドア用の電動アクチュエータ61の作動を制御する構成は、吹出モード制御部40fである。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行う。このため、冷凍サイクル装置10では、冷房モードの運転、直列除湿暖房モードの運転、並列除湿暖房モードの運転、および暖房モードの運転を切り替えることができる。
これらの各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)されて、自動制御が設定された際に実行される。図5のフローチャートを用いて、空調制御プログラムのメインルーチンについて説明する。なお、図5、図6のフローチャートに示す各制御ステップは、空調制御装置40が有する各種の機能実現部である。
まず、図5のステップS1では、空調制御装置40の記憶回路によって構成されるフラグ、タイマ等の初期化、上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。ステップS2では、空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネル50の操作信号を読み込む。
ステップS3では、ステップS2で読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式1に基づいて算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温センサ41によって検出された内気温、Tamは外気温センサ42によって検出された外気温、Asは日射センサ43によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
ステップS4では、運転モードを決定する。具体的には、操作パネル50の運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、冷房モードに決定される。
また、運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが予め定めた除湿暖房基準温度βよりも高くなっている場合には、直列除湿暖房モードに決定される。
また、運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが除湿暖房基準温度β以下になっている場合には、並列除湿暖房モードでの運転に決定される。また、運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定されていない場合には、暖房モードに決定される。
これにより、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行される。直列除湿暖房モードは、主に春季あるいは秋季に実行される。並列除湿暖房モードは、主に早春季あるいは晩秋季のように直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を加熱する必要のある場合に実行される。暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行される。
さらに、ステップS4にて、運転モードが暖房モードに決定された際には、空調制御装置40が、図6に示すサブルーチンを実行する。これにより、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、通常暖房モードと低流量暖房モードが切り替えられる。低流量暖房モードは、サイクルを循環する冷媒の循環冷媒流量が予め定めた基準流量よりも低下した低流量運転になった際に実行される暖房モードである。
図6のステップS41では、外気温Tamが基準外気温KTam以上になっているか否かを判定する。暖房運転時に外気温Tamが基準外気温KTam以上になっている際には、冷凍サイクル装置10の熱負荷が小さくなり、循環冷媒流量も少なくなりやすい。そこで、本実施形態では、暖房モード時に、循環冷媒流量が基準流量以下となり得る外気温を基準外気温KTamに設定している。
ステップS41にて、外気温Tamが基準外気温KTam以上になっていると判定された際には、ステップS42へ進む。また、ステップS41にて、外気温Tamが基準外気温KTam以上になっていないと判定された場合は、ステップS45へ進む。
ステップS42では、室内凝縮器12へ流入する送風空気の流入空気温度TAinが基準流入温度KTAin以上になっているか否かを判定する。流入空気温度TAinが基準流入温度KTAin以上になっている際には、冷凍サイクル装置10の熱負荷が小さくなり、循環冷媒流量も少なくなりやすい。そこで、本実施形態では、暖房モード時に、循環冷媒流量が基準流量以下となり得る流入空気温度を基準流入温度KTAinに設定している。
ステップS42にて、流入空気温度TAinが基準流入温度KTAin以上になっていると判定された際には、ステップS43へ進む。また、ステップS42にて、流入空気温度TAinが基準流入温度KTAin以上になっていないと判定された場合は、ステップS45へ進む。
ステップS43では、圧縮機11の冷媒吐出能力(具体的には、回転数Nc)が予め定めた基準吐出能力(具体的には、基準回転数KNc)以下になっているか否かを判定する。本実施形態では、暖房モード時に、循環冷媒流量が基準流量以下となり得る回転数を基準回転数KNcに設定している。
ステップS43にて、回転数Ncが基準回転数KNc以下になっていると判定された際には、ステップS44へ進む。また、ステップS43にて、回転数Ncが基準回転数KNc以下になっていないと判定された場合は、ステップS45へ進む。
ステップS44では、暖房モードとして、低流量暖房モードを実行することを決定してメインルーチンへ戻る。ステップS45では、暖房モードとして、通常暖房モードを実行することを決定してメインルーチンへ戻る。従って、本実施形態の制御ステップS41〜S43は、循環冷媒流量が予め定めた基準流量よりも低下した低流量運転になっていることを判定する低流量運転判定部である。
次に、図5に示すステップS5〜S12では、各種空調制御機器の制御状態が決定される。ステップS5では、各運転モードに応じて、送風機32の送風能力、すなわち、送風機32の電動モータに印可する制御電圧を決定する。送風機32に出力される制御電圧は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、低流量暖房モードを除く運転モードで、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で風量を増加させ、目標吹出温度TAOが中間温度域に近づくに伴って風量を減少させるように制御電圧を決定する。
ステップS6では、各運転モードに応じて、外気ファン20aの送風能力、すなわち、外気ファン20aの電動モータに印可する制御電圧を決定する。外気ファン20aに出力される制御電圧は、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、低流量運転モードを除く運転モードで、外気温Tamの低下に伴って、外気ファン20aの送風量を増加させるように制御電圧を決定する。
ステップS7では、吸込モード、すなわち内外気切替ドア用の電動アクチュエータに出力される制御信号を決定する。吸込モードは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、目標吹出温度TAOが極低温域あるいは極高温域となっている場合には、内気を導入する内気モードが選択される。
ステップS8では、吹出モード、すなわち吹出モードドア用の電動アクチュエータ61に出力される制御信号を決定する。吹出モードは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って、吹出モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択されやすい。
ステップS9では、各運転モードに応じて、第1、第2膨張弁14a、14bの作動状態、すなわち第1、第2膨張弁14a、14bへ出力される制御信号(制御パルス)が決定される。
ステップS10では、各運転モードに応じて、第1、第2開閉弁15a、15bの開閉状態、すなわち第1、第2開閉弁15a、15bへ出力される制御電圧が決定される。
ステップS11では、各運転モードに応じて、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号が決定される。
ステップS12では、各運転モードに応じて、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号が決定される。
そして、ステップS13では、上述のステップS6〜S12で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置40より各種空調制御機器に対して制御信号および制御電圧が出力される。続くステップS14では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2へ戻る。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを全開状態とし、第2膨張弁14bを減圧作用を発揮する絞り状態する。また、空調制御装置40は、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを閉じる。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全閉となり、バイパス通路35側が全開となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、冷房モードでは、図1の太実線矢印に示すように、圧縮機11(→室内凝縮器12→第1膨張弁14a)→室外熱交換器20→第2膨張弁14b→室内蒸発器23→蒸発圧力調整弁26→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。具体的には、室内蒸発器23から吹き出される送風空気が目標蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発器温度TEOが低下するように決定される。さらに、目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器23の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)で決定される。
また、空調制御装置40は、第2膨張弁14bへ流入する冷媒の過冷却度が冷房用の目標過冷却度となるように、第2膨張弁14bの絞り開度を調整する。冷房用の目標過冷却度は、室外器圧力センサ46bによって検出された室外冷媒圧力Psに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、サイクルのCOPが極大値に近づくように冷房用の目標過冷却度を決定する。
このため、冷房モードの冷凍サイクル装置では、室外熱交換器20が放熱器として機能し、室内蒸発器23が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。そして、室内蒸発器23にて冷媒が蒸発する際に送風空気から吸熱した熱を室外熱交換器20にて外気に放熱させることができる。これにより、送風空気を冷却することができる。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器23にて冷却された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(b)直列除湿暖房モード
直列除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とし、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを閉じる。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、直列除湿暖房モードでは、図1の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器20→第2膨張弁14b→室内蒸発器23→蒸発圧力調整弁26→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、冷房モードと同様に圧縮機11の作動を制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの作動を制御する。より具体的には、空調制御装置は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁14aの絞り開度を減少させ、第2膨張弁14bの絞り開度を増加させる。
このため、直列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、室内凝縮器12が放熱器として機能し、室内蒸発器23が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。さらに、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、室外熱交換器20は放熱器として機能し、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器20は蒸発器として機能する。
そして、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器20の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器20における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
また、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器20の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器20における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
従って、直列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。さらに、第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの絞り開度を調整することによって、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を調整することができる。
(c)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とし、第1開閉弁15aを開き、第2開閉弁15bを開く。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、並列除湿暖房モードでは、図2の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器20→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→第2膨張弁14b→室内蒸発器23→蒸発圧力調整弁26→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。すなわち、室外熱交換器20と室内蒸発器23が冷媒流れに対して並列的に接続される冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、冷房モードと同様に圧縮機11の作動を制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの作動を制御する。より具体的には、空調制御装置は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁14aの絞り開度を減少させる。
このため、並列除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、室内凝縮器12が放熱器として機能し、室外熱交換器20および室内蒸発器23が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。室外熱交換器20および室内蒸発器23にて冷媒が蒸発する際に吸熱した熱を室内凝縮器12にて送風空気に放熱させることができる。これにより、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を再加熱することができる。
従って、並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。さらに、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度(蒸発温度)を、室内蒸発器23における冷媒の飽和温度(蒸発温度)よりも低下させることができるので、直列除湿暖房モードよりも送風空気の加熱能力を増加させることができる。
(d)暖房モード
暖房モードでは、前述の如く、通常暖房モードと低流量暖房モードとの2つの暖房モードを切り替えることができる。
まず、通常暖房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを全閉状態とし、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを開く。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、通常暖房モードでは、図3の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器20→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。具体的には、室内凝縮器12へ流入する冷媒の圧力が目標凝縮圧力PDOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標凝縮圧力PDOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標凝縮圧力PDOが上昇するように決定される。
また、空調制御装置40は、室内凝縮器12から流出して第1膨張弁14aへ流入する冷媒の過冷却度SCが暖房用の目標過冷却度SCOに近づくように、第1膨張弁14aの絞り開度を調整する。暖房用の目標過冷却度SCOは、高圧センサ46aによって検出された高圧側冷媒圧力Ph、および吹出モードに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、サイクルのCOPが極大値に近づくように暖房用の目標過冷却度SCOを決定する。さらに、通常暖房モードでは、図7の制御特性図に示すように、吹出モードが変化しても目標過冷却度SCOを変化させない。
このような、第1膨張弁14aの絞り開度の制御は、前述した空調制御プログラムのメインルーチンの制御ステップS9にて行われる。従って、制御ステップS9は、目標過冷却度SCOを決定する目標過冷却度決定部である。
このため、通常暖房モードの冷凍サイクル装置10では、室内凝縮器12が放熱器として機能し、室外熱交換器20が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。そして、室外熱交換器20にて冷媒が蒸発する際に外気から吸熱した熱を室内凝縮器12にて送風空気に放熱させることができる。これにより、送風空気を加熱することができる。
従って、通常暖房モードでは、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度SCを目標過冷却度SCOに近づけることで、サイクルに高いCOPを発揮させることができる。
次に、低流量暖房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、通常暖房モードと同様に、第2膨張弁14b、第1、第2開閉弁15a、15b、およびエアミックスドア用の電動アクチュエータの作動を制御する。これにより、低流量暖房モードでは、図3の太実線矢印に示すように、通常暖房モードと同様に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、通常暖房モードと同様に圧縮機11の作動を制御する。
また、空調制御装置40は、室内凝縮器12から流出して第1膨張弁14aへ流入する冷媒の過冷却度SCが暖房用の目標過冷却度SCOとなるように、第1膨張弁14aの絞り開度を調整する。暖房用の目標過冷却度SCOは、高圧センサ46aによって検出された高圧側冷媒圧力Ph、および吹出モードに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、通常暖房モードと同様に、サイクルのCOPが極大値に近づくように暖房用の目標過冷却度SCOを決定するものの、図8の制御特性図に示すように、吹出モードがフットモードとなっている際に、目標過冷却度SCOを低下させる。
また、空調制御装置40は、送風機32の送風能力、すなわち送風機32の電動モータに印可される制御電圧を増加させる。具体的には、他の運転モードと同様に決定された制御電圧に対して予め定めた所定電圧を加える。また、空調制御装置40は、外気ファン20aの送風能力、すなわち外気ファン20aの電動モータに印可される制御電圧を減少させる。具体的には、外気温Tamによらず、最低印可電圧に維持する。
その他の作動は、通常暖房モードと同様である。従って、低流量暖房モードでは、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1によれば、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。
ここで、本実施形態の冷凍サイクル装置10のように、通常暖房モード時に、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCOに近づくように第1膨張弁14aの作動を制御すると、サイクルのCOPを向上させることはできるものの、室内凝縮器12を流通する冷媒に温度変化が生じる。このため、室内凝縮器12にて加熱された送風空気にも温度分布が生じてしまう。
さらに、循環冷媒流量が減少して、室内凝縮器12の冷媒流れ上流側の部位で冷媒の過冷却化が開始されてしまうと、室内凝縮器12にて加熱された送風空気の温度分布の生じる範囲が拡大してしまう。
従って、循環冷媒流量が減少してしまうと、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ上流側の部位にて加熱された送風空気の温度と主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ下流側の部位にて加熱された送風空気の温度が大きく乖離してしまうことがある。そして、このような送風空気の温度の乖離は、乗員の快適な暖房感を損なう原因となる。
これに対して、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、車室内の暖房を行う際に、低流量運転になっていることが判定されると、低流量暖房モードへ移行し、目標過冷却度SCOを低下させる。従って、室内凝縮器12の冷媒流れ上流側の部位で冷媒の過冷却化が開始されてしまうことを抑制することができる。
その結果、低流量運転時であっても室内凝縮器12にて加熱された送風空気の温度分布が生じる範囲の拡大を抑制することができる。さらに、低流量運転になっていると判定されていない際には、COPが極大値に近づくように目標過冷却度SCOを決定しているので、冷凍サイクル装置10に高いCOPを発揮させることができる。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、吹出モードがフットモードとなっている際に、目標過冷却度SCOを低下させている。これによれば、不必要に目標過冷却度SCOを低下させて、COPを低下させてしまうことを抑制することができる。
このことをより詳細に説明すると、フットモードでは、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ下流側の部位にて加熱された送風空気が、フット開口穴37aを介して、乗員の足元に向けて吹き出される。前述の如く、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ下流側の部位にて加熱された送風空気は、低流量運転時に温度低下が大きくなりやすい。
これに対して、室内凝縮器12の熱交換部のうち、主に鉛直方向の中間部よりも冷媒流れ上流側の部位にて加熱された送風空気は、低流量運転時であっても温度低下が小さい。従って、低流量運転時であっても、フェイスモード(すなわち、第1吹出モード)になっている際には、フットモード(すなわち、第2吹出モード)になっている際よりも、乗員の暖房感を悪化させ難い。
それゆえ、低流量運転時であって、かつ、乗員の暖房感が悪化しやすいフットモードとなっている際に、目標過冷却度SCOを低下させることで、低流量暖房モード時に不必要にCOPを低下させてしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、低流量暖房モード時に、送風機32の送風能力を増加させる。これによれば、送風機32の送風能力の増加によって、室内凝縮器12における冷媒凝縮圧力が低下するので、室内凝縮器12へ流入する冷媒の圧力が目標凝縮圧力PDOとなるように、空調制御装置40が圧縮機11の冷媒吐出能力(すなわち、回転数)を増加させる。
その結果、室内凝縮器12にて加熱された送風空気の温度分布が生じる範囲を効果的に縮小させることができる。
また、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、低流量暖房モード時に、外気ファン20aの送風能力を減少させる。これによれば、外気ファン20aの送風能力の減少によって、室外熱交換器20における冷媒蒸発圧力が低下するので、室内凝縮器12における冷媒凝縮圧力も低下する。従って、室内凝縮器12へ流入する冷媒の圧力が目標凝縮圧力PDOとなるように、空調制御装置40が圧縮機11の冷媒吐出能力(すなわち、回転数)を増加させる。
その結果、室内凝縮器12にて加熱された送風空気の温度分布が生じる範囲を効果的に縮小させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10をハイブリッド車両の車両用空調装置に適用した例を説明したが、冷凍サイクル装置10の適用はこれに限定されない。もちろん、エンジンから車両走行用の駆動力を得る通常のエンジン車両や、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車用の車両用空調装置に適用してもよいし、定置型の空調装置に適用してもよい。
(2)上述の実施形態では、低流量運転判定部として、制御ステップS41〜S43を採用し、制御ステップS41〜S43の全ての条件を満足した際に(判定がYesとなった際に)、低流量運転になっていると判定した例を説明したが、低流量運転判定部はこれに限定されない。例えば、制御ステップS41〜S43の少なくとも一つの条件を満足した際に、低流量運転になっていると判定してもよい。
(3)上述の実施形態では、低流量運転になっていることが判定され、かつ、吹出モードがフットモードとなっている際に、目標過冷却度SCOを低下させる例を説明したが、低流量運転になっていることが判定された際に、吹出モードによらず、目標過冷却度SCOを低下させてもよい。その理由は、室内凝縮器12のパス構成等によっても、送風空気の温度の分布態様が変化するからである。
(4)上述の実施形態では、低流量運転になっていることが判定された際に、外気ファン20aの送風能力を減少させた例を説明したが、室外熱交換器20へ流入する外気の流量を低減させることで同様の効果を得ることができる。従って、室外熱交換器20へ外気を導く通風経路にシャッター装置(例えば、グリルシャッター)を配置し、低流量暖房モード時に、シャッターによって当該通風経路を閉塞させてもよい。
(5)冷凍サイクル装置10は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、冷凍サイクル装置は、暖房モード(すなわち、通常暖房モードおよび低流量暖房モード)時に、ガスインジェクションサイクルを構成するものであってもよい。
この場合は、圧縮機11として、冷媒を吸入する吸入ポート、圧縮した冷媒を吐出させる吐出ポート、サイクル内で生成された中間圧冷媒を圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポートを有する二段昇圧式のものを採用すればよい。
さらに、第1膨張弁14aにて減圧された中間圧冷媒の気液を分離する気液分離部を設ける。この気液分離部の気相冷媒出口側と圧縮機の中間圧ポート側とを接続し、気相冷媒出口側と圧縮機の中間圧ポート側とを接続する冷媒通路に、冷媒回路切替装置として上述の実施形態と同様の開閉弁を配置する。
気液分離部の液相冷媒出口側と室外熱交換器20の入口側とを接続し、液相冷媒出口側と室外熱交換器20の入口側とを接続する冷媒通路に、気液分離部から流出した液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる減圧装置として上述の実施形態と同様の膨張弁を配置すればよい。
また、上述の実施形態では、冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル装置10について説明したが、冷媒回路の切り替えは必須ではない。少なくとも暖房モードでの運転が可能な冷凍サイクル装置であれば、上述した送風空気の温度分布の生じる範囲を縮小させる効果を得ることができる。
また、上述の実施形態では、冷凍サイクル装置10の冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。