図1〜図11を用いて、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る空調装置を、内燃機関(すなわち、エンジン)および走行用電動モータ(いずれも図示せず。)から車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。
車両用空調装置1は、車室内に送風される送風空気の温度を調整する温度調整装置としてヒートポンプサイクル(蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置)10を備えている。ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たす。
ヒートポンプサイクル10は、冷房モードの冷媒回路(図1参照)、直列除湿暖房モードの冷媒回路(図1参照)、並列除湿暖房モードの冷媒回路(図2参照)、および暖房モードの冷媒回路(図3参照)を切り替え可能に構成されている。図1〜図3では、それぞれの運転モードにおける冷媒の流れを太実線矢印で示している。
車両用空調装置1において、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
ヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、圧縮機11吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
ヒートポンプサイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車両のボンネット内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、後述する車両用空調装置1の室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、後述する室内蒸発器23を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱部である。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手13aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
さらに、ヒートポンプサイクル10では、後述するように、第2〜第4三方継手13b〜13d等の複数の三方継手を備えている。第2〜第4三方継手13b〜13d等の基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
第1三方継手13aの一方の流出口には、第1膨張弁14aの入口側が接続されている。また、第1三方継手13aの他方の流出口には、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口側と第2三方継手13bの一方の流入口側とを接続する第1冷媒通路18aには、第1開閉弁15aが配置されている。
第1開閉弁15aは、第1冷媒通路18aを開閉する電磁弁である。さらに、ヒートポンプサイクル10では、後述するように、第2開閉弁15bを備えている。第2開閉弁15bの基本的構成は、第1開閉弁15aと同様である。
第1、第2開閉弁15a、15bは、冷媒通路を開閉することで、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1、第2開閉弁15a、15bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置である。第1、第2開閉弁15a、15bは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
第1膨張弁14aは、少なくとも暖房モード時に、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒を減圧させる減圧装置である。第1膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
さらに、ヒートポンプサイクル10では、後述するように、第2膨張弁14bを備えている。第2膨張弁14bの基本的構成は、第1膨張弁14aと同様である。これらの第1、第2膨張弁14a、14bは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能によって、第1、第2膨張弁14a、14bは、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1、第2膨張弁14a、14bは、冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。第1、第2膨張弁14a、14bは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第1膨張弁14aの出口には、室外熱交換器20の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器20は、第1膨張弁14aから流出した冷媒と外気ファン20aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器20は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。
室外熱交換器20は、少なくとも冷房モード時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能し、少なくとも暖房モード時には、低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。外気ファン20aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動式の外気送風機である。
室外熱交換器20の冷媒出口には、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cの一方の流出口には、第2三方継手13bの他方の流入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口には、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。
第3三方継手13cの他方の流出口側と第4三方継手13dの一方の流入口側とを接続する第2冷媒通路18bには、第2冷媒通路18bを開閉する第2開閉弁15bが配置されている。
第3三方継手13cの一方の流出口側と第2三方継手13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁21が配置されている。逆止弁21は、第3三方継手13c側(すなわち、室外熱交換器20側)から第2三方継手13b側(すなわち、第2膨張弁14b側)へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手13b側から第3三方継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する機能を果たすものである。
第2三方継手13bの流出口には、第2膨張弁14bの入口側が接続されている。第2膨張弁14bは、少なくとも冷房モード時に、室外熱交換器20から流出した冷媒を減圧させる電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁14bの出口には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器23は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内蒸発器23は、少なくとも冷房モード時に、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器23の冷媒出口側には、蒸発圧力調整弁26の入口側が接続されている。この蒸発圧力調整弁26は、機械的機構で構成されており、室内蒸発器23の着霜を抑制するために、室内蒸発器23における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に調整する機能を果たす。換言すると、蒸発圧力調整弁26は、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器23の着霜を抑制可能な基準温度以上に調整する機能を果たす。
蒸発圧力調整弁26の出口には、第4三方継手13dの他方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dの流出口には、アキュムレータ24の入口側が接続されている。アキュムレータ24は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ24の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、ヒートポンプサイクル10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すために、その外殻を形成する空調ケース31内に形成された空気通路内に送風機32、室内蒸発器23、ヒータコア39、室内凝縮器12等を収容したものである。
ヒータコア39は、エンジンの冷却水と室内蒸発器23通過後の送風空気とを熱交換させることによって、送風空気を加熱する加熱部である。ヒータコア39は、図示しないエンジン冷却水回路に接続されている。エンジン冷却水回路は、エンジンとヒータコア39、あるいは、エンジンと放熱用熱交換器であるラジエータとの間で冷却水を循環させる水回路である。
空調ケース31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。空調ケース31の送風空気流れ最上流側には、空調ケース31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器23、ヒータコア39、室内凝縮器12が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器23は、ヒータコア39および室内凝縮器12よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。さらに、ヒータコア39は、室内蒸発器23よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
このため、室内凝縮器12では、ヒータコア39通過後の送風空気と高圧冷媒とを熱交換させて、ヒータコア39通過後の送風空気を加熱している。従って、ヒータコア39は、第1加熱部であり、室内凝縮器12は、第2加熱部である。
空調ケース31内には、室内蒸発器23通過後の送風空気を、ヒータコア39および室内凝縮器12を迂回して流すバイパス通路35が設けられている。また、空調ケース31内の室内蒸発器23の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア39および室内凝縮器12の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
エアミックスドア34は、室内蒸発器23通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12側を通過する送風空気の風量とバイパス通路35を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。エアミックスドア34は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
室内凝縮器12およびバイパス通路35の送風空気流れ下流側には、ヒータコア39および室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気とバイパス通路35を通過して加熱されていない送風空気が合流する合流空間36が形成されている。このため、エアミックスドア34が、風量割合を調整することによって、合流空間36にて合流した送風空気の温度が調整される。
空調ケース31の送風空気流れ最下流部には、合流空間36にて温度調整された送風空気を、車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。具体的には、この開口穴としては、フット開口穴37a、フェイス開口穴37b、デフロスタ開口穴37cが設けられている。
フット開口穴37aは、空調風を乗員の足元に向けて吹き出すための開口穴である。フェイス開口穴37bは、空調風を車室内の乗員の上半身に向けて吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴37cは、空調風を車両前面窓ガラス内側面に向けて吹き出すための開口穴である。
さらに、フット開口穴37a、フェイス開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cの送風空気流れ上流側には、それぞれ、フット開口穴37aの開口面積を調整するフットドア38a、フェイス開口穴37bの開口面積を調整するフェイスドア38b、デフロスタ開口穴37cの開口面積を調整するデフロスタドア38cが配置されている。
フットドア38a、フェイスドア38b、およびデフロスタドア38cは、各開口穴37a〜37cを開閉して、吹出モードを切り替える吹出モードドアであり、吹出モード切替装置を構成している。各ドア38a〜38cは、リンク機構等を介して、吹出モードドア用の電動アクチュエータ61によって回転操作される。この電動アクチュエータ61は、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
フット開口穴37a、フェイス開口穴37bおよびデフロスタ開口穴37cの送風空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。
また、吹出モード切替装置によって切り替えられる吹出モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス開口穴37bを全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて送風空気を吹き出す吹出モードである。バイレベルモードは、フェイス開口穴37bとフット開口穴37aの両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて送風空気を吹き出す吹出モードである。フットモードは、フット開口穴37aを全開するとともにデフロスタ開口穴37cを小開度だけ開口して、主にフット吹出口から送風空気を吹き出す吹出モードである。
さらに、乗員が操作パネル50に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ開口穴37cを全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に送風空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、図4を用いて、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器の作動を制御する。
空調制御装置40の出力側には、圧縮機11、第1、第2膨張弁14a、14b、第1、第2開閉弁15a、15b、外気ファン20a、送風機32、その他の電動アクチュエータ等が接続されている。
空調制御装置40の入力側には、内気温センサ41、外気温センサ42、日射センサ43、流入空気温度センサ44、第1〜第3冷媒温度センサ45a〜45c、高圧センサ46a、室外器圧力センサ46b、蒸発器温度センサ47、空調風温度センサ48、冷却水温度センサ49等が接続されている。そして、空調制御装置40には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ41は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ42は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ43は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。流入空気温度センサ44は、室内凝縮器12へ流入する送風空気の流入空気温度TAinを検出する流入空気温度検出部である。
第1冷媒温度センサ45aは、圧縮機11から吐出されて室内凝縮器12へ流入する冷媒の入口側冷媒温度Tdを検出する第1冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ45bは、室内凝縮器12から流出した冷媒の出口側冷媒温度Thを検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ45cは、室外熱交換器20から流出した冷媒の温度(室外熱交換器温度)Tsを検出する第3冷媒温度検出部である。
高圧センサ46aは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14aの入口側へ至る冷媒通路の高圧側冷媒圧力Phを検出する高圧冷媒圧力検出部である。室外器圧力センサ46bは、室外熱交換器20から流出した室外冷媒圧力Psを検出する室外器圧力検出部である。蒸発器温度センサ47は、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。
空調風温度センサ48は、合流空間36から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。冷却水温度センサ49は、ヒータコア39へ流入する冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出部である。
本実施形態の車両用空調装置1では、送風空気温度TAVを検出する空調風温度センサ48を設けているが、この送風空気温度TAVとして、蒸発器温度Tefin、吐出冷媒温度Td等に基づいて算出された値を採用してもよい。
さらに、空調制御装置40の入力側には、図4に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続され、この操作パネル50に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル50に設けられた各種操作スイッチとしては、作動スイッチ、オートスイッチ、運転モード切替スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等がある。
作動スイッチは、車両用空調装置1の作動を要求する作動要求設定部である。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御を設定あるいは解除する自動制御設定部である。運転モード切替スイッチは、冷房モード等の運転モードを設定する運転モード設定部である。風量設定スイッチは、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定部である。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetをマニュアル設定する温度設定部である。吹出モード切替スイッチは、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード設定部である。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)は、吐出能力制御部40aである。第1膨張弁14aの絞り開度を制御する構成は、減圧装置制御部40bである。第1、第2開閉弁15a、15b等の冷媒回路切替装置の作動を制御する構成は、冷媒回路制御部40cである。送風機32の送風能力を制御する構成は、送風能力制御部40dである。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行う。このため、ヒートポンプサイクル10では、冷房モードの運転、直列除湿暖房モードの運転、並列除湿暖房モードの運転、および暖房モードの運転を切り替えることができる。
これらの各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)されて、自動制御が設定された際に実行される。図5のフローチャートを用いて、空調制御プログラムのメインルーチンについて説明する。なお、図5、図6のフローチャートに示す各制御ステップは、空調制御装置40が有する各種の機能実現部である。
まず、図5のステップS1では、空調制御装置40の記憶回路によって構成されるフラグ、タイマ等の初期化、上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等のイニシャライズが行われる。ステップS2では、空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネル50の操作信号を読み込む。
ステップS3では、ステップS2で読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式1に基づいて算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温センサ41によって検出された内気温、Tamは外気温センサ42によって検出された外気温、Asは日射センサ43によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
ステップS4では、運転モードを決定する。具体的には、操作パネル50の運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、冷房モードに決定される。
また、運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが予め定めた除湿暖房基準温度βよりも高くなっている場合には、直列除湿暖房モードに決定される。
また、運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが除湿暖房基準温度β以下になっている場合には、並列除湿暖房モードでの運転に決定される。また、運転モード切替スイッチによって冷房モードが設定されていない場合には、暖房モードに決定される。
これにより、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行される。直列除湿暖房モードは、主に春季あるいは秋季に実行される。並列除湿暖房モードは、主に早春季あるいは晩秋季のように直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を加熱する必要のある場合に実行される。暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行される。
次に、ステップS5〜S12では、各種空調制御機器の制御状態が決定される。ステップS5では、送風機32の送風能力、すなわち、送風機32の電動モータに印可する制御電圧を決定する。このステップS5の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS51では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、仮ブロワレベルBLaを決定する。仮ブロワレベルBLaは、後述するステップS57で決定されるブロワレベルBLの候補値である。ブロワレベルBLは、送風機32の電動モータに印可する制御電圧に対応する値であって、送風機32の送風能力を示すパラメータである。
この制御マップでは、図7の制御特性図に示すように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、仮ブロワレベルBLaの値が、いわゆるバスタブ曲線状に変化する。より具体的には、この制御マップでは、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)では、仮ブロワレベルBLaを最大値に近づける。
さらに、目標吹出温度TAOが極低温域から中間温度域へ向かって上昇するに伴って、仮ブロワレベルBLaを低下させる。また、目標吹出温度TAOが極高温域から中間温度域へ向かって低下するに伴って、仮ブロワレベルBLaを低下させる。そして、目標吹出温度TAOが所定の中間温度域となっている際には、仮ブロワレベルBLaを最小値に近づける。
ステップS52では、第1加熱部であるヒータコア39の加熱能力に応じて、送風機32の送風能力の第1上限値LM1を決定する。ここで、ヒータコア39は、エンジンの冷却水を熱源として送風空気を加熱している。従って、ヒータコア39の加熱能力は、ヒータコア39へ流入する冷却水の温度に相関を有している。
そこで、本実施形態では、冷却水温度センサ49によって検出された冷却水温度Twに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、送風機32のブロワレベル(すなわち、送風能力)の第1上限値LM1を決定する。従って、本実施形態の制御ステップS52は、第1送風能力決定部である。
この制御マップでは、図8の制御特性図に示すように、冷却水温度Twの上昇に伴って、ブロワレベルの第1上限値LM1を増加させるように決定する。さらに、冷却水温度Twが上昇過程にある際に決定される第1上限値LM1は、冷却水温度Twが下降過程にある際に決定される第1上限値LM1よりも低い値に決定される。このような決定値の差は制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
また、この制御マップでは、冷却水温度Twが低くなって、ヒータコア39にて送風空気を充分に加熱できなくなった時に、送風機32の送風能力(すなわち、送風空気の送風量)を低下させることによって、乗員の暖房感の悪化を抑制できるように第1上限値LM1を決定している。
ステップS53では、第1加熱部であるヒータコア39が加熱能力を発揮しているか否かを判定する。本実施形態では、エンジンの作動時には、ヒータコア39が加熱能力を発揮しているものと判定し、エンジンの非作動時には、ヒータコア39が加熱能力を発揮していないものと判定する。
ステップS53にて、ヒータコア39が加熱能力を発揮していると判定されるとステップS54へ進み、第1加熱部の稼働時の送風機32のブロワレベルの第2上限値LM2を決定する。ステップS53にて、ヒータコア39が加熱能力を発揮していると判定されないとステップS55へ進み、第1加熱部の非稼働時の第2上限値LM2を決定する。従って、本実施形態の制御ステップS54、S55は、第2送風能力決定部である。
ステップS54では、空調風温度センサ48によって検出された送風空気温度TAVに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、稼働時第2上限値LM2aを決定する。そして、稼働時第2上限値LM2aを第2上限値LM2として、ステップS56へ進む。
この制御マップでは、図9の制御特性図に示すように、送風空気温度TAVの上昇に伴って、稼働時第2上限値LM2aを増加させるように決定する。さらに、送風空気温度TAVが上昇過程にある際に決定される稼働時第2上限値LM2aは、送風空気温度TAVが下降過程にある際に決定される稼働時第2上限値LM2aよりも低い値に決定される。このような差は制御ハンチング防止のためのヒステリシス幅として設定されている。
また、この制御マップでは、図8で説明した制御特性図と同様に、送風空気温度TAVが低くなって、ヒータコア39にて送風空気を充分に加熱できなくなった時に、送風機32の送風能力(すなわち、送風空気の送風量)を低下させることによって、乗員の暖房感の悪化を抑制できるように稼働時第2上限値LM2aを決定している。
ステップS55では、空調風温度センサ48によって検出された送風空気温度TAVに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、非稼働時第2上限値LM2bを決定する。そして、非稼働時第2上限値LM2bを補正した値を第2上限値LM2として、ステップS56へ進む。
この制御マップでは、ステップS54と同様に、図10の制御特性図に示すように、送風空気温度TAVの上昇に伴って、非稼働時第2上限値LM2bを増加させるように決定する。この際、図10の制御特性図では、非稼働時第2上限値LM2bを、稼働時第2上限値LM2aよりも低い値に決定している。つまり、図10に示すように、破線で示す稼働時第2上限値LM2aは、太破線で示す非稼働時第2上限値LM2bよりも高い値に設定されている。
さらに、ステップS55では、図10の制御特性図に示すように決定された稼働時第2上限値LM2aおよび外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、非稼働時第2上限値LM2bに加算される補正量LMcを決定する。
この制御マップでは、図11の制御特性図に示すように、非稼働時第2上限値LM2bおよび外気温Tamの少なくとも一方の上昇に伴って、補正量LMcを増加させるように決定する。このため、非稼働時第2上限値LM2bは、非稼働時第2上限値LM2bおよび外気温Tamの少なくとも一方の上昇に伴って増加するように補正される。
また、補正量LMcは、非稼働時第2上限値LM2bに補正量LMcを加算した値が、同じ送風空気温度TAVになっている際の稼働時第2上限値LM2a以下となる判定に設定されている。
ステップS56では、第1上限値LM1および第2上限値LM2のうち、大きい方の値を上限値LMに決定して、ステップS57へ進む。ステップS57では、ステップS51で決定された仮ブロワレベルBLaおよび上限値LMのうち、小さい方の値をブロワレベルBLに決定して、ステップS6へ進む。
ステップS6では、外気ファン20aの送風能力、すなわち、外気ファン20aの電動モータに印可する制御電圧を決定する。外気ファン20aに出力される制御電圧は、外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、外気温Tamの低下に伴って、外気ファン20aの送風量を増加させるように制御電圧を決定する。
ステップS7では、吸込モード、すなわち内外気切替ドア用の電動アクチュエータに出力される制御信号を決定する。吸込モードは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、目標吹出温度TAOが極低温域あるいは極高温域となっている場合には、内気を導入する内気モードが選択される。
ステップS8では、吹出モード、すなわち吹出モードドア用の電動アクチュエータ61に出力される制御信号を決定する。吹出モードは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って、吹出モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切り替える。従って、夏季は主にフェイスモード、春秋季は主にバイレベルモード、そして冬季は主にフットモードが選択されやすい。
ステップS9では、各運転モードに応じて、第1、第2膨張弁14a、14bの作動状態、すなわち第1、第2膨張弁14a、14bへ出力される制御信号(制御パルス)が決定される。
ステップS10では、各運転モードに応じて、第1、第2開閉弁15a、15bの開閉状態、すなわち第1、第2開閉弁15a、15bへ出力される制御電圧が決定される。
ステップS11では、各運転モードに応じて、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号が決定される。
ステップS12では、各運転モードに応じて、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号が決定される。
そして、ステップS13では、上述のステップS6〜S12で決定された制御状態が得られるように、空調制御装置40より各種空調制御機器に対して制御信号および制御電圧が出力される。続くステップS14では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2へ戻る。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを全開状態とし、第2膨張弁14bを減圧作用を発揮する絞り状態する。また、空調制御装置40は、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを閉じる。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全閉となり、バイパス通路35側が全開となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、冷房モードでは、図1の太実線矢印に示すように、圧縮機11(→室内凝縮器12→第1膨張弁14a)→室外熱交換器20→第2膨張弁14b→室内蒸発器23→蒸発圧力調整弁26→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。具体的には、室内蒸発器23から吹き出される送風空気が目標蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発器温度TEOが低下するように決定される。さらに、目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器23の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)で決定される。
また、空調制御装置40は、第2膨張弁14bへ流入する冷媒の過冷却度が冷房用の目標過冷却度となるように、第2膨張弁14bの絞り開度を調整する。冷房用の目標過冷却度は、室外器圧力センサ46bによって検出された室外冷媒圧力Psに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、サイクルのCOPが極大値に近づくように冷房用の目標過冷却度を決定する。
このため、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、室外熱交換器20が放熱器として機能し、室内蒸発器23が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。そして、室内蒸発器23にて冷媒が蒸発する際に送風空気から吸熱した熱を室外熱交換器20にて外気に放熱させることができる。これにより、送風空気を冷却することができる。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器23にて冷却された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(b)直列除湿暖房モード
直列除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とし、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを閉じる。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、直列除湿暖房モードでは、図1の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器20→第2膨張弁14b→室内蒸発器23→蒸発圧力調整弁26→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、冷房モードと同様に圧縮機11の作動を制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの作動を制御する。より具体的には、空調制御装置は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁14aの絞り開度を減少させ、第2膨張弁14bの絞り開度を増加させる。
このため、直列除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、室内凝縮器12が放熱器として機能し、室内蒸発器23が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。さらに、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、室外熱交換器20は放熱器として機能し、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器20は蒸発器として機能する。
そして、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器20の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器20における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
また、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器20の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器20における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
従って、直列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。さらに、第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの絞り開度を調整することによって、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を調整することができる。
(c)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とし、第1開閉弁15aを開き、第2開閉弁15bを開く。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、並列除湿暖房モードでは、図2の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器20→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→室内凝縮器12→第2膨張弁14b→室内蒸発器23→蒸発圧力調整弁26→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。すなわち、室外熱交換器20と室内蒸発器23が冷媒流れに対して並列的に接続される冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、冷房モードと同様に圧縮機11の作動を制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAO等に基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの作動を制御する。より具体的には、空調制御装置は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁14aの絞り開度を減少させる。
このため、並列除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、室内凝縮器12が放熱器として機能し、室外熱交換器20および室内蒸発器23が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。室外熱交換器20および室内蒸発器23にて冷媒が蒸発する際に吸熱した熱を室内凝縮器12にて送風空気に放熱させることができる。これにより、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を再加熱することができる。
従って、並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。さらに、室外熱交換器20における冷媒の飽和温度(蒸発温度)を、室内蒸発器23における冷媒の飽和温度(蒸発温度)よりも低下させることができるので、直列除湿暖房モードよりも送風空気の加熱能力を向上させることができる。
(d)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置40が、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを全閉状態とし、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを開く。また、空調制御装置40は、ヒータコア39および室内凝縮器12側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、暖房モードでは、図3の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器20→アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。具体的には、室内凝縮器12へ流入する冷媒の圧力が目標凝縮圧力PDOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標凝縮圧力PDOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標凝縮圧力PDOが上昇するように決定される。
また、空調制御装置40は、室内凝縮器12から流出して第1膨張弁14aへ流入する冷媒の過冷却度SCが暖房用の目標過冷却度SCOに近づくように、第1膨張弁14aの絞り開度を調整する。暖房用の目標過冷却度SCOは、高圧センサ46aによって検出された高圧側冷媒圧力Phに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、サイクルのCOPが極大値に近づくように暖房用の目標過冷却度SCOを決定する。
このため、暖房モードのヒートポンプサイクル10では、室内凝縮器12が放熱器として機能し、室外熱交換器20が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。そして、室外熱交換器20にて冷媒が蒸発する際に外気から吸熱した熱を室内凝縮器12にて送風空気に放熱させることができる。これにより、送風空気を加熱することができる。
従って、通常暖房モードでは、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度SCを目標過冷却度SCOに近づけることで、サイクルに高いCOPを発揮させることができる。
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1によれば、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。
ここで、本実施形態の車両用空調装置1では、第1加熱部としてエンジン冷却水回路に接続されたヒータコア39を備えている。そして、制御ステップS52にて説明したように、ヒータコア39の加熱能力の向上に伴って、送風機32の送風能力の第1上限値LM1を上昇させている。
これによれば、ヒータコア39の加熱能力が低下して、送風空気を車室内の暖房を行うために充分に加熱できない時に、送風空気の送風量を減少させることで、乗員の暖房感の悪化の抑制を狙うことができる。
ところが、本実施形態の車両用空調装置1では、第2加熱部としてヒートポンプサイクル10の室内凝縮器12を備えている。このため、第1上限値LM1に応じて送風機32の送風能力を制限してしまうと、ヒートポンプサイクル10の室内凝縮器12にて送風空気を車室内の暖房を行うために充分に加熱できる運転条件であっても、冷却水温度Twの低下に伴って送風機32の送風量が不必要に減少してしまう。
これに対して、本実施形態の車両用空調装置1によれば、制御ステップS54、S55で説明したように、送風空気温度TAVの上昇に伴って第2上限値LM2を上昇させるように決定している。そして、制御ステップS56で説明したように、第1上限値LM1および第2上限値LM2のうち、大きい方の値を送風機32の送風能力の上限値LMに決定している。
従って、ヒータコア39の加熱能力が低い時であっても、ヒートポンプサイクル10の室内凝縮器12が高くなっていれば、送風機32の送風能力を不必要に減少させてしまうことがない。すなわち、本実施形態の車両用空調装置1によれば、送風空気を加熱する複数の加熱部を有する空調装置において、使用者(本実施形態では、乗員)の暖房感の悪化を適切に抑制することができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1によれば、制御ステップS54、S55にて説明したように、ヒータコア39が加熱能力を発揮している第1加熱部の稼働時には、ヒータコア39が加熱能力を発揮していない第1加熱部の非稼働時よりも、第2上限値LM2が高い値に設定される。
ここで、第1加熱部であるヒータコア39、および第2加熱部である室内凝縮器12の双方が加熱能力を発揮できる第1加熱部の稼働時では、室内凝縮器12のみが可能能力を発揮できる第1加熱部の非稼働時よりも、送風空気の加熱能力が高い。従って、第1加熱部の稼働時に、非稼働時よりも第2上限値LM2を高い値に設定することで、より一層、送風機32の送風能力を不必要に減少させてしまうことを抑制できる。
また、本実施形態の車両用空調装置1によれば、制御ステップS55にて説明したように、外気温Tamの上昇に伴って、補正量LMcを増加させて、第2上限値LM2を上昇させている。
ここで、ヒートポンプサイクル10では、冷媒が室外熱交換器20にて外気から吸熱した熱を、室内凝縮器12にて送風空気へ放熱して、送風空気を加熱している。従って、外気温Tamの上昇に伴って、外気からの吸熱量が増加して室内凝縮器12の加熱能力も向上する。このため、外気温Tamの上昇に伴って、第2上限値LM2を上昇させることで、より一層、送風機32の送風能力を不必要に減少させてしまうことを抑制できる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、本発明に係るヒートポンプサイクル10をハイブリッド車両の車両用空調装置に適用した例を説明したが、ヒートポンプサイクル10の適用はこれに限定されない。もちろん、エンジンから車両走行用の駆動力を得る通常のエンジン車両や、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車用の車両用空調装置に適用してもよいし、定置型の空調装置に適用してもよい。
(2)上述の実施形態の制御ステップS52では、ヒータコア39の加熱能力として、冷却水温度Twを採用した例を説明したが、ヒータコア39の加熱能力として採用可能なパラメータはこれに限定されない。例えば、ヒータコア39にて加熱された直後であって、室内凝縮器12へ流入する前の送風空気の温度をヒータコア39の加熱能力として用いてもよい。
(3)上述の実施形態の制御ステップS53では、ヒータコア39が加熱能力を発揮しているか否かを判定する際に、エンジンが作動しているか否かを判定条件とした例を説明したが、判定条件はこれに限定されない。
例えば、冷却水温度Twがヒータコア39へ流入する送風空気の温度あるいは外気温Tamより高くなっている時には、ヒータコア39が加熱能力を発揮していると判定し、冷却水温度Twがヒータコア39へ流入する送風空気の温度あるいは外気温Tam以下となっている時には、ヒータコア39が加熱能力を発揮していないと判定してもよい。
(4)上述の実施形態では、第1加熱部としてヒータコア39を採用し、第2加熱部としてヒートポンプサイクル10の室内凝縮器12を採用した例を説明したが、第1加熱部、第2加熱部はこれに限定されない。例えば、第1加熱部39として室内凝縮器12を採用し、第2加熱部としてヒータコア39を採用してもよい。さらに、第1加熱部あるいは第2加熱部として電気ヒータ等を採用してもよい。
(5)ヒートポンプサイクル10は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、冷凍サイクル装置は、暖房モード(すなわち、通常暖房モードおよび低流量暖房モード)時に、ガスインジェクションサイクルを構成するものであってもよい。
この場合は、圧縮機11として、冷媒を吸入する吸入ポート、圧縮した冷媒を吐出させる吐出ポート、サイクル内で生成された中間圧冷媒を圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポートを有する二段昇圧式のものを採用すればよい。
さらに、第1膨張弁14aにて減圧された中間圧冷媒の気液を分離する気液分離部を設ける。この気液分離部の気相冷媒出口側と圧縮機の中間圧ポート側とを接続し、気相冷媒出口側と圧縮機の中間圧ポート側とを接続する冷媒通路に、冷媒回路切替装置として上述の実施形態と同様の開閉弁を配置する。
気液分離部の液相冷媒出口側と室外熱交換器20の入口側とを接続し、液相冷媒出口側と室外熱交換器20の入口側とを接続する冷媒通路に、気液分離部から流出した液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる減圧装置として上述の実施形態と同様の膨張弁を配置すればよい。
また、上述の実施形態では、冷媒回路を切替可能に構成されたヒートポンプサイクル10について説明したが、冷媒回路の切り替えは必須ではない。少なくとも暖房モードでの運転が実行可能であればよい。
また、上述の実施形態では、ヒートポンプサイクル10の冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。