以下、図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置及びX線検出方法を説明する。以下では、X線診断装置の一例としてマンモグラフィ装置を用いて説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
(第1の実施形態)
図1及び図2は、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置10の構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、マンモグラフィ装置10は、基台11と、スタンド12とを有する。スタンド12は、基台11上に立設され、撮影台13と、圧迫板14と、X線出力装置15と、X線検出装置16とを支持する。なお、撮影台13と、圧迫板14と、X線検出装置16とは、上下方向へ移動可能に支持されている。
撮影台13は、被検体の乳房Bを支持する台であり、乳房Bが載せられる支持面13aを有する。圧迫板14は、撮影台13の上方に配置され、撮影台13に対して平行に対向するとともに撮影台13に対して接離する方向へ移動可能に設けられている。なお、圧迫板14は、撮影台13に接近する方向に移動した場合に、撮影台13上に支持されている乳房Bを圧迫する。圧迫板14によって圧迫された乳房Bは薄く押し広げられ、乳房B内の乳腺の重なりが減少する。
また、図2に示すように、マンモグラフィ装置10は、入力インターフェース17aと、昇降駆動回路17bと、高電圧発生器17cと、画像処理回路17dと、画像記憶回路17eと、ディスプレイ17fと、システム制御回路17gとを有する。入力インターフェース17aは、操作者から各種コマンドの入力操作等を受け付ける。昇降駆動回路17bは、撮影台13に接続され、撮影台13を上下方向へ昇降させる。さらに、昇降駆動回路17bは、圧迫板14に接続され、圧迫板14を上下方向(撮影台13に対して接離する方向)へ昇降させる。
X線出力装置15は、X線管15aと、X線絞り器15bとを有する。X線管15aは、X線を発生させる。X線絞り器15bは、X線管15aと圧迫板14との間に配置され、X線管15aから発生したX線の照射範囲を制御する。高電圧発生器17cは、X線管15aに接続され、X線管15aがX線を発生するための高電圧を供給する。
このX線出力装置15は、トモシンセシス撮像が可能である。トモシンセシス撮像では、撮影台13及び圧迫板14の位置を固定し、被検体の乳房Bを圧迫したまま、乳房Bに対するX線管15aの角度を変えてX線を出力する。言い換えると、トモシンセシス撮像では、X線管15aは、X線パルスの照射期間中に所定の方向に移動する。
X線検出装置16は、X線検出器16aと、信号処理回路16bとを有する。X線検出器16aは、乳房Bと撮影台13とを透過したX線を検出して電気信号(透過X線データ)に変換する。このX線検出器16aは、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ画素を有する。図3は、第1の実施形態に係るX線検出器16aが有するCMOSセンサ画素の構成例を示す図である。
図3に示す例では、4つのCMOSセンサ画素のみを図示しているが、X線検出器16aにおいて、CMOSセンサ画素はn行×n列で配置される。各画素は単位画素(UP:Unit Pixel)とも言う。図3に示す例では、1行目のCMOSセンサ画素として、UP11、・・・、UPn1が配置され、1列目のCMOSセンサ画素として、UP11、・・・、UP1nが配置される。また、図3に示す例では、n行目のCMOSセンサ画素として、UP1n、・・・、UPnnが配置され、n列目のCMOSセンサ画素として、UPn1、・・・、UPnnが配置される。このように構成されるX線検出器16aは、X線管15aから照射されたX線パルスを検出して電気信号を生成する。そして、X線検出器16aによって生成された電気信号は、X線検出器16aに保持され、X線パルスの照射後に読み出される。なお、図3に示すCMOSセンサ画素において、電気信号の保持及び電気信号の読み出しは、行選択回路16cによって行単位で制御され、列選択回路16dによって列単位で制御される。
図2に戻る。信号処理回路16bは、X線検出器16aによって変換された電気信号からX線投影データを生成する。
画像処理回路17dは、信号処理回路16bと、画像記憶回路17eとに接続され、信号処理回路16bによって生成されたX線投影データに基づいてマンモグラフィ画像を生成する。ここで、画像処理回路17dは、例えば、撮影台13及び圧迫板14の位置をMLO(Mediolateral-Oblique:内外斜位)方向で固定し、乳房Bに対する角度を変えずにX線を出力して生成されたX線投影データに基づいて、マンモグラフィ画像(MLO画像)を生成する。また、画像処理回路17dは、例えば、撮影台13及び圧迫板14の位置をCC(Cranio-Caudal:頭尾)方向で固定し、乳房Bに対する角度を変えずにX線を出力して生成されたX線投影データに基づいて、マンモグラフィ画像(CC画像)を生成する。
また、画像処理回路17dは、被検体に対して複数の角度各々から撮影された画像に基づいて、3次元画像であるトモシンセシス(Tomosynthesis)画像を生成する。ここで、画像処理回路17dは、例えば、撮影台13及び圧迫板14の位置をMLO方向で固定し、乳房Bに対する角度を変えてX線を出力して生成されたX線投影データに基づいて、トモシンセシス画像(MLOトモシンセシス画像)を生成する。また、画像処理回路17dは、例えば、撮影台13及び圧迫板14の位置をCC方向で固定し、乳房Bに対する角度を変えてX線を出力して生成されたX線投影データに基づいて、トモシンセシス画像(CCトモシンセシス画像)を生成する。
具体的には、画像処理回路17dは、被検体に対する複数の角度にそれぞれ対応する複数の画像に基づいて、所定の処理により、トモシンセシス画像を生成する。所定の処理とは、例えば、シフト加算法、フィルタ補正逆投影(Filtered Back Projection:FBP)法などである。すなわち、トモシンセシス撮像により、X線管15aからX線を照射して被検体の乳房Bを異なる方向から撮像することで3次元画像が生成される。なお、以下では、マンモグラフィ画像と記載する場合、MLO画像及びCC画像に加えて、MLOトモシンセシス画像及びCCトモシンセシス画像も含むものとする。また、トモシンセシス画像と区別するため、MLO画像及びCC画像のことを2次元のマンモグラフィ画像と言う。例えば、MLO画像のことを2次元MLO画像と言い、CC画像のことを2次元CC画像と言う。
画像処理回路17dは、生成したマンモグラフィ画像を画像記憶回路17eに保存する。また、画像処理回路17dは、ディスプレイ17fに接続され、生成したマンモグラフィ画像をディスプレイ17fに表示する。なお、画像処理回路17dは、入力インターフェース17aからの入力操作に基づいて、作成するマンモグラフィ画像の種類の切替えを行うことが可能である。なお、画像記憶回路17eは、画像処理回路17dによって生成されたマンモグラフィ画像以外に、例えば、システム制御回路17gが読み出し、実行するプログラム等を記憶してもよい。
システム制御回路17gは、入力インターフェース17aと、昇降駆動回路17bと、高電圧発生器17cと、X線絞り器15bと、画像処理回路17dとに接続され、マンモグラフィ装置10の全体を総括して制御する。
また、システム制御回路17gは、図2に示すように、制御機能17hを実行する。ここで、例えば、図1に示すシステム制御回路17gの構成要素である制御機能17hが実行する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で画像記憶回路17eに記録されている。システム制御回路17gは、プログラムを画像記憶回路17eから読み出し、実行することでプログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態のシステム制御回路17gは、図2のシステム制御回路17g内に示された制御機能17hを有することとなる。なお、制御機能17hのことを制御部とも言う。
以上、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置10の全体構成の一例について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るマンモグラフィ装置10は、マンモグラフィ画像を生成する。ここで、マンモグラフィ装置10は、トモシンセシス撮像を行う場合、乳房Bに対するX線管15aの角度を変えてX線を出力する。図4及び図5は、一般的なトモシンセシス撮像を説明するための図である。
図4では、撮影台13と圧迫板14との間に固定された乳房Bに対するX線管15aの角度を変えてX線を出力する場合を示す。図4に示すように、マンモグラフィ装置10は、X線管15aの位置を例えばP1からP5までP2、P3、P4と順に移動させながら撮影を行なう。ここで、X線管15aを移動させながらX線を照射すると、X線管15aの動き方向にボケが生じる。
図5では、X線管15aを移動させながら、時間t1から時間t2の間と時間t3から時間t4の間でX線を照射する場合について説明する。例えば、図5に示すように、時間t1から時間t2の間X線を照射する際に、乳房Bに対するX線管15aの角度をα1からα2まで移動させると、焦点移動量は(α2−α1)となる。このため、X線投影データには、X線管15aの動き量である(α2−α1)に相当するボケが生じることになる。また、同様に、時間t3から時間t4の間X線を照射する際に、乳房Bに対するX線管15aの角度をα3からα4まで移動させると、焦点移動量は(α4−α3)となる。このため、X線投影データには、X線管15aの動き量である(α4−α3)に相当するボケが生じることになる。このように、X線管15aを移動させながらX線を照射する場合、得られる画像データの空間解像度が低下する。なお、このように、画像データの空間解像度が低下する問題は、マンモグラフィ装置10によるトモシンセシス撮像に限定されるものではなく、X線診断装置において、C型アームを回転させながら撮像する場合にも同様に起こりうる。
また、X線を照射するタイミングでX線管15aの動きを停止する乳房用のトモシンセシスシステムが存在する。このようなトモシンセシスシステムでは、撮影の時間内に何度もX線管15aの動きを停止する。このため撮影時間が長くなり、患者にとって苦痛となる。また撮影時間が長くなるので撮影中に被検体が動く場合がある。かかる場合、被検体の動きにより画像データの空間解像度が低下する。
このようなことから、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置10では、X線トモシンセシス撮像において、X線管15aを撮影ごとに停止または減速させることなしに移動させながら、複数の視点からの撮影を行うことで、検査を短時間にする。更に、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置10では、X線トモシンセシス撮像において、以下に説明するX線検出方法により、X線管15aの移動による空間解像度の劣化を軽減する。図6は、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置10の処理動作を説明するための図である。
図6では、X線管15aを移動させながら、時間t1から時間t3の間と時間t4から時間t6の間でX線を照射する場合について説明する。例えば、第1の実施形態に係るマンモグラフィ装置10では、各X線パルスの照射時に、X線パルスの照射期間を時分割した単位時間ごとに生成された電気信号をX線検出器16aに分割して保持させる。より具体的には、マンモグラフィ装置10は、時間t1から時間t3までのX線照射期間を2分割した時間を時間t2とし、時間t1から時間t2までに検出した信号Aを蓄積部Aに蓄え、時間t2から時間t3までに検出した信号Bを蓄積部Bに蓄える。そして、マンモグラフィ装置10は、各X線パルスの照射終了後に、分割して保持される電気信号をX線検出器16aから順次読み出させる。例えば、マンモグラフィ装置10は、時間t1から時間t3までのX線照射期間の終了後、蓄積部Aに蓄えた信号Aを読み出し、次いで、蓄積部Bに蓄えた信号Bを読み出す。
ここで、時間t1から時間t3の間X線を照射する際に、乳房Bに対するX線管15aの角度をα1からα3まで移動させると、焦点移動量は(α3−α1)となる。一方、図6に示す例では、時間t1から時間t2までの焦点移動量は(α2−α1)となり、時間t2から時間t3までの焦点移動量は(α3−α2)となる。すなわち、時間t1から時間t3の間X線を照射する際に、乳房Bに対するX線管15aの角度をα1からα3まで移動させる場合と比べて、蓄積部Aに蓄えられたX線投影データに生じるボケは、X線管15aの動き量である(α2−α1)に軽減することができ、蓄積部Bに蓄えられたX線投影データに生じるボケは、X線管15aの動き量である(α3−α2)に軽減することができる。
なお、時間t4から時間t6の間でX線を照射する場合についても、時間t1から時間t3の間でX線を照射する場合と同様である。すなわち、マンモグラフィ装置10は、時間t4から時間t6までのX線照射期間を2分割した時間を時間t5とし、時間t4から時間t5までに検出した信号Aを蓄積部Aに蓄え、時間t5から時間t6までに検出した信号Bを蓄積部Bに蓄える。そして、マンモグラフィ装置10は、時間t4から時間t6までのX線照射期間の終了後、蓄積部Aに蓄えた信号Aを読み出し、次いで、蓄積部Bに蓄えた信号Bを読み出す。かかる場合、画像処理回路17dは、順次読み出された電気信号に基づいて、X線画像を生成する。
以下では、図7から図9を用いて、X線検出方法の詳細について説明する。まず、図7を用いて、CMOSセンサ画素の基本動作を説明する。図7は、第1の実施形態に係るX線検出器16aが有するCMOSセンサ画素の基本動作を説明するための図である。図7では、光電変換部(PD)と電荷蓄積部(FD)とをそれぞれ1つ有する単位画素について説明する。
図7に示す単位画素において、X線が照射されると、PD部分で電荷(電気信号とも言う)が発生する。PDで発生した電荷は、TxをONにすることにより、FDに転送される。ここで、PDの静電容量をCPDとし、FDの静電容量をCFDとした場合に、CPD<CFDとすることで、TxをONしているときにPD部分で発生する電荷の大部分をFDに転送することが可能になる。
また、単位画素において、SxをONすることにより、信号電荷によりFDに生じる電圧を列選択回路へ出力する。また、PDからFDへの電荷転送が完了したらTxはOFFにされる。
また、FDの電圧の読出しが完了したら、RxをONにし、FDがリセットされる。ここで、TxをONしたままRxをONすれば、PDとFDの電荷がクリアされる。一方、TxをOFFしてからRxをONすればFDだけがリセットされる。
続いて、図8及び図9を用いて、信号蓄積時の処理及び信号読み出し時の処理について説明する。図8及び図9は、第1の実施形態に係るX線検出器16aが有するCMOSセンサ画素の処理動作を説明するためのタイミングチャートである。図8では、信号蓄積時の処理動作を説明し、図9では、蓄積された信号の読み出し時の処理動作を説明する。図8及び図9は、X線トモシンセシス撮像において、1回のX線パルスの照射時について説明するものである。すなわち、X線パルスの照射が行われるごとに図8及び図9に示す処理動作が繰り返し実行される。なお、以下に示すCMOSセンサの基本動作は、制御機能17hが行選択回路16c及び列選択回路16dを制御することによって実現される。
まず、電気信号の蓄積時の処理動作を説明する。図8に示すように、時間t0では、制御機能17hは、Rx及びTxをONにする。これにより、各単位画素において、PDとFDの電荷がクリアされる。そして、時間t1では、制御機能17hは、RxをOFFにする。これにより、各単位画素では、PDで発生した電気信号がFDに転送されることになる。
時間t3から時間t7では、X線パルスの照射が開始される。制御機能17hは、X線パルス照射期間の半分に当たる時間t5まではTxをONにし続け、残り半分の時間t5以降ではTxをOFFにする。ここで、マンモグラフィ装置10では、各X線パルスの幅Txwが事前に決まっている。このため、制御機能17hは、X線パルスの照射開始タイミングを検知すれば、Txw×1/2だけ経過したタイミングを特定可能である。そして、制御機能17hは、例えば、Txw×1/2だけ経過したタイミングでCMOSセンサを制御して、Txを切り替えることで、電気信号の蓄積先をFDからPDに切り替える。言い換えると、制御機能17hは、単位時間ごとのX線管15aの移動量が同一となるように制御する。これにより、各単位画素では、時間t3から時間t5では電気信号がFDに蓄積され、時間t5から時間t7では電気信号がPDに蓄積される。すなわち、一つのX線パルスによりフォトダイオード部PDで発生する電気信号は、X線パルスの前半(時間t3から時間t5)では発生すると同時にFDに蓄積され、後半(時間t5から時間t7)ではPDに蓄積される。なお、時間t7でX線パルスの照射が終了する。
続いて、電気信号の読み出し時の処理動作を説明する。図9に示すように、時間t10から時間t16ではFDに蓄積された電気信号が読み出され、時間t16から時間t22ではPDに蓄積された電気信号が読み出される。
時間t10から時間t16では制御機能17hは、SxをONすることにより、FDに蓄積された電気信号を列選択回路へ出力する。ここで、制御機能17hは、時間t11から時間t12では、行選択回路16cを制御して、1行目のCMOSセンサ画素のSxをONにする。なお、図9には図示しないが、制御機能17hは、列選択回路16dを制御して、1行目のCMOSセンサ画素に対して、選択した列の順番にFDから電気信号を読み出す。例えば、図3に示すCMOSセンサ画像において、制御機能17hは、1行目のUP11、UP21、・・・、UPn1をパラレルに選択し、続いて、1列目のUP11、UP21、・・・、UPn1をシリアルに選択する。そして、制御機能17hは、時間t12から時間t13では、SxをOFFにする。制御機能17hは、時間t13から時間t16の間も同様にSxのONとOFFとを繰り返すことで、FDに蓄積された電気信号を読み出す。なお、FDに蓄積された電気信号を読み出す処理は、CMOSセンサ内の全画素について行われる。
続いて、時間t17から時間t18では制御機能17hは、SxをONすることにより、PDに蓄積された電気信号を列選択回路へ出力する。ここで、制御機能17hは、時間t17以降時間t22まではTxをONにする。これによりPDに蓄積された電気信号がFDに転送される。そして、制御機能17hは、時間t17から時間t18では、行選択回路16cを制御して、1行目のCMOSセンサ画素のSxをONにする。なお、図9には図示しないが、制御機能17hは、列選択回路16dを制御して、1行目のCMOSセンサ画素に対して、選択した列の順番に、PDからFDに転送された電気信号を読み出す。例えば、図3に示すCMOSセンサ画像において、制御機能17hは、1行目のUP11、UP21、・・・、UPn1をパラレルに選択し、続いて、1列目のUP11、UP21、・・・、UPn1をシリアルに選択する。そして、制御機能17hは、時間t18から時間t19では、SxをOFFにする。制御機能17hは、時間t19から時間t22の間も同様にSxのONとOFFとを繰り返すことで、PDからFDに転送された電気信号を読み出す。なお、PDからFDに転送された電気信号を読み出す処理は、CMOSセンサ内の全画素について行われる。
トモシンセシス撮影では、X線焦点であるX線管15aが移動しながらX線パルスが複数回照射されるが、X線パルスごとに上記動作が繰り返される。続いて、信号処理回路16bは、X線検出器16aによって変換された電気信号からX線投影データを生成する。そして、画像処理回路17dは、信号処理回路16bによって生成されたX線投影データに基づいてトモシンセシス画像を生成する。
上述したように、第1の実施形態では、X線焦点を撮影ごとに停止または減速させることなしに移動させながら、複数の視点からの撮影を行う。これにより、第1の実施形態によれば、検査時間を短縮することが可能になる。この結果、検査の短時間化による、検査効率の向上や患者の苦痛低減を図ることが可能になる。
また、第1の実施形態では、X線検出器16aは、光電変換部と電荷蓄積部とを有する積分型のX線検出器であり、光電変換部と電荷蓄積部とを電気信号の保持に使用する。より具体的には、第1の実施形態では、X線パルスの照射時に、X線パルスの照射期間を時分割した単位時間ごとに生成された電気信号をX線検出器16aに分割して保持させ、各X線パルスの照射終了後に、分割して保持される電気信号をX線検出器16aから順次読み出させる。これにより、第1の実施形態では、X線管15aの動き量を低減したデータを収集することが可能になる。すなわち、第1の実施形態では、X線検出器16aの画像読出し時間によるX線照射間隔の増大を防止する。また、第1の実施形態によれば、動き量を低減したデータを収集することにより、X線焦点の動きボケを低減することができる。言い換えると、X線焦点の移動による空間解像度の劣化を軽減することができる。そして、診断用画像における被検体の動きによる偽像を低減し、解像度の高い画像を得ることが可能になることで、診断能を向上させることが可能になる。このように、第1の実施形態によれば、撮像時間を短縮しながら解像度の高い画像を得ることができる。
また、上述した第1の実施形態に係るX線検出器16aが有するCMOSセンサ画素は、既存のCMOSセンサ画素を用いて構成することが可能である。このため、第1の実施形態では、X線検出器16aの制作コストを低減することが可能である。
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態では、単位画素が、光電変換部(PD)と電荷蓄積部(FD)とをそれぞれ1つ有する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、単位画素は、光電変換部(PD)と複数の電荷蓄積部(FD)とを有するようにしてもよい。図10は、第1の実施形態の変形例に係るX線検出器16aが有するCMOSセンサ画素の基本動作を説明するための図である。
図10では、1つの光電変換部(PD)と2つの電荷蓄積部(FD)とを有する単位画素について説明する。図10に示す単位画素において、X線が照射されると、PD部分で電気信号が発生する。PDで発生した電荷は、TxとS1とをONにすることにより、FD1に転送される。また、PDで発生した電荷は、TxとS2とをONにすることにより、FD2に転送される。
また、単位画素において、SxとS1とをONすることにより、信号電荷によりFD1に生じる電圧を列選択回路へ出力する。また、単位画素において、SxとS2とをONすることにより、信号電荷によりFD2に生じる電圧を列選択回路へ出力する。また、FD1及びFD2への電荷の蓄積が完了したらTxはOFFにされる。
また、FD1及びFD2の電圧の読出しが完了したら、Rx、S1及びS2をONにし、FD1及びFD2がリセットされる。ここで、TxをONしたままRx、S1及びS2をONすれば、PDとFD1とFD2の電荷がクリアされる。一方、TxをOFFしてからRx、S1及びS2をONすればFD1とFD2がリセットされる。
続いて、図11及び図12を用いて、信号蓄積時の処理及び信号読み出し時の処理について説明する。図11及び図12は、第1の実施形態の変形例に係るX線検出器16aが有するCMOSセンサ画素の処理動作を説明するためのタイミングチャートである。図11では、信号蓄積時の処理動作を説明し、図12では、蓄積された信号の読み出し時の処理動作を説明する。図11及び図12は、X線トモシンセシス撮像において、1回のX線パルスの照射時について説明するものである。すなわち、X線パルスの照射が行われるごとに図11及び図12に示す処理動作が繰り返し実行される。なお、以下に示すCMOSセンサの基本動作は、制御機能17hが行選択回路16c及び列選択回路16dを制御することによって実現される。
まず、電気信号の蓄積時の処理動作を説明する。図11に示すように、時間t0では、制御機能17hは、Rx、S1、S2及びTxをONにする。これにより、各単位画素において、PDとFD1とFD2の電荷がクリアされる。そして、時間t1では、制御機能17hは、RxとS2をOFFにする。すなわち、時間t1では、TxとS1とがONである。これにより、各単位画素では、PDで発生した電気信号がFD1に転送されることになる。
時間t3から時間t7では、X線パルスの照射が開始される。制御機能17hは、X線パルス照射期間の半分に当たる時間t5まではTxとS1をONにし続け、残り半分の時間t5以降ではTxとS2をONにする。第1の実施形態と同様に、制御機能17hは、例えば、各X線パルスの幅Txw×1/2だけ経過したタイミングでCMOSセンサを制御して、S1とS2のONとOFFとを切り替えることで、電気信号の蓄積先をFD1からFD2に切り替える。言い換えると、制御機能17hは、単位時間ごとのX線管15aの移動量が同一となるように制御する。これにより、各単位画素では、時間t3から時間t5では電気信号がFD1に蓄積され、時間t5から時間t7では電気信号がFD2に蓄積される。すなわち、一つのX線パルスによりフォトダイオード部PDで発生する電気信号は、X線パルスの前半(時間t3から時間t5)は発生すると同時にFD1に蓄積され、後半(時間t5から時間t7)はFD2に蓄積される。なお、時間t7でX線パルスの照射が終了する。時間t8では、制御機能17hは、TxとS2とをOFFにする。
続いて、電気信号の読み出し時の処理動作を説明する。図12に示すように、時間t10から時間t16ではFD1に蓄積された電気信号が読み出され、時間t16から時間t22ではFD2に蓄積された電気信号が読み出される。
時間t10から時間t16では制御機能17hは、SxとS1とをONすることにより、FD1に蓄積された電気信号を列選択回路へ出力する。ここで、制御機能17hは、時間t11から時間t12では、行選択回路16cを制御して、1行目のCMOSセンサ画素のSxとS1とをONにする。なお、図12には図示しないが、制御機能17hは、列選択回路16dを制御して、1行目のCMOSセンサ画素に対して、選択した列の順番にFD1から電気信号を読み出す。例えば、図3に示すCMOSセンサ画像において、制御機能17hは、1行目のUP11、UP21、・・・、UPn1をパラレルに選択し、続いて、1列目のUP11、UP21、・・・、UPn1をシリアルに選択する。そして、制御機能17hは、時間t12から時間t13では、SxとS1とをOFFにする。制御機能17hは、時間t13から時間t16の間も同様にSxとS1とのONとOFFとを繰り返すことで、FD1に蓄積された電気信号を読み出す。なお、FD1に蓄積された電気信号を読み出す処理は、CMOSセンサ内の全画素について行われる。
続いて、時間t17から時間t18では制御機能17hは、SxとS2とをONすることにより、FD2に蓄積された電気信号を列選択回路へ出力する。ここで、制御機能17hは、時間t17から時間t18では、行選択回路16cを制御して、1行目のCMOSセンサ画素のSxとS2とをONにする。なお、図12には図示しないが、制御機能17hは、列選択回路16dを制御して、1行目のCMOSセンサ画素に対して、選択した列の順番に、FD2から電気信号を読み出す。例えば、図3に示すCMOSセンサ画像において、制御機能17hは、1行目のUP11、UP21、・・・、UPn1をパラレルに選択し、続いて、1列目のUP11、UP21、・・・、UPn1をシリアルに選択する。そして、制御機能17hは、時間t18から時間t19では、SxとS2とをOFFにする。制御機能17hは、時間t19から時間t22の間も同様にSxとS2とのONとOFFとを繰り返すことで、FD2に蓄積された電気信号を読み出す。なお、FD2に蓄積された電気信号を読み出す処理は、CMOSセンサ内の全画素について行われる。
トモシンセシス撮影では、X線焦点が移動しながらX線パルスが複数回照射されるが、X線パルスごとに上記動作が繰り返される。続いて、信号処理回路16bは、X線検出器16aによって変換された電気信号からX線投影データを生成する。そして、画像処理回路17dは、信号処理回路16bによって生成されたX線投影データに基づいてトモシンセシス画像を生成する。
このように、第1の実施形態の変形例では、X線検出器16aは、光電変換部と複数の電荷蓄積部とを有する積分型のX線検出器であり、複数の電荷蓄積部を電気信号の保持に使用する。これにより、第1の実施形態の変形例に係るによれば、第1の実施形態と同様に、撮像時間を短縮しながら解像度の高い画像を得ることができる。
また、第1の実施形態の変形例に係るCMOSセンサ画素は、FD1とFD2とに電気信号を蓄積するので、PDの静電容量を加味することなく、X線検出器16aを構成することができる。
なお、図10に示す単位画素では、X線パルスを2つの信号に分割し、FD1とFD2とに信号を蓄積する場合を説明したが、単位画素が有する電荷蓄積部(FD)の数は、2つに限定されるものではなく、2つ以上で任意に変更可能である。
また、図10に示す単位画素において、2つの電荷蓄積部(FD1及びFD2)に電荷を蓄えるだけではなく、光電変換部(PD)を電荷の蓄積に用いてもよい。また、光電変換部(PD)を電荷の蓄積に用いる場合、2つ以上の電荷蓄積部を有するようにしてもよい。これにより、X線検出器16aが有するCMOSセンサ画素では、蓄積する信号を増加させるとともに、画素内に設ける信号蓄積用のキャパシタの数を一つ減らすことができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例では、X線検出器16aが積分型の検出器であるものとして説明した。ところで、X線検出器16aは、光子計数型の検出器であってもよい。そこで、第2の実施形態では、X線検出器16aが光子計数型の検出器である場合について説明する。
なお、第2の実施形態に係るマンモグラフィ装置10の構成は、X線検出器16aの構成と制御機能17hが実行する機能の一部とが異なる点を除いて、図1及び図2に示した構成例と同様である。以下では、第2の実施形態に係るX線検出器16aの構成と、第2の実施形態に係る制御機能17hが実行する機能とについて説明し、図1及び図2に示した各部についての詳細な説明を省略する。
まず、図13を用いて、第2の実施形態に係るX線検出器16aの検出素子の構成例について説明する。図13は、第2の実施形態に係るX線検出器16aの検出素子の構成例を示す図である。図13では、X線検出器16aが有する複数の検出素子のうち一つの検出素子を図示している。図13に示すように、各検出素子は、画素160と、チャージアンプ161と、波形成形回路162と、波形弁別回路163と、カウンタ164と、カウンタ165とを有する。
画素160は、シンチレータと光センサとにより構成される間接変換型の面検出器である。ここで、光センサは、例えばSiPM(Silicon photomultiplier)である。X線検出器16aの各画素160は、入射したX線光子に応じた電気信号(パルス)を出力する。この電気信号(パルス)の波高値は、X線光子のエネルギー値と相関性を有する。
チャージアンプ161は、画素160に入射した光子に応答して集電される電荷を積分・増幅して電気量のパルス信号として出力する。このパルス信号は、光子のエネルギー量に対応する波高及び面積を有する。
波形成形回路162は、チャージアンプ161から出力されるパルス信号の周波数特性を調整し、かつゲイン及びオフセットを与えることによってパルス信号の波形を整形する。波形成形回路162の出力側には、波形弁別回路163が接続される。
波形弁別回路163は、入射した光子への応答パルス信号を弁別して後段のカウンタ164又はカウンタ165に出力する回路である。ここで、波形弁別回路163は、制御機能17hの制御によって、第1のモードと第2のモードとを切り替えて動作する。
例えば、波形弁別回路163は、第1のモードでは、入射した光子への応答パルス信号の波高或いは面積を、弁別すべき複数のエネルギー帯域に対応して予め設定された閾値と比較し、閾値との比較結果を後段のカウンタ164又はカウンタ165に出力する回路である。より具体的には、波形弁別回路163は、各X線パルスの照射時に、所定の閾値以上の応答パルス信号を高エネルギー帯信号(HE Photon)として、カウンタ164に出力し、所定の閾値未満の応答パルス信号を低エネルギー帯信号(LE Photon)として、カウンタ165に出力する。
また、例えば、波形弁別回路163は、第2のモードでは、応答パルス信号を所定の閾値比較することなく、各X線パルスの照射時に、X線パルスの照射期間を時分割した単位時間ごとに生成されたパルス信号をカウンタ164及びカウンタ165分割して保持させる。より具体的には、波形弁別回路163は、X線パルスの前半では、パルス信号をカウンタ164に出力し、X線パルスの後半では、パルス信号をカウンタ165に出力する。
カウンタ164及びカウンタ165は、波形弁別回路163によって出力されたパルス信号をカウントし、光子の計数結果をデジタルデータとして信号処理回路16bに出力する。なお、カウンタ164及びカウンタ165のことを計数結果記憶部とも言う。
例えば、カウンタ164及びカウンタ165は、第1のモードでは、対応するエネルギー帯域毎に応答パルス信号の波形の弁別結果をカウントし、光子の計数結果をデジタルデータとして信号処理回路16bに出力する。より具体的には、第1のモードでは、カウンタ164は、各X線パルスの照射時に高エネルギー帯信号をカウントし、カウンタ165は、各X線パルスの照射時に低エネルギー帯信号をカウントする。
また、例えば、カウンタ164及びカウンタ165は、第2のモードでは、X線パルスの照射期間を時分割した単位時間ごとに生成されたパルス信号をカウントする。より具体的には、第2のモードでは、カウンタ164は、各X線パルスの照射時にX線パルスの前半に出力されたパルス信号をカウントし、カウンタ165は、各X線パルスの照射時にX線パルスの後半に出力されたパルス信号をカウントする。
次に、図14及び図15を用いて、第2の実施形態に係る制御機能17hが実行する機能について説明する。図14及び図15は、第2の実施形態に係るX線検出器16aが有する検出素子の処理動作を説明するためのタイミングチャートである。図14では、第1のモードでの信号蓄積時の処理動作を説明し、図15では、第2のモードでの信号蓄積時の処理動作を説明する。図14及び図15は、X線トモシンセシス撮像において、1回のX線パルスの照射時について説明するものである。すなわち、X線パルスの照射が行われるごとに図14及び図15に示す処理動作がそれぞれ繰り返し実行される。なお、以下に示すX線検出器16aが有する検出素子の基本動作は、制御機能17hによって制御されることによって実現される。
まず、第1のモードでの信号蓄積時の処理動作を説明する。図14に示すように、時間t0から時間t1では、制御機能17hは、カウンタ164及びカウンタ165をクリアする。これにより、カウンタ164及びカウンタ165において、計数結果がクリアされる。
時間t3から時間t7では、X線パルスの照射が開始される。ここで、入射した光子が、高エネルギー帯信号(HE Photon)、HE Photon、低エネルギー帯信号(LE Photon)、LE Photon、HE Photon、LE Photon、HE Photon、LE Photon、LE Photon、LE Photon、HE Photon、LE Photon、HE Photon、HE Photon、HE Photonの順で検出された場合について説明する。かかる場合、波形弁別回路163は、1番目及び2番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力し、3番目及び4番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ165に出力する。また、波形弁別回路163は、5番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力し、6番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ165に出力する。更に、波形弁別回路163は、7番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力し、8番目から10番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ165に出力する。続いて、波形弁別回路163は、11番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力し、12番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ165に出力する。そして、波形弁別回路163は、13番目から15番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力する。この結果、カウンタ164は、8つの高エネルギー帯信号を計数し、カウンタ165は、7つの低エネルギー帯信号を計数する。なお、時間t7でX線パルスの照射が終了する。
時間t7から時間t8では、制御機能17hは、カウンタ164及びカウンタ165の計数結果の読み出しを指示する。そして、時間t8から時間t12では、カウンタ164及びカウンタ165の計数結果が信号処理回路16bに出力される。例えば、X線照射が終了すると、まずカウンタ164に記憶された計数結果が行選択回路および列選択回路により選択され、センサ内の全画素について順次読み出される。次に、カウンタ165に記憶された計数結果が行選択回路および列選択回路により選択され、センサ内の全画素について順次読み出される。そして、時間t12から時間13では、制御機能17hは、次のX線パルスの照射に備えて、カウンタ164及びカウンタ165をクリアする。
トモシンセシス撮影では、X線焦点であるX線管15aが移動しながらX線パルスが複数回照射されるが、X線パルスごとに上記動作が繰り返される。続いて、信号処理回路16bは、X線検出器16aによって変換された電気信号からX線投影データを生成する。そして、画像処理回路17dは、信号処理回路16bによって生成されたX線投影データに基づいてトモシンセシス画像を生成する。
続いて、第2のモードでの信号蓄積時の処理動作を説明する。図15に示すように、時間t0から時間t1では、制御機能17hは、カウンタ164及びカウンタ165をクリアする。これにより、カウンタ164及びカウンタ165において、計数結果がクリアされる。
時間t3から時間t7では、X線パルスの照射が開始される。図15では、図14と同様の順で入射した光子が検出されるものとする。ここで、マンモグラフィ装置10では、各X線パルスの幅Txwが事前に決まっている。このため、制御機能17hは、X線パルスの照射開始タイミングを検知すれば、Txw×1/2だけ経過したタイミングを特定可能である。そして、制御機能17hは、例えば、Txw×1/2だけ経過したタイミングでカウンタを切り替える。言い換えると、制御機能17hは、単位時間ごとのX線管15aの移動量が同一となるように制御する。これにより、制御機能17hは、X線パルス照射期間の半分に当たる時間t5まではカウンタ164にパルス信号を出力させ、X線パルス照射期間の残り半分の時間t5以降ではカウンタ165にパルス信号を出力させる。
より具体的には、波形弁別回路163は、1番目及び2番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力し、3番目及び4番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ164に出力する。また、波形弁別回路163は、5番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力し、6番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ164に出力する。更に、波形弁別回路163は、7番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ164に出力する。
また、波形弁別回路163は、8番目から10番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ165に出力する。続いて、波形弁別回路163は、11番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ165に出力し、12番目に検出した低エネルギー帯信号(LE Photon)をカウンタ165に出力する。そして、波形弁別回路163は、13番目から15番目に検出した高エネルギー帯信号(HE Photon)をカウンタ165に出力する。すなわち、一つのX線パルスにより発生する電気信号は、X線パルスの前半(時間t3から時間t5)では発生すると同時にカウンタ164でカウントされ、後半(時間t5から時間t7)ではカウンタ165でカウントされる。なお、時間t7でX線パルスの照射が終了する。
時間t7から時間t8では、制御機能17hは、カウンタ164及びカウンタ165の計数結果の読み出しを指示する。そして、時間t8から時間t12では、カウンタ164及びカウンタ165の計数結果が信号処理回路16bに出力される。例えば、X線照射が終了すると、まずカウンタ164に記憶された計数結果が行選択回路および列選択回路により選択され、センサ内の全画素について順次読み出される。次に、カウンタ165に記憶された計数結果が行選択回路および列選択回路により選択され、センサ内の全画素について順次読み出される。そして、時間t12から時間13では、制御機能17hは、次のX線パルスの照射に備えて、カウンタ164及びカウンタ165をクリアする。
トモシンセシス撮影では、X線焦点であるX線管15aが移動しながらX線パルスが複数回照射されるが、X線パルスごとに上記動作が繰り返される。続いて、信号処理回路16bは、X線検出器16aによって変換された電気信号からX線投影データを生成する。そして、画像処理回路17dは、信号処理回路16bによって生成されたX線投影データに基づいてトモシンセシス画像を生成する。
上述したように、第2の実施形態では、X線検出器16aは、複数の計数結果記憶部を有する光子計数型のX線検出器であり、複数の計数結果記憶部を電気信号の保持に使用する。これにより、第2の実施形態では、X線管15aの動き量を低減したデータを収集することが可能になる。この結果、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、撮像時間を短縮しながら解像度の高い画像を得ることができる。
なお、第2の実施形態では、計数結果記憶部であるカウンタが2つあり、X線パルスを2つの信号に分割する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、カウンタがN個あり、X線パルスをN個の信号に分割するようにしてもよい。更に、X線検出器16aは、エネルギー成分ごとに複数の計数結果記憶部を有し、エネルギー成分ごとに、複数の計数結果記憶部を電気信号の保持に使用するようにしてもよい。例えば、各検出素子は、カウンタをL×N個有し、N個のエネルギー弁別を行い、X線パルスをL個の信号に分割する。
また、第2の実施形態では、画素160が間接変換型である場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、画素160は、直接変換型であってもよい。直接変換型の検出器とは、検出素子に入射したX線を直接電荷に変換する検出器である。この電荷は、X線の入射によって発生する電子が正電位の集電電極に向かって移動すること及びX線の入射によって発生する正孔が負電位の集電電極に向かって移動することの少なくとも一方により出力される。この直接変換型の検出器は、例えば、テルル化カドミウム(CdTe:cadmium telluride)半導体やテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe:cadmium zinc telluride)半導体等によって構成される。
(第3の実施形態)
第1の実施形態から第2の実施形態では、X線トモシンセシス撮像において、X線管15aが、X線パルスの照射期間中に所定の方向に移動する場合について説明した。ところで、マンモグラフィ装置10等のX線診断装置では、デュアルエナジー撮像法が行われる場合がある。デュアルエナジー撮像法は、2つ以上の線質のX線を順次照射して画像データを得る撮像法である。言い換えると、デュアルエナジー撮像法では、X線管15aは、X線パルスの照射期間中にエネルギーを切り替えてX線パルスを照射する。このデュアルエナジー撮像法では、物質により分離された画像を得ることができるので、病変の診断に有効である。
しかしながら、デュアルエナジー撮像法では、X線の照射時間間隔が長いと、この間に被検体が動く可能性がある。被写体が動く場合には、画像に動きボケが生じる問題があった。なお、X線の照射時間間隔は、X線出力装置15による線質切り替え時間やX線検出器16aの画像読出し時間等により決定される。
そこで、第3の実施形態では、デュアルエナジー撮像法等のように、X線パルスの線質を変化させる場合において、以下に説明するX線検出方法により、画像の動きボケを軽減する。
第3の実施形態に係るマンモグラフィ装置10の構成は、制御機能17hが実行する機能の一部が異なる点を除いて、図1及び図2に示した構成例と同様である。以下では、第3の実施形態に係る制御機能17hが実行する機能について説明し、図1及び図2に示した各部についての詳細な説明を省略する。
図16及び図17は、第3の実施形態に係るX線検出器16aが有するCMOSセンサ画素の処理動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、図16及び図17では、CMOSセンサ画素が、図7に示すCMOSセンサ画素である場合について説明する。図16では、フィルタによってX線の線質を切り替える場合の処理動作を説明し、図17では、管電圧の切り替えによってX線の線質を切り替える場合の処理動作を説明する。図16及び図17は、X線トモシンセシス撮像において、1回のX線パルスの照射時にX線の線質を切り替える場合について説明するものである。すなわち、X線パルスの照射が行われるごとに図16及び図17に示す処理動作がそれぞれ繰り返し実行される。なお、以下に示すX線検出器16aが有する検出素子の基本動作は、制御機能17hによって制御されることによって実現される。
まず、フィルタによってX線の線質を切り替える場合の処理動作を説明する。図16に示すように、時間t0では、制御機能17hは、Rx及びTxをONにする。これにより、各単位画素において、PDとFDの電荷がクリアされる。また、時間t0では、線質フィルタは、第1のフィルタに設定される。そして、時間t1では、制御機能17hは、RxをOFFにする。これにより、各単位画素では、PDで発生した電気信号がFDに転送されることになる。
時間t3から時間t7では、X線パルスの照射が開始される。制御機能17hは、X線パルス照射期間の半分に当たる時間t5まではTxをONにし続け、残り半分の時間t5以降ではTxをOFFにする。ここで、X線信号の蓄積期間において、システム制御回路17gの制御によりX線照射中に線質フィルタが第1のフィルタから第2のフィルタに切り替わる。そして、制御機能17hは、例えば、線質フィルタの切り替えタイミングに同期してCMOSセンサを制御して、Txを切り替えることで、電気信号の蓄積先をFDからPDに切り替える。言い換えると、制御機能17hは、単位時間ごとにエネルギーが切り替わるように制御する。これにより、各単位画素では、時間t3から時間t5では電気信号がFDに蓄積され、時間t5から時間t7では電気信号がPDに蓄積される。すなわち、FDとPDとで時間的に近接した線質の異なるX線信号を蓄積することができる。また、線質フィルタの切り替えに同期して管電流を増減することにより、2つの線質条件で検出器に発生する信号量を略同等に制御するようにしてもよい。なお、時間t7でX線パルスの照射が終了する。
なお、電気信号の読み出し時の処理動作は、第1の実施形態で説明した処理動作と同様である。続いて、信号処理回路16bは、X線検出器16aによって変換された電気信号からX線投影データを生成する。例えば、信号処理回路16bは、第1のフィルタで蓄積された信号から第1の投影データを生成し、第2のフィルタで蓄積された信号から第2の投影データを生成する。そして、画像処理回路17dは、信号処理回路16bによって生成されたX線投影データに基づいて物質分離処理を行い、例えば、軟部組織画像及び骨部画像等を生成する。システム制御回路17gは、軟部組織画像及び骨部画像等をディスプレイ17fに表示する。
次に、管電圧の切り替えによってX線の線質を切り替える場合の処理動作を説明する。図17に示すように、時間t0では、制御機能17hは、Rx及びTxをONにする。これにより、各単位画素において、PDとFDの電荷がクリアされる。そして、時間t1では、制御機能17hは、RxをOFFにする。これにより、各単位画素では、PDで発生した電気信号がFDに転送されることになる。
時間t3から時間t7では、X線パルスの照射が開始される。制御機能17hは、X線パルス照射期間の半分に当たる時間t5まではTxをONにし続け、残り半分の時間t5以降ではTxをOFFにする。ここで、X線信号の蓄積期間において、システム制御回路17gの制御によりX線照射中に管電圧が切り替わる。そして、制御機能17hは、例えば、管電圧の切り替えタイミングに同期してCMOSセンサを制御して、Txを切り替えることで、電気信号の蓄積先をFDからPDに切り替える。これにより、各単位画素では、時間t3から時間t5では電気信号がFDに蓄積され、時間t5から時間t7では電気信号がPDに蓄積される。すなわち、FDとPDとで時間的に近接した線質の異なるX線信号を蓄積することができる。また、管電圧の切り替えに同期して管電流を増減することにより、2つの線質条件で検出器に発生する信号量を略同等に制御するようにしてもよい。なお、図17では、管電圧が連続に切り替わる例を示したが、管電圧が瞬時に切り替わるように制御されてもよい。なお、時間t7でX線パルスの照射が終了する。
なお、電気信号の読み出し時の処理動作は、第1の実施形態で説明した処理動作と同様である。続いて、信号処理回路16bは、X線検出器16aによって変換された電気信号からX線投影データを生成する。例えば、信号処理回路16bは、管電圧を切り替える前に蓄積された信号から第1の投影データを生成し、管電圧を切り替えた後に蓄積された信号から第2の投影データを生成する。そして、画像処理回路17dは、信号処理回路16bによって生成されたX線投影データに基づいて物質分離処理を行い、例えば、軟部組織画像及び骨部画像等を生成する。システム制御回路17gは、軟部組織画像及び骨部画像等をディスプレイ17fに表示する。
上述したように、第3の実施形態では、X線パルスの照射期間中にエネルギーを切り替えによる被検体の動きを低減した時間的に近接した線質の異なるデータを収集することが可能になる。すなわち、第3の実施形態では、複数エネルギーによるX線撮影検査において、X線検出器16aの画像読出し時間によるX線照射間隔の増大を防止し、複数エネルギーでの撮影中の被写体の動きの影響を軽減することができる。これにより、第3の実施形態によれば、撮像時間を短縮しながら解像度の高い画像を得ることができる。
また、上述した第3の実施形態では、マンモグラフィ装置10において、X線トモシンセシス撮像を行う際に、デュアルエナジー撮像法が行われるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態は、マンモグラフィ装置における2次元画像の撮影において、デュアルエナジー撮像法が行われる場合にも適用可能である。
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
上述した実施形態では、X線診断装置の一例としてマンモグラフィ装置を用いて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線管とX線検出器とを支持するCアーム等の撮影系を有するX線診断装置においても、上述した実施形態は適用可能である。例えば、上述した実施形態は、Cアームを用いた回転撮影やCアームを用いた回転撮影時におけるデュアルエナジー撮像法にも適用可能である。なお、X線診断装置は、2系統の撮影系を有するバイプレーン型のX線診断装置であってもよい。
また、上述した実施形態では、マンモグラフィ装置を用いたトモシンセシス撮像における場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、マンモグラフィ装置によるデュアルエナジー撮像法での2次元画像の撮影や、Cアーム等の撮影系を有するX線診断装置によるデュアルエナジー撮像法での2次元画像の撮影にも適用可能である。
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、撮像時間を短縮しながら解像度の高い画像を得ることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。