以下、図面を参照して、X線CT装置及び画像生成方法の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
図1においては、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、データ収集回路18と、比較検出器19と、データ収集回路20とを有する。
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、被検体Pに対してX線を照射する。
X線検出器12は、被検体Pを通過したX線を検出する複数の検出素子から成る。X線検出器12における各検出素子は、検出したX線量に応じて電荷を蓄積し、蓄積した電荷をデータ収集回路18に出力する。
例えば、X線検出器12は、X線管11の焦点を中心とする円弧に沿った方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。また、X線検出器12は、通常密度の検出器であってもよいし、高精細検出器であってもよい。この点については後に詳述する。
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、データ収集回路18、比較検出器19、データ収集回路20等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置10において、回転フレーム13と共に回転移動する部分及び回転フレーム13を回転部とも記載する。
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
制御装置15は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構と、この機構を制御する回路とを含む。制御装置15は、入力インターフェース43や架台装置10に設けられた入力インターフェース等からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して構成される。
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。コリメータ17は、図示しないコリメータ調整回路によって、開口度及び位置が調整される。これにより、X線管11が発生させたX線の照射範囲が調整される。
データ収集回路18は、X線検出器12の検出素子によって検出されるX線の信号を収集する1又は複数のDAS(Data Acquisition System)から成る。データ収集回路18が1のDASから成る場合、DASは、X線検出器12における複数の検出素子の全部から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。一方で、データ収集回路18が複数のDASから成る場合、DASの各々は、X線検出器12における複数の検出素子の一部から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DASの各々は、X線検出器12における複数の検出素子を所定数ごとに分割して成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。これにより、データ収集回路18は、X線検出器12における複数の検出素子の全部に対応することができる。
即ち、データ収集回路18は、X線検出器12の検出素子を複数含む検出素子群によって検出されるX線の信号を収集するDASを、1又は複数有する。なお、データ収集回路18における1又は複数のDASは、第1の収集部の一例である。以下では、データ収集回路18が複数のDASから成る場合を例として説明する。
例えば、DASの各々は、対応する検出素子群に含まれる複数の検出素子について、信号を収集する検出素子をスイッチしながら、各検出素子に蓄積された電荷を逐次読み出すことにより、対応する検出素子群から信号を収集する。また、DASの各々は、例えば、対応する検出素子群から収集した信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。
比較検出器19は、X線管11から照射されたX線を検出する複数の検出素子から成る。以下では、比較検出器19の複数の検出素子のうちいずれかの検出素子を、第1の検出素子とも記載する。また、比較検出器19の複数の検出素子のうち第1の検出素子と異なる検出素子を、第2の検出素子とも記載する。
比較検出器19における各検出素子は、検出したX線量に応じて電荷を蓄積し、蓄積した電荷をデータ収集回路20に出力する。比較検出器19は、X線検出器12と同様、間接変換型の検出器であってもよいし、直接変換型の検出器であってもよい。例えば、比較検出器19の複数の検出素子は、X線検出器12の複数の検出素子と同じ素材により構成される。
図1に示すように、比較検出器19は、X線管11とウェッジ16との間に配置される。従って、図1に示す比較検出器19は、X線管11から照射されて、被検体Pを透過していないX線を検出する。これにより、比較検出器19は、X線管11から照射されたX線について、被検体Pを透過することによる減衰の影響を受けることなく、強度の変動を検出することができる。
なお、比較検出器19の配置は、図1に示す例に限定されるものではない。例えば、比較検出器19は、ウェッジ16とコリメータ17との間に配置されてもよいし、X線検出器12におけるチャネル方向の端部に配置されてもよい。即ち、比較検出器19は、X線管11から照射されて、被検体Pを透過していないX線を検出することができる任意の位置に配置される。
データ収集回路20は、比較検出器19の検出素子によって検出されるX線の信号を収集する1又は複数のDASから成る。データ収集回路20が複数のDASから成る場合、DASの各々は、比較検出器19における複数の検出素子のいずれかによって検出されるX線の信号を収集する。即ち、データ収集回路20は、検出素子と一対一で対応するDASを複数有する。この場合のDASは、例えば、対応する検出素子に電荷が蓄積されると同時に電荷を読み出すことにより、検出素子から信号を収集する。
或いは、データ収集回路20におけるDASの各々は、比較検出器19における複数の検出素子の一部から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DASの各々は、比較検出器19における複数の検出素子を所定数ごとに分割して成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。この場合、DASの各々は、対応する検出素子群に含まれる複数の検出素子について、信号を収集する検出素子をスイッチしながら、各検出素子に蓄積された電荷を逐次読み出すことにより、検出素子群から信号を収集する。
また、データ収集回路20が1のDASから成る場合、DASは、比較検出器19における複数の検出素子の全部から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。この場合のDASは、検出素子群に含まれる複数の検出素子について、信号を収集する検出素子をスイッチしながら、各検出素子に蓄積された電荷を逐次読み出すことにより、検出素子群から信号を収集する。
即ち、データ収集回路20は、比較検出器19における複数の検出素子と一対一で対応する複数のDAS、或いは、検出素子群に対応する1又は複数のDASを有する。なお、データ収集回路20における1又は複数のDASは、第2の収集部の一例である。
以下では、データ収集回路20が複数のDASから成り、DASの各々が、比較検出器19における検出素子と一対一で対応する場合を例として説明する。例えば、データ収集回路20は、図2に示すように、DAS20a及びDAS20bから成る。図2において、DAS20aは比較検出器19における検出素子19aと対応し、DAS20bは比較検出器19における検出素子19bと対応する。なお、DAS20a及びDAS20bは、第2の収集部の一例である。また、図2は、第1の実施形態に係る比較検出器19及びデータ収集回路20の一例を示す図である。
図2においては、検出素子19a及び検出素子19bのうちいずれか一方が第1の検出素子であり、他方が第2の検出素子である。以下では、検出素子19aを第1の検出素子とし、検出素子19bを第2の検出素子として説明する。
また、以下では、比較検出器19の検出素子によって検出されるX線の信号を、補正信号と記載する。例えば、データ収集回路20は、第1の検出素子(検出素子19a)によって検出されるX線の第1の補正信号と、第2の検出素子(検出素子19b)によって検出されるX線の第2の補正信号とを収集する。ここで、データ収集回路20は、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集する。なお、この点については後に詳述する。また、データ収集回路20のDASの各々は、例えば、比較検出器19の検出素子によって検出される補正信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、補正データを生成する。
データ収集回路18及びデータ収集回路20が生成したデータは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。
メモリ41は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ41は、投影データや再構成画像データ、心電計から送信された心電図等を記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された画像データを表示したり、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI等を表示したりする。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。
入力インターフェース43は、各種指示や各種設定などを行なうためのトラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース43は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路44へと出力する。なお、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線CT装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、制御機能44a、画像生成機能44b及び表示制御機能44cを有する。処理回路44は、例えば、プロセッサにより実現される。
例えば、処理回路44は、メモリ41から制御機能44aに相当するプログラムを読み出して実行することにより、X線CT装置1を制御してスキャンを実行する。ここで、制御機能44aは、例えば、コンベンショナルスキャンやヘリカルスキャン、ステップアンドシュート方式といった種々の方式でのスキャンを実行することができる。
具体的には、制御機能44aは、寝台駆動装置32を制御することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内へ移動させる。また、制御機能44aは、X線高電圧装置14を制御することにより、X線管11へ高電圧を供給させる。また、制御機能44aは、コリメータ17の開口度及び位置を調整する。また、制御機能44aは、制御装置15を制御することにより回転部を回転させる。制御機能44aによってスキャンが実行される間に、データ収集回路18は、X線検出器12によって検出されたX線に基づく信号を収集する。また、データ収集回路20は、比較検出器19によって検出されたX線に基づく第1の補正信号と第2の補正信号とを収集する。
また、例えば、処理回路44は、メモリ41から画像生成機能44bに相当するプログラムを読み出して実行することにより、第1の補正信号と第2の補正信号とに基づいて、データ収集回路18によって収集された信号を補正し、補正後の信号に基づいて画像データを生成する。
例えば、画像生成機能44bは、まず、データ収集回路18から出力された検出データに対して、対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。なお、前処理を施した後のデータについては生データとも記載する。また、前処理を施す前の検出データ及び前処理を施した後の生データを総称して、投影データとも記載する。次に、画像生成機能44bは、第1の補正信号と第2の補正信号とに基づいて生データを補正する。例えば、画像生成機能44bは、第1の補正信号と第2の補正信号とに基づいて生成された補正データにより生データを除算することで、生データを補正する。そして、画像生成機能44bは、補正後の生データに基づいて、CT画像データを生成する。具体的には、画像生成機能44bは、補正後の生データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。また、画像生成機能44bは、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。
なお、データ収集回路18において収集された信号の補正は、前処理を施す前に行なってもよい。即ち、信号の補正は、前処理を施した後の生データを補正することにより行ってもよいし、前処理を施す前の検出データを補正することにより行ってもよい。或いは、画像生成機能44bは、データ収集回路18を制御することにより、X線検出器12から出力された信号を補正し、補正後の信号に基づいて検出データを生成させることしてもよい。以下では、前処理を施した後の生データを補正することにより、信号を補正する場合を一例として説明する。
また、画像生成機能44bは、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作等に基づいて、メモリ41からCT画像データを読み出し、読み出したCT画像データを任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。また、画像生成機能44bは、変換した断層像データや3次元画像データをメモリ41に記憶させる。また、例えば、処理回路44は、メモリ41から表示制御機能44cに相当するプログラムを読み出して実行することにより、ディスプレイ42において断層像データや3次元画像データを表示する。
図1に示すX線CT装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路44は、メモリ41からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、図1においては、制御機能44a、画像生成機能44b及び表示制御機能44cの各処理機能が単一の処理回路44によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。また、図1においては、単一のメモリ41が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数のメモリ41を分散して配置して、処理回路44は、個別のメモリ41から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
以上、X線CT装置1の構成の一例について説明した。かかる構成の下、X線CT装置1は、補正信号について、ノイズを低減しつつ時間精度を向上させる。具体的には、X線CT装置1は、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集することにより、補正信号について、ノイズを低減しつつ時間精度を向上させる。以下、第1の実施形態に係るX線CT装置1が行う処理について詳細に説明する。
まず、図3を用いて、X線検出器12が通常密度の検出器である場合について説明する。図3は、第1の実施形態に係るX線検出器12及びデータ収集回路18の一例を示す図である。図3においては、説明の便宜のため、X線検出器12の複数の検出素子のうち、チャネル方向に2行分で、スライス方向に2列分の4つの検出素子(検出素子111、検出素子112、検出素子121及び検出素子122)のみを示す。
また、図3においては、データ収集回路18における複数のDASのうち、DAS18aとDAS18bとを示す。DAS18aは、検出素子111及び検出素子121から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。また、DAS18bは、検出素子112及び検出素子122から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。なお、DAS18a及びDAS18bは、第1の収集部の一例である。
図3に示すように、DAS18aと、検出素子111及び検出素子121とは、導線によって接続される。この導線には、DAS18aと検出素子111との接続/非接続を切り替えるスイッチ、及び、DAS18aと検出素子121との接続/非接続を切り替えるスイッチが配置される。これらのスイッチが個別に制御されることで、各検出素子に蓄積された電荷がDAS18aに逐次読み出される。同様に、DAS18bと、検出素子112及び検出素子122とは、導線によって接続される。
ここで、DAS18aによる信号の収集、及び、DAS18aによって収集される信号の補正に用いられる補正信号の収集について、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係る信号及び補正信号の収集のタイミングの一例を示す図である。図4において、横方向は、時間に対応する。また、図4においては、DAS18aによる検出素子111及び検出素子121からの電荷の読み出しのタイミングを、下方向の矢印で示す。
また、図4においては、図2に示した比較検出器19の検出素子19aによって検出されるX線の補正信号の収集のタイミングのみを示し、検出素子19bによって検出されるX線の補正信号の収集のタイミングについては図示を省略する。或いは、図4に示す場合、検出素子19bによって検出されるX線の補正信号については、収集しないこととしてもよい。
図4に示すように、検出素子111及び検出素子121から信号を収集する場合、DAS18aは、それぞれ異なるタイミングT1〜T4に電荷を読み出す。例えば、タイミングT3に読み出される電荷は、タイミングT1からタイミングT3までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT4に読み出される電荷は、タイミングT2からタイミングT4までに検出されたX線に対応する信号である。
ここで、DAS20aは、DAS18aによる読み出しのタイミングに応じたタイミングで補正信号を収集する。例えば、DAS20aは、図4に示すように、検出素子19aによって検出される補正信号S11〜S14を収集する。例えば、DAS20aは、検出素子19aに電荷が蓄積されると同時に電荷を読み出すことにより、補正信号S11〜S14を収集する。
具体的には、DAS20aは、コンデンサを有し、検出素子19aに蓄積されると同時に読み出した電荷を、コンデンサに蓄積する。そして、DAS20aは、コンデンサに蓄積した電荷を周期的に読み出すことにより、補正信号S11〜S14を収集する。一例を挙げると、DAS20aは、タイミングT1にコンデンサから電荷を読み出した後、検出素子19aから読み出した電荷をコンデンサに蓄積し、蓄積した電荷をタイミングT2に読み出すことにより、補正信号S11を収集する。
更に、DAS20aは、補正信号S11〜S14のそれぞれを増幅し、デジタル信号のデータ(期間データ)に変換する。この期間データは、各期間の信号の平均値に対応する。また、DAS20aは、補正信号S11に基づく期間データ、補正信号S12に基づく期間データ及び補正信号S13に基づく期間データを加算することで、補正信号S11〜S13に基づく補正データを生成する。また、DAS20aは、補正信号S12に基づく期間データ、補正信号S13に基づく期間データ及び補正信号S14に基づく期間データを加算することで、補正信号S12〜S14に基づく補正データを生成する。なお、DAS20aは、各期間データに対して移動平均等の処理を行ない、処理済みの期間データに基づく補正データを生成することとしてもよい。そして、DAS20aは、生成した補正データを処理回路44に出力する。
次に、画像生成機能44bは、検出素子111及び検出素子121に由来する生データに、対応する補正データを付帯させる。例えば、画像生成機能44bは、タイミングT3に収集された検出素子111に由来する生データに、補正信号S11〜S13に基づく補正データを付帯させる。また、画像生成機能44bは、タイミングT4に収集された検出素子121に由来する生データに、補正信号S12〜S14に基づく補正データを付帯させる。
そして、画像生成機能44bは、各生データに付帯された補正データを用いて、各生データを補正する。例えば、画像生成機能44bは、出力比(=生データ/補正データ)を求める。この出力比は、被検体PによるX線の減衰を表している。例えば、画像生成機能44bは、タイミングT3に収集された検出素子111に由来する生データを、補正信号S11〜S13に基づく補正データで除算する。また、画像生成機能44bは、タイミングT4に収集された検出素子121に由来する生データを、補正信号S12〜S14に基づく補正データで除算する。
上述したように、図4に示す場合、補正信号S11〜S13が、タイミングT3に収集された信号に対応している。また、補正信号S12〜S14が、タイミングT4に収集された信号に対応している。即ち、図4に示す補正信号S11〜S14は、DAS18aによって収集される信号を補正するために十分な時間精度を有している。
次に、図5を用いて、X線検出器12が高精細検出器である場合について説明する。図5は、第1の実施形態に係るX線検出器12及びデータ収集回路18の一例を示す図である。図5に示すように、高精細検出器は、図3に示した通常密度の検出器よりも多くの検出素子を有する。例えば、図3における1つの検出素子と、図5における4つの検出素子の集合とで同程度のサイズとなっている場合、高精細検出器の検出素子数は、通常密度の検出器の4倍となる。なお、図5においては、説明の便宜のため、X線検出器12の複数の検出素子のうち、チャネル方向に4行分で、スライス方向に4列分の16の検出素子(検出素子211、212、213、214、221、222、223、224、231、232、233、234、241、242、243、244)のみを示す。
図5において、DAS18aは、8つの検出素子(検出素子211、212、221、222、231、232、241、242)から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。また、図5において、DAS18bは、8つの検出素子(検出素子213、214、223、224、233、234、243、244)から成る検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。
図5に示すように、DAS18aと、8つの検出素子(検出素子211、212、221、222、231、232、241、242)とは、導線によって接続される。この導線には、DAS18aと検出素子との接続/非接続を切り替えるスイッチが、各検出素子について配置される。これらスイッチが個別に制御されることで、各検出素子に蓄積された電荷がDAS18aに逐次読み出される。同様に、DAS18bと、8つの検出素子(検出素子213、214、223、224、233、234、243、244)とは、導線によって接続される。
なお、図5においては、図3に示した場合と比較して、1つのDASに対応する検出素子の数が多くなっている。これに対して、X線検出器12の検出素子数に応じてデータ収集回路18におけるDASの数を増やし、1つのDASに対応する検出素子の数を減らすことも考えられる。しかしながら、DASの数を増やすと、導線の数が増大して配線が困難になるとともに、コストも増加する。従って、X線検出器12を高精細化する上では、1つのDASに対応する検出素子の数を増やすことが必要である。そこで、図5においては、データ収集回路18におけるDASとして、図3と同様に、DAS18a及びDAS18bの2つのみを示して説明する。
次に、図5に示したDAS18aによる信号の収集、及び、DAS18aによって収集される信号の補正に用いられる補正信号の収集について、図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係る信号及び補正信号の収集のタイミングの一例を示す図である。図6において、横方向は、時間に対応する。また、図6においては、図5に示した検出素子211、212、221、222、231、232、241、242からの電荷の読み出しのタイミングを、下方向の矢印で示す。
図6に示すように、検出素子211、212、221、222、231、232、241、242から信号を収集する場合、DAS18aは、それぞれ異なるタイミングT5〜T17に電荷を読み出す。ここで、例えば、タイミングT13に読み出される電荷は、タイミングT5からタイミングT13までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT14に読み出される電荷は、タイミングT6からタイミングT14までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT15に読み出される電荷は、タイミングT7からタイミングT15までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT16に読み出される電荷は、タイミングT8からタイミングT16までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT17に読み出される電荷は、タイミングT9からタイミングT17までに検出されたX線に対応する信号である。
ここで、図4と同様に補正信号S11〜S14が収集された場合、タイミングT13に収集された信号には補正信号S11〜S13が対応し、タイミングT17に収集された信号には補正信号S12〜S14が対応する。一方で、タイミングT14に収集された信号、タイミングT15に収集された信号及びタイミングT16に収集された信号については、対応するタイミングで収集された補正信号がないため、補正信号S11〜S13又は補正信号S12〜S14が代替的に対応することとなる。即ち、X線検出器12が高精細化し、データ収集回路18におけるDASの各々に接続される検出素子の数が増加すると、補正信号の時間精度が低下する。
補正信号の時間精度を向上させるため、図7に示すように、補正信号をより細かいタイミングで収集することが考えられる。なお、図7は、第1の実施形態に係る信号及び補正信号の収集のタイミングの一例を示す図である。例えば、DAS20aは、図7に示すように、検出素子19aによって検出される補正信号S21〜S29を収集する。
図7に示す場合、補正信号S22〜S27が、タイミングT13に収集された信号に対応する。また、補正信号S23〜S28が、タイミングT15に収集された信号に対応する。また、補正信号S24〜S29が、タイミングT17に収集された信号に対応する。即ち、補正信号S22〜S29は、タイミングT15に収集された信号にも対応しており、図6に示した補正信号S11〜S14と比較して時間精度が向上している。しかしながら、補正信号を収集するタイミングを細かくすることは、検出素子19aにおける電荷の積分時間を短縮することであり、補正信号におけるノイズが増加して信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)が不十分になる場合もある。
そこで、データ収集回路20におけるDAS20a及びDAS20bは、検出素子19aによって検出されるX線の第1の補正信号と、検出素子19bによって検出されるX線の第2の補正信号とを異なるタイミングで収集することにより、補正信号について、ノイズを低減しつつ時間精度を向上させる。以下、DAS20a及びDAS20bによる補正信号の収集について、図8を用いて説明する。図8は、第1の実施形態に係る信号及び補正信号の収集のタイミングの一例を示す図である。図8において、横方向は時間に対応する。また、検出素子211、212、221、222、231、232、241、242からの電荷の読み出しのタイミングを下方向の矢印で示す。
図8に示すように、検出素子211、212、221、222、231、232、241、242から信号を収集する場合、DAS18aは、それぞれ異なるタイミングT5〜T17に電荷を読み出す。ここで、例えば、タイミングT13に読み出される電荷は、タイミングT5からタイミングT13までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT14に読み出される電荷は、タイミングT6からタイミングT14までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT15に読み出される電荷は、タイミングT7からタイミングT15までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT16に読み出される電荷は、タイミングT8からタイミングT16までに検出されたX線に対応する信号である。また、タイミングT17に読み出される電荷は、タイミングT9からタイミングT17までに検出されたX線に対応する信号である。
ここで、DAS20aは、図8に示すように、検出素子19aによって検出される補正信号S31〜S34を収集する。例えば、DAS20aは、検出素子19aに電荷が蓄積されると同時に電荷を読み出すことにより、補正信号S31〜S34を収集する。具体的には、DAS20aは、検出素子19aから読み出してコンデンサに蓄積した電荷を周期的に読み出すことにより、補正信号S31〜S34を収集する。なお、補正信号S31〜S34は、第1の補正信号の一例である。
同様に、DAS20bは、検出素子19bによって検出される補正信号S41〜S44を収集する。ここで、DAS20bは、補正信号S41〜S44を、補正信号S31〜S34とは異なるタイミングで収集する。なお、補正信号S41〜S44は、第2の補正信号の一例である。
一例を挙げると、まず、DAS20bは、コンデンサに蓄積した電荷を、タイミングT7に読み出すことにより、補正信号S41を収集する。次に、DAS20aは、コンデンサに蓄積した電荷を、タイミングT9に読み出すことにより、補正信号S31を収集する。次に、DAS20bは、コンデンサに蓄積した電荷を、タイミングT11に読み出すことにより、補正信号S42を収集する。タイミングT11以降も同様に、コンデンサに蓄積した電荷を周期的に読み出すことにより、DAS20aは、補正信号S32、補正信号S33及び補正信号S34を収集し、DAS20bは、補正信号S43及び補正信号S44を収集する。
上述したように、DAS20a及びDAS20bは、それぞれ、補正信号を周期的に収集する。また、図8において、DAS20aによるコンデンサからの電荷の読み出しの周期と、DAS20bによるコンデンサからの電荷の読み出しの周期とは同じである。このことから、補正信号S31は、補正信号S41に対して位相が180度遅れたタイミングで収集された補正信号と言える。同様に、補正信号S42は、補正信号S31に対して位相が180度遅れたタイミングで収集された補正信号である。換言すると、DAS20a及びDAS20bは、第1の補正信号(補正信号S31〜S34)と、第2の補正信号(補正信号S41〜S44)とを、位相が180度異なるタイミングで収集する。
更に、DAS20aは、第1の補正信号(補正信号S31〜S34)のそれぞれを増幅し、デジタル信号のデータ(期間データ)に変換する。同様に、DAS20bは、第2の補正信号(補正信号S41〜S44)のそれぞれを増幅し、デジタル信号のデータ(期間データ)に変換する。
また、DAS20aは、補正信号S31に基づく期間データ、補正信号S32に基づく期間データ及び補正信号S33に基づく期間データを加算することで、補正信号S31〜S33に基づく補正データを生成する。また、DAS20aは、補正信号S32に基づく期間データ、補正信号S33に基づく期間データ及び補正信号S34に基づく期間データを加算することで、補正信号S32〜S34に基づく補正データを生成する。また、DAS20bは、補正信号S41に基づく期間データ、補正信号S42に基づく期間データ及び補正信号S43に基づく期間データを加算することで、補正信号S41〜S43に基づく補正データを生成する。また、DAS20bは、補正信号S42に基づく期間データ、補正信号S43に基づく期間データ及び補正信号S44に基づく期間データを加算することで、補正信号S42〜S44に基づく補正データを生成する。そして、DAS20a及びDAS20bは、生成した補正データを処理回路44に出力する。
次に、画像生成機能44bは、検出素子211、212、221、222、231、232、241及び242に由来する生データに、対応する補正データを付帯させる。例えば、画像生成機能44bは、タイミングT13に収集された検出素子211に由来する生データに、補正信号S31〜S33に基づく補正データを付帯させる。また、画像生成機能44bは、タイミングT15に収集された検出素子221に由来する生データに、補正信号S42〜S44に基づく補正データを付帯させる。また、画像生成機能44bは、タイミングT17に収集された検出素子231に由来する生データに、補正信号S32〜S34に基づく補正データを付帯させる。
そして、画像生成機能44bは、付帯された補正データを用いて、各生データを補正する。例えば、画像生成機能44bは、出力比(=生データ/補正データ)を求める。この出力比は、被検体PによるX線の減衰を表している。例えば、画像生成機能44bは、タイミングT13に収集された検出素子211に由来する生データを、補正信号S31〜S33に基づく補正データで除算する。また、画像生成機能44bは、タイミングT15に収集された検出素子221に由来する生データを、補正信号S42〜S44に基づく補正データで除算する。また、画像生成機能44bは、タイミングT17に収集された検出素子231に由来する生データを、補正信号S32〜S34に基づく補正データで除算する。
なお、画像生成機能44bは、第1の補正信号と第2の補正信号とに対して、検出素子19aと検出素子19bとの感度に応じた補正を行ない、補正後の第1の補正信号と第2の補正信号とに基づいて信号の補正を行なってもよい。例えば、画像生成機能44bは、まず、検出素子19aと検出素子19bとの感度を取得する。一例を挙げると、画像生成機能44bは、検出素子19aによって検出されるX線の信号と、検出素子19bによって検出されるX線の信号とを同じタイミングで収集し、収集した各信号を、検出素子19aと検出素子19bとの感度として取得する。
次に、画像生成機能44bは、取得した感度に応じて、補正信号S31〜S33に基づく補正データ及び補正信号S32〜S34に基づく補正データと、補正信号S41〜S43に基づく補正データ及び補正信号S42〜S44に基づく補正データとを補正する。例えば、画像生成機能44bは、補正信号S31〜S33に基づく補正データ及び補正信号S32〜S34に基づく補正データを、検出素子19aの感度で除算する。また、画像生成機能44bは、補正信号S41〜S43に基づく補正データ及び補正信号S42〜S44に基づく補正データを、検出素子19bの感度で除算する。そして、画像生成機能44bは、補正後の補正データに基づいて、各生データを補正する。
図8に示す場合、補正信号S31〜S33が、タイミングT13に収集された信号に対応する。また、補正信号S42〜S44が、タイミングT15に収集された信号に対応する。また、補正信号S32〜S34が、タイミングT17に収集された信号に対応する。即ち、補正信号S31〜S34及び補正信号S42〜S44は、タイミングT15に収集された信号にも対応しており、図6に示した補正信号S11〜S14と比較して時間精度が向上している。
更に、補正信号S31〜S34及び補正信号S41〜S44は、図7の場合とは異なり、検出素子19a及び検出素子19bにおける電荷の積分時間を短縮しているわけではないので、補正信号におけるノイズが増加することもない。従って、DAS20a及びDAS20bは、第1の補正信号(補正信号S31〜S34)と、第2の補正信号(補正信号S41〜S44)とを異なるタイミングで収集することにより、補正信号について、ノイズを低減しつつ時間精度を向上させることができる。
次に、X線CT装置1による処理の手順の一例を、図9を用いて説明する。図9は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS101及びステップS102は、データ収集回路18及びデータ収集回路20に対応するステップである。また、ステップS103、ステップS104及びステップS105は、処理回路44の画像生成機能44bに対応するステップである。また、ステップS106及びステップS107は、処理回路44の表示制御機能44cに対応するステップである。
まず、データ収集回路18及びデータ収集回路20は、X線管11から照射されたX線に基づく信号と補正信号とを収集する(ステップS101)。具体的には、データ収集回路18における複数のDASの各々は、X線検出器12の検出素子を複数含む検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。また、データ収集回路20における複数のDASの各々は、比較検出器19の第1の検出素子によって検出されるX線の第1の補正信号と、第2の検出素子によって検出されるX線の第2の補正信号とを、異なるタイミングで収集する。
次に、データ収集回路18及びデータ収集回路20は、検出データ及び補正データを生成する(ステップS102)。具体的には、データ収集回路18における複数のDASの各々は、収集した信号に対する増幅処理、A/D変換等を実行して、検出データを生成する。また、データ収集回路20における複数のDASの各々は、収集した第1の補正信号と第2の補正信号とに対する増幅処理、A/D変換等を実行して、補正データを生成する。
次に、処理回路44は、検出データに対して、対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行なって生データを生成する(ステップS103)。次に、処理回路44は、補正データに基づいて生データを補正する(ステップS104)。更に、処理回路44は、補正後の生データに基づいてCT画像データを再構成し(ステップS105)、再構成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。
ここで、処理回路44は、CT画像の表示を行なうか否かを判定する(ステップS106)。CT画像を表示すると判定した場合(ステップS106肯定)、処理回路44は、メモリ41から読み出したCT画像データを、断層像データや3次元画像データ等のCT画像に変換して、ディスプレイ42に表示させる(ステップS107)。一方で、CT画像を表示しないと判定した場合(ステップS106否定)、処理回路44は、処理を終了する。
上述したように、第1の実施形態によれば、X線管11は、被検体Pに対してX線を照射する。また、X線検出器12は、被検体Pを透過したX線を検出する複数の検出素子から成る。また、第1の収集部は、X線検出器12の検出素子を複数含む検出素子群によって検出されるX線の信号を収集する。また、比較検出器19は、X線管11から照射されたX線を検出する第1の検出素子と第2の検出素子とを含む。また、第2の収集部は、第1の検出素子によって検出されるX線の第1の補正信号と、第2検出素子によって検出されるX線の第2の補正信号とを異なるタイミングで収集する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、データ収集回路20において収集される補正信号について、ノイズを低減しつつ時間精度を向上させることができる。
また、第1の実施形態に係る画像生成機能44bは、第1の補正信号と第2の補正信号とに基づいて、第1の収集部によって収集された信号を補正し、補正後の信号に基づいて画像データを生成する。即ち、X線CT装置1は、ノイズを低減しつつ時間精度を向上させた補正信号を用いて、第1の収集部によって収集された信号に対する補正を行なう。従って、X線CT装置1は、第1の収集部によって収集された信号から生成する画像データについて、画質を向上させることができる。
また、X線CT装置1は、X線管11についてグリッド制御が行われる場合においても、生成する画像データについて画質を向上させることができる。ここで、グリッド制御とは、パルス状に照射するX線について、下降波形(波尾)を除去するため、X線管11のグリッドに電圧をかけて熱電子の放出を抑える制御をいう。即ち、グリッド制御が行われる場合、X線管11から照射されるX線の強度がより急激に変化するため、強度が変化する度に補正信号を収集する必要性が大きい。かかる場合においても、X線CT装置1は、グリッド制御されるパルス状のX線に対して十分な時間精度を有し、かつ、ノイズを低減した補正信号を収集することができる。
なお、上述した実施形態では、X線検出器12が高精細検出器である場合に、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2の収集部は、X線検出器12が通常密度の検出器である場合に、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集してもよい。これにより、比較検出器19の検出素子における電荷の積分時間を延長して、補正信号におけるノイズを更に低減するとともに、補正信号の時間精度を維持することができる。
また、上述した実施形態では、図2に示したように、比較検出器19が、検出素子19a及び検出素子19bから成るものとして説明した。しかしながら、比較検出器19が備える検出素子の数は、2つに限定されるものではない。例えば、比較検出器19は、図10に示すように、4つの検出素子(検出素子19c、検出素子19d、検出素子19e及び検出素子19f)を備える場合であってもよい。この場合、データ収集回路20は、例えば、検出素子19cに対応するDAS20cと、検出素子19dに対応するDAS20dと、検出素子19eに対応するDAS20eと、検出素子19fに対応するDAS20fとを備える。なお、図10は、第1の実施形態に係る比較検出器19及びデータ収集回路20の一例を示す図である。
ここで、DAS20c、DAS20d、DAS20e及びDAS20fによる補正信号の収集について、図11を用いて説明する。図11は、第1の実施形態に係る信号及び補正信号の収集のタイミングの一例を示す図である。
図11において、横方向は時間に対応する。また、検出素子211、212、221、222、231、232、241、242からの電荷の読み出しのタイミングを下方向の矢印で示す。図11に示すように、検出素子211、212、221、222、231、232、241、242から信号を収集する場合、DAS18aは、それぞれ異なるタイミングT5〜T17に電荷を読み出す。
また、図11に示すように、DAS20cは、検出素子19cによって検出される補正信号S51〜S54を収集する。例えば、DAS20cは、検出素子19cに電荷が蓄積されると同時に電荷を読み出すことにより、補正信号S51〜S54を収集する。同様に、DAS20dは、検出素子19dによって検出される補正信号S61〜S65を収集する。また、DAS20eは、検出素子19eによって検出される補正信号S71〜S74を収集する。また、DAS20fは、検出素子19fによって検出される補正信号S81〜S84を収集する。
図11においては、検出素子19c、検出素子19d、検出素子19e及び検出素子19fのうちいずれかが第1の検出素子に対応し、第1の検出素子と異なる検出素子が第2の検出素子に対応する。例えば、検出素子19cが第1の検出素子である場合は、検出素子19d、検出素子19e及び検出素子19fのうちいずれかが第2の検出素子に対応する。
ここで、第1の検出素子によって検出されるX線の第1の補正信号と、第2の検出素子によって検出されるX線の第2の補正信号とは、異なるタイミングで収集される。例えば、第1の検出素子としての検出素子19cによって検出されるX線の補正信号S51〜S54は、第2の検出素子としての検出素子19dによって検出されるX線の補正信号S61〜S65と異なるタイミングで収集される。同様に、第1の検出素子としての検出素子19dによって検出されるX線の補正信号S61〜S65は、第2の検出素子としての検出素子19eによって検出されるX線の補正信号S71〜S74と異なるタイミングで収集される。同様に、第1の検出素子としての検出素子19eによって検出されるX線の補正信号S71〜S74は、第2の検出素子としての検出素子19fによって検出されるX線の補正信号S81〜S84と異なるタイミングで収集される。同様に、第1の検出素子としての検出素子19fによって検出されるX線の補正信号S81〜S84は、第2の検出素子としての検出素子19cによって検出されるX線の補正信号S51〜S54と異なるタイミングで収集される。
また、図11に示すように、補正信号S62〜S65は、補正信号S51〜S54に対して位相が90度遅れたタイミングで収集された補正信号である。また、補正信号S71〜S74は、補正信号S61〜S64に対して位相が90度遅れたタイミングで収集された補正信号である。また、補正信号S81〜S84は、補正信号S71〜S74に対して位相が90度遅れたタイミングで収集された補正信号である。また、補正信号S51〜S54は、補正信号S81〜S84に対して位相が90度遅れたタイミングで収集された補正信号である。換言すると、図11において、DAS20c、DAS20d、DAS20e及びDAS20fは、第1の補正信号と第2の補正信号とを、位相が90度異なるタイミングで収集する。
図11に示す場合、補正信号S51〜S53が、タイミングT13に収集された信号に対応する。また、補正信号S62〜S64が、タイミングT14に収集された信号に対応する。また、補正信号S72〜S74が、タイミングT15に収集された信号に対応する。また、補正信号S82〜S84が、タイミングT16に収集された信号に対応する。また、補正信号S52〜S54が、タイミングT17に収集された信号に対応する。即ち、図11に示す補正信号は、タイミングT14に収集された信号及びタイミングT16に収集された信号にも対応しており、図8に示した補正信号S31〜S34及び補正信号S41〜S44と比較して、時間精度が更に向上している。
また、X線CT装置1は、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集するか否かについて、モードの切り替えを行なってもよい。例えば、データ収集回路20は、データ収集回路18における読み出し速度が閾値以上か否かに応じて、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集するか否かを切り替える。
例えば、データ収集回路20は、まず、データ収集回路18における読み出し速度として、データ収集回路18におけるDASが対応する検出素子群から信号を収集する際の時間間隔のうち、最短のものを取得する。一例を挙げると、図4に示す場合、データ収集回路20は、タイミングT1とタイミングT2との間に相当する時間間隔を取得する。別の例を挙げると、図8に示す場合、データ収集回路20は、タイミングT5とタイミングT6との間に相当する時間間隔を取得する。
ここで、取得した時間間隔を電荷の積分時間として補正信号を収集すると十分な信号対雑音比が得られないと判断した場合、データ収集回路20は、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集する。例えば、データ収集回路20は、取得した時間間隔が閾値以下である場合(即ち、データ収集回路18における読み出し速度が閾値以上である場合)、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集する。一例を挙げると、図8に示したように、X線検出器12が高精細検出器であって信号を収集する時間間隔が短い場合、データ収集回路20は、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集する。
一方で、図4に示したように、X線検出器12が通常密度の検出器であって信号を収集する時間間隔が長い場合、データ収集回路20は、取得した時間間隔を電荷の積分時間として補正信号を収集しても、十分な信号対雑音比が得られると判断する。この場合、データ収集回路20は、例えば、第1の補正信号及び第2の補正信号の一方のみを収集する。或いは、データ収集回路20は、第1の補正信号と第2の補正信号とを同じタイミングで収集する。この場合、データ収集回路20は、例えば、同じタイミングで収集した第1の補正信号と第2の補正信号とをそれぞれ増幅し、デジタル信号のデータに変換した後に加算する。そして、データ収集回路20は、加算後のデータを期間データとして補正データを生成し、生成した補正データを処理回路44に出力する。これにより、比較検出器19における検出素子ごとのノイズレベルが平均化され、補正信号のノイズがより低減される。
また、これまで、データ収集回路20が複数のDASから成り、DASの各々が、比較検出器19における検出素子と一対一で対応する場合について説明した。しかしながら、データ収集回路20におけるDASは、比較検出器19における複数の検出素子に対応するものであってもよい。即ち、データ収集回路20におけるDASは、比較検出器19の検出素子を複数含む検出素子群によって検出されるX線の信号を収集するものであってもよい。また、この場合、データ収集回路20は、1つのDASから成る場合であってもよい。
例えば、データ収集回路20は、図12に示すように、DAS20gから成る。ここで、DAS20gと、検出素子19g及び検出素子19hとは、導線によって接続される。この導線には、DAS20gと検出素子19gとの接続/非接続を切り替えるスイッチ、及び、DAS20gと検出素子19hとの接続/非接続を切り替えるスイッチが配置される。これらのスイッチが個別に制御されることで、各検出素子に蓄積された電荷がDAS20gに逐次読み出される。即ち、DAS20gは、検出素子19gに蓄積された電荷と、検出素子19hに蓄積された電荷とを逐次読み出すことにより、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集する。なお、図12は、第1の実施形態に係る比較検出器19及びデータ収集回路20の一例を示す図である。
なお、図12に示す場合においても、データ収集回路20は、データ収集回路18における読み出し速度に応じて、第1の補正信号と第2の補正信号とを異なるタイミングで収集するか否かを切り替えてもよい。ここで、データ収集回路18における読み出し速度が閾値よりも小さい場合、DAS20gは、例えば、第1の補正信号及び第2の補正信号の一方のみを収集する。
或いは、DAS20gは、データ収集回路18における読み出し速度が閾値よりも小さい場合、第1の補正信号と第2の補正信号とを束ね処理して収集する。具体的には、DAS20gは、まず、検出素子19gとの接続をオンにする。これにより、検出素子19gに蓄積された電荷は、DAS20gが有するコンデンサに移動する。次に、DAS20gは、検出素子19hとの接続をオンにする。これにより、検出素子19hに蓄積された電荷は、DAS20gが有するコンデンサに移動する。すなわち、検出素子19g及び検出素子19hのそれぞれに蓄積されていた電荷が、DAS20gにおいて加算(合成)される。これにより、比較検出器19における検出素子ごとのノイズレベルが平均化され、補正信号のノイズがより低減される。
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、上述した実施形態で説明した画像生成方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像生成プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像生成プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、補正信号について、ノイズを低減しつつ時間精度を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。