JP6696833B2 - 潤滑構造 - Google Patents
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Description
車両の変速機が備える潤滑構造には、オイルが一時的に貯留される凹部などが形成され、凹部に溜まった貯留オイルにギヤなど回転体の一端が油没するように構成されたものがある。このような構成では、回転体の回転により貯留オイルが巻き上げられて、回転体の潤滑や冷却が行われるが、回転体の回転時に貯留オイルの攪拌抵抗が生ずることにより、エネルギー損失が発生し伝達効率の悪化を招来してしまう。
特許文献1には、オイル量調節部材を設けることにより回転体(第2歯車)によって掻き上げられるオイル量を調節し攪拌抵抗を低減する構成が開示されている。
このように、回転体の油没部分と貯留オイルとの相対速度が0に近づくようにされ、撹拌抵抗が低減される。また、撹拌抵抗を低減するための油量調整を行う必要がなく、そのための部材が不要となる。
これにより、配置凹部で貯留オイルを循環させるよりも配置凹部の貯留オイルの油量を少なくすることが可能である。
これにより、吐出孔から吐出されたオイルは、流れを妨げられることなく排出孔から排出されやすい。
これにより、例えば、貯留オイルを貯留するために必要な配置凹部の内壁などを誘導部としての壁部に利用することにより、誘導部専用の部材を別途設ける必要がない。
これにより、配置凹部において貯留オイルの循環が起きやすくされる。
これにより、回転体の油没部分近傍の貯留オイルの流速が吐出孔から吐出されたオイルの流速に近くなる。
これにより、吐出孔から吐出されたオイルが円滑に排出孔から排出され、回転体の油没部分近傍の貯留オイルの流速を速めることができる。
これにより、撹拌抵抗を低減させるためのオイルを専用に供給するためのバルブ等を設けなくてもよい。
第1の実施の形態におけるオイル循環機構の構成について説明する。
図1は、車両100の内部に配置されたオイル循環機構及び関連する部分の構成の一例を示した図である。
変速機1は油圧を用いて変速比の変化を行う。油圧は、オイル循環機構3によって供給される。
変速機1の各部に与える油圧の制御は、ECU(Engine Control Unit)などの制御ユニット4が行う。
オイル循環機構3は、オイルが貯留され変速機1の下方に配置されているオイルパン5と、例えばトルクコンバータにおけるインペラ軸に連結されているポンプギヤを介してエンジン2からの動力に基づき駆動されてオイルパン5に集められたオイルを吸い上げるオイルポンプ6と、オイルを吸い上げる際にオイルに含まれる不純物を除去するためのフィルターが内部に配設されたオイルストレーナ7を備えている。
バルブユニット8は、オイルポンプ6から吐出されたオイルを変速機1に供給する際の元圧としてのライン圧を調圧するためのライン圧制御バルブ9と、ライン圧制御バルブ9から供給されるオイルを変速機1の各部に供給するために配設された複数の油路を切り換えるための油路切替機構10を備えている。
制御ユニット4は、バルブユニット8を制御することにより、変速機1の各部に与える油圧を制御する。
以降では、撹拌抵抗低減機構Fの各例について説明する。
[2−1.構成例1]
オイル循環機構3が備える構成例1としての撹拌抵抗低減機構F1は、図3に示すように、オイルが一時的に貯留され、該貯留された貯留オイルOLに回転体13の一部が油没した状態で配置される配置凹部14が設けられている。
回転体13は、例えば、リダクションギヤやポンプギヤやトランスファギヤなどである。また、CVT(Continuously Variable Transmission)であればプーリーなども回転体13として考えられる。
配置凹部14の内側の面(貯留オイルOLと接する面)には、再利用油路12から供給されるオイルを吐出する吐出孔15と、貯留オイルOLの流れを誘導(整流)するための誘導部16が設けられている。
尚、前述したように、配置凹部14の内側の面は、変速機1の外壁の一部分によって形成されていてもよい。
誘導部16については、いくつかの例を示す。構成例1では、誘導部16として排出孔16Aが設けられている。
図3では、吐出孔15から吐出されたオイルの流路が、矢印D1で示されている。
一方、回転体13は、例えば車両100の前進時における回転方向が図3の矢印D2で示す方向とされる。
従って、変速機1における動力伝達効率の低下の抑制が図られ、車両100の燃費向上を図ることができる。
構成例2としての撹拌抵抗低減機構F2は、図4に示すように、誘導部16としての壁部16Bが設けられている。
壁部16Bは、配置凹部14の内壁の一部として設けられていてもよいし、配置凹部14とは別に設けられていてもよい。
ここでは、配置凹部14の内壁の一部として壁部16Bが設けられた例を説明する。
配置凹部14の内壁のうち吐出孔15と略対向する部分は、配置凹部14の貯留オイルOLを誘導(整流)するための壁部16Bとして形成されている。
壁部16Bは、吐出孔15から吐出されたオイルを受け止めると共に移動方向を変化させる形状に形成された凹面とされている。
即ち、吐出孔15から吐出されたオイルは、配置凹部14の内側の凹面に沿うようにして配置凹部14内を循環する経路(D4)が形成される。
従って、回転体13の下端部13bの回転速度と下端部付近の貯留オイルOLの流速をより近づけることができるため、回転体13の回転に伴って生ずる撹拌抵抗の低減効果をより得ることができる。
構成例3としての撹拌抵抗低減機構F3は、図5に示すように、配置凹部14に設けられた吐出孔15は、回転体13の接線上に設けられると共に該接線の接点付近に向けて開口されている。
配置凹部14の内側の面は、回転体13の外周に沿った形状とされている。尚、回転体13がギヤである場合には、ギヤの各歯の最外端を結んだ円に沿った形状となるように配置凹部14の内側の面が形成される。
そして、排出孔16Aについても回転体13の接線上に設けられると共に該接線の接点付近に向けて開口されていることにより、吐出孔15から排出孔16Aへ淀みなくオイルを流すことができるため、回転体の油没部分と近傍の貯留オイルの相対速度を更に0に近づけることができる。
また、配置凹部14の内側の面と回転体13の外周部が近接するほど、回転体13による撹拌抵抗の低減効果を得るために必要な油量が少なくなるため、吐出孔15から吐出される油量を増やすためにライン圧制御バルブ9の排出部9aから排出される油量を増やすこと、延いては、オイルポンプ6によって吸い上げられる油量を増やすことをせずに済む。即ち、排出部9aから排出される本来の油量によって回転体13による撹拌抵抗の低減効果を得ることができる。
撹拌抵抗低減機構における各種の変形例を説明する。
[3−1.第1の変形例]
第1の変形例に係る撹拌抵抗低減機構F4は、図6に示すように、吐出孔15に蓋部17が設けられている。
蓋部17は、回動軸17aと閉塞板17bを備えており、閉塞板17bは回動軸17aを軸として回動可能とされている。
このような状態において吐出孔14から吐出されたオイルが回転体13に直接打ち付けられた場合には、回転体13の回転を妨げてしまう虞がある。
これにより、回転体13の全ての部分が貯留オイルOLから露出した状態において吐出孔15から吐出されたオイルが回転体13に直接掛かってしまうことが防止される。従って、回転体13の回転を妨げてしまうことを防止することができる。
また、蓋部17は吐出孔14の開口部に取り付けられている必要はなく、例えば吐出孔14へと続く再利用油路12上に設けられていてもよい。この場合には、蓋部17の閉塞板17b、或いは蓋部17の代わりに弁体等が再利用油路12を途中で遮断可能な状態で取り付けられる。
第2の変形例に係る撹拌抵抗低減機構F5は、図8の斜視図に示すように、吐出孔15と排出孔16Aが略同一方向に開口されて設けられている。
図8には、一例として逆方向に回転する二つの回転体13P,13Qが略椀型とされた配置凹部14に回転軸13aの軸方向に離隔して平行に配置され、配置凹部14の貯留オイルOLにそれぞれの下端部13bが油没された状態とされている。
排出孔16Aは、吐出孔15から吐出され配置凹部14の内側の面に沿って流れてきたオイルが排出されやすい向きに開口されている。
回転体13Pは、吐出孔15から吐出されて反対側の壁に向かって流れるオイルの流路上に下端部13bが配置され、オイルが流れる方向と下端部13bの回転方向が略一致するようにされている。
回転体13Qは、排出孔16Aの反対側の壁から排出孔16Aに向かって流れるオイルの流路上に下端部13bが配置され、オイルが流れる方向と下端部13bの回転方向が略一致するようにされている。
尚、排出孔16Aに向かうオイルの一部は、排出孔16Aから排出されずに再び吐出孔15から吐出されたオイルに合流することにより、配置凹部14内を循環する。
即ち、吐出孔15と排出孔16Aの配置及び配置凹部14の略椀型により、配置凹部14内に循環経路が形成される。
また、回転体13Qは、下端部13bの回転方向は、矢印D12に示すように、貯留オイルOLの流れ(D9)に沿う方向とされている。
各構成例や変形例に記載したように、変速機1などの車両の動力伝達機構に用いられる潤滑構造を備えた撹拌抵抗低減機構F1(F2,F3,F4,F5)が設けられたオイル循環機構3は、貯留オイルOLと貯留オイルOLに下端部13bが油没可能な回転体13(13P,13Q)の少なくとも一部とが配置される配置凹部14にオイルを吐出する吐出孔15と、回転体13の油没部分と該油没部分近傍における貯留オイルOLとの相対速度が0に近づくように吐出孔15から吐出されたオイルを誘導する誘導部16(16A,16B)と、を備えている。
このように、回転体13の油没部分(下端部13b)と貯留オイルOLとの相対速度が0に近づくようされ、撹拌抵抗の低減が図られる。また、貯留オイルOLの油量の調整などを行う部材などが不要となり、潤滑構造を簡潔にすることができる。
即ち、潤滑構造の複雑化を招くことなく回転体13の回転に伴う撹拌抵抗を低減することができる。
これにより、配置凹部14で貯留オイルOLを循環させるよりも配置凹部14の貯留オイルOLの油量を少なくすることが可能である。
従って、オイル循環機構3全体で扱う油量を抑えることができるため、重量軽減が図られ、延いては車両100の燃費の向上が図られる。
これにより、吐出孔15から吐出されたオイルは、流れを妨げられることなく排出孔16Aから排出されやすい。
従って、回転体13の油没部分近傍におけるオイルの流速の低下が抑制されるため、回転体13の油没部分と近傍の貯留オイルOLの相対速度をより0に近づけることができ、車両100の燃費の更なる向上を図ることができる。
例えば、貯留オイルOLを貯留するために必要な配置凹部14の内壁などを誘導部16としての壁部16Bに利用することにより、誘導部16専用の部材を別途設ける必要がない。
従って、潤滑構造を簡素化することができる。
また、配置凹部14内で貯留オイルOLの循環を発生させることができ、回転体13の油没部分近傍の貯留オイルOLと回転体13の相対速度を0に近づけることができる。
従って、吐出孔15からのオイルの吐出が止んだとしても貯留オイルOLの循環によって、回転体13の油没部分と近傍の貯留オイルOLの相対速度を0に近づけた状態が継続し、撹拌抵抗の低減効果を長引かせることができる。
また、誘導部16としての排出孔16Aを設けずに済むことにより、孔を形成するための工数を削減することができる。
これにより、配置凹部14において貯留オイルOLの循環が起きやすくされて、整流効果が高まる。
従って、回転体13の回転に伴う撹拌抵抗の低減効果を高めることができる。
また、循環が継続している間は回転体13の油没部分近傍の貯留オイルOLと回転体13の油没部分の相対速度が0に近づいた状態とされるため、撹拌抵抗の低減効果を長く保つことができる。
これにより、回転体13の油没部分近傍の貯留オイルOLの流速が吐出孔15から吐出されたオイルの流速に近くなる。
従って、回転体13の油没部分と近傍の貯留オイルOLの相対速度を0に近づけやすくすることができ、撹拌抵抗の低減効果を高めることができる。
これにより、吐出孔15から吐出されたオイルが円滑に排出孔16Aから排出され、回転体13の油没部分近傍の貯留オイルOLの流速を速めることができる。
従って、回転体13の油没部分とその近傍の貯留オイルOLの相対速度を0に近づけやすくすることができ、撹拌抵抗の低減効果を高めることができる。
余剰オイルとして排出されたオイルを利用して吐出孔15に供給することにより、撹拌抵抗を低減させるためのオイルを専用に供給するためのバルブ等を設けることなく回転体13の油没部分と近傍の貯留オイルOLの相対速度を0に近づけることができ、撹拌抵抗の低減効果を得ることができる。
Claims (7)
- 車両の動力伝達機構に用いられる潤滑構造であって、
貯留オイルと前記貯留オイルに下端部が油没可能な回転体の少なくとも一部とが配置される配置凹部にオイルを吐出する吐出孔と、
前記回転体の油没部分と該油没部分近傍における前記貯留オイルとの相対速度が0に近づくように前記吐出孔から吐出されたオイルを誘導する誘導部と、を備え、
前記配置凹部は、前記回転体の回転軸中心から鉛直方向下方に凸の凹部として形成され、
前記配置凹部の底部は、前記回転軸中心から下方であって前記吐出孔の位置よりも下方に位置している
潤滑構造。 - 前記誘導部は、前記貯留オイルを前記配置凹部から排出する排出孔とされた
請求項1に記載の潤滑構造。 - 前記排出孔は前記吐出孔と対向して設けられた
請求項2に記載の潤滑構造。 - 前記吐出孔は、前記回転体の接線上に設けられ、該接線の接点に向けて開口された
請求項1から請求項3の何れかに記載の潤滑構造。 - 前記排出孔は、前記回転体の接線上に設けられ、該接線の接点に向けて開口された
請求項2または請求項3に記載の潤滑構造。 - 車両の動力伝達機構に用いられる潤滑構造であって、
貯留オイルと前記貯留オイルに下端部が油没可能な回転体の少なくとも一部とが配置される配置凹部にオイルを吐出する吐出孔と、
前記回転体の油没部分と該油没部分近傍における前記貯留オイルとの相対速度が0に近づくように前記吐出孔から吐出されたオイルを誘導する誘導部と、を備え、
前記誘導部は、壁部とされ、
前記壁部は、前記吐出孔と略対向して設けられた凹面を有し、
前記凹面は上方にいくに従って前記吐出孔側に変位するように形成された
潤滑構造。 - 前記動力伝達機構にオイルを供給するための油圧回路から排出される余剰オイルを前記吐出孔に供給する供給部を備えた
請求項1から請求項6の何れかに記載の潤滑構造。
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