しかし、特許文献1に記載されたマンホールでは、張り出し部がマンホールの外壁面から突出した態様であるため、浮力によってマンホールの底部に強い押し上げ力が作用した場合に、張り出し部が埋戻し土の荷重によって破損し、マンホールの壁部から分離するおそれがある。マンホールの壁部は大部分が円柱状であって、鉛直方向へストレート状に延びているため、かかる場合には、マンホールの外壁面と周囲地盤との間の摩擦抵抗が急激に減少し、浮き上がりが生じるおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、破損のおそれのない浮上防止構造を備えたマンホール、並びにその設置構造及び施工方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係るマンホールは、上部から下方に向かって外径が漸次大きくなる斜壁部を上部に有するマンホールにおいて、前記斜壁部は、マンホールの上端から、上下方向における全長の少なくとも2分の1の範囲を占めており、内壁面から外壁面まで貫通する排水孔を有するとともに、縦断面において、左右対称であって、鉛直方向に対する傾斜角度が下方に向かうにつれて次第に小さくなる外形を有し、前記排水孔は、地盤の通常時における地下水位よりも上方に位置しており、前記マンホールの壁部は、前記斜壁部よりも下方に、上方から下方に向かって外径が漸次小さくなるように外壁面が傾斜した縮径斜壁部を有し、前記壁部は、全体として略卵形に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、地震などによって地盤の間隙水圧が上昇した際に、排水孔からマンホール内に地下水を流入させて、過剰間隙水圧を消散させることができる。これにより、地盤の液状化を抑制することができるとともに、マンホールに作用する摩擦力を保持することができる。また、この構成によれば、地盤とマンホールの外壁面との間の摩擦抵抗を大きくして、マンホールの浮き上がりを防止することができる。また、マンホールの壁部自体の外径を漸次大きくする構成を取っていることから、外方へ急激に突出する形態がなく、マンホールに浮力が作用した場合にも突出部が破損して分離するおそれがない。従って、マンホールの浮き上がりの挙動を常に的確に抑制することができる。
また、斜壁部に上載される埋戻し土の量を比較的多くすることができるので、該埋戻し土の荷重による浮き上がり防止の効果も期待できる。
この構成によれば、地盤とマンホールの外壁面との間の摩擦力をマンホールの周方向に沿ってほぼ均一に作用させることができるので、局部的な浮き上がりを防止することができる。また、製造も容易である。
また、本発明は、前記マンホールにおいて、前記斜壁部の外壁面は、径外方へ凸となる曲面状であることを特徴とする。
この構成によれば、斜壁部の外壁面の面積を大きくして地盤との摩擦抵抗を大きくすることができるとともに、マンホールの内部空間を広く確保することができる。
また、本発明は、前記マンホールにおいて、前記斜壁部の外壁面には、上下方向に連続的に延びる溝が複数形成されており、前記排水孔は、各溝の上端に形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記マンホールにおいて、前記溝の内側に配設される透水材を有することを特徴とする。
この構成によれば、マンホールの周囲の地下水を溝に沿って排水孔へ誘導することができるとともに、透水材によって地下水を効率よく集水することができ、過剰間隙水圧を消散させる効果を高めることができる。
また、本発明は、前記マンホールにおいて、前記溝は、前記マンホールの外壁面の下端まで延びており、前記透水材は、前記溝の上端から下端まで延在することを特徴とする。
この構成によれば、マンホールの底部に生じる過剰間隙水圧の上昇を抑制して、底部に作用する浮力を低減することができる。これにより、マンホールの浮上防止効果をより高めることができる。
また、本発明は、前記マンホールにおいて、前記透水材は、周面に多数の孔が形成された管状体であることを特徴とする。
この構成によれば、管状体からなる透水材の内部に地下水を集水できるとともに、この地下水に混在している土砂が管状体の内部に流入するのを防止することができる。これにより、地下水を効率よく集水しながら、土砂が溝を伝って排水孔からマンホール内へ侵入するのを防止することができる。
また、本発明は、前記マンホールにおいて、前記排水孔には、地下水を濾過するフィルタ部材が配置されることを特徴とする。
この構成によれば、マンホール外から排水孔を通過してマンホール内へ浸入する地下水に混在している土砂がフィルタ部材によって塞き止められるので、マンホール内への土砂の侵入が防止される。
また、本発明に係るマンホールの設置構造は、前記マンホールの設置構造であって、前記排水孔の周囲に周辺地盤に比して透水性の高い礫材層を設けたことを特徴とする。
この構成によれば、過剰間隙水圧が上昇した際に、間隙水を礫材層の内部へ集めて過剰間隙水圧を消散させることができる。つまり、間隙水は、排水孔からマンホールの内部へ排出されるとともに、排水孔の外部に設けられた礫材層へ排出されるので、地盤の液状化を防止する効果がより高くなる。
また、本発明に係るマンホールの施工方法は、前記マンホールを施工する方法であって、複数の略円錐台状の筒体を上方に向かって外径が漸次小さくなる態様で積み上げて前記斜壁部を形成する工程を含むことを特徴とする。
この方法によれば、斜壁部を複数の筒体に分けた状態で製造し、この筒体を設置現場で積み上げて完成させることができるので、現場においてコンクリート打設を行う手間を省くことができ、工期を短くして施工コストを抑えることができる。
本発明によれば、斜壁部の存在による摩擦抵抗の確保によって、地盤の振動などに起因するマンホールの浮き上がりを有効に防止することができ、地震災害時などにおける下水道機能の維持や道路などの通行の障壁となることの回避が図られ、マンホール設置構造の信頼性が高められる。
図1は、本発明の実施の形態1におけるマンホール10を地中に埋設した状態を示す縦断面図である。なお、図1〜図12は、模式図であって、各構成部材の寸法等を厳密に示したものではない。
マンホール10は、有底の筒状体からなる本体12と、本体12の内部への出入り口となる開口を閉塞する蓋体13とを備える。
本体12は、コンクリート製であって、底部21と、壁部22とを有する。底部21は、マンホール10の基台となる部位であって底面を形成しており、壁部22は、底部21の上方に筒状に形成される。壁部22は、直壁部23と、斜壁部24とを有する。
直壁部23は、底部21から上方へ円筒状に延在する部位である。直壁部23には、内壁面22bから外壁面22aまで貫通する取付孔26が形成されており、この取付孔26には、下水道本管60がその端部が挿入された状態で取付けられる。
斜壁部24は、直壁部23の上方に位置しており、マンホール10の上部から下方に向かって外径が漸次大きくなるように外壁面22aが傾斜している。斜壁部24は、外形が略円錐台状、好ましくは略直円錐台状に形成される。このような斜壁部24は、直壁部23の上方に外径の異なる複数の略円錐台状の筒体25A,25B,25Cを積み上げて形成される。上下方向において互いに隣り合う筒体25A,25B,25C及び直壁部23の接合部には、径外方へ突出する接合フランジ14が形成されており、シーリング材や必要な固定具(図示せず)を用いて、水密に接合、固定されている。
図1に示すマンホール10では、斜壁部24の外壁面22aが径外方へ凸となる曲面状をなしている。斜壁部24の内壁面22bは、鉛直方向に延びていてもよいが、図1に示すように、下方へ向かって内径が漸次大きくなるように上下方向に対して傾斜していることが好ましく、かかる場合には、マンホール10の内部空間を広く確保することができる。また、内壁面22bは、壁厚がほぼ一定となるように外壁面22aに沿って傾斜していることがより好ましい。
マンホール10の開口部(出入口部)となる斜壁部24の上端部には、蓋体13を設置するための蓋設置部24Aが形成されている。マンホール10の上下方向における全長L1に対して、蓋設置部24Aの占める割合は小さく、全長L1が約3〜5mのマンホール10において、蓋設置部24Aの高さ寸法(上下方向における寸法)は、約2〜20cmである。図1に示す例では、蓋設置部24Aの外周面が略円筒状に形成されているが、下方に向かって外径が漸次大きくなるように略円錐台状に形成されてもよい。
斜壁部24は、マンホール10の上部に位置しており、マンホール10の上端から、マンホール10の上下方向における全長L1の少なくとも2分の1の範囲を占めている。言い換えると、斜壁部24の長さ寸法(上下方向における寸法)L2は、マンホール10の全長L1の2分の1以上であり、壁部22の最大外径部位(すなわち、斜壁部24の下端24B)は、マンホール10の全長L1を二等分する中間位置C又は中間位置Cよりも下方に位置している。ここで、斜壁部24とは、蓋設置部24Aと、蓋設置部24Aの下端から下方に向かって外径が大きくなるよう外壁面22aが傾斜している部分との両方を含む部分をいう。
上述したマンホール10では、斜壁部24の占める割合がマンホール10の全長L1の半分以上であって、従来のマンホールに比して大きくなっている。マンホール10の底部21に浮力が作用した場合、斜壁部24では、その壁面に上載された埋戻し土の荷重によって、地盤と外壁面22aとの間の摩擦抵抗が直壁部23に比して大きくなる。そのため、斜壁部24の割合を大きくすることで、地盤とマンホール10の外壁面22aとの間の摩擦抵抗を大きくして、マンホール10の浮き上がりを防止することができる。さらに、斜壁部24に上載される埋戻し土の量を比較的多くすることができるので、該埋戻し土の荷重による浮き上がり防止効果が高くなる。浮上防止効果を高めるために、壁部22の最大外径部位は、中間位置Cよりも下方に位置していることが好ましく、斜壁部24が、マンホール10の全長L1の3分の2以上の範囲を占めることがより好ましい。
本実施形態において、浮上防止効果を有する斜壁部24は、マンホール10の壁部22を構成する部位(すなわち、壁部22の一部)であって、従来のマンホールのように壁部22とは別に、壁部22から急激に突出するような摩擦抵抗を大きくするための張り出し部を設ける必要がない。そのため、張り出し部を有するマンホールに比して製造が容易であり、浮上防止構造を有するマンホール10を低コストで設置することができる。また、マンホール10に浮力が作用した場合であっても張り出し部が破損、分離して摩擦抵抗が急激に低下するおそれがない。
また、斜壁部24を略円錐台状の筒体とすることで、周方向の全域に亘って摩擦抵抗を大きくすることができる。さらに、斜壁部24を略直円錐台状とすることで、地盤とマンホール10の外壁面22aとの間の摩擦力をマンホール10の周方向に亘ってほぼ均一に作用させることができ、マンホール10の局部的な浮き上がりを防止することができる。
また、斜壁部24の外壁面22aを径外方へ凸となるように曲面状にすることで、縦断面において斜壁部24の外壁面22aが斜壁部24の下端24Bに向かって直線状に延びるもの(斜壁部24の外径の拡径率がほぼ一定のもの)に比して、外壁面22aの面積を大きくして地盤との摩擦抵抗を大きくすることができる。さらに、このような曲面状にすることで外圧に対する耐久性を高めることができる。また、外壁面22aを径外方へ凸曲させることにより、所要の壁厚を確保しながら内壁面22bを径外方へ凸曲させて、マンホール10の内部空間を広くすることができる。
図2(a)及び(b)は、それぞれ、マンホール10の他の実施の形態を示す図1と同様の図である。各実施の形態において、実施の形態1と対応する部位には同一の符号を付しており、ここでは、同一の構成についての詳細を省略する。なお、図2(a)及び(b)に示すマンホール10において、斜壁部24の長さ寸法L2は、マンホール10の全長の2分の1以上になっている。
図2(a)に示す実施の形態2のマンホール10では、斜壁部24が略直円錐台状であって、斜壁部24の外径の拡径率がほぼ一定となるように、斜壁部24の外壁面22aが縦断面において直線状に延びている。なお、斜壁部24は、偏心円錐台状であってもよい。斜壁部24をこのように形成することで、斜壁部24が径外方へ凸となる曲面を有するものに比して本体12の体積を小さくして、マンホール10に作用する浮力を低減することができる。また、斜壁部24に作用する埋戻し土の荷重を大きくして浮き上がりを抑制することができる。
図2(b)に示す実施の形態3のマンホール10では、壁部22が略卵形に形成されている。壁部22は、直壁部23と、斜壁部24と、縮径斜壁部27とを有しており、縮径斜壁部27では、下方に向かって外径が漸次小さくなるように外壁面22aが傾斜している。縮径斜壁部27は、斜壁部24の下方であって、下水道本管60が配置される直壁部23の上方及び/又は下方に位置している。このような略卵形のマンホール10では、実施の形態2のものと比べて、マンホール10の上部の内部空間を広くして十分な作業スペースを確保することができる。さらに、壁部22に縮径斜壁部27を設けることにより、本体12の体積の増加を抑えて、マンホール10に作用する浮力を低減したり、製造コストを低減したりすることができる。既述の通り、斜壁部24は、複数の筒体25A,25B,25Cを積み上げて形成されており、本実施形態では、各筒体25A,25B,25Cを略直円錐状に形成し、かつ筒体25A,25B,25Cごとに拡径率を変えることによって、壁部22を卵形のような球形に近い外形形状としている。
図1及び図2に示すように、壁部22の形状、特に斜壁部24の形状は、周囲の地盤の状態や埋戻し土の種類等によって、地盤と外壁面22aと間の摩擦抵抗が大きくなるように適宜選択することができる。
次に、本発明に係るマンホール10のさらに別の実施の形態を説明する。図3〜図8、及び図10は実施の形態4におけるマンホール10を示したものであり、図3は、マンホール10を地中に埋設した状態を示す側面図であって、図4は、図3に示したマンホール10の縦断面図である。なお、図3では、接合フランジ14の記載を省略している。実施の形態4において、実施の形態1と対応する部位には同一の符号を付しており、ここでは、同一の構成についての詳細を省略する。
本実施形態において、マンホール10は、本体12と、蓋体13と、透水材35と、被覆材15とを備える。
本体12は、底部21と、壁部22とを有しており、壁部22は、下方に位置する直壁部23と、上方に位置する斜壁部24とを有する。斜壁部24は、外径の異なる複数の筒体25A,25B,25Cを積み上げて形成されている。壁部22は、さらに、複数の排水孔31と、排水孔31から下方へ連続的に延びる溝32とを有する。
図3及び図5に示すように、排水孔31は、内壁面22bから外壁面22aまで貫通する孔であって、斜壁部24の領域において周方向に沿って複数形成されている。マンホール10の埋設状態において、排水孔31は、地盤の通常時における地下水位Wよりも上方に位置している。なお、排水孔31の数、形状及び位置は適宜設定することができる。
排水孔31には、フィルタ部材37が配置される。フィルタ部材37は、地下水を濾過して地下水内に混在している土砂を分離し、マンホール10の内部への土砂の侵入を防止するものである。フィルタ部材37は、排水孔31を覆うフィルタ部37Aと、フィルタ部37Aを囲むフランジ部37Bとを有する。フィルタ部37Aは、フランジ部37Bから突出するように凸状に形成されており、その外径は、排水孔31の内径とほぼ等しく、かつ排水孔31の内部に嵌入可能な大きさに形成されている。フィルタ部材37は、フィルタ部37Aを排水孔31に嵌入し、フランジ部35Bを斜壁部24の外壁面22aに当接させることによって、壁部22に取付けられる。本実施形態では、フィルタ部材37として金網を用いているが、材料はこれに限られず、少なくともフィルタ部35Aが濾過機能を有するものであればよい。
図3、図5、図6及び図7に示すように、溝32は、壁部22の外壁面22aに形成されており、各排水孔31から下方へ上下方向に沿って連続的に延びている。溝32は、壁部22の外壁面22aの下端まで延びていることが好ましく、マンホール10の下端となる底部21まで延びていることがより好ましい。溝32の幅は、外壁面22a側から内壁面22b側へ向かって狭くなっており、本実施形態では、溝32の断面が略V字状になっている。なお、溝32は、図3において仮想線で示すように、排水孔31から下方へ向かって上下方向に対して傾斜する方向に延びていてもよい。
透水材35は、マンホール10の周囲の地盤に比して透水性が高く、地下水の集水効果を有する部材であり、溝32に配置される。透水材35としては、例えば、礫材や、周面に多数の孔が形成された管状体等を用いることができる。本実施形態では、透水材35として多孔性の管状体であるドレーンパイプを用いており、該ドレーンパイプは、溝32の上端から下端まで延在している。透水材35として礫材を用いる場合には、溝32に沿って上下方向に延びるように、溝32の内部及びその周辺に配置してもよい。
被覆材15は、マンホール10内への土砂の流入を防止するためのものであり、図3〜図5に示すように、少なくとも排水孔31の配置領域の全部を覆うように、壁部22に設けられる。被覆材15は、網状の部材であって、壁部22を囲むように環状をなしており、壁部22の外壁面22aを接触状態で覆っている(図6参照)。本実施形態では、直壁部23と斜壁部24のうち、斜壁部24にのみ、被覆材15が設けられている。
図8に示すように、被覆材15の網目孔は、孔幅が外面15a側から内面15b側に向かって広くなっている。本実施形態では、かかる孔幅を有するように、被覆材15として断面が略V字状に形成された金網を用いているが、材料はこれに限られず、合成樹脂等、網目状に形成された多様な材料を用いることができる。なお、上述したフィルタ部37Aの孔径は、被覆材15の網目孔の孔径(孔幅が最小となる内面15a側の孔径)よりも小さいことが好ましい。
図3及び図4に示すように、マンホール10の埋設状態において、排水孔31の周囲には、礫材層62が設けられている。礫材層62は、その下層の領域よりも透水性が高くなるように礫材を充填した層であり、通常時の地下水位Wよりも上方に位置している。
本実施形態のマンホール10では、実施の形態1で述べた効果を有するとともに、排水孔31、溝32及び透水材35を有することによって、マンホール10の浮上防止効果をより高めることができる。
具体的には、地震によって周囲に過剰間隙水圧が生じた場合に、排水孔31から地下水をマンホール10の内部に流入させることができ、これにより、過剰間隙水圧を消散させて斜壁部24の周囲の地盤が液状化するのを防止することができる。なお、図4において仮想線で示すように、排水孔31には、孔を閉塞するための着脱可能なキャップ39を取付けることができる。キャップ39は、過剰間隙水圧の上昇によって容易に外れるように、排水孔31の内壁面22b側に取付けられる。
また、排水孔31から下方に延びる溝32を壁部22の外壁面22aに形成することで、この溝32に沿って地下水を排水孔31まで誘導することができ、さらに、溝32に透水材35を配置することで、地下水を効率よく集水することができるとともに、溝32内への土砂の侵入を防ぎながら地下水を効率よく排水孔31へ誘導することができる。また、このような集水効果を有する溝32及び透水材35をマンホール10の外壁面22a上に設けることで、外壁面22aから離れた位置に集水用のパイプを配置したものと比べて、外壁面22aに作用する過剰間隙水圧を効率よく消散させることができる。
図3に示すように、溝32及び透水材35が、排水孔31からマンホール10の下端まで延在している場合には、底部21周辺の間隙水を集水してマンホール10内へ流入させることができる。これにより、マンホール10の直下に生じる間隙水圧の上昇を抑制して底部21に作用する浮力の発生を抑えることができる。また、図3において仮想線で示すように、溝32及び透水材35が上下方向に対して傾斜して延びている場合には、集水効果を高めたり、マンホール10の外周面と周囲地盤との間の摩擦抵抗をより大きくして浮上防止効果を高めたりすることができる。
さらに、本実施形態のマンホール10では、被覆材15とフィルタ部材37とによって、排水孔31からマンホール10内に土砂が流入するのを防止することができる。図8に示すように、被覆材15の孔幅は、内面15a側が広くなっているため、土砂71,72の侵入を防ぎつつ、網目孔に微細な土砂72が入り込んでしまった場合には、この土砂72によって目詰まりが生じるのを防止することができる。なお、排水孔31の内面やフィルタ部材37に堆積した土砂は、例えば、排水孔31の内部から外部へ向かって高圧水流を噴射することにより除去することができる。
また、被覆材15は、斜壁部24の外壁面22aに接触状態で設けられているので、斜壁部24の摩擦抵抗をより大きくすることができる。さらに、本体12の浮き上がりによって被覆材15の装着位置がずれるおそれがない。なお、図9に示すように、被覆材15は斜壁部24だけではなく、直壁部23に配置されていてもよい。このように被覆材15を広範囲に設けることで、溝32及び透水材35の内部に土砂が侵入するのを防止することができる。
さらに、排水孔31の周囲に礫材層62を設けることにより、過剰間隙水圧が上昇した際に、間隙水をマンホール10の内部へ排出するとともに、その周囲の礫材層62へ排出することができる。これにより、間隙水の排出量を多くすることができるとともに、過剰間隙水圧を素早く消散させることができるので、地盤の液状化を防止する効果が高くなる。
次に、図10を参照して図3に示すマンホール10の施工方法を説明する。
まず、図10(a)に示すように、マンホール10を埋設するための立坑を掘り、マンホール10の底部21及び直壁部23と設置する。底部21と直壁部22とは、別体であっても一体であってもよく、別体の場合には、接合部が水密になるように接合する。その後、下水道本管60を直壁部23の取付孔26に取付ける。
次に、図10(b)に示すように、斜壁部24の一部となる筒体25Aを直壁部23に積み上げ、直壁部23及び筒体25Aの接合フランジ14(図4参照)において必要な固定具やシーリング材を用いて、直壁部23と筒体25Aとを互いに接合、固定する。その後、直壁部23および筒体25Aに形成された溝32に透水材35を配置し、壁部22の周囲を埋め戻す。
図10(c)に示すように、筒体25Aの上方に、これよりも外径の小さい筒体25Bを積み上げ、各筒体25A,25Bの接合フランジ14を水密的に接合、固定する。排水孔31が形成された筒体25Bの外壁面22aには、透水材35を配置し、その後、被覆材15を取り付ける。さらに、その周囲には、埋戻し土として礫材を充填する。
図10(d)に示すように、マンホール10の最上部には、蓋設置部24Aが形成された筒体25Cを積載し、下方の筒体25Bと接合、固定する。その後、周囲を埋戻し、蓋設置部24Aに蓋体13を取付ける。
このように、分割された複数の筒体25A,25B,25C積み上げて斜壁部24を形成することで、設置現場においてコンクリート打設を行って斜壁部24を形成する必要がなくなり、大掛かりな施工機材を用いることなく、マンホール10を現場で簡易に設置することができる。なお、斜壁部24に上載される埋戻し土は、非液状化層を構成するような改良土であることが好ましい。
図11及び図12は、それぞれ、本発明に係るマンホール10の他の実施の形態を示す図3と同様の図である。図11及び図12において、実施の形態4に示すマンホール10の設置構造と対応する部位には同一の符号を付している。
図11に示す実施の形態5のマンホール10では、斜壁部24が略直円錐台状であって、斜壁部24の外壁面22aが、縦断面において直線状に延びている。図12に示す実施の形態6のマンホール10では、壁部22が略卵形に形成されており、壁部22は、直壁部23と、斜壁部24と、縮径斜壁部27とを有する。このように、壁部22の外形形状、特に斜壁部24の外形形状を周囲の地盤によって適宜選択し、かつ、排水孔31、溝32、透水材35及び礫材層62の全部又はその一部を選択的に用いることで、周囲地盤に適した摩擦抵抗の大きい外形形状を有しながら、過剰間隙水圧の上昇を抑制できる浮上防止効果の高いマンホール10とすることができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図11及び図12に示すマンホール10において、被覆材15を斜壁部24のほぼ全域に配置してもよく、かかる場合には、マンホール10と地盤との摩擦抵抗をより大きくすることができる。