JP6693263B2 - 耐火物、耐火物の製造方法、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法 - Google Patents

耐火物、耐火物の製造方法、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐火物、耐火物の製造方法、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法に関する。
板ガラス等のガラス物品の成形工程において、成形装置の周囲は、成形装置から流出又は成形装置に沿って流動する溶融ガラスの温度を安定させるために炉壁で取り囲まれる。このような炉壁の一種として、特許文献1には、二酸化ケイ素を主成分とする酸化皮膜を備えた炉壁が開示されている。この酸化皮膜は、炭化ケイ素焼結体から構成される表面を酸化することで形成されたガラス状の皮膜であり、二酸化ケイ素の結晶の一種であるクリストバライトが含有されている。
特開2013−79156号公報
ガラス物品の製造において、溶融ガラスの周囲を取り囲む炉壁の劣化は、ガラス物品の生産性や品質に影響を及ぼすことになる。上記従来の酸化皮膜を備えた炉壁では、例えば、溶融ガラスから揮発した蒸気に対する耐性が必ずしも十分ではなく、未だ改善の余地がある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融ガラスの周囲を取り囲む炉壁の耐久性が高まることで、好適にガラス物品を製造することのできる耐火物、耐火物の製造方法、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決する耐火物は、溶融ガラスの周囲を取り囲む位置に配置される炉壁を構成する構成材として用いられる耐火物であって、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜を備える。
上記耐火物において、前記被膜は、炭化ケイ素質の耐火基材上に設けられていることが好ましい。
上記耐火物において、前記被膜は、前記結晶質二酸化ケイ素を85質量%以上含有することが好ましい。
上記耐火物において、前記被膜は、クリストバライトを60〜70質量%、クオーツを20〜30質量%、及びトリジマイトを5〜10質量%含有することが好ましい。
上記耐火物の製造方法は、結晶質二酸化ケイ素の粒子を含有する分散液を耐火基材上に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に前記耐火基材上で前記結晶質二酸化ケイ素の粒子を焼結させる焼結工程と、を備える。
上記耐火物の製造方法は、前記塗布工程後、前記焼結工程前に、前記分散液を乾燥させる乾燥工程をさらに備えることが好ましい。
上記耐火物の製造方法において、前記焼結工程では、前記結晶質二酸化ケイ素の粒子を1350℃以上の温度で加熱することが好ましい。
上記課題を解決するガラス物品の製造装置は、溶融ガラスの周囲を取り囲む位置に配置された炉壁を備え、前記溶融ガラスからガラス物品を製造するガラス物品の製造装置であって、前記炉壁を構成する構成材は、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜を備えた耐火物を含み、前記耐火物は、前記被膜が前記炉壁の内面を構成するように配置されている。
上記ガラス物品の製造装置において、溶融ガラスを流動させながら成形する成形部を備え、前記炉壁は、前記成形部を取り囲む位置に配置されていることが好ましい。
上記課題を解決するガラス物品の製造方法は、溶融ガラスの周囲を取り囲む位置に配置された炉壁を用いて前記溶融ガラスからガラス物品を製造するガラス物品の製造方法であって、前記炉壁を構成する構成材は、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜を備えた耐火物を含み、前記耐火物は、前記被膜が前記炉壁の内面を構成するように配置されている。
上記ガラス物品の製造方法において、前記溶融ガラスは、アルカリ金属酸化物を3質量%以上含有するものであってもよい。
本発明によれば、溶融ガラスの周囲を取り囲む炉壁の耐久性が高まることで、好適にガラス物品を製造することができる。
実施形態における耐火物を示す部分側面図である。 ガラス物品の製造装置の一部を示す模式断面図である。 (a),(b),(c)は、耐火物の製造方法を示す模式図であり、(d)は、耐火物の耐久性試験に用いる装置の概略を示す部分断面図である。
以下、耐火物、耐火物の製造方法、ガラス物品の製造装置、及びガラス物品の製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
<耐火物>
図1に示すように、耐火物11は、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜12を備えている。耐火物11は、溶融ガラスの周囲を取り囲む位置に配置される炉壁を構成する構成材として用いられる。
耐火物11の被膜12は、耐火基材B上に設けられ、耐火基材Bを保護する。耐火物11の被膜12は、被膜12自体の耐久性や耐火基材Bの保護性能をより高めるという観点から、結晶質二酸化ケイ素を85質量%以上含有することが好ましい。結晶質二酸化ケイ素としては、例えば、クリストバライト、クオーツ、及びトリジマイトが挙げられる。耐火物11の被膜12は、例えば、クリストバライトを60〜70質量%、クオーツを20〜30質量%、及びトリジマイトを5〜10質量%含有する。
耐火物11の被膜12中の結晶質二酸化ケイ素の含有量及び結晶質二酸化ケイ素の各結晶の含有量は、X線回折装置を用いて測定される回折ピークのピーク面積から求めることができる。
耐火物11の被膜12は、結晶質二酸化ケイ素以外に非晶質二酸化ケイ素を含有していてもよい。耐火物11の被膜12中における二酸化ケイ素(SiO)の含有量は、被膜12の耐性をより高めるという観点から、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましい。耐火物11の被膜12中における二酸化ケイ素の含有量は、被膜12の密着強度を確保するという観点から、99.5質量%以下であることが好ましい。
耐火物11の被膜12中における二酸化ケイ素以外の成分としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe)、酸化カルシウム(CaO)、及び酸化ナトリウム(NaO)等の金属酸化物が挙げられる。
耐火物11の被膜12の厚さは、被膜12自体の耐久性や耐火基材Bの保護性能をより高めるという観点から、60μm以上であることが好ましく、より好ましくは130μm以上である。耐火物11の被膜12の厚さは、耐火基材Bからの被膜12の剥離を抑えるという観点から、500μm以下であることが好ましく、より好ましくは270μm以下である。
耐火物11の耐火基材Bは、熱伝導性及び均熱性が高いことから炭化ケイ素質であることが好ましい。炭化ケイ素質の耐火基材Bとしては、例えば、炭化ケイ素耐火物、窒化ケイ素結合炭化ケイ素耐火物、及びケイ酸塩結合炭化ケイ素耐火物が挙げられる。炭化ケイ素質の耐火基材B中における炭化ケイ素の含有量は、例えば、70質量%以上である。
<耐火物の製造方法>
耐火物11の製造方法は、塗布工程と焼結工程とを備えている。塗布工程では、結晶質二酸化ケイ素の粒子を含む分散液を耐火基材B上に塗布する。
塗布工程で用いる分散液中に含有される結晶質二酸化ケイ素の粒子径は、分散液の塗布性を確保するとともにより緻密な被膜12を形成するという観点から、50μm以下であることが好ましい。なお、結晶質二酸化ケイ素の粒子径は、例えば、1nm以上である。
塗布工程で用いる分散液中に含有される分散媒としては、例えば、水性分散媒が用いられる。分散液には、結晶質二酸化ケイ素の粒子以外の成分が含有されていてもよい。結晶質二酸化ケイ素の粒子以外の成分としては、例えば、非晶質二酸化ケイ素の粒子、金属酸化物粒子、分散剤、アンモニア等のpH調整剤、増粘剤等が挙げられる。
分散液中の結晶質二酸化ケイ素の粒子の含有量は、分散性等を考慮して調整することができる。分散液中の結晶質二酸化ケイ素の粒子の含有量は、例えば、1〜50質量%の範囲である。
塗布工程で用いる塗布方法は、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、スプレー塗布、刷毛塗り、及びディッピングが挙げられる。塗布工程における分散液の塗布量は、分散液中の結晶質二酸化ケイ素の粒子の含有量、上述した被膜12の厚さに応じて調整すればよい。
なお、塗布工程後、焼結工程前に、分散液を乾燥させる乾燥工程を設けることが好ましい。具体的には、分散液を塗布した耐火基材Bを、例えば、100〜150℃で12時間以上保持し、分散液中の分散媒の一部又は全体を揮発させる。なお、乾燥工程の条件は、分散液の乾燥可能な条件であれば、常温(0〜40℃)で18時間以上保持する条件であってもよい。このような乾燥工程によって、より緻密で均一な被膜12を得られる。
焼結工程では、塗布工程の後に耐火基材B上で結晶質二酸化ケイ素の粒子を焼結させる。これにより、結晶質二酸化ケイ素の粒子同士を結合した焼結体層を形成するとともに、この焼結体層と耐火基材Bとを結合してなる被膜12を形成する。
焼結工程では、より緻密な被膜12を形成するという観点から、耐火基材B上の結晶質二酸化ケイ素の粒子を1350℃以上の温度で加熱することが好ましく、1400℃以上の温度で加熱することがより好ましい。焼結工程では、例えば、耐火基材Bと結晶質二酸化ケイ素の粒子との必要以上の反応を抑えるという観点から、耐火基材B上の結晶質二酸化ケイ素の粒子を1500℃以下の温度で加熱することが好ましく、1475℃以下の温度で加熱することがより好ましい。焼結工程における加熱条件は、例えば、15〜30℃/時で昇降温し、最高温度(上記温度範囲)で4〜12時間保持する条件が挙げられる。昇降温速度が速すぎると、耐火基材Bと結晶質二酸化ケイ素の粒子との熱膨張の違いにより、被膜12の耐火基材Bに対する密着性が低下するおそれがある。また、最高温度の保持時間が短すぎると、被膜12の結晶質二酸化ケイ素の粒子が十分に焼結しないおそれがある。焼結工程は、大気圧下及び空気下で行うことができる。なお、焼結工程は、加圧下又は減圧下で行ってもよいし、例えば、不活性ガス下で行ってもよい。また、焼結工程は、分散液中に含有される分散媒等の成分を揮発又は熱分解させる予備加熱工程の後に行ってもよい。焼結工程には、電気式、ガス式等の周知の焼結炉を用いることができる。
<ガラス物品の製造装置及びガラス物品の製造方法>
図2に示すように、溶融ガラスMGからガラス物品を製造するガラス物品の製造装置13は、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む位置に配置された炉壁14を備えている。本実施形態のガラス物品の製造装置13は、溶融ガラスMGを流動させながら成形する成形部15をさらに備え、炉壁14は、成形部15を取り囲む位置に配置されている。
ガラス物品の製造装置13において、炉壁14を構成する構成材は、上述した耐火物11を含む。耐火物11は、被膜12が炉壁14の内面14aを構成するように配置されている。なお、炉壁14を構成する構成材としては、耐火物11以外に、例えば目地材が挙げられる。炉壁14は、例えば、複数の耐火物11を積み上げることで構築(築炉)することができる。炉壁14の外側には、周知のように炉壁14を加熱する発熱体(図示省略)が配置される。ガラス物品の製造装置13は、発熱体の外側を覆う外壁を備えていてもよい。
本実施形態では、成形部15の一例として、ダウンドロー法の一種であるオーバーフローダウンドロー法を用いてガラスリボンGを成形する成形部15(成形体とも呼ばれる。)を示している。成形部15は、溶融ガラスMGを流下させながらガラスリボンGを成形する。成形部15は、溶融ガラスMGをオーバーフローする溝15aと、オーバーフローした溶融ガラスMGの流下を案内する第1案内面15b及び第2案内面15cとを有している。第2案内面15cは、第1案内面15bの反対側に位置し、第1案内面15bと第2案内面15cとに沿って流下した溶融ガラスMGが成形部15の下端で融合されることによりガラスリボンGが成形される。成形部15には、図示を省略するが、溶融ガラスMGを供給する供給管が接続され、溶融ガラスMGが連続的に供給される。
溶融ガラスMG(ガラス物品)としては、例えば、ソーダガラス、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス、アルカリ含有ガラス、及び無アルカリガラスが挙げられる。ガラスの組成としては、例えば、質量%で、SiO:50〜80%、Al:5〜25%、B:0〜20%、MgO:0〜15%、CaO:1〜15%、SrO:0〜15%、BaO:0〜15%、SnO:0〜1%である。また、強化ガラスとして用いられるアルカリ含有ガラスは、アルカリ金属酸化物(NaO、KO、及びLiO)を3質量%以上含有する。
ガラス物品の製造装置13は、周知のようにガラスリボンGを牽引しながら徐冷する徐冷部と、冷却されたガラスリボンGを切断する切断部とを備えている(図示省略)。ガラス物品の製造装置13における切断部によりガラスリボンGが切断されることでガラス物品としての板ガラスが得られる。
なお、ガラス物品の製造装置13は、冷却されたガラスリボンGを巻き取る巻取装置を備えていてもよい。この場合、ガラスリボンGをロール状に巻き取ったロール状のガラス物品を得ることができる。
ガラス物品の製造方法は、上述した炉壁14を用いて溶融ガラスMGからガラス物品を製造する方法である。ガラス物品の製造方法は、溶融ガラスMGからガラスリボンGを成形する成形工程、と、ガラスリボンGを徐冷する徐冷工程と、冷却されたガラスリボンGを切断する切断工程とを備えている。ガラス物品の製造方法は、ガラスリボンGを巻き取る巻取工程を備えていてもよい。この場合、上述したようにロール状のガラス物品を得ることができる。
ガラス物品の用途としては、例えば、ディスプレイ用途、タッチパネル用途、光電変換パネル用途、電子デバイス用途、窓ガラス用途、建材用途、及び車両用途が挙げられる。
<試験例>
次に、試験例について説明する。
(試験例1)
図3(a)に示すように、スプレーSを用いて結晶質二酸化ケイ素の粒子を含む分散液を耐火基材B上に塗布する塗布工程を行った。これにより、図3(b)に示すように、耐火基材B上に塗膜Cを形成した。耐火基材Bとしては、炭化ケイ素質の耐火基材Bを用いた。塗布工程後、焼結工程前に分散液を乾燥させる乾燥工程を行った。次に、耐火基材B上で結晶質二酸化ケイ素の粒子を焼結させる焼結工程を行った。これにより、図3(c)に示すように、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結した被膜12を有する耐火物11を得た。焼結工程の雰囲気は、大気圧下及び空気下であり、焼結工程の温度は、1400℃以上、1475℃以下の範囲であり、焼結時間は約12時間である。得られた被膜12は、白色の粒子が焼結された構造を有し、被膜12の厚さは、約200μmである。
(試験例2)
試験例2では、炭化ケイ素質の耐火基材の表面を酸化することで、酸化皮膜を形成した耐火物を得た。酸化皮膜を形成する雰囲気は、大気圧下及び空気下であり、加熱温度は、1200℃以上、1350℃以下の範囲であり、加熱時間は約24時間である。
(組成)
試験例1の耐火物11における被膜12の組成、及び試験例2の耐火物における酸化皮膜の組成を表1に示す。表1中の組成を表す数値の単位は、質量%である。
(耐久性試験)
図3(d)に示すように、有底筒状の耐火容器16内に、ガラスを投入したるつぼを配置し、試験例1の耐火物11を耐火容器16の蓋材として用いた。このとき、耐火物11の被膜12側が蓋材の内面となるように耐火物11を配置した。るつぼに投入したガラス、すなわち溶融ガラスMGは組成として、質量%でSiO:61.5%、Al:18.0%、B:0.5%、LiO:0.1%、NaO:14.5%、KO:2.0%、MgO:3.0%、SnO:0.4%を含有する。
次に、耐火容器16を電気炉に投入し、電気炉内の温度が1100℃以上、1250℃以下の範囲となるように昇温することで、耐火容器16内の溶融ガラスMGから揮発する蒸気に耐火物11の被膜12を曝した。この状態で7日間保持する耐久性試験を行った。また、試験例2の耐火物についても、試験例1の耐火物11と同様に耐久性試験を行った。
なお、耐久性試験で用いた溶融ガラスMGの組成や耐火容器16内の温度及び電気炉内の温度は、耐久性試験の一条件であり、上述したガラス物品の製造における条件を何ら限定するものではない。
(外観の観察)
試験例1の耐久試験後の耐火物11における被膜12の状態を目視、光学顕微鏡、及び電子顕微鏡を用いて観察した。試験例1の耐火物11では、被膜12の剥離や変質は認められなかった。また、試験例2の耐火物における酸化皮膜の状態についても同様に観察した。試験例2の耐火物では、酸化皮膜が破裂した部分が多数確認された。
(密着状態)
試験例1の耐久試験後の耐火物11における被膜12の密着状態をJIS H8504(1999)に規定されるへらしごき試験方法に準拠して評価した。試験例1の耐火物11では、被膜12の剥離が確認されず、被膜12の密着強度も維持されていることが分かった。試験例2の耐火物については、酸化皮膜の外観の観察により既に複数の剥離部分が確認されたため、密着状態の確認を省略した。
以上詳述した実施形態によれば、次のような作用効果が発揮される。
(1)耐火物11は、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む位置に配置される炉壁14を構成する構成材として用いられる。耐火物11は、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜12を備えている。このような耐火物11の被膜12は、例えば、炭化ケイ素の酸化により形成される酸化皮膜よりも、溶融ガラスMGから揮発した蒸気に対する耐性が得られ易い。従って、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む炉壁14の耐久性が高まることで、好適にガラス物品を製造することができる。例えば、ガラス物品の生産性や品質を高めることができる。
(2)耐火物11の被膜12は、炭化ケイ素質の耐火基材B上に設けられることが好ましい。この場合、炭化ケイ素質の熱伝導性及び均熱性は比較的高いため、炉壁14の熱伝導性及び均熱性を高めることができる。これにより、溶融ガラスMGの温度をより安定させることが可能となる。従って、溶融ガラスMGから得られるガラス物品の品質を安定させることが可能となる。
ここで、炭化ケイ素質の耐火物の表面酸化により形成される酸化皮膜は、例えば、溶融ガラスMGから揮発した蒸気により侵され易く、また酸化皮膜中に空気中の酸素が拡散し、酸化皮膜の表面から耐火物中への酸素の透過を許容する場合がある。これにより、耐火物中の炭化ケイ素(SiC)の酸化が進行し、下記式に示すように炭酸ガスが発生する。
SiC+2O→SiO+CO
このとき、耐火物の酸化皮膜の粘度は、溶融ガラスMGから揮発した蒸気との反応、及び炉壁の使用時における熱によって低下している。この状態の酸化皮膜は、上記のように発生した炭酸ガスの気泡によって突き破られ、上記の試験例2の耐火物のように、酸化皮膜には破裂した部分が多数形成される。また、酸化皮膜の破裂に伴って酸化皮膜の破片が、炉壁により囲まれる空間(炉壁により囲まれる室内)に飛散し、溶融ガラスに付着することで、得られるガラス物品に欠陥を発生させる場合がある。
本実施形態の耐火物11の被膜12は、溶融ガラスMGから揮発した蒸気に対する耐性が得られ易いため、被膜12の酸素バリア性が維持され易い。従って、耐火物11の耐火基材Bとして、熱伝導性及び均熱性の観点から炭化ケイ素質の耐火基材Bを採用したとしても、その耐火基材B中の炭化ケイ素の酸化が進行し難くなる。これにより、炭酸ガスの発生も抑えられるため、炭酸ガスの気泡を要因とした被膜12の破裂が発生し難くなる。従って、得られるガラス物品において、炉壁14を構成する耐火物11を要因とした欠陥の発生を抑えることが可能となる。
(3)耐火物11の被膜12は、結晶質二酸化ケイ素を85質量%以上含有することが好ましい。この場合、溶融ガラスMGから揮発する蒸気に対する耐性がより高まり易い。これにより、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む炉壁14の耐久性をより高めることが可能となる。こうした耐火物11の被膜12は、例えば、クリストバライトを60〜70質量%、クオーツを20〜30質量%、及びトリジマイトを5〜10質量%含有する。
(4)耐火物11の製造方法は、結晶質二酸化ケイ素の粒子を含む分散液を耐火基材B上に塗布する塗布工程と、塗布工程の後に耐火基材B上で結晶質二酸化ケイ素の粒子を焼結させる焼結工程とを備えている。この方法により、上記被膜12を形成することができる。
(5)耐火物11の製造方法における焼結工程では、結晶質二酸化ケイ素の粒子を1350℃以上の温度で加熱することが好ましい。この場合、結晶質二酸化ケイ素の粒子の焼結が好適に進行し、より緻密な被膜12を形成することが可能となる。これにより、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む炉壁14の耐久性をより高めることができる。
(6)耐火物11の製造方法は、塗布工程後、焼結工程前に、分散液を乾燥させる乾燥工程をさらに備えることが好ましい。この場合、より緻密で均一な被膜12を形成することが可能となる。
(7)ガラス物品の製造装置13は、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む位置に配置された炉壁14を備え、溶融ガラスMGからガラス物品を製造する装置である。ガラス物品の製造方法は、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む位置に配置された炉壁14を用いて溶融ガラスMGからガラス物品を製造する方法である。ガラス物品の製造装置13及び製造方法において、炉壁14を構成する構成材は、上述した耐火物11を含む。耐火物11は、耐火物11の被膜12が炉壁14の内面14aを構成するように配置されている。これにより、溶融ガラスMGの周囲を取り囲む炉壁14の耐久性が高まることで、好適にガラス物品を製造することができる。
(8)ガラス物品の製造装置13は、溶融ガラスMGを流動させながら成形する成形部15を備え、ガラス物品の製造装置13における炉壁14は、成形部15を取り囲む位置に配置されている。こうした成形部15には、溶融ガラスMGが連続的に供給されるため、溶融ガラスMGと炉壁14との間において、溶融ガラスMGから揮発した蒸気の濃度が比較的高まり易く、炉壁14により囲まれる空間は過酷な環境下となり易い。このような比較的過酷な環境下であっても、上述した被膜12を備えた炉壁14を用いることで、好適にガラス物品を製造することが可能となる。
(9)ガラス物品の製造方法において、溶融ガラスMGは、アルカリ金属酸化物を3質量%以上含有していてもよい。アルカリ金属酸化物を含有する溶融ガラスMGは、アルカリ金属酸化物(例えば、NaO、KO等)に起因した蒸気を発生易く、炉壁により囲まれる空間は、過酷な環境下となり易い。このような過酷な環境下においても、上記炉壁14を用いることで、好適にガラス物品を製造することが可能となる。また、ホウ素酸化物(B)を含有する溶融ガラスについても、炉壁により囲まれる空間が過酷な環境下となり易いため、上記炉壁14を用いることで、好適にガラス物品を製造することが可能となる。
<変更例>
上記実施形態を次のように変更してもよい。
・上記耐火物11の被膜12は、炭化ケイ素質の耐火基材B上に設けられているが、例えば、窒化ケイ素質の耐火基材上に設けることもできる。
・上記耐火物11は、炉壁14において、溶融ガラスMGから揮発する蒸気に対する耐性が求められる一部(例えば、炉壁14の上壁)に適用することもできる。すなわち、炉壁14を構成する構成材は、上記被膜12を有する耐火物11以外の耐火物を含んでいてもよい。また、炉壁14を構成する構成材において、上記被膜12を有する耐火物11の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
・上記耐火物11は、上述した炉壁14の構成材に限らず、溶融ガラスMGから揮発する蒸気に対する耐性が要求される炉壁の構成材として好適に用いることができる。上記耐火物11は、例えば、上述したオーバーフローダウンドロー法以外のダウンドロー法を用いてガラスリボンを成形する成形部を取り囲む炉壁の構成材として好適である。オーバーフローダウンドロー法以外のダウンドロー法としては、例えば、スロットダウンドロー法、及びリドロー法が挙げられる。また、上記耐火物11は、ダンナー法によりガラス管を製造する製造装置に用いられる炉壁の構成材としても好適である。ガラス管の製造装置は、溶融ガラスを流動させながら成形する成形部と、成形部を取り囲む位置に配置される炉壁とを備えている。ガラス管の製造装置における成形部は、円筒状であり、成形スリーブと呼ばれる。ガラス管の製造装置では、回転駆動される成形部に溶融ガラスを巻き付けながら、溶融ガラスを管状に成形するように構成されている。
11…耐火物、12…被膜、13…ガラス物品の製造装置、14…炉壁、14a…内面、15…成形部、B…耐火基材、G…ガラスリボン、MG…溶融ガラス。

Claims (10)

  1. 溶融ガラスの周囲を取り囲む位置に配置される炉壁を構成する構成材として用いられる耐火物であって、
    結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜を備え
    前記被膜は、クリストバライトを60〜70質量%、クオーツを20〜30質量%、及びトリジマイトを5〜10質量%含有することを特徴とする耐火物。
  2. 前記被膜は、炭化ケイ素質の耐火基材上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐火物。
  3. 前記被膜は、前記結晶質二酸化ケイ素を85質量%以上含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐火物。
  4. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の耐火物の製造方法であって、
    結晶質二酸化ケイ素の粒子を含有する分散液を耐火基材上に塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程の後に前記耐火基材上で前記結晶質二酸化ケイ素の粒子を焼結させる焼結工程と、を備えることを特徴とする耐火物の製造方法。
  5. 前記塗布工程後、前記焼結工程前に、前記分散液を乾燥させる乾燥工程をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の耐火物の製造方法。
  6. 前記焼結工程では、前記結晶質二酸化ケイ素の粒子を1350℃以上の温度で加熱することを特徴とする請求項又は請求項に記載の耐火物の製造方法。
  7. 溶融ガラスの周囲を取り囲む位置に配置された炉壁を備え、前記溶融ガラスからガラス物品を製造するガラス物品の製造装置であって、
    前記炉壁を構成する構成材は、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜を備えた耐火物を含み、
    前記耐火物の前記被膜は、クリストバライトを60〜70質量%、クオーツを20〜30質量%、及びトリジマイトを5〜10質量%含有し、
    前記耐火物は、前記被膜が前記炉壁の内面を構成するように配置されていることを特徴とするガラス物品の製造装置。
  8. 溶融ガラスを流動させながら成形する成形部を備え、
    前記炉壁は、前記成形部を取り囲む位置に配置されていることを特徴とする請求項に記載のガラス物品の製造装置。
  9. 溶融ガラスの周囲を取り囲む位置に配置された炉壁を用いて前記溶融ガラスからガラス物品を製造するガラス物品の製造方法であって、
    前記炉壁を構成する構成材は、結晶質二酸化ケイ素の粒子が焼結された構造を有する被膜を備えた耐火物を含み、
    前記耐火物の前記被膜は、クリストバライトを60〜70質量%、クオーツを20〜30質量%、及びトリジマイトを5〜10質量%含有し、
    前記耐火物は、前記被膜が前記炉壁の内面を構成するように配置されていることを特徴とするガラス物品の製造方法。
  10. 前記溶融ガラスは、アルカリ金属酸化物を3質量%以上含有することを特徴とする請求項に記載のガラス物品の製造方法。
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