以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、外壁パネルを縦向き状態で輸送する際に用いられる外壁パネル用の輸送用架台として、本発明の輸送用架台を具体化している。図1はその輸送用架台を示す正面図であり、図2は輸送用架台を示す側面図である。図3は輸送用架台を示す背面図であり、図4は輸送用架台を示す平面図である。
図1〜図4に示すように、輸送用架台10は、略直方体状に形成されており、その平面視において長方形状をなしている。輸送用架台10は、小型トラック(例えば2t車)の荷台に載せられて輸送されるものとなっており、トラックの荷台上では輸送用架台10がその長手方向をトラックの前後方向に向けて配置されるようになっている。輸送用架台10は、上下方向に延び当該架台10の(平面視)長手方向に対向して設けられる一対の支持枠11,12と、それら各支持枠11,12の下端部の間に跨がって設けられるベース部13とを備える。
図1に示すように、支持枠11は、矩形枠状に形成され、互いに離間して設けられた一対の柱材14と、それら各柱材14の上端部の間に架け渡されて設けられた上端横材15と、各柱材14の下端部の間に架け渡されて設けられた下端横材16とを備える。柱材14及び各横材15,16はいずれも角形鋼管よりなる。各横材15,16はいずれも両端部が各柱材14に溶接により固定されている。
各柱材14の下端側には、2つの横材17,18が架け渡されて設けられている。これら各横材17,18はいずれも角形鋼管よりなる。各横材17,18は上下に離間して配置され、その両端部が各柱材14に溶接により固定されている。各横材17,18のうち、上側の横材17と上端横材15との間には、複数(具体的には6つ)の縦材19が上下に架け渡されて設けられている。これら各縦材19はいずれも角形鋼管よりなる。各縦材19は所定の間隔(詳しくは等間隔)で配置され、その両端部が各横材15,17に溶接により固定されている。
図3に示すように、支持枠12は、支持枠11と同様、矩形枠状をなしており、互いに離間して設けられた一対の柱材24と、それら各柱材24の上端部の間に架け渡されて設けられた上端横材25と、各柱材24の下端部の間に架け渡されて設けられた下端横材26とを備える。柱材24及び各横材25,26はいずれも角形鋼管よりなる。各横材25,26のうち下端横材26はその両端部が各柱材24に溶接により固定されている。
各柱材24の下端側には、2つの横材27,28が架け渡されて設けられている。これら各横材27,28はいずれも角形鋼管よりなり、互いに上下に離間して配置されている。各横材27,28のうち、下側の横材28は、その両端部が各柱材24に溶接により固定されている。上側の横材27と上端横材25との間には、複数(具体的には6つ)の縦材29が上下に架け渡されて設けられている。これら各縦材29はいずれも角形鋼管よりなる。各縦材29は所定の間隔(詳しくは等間隔)で配置され、より詳しくは支持枠11の各縦材19と同じ間隔で配置されている。そのため、各縦材29は、支持枠11の各縦材19と輸送用架台10の長手方向に対向している。各縦材29は、その両端部が各横材25,27に溶接により固定されている。
支持枠12は、その一部が扉体31として構成されている。以下、かかる扉体31に関する構成について説明する。
支持枠12では、上端横材25が長手方向の途中で複数(2つ)に分割されており、詳しくは、各柱材24のうち一方の柱材24a寄りの位置で複数に分割されている。より詳しくは、上端横材25は、柱材24aと隣り合う縦材29と、その縦材29と隣り合う縦材29との中間位置で複数に分割されている。この場合、上端横材25は、上記一方の柱材24a側に設けられる短尺部36と、他方の柱材24b側に設けられる長尺部37とからなり、そのうち短尺部36については、その一端部が柱材24aに溶接により固定されている。
これと同様に、横材27についても長手方向の途中位置で複数(2つ)に分割されており、詳しくは上端横材25と同じ分割位置で複数に分割されている。したがって、横材27も、柱材24a側に設けられる短尺部38と、柱材24b側に設けられる長尺部39とからなり、そのうち短尺部38については、その一端部が柱材24aに溶接固定されている。
上端横材25の長尺部37と横材27の長尺部39との間には、複数の縦材29(具体的には5つの縦材29)が架け渡されている。この場合、これら各縦材29と、各横材25,27の長尺部37,39とを含んで上記の扉体31が構成されている。扉体31では、長尺部37が扉体31の上桟を構成しており、長尺部39が下桟を構成している。そのため、以下の説明では、長尺部37を上桟37、長尺部39を下桟39という。
扉体31において上桟37と下桟39との間には、柱材24bに隣接する位置に、さらに縦材32が架け渡されて設けられている。この縦材32も、角形鋼管よりなり、その両端部が上桟37及び下桟39に溶接により固定されている。縦材32は、上下に複数設けられたヒンジ34(蝶番)を介して柱材24bに取り付けられている。これにより、縦材32ひいては扉体31がヒンジ34の回動軸(鉛直軸)を中心として回動可能とされている。そして、その回動によって、扉体31が開閉されるようになっている。扉体31は、外側に回動されることで開状態となり(図4の二点鎖線参照)、その開状態では、支持枠12に上側が開放された開口部45が形成される。なお、開口部45は、柱材24bと横材28と柱材24b(詳しくは短尺部36,38間に架け渡された縦材29)とにより囲まれた内側領域となっている。
ちなみに、上端横材25の短尺部36と横材27の短尺部38との間には一の縦材29が架け渡されている。この場合、各短尺部36,38の一端部のみが柱材24aに固定されている構成にあって、各短尺部36,38の強度を好適に確保することが可能となる。なお、以下の説明では、各短尺部36,38をそれぞれ短尺材36,38という。
扉体31は、その回動先端側において上桟37及び下桟39が各縦材29よりも回動先端側(つまり、各短尺材36,38側)に突出している。したがって、上桟37及び下桟39には各縦材29よりも突出した突出部37a,39aが設けられている。一方、各短尺材36,38は、それら両者36,38間に架け渡された縦材29よりも上桟37及び下桟39側に突出しており、それら突出した部分がそれぞれ突出部36a,38aとなっている。
扉体31には、上桟37及び下桟39の各突出部37a,39aにそれぞれロック部材41が設けられている。ロック部材41は扉体31を閉じた状態でロックするための部材であり、以下においては、このロック部材41に関する構成を図5を用いて説明する。なお、図5は、ロック部材41周辺の構成を拡大して示す平面図であり、(a)がロック部材41のロック状態を示しており、(b)がロック解除状態を示している。また、図5では、各ロック部材41のうち、上桟37側のロック部材41周辺を示している。また、上桟37側のロック部材41に関する構成と、下桟39側のロック部材41に関する構成とは基本的に同じ構成であるため、以下においては、上桟37側のロック部材41に関する構成のみを説明し下桟39側のロック部材41に関する構成については説明を割愛する。
図5(a)及び(b)に示すように、ロック部材41は、短尺の角形鋼管よりなり、その断面の大きさが上桟37及び短尺材36よりも一周り大きくなっている。ロック部材41は、上桟37の突出部37aの外側(外周側)に配置され、その内側に突出部37aを挿通させている。ロック部材41は、その挿通状態で突出部37aに沿ってスライド可能とされている。ロック部材41は、そのスライドにより突出部37aの外側と短尺材36(突出部36a)の外側とに跨がって配置されるロック位置(図5(a)参照)と、全体が突出部37aの外側に配置されるロック解除位置(図5(b)参照)との間で変位可能とされている。ロック部材41がロック位置にある場合には、扉体31の回動が規制され、その規制により扉体31が閉状態で維持される。一方、ロック部材41がロック解除位置にある場合には、扉体31の回動が可能となり、その回動により扉体31を開状態にすることが可能となる。
ロック部材41がロック位置にある場合には、図5(a)に示すように、ロック部材41が上桟37の突出部37a及び短尺材36の突出部36aにそれぞれボルト42により固定される。これにより、扉体31がロック状態とされる。この場合のボルト42の固定に関して詳しくは、各突出部36a,37aの内側面にはそれぞれナット43が溶接固定され、突出部37a側のボルト42はロック部材41及び突出部37aの各板部を介してナット43に締結され、短尺材36側のボルト42はロック部材41及び短尺材36の各板部を介してナット43に締結されている。
一方、ロック部材41がロック解除位置にある場合には、図5(b)に示すように、上記各ボルト42のうち一方のボルト42によりロック部材41が突出部37aに固定される。この際、他方のボルト42は、突出部37aの外側面に溶接固定されたナット44に締結され仮置きされる。
なお、ロック部材41と突出部36a,37aとの間の隙間にスペーサを挿入して、ロック部材41のがたつきを抑えるようにしてもよい。
続いて、ベース部13について説明する。ベース部13は、図1〜図3に示すように、各支持枠11,12の下端部の間に架け渡されて設けられた長尺状の一対のベース体46と、それらベース体46の上に跨がって設けられたベースプレート47とを備える。各ベース体46は、各支持枠11,12の柱材14,24の下端部間に架け渡されて設けられている。ベース体46には、輸送用架台10をフォークリフトにより搬送する際に、フォークリフトの爪を挿入するための挿入口46aが形成されている。挿入口46aは、ベース体46の長手方向に延びる横長の開口であり、各ベース体46に一対ずつ設けられている。
詳しくは、ベース体46は、その長手方向に間隔をおいて並べられた複数(具体的には3つ)のベース横材48と、隣り合うベース横材48の間に設けられ挿入口46aを形成する挿入口形成部材49とを備える。ベース横材48は角形鋼管よりなる。挿入口形成部材49は鋼板により形成され、挿入口46aを囲む横板部49aと縦板部49bとを一対ずつ有している。各縦板部49bは、隣接するベース横材48の端面に溶接により固定されている。これにより、挿入口形成部材49を介して隣り合う各ベース横材48が連結されている。
各支持枠11,12の下端横材16,26の間には、中間横材52が架け渡されて設けられている。中間横材52は角形鋼管よりなり、その両端部が各支持枠11,12の下端横材16,26に溶接により固定されている。中間横材52は、各ベース体46の間においてそれら両ベース体46の中央位置に配置されている。
ベースプレート47は、平板状の鋼板により形成されている。ベースプレート47は、各ベース体46の上面と中間横材52の上面とに跨がって設けられ、それら各部材46,52の上面に溶接により固定されている。
上記のように、輸送用架台10では、ベース部13により当該架台10の下面部が構成され、各支持枠11,12により当該架台10の短辺側の側面部が構成されている。続いて、輸送用架台10における長辺側の側面部の構成について説明する。
図2に示すように、輸送用架台10の長辺側の各側面部では、各支持枠11,12の柱材14,24の上端部間に横材55が架け渡されて設けられている。横材55は角形鋼管よりなり、その両端部が各柱材14,24に溶接により固定されている。また、各支持枠11,12の柱材14,24の下端側には、補強枠部57が架け渡されて設けられている。補強枠部57は、各柱材14,24の間に架設された上下一対の補強横材58と、それら各補強横材58を上下に連結する複数(具体的には2つ)の補強縦材59とを有する。補強横材58と補強縦材59とはいずれも角形鋼管よりなり、溶接により互いに連結されている。また、各補強横材58はその両端部が各柱材14,24に溶接により固定されている。
補強枠部57とベース体46との間には、横材61が介在されている。横材61は角形鋼管よりなり、補強枠部57とベース体46とにそれぞれ溶接により固定されている。また、横材61は、その両端部が各柱材14,24に溶接により固定されている。
補強枠部57と上端横材55との間には、一対のはしご部63,64が設けられている。これらはしご部63,64のうち、はしご部63は支持枠11寄りに配置され、はしご部64は支持枠12寄りに配置されている。これらのはしご部63,64が設けられていることで輸送用架台10の上側へ昇り、外壁パネルの玉掛け作業等をすることが可能となっている。
はしご部63は支持枠11の柱材14を用いて形成され、柱材14近くで補強枠部57と上端横材55との間に架け渡された縦材65と、縦材65と柱材14との間に架設された上下複数の横材66とを有する。また、はしご部64は支持枠12の柱材24を用いて形成され、柱材24近くで補強枠部57と上端横材55との間に架け渡された縦材67と、縦材67と柱材24との間に架設された上下複数の横材68とを有する。各縦材65,67及び各横材66,68はいずれも角形鋼管よりなる。
各はしご部63,64(詳しくは各縦材65,67)の間には、補強材69が架け渡されている。補強材69は角形鋼管よりなり、その両端部が各縦材65,67に溶接により固定されている。
以上が、輸送用架台10の枠体(骨格)に関する説明である。
次に、輸送用架台10において外壁パネルを縦向き状態で支持するための構成について説明する。本輸送用架台10には、外壁パネルの下端部の位置を規制するパネル位置規制構造と、外壁パネルの上端部を固定するパネル固定構造とが設けられており、それら両構造により外壁パネルを縦向き状態で支持することが可能となっている。以下においては、それら両構造の構成について順に説明する。
まず、パネル位置規制構造について図6に基づいて説明する。図6は、(a)がベース部13を上方から拡大して見た図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
図6(a)及び(b)に示すように、ベース部13には、ベースプレート47の上面に複数のレール部材71が設けられている。レール部材71は、L字断面を有する長尺状の鋼材よりなる。各レール部材71は、輸送用架台10の長手方向に沿って延びており、所定の間隔(詳しくは等間隔)で配置されている。詳しくは、各レール部材71は、支持枠11,12の各縦材19,29と同じ間隔で配置されている。レール部材71は、ベースプレート47の上面に溶接により固定された固定板部71aと、その固定板部71aから上方に起立する起立板部71bとを有する。なお、レール部材71が横レール部材に相当する。
各レール部材71にはそれぞれ、レール部材71に沿ってスライド可能なスライド部材72が複数ずつ(具体的には2つずつ)設けられている。スライド部材72は、鋼板により形成され、ベースプレート47上に載置される載置板部72aと、その載置板部72aから上方に延びレール部材71の起立板部71bの外側面に対向(当接)する対向板部72bと、その対向板部72bの上端部から下方に折り返されて対向板部72bとともに起立板部71bを挟む折り返し板部72cとを有している。この場合、対向板部72bと折り返し板部72cとで起立板部71bを挟むことにより、スライド部材72のスライド方向がレール部材71の長手方向に規定されている。
載置板部72aには、当該板部72aより上方に向けて突出するピン部74が固定されている。ピン部74は、金属材料により円柱状に形成され、載置板部72aに溶接により固定されている。ピン部74は、縦向き状態で積み込まれる外壁パネルの下端部の位置を規制する規制部となっている。
折り返し板部72cの外側面にはナット76が溶接により固定されている。ナット76にはボルト77が螺合されている。このボルト77が締め込まれるとボルト先端が折り返し板部72cを介してレール部材71の起立板部71bに押し付けられ、その押し付けによりスライド部材72がレール部材71に固定されるようになっている。
続いて、外壁パネルの上端部を固定するパネル固定構造について図4に加えて図7及び図8を用いながら説明する。図7は図4のB−B線断面図である。図8は、(a)が架設材81の端部周辺の構成を示す横断面図であり、(b)が同構成を示す側面図である。
図4に示すように、輸送用架台10は、各支持枠11,12の縦材19,29の間に架け渡されるようにして設けられた複数の架設材81と、各縦材19,29にそれぞれ設けられ架設材81の端部を着脱に固定する複数の固定部82とを備える。架設材81と固定部82とは支持枠11,12の各縦材19,29ごとに設けられている。また、各架設材81は、支持枠11,12の各縦材19,29と同じ間隔で配置されている。なお、図2では便宜上、各架設材81を二点鎖線で示している。
図8(a)及び(b)に示すように、架設材81は、角形鋼管からなる長尺状の本体部85と、その本体部85の長手方向の両端部に固定された一対のアングル86とを有する。アングル86はL字型の鋼板からなり、鉛直板部86aと水平板部86bとを有している。各アングル86はいずれも、その鉛直板部86aが本体部85の端面に溶接固定されており、その固定状態で各々の水平板部86bが鉛直板部86aの上端部から互いに反対側に向けて突出している。また、各アングル86の水平板部86bには厚み方向に貫通する円形の孔部88が形成されている。
各架設材81にはそれぞれ、外壁パネルの上端部が取り付けられるパネル取付部91が設けられている。パネル取付部91は、各架設材81に複数ずつ設けられ、具体的には2つずつ設けられている。パネル取付部91は、図7に示すように、短尺の角形鋼管よりなり、その断面の大きさが架設材81の本体部85よりも一周り大きくなっている。パネル取付部91は、本体部85の外側(外周側)に配置されている。すなわちパネル取付部91は、その内側に本体部85を挿通させた状態で配置され、その挿通状態で本体部85(ひいては架設材81)に沿ってスライド可能とされている。
パネル取付部91には、その下面にナット92が溶接固定されている。このナット92にはボルト93が螺合されている。このボルト93がナット92に対して締め込まれるとボルト先端がパネル取付部91を介して本体部85の外面に押し付けられ、その押し付けによりパネル取付部91が本体部85(ひいては架設材81)に固定されるようになっている。
また、パネル取付部91の上面には、ボルト95の頭部が脚部(ねじ部)を上方に向けた状態で溶接固定されている。このボルト95は、後述するように外壁パネルの上端部を固定する際に用いられるものである。
続いて、固定部82について説明する。固定部82は、図8に示すように、支持枠11、12の縦材19,29に設けられた本体部96と、その本体部96から架設材81側(換言すると、輸送用架台10の内部側)に張り出す張出部97と、その張出部97に設けられたピン部98とを有する。本体部96は、角形鋼管により短尺状に形成され、その断面の大きさが縦材19,29よりも一周り大きくなっている。本体部96は、縦材19,29の外側(外周側)に配置されており、つまりは内側に縦材19,29を挿通させた状態で配置されている。本体部96は、その挿通状態で縦材19,29に沿って上下にスライド可能とされ、ひいては固定部82がスライド可能とされている。なお、この場合、各縦材19,29が「縦レール部材」に相当する。
本体部96には、その外側面に上下一対のナット101が溶接固定されている。これらのナット101にはいずれもボルト102が螺合されている。これらのボルト102がナット101に対して締め込まれると、ボルト先端が本体部96の板部を介して縦材19,29の外側面に押し付けられ、その押し付けにより本体部96ひいては固定部82が縦材19,29に対して固定されるようになっている。
また、本体部96と縦材19,29との間に当て板104を配設し、その配設状態でボルト102をナット101に締め込むようにしてもよい。この場合、ボルト102をナット101に締め込むと、ボルト先端により当て板104(の板面全体)が縦材19,29の外側面に押し付けられるため、縦材19,29に対する固定部82の固定度を高めることができる。
張出部97も、本体部96と同様、角形鋼管により短尺状に形成されている。張出部97は、横向きで配置され、その一端面が本体部96の外側面の上部に溶接固定されている。
ピン部98は、張出部97から上方に突出するようにして当該張出部97に固定されている。ピン部98は、いわゆるプッシュ式のピンからなる。つまり、ピン部98は、金属材料により円柱状に形成されたピン本体部98aと、そのピン本体部98aの外周面から突出する係合部98bとを有する。ピン本体部98aは、その先端側が先細りしており、その外周面に長手方向に延びる溝部が形成されている。
係合部98bは、ピン本体部98aの上記溝部に配設され、その一部がピン本体部98aの外周面から突出している。図示は省略するが、ピン本体部98aの内部には係合部98bを上記突出する側に付勢するばね等の付勢部材が配設され、その付勢部材による付勢力により係合部98bは常時突出状態とされている。
固定部82には、架設材81のアングル86が固定されている。固定部82の張出部97の上面にはアングル86の水平板部86bが載置され、その載置状態でアングル86の孔部88には下側からピン部98が挿通されている。このピン部98の挿通状態において、ピン部98の係合部98bは突出状態とされ、その突出した係合部98bがアングル86(詳しくは孔部88の周縁部)に係合している。この場合、その係合により、アングル86ひいては架設材81が固定部82に固定されている。
固定部82からアングル86(架設材81)を取り外す際には、ピン部98の係合部98bを押すことでアングル86に対する係合部98bの係合状態を解除し、その解除状態で固定部82を下方にスライドさせピン部98を孔部88から引き抜く。これにより、アングル86ひいては架設材81が固定部82から取り外される。このように、架設材81は固定部82に対して着脱可能とされている。なお、ピン部98が着脱部に相当する。
次に、上記の輸送用架台10に外壁パネル110が積み込まれた場合の構成について説明する。図9は、輸送用架台10に外壁パネル110が積み込まれた状態を示す図である。図10は、輸送用架台10において外壁パネル110が縦向き状態で支持された構成を示す縦断面図である。図11は、図10を上方から見た図である。図12は、図10のC−C線断面図である。
図9に示すように、輸送用架台10には、複数(具体的には6つ)の外壁パネル110が縦向き状態で厚み方向に並べて積み込まれている。図9では、各種幅寸法及び各種高さ寸法の外壁パネル110が輸送用架台10に積み込まれている。これらの外壁パネル110は、ベース部13上に支持され、各架設材81に沿ってそれぞれ配置されている。
続いて、外壁パネル110の構成について説明する。図10に示すように、外壁パネル110は、外壁面材111と、その外壁面材111の裏面側に設けられた外壁フレーム112とを備える。外壁面材111は、窯業系サイディングにより構成されている。外壁フレーム112は、複数のフレーム材115〜117が矩形枠状に組み合わされることで構成されている。なお、外壁パネル110が「パネル」に相当し、外壁面材111が「面材」に相当し、外壁フレーム112が「下地材」に相当する。
外壁フレーム112は、外壁面材111の幅方向の両端部で上下に延びる一対の縦フレーム材115と、外壁面材111の上下両端部で外壁面材111の幅方向に延びる一対の横フレーム材116,117とを有している。これら各フレーム材115〜117はいずれも断面コ字状の鋼材からなり、その溝部をフレーム内側に向けて配設されている。各フレーム材115〜117は互いに溶接されることで一体化されている。また、各横フレーム材116,117には、その長手方向に所定の間隔で複数の通気孔116a,117aが形成されている。なお、外壁フレーム112の中間高さに、上記横フレーム材116,117に加えて、さらに横フレーム材が各縦フレーム材115間に架設されていてもよい。
外壁フレーム112の上端部、詳しくはフレーム上端に配された横フレーム材116(上端フレーム材)には、複数のブラケット113が固定されている。これらのブラケット113は、外壁パネル110を建物側の梁に固定する際に用いられる固定部材である。ブラケット113はL字状の鋼板からなり、外壁フレーム112の幅方向に所定の間隔で配置されている。ブラケット113は、外壁フレーム112(横フレーム材116)の背面に溶接固定された鉛直板部113aと、鉛直板部113aの上端部から外壁フレーム112とは反対側に延びる水平板部113bとを有する。水平板部113bには、厚み方向に貫通する孔部119が形成されている。この孔部119はブラケット113を建物側の梁に固定する際に、ボルトが挿通されるボルト挿通孔となっている。なお、水平板部113bが「突出部」に相当する。
次に、外壁パネル110が輸送用架台10において縦向き状態で支持される支持構成について説明する。
図10及び図12に示すように、外壁パネル110は、外壁フレーム112の横フレーム材117(下端フレーム材)がベース部13上に載置された状態で支持されている。かかる支持状態において、横フレーム材117における長手方向の両端側の各通気孔117aにはそれぞれ、各スライド部材72のピン部74が挿通されている。この場合、これらのピン部74によって、横フレーム材117の位置、ひいては外壁パネル110の下端部の位置(換言すると位置ずれ)が規制されている。なお、この場合、各スライド部材72はレール部材71にボルト77を用いて固定されている。
図10及び図11に示すように、外壁パネル110は、その上端側に設けられたブラケット113が架設材81のパネル取付部91に固定されている。具体的には、外壁パネル110の幅方向の両端側に配置された各ブラケット113がそれぞれパネル取付部91に固定されている。この場合、各パネル取付部91(及び架設材81)はそれぞれ各ブラケット113の水平板部113bの下面側に配置され、その配置状態で各ブラケット113がパネル取付部91に固定されている。詳しくは、ブラケット113の孔部119にはパネル取付部91のボルト95が挿通され、そのボルト95にはナット121が締結されている。これにより、ブラケット113、ひいては外壁パネル110の上端部がパネル取付部91に固定されている。なお、この場合、各パネル取付部91は架設材81にボルト93を用いて固定されている。
このように、外壁パネル110は、その下端部の位置がピン部74により規制され、その上端部がパネル取付部91に固定されることで、縦向き状態で支持されるようになっている。
続いて、輸送用架台10に外壁パネル110を積み込む際の作業手順について図13を参照しながら説明する。図13は、輸送用架台10に外壁パネル110を積み込む際の様子を示す図である。なお、輸送用架台10に外壁パネル110を積み込む際には、あらかじめ各架設材81を固定部82から取り外しておく。また、各固定部82は縦材19,29の下端部に位置させておく。
まず製造工場における外壁パネル110の生産ライン上で、外壁パネル110のブラケット113に架設材81を取り付ける作業を行う。この作業では、架設材81の各パネル取付部91をスライドさせて各ブラケット113に位置合わせし、その状態で各パネル取付部91をブラケット113に固定する(図11参照)。また、それとともに、各パネル取付部91を架設材81に固定する。これにより、外壁パネル110のブラケット113に架設材81がパネル取付部91を介して取り付けられる。
次に、架設材81が取り付けられた外壁パネル110を輸送用架台10に積み込む作業を行う。この積み込み作業は、図13に示すように、外壁パネル110をクレーンにより縦向きで吊り下げた状態で行う。この作業に際してはまず、扉体31をロック解除状態として扉体31を開ける。そして、扉体31を開けることで形成された開口部45を通じて外壁パネル110を輸送用架台10に側方から積み込む。この場合、外壁パネル110をクレーンによりそれ程高く持ち上げなくても済むため、天井高の低い製造工場においても外壁パネル110を好適に積み込むことが可能となる。
外壁パネル110を輸送用架台10に積み込むに際しては、外壁パネル110の外壁フレーム112の横フレーム材117をベース部13上に載置させる。外壁パネル110の載置に際しては、スライド部材72をレール部材71に沿ってスライドさせることでピン部74を横フレーム材117の通気孔117aに位置合わせし、その位置合わせした状態で通気孔117aにピン部74を挿通しながら外壁パネル110を載置する(図12参照)。これにより、外壁パネル110の下端部の位置が規制された状態となる。また、各スライド部材72はボルト77によりレール部材71に固定する。
次に、架設材81の一端部を固定部82に固定する作業を行う。具体的には、支持枠11の縦材19に設けられた固定部82に架設材81の端部を固定する作業を行う。この作業では、固定部82を縦材19に沿って上方にスライドさせることにより、固定部82のピン部98を架設材81のアングル86の孔部88に挿通させる(図8等参照)。これにより、ピン部98の係合部98bがアングル86(詳しくは孔部88の周縁部)に係合され、その係合によりアングル86ひいては架設材81の端部が固定部82に対して固定される。また、固定部82はボルト102を用いて縦材19に固定する。
このように、外壁パネル110は、その下端部が位置規制され、さらには架設材81の一端部が固定部82に固定されることで、自立可能な状態となる。外壁パネル110が自立可能な状態となった後、クレーンによる外壁パネル110の支持を解除する。
上記の手順で、残りの外壁パネル110についても順次輸送用架台10に積み込んでいく。そして、すべての外壁パネル110の積み込みが終了した後、扉体31を閉じて、扉体31をロック部材41によりロック状態とする(図5(a)参照)。
次に、輸送用架台10に積み込まれた各外壁パネル110について、架設材81の他端部を固定部82に固定する作業を行う。すなわち、ここでは、支持枠12の縦材29に設けられた固定部82に架設材81の端部を固定する作業を行う。この作業は、上述した支持枠11(縦材19)側の固定部82に架設材81の端部を固定する作業と同様の作業であるため、その説明を割愛する。この作業を行うことで、架設材81の両端部がそれぞれ固定部82に固定され、ひいてはその架設材81が取り付けられた外壁パネル110が固定される。
以上により、輸送用架台10への外壁パネル110の積み込み作業が終了する。
上記の手順で、外壁パネル110が積み込まれた輸送用架台10は小型トラック(2t車)の荷台に載せられて施工現場へ搬送される。施工現場では、搬送された輸送用架台10から外壁パネル110を降ろす(荷降ろしする)作業が行われる。以下、その荷降ろし作業の手順について簡単に説明する。
外壁パネル110を輸送用架台10から荷降ろしする際には、外壁パネル110をクレーンにより上方に吊り上げて荷降ろしを行う。荷降ろし作業に際してはまず、外壁パネル110の外壁フレーム112上端部にクレーンのフックを玉掛けする作業を行う。玉掛け作業が終了後、クレーンにより外壁パネル110を支持した状態で、外壁パネル110のブラケット113に取り付けられた架設材81を取り外す作業を行う。この作業では、パネル取付部91のボルト95からナット121を取り外すことで、パネル取付部91ひいては架設材81をブラケット113から取り外す(図10や図11参照)。
架設材81を取り外した後、その架設材81を下方に移動させる作業を行う。この作業は、架設材81の両端部に固定されている各固定部82を支持枠11,12の縦材19,29に沿って下方にスライドさせることにより行う。なお、この際、各固定部82から架設材81を取り外してしまってもよい。
その後、クレーンにより外壁パネル110を上方に持ち上げて外壁パネル110を輸送用架台10から荷降ろしする作業を行う。以上の手順で、残りの外壁パネル110についても順次輸送用架台10から荷降ろしする。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
縦向き状態で積み込まれる外壁パネル110の下端部をベース部13上に支持させ、そのベース部13にはパネル下端部の位置を規制するピン部74を設けた。また、一対の支持枠11,12の間に架け渡されるようにして架設材81を設け、その架設材81には外壁パネル110のブラケット113(上端部)が取り付けられるパネル取付部91を設けた。これにより、外壁パネル110を縦向き状態で支持することが可能となる。
また、各支持枠11,12には、架設材81の端部を着脱可能に固定する固定部82を設けたため、外壁パネル110を輸送用架台10に積み込むに際し、あらかじめ架設材81を固定部82から取り外し、架設材81を外壁パネル110にパネル取付部91を介して取り付けておくことができる。この場合、外壁パネル110を輸送用架台10に積み込むに際し架設材81が邪魔となることがないため、外壁パネル110の積み込み作業を好適に行うことができる。
架設材81に複数のパネル取付部91を設け、それら各パネル取付部91に外壁パネル110の各ブラケット113を取り付けるようにしたため、外壁パネル110を安定した状態で支持することが可能となる。また、各パネル取付部91を架設材81に沿ってスライド可能としたため、外壁パネル110の幅に応じてパネル取付部91の位置を調整することができる。これにより、各種幅の外壁パネル110に対応することが可能となる。
ベース部13上に架設材81の長手方向に延びる複数のレール部材71を設け、それら各レール部材71にはレール部材71に沿ってスライド可能なスライド部材72を複数ずつ設けた。また、各スライド部材72にはそれぞれピン部74を一体で設けたため、スライド部材72をスライドさせることで、各ピン部74の位置を外壁パネル110の幅に応じて調整することができる。これにより、各種幅の外壁パネル110に対応することが可能となる。
各支持枠11,12にそれぞれ複数の縦材19,29を設け、それら各縦材19,29にはそれぞれ固定部82を上下スライド可能に支持させた。この場合、外壁パネル110の高さ寸法に応じて架設材81の高さ位置が変わっても、その架設材81の高さ位置に応じて固定部82の高さ位置を調整することができる。これにより、各種高さ寸法の外壁パネル110に対応することが可能となる。
固定部82に架設材81のアングル86(端部)に着脱可能なピン部98を設け、そのピン部98の着脱方向を上下方向とした。この場合、固定部82を上下方向にスライドさせるといった簡単な作業により架設材81を固定部82に着脱することが可能となる。
具体的には、ピン部98をアングル86の孔部88に下方から挿入することに伴い、アングル86(孔部88の周縁部)に対して係合される係合部98bをピン部98に設けた。この場合、固定部82を上方にスライドさせて孔部88にピン部98を挿入するといった簡単な作業で架設材81を固定部82に固定することができる。
外壁パネル110のブラケット113において外壁面材111とは反対側に突出する水平板部113bの下面側にパネル取付部91を架設材81とともに配置して、その配置状態でパネル取付部91(ひいては架設材81)に水平板部113b(ブラケット113)を取り付けた。この場合、外壁パネル110のブラケット113から架設材81を取り外した後、架設材81を下方に移動させることができる。すなわち、固定部82を縦材19,29に沿って下方にスライドさせながら架設材81を下方に移動させることができる。これにより、架設材81の取り外し後に輸送用架台10から外壁パネル110を降ろす(荷降ろす)作業をし易くすることができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、架設材81に沿ってスライド可能なパネル取付部91を設け、そのパネル取付部91に外壁パネル110のブラケット113が取り付けられる構成としたが、これを変更してもよい。例えば、架設材81にパネル取付部91を設けず、架設材81自体にブラケット113が取り付けられる構成とすることが考えられる。具体的には、架設材81の上面部にボルトを上向き状態で溶接固定し、そのボルトを用いてブラケット113が架設材81に取り付けられる構成とすることが考えられる。但し、このような構成とすると、各種幅の外壁パネル110に対応することが不可となるため、その点を鑑みると、パネル取付部91を架設材81に沿ってスライド可能とするのが望ましい。なお、上述の構成では、上記のボルトが特許請求の範囲に記載の「パネル取付部」に相当する。
・上記実施形態では、ベース部13上にレール部材71に沿ってスライド可能なスライド部材72を設け、そのスライド部材72に外壁パネル110の下端位置を規制するピン部74を設けたが、これを変更してもよい。例えば、ベース部13においてベースプレート47上に直接ピン部74を溶接固定してもよい。この場合、レール部材71とスライド部材72とを不具備とすることができるため、ベース部13において構成の簡素化を図ることができる。但し、このような構成とすると、各種幅の外壁パネル110に対応することが不可となるため、その点を鑑みると、スライド部材72にピン部74を設けるのが望ましい。
・上記実施形態では、固定部82を縦材19,29に沿ってスライド可能に設けたが、固定部82を縦材19,29に溶接等で固定しスライド不能にしてもよい。但し、この場合、各種高さの外壁パネル110に対応することが不可となるため、その点を鑑みると、固定部82を縦材19,29に沿ってスライド可能とするのが望ましい。また、固定部82をスライド不能とする場合、例えば支持枠11,12の上端横材15,25に各固定部82を溶接固定するようにしてもよい。そうすれば、縦材19,29を不具備とすることができ、支持枠11,12について構成の簡素化を図ることができる。
・上記実施形態では、固定部82を架設材81のアングル86に着脱可能に固定するにあたって、ピン部98を用いたが、ピン部98に代えてボルトを用いてもよい。この場合、固定部82の張出部97の上面に、ボルトの脚部を上方に向けた状態で当該ボルトの頭部を溶接固定する。そして、そのボルトをアングル86の孔部88に挿通した状態で当該ボルトにナットを締結し、それによって固定部82にアングル86(架設材81)を固定するようにする。この場合においても、固定部82に架設材81を着脱可能に固定することが可能となる。
・上記実施形態では、支持枠12の一部を扉体31としたが、支持枠12の全部(全体)を扉体としてもよい。その場合、扉体31を開状態とすることで大開口(開口部)を形成することができるため、開口部を通じて外壁パネル110を輸送用架台10に積み込む作業をし易くすることができる。
また、上記実施形態では、各支持枠11,12のうち一方の支持枠12にのみ扉体31を設けたが、各支持枠11,12のそれぞれに扉体31を設けてもよい。また、各支持枠11,12のいずれにも扉体を設けないようにしてもよい。その場合、外壁パネル110を輸送用架台10に上方から積み込むことになる。
・上記実施形態では、架設材81のパネル取付部91に外壁パネル110のブラケット113が取り付けられる構成としたが、ブラケット113に代えて、外壁パネル110の外壁フレーム112が取り付けられる構成としてもよい。
・上記実施形態では、本発明の輸送用架台10を、外壁パネル110を輸送する際に用いたが、内壁パネルや腰壁パネル等、他の壁パネルを輸送する際に用いてもよい。また、壁パネルに限らず、床パネルや天井パネル等、他のパネルを輸送する際に本発明の輸送用架台を用いてもよい。その場合、床パネルや天井パネルを縦向き状態で輸送することが可能となる。
・上記実施形態では、輸送用架台10を小型トラックの荷台に載せて輸送する場合について説明したが、輸送用架台を大型トラック(例えば4t車)の荷台に載せて輸送する場合に用いてもよい。また、輸送用架台10を製造工場内で外壁パネルを搬送する(移動させる)際に用いてもよい。さらに、輸送用架台10を外壁パネルを保管する際に用いてもよい。